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特許7684486微小構造体移載用スタンプ部品、凸型部、移載方法、電気機器の製造方法、電子機器の製造方法、LEDディスプレイの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-19
(45)【発行日】2025-05-27
(54)【発明の名称】微小構造体移載用スタンプ部品、凸型部、移載方法、電気機器の製造方法、電子機器の製造方法、LEDディスプレイの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20250520BHJP
【FI】
H01L21/68 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2024109487
(22)【出願日】2024-07-08
(62)【分割の表示】P 2020214942の分割
【原出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2024124528
(43)【公開日】2024-09-12
【審査請求日】2024-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】中川 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】小川 敬典
(72)【発明者】
【氏名】小材 利之
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-129638(JP,A)
【文献】特開2004-356542(JP,A)
【文献】特開2020-015196(JP,A)
【文献】特開2010-045086(JP,A)
【文献】特開2009-054723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にゴム膜を有する微小構造体移載用スタンプ部品であって、
前記基板と反対側の前記ゴム膜の表面は、一つ以上の凸型部を有し、
前記凸型部は、高さ方向に沿って第一セクション及び第二セクションを有し、
前記第一セクションは、前記ゴム膜と前記第二セクションの間に位置し、
前記第一セクション及び前記第二セクションは錐台であり、
前記第一セクションを構成する錐台における前記基板側の底面は、前記基板側とは反対側の底面よりも大きく、
前記第二セクションを構成する錐台における前記基板側の底面は、前記基板側とは反対側の底面よりも大きい微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項2】
前記錐台は、円錐台又は多角錐台である請求項1記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項3】
前記第一セクションを構成する錐台における前記基板側とは反対側の底面は、前記第二セクションを構成する錐台における前記基板側の底面と実質的に同じ大きさである請求項1記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項4】
前記第一セクションを構成する錐台における前記基板側とは反対側の底面は、前記第二セクションを構成する錐台における前記基板側の底面よりも大きい請求項1記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項5】
前記第一セクションを構成する錐台の側面と前記第二セクションを構成する錐台の側面とが、前記凸型部の内側に凸になるように連結している請求項1記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項6】
前記第一セクションを構成する錐台の側面と前記第二セクションを構成する錐台の側面とが、前記凸型部の外側に凸になるように連結している請求項1記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項7】
前記第二セクションの前記基板側とは反対側に第三セクションを有し、
前記第三セクションは錐台であり、
前記第三セクションを構成する錐台における前記基板側の底面は、前記基板側とは反対側の底面よりも大きい請求項1記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項8】
前記第二セクションを構成する錐台における前記基板側とは反対側の底面は、前記第三セクションを構成する錐台における前記基板側の底面と実質的に同じ大きさである請求項7記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項9】
前記第二セクションを構成する錐台における前記基板側とは反対側の底面は、前記第三セクションを構成する錐台における前記基板側の底面よりも大きい請求項7記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項10】
前記第二セクションを構成する錐台の側面と前記第三セクションを構成する錐台の側面とが、前記凸型部の内側に凸になるように連結している請求項7記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項11】
微小構造体移載用スタンプに設けられる凸型部であり、
二つの錐台が連結した形状を有し、
一方の錐台における面積が小さい方の底面が、他方の錐台における面積が大きい方の底面と連結し、
前記一方の錐台における面積が小さい方の底面は、前記他方の錐台における面積が大きい方の底面と実質的に同じ大きさである凸型部。
【請求項12】
微小構造体移載用スタンプに設けられる凸型部であり、
二つの錐台が連結した形状を有し、
一方の錐台における面積が小さい方の底面が、他方の錐台における面積が大きい方の底面と連結し、
前記一方の錐台における面積が小さい方の底面は、前記他方の錐台における面積が大きい方の底面よりも大きい凸型部。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品を使用して微小構造体を移載することを特徴とする移載方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品を使用して電気素子を移載する工程を有する電気機器の製造方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品を使用して電子素子を移載する工程を有する電子機器の製造方法。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品を使用してLEDを移載する工程を有するLEDディスプレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンプ法により微小構造体を移載するためのスタンプ部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微小化に伴い、半導体素子を用いた電気・電子応用製品の組み立て手段として、スタンプを用いた微小構造体移載技術が注目されている(非特許文献1)。特に、この技術を用いて、一度に一つ、あるいは複数、さらには何万個という大量のミニLED(短辺が100μm以上~数100μmのLED)、あるいは、マイクロLED(短辺が100μm以下、さらには、50μm以下)を移載することにより、サイネージ、TV、医療用、車載、Pad、スマートフォン、スマートウォッチ等のディスプレイ、AR/VRなど用のLEDディスプレイを製造する技術開発が活発になってきている。
【0003】
半導体チップ及び各種電気・電子素子の微小化・薄膜化に伴い、半導体実装や電子機器の組み立てにおいて、従来の真空吸着を用いた素子の移載に代えて、スタンプを用いた微小構造体の移載が使用されようとしている。例えば、各種高機能LSI/ICチップ、微小な抵抗体、キャパシタ、インダクタ、SAWフィルタ素子、加速度センサ等のMEMSチップ等々の多種多彩な微細素子が移載対象物となる。
【0004】
このように、スタンプを用いた微小構造体の移載は、今後我々の生活を豊かに多様化するための機器の製造にはなくてはならない技術と成長してきている。
【0005】
スタンプ法に用いる粘着層には、例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)等のシリコーンを主成分とするゴムスタンプ用いて、大量の素子を供給基板から受け取り基板へ輸送ができることが報告されている(特許文献1)。これをより実用的な形態として、チップ実装装置に適応させ進化させたスタンプ構造が特許文献2において示されている。
【0006】
図20は、従来技術の微小構造体移載用スタンプ部品の一例の構造説明図を示すものである。
図20を用いて、特許文献2に示される従来のスタンプの一例の構造及び特徴について簡単に説明する。図20において、41は石英基板であり、42はシリコーン系ゴム膜である。43はシリコーン系ゴム膜であり、44~48はシリコーン系ゴム膜43の表面に設けられたシリコーン系ゴム膜からなる凸型部である。
【0007】
図20(a)は、石英基板41上にシリコーン系ゴム膜42が形成された平板スタンプ200であり、複数あるいは大量の微小構造体を一気に移載するのに用いられる。図20(b)~(f)は、石英基板41上にシリコーン系ゴム膜43が形成されている。シリコーン系ゴム膜43の石英基板41と反対側の表面には凸型部44~48が設けられている。これらの凸型部を備えたスタンプ200は、1個乃至複数個の移載対象物を移載する際に使用される。
【0008】
移載対象物は、シリコーン系ゴム膜42の表面、または、凸型部44~48の凸形部最上部の表面に、シリコーン系ゴムの有する感圧接着力により仮接着し、所定の位置に移動し配置先に接触させた後、移載対象物からシリコーン系ゴム表面を引きはがし、所定位置に配置される。例えば、所定配置先表面にシリコーン系ゴム膜表面の仮接着力よりも強い接着力を持つ樹脂等を配置しておくことにより、所定配置先表面で移載対象物を受け取り、移載対象物からシリコーン系ゴム膜42の表面、または、凸型部44~48の凸形部最上部の表面を引き剥がすことができる。その際、移載能力を決定付けるシリコーン系ゴム膜表面の仮接着力は主に感圧接着力であり、シリコーン系ゴム膜の固さ、表面粘着力、タック力等に依存するため、移載対象物の大きさ、表面モホロジー、重さ等の特徴、あるいは、移載装置の移載速度・加速度等のプロセス条件からくる要求に適合するようにシリコーン系ゴム膜の物性を調整・最適化しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第7943491号明細書
【文献】特開2020-129638号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】Matthew A. Meitl, Zheng-Tao Zhu, Vipan Kumar, Keon Jae Lee, Xue Feng, Yonggang Y. Huang, Ilesanmi Adesida, Ralph G. Nuzzo & John A. Rogers,”Transfer printing by kinetic control of adhesion to an elastomeric stamp”, Nature Materials Volume 5, 33-38 (2006).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記のような構成では、シリコーン系ゴム膜スタンプ表面の仮接着力を最適化するに際し、移載対象物や移載条件から要求を満たすシリコーン系ゴム膜の物性調整の最適化は非常に困難であり、多くの時間を要するという問題を有していた。また、最適化できない場合も生じていた。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、シリコーン系ゴム膜スタンプ表面の仮接着力を短時間で最適化できる微小構造体移載用スタンプ部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の発明では、基板上にシリコーン系ゴム膜が形成されており、前記基板と反対側の前記シリコーン系ゴム膜表面が、表面開口部以外が閉じた凹部を一つ以上有しているものであることを特徴とする微小構造体移載用スタンプ部品を提供する。
【0014】
このようにすると、求められる仮接着力よりも大きな感圧接着力のシリコーン系ゴム膜を用い、その表面に一つ以上の閉じた凹部を形成することにより、移載対象物である微小構造体とシリコーン系ゴム膜とが接触する表面積を少なくする方向に調整することができる。その結果、シリコーン系ゴム膜の物性を変えるための合成上最適化による感圧接着力(シリコーン系ゴムの固さ、表面粘着力、タック力等に依存)の微妙な最適化を実施する必要がなくなり、前記閉じた凹部の形状、開口面積(大きさと数)、レイアウトを最適化するデザイン変更により微小構造体と接する表面の仮接着力を最適化することが可能となる。すなわち、本発明の第1の発明によれば、シリコーン系ゴム膜スタンプ表面の仮接着力を短時間で最適化できる微小構造体移載用スタンプ部品を提供することができる。また、本発明のスタンプ部品を用いると、一つの微小構造体だけでなく、複数または多数の微小構造体を一気に移載することができる。
【0015】
また、このようにすると、微小構造体と前記閉じた凹部を含むシリコーン系ゴム膜表面が仮接着した際に、閉じた凹部が閉空間になる。仮接着する際に最適化された押し込み量で圧着されるため、仮接着した段階で前記閉じた凹部の閉空間は減圧状態になる。その結果、凹空間容積が小さな場合には微弱ではあるが微小構造体に吸引力が働くため、接着状態を安定化させることができる。
【0016】
前記閉じた凹部の表面開口部形状は、例えば、円形、楕円形、環、及び多角形からなる群より選択される形状とすることができる。
【0017】
閉じた凹部の表面開口部形状は、閉じた形状であれば任意の形状であって良い。
【0018】
前記閉じた凹部の深さが前記基板まで到達していないものであるとよい。
【0019】
このようにすると、前記シリコーン系ゴム膜と基板とが全面で接着固定されているため、耐久性が向上する。その結果、本発明のスタンプ部品の交換頻度を減らすことができるため、微小構造体移載の生産性を向上することができる。
【0020】
前記シリコーン系ゴム膜表面に、複数の前記閉じた凹部がマトリクス状に配置されていてもよい。
【0021】
このようにすると、微小構造体と前記閉じた凹部を含むシリコーン系ゴム表面の仮接着面内を均一な力で接着保持できる。
【0022】
前記シリコーン系ゴム膜表面に、複数の前記閉じた凹部が幾何学模様状に配置されていてもよい。
【0023】
このようにすると、被着体である微細構造体の仮接着面の形状に合わせて最適なレイアウトの閉じた凹部を形成することができる。
【0024】
前記シリコーン系ゴム膜表面の前記閉じた凹部以外の部分が格子状模様となっていてもよい。
【0025】
このようにすると、大きな凹部表面開口部を形成できるため、非常に強力な感圧接着力、若しくは、特に非常に強い粘着力を持つシリコーン系ゴムを用いた場合にも、凹部の開口面積(大きさと数)の最適化により、所望とされる比較的弱い仮接着力を発現するように最適化できる。
【0026】
前記シリコーン系ゴム膜表面の前記閉じた凹部以外の部分がハニカム構造の断面模様となっていてもよい。
【0027】
この場合も、格子模様と同様に、微小構造体と仮接着する面が規則正しいレイアウトになっているため、微小構造体の仮接着面に均一に仮接着力が発生する。その結果、安定な移載動作を提供できる。
【0028】
前記シリコーン系ゴム膜表面において、前記閉じた凹部が少なくとも環状形状の凹部を含んでもよい。
【0029】
このようにすると、正方形や円形等の対称性の良い面を持った微小構造体を仮接着する場合に、安定した仮接着力を発揮することができる。
【0030】
前記閉じた凹部が、表面開口部面積が互いに異なる第1の閉じた凹部及び第2の閉じた凹部を含み、前記第2の閉じた凹部の表面開口部面積が、前記第1の閉じた凹部の表面開口部面積よりも小さいものとすることができる。
【0031】
このようにすると、前記第1の閉じた凹部と該第1の閉じた凹部よりも小さな表面開口部面積を有する第2の閉じた凹部との両方で、微小構造体との接着面積を制御できる。すなわち、比較的大きな前記第1の閉じた凹部で大まかに接着力を調整し、前記第1の閉じた凹部よりも小さな表面開口部面積を有する第2の閉じた凹部により接着面積及び接着力を微調整することができる。また、前記第1の閉じた凹部よりも小さな表面開口部面積を有する第2の閉じた凹部の開口深さが微小な場合、前記第1の閉じた凹部よりも小さな表面開口部面積を有する前記第2の閉じた凹部と微小構造体との接着面により形成される閉空間で、上記閉じた凹部の表面開口部形状で述べたように、微弱ではあるが微小構造体に吸引力が働くため、接着状態を安定化させることができる。
【0032】
また、本発明の第2の発明では、基板上にシリコーン系ゴム膜が形成されており、前記基板と反対側のシリコーン系ゴム膜表面に一つ以上の凸型部が形成されており、前記凸型部表面が、表面開口部以外が閉じた凹部を一つ以上有しているものであることを特徴とする微小構造体移載用スタンプ部品を提供する。
【0033】
このようにすると、凸型部表面に設けられた閉じた凹部の形状、開口面積(大きさと数)、レイアウトを最適化することにより、微小構造体と接する凸型部が設けられたシリコーン系ゴム膜表面の仮接着力を最適化できる。すなわち、本発明の第2の発明によれば、シリコーン系ゴム膜スタンプ表面の仮接着力を短時間で最適化できる微小構造体移載用スタンプ部品を提供することができる。また、本発明のスタンプ部品を用いると、多くの微小構造体が密集して配置されている供給部から、隣の微小構造体と接触することなく選択的に一個乃至多数の微小構造体を特定の領域から取り出すことができる。
【0034】
また、このようにすると、微小構造体と前記閉じた凹部を含む凸型部表面が仮接着した際に閉じた凹部が閉空間になる。仮接着する際に最適化された押し込み量で圧着されるため、仮接着した段階で前記閉じた凹部の閉空間は減圧状態になる。その結果、凹空間容積が小さな場合には微弱ではあるが微小構造体に吸引力が働くため、接着状態を安定化させることができる。
【0035】
前記凸型部が二段以上の凸型形状突起を含み、前記二段以上の凸型形状突起の最上段表面が前記閉じた凹部を一つ以上有していてもよい。
【0036】
このようにすると、二段以上の凸型形状突起の最上段表面に設けられた閉じた凹部の形状、開口面積(大きさと数)、レイアウトを最適化することによって、微小構造体と接する二段以上の凸型形状突起の最上段表面のシリコーン系ゴム膜表面の仮接着力を最適化できる。また、このようなスタンプ部品を用いると、さらに小さな微小構造体に対して、多くの微小構造体が密集して配置されている供給部から、隣の微小構造体と接触することなく選択的に一個乃至特定の領域の微小構造体を取り出すことができる。
【0037】
前記閉じた凹部が曲率をもった底面を有しているものであるとよい。
【0038】
このようにすると、閉じた凹部の底面全体が微小構造体と仮接着し、閉じた凹部全面が真空状態になる。その結果、閉じた凹部の形状復元力が接着面の吸着力を発現するため、シリコーン系ゴム膜の粘着力が弱い場合でも微小構造体を仮接着することが可能となる。なお、シリコーン系ゴム膜の粘着力が強い場合には、前記凸型部の接着面積を小さくすれば、容易に調整できる。
【0039】
例えば、閉じた凹部の前記底面が、球面又は非球面であってもよい。
【0040】
このようにすると、小さな変形で微小構造体と前記凸型部表面に形成された閉じた凹部底面とが仮接着できる。
【0041】
例えば、前記閉じた凹部の表面開口部形状が、円又は楕円であってもよい。
【0042】
このようにすると、閉じた凹部底面形状を球面の表面の一部または楕円の表面一部の形状とすることができる。
【0043】
前記閉じた凹部の表面開口部形状が多角形である場合、前記多角形の頂点部分が円弧形状になっているとよい。
【0044】
このようにすると、頂点部の角度の変曲点をなくすことができるため、微小構造体の表面と前記凸型部表面に形成された閉じた凹部底面との接着時に、真空保持能力が向上する。
【0045】
前記シリコーン系ゴム膜表面に複数の前記凸型部が形成されており、前記複数の凸型部が、X方向及びY方向にそれぞれ一定のピッチでマトリクス状に配置されているとよい。
【0046】
例えば電気電子機器、若しくは、3Dパッケージのような場合であれば、規則性を有するレイアウトへの微小構造体移載を同時に一括して行うことができる。また、マイクロLEDディスプレイの場合であれば、ディスプレイの表示画素ピッチでマトリクスを構成しておくことで、一気にバックプレーン基板にマイクロLEDを移載配置することができる。このように、予め定められた所望のピッチでマトリクス状に微小構造体を配置する場合に極めて有用となる。
【0047】
前記凸型部が、円柱形状、多角柱形状若しくは錐台状、又はそれらの組合せの多段形状であるとよい。
【0048】
前記マトリクスのピッチが小さくなってくると、隣の微小構造体に干渉することがないように凸型部を小さく作る必要が生じる。この場合、凸型部の機械的強度が低下するという問題が生じる。凸型部の高さを低くすることなく凸型部の機械的強度を強化するためには、高さは同じでも、突起の大きさ(幅、太さ)を段階的に小さくすることで解決できる。その際、凸型部は柱状形状又は錐台状を組み合わせることで実現できる。
【0049】
前記凸型部の高さ方向の断面形状が、該凸型部の内側に凸の形状であるとよい。
【0050】
凸型部の高さ方向の断面形状、すなわち、基板に垂直な面の断面プロファイルが凸型部の内側に凸の形状であると、隣のチップとの干渉を避けやすい。比較的大きな凸型部の場合に向いている。
【0051】
或いは、前記凸型部の高さ方向の断面形状が、該凸型部の外側に凸の形状であってもよい。
【0052】
この場合には、比較的小さな凸型形状突起の場合に、凸型形状突起の機械強度を得るのに有効である。
【0053】
前記基板と前記シリコーン系ゴム膜との間に導電性膜が形成されているものであるとよい。
【0054】
このようにすると、本発明のスタンプ部品を用いて微小構造体の移載動作を行う際に、導電性膜がない場合に比べて、移載機内で発生するゴミなどのパーティクルの帯電吸着を抑制することができる。
【0055】
或いは、前記シリコーン系ゴム膜が導電性膜であるとさらによい。
【0056】
このようにすると、余分な導電性膜を形成する工程を省くことができる上に、移載機内で発生するゴミなどのパーティクルの帯電吸着を抑制することができる。
【0057】
例えば、前記基板は石英基板であってよい。
【0058】
前記石英基板が合成石英基板であるとさらによい。
【0059】
合成石英基板を用いると基板の平坦性が飛躍的に向上するため、前記シリコーン系ゴム膜の表面平坦性が大きく向上する。その結果、微小構造体移載装置の移載性能が飛躍的に向上する。
【0060】
或いは、前記基板がサファイア基板であってもよい。
【0061】
このようにすると、石英(合成石英を含む)基板よりも機械強度が高いため、耐久性に優れた微小構造体移載用スタンプ部品を提供することができる。
【0062】
或いは、前記基板がシリコンウエハ若しくはシリコンウエハ片であってもよい。
【0063】
このようにすると、合成石英基板よりさらに平坦性に優れた微小構造体移載用スタンプ部品を提供することができる。
【発明の効果】
【0064】
以上のように、本発明の第1の発明である微小構造体移載用スタンプ部品は、基板上にシリコーン系ゴム膜が形成されており、前記基板と反対側の前記シリコーン系ゴム膜表面が、表面開口部以外が閉じた凹部を一つ以上有していることにより、シリコーン系ゴム膜の接着力(粘着力とタック力)を、膜組成により調整するだけでなく、閉じた凹部の開口面積(大きさと数)とパタンレイアウトを調整することにより、調整及び最適化することができる。すなわち、本発明の第1の発明によれば、シリコーン系ゴム膜スタンプ表面の仮接着力を短時間で最適化できる微小構造体移載用スタンプ部品を提供することができる。また、表面開口部以外が閉じた凹部を一つ以上有することで、スタンプの仮接着力の制御因子として閉じた凹部の減圧による吸引力も利用することができる。
【0065】
本発明の第2の発明である微小構造体移載用スタンプ部品は、基板上にシリコーン系ゴム膜が形成されており、前記基板と反対側のシリコーン系ゴム膜表面に一つ以上の凸型部が形成されており、前記凸型部表面が、表面開口部以外が閉じた凹部を一つ以上有していることにより、一つ以上の凸型部で微小構造体を仮接着して移載することができる。凸型部が一つの場合には、リペアを行う際に有用となる。一方、多数の微小構造体を多数の凸型部で一気に移載することも可能となる。また、多数の微小構造体をそれぞれ一つの凸型部で一気に移載することもできる。さらに、凸型部を移載先の所望のパタンレイアウト、例えばディスプレイの場合であれば画素ピッチでマトリックス状にレイアウトしておくことにより、所望のパタンレイアウトへの一括移載が可能になる。
【0066】
なお、シリコーン系ゴム膜からなる凸型部表面において膜組成に由来する接着力(粘着力とタック力)、閉じた凹部の面積(大きさと数)を調整することにより、仮接着力を調整・最適化することができる。すなわち、本発明の第2の発明によれば、シリコーン系ゴム膜スタンプ表面の仮接着力を短時間で最適化できる微小構造体移載用スタンプ部品を提供することができる。また、本発明の微小構造体移載用スタンプ部品は、微小構造体が密に配置されている場合や、供給基板側の微小構造体を何個か飛びに移載する場合に力を発揮する。
【0067】
本発明の第2の発明の一実施形態である微小構造体移載用スタンプ部品は、前記凸型部が二段以上の凸型形状突起を含み、前記二段以上の凸型形状突起の最上段表面が前記閉じた凹部を一つ以上有していることにより、微小構造体のサイズが100μmオーダ、さらには10μmオーダの場合にも移載に必要な凸型部の機械強度と移載動作時の耐久性を提供することができる。
【0068】
本発明の第2の発明の他の一実施形態である微小構造体移載用スタンプ部品は、前記閉じた凹部が曲率をもった底面を有していることにより、微小構造体を仮接着した際、閉じた凹部底面を隙間なく微小構造体の接着面に接着させることができる。その結果、閉じた凹部での吸着力が最大限得られるため、吸着面は小さくともシリコーン系ゴム膜の接着力に加え大きな仮接着力を発生させることができる。
【0069】
このように、微小構造体と仮接着するシリコーン系ゴム膜表面又は凸型部表面に閉じた凹部を設けることにより、シリコーン系ゴム膜の組成・物性だけでなく、閉じた凹部の形状、開口面積(大きさと数)、レイアウト及び閉じた凹部の吸着力を調整することにより、一つのシリコーン系ゴム膜における接着力の調整ウインドウを著しく向上させることができる。その結果、産業上の生産性向上に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明の第1実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の一例の構造説明図である。
図2】本発明の第1実施形態における微小構造体移載用スタンプ部品の一例の閉じた凹部の効果説明図である。
図3】本発明の第1実施形態における微小構造体移載用スタンプ部品の他の例の構造説明図である。
図4】本発明の第1実施形態における微小構造体移載用スタンプ部品の他の例の構造説明図である。
図5】本発明の第2実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の一例の構造説明図である。
図6】本発明の第2実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の他の例の構造説明図である。
図7】本発明の第2実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の他の例の構造説明図である。
図8】本発明の第3実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の構造説明図である。
図9】本発明の第4実施の形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の構造説明図である。
図10】本発明の第5実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の構造説明図である。
図11】本発明の第6実施の形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の構造説明図である。
図12】本発明の第7実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の構造説明図である。
図13】本発明の第8実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の構造説明図である。
図14】本発明の第9実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の構造説明図である。
図15】本発明の第10実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の構造説明図である。
図16】本発明の第11実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の構造説明図及び動作説明図である。
図17】本発明の第12実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の構造説明図である。
図18】本発明の第13実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の構造説明図である。
図19】本発明の第14の実施の形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の構造説明図である。
図20】従来技術の微小構造体移載用スタンプ部品の一例の構造説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
上述のように、シリコーン系ゴム膜スタンプ表面の仮接着力を短時間で最適化できる微小構造体移載用スタンプ部品の開発が求められていた。
【0072】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、微小構造体と仮接着するシリコーン系ゴム膜表面又は凸型部表面に閉じた凹部を設けることにより、シリコーン系ゴム膜の組成・物性だけでなく閉じた凹部の形状、開口面積(大きさと数)、レイアウト及び閉じた凹部の吸着力を調整することにより、一つのシリコーン系ゴム膜における接着力の調整ウインドウを著しく向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0073】
即ち、本発明は、基板上にシリコーン系ゴム膜が形成されており、前記基板と反対側の前記シリコーン系ゴム膜表面が、表面開口部以外が閉じた凹部を一つ以上有しているものであることを特徴とする微小構造体移載用スタンプ部品である。
【0074】
また、本発明は、基板上にシリコーン系ゴム膜が形成されており、前記基板と反対側のシリコーン系ゴム膜表面に一つ以上の凸型部が形成されており、前記凸型部表面が、表面開口部以外が閉じた凹部を一つ以上有しているものであることを特徴とする微小構造体移載用スタンプ部品である。
【0075】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の一例の構造説明図を示すものである。図1(a)は微小構造体移載用スタンプ部品100の断面図であり、同図(b)は微小構造体移載用スタンプ部品100の上面図である。断面図(a)は上面図(b)のP-Q間の断面構造を示している。図1において、1は基板(例えば石英基板)、2はシリコーン系ゴム膜であり、3はシリコーン系ゴム膜2の表面(基板1と反対側のシリコーン系ゴム膜表面)2aに形成された閉じた凹部を示している。図1に示すように、閉じた凹部3は、表面開口部3a以外が閉じている。また、図1(b)に示すように、シリコーン系ゴム膜表面2aに、複数の閉じた凹部3がマトリクス状に配置されている。
【0077】
図1(b)において、閉じた凹部3の表面開口部形状は正方形の場合が例示されている。閉じた凹部3の表面開口部形状は、正方形に限らず、円形、楕円形、環、又は三角形、長方形(矩形)、六角形等の多角形のように閉じた形状をしていればよい。
【0078】
図2は、本発明の第1実施形態における微小構造体移載用スタンプ部品の一例の閉じた凹部の効果説明図を示すものである。図2において、(a)はこの例の微小構造体移載用スタンプ部品100のみの下面図、(b)と(c)は断面図を示している。断面図(b)、(c)は、下面図(a)のP-Q部の断面を示しており、微小構造体4がシリコーン系ゴム膜表面2aに仮接着した状態を示している。図2(b)は、シリコーン系ゴム膜2の表面2aよりも小さい表面を持つ微小構造体4の場合、図2(c)は、シリコーン系ゴム膜2の表面2aよりも大きい表面を持つ微小構造体4の場合を図示している。図2に示す微小構造体移載用スタンプ部品100は、図1に示した微小構造体移載用スタンプ部品100と同様である。
【0079】
図2(b)を用いて、閉じた凹部3の効果について説明する。シリコーン系ゴム膜2と微小構造体4との接着面積をS、閉じた凹部3の表面積の合計をAとすると、実質の仮接着面積は(S-A)となる。一般にシリコーン系ゴム膜の場合、仮接着力は主に粘着力と感圧接着力が起源となる。すなわち、仮接着力は、シリコーン系ゴム膜2の表面2aの粘着力と微小構造体4とシリコーン系ゴム膜2を圧着した際のシリコーン系ゴム表面2aの変位量に依存して発生するタック力の合計になる。仮接着力が発生するのは、シリコーン系ゴム膜2と微小構造体4との仮接着面であるため、仮接着力は仮接着面積Sに大きく依存する。
【0080】
なお、図2においては、閉じた凹部3の効果について説明するため、一つの微小構造体4を移載する場合を例示しているが、多数の微小構造体を一度に移載する場合も同様の仮接着面積の効果を考慮に入れて閉じた凹部の形状、開口面積(大きさと数)、レイアウトを調整することで仮接着力を調整することができる。
【0081】
図3は、本発明の第1実施形態における微小構造体移載用スタンプ部品の他の例における閉じた凹部の構造説明図を示すものである。図3(a)はこの例の微小構造体移載用スタンプ部品100の断面図であり、図3(b)は上面図である。断面図(a)は上面図(b)のP-Q間の断面構造を示している。図2との違いは、閉じた凹部3のレイアウトであり、図3では、閉じた凹部3のマトリクス状パタンが図2の場合から45度回転してレイアウトされている。
【0082】
図4は、本発明の第1実施形態における微小構造体移載用スタンプ部品の他の例における閉じた凹部の構造説明図を示すものである。図4(a)はこの例の微小構造体移載用スタンプ部品100の断面図であり、図4(b)は上面図である。断面図(a)は上面図(b)のP-Q間の断面構造を示している。図2との違いは、表面開口部形状が円形である複数の閉じた凹部5がシリコーン系ゴム膜表面2a上に形成されていること、及び閉じた凹部5のレイアウトであり、図4では、同心六角形模様の上に閉じた凹部5がレイアウトしている。このように閉じた凹部5を幾何学的模様状にレイアウト(配置)することにより、いくつかの対称性を持った規則パタンレイアウトを構築することができる。
【0083】
本発明では、微小構造体と前記閉じた凹部を含むシリコーン系ゴム表面とが仮接着した際に閉じた凹部が閉空間になる。仮接着する際に最適化された押し込み量で圧着されるため、仮接着した段階で前記閉じた凹部の閉空間は減圧状態になる。その結果、凹空間容積が小さな場合には微弱ではあるが微小構造体に吸引力が働くため、接着状態を安定化させることができる。
【0084】
また、例えば図1~4に示した例のように、閉じた凹部の深さが前記基板まで到達していないものであることが好ましい。
【0085】
このようにすると、前記シリコーン系ゴム膜と基板とが全面で接着固定されているため、耐久性が向上する。その結果、本発明のスタンプ部品の交換頻度を減らすことができるため、微小構造体移載の生産性を向上することができる。
【0086】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について図面を参照しながら説明する。
図5は、本発明の第2実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100の一例の構造説明図を示すものである。図5(a)は断面図であり、図5(b)は上面図を示している。
【0087】
第1実施形態との違いは、閉じた凹部6の表面開口部6aのサイズが比較的大きいことである。このような場合、閉じた凹部6ではなく、シリコーン系ゴム膜2の表面2aの閉じた凹部6以外の部分2bを見ると、図5(b)に示すように、前記シリコーン系ゴム膜表面2aの残った部分2bは格子状模様になっている。このように閉じた凹部6の総開口面積の大きなスタンプ部品100の構造は、閉じた凹部6を有しない場合の最適値よりも強力な感圧接着力、若しくは、粘着力を持つシリコーン系ゴム膜2を用いた場合に向いている。この場合、閉じた凹部6の開口面積(大きさと数)の最適化により、所望とされる仮接着力を発現するように容易に最適化できる。言い換えると、強い感圧接着力若しくは強い粘着力を持ったシリコーン系ゴム膜2を用いた場合でも、本発明の第2実施形態を用いれば、かなり大きなレンジでシリコーン系ゴム膜2の仮接着力を調整できる。
【0088】
図6は、本発明の第2実施の形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100の他の例の構造説明図を示すものである。図6(a)は断面図であり、図6(b)は上面図を示している。図5の場合と異なる点は、図5における閉じた凹部6の表面開口部形状が正方形であるのに対し、図6における閉じた凹部7の表面開口部形状が長方形である点である。このような形状の変更により、閉じた凹部の総面積を調整することもできる。
【0089】
図7は、本発明の第2実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100の他の例の構造説明図を示すものである。図7(a)は断面図であり、図7(b)は上面図を示している。図7の閉じた凹部8のパタンレイアウトは、図6の閉じた凹部7のパタンをすべてθだけ回転したものであり、格子状模様の一種である。さらにθを大きくしていくと閉じた凹部が繋がった形のレイアウトパタン模様、すなわち、ジグザグ(ZIG-ZAG)模様及び横一文字の凹部を作ることができる。よって、これらのレイアウトパタン模様は、格子模様の派生レイアウトということができる。
【0090】
なお、図5図7において、断面図(a)は上面図(b)のP-Q間の断面構造を示している。
【0091】
本発明の第2実施形態のような格子状模様の凹部パタンレイアウトの場合でも、シリコーン系ゴム膜が仮接着した状態では閉じた凹部と微小構造体との間は閉空間になる。パタンサイズが大きい場合やパタン深さが深い場合には前記閉空間の容積が大きな場合には微小構造体に対する吸引効果が小さいが、パタンサイズを小さくしていくと前記閉空間の容積が小さくなるため、微小構造体に対する吸引効果が期待できる。
【0092】
シリコーン系ゴム膜表面の閉じた凹部以外の部分は、ハニカム構造の断面模様となっていてもよい。
【0093】
この場合も、格子模様と同様に、微小構造体と仮接着する面が規則正しいレイアウトになっているため、微小構造体の仮接着面に均一に仮接着力が発生する。その結果、安定な移載動作を提供できる。
【0094】
以上のように、微小構造体と前記凹部を含むシリコーン系ゴム表面とが仮接着した際に閉じた凹部の面積が小さく、かつ、容積の小さな閉空間が形成されると、仮接着する際に最適化された押し込み量で圧着される際に前記閉じた凹部の閉空間が減圧状態になることにより微小構造体に吸引力が働く。これら一つの閉じた凹部で発生する力は弱いが、その数が極めて多い場合には大きな力となり得る。そのため、閉じた凹部を設けて感圧接着力を弱める効果と閉じた凹部の吸引力により接着力を強める効果の両方を制御することが可能となる。また、閉じた凹部の吸引力は接着状態を安定化させる効果も生み出す。
【0095】
本発明の第2実施形態のスタンプ部品はあらゆるサイズの微小構造体移載に適用可能であるが、特に、スタンプとなるシリコーン系ゴム膜の大きさと同じか、より大きな微小構造体を移送するのに適している。例えば、半導体LSIのような比較的大きな薄膜チップを実装する場合に向いている。
【0096】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100の構造説明図を示すものである。図8(a)は断面図であり、図8(b)は上面図を示している。断面図(a)は上面図(b)のP-Q間の断面構造を示している。
【0097】
図8において、9は、表面開口部形状が環状の閉じた凹部であり、同心円上の輪帯状凹部である。輪帯状(環状形状)の閉じた凹部9は、一つ以上あればよい。本実施形態の重要な点は、凹部9が表面開口部以外閉じているということである。閉じた凹部9の輪帯幅が小さな場合には凹部9での吸引力が期待できる。その効果をさらに高めるためには閉じた凹部9の深さの最適化も重要である。つまり、凹部の体積減少が吸引力の発生につながる程度の深さにしておくことが重要である。
【0098】
なお、図8には、中心部に表面開口部形状が円状の閉じた凹部3が描かれているが、本発明の実施形態において、前記中心部の円状凹部はあってもよいし、なくてもよい。
【0099】
(第4実施形態)
図9は、本発明の第4実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100の構造説明図を示すものである。
【0100】
図9(a)及び(b)において、6及び9はシリコーン系ゴム膜2の表面2aに設けられた第1の閉じた凹部である。11は第2の凹部であり、シリコーン系ゴム膜表面2aの前記第1の閉じた凹部6又は9以外の部分に設けられた、前記第1の閉じた凹部6又は9よりも小さな口径(表面開口部面積)を有する凹部を示している。第2の凹部11も、表面開口部以外が閉じた凹部である。本発明の実施形態においては、例えば第1の閉じた凹部で大まかに仮接着力を調整し、第2の閉じた凹部により仮接着力を微調整することが可能となる。
【0101】
図9(c)は、本発明の第4実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の変形例の構造説明図である。
【0102】
図9(c)において、11aは、図9(a)及び(b)に示した第2の凹部11と同様の、シリコーンゴム系ゴム膜表面2aに設けられた、表面開口部以外が閉じた凹部である。また、図9(c)において、10は、シリコーン系ゴム膜表面2aの閉じた凹部11a以外の部分に設けられた、溝状の凹部を示している。図9(c)においては、凹部10の溝の方向が、シリコーンゴム系ゴム膜2の1つの辺に対してθ度だけ回転した状態を示している。θの値は、0度~360度の任意の角度でよい。また、凹部10の内部の形状は、波打っていてもよいし、ジグザグでもよく、どのようなレイアウト形状であっても良い。
【0103】
(第5実施形態)
図10は、本発明の第5実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100の構造説明図を示すものである。図10(a)は断面図であり、図10(b)及び(c)は上面図を示している。断面図(a)は上面図(b)のP-Q間の断面構造を示している。図10(c)は、図10(b)の一部の拡大図である。
【0104】
図10において、12はシリコーン系ゴム膜2の表面2aに設けられた凸型部である。凸型部12は、シリコーン系ゴム膜2と同じシリコーン系ゴム膜からなる。13は凸型部表面12aに設けられた閉じた凹部である。図10(c)に示すように、閉じた凹部13は、表面開口部13a以外が閉じている。
【0105】
図10に示されるように、凸型部12を一つだけ備えた微小構造体移載用スタンプ部品100は、ミリメートル・オーダ、100μmオーダ、さらには10μmオーダのような将に小さな微小構造体一つを移載するのに有用である。その場合、凸型部12の表面12a、すなわち、接着面のサイズは、微小構造体の大きさとおよそ同程度に形成しておけばよい。微小構造体の大きさよりも多少大きくしておくとより好ましい。それにより、微小構造体の周辺部の粘着力を安定化できる。移載装置の位置精度にも依存するけれども、10μmから100μmの微小構造体の場合には、凸型部12の表面12aのサイズを移載装置の位置精度誤差を吸収する程度さらに大きく形成しておくことが好ましい。
【0106】
本実施形態のスタンプを用いると、凸型部表面12aに設けられた閉じた凹部13の大きさ(開口面積、深さ)、数、レイアウトにより、実際に微小構造体と接着する凸型部12の仮接着力を最適化できる。
【0107】
なお、この場合、凸型部表面12aに形成された閉じた凹部13により吸引力が発生するように閉じた凹部13を調整することで、微小構造体の接着面と凸型部表面12aとの仮接着の安定性を向上させることができる。
【0108】
また、本実施形態の微小構造体移送用スタンプ部品100を用いると、多くの微小構造体が密集して配置されている供給部から、隣の微小構造体と接触することなく選択的に一個乃至特定の領域の微小構造体を取り出すことができ、供給側に対してはより密接した位置に配置することが可能となる。
【0109】
本発明の第5実施形態の1つの凸型部12を有する微小構造体移送用スタンプ部品100は、微小構造体を1個ずつ移載する場合に有用であり、特に、リペアに用いる場合には必須である。
【0110】
(第6実施形態)
図11は、本発明の第6実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100の構造説明図を示すものである。図11(a)、(e)及び(f)は断面図であり、図11(b)~(d)は上面図を示している。断面図(a)は上面図(b)のP-Q間の断面構造を示している。図11(c)及び(d)は、図11(b)のそれぞれ別の部分の拡大図である。図11(e)は、図11(c)のR-S間の断面構造を示している。図11(f)は、図11(d)のR’-S’間の断面構造を示している。
【0111】
図11において、14はシリコーン系ゴム膜2の表面2aに設けられた凸型部であり、2個以上設けられた場合を示している。また、凸型部14は、シリコーン系ゴム膜2と同じシリコーン系ゴム膜からなる。15は、凸型部14の表面14aに設けられた閉じた凹部である。図11(c)及び(d)に示すように、閉じた凹部15は、表面開口部15a以外が閉じている。
【0112】
図11(c)及び(e)は、閉じた凹部15が凸型部14上に1個設けられている場合の事例を示している。これに対して、図11(d)及び(f)は、閉じた凹部15が凸型部14上に2個以上設けられている事例を示している。図11(c)及び(d)のいずれの場合も、凸型部14の大きさと数、および、閉じた凹部15の大きさと数を最適化設計することにより、容易に仮接着力を調整することができる。
【0113】
図11の説明図においては、物理的に図示することが簡単でないため、49個(7×7マトリックス)の凸型部14を図示しているが、一個一個を微細化して、数千個あるいは数万個の凸型部14を備えたスタンプ部品100を形成すると、必然的に凸型部14のサイズ及び間隔はミクロンオーダのサイズになる。ミクロンオーダの凸型部14の表面14aに設けられる閉じた凹部15のサイズも当然凸型部14のスケールよりも小さくなることが容易に推考される。このように構成されたスタンプを使用すれば、多くの微小構造体を一気に移載する場合にも閉じた凹部15の吸着力を大いに活用することができ、安定な移載が実現される。
【0114】
(第7実施形態)
図12は、本発明の第7実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100の構造説明図を示すものである。図12(a)は、第1例の微小構造体移載用スタンプ部品100の断面構造を示し、図12(b)は、図12(a)に示す凸型部12の上面図である。図12(c)は、第2例の微小構造体移載用スタンプ部品100の断面構造を示し、図12(d)は、図12(c)に示す凸型部12の上面図である。
【0115】
図12において、16はシリコーン系ゴム膜2の表面に設けられた第1の凸型形状突起であり、17は第1の凸型形状突起16の上に設けられた第2の凸型形状突起である。図12に示す凸型部12は、第1の凸型形状突起16と、最上段の第2の凸型形状突起17とを含んでいる。すなわち、図12に示す凸型部12は、2段階の凸型形状を有する突起構造(2段凸型形状突起)となっている。第1の凸型形状突起16及び第2の凸型形状突起17は、シリコーン系ゴム膜2と同じシリコーン系ゴム膜からなる。18は第2の凸型形状突起17の表面に設けられた閉じた凹部である。
【0116】
図12(a)及び(b)に示す第1例では、シリコーン系ゴム膜2の表面2aに第1の凸型形状突起16が設けられ、この凸型形状突起16の上に第2の凸型形状突起17が設けられた、2段階の凸型部12が1個形成された構造になっている。一方、図12(c)及び(d)は、2段階の凸型部12において、1つの第1の凸型形状突起16上に、第2の凸型形状突起17が3×3マトリックス状に形成されている場合を示している。
【0117】
第5実施形態で示したように、図10に示した凸型部12を1個有するスタンプ部品100を用いると、多くの微小構造体が密集して配置されている供給部から、隣の微小構造体と接触することなく選択的に一個乃至特定の領域の微小構造体を取り出すことができ、供給側に対してはより密接した位置に配置することが可能となる。しかしながら、微小構造体のサイズが100μmオーダ、さらには10μmオーダになってくると、スタンプ部品の凸型部の接着面の大きさも微小構造体とほぼ同程度にする必要がある。例えば50μmの接着面を持つ凸型部の高さは、隣接する微小構造体との緩衝を避けるため、接着面の50μmあるいはその倍以上の高さが必要となる場合が出てくる。このような場合、スタンプの押し込み時に凸型部が繰り返し使用により曲がる、折れるといった破損が生じやすくなる。このような場合に対応するには、本第7実施形態に示すような、2段階凸型部構造を用いることにより、強度と耐久性を向上させることができる。
【0118】
なお、本実施形態のような凸型形状突起を有する微小構造体移載用スタンプ部品は、微小構造体が密に配置されている場合や、供給基板側の微小構造体を何個か飛びに移載する場合に力を発揮する。
【0119】
図12(c)及び(d)に示すように、耐久性の課題発生の要因となる第2の突型形状突起17を2つ以上かつ比較的少数備えた構造にすることによっても、スタンプの耐久性を向上させることができる。
【0120】
(第8実施形態)
図13は、本発明の第8実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100の構造説明図を示すものである。図13において、19はシリコーン系ゴム膜2の表面2aに形成された凸型部であり、20は凸型部19の表面19aに設けられた閉じた凹部である。図13(a)は本実施形態の断面図、図13(b)は本実施形態の上面図である。断面図(a)は上面図(b)のP-Q間の断面構造を示している。図13(c)は、凸型部19の拡大上面図であり、図13(d)は凸型部19の拡大断面図である。
【0121】
この事例では、凸型部19は四角柱であり、閉じた凹部20の表面開口部形状は円形であり、閉じた凹部20の底面20aは曲率rの球面の一部となっている。
【0122】
(第9実施形態)
図14は、本発明の第9実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品の構造説明図を示すものである。
【0123】
図14(a)は、凸型部19の部分の上面図、図14(b)は図14(a)のT-U面の断面図、図14(c)は図14(a)のV-W面の断面図を示している。シリコーン系ゴム膜と基板は図示外であり、シリコーン系ゴム膜の表面に形成された凸型部19の部分のみ描かれている。図14において、21は凸型部19の表面19aに形成された閉じた凹部である。
【0124】
図14(a)に示すように、閉じた凹部21の表面開口部形状の基本は正方形であり、正方形の四つの頂点部分は曲率半径r0の円弧の一部になっている。例えば、半径r0の円弧の1/4を使うとよい。そうすると、円弧と四角形の辺との間で接線を同じにできるため、凹部底面21aを微小構造体に隙間なく仮接着する際の変形歪を小さくできる。
【0125】
図14(b)及び(c)に示すように、四角形の辺に垂直な方向(T-U)と四角形の対角方向(V-W)で、閉じた凹部21の底面21aの曲率半径を変え、閉じた凹部21の中視点において同深さに形成することで、凹部底面21aを微小構造体に隙間なく仮接着する際の閉じた凹部21の変形を最小限にできる。この場合もちろん(T-U)方向と(V-W)方向の間で、回転角方向に応じ2つの曲率半径r1及びr2の中間値を最適化することで、凹部21の底面21aをスムースに設計・形成しておくとよい。このように、非球面の凹部底面構造を利用することで、微小構造体表面平面と凸型部表面19aの閉じた凹部21との仮接着力を最大化できる。
【0126】
(第10実施形態)
図15は、本発明の第10実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100の構造説明図を示すものである。図15において、22はシリコーン系ゴム膜2の表面2aに形成された凸型部であり、23は凸型部表面22aに形成された閉じた凹部である。
【0127】
図15(a)は本実施形態の断面図、図15(b)は本実施形態の上面図である。断面図(a)は上面図(b)のP-Q間の断面構造を示している。図15(c)は、凸型部22の拡大上面図であり、図15(d)は凸型部22の拡大断面図である。本実施形態では、多数の凸型部22がマトリクス状に形成されている。また、本実施形態においては、凸型部22は円柱形状であり、その表面に曲率半径rの球面の一部からなる凹部底面形状が形成されている。このように、凸型部22の表面形状が円形、すなわち、凸型部22が円柱、若しくは、円錐柱の一部を切り出した形状であると、微小構造体と凹部底面23aが隙間なく仮接着する場合に閉じた凹部23の変形歪を小さくできる。言い換えると、仮接着した後に、閉じた凹部23の形状復元力が均一化できるため、安定に仮接着を保持できる。凸型部22の表面形状が楕円形であっても、同様の効果が得られる。
【0128】
なお、凹部底面23aの形状が曲率半径rの球面の一部である場合を例にとって説明したが、底面形状は半径方向で非球面であってもよい。例えば、凹部底面23aは放物面を含んでいても良い。より厳密には、シミュレーションにより、使用するシリコーン系ゴム膜の物性を組み込んだ上で、仮接着時の変形しやすさと仮接着後の最適な復元力、すなわち、仮接着力(シリコーン系ゴム膜の粘着力+タック力+吸着力)を発現する最も良い形状を設計すればよい。
【0129】
(第11実施形態)
図16(a)は、本発明の第11実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100の構造説明図を示すものである。本実施形態において、スタンプ部品としての基本構造は本発明の第10実施形態と同じである。異なる点は、上面図である図16(a)に示すように、凸型部22が受け取り基板側の配置場所から要求される一定のピッチ(Xp,Yp)でマトリックス状に配置されているところである。
【0130】
このように所望のピッチでマトリクス状に微小構造体をつかみ取る凸型部を配置・構成することにより、一定ピッチで電気部品や電子部品を配置する電子機器組み立てや3D実装に好適である。また、所望のディスプレイピッチにLEDを配置することを必要とするマイクロLEDの移載組み立てに極めて有用である。
【0131】
図16(b)及び(c)は、本発明の第11実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100の動作説明図を示すものである。図16(d)及び(e)は、図16(c)のそれぞれ別の部分の拡大断面図である。
【0132】
図16(b)~(e)において、24は微小構造体の供給基板であり、25と26は微小構造体である。微小構造体25と微小構造体26の違いは大きさであり、微小構造体25は凸型部22の凸部の面積よりも小さく、微小構造体26は凸型部22の面積よりも大きな場合を示している。
【0133】
図16(b)では、凸型部22と同じように、供給基板24側においても微小構造体が所望のマトリックス状に配置されている状態が示されている。供給基板24に本実施形態の微小構造体移載用スタンプ100を押圧し、供給基板24から微小構造体25及び26をつかみ取った状態を図16(c)に示している。さらに、図16(d)は微小構造体25をつかみ取った状態の拡大図であり、閉じた凹部23の底面で微小構造体25を仮接着した状態を示している。図16(e)は微小構造体26をつかみ取った状態の拡大図であり、閉じた凹部23の底面で微小構造体26を仮接着した状態を示している。
【0134】
図16(d)に示すように、凸型部22よりも微小構造体25が小さい場合には、微小構造体25の周辺にオーバーハング状に包み込むように仮接着する。一方、図16(e)に示すように、凸型部22よりも微小構造体26が大きい場合には、微小構造体26の仮接着面に凹部底面全面が接着する。いずれの場合も、凸型部22をつかみ取る前は存在していた閉じた凹部23の空間がなくなるように接着する、所謂、吸盤のように微小構造体25及び26に仮接着することができる。
【0135】
第1実施形態(図1)~第7実施形態(図12)の場合は、微小構造体を仮接着した後に完全に閉じた凹部の空洞がなくなることは無かったが、本発明の第8実施形態(図13)~第11実施形態(図16)のように凹部を設計することにより、凹部底面と微小構造体接着表面との間に空洞は発生しない。
【0136】
(第12実施の形態)
図17は、本発明の第12実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100のいくつかの例の構造説明図を示すものである。特に、凸型部12の基板1に垂直な平面方向、すなわち高さ方向の断面図を示している。
【0137】
図17において、27、28、30は凸型部12のそれぞれ一部を示しており、29は閉じた凹部を示している。27は一段目の凸型形状突起、28は二段目の凸型形状突起、30は三段目の凸型形状突起である。
【0138】
図17(a)は、円柱若しくは多角柱の凸型部12を凸型形状突起27及び28の2段階で構成した形態を示している。図17(b)は、一段目の凸型形状突起27が円柱若しくは多角柱であり、その上に円若しくは多角形の錐台の二段目の凸型形状突起28を形成した構成を示している。図17(c)は、二段の凸型形状突起27及び28のいずれとも円若しくは多角形の錐台で構成した状態を示している。このように、多段の凸型形状突起で凸型部12を構成することにより、凸型部12が微小化した場合の機械強度低下を改善するのに有効な手段となる。
【0139】
図17(d)及び(e)は、円若しくは多角形の錐台の三段の凸型形状突起27、28及び30で凸型部12を構成した状態を示している。図17(d)は、凸型部12の高さ方向の断面形状(プロファイル)が凸型部12の内側に凸の形状を示している。図17(e)は、凸型部12の高さ方向の断面形状(プロファイル)が凸型部12の外側に凸の形状を示している。
【0140】
図17(d)の場合は、凸型部12が比較的大きなサイズの場合に密集配置された隣の微小構造体に干渉せずに移載する場合に有用であり、凸型部12と隣の凸型部12の距離が近い場合にも有用である。一方、図17(e)の場合は、凸型部12が数100μmよりも小さな場合に凸型部12の機械強度低下を防止するのに有効である。
【0141】
このように、凸型部12を、円柱、多角柱、円錐台、多角錐台を組み合わせて多段階に構成することにより、設計の自由度を大きく広げることができる。さらに高度に設計するためには、シミュレーションを活用すれば、多段階の組合せを超えよりスムースなプロファイル形状を設計することができる。
【0142】
なお、図17において、閉じた凹部29は底面が球面の場合を示しているが、閉じた凹部29の形状に拘わらず凸型部12の断面プロファイルの効果は発揮される。
【0143】
第12実施形態においては、図17に示すように、二段以上の凸型形状突起の最上段の突起28又は30の表面が、閉じた凹部29を有している。
【0144】
(第13実施形態)
図18は、本発明の第13実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100のいくつかの例の構造説明図を示すものである。
【0145】
図18において、31は導電性膜であり、基板1とシリコーン系ゴム膜2との間に形成されている。図18(a)、(c)及び(e)はシリコーン系ゴム膜2に凸型部を有しない場合を示しており、図18(b)、(d)及び(f)は、少なくとも一つ以上の凸型部12を有する場合を示している。なお、図示外であるが、図18(a)、(c)及び(e)のシリコーン系ゴム膜2の表面2a、および、図18(b)、(d)及び(f)の凸型部12の表面12aには閉じた凹部を有している。
【0146】
図18(a)と(b)は、基板1よりも小さな領域にシリコーン系ゴム膜2が形成され、かつ、シリコーンゴム系膜2と同じ領域に導電性膜31が形成されている場合を示している。図18(c)と(d)は、導電性ゴム膜31が基板1の一方の表面の全面に形成されている場合を示している。当然、基板1の一方の表面の全面ではないが、シリコーン系ゴム膜2の領域よりも大きな領域に導電性膜31が形成されていてもよい。図18(e)及び(f)は、シリコーン系ゴム膜2及び導電性膜31のすべてが、基板1の一方の表面全面に形成されている場合を示している。
【0147】
本発明のスタンプ部品を用いて、移載動作を行う移載機の設置環境、装置内環境を制御することで十分に解決される問題ではあるが、静電気による浮遊パーティクルがスタンプ部品に付着してスタンプ部品の微小構造体との仮接着を劣化させるという危険性を完全にゼロにすることは極めて困難である。この問題をさらに抑制し、移載装置の稼働時間を増やす方法として本実施形態の導電性膜を基板とシリコーン系ゴム膜との間に形成することは極めて有効である。このように構成することで、静電気による接着面へのパーティクルの吸着を大きく抑制することができる。
【0148】
したがって、シリコーン系ゴム膜の粘着力を閉じた凹部のデザインにより調整するという特性とパーティクル抑制という二つの効果を同時実現することができる。
【0149】
(第14実施形態)
図19は、本発明の第14実施形態を示す微小構造体移載用スタンプ部品100のいくつかの例の構造説明図を示すものである。
【0150】
図19において、32は導電性シリコーン系ゴム膜であり、33~36は凸型部であり、各種バリエーションを示している。なお、図示外であるが、図19(a)のシリコーン系ゴム膜32の表面32a、および、図19(b)~(f)の凸型部33~36の表面33a、34a、35a及び36aには、閉じた凹部を有している。
【0151】
なお、図19(d)及び(e)の凸型部34および35では、最終段の凸型形状突起の断面形状が錐台形状になっている場合が示してある。
【0152】
本実施形態の最大の特徴は、シリコーン系ゴム膜32自体が導電性膜であることである。シリコーン系ゴム膜に導電性を付与するには、カーボン、カーボンナノファイバ、グラファイト、グラフェン等のカーボン系導電膜をフィラーとして混ぜることにより実現できる。
【0153】
なお、図19においては、基板1上の限定領域に導電性シリコーン系ゴム膜32が形成されている状態が図示されているが、基板1全面に導電性シリコーン系ゴム膜32が形成されていてもよい。
【0154】
このように構成することにより、移載動作中に発生するパーティクルがスタンプ部品に付着するのを抑制することができる。
【0155】
以上本発明の実施形態において説明してきた微小構造体移載用スタンプ部品において、閉じた凹部の表面開口部形状は、円形、楕円形、環、並びに三角形、矩形(正方形、長方形)、四角形、五角形、及び六角形等の多角形など、閉じた形状であればいかなる形であっても良い。
【0156】
なお、基板の表面形状およびシリコーン系ゴム膜の表面形状においては正方形や長方形の矩形であると加工上は最も便利であるが、円形、楕円形、並びに三角形、四角形、及び六角形等の多角形などいかなる形であっても良い。
【0157】
上記において述べてきたシリコーン系ゴム膜の成膜に関して述べる。
閉じた凹部を備えた平膜のシリコーン系ゴム膜及び凸型部とその表面に閉じた凹部とを備えた構造のシリコーン系ゴム膜の成膜は、例えばインプリント法により形成することができる。シリコーン系ゴム膜の硬化反応は熱硬化であってもよいし、UV硬化であってもよい。
【0158】
なお、インプリント法以外の方法とし、インジェクションモールド法に限らず、本発明の構造を形成できるものであれば何を用いてもよい。
【0159】
本発明の微小構造体移載用スタンプ部品において、基板として石英基板を用いることができる。石英基板に合成石英基板を用いると性能が飛躍的に向上する。
【0160】
合成石英基板の場合はおよそ1μm以下の面内均一性(TTV:total thickness variation)を実現できるため、一般の石英基板に比べてスタンプ部品の面内高さ均一性を格段に向上させることができる。すなわち、多数の微小構造体を一気に移載する際に、供給基板側及び受け取り基板側においてスタンプ部品を押圧する際にすべての微小構造体により均一に押圧できる。さらに詳しく言えば、微小構造体にシリコーン系ゴム膜又はシリコンーン系ゴム膜表面に形成された凸型部の表面が接するタイミングがより均一になり、それらの押し込み深さがより均一になる。したがって、合成石英基板を使用したスタンプ部品を使用すると、多数の微小構造体すべてにおいてより一定の仮接着強度を確保できるため、安定な微小構造体移載を実現することができる。この効果は、シリコーン系ゴム膜又はシリコンーン系ゴム膜表面に形成された凸型部で一つの微小構造体を移載する場合にも得られることは言うまでもない。
【0161】
さらに、合成石英ガラスを使用することのメリットは、熱的安定性が得られることである。すなわち、合成石英ガラス基板は他の石英ガラス基板と比べておよそ1/5の熱膨張係数を有し、動作中の熱歪を少なくできる。特に、凸型形状突起を有するスタンプ部品の場合、熱伸縮による突起位置のずれ・歪(ディストーション)を低減できるため、繰り返し移載動作を行う場合にその力を発揮する。
【0162】
また、石英基板の代わりにサファイア基板をもちいると、石英(合成石英を含む)基板よりも機械強度が高いため、耐久性に優れた微小構造体移載用スタンプ部品を提供することができる。サファイア基板表面の面内均一性はTTVで15ミクロン以下であるため、石英基板の代わりとして十分使用できるレベルにある。
【0163】
また、石英基板の代わりにシリコンウエハ若しくはシリコンウエハ片を用いると、合成石英基板よりさらに平坦性に優れた微小構造体移載用スタンプ部品を提供することができる。
【0164】
なお、移載対象である微小構造体の大きさがおよそ数100μmより大きい場合で、平坦性が許容される場合には、石英基板の代わりにガラス基板を用いても良い。
【0165】
なお、シリコーン系ゴム膜には、例えば、PDMS(Polydimethylsiloxane)、PDMSの側鎖及び両末端を変性したシリコーン組成物、及びそれらの組合せからなる組成物を用いればよい。それぞれの材料組成(分子量、変性基、変性物質、変性量等)及び混合物の場合は混合比等を調製することにより、材料の固さ、圧接着力及び繰り返し接着性等の物性を制御することができる。混合するだけではなく、各種変性シリコーン組成物同志を架橋あるいは分子の三次元構造化を行うことにより最適化することもできる。
【0166】
なお、本発明の微小構造体移載用スタンプ部品の移載対象としては、例えば、半導体チップ及び各種電気(抵抗体、コイル、コンデンサ等)・電子素子(ダイオード、トランジスタ、サイリスタ、各種高機能LSI/ICチップ、3D実装チップ、SAWフィルタ素子、加速度センサ等のMEMSチップ、さらにはLED、特にミニLEDやマイクロLED等々)が挙げられ、本発明は、これらの実装、電気・電子機器等の組み立てに適用可能である。
【0167】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0168】
1及び41…基板(石英基板)、 2、42及び43…シリコーン系ゴム膜、 2a…シリコーン系ゴム膜表面、 2b…凹部以外の部分、 3、5、6、7、8、9、11a、13、15、18、20、21、23及び29…閉じた凹部、 3a、6a、13a及び15a…表面開口部、 4、25及び26…微小構造体、 10…溝状の凹部、 11…第2の凹部、 12、14、19、22、33、34、35、36、44、45、46、47及び48…凸型部、 12a、14a、19a及び22a…凸型部表面、 16…第1の凸型形状突起、 17及び28…第2の凸型形状突起、 20a及び21a…底面、 24…供給基板、 27…一段目の凸型形状突起、 28…二段目の凸型形状突起、 30…三段目の凸型形状突起、 31…導電性膜、 32…導電性シリコーン系ゴム膜、 100…微小構造体移載用スタンプ部品、 200…スタンプ。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9
図10
図11
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