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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-20
(45)【発行日】2025-05-28
(54)【発明の名称】形状復元方法及び画像測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20250521BHJP
【FI】
G01B11/24 K
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021561500
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2020044058
(87)【国際公開番号】W WO2021107027
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2019217429
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】715007004
【氏名又は名称】マシンビジョンライティング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲濱▼ 康弘
(72)【発明者】
【氏名】宮倉 常太
(72)【発明者】
【氏名】山縣 正意
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6451821(JP,B1)
【文献】特開2011-232087(JP,A)
【文献】特開平07-306023(JP,A)
【文献】国際公開第2017/051447(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に照明光を照射し、撮像された画像を処理して、前記被測定物の形状を復元する形状復元方法であって、
互いに異なる光属性を持つ複数の立体角領域を備える特定の照射立体角を有する前記照明光を前記被測定物に照射する照明工程と、
前記照明光により生じる前記被測定物からの物体光を所定の観察立体角で受光し前記画像を撮像する撮像工程と、
該画像の各画素において識別された該光属性に基づいて、前記物体光を構成する前記複数の立体角領域と前記所定の観察立体角との包含関係から前記各画素に対応する前記被測定物の各点の法線ベクトルを求める演算工程と、
該法線ベクトルから前記被測定物の各点の傾き情報を求めて前記被測定物の形状を復元する形状復元工程とを含み、
前記複数の立体角領域が、前記観察立体角の観察光軸に対して回転対称でない場合には、前記撮像工程後に、前記被測定物を前記観察光軸周りに所定の角度で回転させる回転工程を行い、前記照明工程と前記撮像工程を所定の回数行った後に前記演算工程を行うことを特徴とする形状復元方法。
【請求項2】
請求項において、
前記照明工程の前段に、前段工程を有し、
該前段工程では、前記被測定物自身または特定の治具が前記被測定物の代わりに用いられ、前記照明工程と前記撮像工程とが行われ、更に、前記光属性と前記法線ベクトルとの対応関係を求める対応関係生成工程を行うことを特徴とする形状復元方法。
【請求項3】
請求項において、
前記特定の治具は、基準球、または基準平面とされていることを特徴とする形状復元方法。
【請求項4】
請求項またはにおいて、
前記対応関係は、対応テーブルとして構成されることを特徴とする形状復元方法。
【請求項5】
請求項2又は3において、
前記対応関係は、補完関数として構成されることを特徴とする形状復元方法。
【請求項6】
請求項乃至のいずれかにおいて、
前記法線ベクトルは、正規化されていることを特徴とする形状復元方法。
【請求項7】
被測定物に照明光を照射する照明装置と、前記被測定物を撮像して画像を出力する撮像装置と、該画像を処理する処理装置と、を備え、前記被測定物の形状を測定する画像測定装置であって、
前記照明装置は、前記照明光を出射する光源部と、前記照明光を特定の照射立体角で前記被測定物に照射するレンズ部と、前記光源部と前記レンズ部との間であって、前記特定の照射立体角内を互いに異なる光属性を持つ複数の立体角領域に分離するフィルター部と、を有し、
前記撮像装置は前記照明光により生じる前記被測定物からの物体光を所定の観察立体角で受光し、前記撮像装置の各画素は前記異なる光属性を互いに識別可能とされ、
前記処理装置は、前記物体光を構成する前記複数の立体角領域と前記所定の観察立体角との包含関係から前記各画素に対応する前記被測定物の各点の法線ベクトルを求める演算部と、該法線ベクトルから前記被測定物の各点の傾き情報を求めて前記被測定物の形状を復元する形状復元部と、を備え、
前記演算部は、更に、予め格納している前記被測定物の各点の前記法線ベクトルと、新たに撮像された前記被測定物から求められた各点の前記法線ベクトルとを比較し、互いに異なる部分を抽出する整合判定部を備えることを特徴とする画像測定装置。
【請求項8】
請求項において、
前記処理装置は、前記光属性と前記法線ベクトルとの対応関係を記憶する記憶部を備え、前記演算部が該対応関係に基づいて該法線ベクトルを求めることを特徴とする画像測定装置。
【請求項9】
請求項において、
前記処理装置は、前記法線ベクトルを正規化していることを特徴とする画像測定装置。
【請求項10】
請求項において、
前記被測定物を観察光軸周りに回転可能な回転台を備えることを特徴とする画像測定装置。
【請求項11】
被測定物に照明光を照射する照明装置と、前記被測定物を撮像して画像を出力する撮像装置と、該画像を処理する処理装置と、を備え、前記被測定物の形状を測定する画像測定装置であって、
前記照明装置は、前記照明光を出射する光源部と、前記照明光を特定の照射立体角で前記被測定物に照射するレンズ部と、前記光源部と前記レンズ部との間であって、前記特定の照射立体角内を互いに異なる光属性を持つ複数の立体角領域に分離するフィルター部と、を有し、
前記撮像装置は前記照明光により生じる前記被測定物からの物体光を所定の観察立体角で受光し、前記撮像装置の各画素は前記異なる光属性を互いに識別可能とされ、
前記処理装置は、前記物体光を構成する前記複数の立体角領域と前記所定の観察立体角との包含関係から前記各画素に対応する前記被測定物の各点の法線ベクトルを求める演算部と、該法線ベクトルから前記被測定物の各点の傾き情報を求めて前記被測定物の形状を復元する形状復元部と、を備え、
前記フィルター部は、前記複数の立体角領域が前記照明光の照射光軸周りに設けられるように、該照射光軸周りに同心円状に互いに異なるフィルター領域を備え、
前記演算部は、更に、予め格納している前記被測定物の各点の前記法線ベクトルと、新たに撮像された前記被測定物から求められた各点の前記法線ベクトルとを比較し、互いに異なる部分を抽出する整合判定部を備えることを特徴とする画像測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状復元方法及び画像測定装置に係り、特に、被測定物を撮像した画像内の被測定物の各点の情報を迅速に復元可能な形状復元方法及び画像測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物に照明光を照射し、撮像された画像を処理して、被測定物の形状情報を復元する画像測定装置が知られている。例えば、テレセントリック撮像光学系により被測定物を撮像して被測定物の形状を測定する画像測定装置がそれに該当する。テレセントリック撮像光学系では、被写界深度が深いため、光軸方向に段差があっても画像のボケが少ないという特徴があるので、主に被測定物の表面の2次元形状を測定するのに適している。しかしながら、テレセントリック撮像光学系では、被測定物の高さ方向の情報を検出するのが困難であり、被測定物の3次元形状を測定するには適当ではない。
【0003】
なお、近年では、特許文献1に示すように、特定の検査用照明装置を用いることで、一つの撮像された画像に基づいて被測定物の各点の傾き情報を得ることを可能とした検査システムが開発されている。この発明によれば、被測定物の微小な凹凸や異物などの欠陥の情報を抽出可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6451821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の検査システムでは、一回の撮像で被測定物の各点の傾き情報を得られることを示しているものの、この手軽さと迅速さを生かすような被測定物の各点の情報を復元するための具体的な工程および構成を明確にしてはいない。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、被測定物を撮像した画像内の被測定物の各点の情報を迅速に復元可能な形状復元方法及び画像測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、被測定物に照明光を照射し、撮像された画像を処理して、前記被測定物の形状を復元する形状復元方法であって、互いに異なる光属性を持つ複数の立体角領域を備える特定の照射立体角を有する前記照明光を前記被測定物に照射する照明工程と、前記照明光により生じる前記被測定物からの物体光を所定の観察立体角で受光し前記画像を撮像する撮像工程と、該画像の各画素において識別された該光属性に基づいて、前記物体光を構成する前記複数の立体角領域と前記所定の観察立体角との包含関係から前記各画素に対応する前記被測定物の各点の法線ベクトルを求める演算工程と、該法線ベクトルから前記被測定物の各点の傾き情報を求めて前記被測定物の形状を復元する形状復元工程と、を含み、前記複数の立体角領域が、前記観察立体角の観察光軸に対して回転対称でない場合には、前記撮像工程後に、前記被測定物を前記観察光軸周りに所定の角度で回転させる回転工程を行い、前記照明工程と前記撮像工程を所定の回数行った後に前記演算工程を行うことにより、前記課題を解決したものである。
【0011】
本願の請求項に係る発明は、前記照明工程の前段に、前段工程を有し、該前段工程では、前記被測定物自身または特定の治具が前記被測定物の代わりに用いられ、前記照明工程と前記撮像工程とが行われ、更に、前記光属性と前記法線ベクトルとの対応関係を求める対応関係生成工程を行うようにしたものである。
【0012】
本願の請求項に係る発明は、前記特定の治具を、基準球、または基準平面としたものである。
【0013】
本願の請求項に係る発明は、前記対応関係を、対応テーブルとして構成したものである。
【0014】
本願の請求項に係る発明は、前記対応関係を、補完関数として構成したものである。
【0015】
本願の請求項に係る発明は、前記法線ベクトルを、正規化したものである。
【0016】
本願の請求項に係る発明は、被測定物に照明光を照射する照明装置と、前記被測定物を撮像して画像を出力する撮像装置と、該画像を処理する処理装置と、を備え、前記被測定物の形状を測定する画像測定装置であって、前記照明装置は、前記照明光を出射する光源部と、前記照明光を特定の照射立体角で前記被測定物に照射するレンズ部と、前記光源部と前記レンズ部との間であって、前記特定の照射立体角内を互いに異なる光属性を持つ複数の立体角領域に分離するフィルター部と、を有し、前記撮像装置は前記照明光により生じる前記被測定物からの物体光を所定の観察立体角で受光し、前記撮像装置の各画素は前記異なる光属性を互いに識別可能とされ、前記処理装置は、前記物体光を構成する前記複数の立体角領域と前記所定の観察立体角との包含関係から前記各画素に対応する前記被測定物の各点の法線ベクトルを求める演算部と、該法線ベクトルから前記被測定物の各点の傾き情報を求めて前記被測定物の形状を復元する形状復元部と、を備え、前記演算部は、更に、予め格納している前記被測定物の各点の前記法線ベクトルと、新たに撮像された前記被測定物から求められた各点の前記法線ベクトルとを比較し、互いに異なる部分を抽出する整合判定部を備えるようにしたものである。
【0021】
本願の請求項に係る発明は、前記処理装置が、前記光属性と前記法線ベクトルとの対応関係を記憶する記憶部を備え、前記演算部が該対応関係に基づいて該法線ベクトルを求めるようにしたものである。
【0022】
本願の請求項に係る発明は、前記処理装置で、前記法線ベクトルを正規化したものである。
【0023】
本願の請求項10に係る発明は、前記被測定物を観察光軸周りに回転可能な回転台を備えるようにしたものである。
【0024】
本願の請求項11に係る発明は、被測定物に照明光を照射する照明装置と、前記被測定物を撮像して画像を出力する撮像装置と、該画像を処理する処理装置と、を備え、前記被測定物の形状を測定する画像測定装置であって、前記照明装置は、前記照明光を出射する光源部と、前記照明光を特定の照射立体角で前記被測定物に照射するレンズ部と、前記光源部と前記レンズ部との間であって、前記特定の照射立体角内を互いに異なる光属性を持つ複数の立体角領域に分離するフィルター部と、を有し、前記撮像装置は前記照明光により生じる前記被測定物からの物体光を所定の観察立体角で受光し、前記撮像装置の各画素は前記異なる光属性を互いに識別可能とされ、前記処理装置は、前記物体光を構成する前記複数の立体角領域と前記所定の観察立体角との包含関係から前記各画素に対応する前記被測定物の各点の法線ベクトルを求める演算部と、該法線ベクトルから前記被測定物の各点の傾き情報を求めて前記被測定物の形状を復元する形状復元部と、を備え、前記フィルター部は、前記複数の立体角領域が前記照明光の照射光軸周りに設けられるように、該照射光軸周りに同心円状に互いに異なるフィルター領域を備え、前記演算部が、更に、予め格納している前記被測定物の各点の前記法線ベクトルと、新たに撮像された前記被測定物から求められた各点の前記法線ベクトルとを比較し、互いに異なる部分を抽出する整合判定部を備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、被測定物を撮像した画像内の被測定物の各点の情報を迅速に復元することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係る画像測定装置を示す模式図
図2図1の照明装置の主要部分を示す模式図
図3図1の照明装置に用いられるフィルター部と照射立体角との関係(照射光軸周りに3つのフィルター領域を備えるフィルター部(A)と対応する照射立体角(E)、照射光軸中心に1つと照射光軸周りに3つのフィルター領域を備えるフィルター部(B)と対応する照射立体角(F)、同心円状に4つのフィルター領域を備えるフィルター部(C)と対応する照射立体角(G)、同心円状に照射光軸周りにそれぞれ3つのフィルター領域を備えるフィルター部(D)と対応する照射立体角(H))
図4】画像測定装置における照射立体角と反射立体角と観察立体角との関係を示す模式図(被測定物の表面の法線ベクトルが観察光軸と一致している場合の図(A)、被測定物の表面の法線ベクトルが観察光軸とずれている場合の図(B))
図5】従来の照明光の照射立体角と本実施形態の照明光の照射立体角との比較模式図
図6図1の画像測定装置の処理ブロック図
図7図1の画像測定装置における形状復元の手順を示すフロー図
図8図7の前段工程の内容の手順を示すフロー図(前段工程の全体フロー図(A)、図8(A)に示す前段対応関係生成工程の詳細フロー図(B))
図9図8で示す前段工程を行う際に使用する基準球と求める法線ベクトルの傾きの範囲を示す模式図
図10図8で示す前段工程で求められる光属性と法線ベクトルの対応関係を示す対応テーブルの一例
図11】本発明の第2実施形態に係る画像測定装置の照明装置の主要部分を示す模式図
図12】本発明の第3実施形態に係る画像測定装置の照明装置と被測定物との関係を示す模式図
図13】本発明の第4実施形態に係る画像測定装置の処理ブロック図
図14図13の画像測定装置における形状復元の手順を示すフロー図
図15】本発明の第5実施形態に係る画像測定装置の処理ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の第1実施形態について、図1から図10を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0028】
画像測定装置100は、図1に示す如く、被測定物Wに照明光を照射する照明装置110と、被測定物Wからの反射光を受光することによって、被測定物を撮像して画像を出力する撮像装置CMと、その画像を処理する処理装置120と、表示装置DDと、を備える。処理装置120は、画像キャプチャIMCと画像処理装置IMPとを備える。この構成により、画像測定装置100は、被測定物Wに照明光を照射し、撮像された画像を処理して、被測定物の形状を測定し、かつ復元することが可能とされている。なお、本実施形態では、被測定物Wは、表面形状が複雑であっても光沢面に近いものが好ましい。
【0029】
以下、各要素を詳細に説明する。
【0030】
前記照明装置110は、図2に示す如く、照明光を出射する光源部112と、フィルター部114と、照明光を特定の照射立体角ISで被測定物Wに照射するレンズ部116と、ハーフミラー118と、を有する。
【0031】
光源部112は、1つ以上のチップ型LEDを配置したものや、有機ELや、サイドライトから導光板を導いたものなどであってもよい。光源部112は、照射光軸L1に沿って移動可能とされている。
【0032】
フィルター部114は、図2に示す如く、光源部112とレンズ部116との間であって、特定の照射立体角IS内を互いに異なる光の波長領域(光属性)R、G、B(符号Rは赤色波長領域、符号Gは緑色波長領域、符号Bは青色波長領域)を持つ複数の立体角領域IS1、IS2、IS3(図3(E)参照)に分離する。具体的に、フィルター部114は、図3(A)に示すように、複数の立体角領域IS1、IS2、IS3が照明光の照射立体角ISの照射光軸L1周りに設けられるように、光源部112から出射される光を制限する絞り(開口の半径R0)と、絞りの内側の照射光軸L1周りに互いに異なるフィルター領域CF1、CF2、CF3を備える。なお、本実施形態でフィルター領域CF1、CF2、CF3はそれぞれ、120度の扇形であって赤色、緑色、青色のカラーフィルターで構成されている。そして、フィルター部114は、図2に示す如く、照明光の照射光軸L1上のレンズ部116の焦点距離fの近傍に配置されている。また、フィルター部114も、照射光軸L1に沿って移動可能とされている。なお、本実施形態では、フィルター部114は、照明光を遮る遮光マスクである絞りと光の波長領域を変化させるフィルターとが1つとなった光学素子であるが、これに限定されず、別々に設けてもよい。あるいは、フィルター部に、電気的に透過率や色を変化できる液晶シャッターなどを用いるようにしてもよい。また、フィルター部は、透過型とされているが、反射型であってもよい。
【0033】
レンズ部116は、図2に示す如く、光源部112から出射されフィルター部114を通過した照明光を特定の照射立体角ISで被測定物Wに照射する。レンズ部116は、例えば屈折型レンズであり、単レンズでもよいが、複数枚のレンズによって構成されていてもよい。レンズ部116も、照射光軸L1に沿って移動可能とされている。
【0034】
ハーフミラー118は、図2に示す如く、照射光軸L1と観察光軸L2とを一致させ、照射光が同軸落射となるように配置されている。このため、照射立体角ISと、観察立体角DSとは、図4(A)、(B)に示す如く、同一方向に形成されることになる。
【0035】
このように、光源部112、フィルター部114、およびレンズ部116の移動調整が可能で、かつ、フィルター部114のフィルター領域が変更可能であることで、光の波長領域を任意に変化させながら、被測定物Wに対して任意の形状の照射立体角ISを実現することができる。更に、フィルター部114がレンズ部116の焦点距離fの近傍に配置されることで、撮像装置CMの撮像する被測定物Wの視野範囲全体のすべての位置に対して、すべて同条件で照射光を照射することができる。ここで、図5(A)は、一般的な従来照明LSで被測定物Wを照射したときに、その被測定物Wの異なる位置P、P’におけるそれぞれの照射立体角IS、IS’を示している。図5(A)によれば、位置P、P’では互いに照射立体角IS、IS’の形状や照射光軸の方向が異なる。しかし、本実施形態の照明装置110によれば、図5(B)に示す如く、被測定物Wの視野範囲全体のすべての位置において、すべて同一条件で照射光を照射することができる。つまり、照射立体角ISは、被測定物Wの各点に対して同一にされている。よって、本実施形態の照明装置110は、従来照明では実現できなかった微小な変化を抽出することができる。
【0036】
前記撮像装置CMは、図1に示す如く、照明装置110の照明光により生じる前記被測定物からの物体光を、例えばテレセントリック撮像光学系(AF機能付きの撮像光学系を用いてもよい)による所定の観察立体角DSで受光し、2次元の画像をカラー画像として出力する。つまり、撮像装置CMは、例えばカラーCCDカメラやカラーCMOSカメラであり、撮像装置CMの各画素は異なる光属性を互いに識別可能とされている。つまり、本実施形態では、異なる光属性は異なる光の波長領域R、G、Bであり、例えば各画素は、赤色、緑色、青色それぞれのカラーフィルター付きの(4つで構成されるベイヤーパターンの)画素要素のセットで構成されている。なお、カラー画像は、処理装置120で処理される。
【0037】
前記処理装置120は、図6に示す如く、画像保持部122と、演算部124と、記憶部126と、形状復元部128と、を備え、撮像装置CMと、表示装置DDに接続されている。このため、処理装置120は、撮像装置CMからの画像の処理、および表示装置DDへの表示信号の出力を行うことができる。なお、表示装置DDは、形状復元部128の出力に基づいて、撮像したカラー画像や、3次元画像や、各種情報を表示することができる。
【0038】
画像保持部122は、画像キャプチャIMCの内部の回路であり、撮像装置CMからの画像をフレーム単位で保持することを可能としている。本実施形態では、光の波長領域R、G、Bそれぞれの画像を保持することができる。
【0039】
演算部124は、被測定物Wからの物体光を構成する複数の立体角領域RS1、RS2、RS3と所定の観察立体角DSとの包含関係から各画素に対応する被測定物Wの各点の法線ベクトルVnを求める。図4(A)、(B)を用いて、その原理を説明する。なお、実線で描かれているのは照射光が形成する照射立体角ISと撮像装置CMによる観察立体角DSである。点線で描かれているのは、物体光が形成する反射立体角RSである。ここで、照射立体角ISの立体角領域IS1、IS2、IS3はそれぞれ、反射立体角RSの立体角領域RS1、RS2、RS3に対応する(すなわち、IS1=RS1、IS2=RS2、IS3=RS3)。
【0040】
まず、被測定物Wに傾きがない場合には、図4(A)に示す如く、反射光軸L3と観察光軸L2とが一致した状態となる。つまり、照射立体角ISを持つ照明光が被測定物Wに照射されると、観察立体角DSで物体光による反射立体角RSの立体角領域RS1、RS2、RS3に対応する光の波長領域R、G、Bの輝度Rc、Gc、Bcが等しく検出される。このため、この検出される光の波長領域R、G、Bの輝度Rc、Gc、Bcの比率に基づき、傾斜していない法線ベクトルVnを求めることができる。
【0041】
一方、被測定物Wに傾き(角度φ)がある場合には、図4(B)に示す如く、反射光軸L3と観察光軸L2とが一致しない状態となる。つまり、照射立体角ISを持つ照明光が被測定物Wに照射されると、観察立体角DSの範囲内では物体光による反射立体角RSの立体角領域RS1に対応する光の波長領域Rの輝度Rcをほとんど受光できない。一方で、立体角領域RS2、RS3に対応する光の波長領域G、Bの輝度Gc、Bcはほぼ等しく検出される。このため、この検出される光の波長領域R、G、Bの輝度Rc、Gc、Bcの比率に基づき、傾斜した法線ベクトルVnを求めることができる。
【0042】
つまり、演算部124は、光属性(本実施形態では、光の波長領域R、G、Bそれぞれ)と法線ベクトルVnとの対応関係に基づいて法線ベクトルVnを求めることができる。
【0043】
なお、法線ベクトルVnは、(Vnx,Vny,Vnz)で表され、演算部124にて、正規化されている。即ち、値Vnx,Vny,Vnzの関係は、以下のようになる。
Vnx*Vnx+Vny*Vny+Vnz*Vnz=1 (1)
【0044】
なお、本実施形態では、光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルVnとの対応関係も、演算部124で求める。対応関係は、対応テーブルと補完関数fx、fyとで求めることができる。本実施形態では、補完関数fx、fyは、離散的に設けられた対応テーブル間にくる法線ベクトルVnを求めるようになっている。
【0045】
記憶部126は、各種の初期設定値、各種プログラム、各種テーブル、各種関数、および各種データを記憶することができる。例えば、記憶部126は、被測定物Wの光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルVnとの対応関係を記憶している。本実施形態では、光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルVnとの対応関係は、図10に示すような対応テーブルとして構成され、この対応テーブルが記憶部126に記憶される。なお、図10における符号Rt、Gt、Btは、対応テーブルに記録される光の波長領域R、G、Bそれぞれの輝度(0≦Rt、Gt、Bt≦100)である。また、符号Vtnx、Vtnyはそれぞれ、対応テーブルに記録される正規化された法線ベクトルVtnのX成分、Y成分である。なお、本実施形態では、記憶部126に、さらに、対応テーブルから求められる補完関数fx、fyも記憶される。
【0046】
形状復元部128は、各画素で求められた法線ベクトルVnから被測定物Wの各点の傾き情報を求めて被測定物Wの形状を復元する。具体的には、法線ベクトルVnを各画素の傾き情報に変換して、その傾き情報を画素間隔でつなぎ合わせることで被測定物Wの形状を復元する。傾き情報および形状情報は、表示装置DDに出力されるとともに、記憶部126に記憶される。
【0047】
次に、図7図8(A)、(B)を用いて、画像測定装置100における被測定物Wの形状復元の手順を以下に説明する。
【0048】
まず、前段工程(図7、ステップS2)を行う。
【0049】
ここで、前段工程について図8(A)、(B)を用いて詳細に説明する。
【0050】
前段工程は、被測定物Wの形状再現のための光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルVnとの対応関係を予め求める工程である。前段工程は、図8(A)に示す如く、前段照明工程と、前段撮像工程と、前段対応関係生成工程と、を含む。なお、本実施形態の前段工程では、基準球(特定の治具)が被測定物Wの代わりに用いられる。基準球は、大きさ(半径r)が測定され、その精度が求める法線ベクトルのばらつきに影響を及ぼさない値付けされた球をいうものとする。なお、基準球の材質や表面処理は、測定対象となる被測定物Wと同一であることが望ましい。
【0051】
まず、前段照明工程(図8(A)、ステップS21)を行う。前段照明工程は、照明装置110により、互いに異なる光の波長領域R、G、Bを持つ複数の立体角領域IS1、IS2、IS3を備える特定の照射立体角ISを有する照明光を基準球に照射する。なお、本実施形態では、照明装置110を使用することで、照射立体角ISが基準球の各点に対して同一にされている。
【0052】
次に、前段撮像工程(図8(A)、ステップS22)を行う。前段撮像工程は、照明光により生じる基準球からの物体光を所定の観察立体角DSで受光し画像を撮像する。
【0053】
次に、前段対応関係生成工程(図8(A)、ステップS23)を行う。前段対応関係生成工程は、演算部124で光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルVnとの対応関係を求める工程である。前段対応関係生成工程は、範囲設定工程と、対応テーブル生成工程と、補完関数算出工程と、を含む。
【0054】
具体的な手順を、図8(B)、図9図10を用いて以下に説明する。
【0055】
まず、範囲設定工程(図8(B)、ステップS231)を行う。範囲設定工程は、図9に示す如く、撮像された基準球の画像JG_IMGから法線ベクトルVnの方向を求めることができる範囲を計算する。例えば、ノイズレベルを超える輝度の高い画素領域を抽出する、あるいは照明装置110のON/OFFでの差分処理で画素領域を基準球の画像JG_IMGから抽出することで、基準球からの物体光が反射してくる範囲Lを求める。そして、基準球(半径r)における最大表面傾斜角度を符号θとすると、以下のように求めることができる。
θ=acos((L/2)/r) (2)
【0056】
次に、対応テーブル生成工程(図8(B)、ステップS232)を行う。対応テーブル生成工程は、基準球の画像JG_IMG内の物体光の計測可能範囲の各画素に対して、光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルVnとの対応テーブルを作成する。基準球の画像JG_IMG上の球投影像中心をCx、Cy、物体光の計測可能範囲の画素座標をX、Yとする。そして、基準球の画像JG_IMGのX、Y方向の画素サイズに対応する長さをPx、Pyとすると、法線ベクトルV(Vx,Vy,Vz)は、以下のように求められる。
Vx=(X-Cx)*Px (3)
Vy=(Y-Cy)*Py (4)
Vz=sqrt(r*r-Vx*Vx-Vy*Vy) (5)
【0057】
これらを規格化することで、法線ベクトルVnが以下のように求められる。
Vnx=Vx/r (6)
Vny=Vy/r (7)
Vnz=sqrt(1-Vnx*Vnx-Vny*Vny) (8)
【0058】
よって、基準球の画像JG_IMGの画像座標X、Yの光の波長領域R、G、Bの輝度Rc、Gc、Bcに対して法線ベクトルVnのX成分VnxとY成分Vnyを求めることで、図10に示す対応テーブルを生成することができる(対応テーブルとする際には符号Rc、Gc、Bc、Vnx、Vnyをそれぞれ、符号Rt、Gt、Bt、Vtnx、Vtnyに変更する)。
【0059】
次に、補完関数算出工程(図8(B)、ステップS233)を行う。補完関数算出工程は、対応テーブルから補完関数fx、fyを求める。具体的には、まず、対応テーブル内の光の波長領域R、G、Bの輝度Rt、Gt、Btを規格して、以下に示すように変数を2つ(例えば、輝度率Rn、Gnのみ)にする。
Rn=Rt/sqrt(Rt*Rt+Gt*Gt+Bt*Bt) (9)
Gn=Gt/sqrt(Rt*Rt+Gt*Gt+Bt*Bt) (10)
Bn=sqrt(1-(Rt*Rt)/(Rt*Rt+Gt*Gt+Bt*Bt)+(Gt*Gt)/(Rt*Rt+Gt*Gt+Bt*Bt)) (11)
【0060】
そして、法線ベクトルVnのZ成分Vnzは正のみと仮定する。この条件で、対応テーブル内の法線ベクトルVnのX成分Vtnx(Y成分Vtny)が求められるように、輝度率Rn、Gnを変数とする補完関数fx(fy)を求める。補完関数fx、fyは、例えば自由曲面をフィッテイングするスプライン補完を用いることで求めることができる。なお、補完関数fx、fyを求めるのにN個(N≧4)の対応関係を用いる。求められた補完関数fx、fyは、記憶部126に記憶する。
【0061】
これで、前段対応関係生成工程が終了し、前段工程も終了となる。
【0062】
次に、図7に戻り、照明工程(図7、ステップS4)を行う。照明工程では、互いに異なる光の波長領域R、G、Bを持つ複数の立体角領域を備える特定の照射立体角ISを有する照明光を被測定物Wに照射する。なお、本実施形態では、照明装置110を使用することで、照射立体角ISが被測定物Wの各点に対して同一にされている。
【0063】
次に、撮像工程(図7、ステップS6)を行う。撮像工程では、照明光により生じる被測定物Wからの物体光を所定の観察立体角DSで受光し画像を撮像する。
【0064】
次に、演算工程(図7、ステップS8)を行う。演算工程では、画像の各画素において識別された光の波長領域R、G、Bに基づいて、物体光を構成する複数の立体角領域RS1(IS1)、RS2(IS2)、RS3(IS3)と所定の観察立体角DSとの包含関係から各画素に対応する被測定物Wの各点の法線ベクトルVnを求める。
【0065】
具体的には、記憶部126から対応テーブルを呼び出し、識別された光の波長領域R、G、Bの輝度Rc、Gc、Bcが対応テーブルの光の波長領域R、G、Bの輝度Rt、Gt、Btに一致している場合には、そのまま対応する法線ベクトルVnが求める法線ベクトルとなる。一致していない場合には、識別された光の波長領域R、G、Bの輝度Rc、Gc、Bcを正規化して、輝度率Rn、Bnを求める。そして、記憶部126から補完関数fx、fyを読みだして、対応する法線ベクトルVnを算出する。
【0066】
なお、対応テーブルを用いずに、直ちに識別された光の波長領域R、G、Bの輝度Rc、Gc、Bcを正規化して、輝度率Rn、Bnを求める。そして、記憶部126から補完関数fx、fyを読みだして、対応する法線ベクトルVnを算出してもよい。
【0067】
あるいは、一致していない場合でも、補完関数fx、fyを用いずに、対応テーブルの複数の対応関係を用いて、対応する法線ベクトルVnを近似的に算出してもよい。以下にその説明をする。
【0068】
例えば、まず、識別された光の波長領域R、G、Bの輝度Rc、Gc、Bcに近い値と判断できる対応テーブル内のM個(Mセット)についての輝度Rt、Gt、Btと輝度Rc、Gc、Bcとの輝度差二乗和SUMを求める(M≧N≧4、なお、Mは対応テーブル内のすべてであってもよい)。
SUM=(Rc―Rt)*(Rc―Rt)+(Gc―Gt)*(Gc―Gt)+(Bc―Bt)*(Bc―Bt) (12)
【0069】
次に、輝度差二乗和SUMが一番近くなる順番で、N個(Nセット)の輝度Rt、Gt、Btを選択する。そして、対応テーブルによりこれらに対応するN個の法線ベクトルVnを求める。
【0070】
そして、求めたN個の法線ベクトルVnを平均することで、識別された光の波長領域R、G、Bの輝度Rc、Gc、Bcに対して法線ベクトルを求めるようにしてもよい。
【0071】
そして、形状復元工程(図7、ステップS10)を行う。形状復元工程は、法線ベクトルVnから被測定物Wの各点の傾き情報を求めて画素サイズを考慮して被測定物Wの形状を復元する。
【0072】
このようにして、本実施形態では、互いに異なる光の波長領域R、G、Bを持つ複数(3つ)の立体角領域IS1、IS2、IS3を備える特定の照射立体角ISを有する照明光を被測定物Wに照射する。そして、画像の各画素において識別された光の波長領域R、G、Bに基づいて、物体光を構成する複数の立体角領域RS1、RS2、RS3と所定の観察立体角DSとの包含関係から各画素に対応する被測定物Wの各点の法線ベクトルVnを求める。このため、各画素において相応の輝度で各波長領域R、G、Bを検出することが可能で、安定して精度の高い法線ベクトルVnを求めることができる。同時に、法線ベクトルVnから被測定物Wの形状を復元することから、迅速かつ高精度に形状を復元することが可能である。
【0073】
また、本実施形態では、フィルター部114が照射光軸L1上のレンズ部116の焦点距離fの近傍に配置され、照射立体角ISが被測定物Wの各点に対して同一にされている。このため、被測定物Wの各点すべてから、均質な情報を撮像される画像に取り込むことができる。すなわち、被測定物Wの表面の情報を、場所によらず、等しく定量化して形状復元して評価することが可能である。なお、これに限らず、フィルター部が照射光軸L1上のレンズ部の焦点距離fの近傍に配置されていなくてもよい。被測定物Wによっては、照射光軸L1の極近傍にある被測定物Wの各点のみの高精度な情報が得られればよい場合もあるからである。
【0074】
また、本実施形態では、フィルター部114が、複数の立体角領域IS1、IS2、IS3が照明光の照射光軸L1周りに設けられるように、照射光軸L1周りに互いに異なるフィルター領域CF1、CF2、CF3を備える。このため、照射光軸L1を回転軸として同一傾斜角となる複数の法線ベクトルVnが存在した際には、それらを区別した状態で求めることができる。すなわち、法線ベクトルVnから被測定物の表面の傾き(の照射光軸L1を回転軸とする傾斜角の方向)を忠実に再現することができる。
【0075】
なお、具体的に、本実施形態では、図3(A)に示すフィルター部114を使用したが、これに限定されず、図3(B)の如くでもよい。この場合には、フィルター部114が照射光軸L1近傍のみを均一なフィルター領域CF4として、他は図3(A)と同じフィルター領域CF1、CF2、CF3を備える。このため、このフィルター部114を用いることで、法線ベクトルVnの微かな傾きを検出して法線ベクトルVnを求めるといった工数を削減でき、必要な傾きのみを検出することができる。
【0076】
あるいは、図3(D)の如くでもよい。この場合には、フィルター部114が図3(A)と同じような構成を同心円状に2つ備える。つまり、このフィルター部114は、照射光軸L1周りに互いに異なるフィルター領域CF21、CF22、CF23を備え、さらにその外側に互いに異なるフィルター領域CF11、CF12、CF13を備える。このため、このフィルター部114を用いることで、法線ベクトルVnの傾きを、図3(A)のフィルター部114よりも細かく検出することができる。
【0077】
もちろん、図3(C)の如くでもよい。この場合には、図3(A)とは異なり、フィルター部114が、照射光軸L1に対して、同心円状に互いに異なるフィルター領域CF1、CF2、CF3、CF4を備える。つまり、このフィルター部114は、照射光軸L1に対して同一傾斜角となる複数の法線ベクトルが存在した際には、それらを区別しない状態で傾斜角度の急峻さを細かく求めることなる。このため、照射光軸L1周りの回転方向の情報はないものの、被測定物Wの良不良を判別する際には、形状復元の際の処理時間と工数を短縮でき、その判別を容易にすることが可能となる。
【0078】
なお、図3(F)~図3(H)はそれぞれ、図3(B)~図3(D)のフィルター部114に対応する照射立体角ISおよび立体角領域IS1、IS2、IS3、IS4、IS11、IS12、IS13、IS21、IS22、IS23を示している。
【0079】
また、本実施形態では、フィルター部114は、光属性として光の波長領域R、G、Bを互いに異ならせている。このため、法線ベクトルVnが傾いていない状態(被測定物Wに傾きがない状態)では、白色光となり、視覚的に傾きがない状態であることを直感的にも認識が容易である。また、傾きがない状態では、白色光であることから、正対した被測定物W自体の色合いも容易に判別することができる。同時に、撮像装置CMには、通常のカラーCDDカメラやカラーCMOSカメラをそのまま使用することができる。このため、光属性の識別は低コストかつ容易に実現することができる。なお、これに限らず、光の波長領域は、R、G、Bの3つではなく、2つ以上であればよい。また、また、その色も、赤色波長領域、緑色波長領域、青色波長領域ではなく、別の色の波長領域を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
なお、光属性としては、光の波長領域R、G、B以外に、偏光状態、輝度等を含むものとする。つまり、例えば、光属性としては、偏向状態とすることもできる。その際には、例えば光の偏向状態を変化させる偏光板等をフィルター部で使用する。そして、撮像装置CMには、対応する偏向板を用いるようにして、光属性を識別するようにしてもよい。
【0081】
また、本実施形態では、照明工程の前段に、前段工程を有し、前段工程では、特定の冶具として基準球が被測定物Wの代わりに用いられ、前段照明工程と前段撮像工程とが行われ、更に、光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルVnとの対応関係を求める前段対応関係生成工程を行う。すなわち、光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルVnとの対応関係が予め求められるので、被測定物Wを撮像して、形状を測定・復元することを、迅速かつ安定して行うことができる。同時に、光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルVnとの対応関係を求める際に、被測定物Wを特定の冶具に変える以外は、画像測定装置100において被測定物Wの測定の際の配置や構成をそのまま使用できる。このため、前段工程から形状復元工程までを効率よく迅速に行うことができる。さらに、特定の冶具が基準球であるので、前段撮像工程を1回で済ますことができ、かつ、光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルVnとの対応関係を容易かつ迅速に求めることができる。
【0082】
なお、これに限らず、前段工程がなくてもよい。その場合には、演算工程において、光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルVnとの対応関係を求めて法線ベクトルを求めるようにしてもよい。あるいは、光の波長領域R、G、Bが識別されたら、いずれかの一番優位な光の波長領域で直接的に法線ベクトルを操作者が図示せぬ入力装置を用いて指定してしまうといったことでもよいし、例えば光線追跡法などのシミュレーションを用いて法線ベクトルを求めるようにしてもよい。あるいは、前段工程を別の構成や別の手法で行ってもよい。例えば、画像測定装置100とは別の装置を使用してもよいし、画像測定装置100において別の照明装置や撮像装置CMを使用してもよい。
【0083】
あるいは、特定の冶具として、基準球ではなく、基準平面を用いてもよい(なお、基準平面とは、表面のうねりや粗さが測定したい法線ベクトルの傾きに対して無視できる状態の平面をいうものとする。また、被測定物Wは、まさにこれから測定を行うものでもよいし、同一形状で別のものでもよいし、まったく別の形状のものであってもよい。)。
【0084】
例えば、基準平面を特定の治具として用いるならば、以下のような工程を行う。
【0085】
まず、照明装置110で、基準平面を照射し基準平面を撮像する。このとき、基準平面を観察光軸L2に対して傾斜させる角度を異ならせて、複数回(N≧4)撮像する。そして、傾斜させた角度に対応する法線ベクトルVnをそれぞれ求める。そして、それぞれの法線ベクトルVnに対応する光の波長領域R、G、Bの輝度Rc、Gc、Bcを求める。このときの輝度Rc、Gc、Bcは、撮像された画像内の基準平面の部分のみの平均を取ることで求める。これにより、図10に示すような、光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルとの対応関係を表す対応テーブルを求める。なお、ここで説明した手順は、図8(A)、(B)のうちのステップS233を除く工程を示している。
【0086】
もちろん、被測定物W自身をそのまま用いてもよい。その場合には、以下のような工程を行う。
【0087】
まず、照明装置110で、被測定物Wを照射して仮基準平面を決定する。例えば、この仮基準平面は、画像内の被測定物Wの部分における光の波長領域R、G、Bの輝度Rc、Gc、Bcの変化量を計算して、その変化量が最も少ない領域を求めることで決定することができる。この仮基準平面を決定したら、あとは、上述した基準平面を用いた場合と同一の工程となる。このため、以降の説明は省略する。
【0088】
また、本実施形態では、処理装置120が光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルVnとの対応関係を記憶する記憶部126を備え、演算部124がその対応関係に基づいて法線ベクトルVnを求める。このため、その対応関係が複雑であっても、演算部124にその対応関係を適切に読み出して使用することができる。また、対応関係が対応テーブルとして構成されている。このため、演算部124での演算量は少なくてすみ、迅速に法線ベクトルVnを求めることができる。同時に、対応関係は補完関数fx、fyとしても構成されている。このため、補完関数fx、fyを用いることで、対応テーブルには対応がない光の波長領域R、G、Bの輝度Rc、Gc、Bcに対しても、迅速に法線ベクトルVnを求めることができる。
【0089】
なお、これに限らず、記憶部がなくてもよい。その場合には、外部から直接に上述した対応関係が演算部に読み込まれるようにしてもよい。あるいは、法線ベクトルVnを求める毎に、対応関係を求めるような構成であってもよい。あるいは、対応テーブルを構成せずに、補完関数fx、fyだけが構成されていてもよい。あるいは、対応テーブルを構成し、補完関数fx、fyを構成しなくてもよい。あるいは、対応テーブルも補完テーブルも構成しなくてもよい。その場合には、得られた光の波長領域R、G、Bの輝度Rc、Gc、Bcに対して操作者が直接的に法線ベクトルを決定してもよい。
【0090】
また、本実施形態では、法線ベクトルVnは、正規化されている。このため、光の波長領域R、G、Bと法線ベクトルVnとの対応関係を規定する対応テーブル及び補完関数fx、fyを求める際のパラメータを少なくできる。このため、対応テーブルに必要な記憶容量を低減でき、且つ補完関数fx、fyの算出のための演算量を低減することができる。なお、これに限定せず、正規化しない法線ベクトルVが使用されてもよい。
【0091】
すなわち、本実施形態では、被測定物Wを撮像した画像内の被測定物Wの各点の情報を迅速に復元することが可能である。
【0092】
なお、第1実施形態では、照明装置110は、光源部112と、フィルター部114と、レンズ部116と、ハーフミラー118とを備えていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図11に示す第2実施形態の如くであってもよい。第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、光源部212とフィルター部214との間に第2フィルター部213をさらに備えている。このため、第2フィルター部213以外の要素については、符号の上1桁を変更し、説明を省略する。
【0093】
本実施形態では、第2フィルター部213が、照射光軸L1上であって、光源部212とフィルター部214との間に配置されている。第2フィルター部213は、フィルター部214と同様に、照明光を遮光する絞りと光属性を変化させるフィルター領域とを備えることができる。第2フィルター部213は、被測定物Wの表面にその像が結像されるような焦点位置の近傍に配置される。このため、第2フィルター部213により、迷光の防止ができると共に、照明光のさらなる均質化および複雑な光属性の変更などを行うことができる。
【0094】
なお、上記実施形態では、画像測定装置は、被測定物Wの反射光を物体光として受光して、被測定物Wの測定を行っていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図12に示す第3実施形態の如くであってもよい。第3実施形態では、上記実施形態とは異なり、被測定物Wを透過した光を物体光として受光し、被測定物Wの測定を行う。このため、本実施形態では、被測定物Wが照明光を反射しにくく、透過しやすい材質であっても、被測定物Wの形状を測定・復元することが可能である。
【0095】
なお、上記実施形態では、照射光軸L1と観察光軸L2とが同軸であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、図13図14に示す第4実施形態の如くであってもよい。第4実施形態では、上記実施形態とは異なり、照射光軸L1と観察光軸L2とが被測定物Wの表面で交差する構成とされている。照射光軸L1と観察光軸L2とが被測定物Wの表面で角度ωで交差する構成とされた結果、変更・追加された要素以外の要素については、符号の上1桁を変更し、説明を省略する。
【0096】
本実施形態では、被測定物Wを観察光軸L2周りに回転可能な回転台RTを備える。そして、処理装置420は、画像保持部422と、演算部424と、制御部425と、記憶部426と、形状復元部428と、を備える。本実施形態では、処理装置420において制御部425のみが上記実施形態とは異なるので、制御部425のみを説明する。制御部425は、回転台RTの回転駆動を制御する信号を回転台RTに出力する。なお、回転角の指示は図示せぬ入力装置あるいは、記憶部426に記憶されたプログラムによって行われる。また、制御部425は、回転台RTの回転角信号を演算部424に出力する。演算部424は、回転台RTの回転角信号とそのときに得られた画像とを紐付けして、複数の立体角領域IS1、IS2、IS3と所定の観察立体角DSとの包含関係から各画素に対応する被測定物の各点の法線ベクトルを求める。
【0097】
次に、図14を用いて、画像測定装置400における被測定物Wの形状復元の手順を以下に説明する。なお、前段工程、照明工程、撮像工程、演算工程、および形状復元工程の詳細は、第1実施形態と同様なので説明は省略する。
【0098】
まず、前段工程(図14、ステップS2)を行う。そして、照明工程(図14、ステッ
プS4)を行う。そして、撮像工程(図14、ステップS6)を行う。
【0099】
次に、回転工程(図14、ステップS7)を行う。本実施形態では、照明装置410による複数の立体角領域IS1、IS2、IS3が、観察立体角DSの観察光軸L2に対して回転対称とはなっていない。このため、回転工程は、撮像工程毎に、被測定物Wを観察光軸L2周りに所定の角度θ1で回転させる。なお、この所定の角度θ1は、照明装置410の照射立体角ISを被測定物Wの表面に投射した際に占める平面角度以下とする。この回転工程は上記照明工程と撮像工程(照明条件が回転工程を経ても変化しなければ撮像工程のみでよい)を所定の回数NN行った後に前記演算工程を行う。なお、所定の回数NNは、以下の式を満足する。
NN=360/θ1 (13)
【0100】
次に、演算工程(図14、ステップS8)を行う。演算工程では、照射光軸L1と観察光軸L2と交差する角度ωと所定の角度θ1を考慮したうえで、法線ベクトルVnを求める。そして、形状復元工程(図14、ステップS10)を行う。
【0101】
これにより、本実施形態では、被測定物Wの表面に大きな傾斜が存在しても、その傾きを、測定方向に依存することなく、等方的に計測・再現することができる。
【0102】
なお、この回転台RTは、照射光軸L1と観察光軸L2とが一致する同軸落射照明光であっても有効である。例えば、フィルター部のフィルター領域が照射光軸L1周りに回転対称でない場合には、法線ベクトルVnの測定精度に方向依存性が生じるおそれがある。このため、このような回転台RTを第1実施形態のような画像測定装置に用いることで、法線ベクトルVnの測定精度の方向依存性を改善することが可能である。
【0103】
なお、上記実施形態の画像測定装置では、被測定物Wの画像を処理して、前記被測定物の形状を測定し、復元するまでを示していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図15に示す第5実施形態の如くであってもよい。第5実施形態では、上記実施形態とは異なり、演算部524が、更に、予め格納している被測定物Wの各点の法線ベクトルVnbと、新たに撮像された被測定物Wから求められた各点の法線ベクトルVnとを比較し、互いに異なる部分を抽出する整合判定部524Aを備える。このため、整合判定部524Aの機能に関係する演算部524と、記憶部526と、形状復元部528以外の要素については、符号の上1桁を変更し、説明を省略する。
【0104】
演算部524では、まず、被測定物Wについて、すべての法線ベクトルを求めて、それぞれを2次元(XY平面)で、各画素に紐付けする(これを法線ベクトル群という)。次に、この法線ベクトル群を、例えば、1deg刻みで360回回転させて、記憶部526に格納する。すなわち、記憶部526には、360個の法線ベクトル群が記憶されている(法線ベクトルVnは予め規格化されている)。これが、予め格納している被測定物Wの各点の法線ベクトルVnとなる。
【0105】
これに対して、新たに被測定物Wの撮像をした際には、演算部524は、その被測定物Wの各点の法線ベクトルVnを求める。そして、演算部524は、それぞれを2次元(XY平面)で、各画素に紐付けして法線ベクトル群を構成する。そして、演算部524は、この法線ベクトル群と、先に記憶部526に記憶された360個の法線ベクトル群とそれぞれ差分二乗和(パターンマッチング)をとり、もっともその値が小さくなる(もっともパターンがマッチングする場合の)1つの法線ベクトル群を整合判定部524Aに読み込む。そして、整合判定部524Aでは、記憶部526から読みだされたもっともパターンがマッチングする法線ベクトル群と新たに求められた法線ベクトル群とを比較する。そして、整合判定部524Aでは、法線ベクトルVnが互いに異なる部分を求め、その異なる部分の法線ベクトルの差分を計算する。その差分がある閾値以上である場合には、整合判定部524Aは、その位置が欠陥であるとする情報を付加する(これを欠陥情報と称する)。そして、整合判定部524Aは、欠陥情報と新たに求められた法線ベクトル群とを形状復元部528に出力する。
【0106】
形状復元部528は、整合判定部524Aからの出力に基づいて、欠陥情報のついた状態で被測定物Wの形状を復元する。あるいは、欠陥情報のある部分とその欠陥情報を復元する。
【0107】
このように、本実施形態では、整合判定部524Aを備えることで、被測定物W同士で、相違する部分を判別でき、容易に欠陥の検出を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、被測定物に照明光を照射し、撮像された画像を処理して、前記被測定物の形状を復元する形状復元方法とそれを利用する画像測定装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
100、400、500…画像測定装置
110、210、310、410、510…照明装置
112、212、312…光源部
114、214、314…フィルター部
116、216、316…レンズ部
118、218…ハーフミラー
120、420、520…処理装置
122、422、522…画像保持部
124、424、524…演算部
126、426、526…記憶部
128、428、528…形状復元部
213…第2フィルター部
425…制御部
524A…整合判定部
B、G、R…波長領域
Bc、Bt、Gc、Gt、Rc、Rt…輝度
Bn、Gn、Rn…輝度率
CF1、CF2、CF3、CF4、CF11、CF12、CF13、CF21、CF22、CF23…フィルター領域
CM…撮像装置
Cx、Cy…球投影像中心
DD…表示装置
DS…観察立体角
DS1、DS2、DS3、IS1、IS2、IS3、IS4、IS5、IS11、IS12、IS13、IS21、IS22、IS23、RS1、RS2、RS3…立体角領域
f…焦点距離
fx、fy…補完関数
IMC…画像キャプチャ
IMP…画像処理装置
IS、IS’…照射立体角
JG…基準球
JG_IMG…基準球の画像
L…範囲
L1…照射光軸
L2…観察光軸
L3…反射光軸
LS…従来照明
M、NN、N…回数
P、P’…位置
r、R0…半径
RS…反射立体角
RT…回転台
V、Vn、Vnb、Vtn…法線ベクトル
Vnx、Vtnx、Vx…X成分
Vny、Vtny、Vy…Y成分
Vnz、Vtnz、Vz…Z成分
W…被測定物
θ、θ1、φ、ω…角度
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