(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】保持テーブル及び保持方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20250520BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250520BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/304 643A
H01L21/304 648A
(21)【出願番号】P 2021130063
(22)【出願日】2021-08-06
【審査請求日】2024-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】高乗 佑
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-122977(JP,A)
【文献】特開2006-032661(JP,A)
【文献】特開2008-085146(JP,A)
【文献】特開2015-201561(JP,A)
【文献】特開平08-274060(JP,A)
【文献】特開2002-252273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークピースと該ワークピースを囲む環状のフレームとがテープを介して一体化されたフレームユニットを保持する際に使用される保持テーブルであって、
該フレームユニットを保持する保持面を上部に備え、回転駆動源の動力により該保持面と交差する回転軸の周りに回転する保持板と、
該保持板の周縁部に設けられ、該回転駆動源で該保持板を回転させる時に生じる遠心力を利用して該保持面に保持された該フレームユニットを上方から押さえる押さえ機構と、
該保持板に対する該フレームユニットの位置を調整する位置調整機構と、を含み、
該位置調整機構は、
該押さえ機構で押さえることができる該フレームユニットの端部の位置に対応した第1位置と、該第1位置に比べて該保持板の中央部から遠い第2位置と、の間で移動できるように該保持板の該周縁部に設けられた可動部材を含み、
該可動部材は、該中央部から遠い外側に比べて該中央部に近い内側の高さが低くなるように傾斜した傾斜面と、該傾斜面の下端に上端が接続され該保持面に対して垂直な又は該保持面に対する傾きが該傾斜面よりも大きな内側面と、を有し、
該傾斜面と該内側面の少なくとも一部とは、該保持面よりも上方に配置されている保持テーブル。
【請求項2】
該位置調整機構は、
該第1位置へと向かう向きの力を該可動部材に付与する付勢部材を更に含む請求項1に記載の保持テーブル。
【請求項3】
該保持板には、
該保持面に接続される一端と、バルブを介して吸引源とエア供給源とに選択的に接続される他端と、を有する流路が設けられている請求項2に記載の保持テーブル。
【請求項4】
請求項3に記載の保持テーブルを用いて該フレームユニットを保持する保持方法であって、
該保持板の上方から該フレームユニットを下降させて該保持面に載置する載置ステップと、
該載置ステップを実施した後、該付勢部材により付与される力で該可動部材が該第1位置へと戻るのを待つ待機ステップと、
該待機ステップを実施した後、該流路を通じて該吸引源の負圧を該保持面に作用させることにより該フレームユニットを該保持面で吸引する吸引ステップと、を含む保持方法。
【請求項5】
該待機ステップでは、該流路を通じて該エア供給源から該保持面にエアを供給しながら、該付勢部材により付与される力で該可動部材が該第1位置へと戻るのを待つ請求項4に記載の保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のワークピースと環状のフレームとがテープを介して一体化されたフレームユニットを保持する際に使用される保持テーブル、及びこの保持テーブルを用いてフレームユニットを保持する保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やパーソナルコンピュータに代表される電子機器では、電子回路等のデバイスを備えるデバイスチップが必須の構成要素になっている。デバイスチップは、例えば、シリコン等の半導体材料でなるウェーハの表面側をストリートと呼ばれる分割予定ラインで複数の領域に区画し、各領域にデバイスを形成した後、この分割予定ラインに沿ってウェーハを分割することで得られる。
【0003】
ウェーハに代表される板状のワークピースをデバイスチップ等の小片へと分割する際には、例えば、切削ブレードと呼ばれる環状の工具をスピンドルに装着した切削装置が使用される。切削ブレードを高速に回転させて、純水等の液体を供給しながら分割予定ラインに沿ってワークピースに切り込ませることで、このワークピースを切削加工して複数の小片へと分割できる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、上述した切削装置のような加工装置でワークピースを加工する際には、例えば、ワークピースと、このワークピースを囲む環状のフレームと、がテープを介して一体化されたフレームユニットが構成される。これにより、ワークピースがテープを介してフレームに支持されるので、加工の前後でワークピースを取り扱い易くなる。
【0005】
加工装置で加工された後のワークピースは、一般的に、洗浄装置で洗浄される。これにより、加工の際に発生する屑を除去して、この屑に起因する不具合の発生を抑えることができる。洗浄装置は、例えば、フレームユニットを保持する保持テーブルと、保持テーブルに保持されたフレームユニットのワークピースに洗浄用の流体を吹き付けるノズルと、を備えており(例えば、特許文献2参照)、保持テーブルを回転させながら洗浄用の流体を吹き付けることでワークピースを洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平3-198363号公報
【文献】特開2008-85146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した保持テーブルの周縁部には、フレームユニットのフレームを上方から押さえることができる押さえ機構が設けられている。この押さえ機構は、鉤状の押さえ部と、押さえ部よりも重い錘部と、の間の位置で軸支されたてこ(振り子)のような構造を有し、保持テーブルの回転に伴う遠心力が加わると、フレームを押さえる下向きの力が押さえ部に作用するように構成されている。よって、保持テーブルを高速に回転させる場合にも、この押さえ機構によって、フレームユニットが適切に保持される。
【0008】
しかしながら、フレームユニットを保持テーブルへと搬入する際に、保持テーブルに対するフレームユニットの位置がずれると、上述した押さえ機構によってフレームを適切に保持できなくなる。そして、この押さえ機構によってフレームが適切に保持されていない状態で保持テーブルを高速に回転させると、保持テーブルからフレームユニットが脱落して、ワークピースが破損することがあった。
【0009】
よって、本発明の目的は、フレームユニットが適切ではない位置に搬入された場合でもフレームユニットを確実に保持できる保持テーブル、及びこの保持テーブルを用いてフレームユニットを保持する保持方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、板状のワークピースと該ワークピースを囲む環状のフレームとがテープを介して一体化されたフレームユニットを保持する際に使用される保持テーブルであって、該フレームユニットを保持する保持面を上部に備え、回転駆動源の動力により該保持面と交差する回転軸の周りに回転する保持板と、該保持板の周縁部に設けられ、該回転駆動源で該保持板を回転させる時に生じる遠心力を利用して該保持面に保持された該フレームユニットを上方から押さえる押さえ機構と、該保持板に対する該フレームユニットの位置を調整する位置調整機構と、を含み、該位置調整機構は、該押さえ機構で押さえることができる該フレームユニットの端部の位置に対応した第1位置と、該第1位置に比べて該保持板の該中央部から遠い第2位置と、の間で移動できるように該保持板の該周縁部に設けられた可動部材を含み、該可動部材は、該中央部から遠い外側に比べて該中央部に近い内側の高さが低くなるように傾斜した傾斜面と、該傾斜面の下端に上端が接続され該保持面に対して垂直な又は該保持面に対する傾きが該傾斜面よりも大きな内側面と、を有し、該傾斜面と該内側面の少なくとも一部とは、該保持面よりも上方に配置されている保持テーブルが提供される。
【0011】
好ましくは、該位置調整機構は、該第1位置へと向かう向きの力を該可動部材に付与する付勢部材を更に含む。好ましくは、該保持板には、該保持面に接続される一端と、バルブを介して吸引源とエア供給源とに選択的に接続される他端と、を有する流路が設けられている。
【0012】
本発明の別の一側面によれば、上述した保持テーブルを用いて該フレームユニットを保持する保持方法であって、該保持板の上方から該フレームユニットを下降させて該保持面に載置する載置ステップと、該載置ステップを実施した後、該付勢部材により付与される力で該可動部材が該第1位置へと戻るのを待つ待機ステップと、該待機ステップを実施した後、該流路を通じて該吸引源の負圧を該保持面に作用させることにより該フレームユニットを該保持面で吸引する吸引ステップと、を含む保持方法が提供される。
【0013】
好ましくは、該待機ステップでは、該流路を通じて該エア供給源から該保持面にエアを供給しながら、該付勢部材により付与される力で該可動部材が該第1位置へと戻るのを待つ。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面にかかる保持テーブルの位置調整機構は、押さえ機構で押さえることができるフレームユニットの端部の位置に対応した第1位置と、第1位置に比べて保持板の中央部から遠い第2位置と、の間で移動できるように保持板の周縁部に設けられた可動部材を含む。
【0015】
そして、この可動部材は、保持板の中央部から遠い外側に比べて中央部に近い内側の高さが低くなるように傾斜した傾斜面と、傾斜面の下端に上端が接続され保持面に対して垂直な又は保持面に対する傾きが傾斜面よりも大きな内側面と、を有し、傾斜面と内側面の少なくとも一部とは、保持板の保持面よりも上方に配置されている。
【0016】
そのため、保持板の上方からフレームユニットを下降させて保持面に載置する際に、フレームユニットが適切ではない位置に搬入されると、可動部材の傾斜面にフレームユニットの端部が接触し、可動部材は、フレームユニットの下降に合わせて第1位置から第2位置に向かって移動する。そして、フレームユニットは、傾斜面の下方の内側面にフレームユニットの端部が接触した状態で、保持面に載置される。
【0017】
よって、この可動部材を任意の方法で第1位置に戻すだけで、押さえ機構で適切に押さえることができる位置にフレームユニットを移動させて、フレームユニットを押さえ機構で適切に押さえることができるようになる。このように、本発明の一側面にかかる保持テーブルによれば、フレームユニットが適切ではない位置に搬入された場合でもフレームユニットを確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、洗浄装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、保持テーブルの一部を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、適切ではない位置にフレームユニットが載置された状態の保持テーブルの一部を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、保持テーブルの別の一部を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、適切ではない位置にフレームユニットが搬入される様子を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、適切ではない位置にフレームユニットが載置された後の様子を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、適切ではない位置にフレームユニットが載置された状態でエアが供給される様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の洗浄装置2を模式的に示す斜視図である。なお、
図1では、説明の便宜上、一部の要素が切断された状態の洗浄装置2が示されている。また、
図1では、洗浄の対象となる板状のワークピース11が併せて示されている。
【0020】
図1の洗浄装置2で洗浄されるワークピース11は、例えば、シリコン(Si)等の半導体を用いて円盤状に形成されたウェーハであり、円形状の表面11aと、表面11aとは反対側の円形状の裏面11bと、を有する。このワークピース11の表面11a側は、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)13で複数の小領域に区画されており、各小領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15が形成されている。
【0021】
ワークピース11の裏面11b側には、この裏面11bの全体を覆うことができる大きさのテープ17が貼付されている。また、テープ17の周縁部には、ワークピース11を囲む環状のフレーム19が固定されている。このように、本実施形態の洗浄装置2は、板状のワークピース11と、ワークピース11を囲む環状のフレーム19と、がテープ17を介して一体化されたフレームユニット21の状態で、ワークピース11を洗浄する。
【0022】
洗浄装置2は、ワークピース11を含むフレームユニット21を保持できる保持テーブル4を備えている。保持テーブル4は、例えば、セラミックスや金属等を用いて形成された円盤状の保持板6を含む。保持板6の円形状の上面(保持面)6aには、同心円状に配置された複数の環状の第1溝6bと、複数の第1溝6bを径方向に連結する複数の直線状の第2溝6cと、が設けられている。第1溝6bの上端と第2溝6cの上端とは、保持板6の上面6aに開口している。
【0023】
図2は、保持テーブル4の一部を模式的に示す断面図である。なお、
図2では、一部の要素が記号や機能ブロックで表現されている。
図2に示されるように、保持板6の内部には、第1溝6bの底又は第2溝6cの底に一端が開口した流路6dが設けられている。すなわち、この流路6dの一端は、第1溝6b又は第2溝6cを介して保持板6の上面6aに接続されている。
【0024】
一方で、流路6dの他端には、第1バルブ12を介してエジェクタ等の吸引源14が接続され、また、第2バルブ16を介してエア供給源18が接続されている。つまり、流路6dの他端は、第1バルブ12及び第2バルブ16を介して、吸引源14とエア供給源18とに選択的に接続される。
【0025】
そのため、第2バルブ16を閉じた状態で第1バルブ12を開けば、吸引源14で発生する負圧を流路6d、第1溝6b、及び第2溝6cを通じて保持板6の上面6aに作用させることができる。また、第1バルブ12を閉じた状態で第2バルブ16を開けば、エア供給源18から流れ出るエアを流路6d、第1溝6b、及び第2溝6cを通じて保持板6の上面6aに供給できる。
【0026】
よって、例えば、保持板6の上面6aにフレームユニット21を載せた状態で、この上面6aに吸引源14の負圧を作用させると、フレームユニット21は、保持板6の上面6aに吸引される。このように、保持板6の上面6aは、フレームユニット21を吸引して保持するための保持面として機能する。言い換えれば、保持板6は、フレームユニット21を吸引して保持するための保持面を上部に備えている。
【0027】
図1に示されるように、保持板6の下部には、円柱状のスピンドル20を介して、モータ等の回転駆動源22が連結されている。保持テーブル4は、この回転駆動源22が生じる動力によって、保持板6の上面6aと交差するスピンドル20の軸心(回転軸)の周りに回転する。回転駆動源22の側部には、複数(本実施形態では、3組)のエアアクチュエータ24が設けられており、各エアアクチュエータ24を動作させると、回転駆動源22は、スピンドル20や保持テーブル4等とともに昇降する。
【0028】
保持板6の周縁部には、この保持板6を回転させる時に生じる遠心力を利用して、保持板6の上面6aに保持されたフレームユニット21を上方から押さえることができる複数(本実施形態では、4組)の押さえ機構26が、保持板6の周方向に沿って概ね等間隔に設けられている。
図2に示されるように、各押さえ機構26は、保持板6の周縁部から外向きに突出する支持アーム28を備えている。
【0029】
この支持アーム28の基端部(内側の端部)は、ねじ等(不図示)によって保持板6の周縁部に固定されている。支持アーム28の先端部(外側の端部)には、上面6aに対して概ね平行で、保持板6の中央部と支持アーム28の先端部とを結ぶ直線(すなわち、保持板6の径方向)に対して概ね垂直な支持軸28aが設けられている。そして、この支持軸28aには、押さえ部材30が回転自在な態様で支持されている。
【0030】
押さえ部材30は、支持軸28aに支持される支持部30aと、支持部30aの一方側に位置する鉤状の押さえ部30bと、支持部30aの他方側に位置する錘部30cと、を含む。錘部30cの重量は、押さえ部30bの重量に比べて大きくなっている。よって、保持板6を回転させていない静止状態(遠心力が作用していない状態)では、押さえ部30bの先端が錘部30cよりも上方に位置付けられる。
【0031】
なお、押さえ部材30の各部の位置や重量、形状等は、保持板6を回転させていない静止状態で、押さえ部30bの先端部が錘部30cよりも外側(保持板6の径方向において外側)に位置付けられるように調整されている。これにより、保持テーブル4の適切な位置にフレームユニット21が搬入された場合に、フレームユニット21と押さえ部30bとが干渉することはない。
【0032】
保持テーブル4の適切な位置にフレームユニット21が搬入された状態で保持板6を高速に回転させると、この回転に伴う遠心力が押さえ部材30に加わる。上述のように、錘部30cの重量は、押さえ部30bの重量に比べて大きくなっている。よって、保持板6を高速に回転させると、この回転に伴う遠心力の作用で錘部30cが外向きに移動し、また、押さえ部30bが内向きに移動する。
【0033】
その結果、
図1の破線で示されるように、フレームユニット21のフレーム19に対して、押さえ部30bの先端部が上方から接触し、フレームユニット21が上方から押さえられる。よって、保持板6(保持テーブル4)を高速に回転させる場合にも、この押さえ機構26によって、フレームユニット21を適切に保持できる。
【0034】
図1に示されるように、保持テーブル4の傍には、洗浄流体供給ノズル32が配置されている。洗浄流体供給ノズル32は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、この回転駆動源の動力により保持テーブル4の上方で揺動しながら、保持テーブル4に保持されたワークピース11に向けて洗浄用の流体を噴射する。洗浄用の流体としては、純水に代表される液体や、エア等の気体を液体に混合した混合流体(二流体)が使用される。
【0035】
同様に、保持テーブル4の傍には、エア供給ノズル34が配置されている。エア供給ノズル34も、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、この回転駆動源の動力により保持テーブル4の上方で揺動しながら、保持テーブル4に保持されたワークピース11に向けてエアを噴射する。これにより、洗浄後のワークピース11を乾燥させることができる。
【0036】
保持テーブル4、洗浄流体供給ノズル32、及びエア供給ノズル34は、液受け容器36の内側の空間に収容されている。この液受け容器36は、円盤状の底壁36aと、底壁36aの外周縁に沿って設けられた円筒状の外周壁36bと、を含む。つまり、液受け容器36は、上端部に円形の開口部36cを持つ有底円筒状に構成されている。
【0037】
円盤状の底壁36aの中央部には、スピンドル20を通す円形の開口部が形成されており、この開口部を囲むように、外周壁36bよりも径及び高さが小さい円筒状の内周壁36dが設けられている。そのため、例えば、洗浄流体供給ノズル32から噴射される流体中の液体は、保持テーブル4上のワークピース11に衝突して周囲に飛散し、円筒状の外周壁36bと円筒状の内周壁36dとで挟まれた底壁36a上の領域に溜まる。なお、保持テーブル4の下部には、スピンドル20を囲む円筒状のカバー38が設けられている。
【0038】
底壁36aの外周壁36bと内周壁36dとで挟まれた部分には、底壁36aを厚みの方向に貫通する排液口36eが設けられている。排液口36eには、ドレーンホース40が接続されており、液受け容器36に溜まった液体は、排液口36e及びドレーンホース40を通じて洗浄装置2の外部へと排出される。液受け容器36の下部には、脚42が設けられており、液受け容器36の高さは、保持テーブル4の高さに合わせて調整されている。
【0039】
ところで、フレームユニット21を保持テーブル4へと搬入する際に、保持板6に対するフレームユニット21の位置がずれると、押さえ機構26によってフレームユニット21のフレーム19を適切に保持できなくなる。
図3は、適切ではない位置にフレームユニット21が載置された状態の保持テーブル4の一部を模式的に示す断面図である。
【0040】
図3に示されるように、押さえ部材30の回転が阻害されるような位置にフレームユニット21が載置されると、この押さえ部材30によってフレームユニット21のフレーム19を上方から押さえることができない。この状態で保持板6(保持テーブル4)を高速に回転させると、保持テーブル4からフレームユニット21が脱落して、ワークピース11が破損することがある。
【0041】
そこで、本実施形態の保持テーブル4には、
図1に示されるように、保持板6に対するフレームユニット21の位置を調整できる複数(本実施形態では、4組)の位置調整機構44が、保持板6の周方向に沿って概ね等間隔に設けられている。
図4は、保持テーブル4の位置調整機構44を含む一部を模式的に示す断面図である。
【0042】
図4に示されるように、位置調整機構44は、保持板6の周縁部にねじ等(不図示)で固定された筒状の支持部材46と、支持部材46に支持される可動部材48と、を含む。支持部材46の先端には、支持部材46の内側の空間と外側の空間とを接続する開口部が設けられており、支持部材46は、この開口部が保持板6の径方向の外側を向くように、保持板6の周縁部に固定されている。
【0043】
可動部材48は、一端側の少なくとも一部が支持部材46の内側の空間に収容されるロッド部50と、ロッド部50の他端に設けられ、支持部材46の外側の空間に配置される接触部52と、を有している。接触部52の一部は、保持板6の上面6aよりも上方に突出している。
【0044】
具体的には、接触部52は、保持板6の中央部から遠い外側の部分に比べて、保持板6の中央部に近い内側の部分の高さが低くなるように傾斜した傾斜面52aと、傾斜面52aの下端に上端が接続され、保持板6の上面6aに対して垂直な内側面52bと、を有している。傾斜面52aと、内側面52bの少なくとも一部とは、上面6aよりも上方に配置されている。
【0045】
傾斜面52aと、保持板6の上面6aと、のなす角度θは、例えば、30°~60°、代表的には、45°であり、保持板6の径方向に沿った傾斜面52aの幅は、例えば、3mm~10mm、代表的には、5mmである。また、内側面52bと保持板6の上面6aとの距離(すなわち、上面6aから上方への内側面52bの突出量)は、例えば、2mm~5mm、代表的には、3mmである。
【0046】
ただし、傾斜面52aや内側面52bは、必ずしもこれらの値を満たさなくて良い。フレームユニット21を保持テーブル4へと搬入する際に想定される位置のずれの量や、ワークピース11の厚み等に応じて、傾斜面52aや内側面52bのパラメータを変更できる。また、内側面52bは、必ずしも保持板6の上面6aに対して垂直でなくて良い。例えば、内側面52bは、上面6aに対する傾きが傾斜面52aよりも大きな所定の角度φ(θ<φ<180°-θ)で傾斜していても良い。
【0047】
ロッド部50は、保持板6の径方向に沿ってスライドできる態様で、支持部材46の内側の空間に収容されている。具体的には、ロッド部50は、接触部52の内側面52bが支持部材46の先端部と接触する第1位置と、第1位置に比べて保持板6の中央部から遠い第2位置と、の間で可動部材48が移動できるように、支持部材46の内側の空間に収容される。
【0048】
図4に示されるように、保持テーブル4の適切な位置にフレームユニット21(フレーム19)が搬入された場合には、第1位置に位置付けられた可動部材48の内側面52bに対して、フレームユニット21の端部が接触する。すなわち、第1位置は、押さえ機構26で押さえることができるフレームユニット21の端部の位置に対応するように設定されている。
【0049】
また、
図4に示されるように、ロッド部50は、圧縮コイルばね(付勢部材)54に挿入された状態で、支持部材46の内側の空間に収容されている。可動部材48には、この圧縮コイルばね54によって、保持板6の径方向に沿って内側へと向かう向き(第1位置へと向かう向き)の力が付与される。
【0050】
次に、上述した保持テーブル4を用いてフレームユニット21を保持する保持方法について説明する。
図5は、保持テーブル4にフレームユニット21が搬入される様子を模式的に示す断面図であり、
図6は、保持テーブル4にフレームユニット21が載置された後の様子を模式的に示す断面図である。
【0051】
保持テーブル4を用いてフレームユニット21を保持する際には、まず、フレームユニット21を保持テーブル4に搬入する。具体的には、搬送機構の搬送パッド56でフレームユニット21を保持し、第1バルブ12と第2バルブ16とが閉じられた状態で搬送パッド56を保持板6の上方から下降させて、フレームユニット21を保持板6の上面6aに載置する(載置ステップ)。つまり、保持板6の上方からフレームユニット21を下降させて上面6aに載せる。
【0052】
例えば、保持テーブル4に対するフレームユニット21の位置がずれている場合(保持テーブル4の適切ではない位置にフレームユニット21が搬入される場合)に、保持板6の上方からフレームユニット21を下降させると、まず、フレームユニット21の端部が位置調整機構44の傾斜面52aに接触することになる。
【0053】
その後、フレームユニット21を更に下降させると、
図5に示されるように、フレームユニット21の端部が傾斜面52aを滑って下方に移動しながら、可動部材48は、フレームユニット21から傾斜面52aに作用する力で第2位置の方向に移動する。なお、この可動部材48の移動は、フレームユニット21の端部が傾斜面52aの下端に達するまで続く。
【0054】
フレームユニット21の端部が傾斜面52aの下端に達した後にフレームユニット21を更に下降させると、
図6に示されるように、フレームユニット21は、その端部が位置調整機構44の内側面52bに接触した状態で保持板6の上面6aに載置される。上述のように、可動部材48には、圧縮コイルばね54により第1位置へと向かう向きの力が付与されている。よって、搬送パッド56によるフレームユニット21の保持を解除すると、可動部材48は、圧縮コイルばね54の力により第1位置への移動を開始する。
【0055】
そこで、本実施形態では、フレームユニット21を上面6aに載置した後に、圧縮コイルばね54により付与される力で可動部材48が第1位置へと戻るのを待つ(待機ステップ)。最終的に可動部材48が第1位置に戻ると、フレームユニット21の端部は、押さえ機構26で押さえることができる適切な位置に位置付けられる。
【0056】
可動部材48が第1位置へと戻るのを待った後には、
図4に示されるように、第1バルブ12を開くことで、流路6dを通じて吸引源14の負圧を保持板6の上面6aに作用させる。その結果、フレームユニット21は、保持板6の上面6aにより吸引される(吸引ステップ)。
【0057】
上述のように、フレームユニット21の端部は、可動部材48の移動により、押さえ機構26で押さえることができる適切な位置に位置付けられている。よって、保持板6(保持テーブル4)を高速に回転させると、
図2に示されるように、フレームユニット21の端部は、押さえ機構26により適切に押さえられる。つまり、フレームユニット21を保持テーブル4で確実に保持できる。
【0058】
以上のように、本実施形態にかかる保持テーブル4の位置調整機構44は、押さえ機構26で押さえることができるフレームユニット21の端部の位置に対応した第1位置と、第1位置に比べて保持板6の中央部から遠い第2位置と、の間で移動できるように保持板6の周縁部に設けられた可動部材48を含む。
【0059】
そして、この可動部材48は、保持板6の中央部から遠い外側に比べて中央部に近い内側の高さが低くなるように傾斜した傾斜面52aと、傾斜面52aの下端に上端が接続され保持板6の上面(保持面)6aに対して垂直な(又は上面6aに対する傾きが傾斜面52aよりも大きな)内側面52bと、を有し、傾斜面52aと内側面52bの少なくとも一部とは、保持板6の上面6aよりも上方に配置されている。
【0060】
そのため、保持板6の上方からフレームユニット21を下降させて上面6aに載置する際に、フレームユニット21が適切ではない位置に搬入されると、可動部材48の傾斜面52aにフレームユニット21の端部が接触し、可動部材48は、フレームユニット21の下降に合わせて第1位置から第2位置に向かって移動する。そして、フレームユニット21は、傾斜面52aの下方の内側面52bにフレームユニット21の端部が接触した状態で、上面6aに載置される。
【0061】
よって、この可動部材48を第1位置に戻すだけで、押さえ機構26で適切に押さえることができる位置にフレームユニット21を移動させて、フレームユニット21を押さえ機構26で適切に押さえることができるようになる。このように、本実施形態にかかる保持テーブル4によれば、フレームユニット21が適切ではない位置に搬入された場合でもフレームユニット21を確実に保持できる。
【0062】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、フレームユニット21を上面6aに載置した後、可動部材48が第1位置へと戻るのを待つ際には、第2バルブ16を開くことで、流路6dを通じてエア供給源18から保持板6の上面6aにエアを供給しても良い(待機ステップ)。
【0063】
図7は、保持テーブル4にフレームユニット21が載置された状態でエアが供給される様子を模式的に示す断面図である。流路6dを通じて保持板6の上面6aにエアを供給すると、
図7に示されるように、フレームユニット21は、エアの圧力により保持板6の上面6aから浮上する。
【0064】
これにより、可動部材48及びフレームユニット21をスムーズに移動させることができるようになる。つまり、可動部材48が第1位置へと戻るのを待つ時間(待機時間)が短縮される。また、保持板6の上面6aからフレームユニット21に作用する摩擦力が実質的にゼロになるので、弾性力の小さい圧縮コイルばね54を用いることができる。
【0065】
また、上述した実施形態では、圧縮コイルばね54を用いて可動部材48に力を付与しているが、板ばね等の他の付勢部材を用いて可動部材48に力を付与することもできる。また、この付勢部材を、任意のアクチュエータ等に置換することも可能である。更に、位置調整機構44は、必ずしも付勢部材やアクチュエータ等を備えなくて良い。この場合には、例えば、オペレータが手動で可動部材48を第1位置へと移動させることができる。
【0066】
その他、上述の実施形態及び変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0067】
2 :洗浄装置
4 :保持テーブル
6 :保持板
6a :上面(保持面)
6b :第1溝
6c :第2溝
6d :流路
12 :第1バルブ
14 :吸引源
16 :第2バルブ
18 :エア供給源
20 :スピンドル
22 :回転駆動源
24 :エアアクチュエータ
26 :押さえ機構
28 :支持アーム
28a :支持軸
30 :押さえ部材
30a :支持部
30b :押さえ部
30c :錘部
32 :洗浄流体供給ノズル
34 :エア供給ノズル
36 :液受け容器
36a :底壁
36b :外周壁
36c :開口部
36d :内周壁
36e :排液口
38 :カバー
40 :ドレーンホース
42 :脚
44 :位置調整機構
46 :支持部材
48 :可動部材
50 :ロッド部
52 :接触部
52a :傾斜面
52b :内側面
54 :圧縮コイルばね(付勢部材)
56 :搬送パッド
11 :ワークピース
11a :表面
11b :裏面
13 :分割予定ライン(ストリート)
15 :デバイス
17 :テープ
19 :フレーム
21 :フレームユニット