(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-21
(45)【発行日】2025-05-29
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20250522BHJP
【FI】
G01N35/02 D
(21)【出願番号】P 2023567622
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 JP2022042304
(87)【国際公開番号】W WO2023112575
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2021203248
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂田 健士郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】川原 鉄士
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓也
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-206380(JP,A)
【文献】特開2007-040843(JP,A)
【文献】特開2009-031203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を反応容器に分注する試料分注機構と、
試薬を前記反応容器に分注する試薬分注機構と、
電極を有する攪拌機構と、
前記反応容器を回転および停止させる反応ディスクと、
前記反応容器が、攪拌位置に停止したときに、前記電極に電圧を印加する制御部と、を備え、
前記制御部は、オペレーション状態中、
前記試料および前記試薬の混合液が収容された前記反応容器が、前記攪拌位置に停止したときに、前記電極に電圧を印加して前記混合液に超音波を照射することで前記混合液を攪拌する攪拌動作を行い、
空の状態で前記試薬分注機構によって洗剤または水が分注された前記反応容器が、前記攪拌位置に停止したときに、前記攪拌動作に代えて、前記電極に攪拌動作時と比べて小さな電圧を印加して電気インピーダンスを測定する測定動作を行う、自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記混合液が分析された後の前記反応容器を洗浄する洗浄機構と、
前記試薬分注機構が分注する前記試薬および前記洗剤または前記水のボトルが配置される試薬ディスクと、をさらに備え、
前記制御部は、前記混合液の分析と並行して少なくとも一部の前記反応容器に対してバックグラウンドメンテナンスを行うとともに、前記バックグラウンドメンテナンスの対象
であって空の状態で前記試薬分注機構によって前記洗剤または前記水が分注された前記反応容器が、前記攪拌位置に停止したときに電気インピーダンスを測定するものであって、
前記バックグラウンドメンテナンスは、少なくとも一部の前記反応容器に対して、前記試料を分注せず、前記試薬分注機構によって前記洗剤または前記水のみを分注し、漬け置き洗いした後に前記洗浄機構によって前記洗剤または前記水を吸引する洗浄である、自動分析装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の自動分析装置において、
前記攪拌機構は、複数の前記電極で構成され、
前記制御部は、
前記洗剤または前記水のみが分注された共通の前記反応容器
が、前記攪拌位置に停止している間に、当該共通の前記反応容器に対して、同じ前記攪拌機構の異なる前記電極に電圧を印加して電気インピーダンスを測定する、自動分析装置。
【請求項4】
請求項
2に記載の自動分析装置において、
前記攪拌機構は、複数設けられており、
前記制御部は、
それぞれの前記攪拌機構の前記攪拌位置に、前記洗剤または前記水のみが分注された異なる前記反応容器が同時に停止した場合に、その停止中に、各前記攪拌機構の前記電極に電圧を印加して電気インピーダンスを測定する、自動分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、測定した前記電気インピーダンスのピーク値が閾値より低い場合、前記電極が故障であると判定する、自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、測定した前記電気インピーダンスの経時変化に基づいて、前記電極の劣化時期を出力する、自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波の音響放射圧の効果を用いて、反応容器内の試料と試薬を非接触で混合する技術が開発され、自動分析装置に実装され実用化されている。この技術では、圧電素子に電圧を印加して超音波を発生させ、恒温槽内の恒温水などを媒体として、反応容器に向けて超音波を照射し、反応容器内の液体を混合する。また、超音波照射に関する異常を検出する技術に関しても、下記のような特許文献が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、試料と試薬を攪拌するときに超音波発生源となる圧電素子に電圧を印加し、そのときの検出波形により、圧電素子の劣化等による発生超音波の強度不足などの異常を検出する自動分析装置が開示されている。そして、特許文献2には、圧電素子からの超音波で反応液を攪拌する前に、攪拌時より低い電圧を圧電素子に印加して電気的インピーダンスを測定することで、容器や反応液の有無などの異常を検知する自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3746239号公報
【文献】特開2010-96638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の特許文献1や特許文献2の技術では、試料と試薬を含む反応液を収容する反応容器が攪拌位置にあるときに、圧電素子の電極に電圧を印加して異常を検出しているため、反応液の液性によって検出の精度に影響が出てしまう。また、特許文献2の技術のように、混合液の攪拌の前に、異常検出のための別のシーケンスを加えると、自動分析装置としての処理能力が低下してしまう。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、攪拌機構を構成する電極の異常を高精度に検出しつつ、処理能力の低下を抑制した自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために、本発明は、試料を反応容器に分注する試料分注機構と、試薬を前記反応容器に分注する試薬分注機構と、電極を有する攪拌機構と、前記反応容器を回転および停止させる反応ディスクと、前記試料と前記試薬の混合液が収容された前記反応容器が、攪拌位置に停止したときに、前記電極に電圧を印加して前記混合液に超音波を照射する制御部と、を備え、前記制御部は、オペレーション状態中、空の状態で前記試薬分注機構によって液体が分注された前記反応容器が、前記攪拌位置に停止したときに、前記電極に電圧を印加して電気インピーダンスを測定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、攪拌機構を構成する電極の異常を高精度に検出しつつ、処理能力の低下を抑制した自動分析装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】攪拌機構と、これに接続される電力増幅器及びインピーダンス測定部の構成を示す図。
【
図5】インピーダンス測定回路の構成の詳細を示す図。
【
図6A】正常状態の圧電素子で測定されたImpSを示すグラフ。
【
図6B】劣化状態の圧電素子で測定されたImpSを示すグラフ。
【
図6C】故障状態の圧電素子で測定されたImpSを示すグラフ。
【
図7】圧電素子で測定される電気インピーダンスのピーク値の経時変化を示すグラフ。
【
図8A】液体を収容する反応容器に対して超音波を照射したときの反射波を示す概念図。
【
図8B】液体を収容する反応容器に対して超音波を照射したときに測定されるImpSのグラフ。
【
図9A】空の反応容器に対して超音波を照射したときの反射波を示す概念図。
【
図9B】空の反応容器に対して超音波を照射したときに測定されるImpSのグラフ。
【
図10】各サイクルにける、第1攪拌機構~第6攪拌機構の動作を示す図。
【
図11】実施例1に係る攪拌機構のサイクル毎の動作を示すタイムチャート。
【
図12】バックグラウンドメンテナンスの際に行われる、圧電素子の異常判定に関する実施例1のフローチャート。
【
図13】実施例2に係る攪拌機構のサイクル毎の動作を示すタイムチャート。
【
図14】バックグラウンドメンテナンスの際に行われる、圧電素子の異常判定に関する実施例2のフローチャート。
【
図15】バックグラウンドメンテナンスの際に行われる、圧電素子の異常判定に関する実施例3のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。以下に説明する実施の形態は一例に過ぎず、その構成要素、要素ステップは、特に明示した、あるいは原理的に明らかであるような場合を除いて必須のものではない。
【0011】
図1は、自動分析装置の全体構成図である。自動分析装置は、主要な構成として、試料搬送機構19と、試薬ボトル12が搭載される試薬ディスク11と、反応容器2が搭載される反応ディスク1と、試料分注機構13,14と、試薬分注機構7,8,9,10と、攪拌機構5,6と、分光光度計4と、洗浄機構3と、洗浄槽15,16と、試薬用ポンプ20と、試料用ポンプ21と、洗浄用ポンプ22と、を備える。さらに、自動分析装置は、各部を制御する制御部41と、各種データを格納するデータ格納部42と、外部より必要なデータをデータ格納部42に入力する入力部43と、分光光度計4で得られる光量から吸光度を算出する測定部44と、吸光度から成分量を割り出す解析部45と、解析した成分量データなどを外部に表示または出力する出力部46と、を有する。なお、反応ディスク1において周方向に配置された反応容器2は、恒温槽30中を循環する恒温水と接触しており、指定された温度の恒温水を介して一定温度に保たれている。
【0012】
ここで、試料搬送機構19は、分析対象の試料(検体)を収容した試料容器17を1つ以上搭載可能なラック18(搬送部材)を搬送する。試薬ディスク11上には、試料の分析に用いる試薬を収容する複数の試薬ボトル12が周方向に並べて配置されている。反応ディスク1上には、試料と試薬とを混合して反応させる複数の反応容器2が周方向に並べて配置されている。試料分注機構13,14は、試料搬送機構19により試料分注位置に搬送された試料容器17から反応容器2に試料を分注する。試薬分注機構7,8,9,10は、試薬ボトル12から反応容器2に試薬を分注する。攪拌機構5,6は、反応容器2に分注された試料と試薬との混合液(反応液)を攪拌する。分光光度計4は、図示しない光源から反応容器2の反応液を介して得られる透過光を受光する。洗浄機構3は、使用済みの反応容器2を洗浄する。洗浄槽15,16は、それぞれ試料分注機構13,14の稼働範囲に配置されており、試料ノズルを洗浄水により洗浄する。なお、試薬分注機構7,8,9,10の稼働範囲にも、図示しない洗浄槽がそれぞれ配置されており、各洗浄槽で各試薬ノズルが洗浄水により洗浄される。
【0013】
試料の成分量の分析は、主に次のような手順で行われる。まず、試料搬送機構19によって反応ディスク1近くに搬送されたラック18上に載置された試料容器17内の試料を、試料分注機構13(14)の試料ノズルにより反応ディスク1上の反応容器2に分注する。次に、分析に使用する試薬を試薬ディスク11上の試薬ボトル12から試薬分注機構7,8,9,10の試薬ノズルにより先に試料を分注した反応容器2に対して分注する。
続いて、攪拌機構5(6)で反応容器2内の試料と試薬との混合液を攪拌する。その後、測定部44は、光源から発生させた光を攪拌後の混合液の入った反応容器2に透過させ、透過光の光度を分光光度計4により測定し、得られた吸光度データをデータ格納部42に格納する。解析部45は、格納された吸光度データを検量線データに基づき解析する。この解析により、試料に含まれる成分量を分析できる。自動分析装置の各部の制御や分析に必要なデータは、入力部43からデータ格納部42に入力され、また、各種データや解析結果は、出力部46から表示または出力される。
【0014】
なお、以上は自動分析装置が生化学分析を行う場合の構成例であり、自動分析装置が実行する解析内容によって測定機構は異なる。自動分析装置で用いられる測定方法としては、試料中の分析対象成分と反応することによって反応液の色が変わるような試薬を用いる分析方法(比色分析)や、試料中の分析対象成分と直接または間接的に特異的に結合する物質に標識体を付加した試薬を用い、標識体をカウントする分析方法(免疫分析)などが知られているが、いずれも試料容器に収容された試料、または試薬ボトルに収容された試薬を分注機構で反応容器に分注し、混合させる工程を含む。分注工程を含む分析を実行可能な自動分析装置においては、本実施例の分注機構が適用可能である。
【0015】
図2は、分注機構の構成図である。本分注機構では、上下(Z軸方向)に駆動可能なシャフト51の上端位置に、θ
1アーム52の一端部が、XY面内で回転可能に取り付けられている。また、θ
2アーム53の一端部は、θ
1アーム52の自由端である他端部に、XY面内で回転可能に取り付けられている。また、θ
2アーム53の自由端である他端部にはZ軸方向下方に延長するように分注ノズル54が取り付けられている。なお、分注ノズル54とシリンジ55とは、チューブ56を介して接続されている。チューブ56は、シャフト51の台座からシャフト51、θ
1アーム52、θ
2アーム53を通り、分注ノズル54の一端側に接続されている。シリンジ55には、その内容積を可変するためのプランジャ57が移動可能に取り付けられている。プランジャ57の移動位置に応じ、分注ノズル54の先端から試料または試薬の吸引または吐出が行われる。また、分注ノズル54には、静電容量方式の接触検知器58が接続されており、分注ノズル54が試料、試薬などの導電体と接触したことを検出することができる。
【0016】
図3は、攪拌機構5,6の詳細を示す図である。試薬と試料の混合液は、十分な攪拌時間を確保するために、攪拌機構5と攪拌機構6で併せて2回の攪拌が行われる。攪拌機構5は、第1試薬と試料の混合液を攪拌するための第1攪拌機構5aと、第2試薬と試料の混合液を攪拌するための第2攪拌機構5bと、第3試薬と試料の混合液を攪拌するための第3攪拌機構5cとで構成される。攪拌機構6は、第1試薬と試料の混合液を攪拌するための第4攪拌機構6aと、第2試薬と試料の混合液を攪拌するための第5攪拌機構6bと、第3試薬と試料の混合液を攪拌するための第6攪拌機構6cとで構成される。いずれの攪拌機構も、圧電素子から発生させる超音波によって、混合液を非接触で攪拌することが可能となっている。
【0017】
図4は、攪拌機構と、これに接続される電力増幅器及びインピーダンス測定部の構成を示す図である。
図4では、反応ディスク1の径方向に沿った鉛直方向断面の攪拌機構が示されており、コネクタ201に対して制御部41側に配置される電気的な回路は、模式的な構成を示している。以下では、第1攪拌機構5aを例に挙げて説明するが、他の攪拌機構についても、同様である。
【0018】
図4に示すように、攪拌機構は、超音波を発生させる圧電素子202と、圧電素子202を恒温槽30に取り付けるための治具203と、反応容器2等を透過してきた超音波を反応容器2に向けて反射させる反射板223と、圧電素子202と制御部41側とを電気的に接続するコネクタ201と、を備える。また、圧電素子202は、一方の面(空気側面)に設けられて空気と接触する分割電極204,209と、他方の面(恒温水側面)に設けられて恒温水208と接触する恒温水側電極205と、を有する。なお、恒温水側電極205の一部は、圧電素子202の下側の端面に沿って空気側面に折り返されている。
【0019】
分割電極204,209は、異なる高さ位置に複数の電極として分割されている。本実施形態では、13個の分割電極を設けた例(
図4では一部のみを示す)について説明するが、分割電極の個数は13個に限られない。各分割電極の寸法及び形状は、個別に任意に設計可能であるが、本実施形態では、上から1~12番目の分割電極204はすべて同一形状(同一の幅及び長さ)であり、13番目(一番下)の分割電極209だけが他の分割電極204より若干長く形成されている。各分割電極は、それぞれコネクタ201の各ピンに一対一で接続される。
【0020】
次に、制御部41側の電気的な回路の構成について、説明する。まず、電力増幅器206は、分割電極に電圧を印加することにより、圧電素子202を駆動し、超音波を発生させるものである。この電力増幅器206は、
図4に示すように、具体的には、駆動波形を発生させる関数発生回路210と、その波形を所望の電力に増幅する終段増幅回路211と、電圧印加時に圧電素子202に流れる電流を測定する電流モニタ212と、を備える。電流モニタ212は、例えば電磁的なカップリングを利用する構成とすることができる。一方、インピーダンス測定回路207は、圧電素子202の電気インピーダンスの周波数特性(以下「ImpS」と略記する場合がある)を測定するものである。圧電素子202のImpSは、例えば、各分割電極にかかるImpS(すなわち、各分割電極204,209と恒温水側電極205との間におけるImpS)の集合によって表される。
【0021】
電力増幅器206には、制御部41と接続する第1インターフェース部221が設けられており、制御部41は、この第1インターフェース部221を介して電力増幅器206を制御する。同様に、インピーダンス測定回路207には、制御部41と接続する第2インターフェース部222が設けられており、制御部41は、この第2インターフェース部222を介してインピーダンス測定回路207を制御する。また、インピーダンス測定回路207は、第2インターフェース部222を介してImpSの測定結果を制御部41に送信する。
【0022】
ここで、電力増幅器206及びインピーダンス測定回路207は、コネクタ201を介して攪拌機構と接続されている。さらに、電力増幅器206及びインピーダンス測定回路207と、コネクタ201との間には、リレー群213が配置されている。リレー群213は、複数のスイッチを備え、制御部41からの指令で各スイッチの開閉が制御される。
すなわち、リレー群213は、電力増幅器206及びインピーダンス測定回路207と、各分割電極204,209との接続を切り替えるスイッチ装置として機能する。
【0023】
制御部41は、反応容器2内の液体の液面位置(液面高さ)に合わせて、適切な位置の分割電極204,209を1つ以上選択し、選択した分割電極204,209に電圧を印加するようリレー群213を制御する。例えば、制御部41は、液面位置が低い場合には、液面位置に応じた低い位置の分割電極のみに電圧を印加し、液面位置がより高い場合には、より高い位置の分割電極に電圧を印加することができる。このようにして、反応容器114への超音波の照射位置が調整される。
【0024】
また、電力増幅器206及びインピーダンス測定回路207と、リレー群213との間には、圧電素子202を電力増幅器206と接続するか、圧電素子202をインピーダンス測定回路207と接続するか、を切り替える第1切替スイッチ215が設置されている。さらに、インピーダンス測定回路207とコネクタ201との間には、インピーダンス測定回路207を圧電素子202と接続するか、インピーダンス測定回路207をグランドと接続するか、を切り替える第2切替スイッチ214が設置されている。例えば、攪拌動作時には、第1切替スイッチ215は電力増幅器206の端子216に接続され、第2切替スイッチ214は端子219に接続(最終的にグランド220に接続)される。一方、ImpS測定時には、第1切替スイッチ215はインピーダンス測定回路207の出力端子217に接続され、第2切替スイッチ214はインピーダンス測定回路207の入力端子218に接続される。
【0025】
このように、本実施形態の制御部41は、電力増幅器206を介して分割電極204,209のうち1個以上に電圧を印加するとともに、インピーダンス測定回路207を介して圧電素子202のImpSを測定する。なお、インピーダンス測定回路207は、
図4に示すように制御部41から独立した構成とする必要はなく、インピーダンス測定回路207及び制御部41が統合された単一の電子回路で構成されても良い。
【0026】
図5は、インピーダンス測定回路207の構成の詳細を示す図である。
図5に示すインピーダンス測定回路207において、ダイレクト・ディジタル・シンセサイザー(Direct Digital Synthesizer、以下「DDS」と略記する)301は、任意の周波数の正弦波形電圧を発生させる。DDS301で発生した正弦波形電圧は、アンプ302で増幅され、出力端子217から出力される。出力端子217は、第1切替スイッチ215及びリレー群213を介して分割電極204に接続されており、分割電極204によって、圧電素子202に正弦波形電圧が印加される。
【0027】
ここで、印加される電圧の大きさは、圧電素子202の特性等に応じて適宜設計可能であるが、ImpS測定時は、攪拌動作時と比べて小さい電圧(例えば、微弱電圧と呼ばれる電圧)にしておくと、圧電素子202の破損を防止できる。電圧印加時に圧電素子202に流れる電流は、恒温水側電極205及びリレー群213を介して入力端子218に流入し、検出抵抗305で電圧値として検出される。
【0028】
検出抵抗305で検出された電圧信号は、適切なゲインでリニアに増幅されるオペアンプ306を介して、対数増幅器307(LogAmp)でさらに増幅される。出力端子217から圧電素子202に印加されている電圧は、配線308を介して、マイクロ・コントロール・ユニット(Micro Control Unit、以下「MCU」と略記する)310に入力される。また、対数増幅器307で増幅された電圧も、配線309を介してMCU310に入力される。
図5に示す実施形態では、MCU310に内蔵されているA/D変換器の分解能が8~10ビット程度を想定しているため、対数増幅器307を用いているが、より高分解能なA/D変換器を備えたMCU310を採用する場合には、対数増幅器ではなくリニア増幅器でも良い。
【0029】
MCU310に入力された電圧信号は、A/D変換される。MCU310は、DDS301に制御信号311を送信し、発生させる正弦波の周波数を、所望の周波数範囲で掃引させる。このときの周波数と、出力端子217からの印加電圧と、圧電素子202を流れる電流に対応する測定電圧とは、MCU310内のメモリに格納され、第2インターフェース部222を介して制御部41にImpS測定結果として送信される。
【0030】
次に、ImpSの測定結果に基づき、圧電素子202(個々の分割電極)が異常であるか否かを判定する方法に関し、
図6A~
図7を用いて説明する。
【0031】
図6Aは、正常状態の圧電素子202で測定されたImpSを示すグラフ、
図6Bは、劣化状態の圧電素子202で測定されたImpSを示すグラフ、
図6Cは、故障状態の圧電素子202で測定されたImpSを示すグラフである。
図6A及び
図6Bを参照すれば分かるように、圧電素子202が劣化すると、電気インピーダンスのピーク値が、圧電素子202が正常のときと比べて、低下する。さらに、
図6B及び
図6Cを参照すれば分かるように、圧電素子202の劣化が進んで故障に至ると、電気インピーダンスのピーク値が、さらに低下する。
【0032】
図7は、圧電素子202で測定される電気インピーダンスのピーク値の経時変化を示すグラフである。圧電素子202の分割電極に繰り返し電圧が印加されると、分割電極が次第に劣化し、
図7に示すように、電気インピーダンスのピーク値が低下してくる。そこで、本実施形態に係る制御部41は、測定した電気インピーダンスのピーク値が所定の閾値より低い場合、分割電極が故障であると判定し、出力部46を介してアラームを通知する。また、制御部41は、現在までに測定した電気インピーダンスの経時変化に基づいて、将来の電気インピーダンスを予測し、分割電極の劣化時期を出力部46に出力してもよい。この場合、出力部46に出力される情報としては、メンテナンスが必要な時期や、メンテナンス対象の分割電極などが考えられる。
【0033】
次に、圧電素子202を構成する正常な分割電極に電圧を印加し、恒温槽30内の恒温水208を介して反応容器2に超音波を照射させたときの様子を、
図8A~
図9Bを用いて説明する。
【0034】
図8Aは、液体(例えば洗剤63)を収容する反応容器2に対して超音波61を照射したときの反射波を示す概念図であり、
図8Bは、液体を収容する反応容器2に対して超音波を照射したときに測定されるImpSのグラフである。
図8Aに示すように、反応容器2内に液体が存在していると、反応容器2の界面における音響インピーダンスの差が小さいため、恒温水208を伝搬してきた超音波61の多くが反応容器2を透過し、反応容器2で反射される反射波62は少ない。したがって、
図8Bに示すように、ImpSに含まれるノイズ成分が少なくなる。
【0035】
一方、
図9Aは、空の反応容器2に対して超音波61を照射したときの反射波を示す概念図であり、
図9Bは、空の反応容器2に対して超音波を照射したときに測定されるImpSのグラフである。
図9Aに示すように、反応容器2内に空気が存在していると、反応容器2の界面における音響インピーダンスの差が大きいため、恒温水208を伝搬してきた超音波61のうち、反応容器2で反射される反射波62の割合が大きくなる。したがって、
図9Bに示すように、ImpSに含まれるノイズ成分が多くなる。
【0036】
このように、圧電素子202が異常であるかを高精度で判定するには、反応容器2内に液体が存在しているときに分割電極に電圧を印加して、ImpSを測定することが重要である。
【0037】
ただし、圧電素子202が異常であるか否かを判定するための超音波照射の対象を、試料と試薬の混合液とした場合、混合液の液性はその都度異なっているため、判定の精度に影響が出てしまう。また、一連の分析シーケンスの中で、攪拌機構の攪拌位置に停止中の反応容器2に対して、反応促進のための撹拌動作の前にImpS測定を行うと、反応ディスク1の停止時間が長くなり、自動分析装置としての処理能力の低下が懸念される。
【0038】
そこで、本実施形態では、オペレーション状態中に分析と並行して行われるバックグラウンドメンテナンスの際、洗剤のみが分注された反応容器2が攪拌位置に停止している間に、ImpS測定を実施するようにした。このように、バックグラウンドメンテナンスを行う場合には、その動作中の反応容器2を利用してImpSを測定することで、新たな特殊シーケンスを追加しなくても済む利点がある。以下、バックグラウンドメンテナンスを含む一連の分析シーケンスを具体的に説明する。
【0039】
一連の分析シーケンスの中で、分析に使用された反応容器2は、洗浄機構3によって希釈洗剤を用いた洗浄が行われる。しかし、繰り返し使用され続けてきた反応容器2に蓄積した汚れを取り除くには不十分である。このため、本実施形態では、バックグラウンドメンテナンスとして、無希釈の洗剤63で所定時間の漬け置き洗いをするメンテナンスが、オペレーション状態中の動作に組み込まれている。
【0040】
まず、前提となるオペレーションの例について説明する。反応ディスク1に載置される反応容器は221個であり、1動作サイクルあたり、44個の反応容器ずつ回転する。例えば、動作サイクル1では、1番目の反応容器が試料分注位置に停止し、当該1番目の反応容器に試料が分注され、動作サイクル2では、45番目の反応容器が試料分注位置に停止し、当該45番目の反応容器に試料が分注される。同様に、動作サイクル3,4,5,6では、それぞれ89,133,177,221番目の反応容器に試料が分注される。動作サイクル7になると、反応ディスク1が一周して、44番目の反応容器が試料分注位置に停止し、当該44番目の反応容器に試料が分注される。なお、試料分注位置と試薬分注位置は、1動作サイクル分、すなわち反応容器44個分、離れた場所にあるものとする。
【0041】
バックグラウンドメンテナンスでは、例えば、5サイクルに一度、試料分注位置に停止した反応容器に対して、試料分注機構が試料を分注しない。空の反応容器は、次のサイクルでは、試薬分注位置まで移動(回転)して停止し、当該反応容器に、試薬分注機構が洗剤63を分注する。なお、試薬分注機構が分注する洗剤63は、試薬ディスク11上の所定の洗剤ボトルに収容されている。また、反応容器内の洗剤63の液位としては、恒温水208の水位より低くても良いが、反応容器内に分注される試料の最大高さよりは高くする必要がある。その後、洗剤63を収容した反応容器は、サイクルが進む度に移動(回転)と停止を繰り返し、漬け置き洗いされる。反応容器に収容された洗剤63は、漬け置き洗い後、洗浄機構3によって吸引される。なお、試料が分注された反応容器には、試薬も分注され、バックグラウンドメンテナンスと並行して、混合液の攪拌および分析が行われる。
【0042】
バックグラウンドメンテナンスでは、洗剤63を収容した反応容器(以下、洗剤収容セルと呼ぶことがある)が、所定のタイミングで、第1攪拌機構5a~第6攪拌機構6cの攪拌位置に停止する。したがって、本実施形態では、攪拌位置に停止した洗剤収容セルに対して、圧電素子202のImpSを測定することで、圧電素子202の異常判定を行う。
【0043】
図10は、各サイクルにける、第1攪拌機構5a~第6攪拌機構6cの動作を示す図である。
図10に示すように、各攪拌機構は、混合液を収容する反応容器が当該攪拌機構の攪拌位置に停止しているサイクルでは、撹拌動作を行い、洗剤63を収容する反応容器(洗剤収容セル)が当該攪拌機構の攪拌位置に停止しているサイクルでは、ImpS測定を行う。
【実施例1】
【0044】
前述のように、各攪拌機構の圧電素子202は、13個の分割電極で構成されているので、13個の分割電極についてImpS測定して異常判定する必要がある。しかし、ImpS測定には一定の時間を要するため、洗剤収容セルの一度の停止時間(例えば1秒)の間に、すべての分割電極のImpS測定をするのは難しい。そこで、実施例1では、各攪拌機構が、例えば、洗剤収容セルが1回目に攪拌位置に停止するサイクルでは、ある1個の分割電極のImpSを測定し、2回目に攪拌位置に停止するサイクルでは、別の1個の分割電極のImpSを測定する。
【0045】
図11は、実施例1に係る攪拌機構(例えば第1攪拌機構5a)のサイクル毎の動作を示すタイムチャートである。
図11に示すように、実施例1では、反応ディスク1が回転し、混合液を収容する反応容器が攪拌位置に停止すると、第1攪拌機構5aは、当該サイクル(例えば
図11のサイクル0~1)の停止中に、攪拌動作を行う。次に、反応ディスク1が回転し、洗剤63を収容する反応容器(洗剤収容セル)が攪拌位置に停止すると、第1攪拌機構5aは、当該サイクル(例えば
図11のサイクル1~2)の停止中に、1個の分割電極のImpS測定を行う。
【0046】
次に、本実施例の動作フローについて説明する。
図12は、バックグラウンドメンテナンスの際に行われる、圧電素子202の異常判定に関する実施例1のフローチャートである。
【0047】
オペレーションが開始され、1動作サイクルごとに、反応ディスク1が回転と停止を繰り返し、所定の動作サイクルにおいて、漬け置き洗いの対象となる空の反応容器が、試薬分注位置に停止する(ステップS101)。以下では、当該反応容器を対象としてなされる動作に着目して説明する。その停止中に、試薬分注機構は、試薬ディスク11上の洗剤ボトルから洗剤63を吸引し、空の反応容器に洗剤を吐出する(ステップS102)。
【0048】
次に、サイクルが進み、所定の動作サイクルにおいて、洗剤63が吐出された反応容器(洗剤収容セル)が、所定の攪拌機構の攪拌位置に停止する(ステップS103)。ここでは、洗剤収容セルが第1攪拌機構5aの攪拌位置に停止した場合について説明する。
【0049】
制御部41は、第1攪拌機構5aの圧電素子のうち、ある1個の分割電極のImpSを測定する(ステップS104)。そして、制御部41は、当該分割電極が故障しているか否かを判定する(ステップS105)。判定方法は前述の通りである。ステップS105において、故障していると判定された場合、制御部41は、出力部46を介してアラームを出力する(ステップS106)。
【0050】
一方、ステップS105において、故障していないと判定された場合、サイクルが進み、所定の動作サイクルにおいて、洗剤収容セルが、洗剤吸引位置に停止する(ステップS107)。
【0051】
その後、洗浄機構3が、洗剤収容セルから洗剤63を吸引する(ステップS108)。
他の反応容器についても同様に、洗剤63の吐出と吸引が行われ、漬け置き洗いされる。
そして、バックグラウンドメンテナンスの対象となるすべての反応容器の漬け置き洗いが完了するまでに、すべての分割電極が異常判定される。
【0052】
このように、本実施例では、洗剤収容セルの攪拌位置への一度の停止で、1個の分割電極の異常判定を行う。
【実施例2】
【0053】
前述のようなバックグラウンドメンテナンスを実施すると、5サイクルに一度は洗剤が反応容器に分注されて漬け置き洗いされるため、その分だけ処理能力が低下する。ここで、1動作サイクルが仮に1秒の停止時間を含む3.6秒(1000テスト/時)とした場合、221個の反応容器すべてを漬け置き洗いするには、3.6秒×221個=795.6秒(約13分)必要であるため、約13分間の処理能力は4/5(800テスト/時)に低下する。1日に約13分間の処理能力低下がユーザにとって受け入れられない場合、複数日に分けてバックグラウンドメンテナンスが実施される。221個の反応容器を5日でほぼ均等に割り当てると、4日は44個で1日は45個となり、1日あたり最大で45個の反応容器を漬け置き洗いすることになる。そうすると、バックグラウンドメンテナンスによって処理能力が低下する時間は、最大で3.6秒×45個=162秒(約3分)で済む。
【0054】
1日で45個の反応容器を漬け置き洗いする場合、各攪拌機構の攪拌位置に45個の洗剤収容セルが一度ずつ停止する。前述のとおり、各攪拌機構は13個の分割電極を有しているので、新たな洗剤収容セルが攪拌位置に停止する毎に、新たな1個の分割電極の異常判定をしていけば、6個の攪拌機構における13個の分割電極、すなわち合計6×13=78個の分割電極をすべて異常判定できることになる。しかし、一度の洗剤収容セル停止時(反応ディスク停止時)にImpSを測定可能な分割電極の数が1だけだとすると、複数の攪拌機構の攪拌位置に洗剤収容セルが同時に停止した場合、攪拌位置に洗剤収容セルが停止していてもImpSを測定できない攪拌機構が発生する。そうすると、45個の洗剤収容セルが45個あったとしても、合計78個の分割電極をすべて異常判定できない可能性がある。
【0055】
そこで、実施例2では、攪拌位置に停止している共通の洗剤収容セルに対して、同じ攪拌機構の異なる2つの分割電極について、ImpSを測定するようにした。
【0056】
図13は、実施例2に係る攪拌機構(例えば第1攪拌機構5a)のサイクル毎の動作を示すタイムチャートである。
図13に示すように、実施例2では、反応ディスク1が回転し、混合液を収容する反応容器が攪拌位置に停止すると、第1攪拌機構5aは、当該サイクル(例えば
図13のサイクル0~1)の停止中に、攪拌動作を行う。次に、反応ディスク1が回転し、洗剤を収容する反応容器(洗剤収容セル)が攪拌位置に停止すると、第1攪拌機構5aは、当該サイクル(例えば
図13のサイクル1~2)の停止中に、2個の分割電極のImpS測定を行う。
【0057】
次に、本実施例の動作フローについて説明する。
図14は、バックグラウンドメンテナンスの際に行われる、圧電素子202の異常判定に関する実施例2のフローチャートである。
【0058】
オペレーションが開始され、1動作サイクルごとに、反応ディスク1が回転と停止を繰り返し、所定の動作サイクルにおいて、漬け置き洗いの対象となる空の反応容器が、試薬分注位置に停止する(ステップS201)。以下では、当該反応容器を対象としてなされる動作に着目して説明する。その停止中に、試薬分注機構は、試薬ディスク11上の洗剤ボトルから洗剤63を吸引し、空の反応容器に洗剤63を吐出する(ステップS202)。
【0059】
次に、サイクルが進み、所定の動作サイクルにおいて、洗剤63が吐出された反応容器(洗剤収容セル)が、所定の攪拌機構の攪拌位置に停止する(ステップS203)。ここでは、洗剤収容セルが第1攪拌機構5aの攪拌位置に停止した場合について説明する。
【0060】
制御部41は、第1攪拌機構5aの圧電素子のうち、ある1個の分割電極のImpSを測定する(ステップS204)。そして、制御部41は、当該分割電極が故障しているか否かを判定する(ステップS205)。判定方法は前述の通りである。ステップS205において、故障していると判定された場合、制御部41は、出力部46を介してアラームを出力する(ステップS206)。
【0061】
一方、ステップS105において、故障していないと判定された場合、制御部41は、第1攪拌機構5aの圧電素子202のうち、別の1個の分割電極のImpSを測定する(ステップS207)。そして、制御部41は、当該分割電極が故障しているか否かを判定する(ステップS208)。判定方法は前述の通りである。ステップS208において、故障していると判定された場合、制御部41は、出力部46を介してアラームを出力する(ステップS209)。
【0062】
一方、ステップS208において、故障していないと判定された場合、サイクルが進み、所定の動作サイクルにおいて、洗剤収容セルが、洗剤吸引位置に停止する(ステップS210)。
【0063】
その後、洗浄機構3が、洗剤収容セルから洗剤を吸引する(ステップS211)。
【0064】
他の反応容器についても同様に、洗剤63の吐出と吸引が行われ、漬け置き洗いされる。そして、その日のバックグラウンドメンテナンスの対象となるすべて(例えば45個)の反応容器の漬け置き洗いが完了するまでに、すべて(78個)の分割電極が異常判定される。
【0065】
このように、本実施例では、洗剤収容セルの攪拌位置への一度の停止で、当該攪拌位置に対応する攪拌機構のうち2個の分割電極のImpSを測定することで、バックグラウンドメンテナンスの対象となる洗剤収容セルの個数を超える数の分割電極すべての異常判定が可能となる。なお、本実施例では、洗剤収容セルの攪拌位置への一度の停止で、2個の分割電極のImpSを測定したが、時間的に可能であれば、3個以上の分割電極のImpSを測定してもよい。
【実施例3】
【0066】
実施例3は、複数の攪拌機構の攪拌位置に異なる洗剤収容セルが同時に停止した場合に、各攪拌機構が、それぞれ1つずつの分割電極の異常判定を行う。
【0067】
本実施例の動作フローについて説明する。
図15は、バックグラウンドメンテナンスの際に行われる、圧電素子202の異常判定に関する実施例3のフローチャートである。
【0068】
オペレーションが開始され、1動作サイクルごとに、反応ディスク1が回転と停止を繰り返し、所定の動作サイクルにおいて、ある空の反応容器が試薬分注位置に停止し(ステップS301)、その停止中に、試薬分注機構が当該反応容器に洗剤63を吐出する(ステップS302)。
【0069】
その後、サイクルが進み、所定の動作サイクルにおいて、別の空の反応容器が試薬分注位置に停止し(ステップS303)、その停止中に、試薬分注機構が当該反応容器に洗剤63を吐出する(ステップS304)。
【0070】
さらに、サイクルが進み、所定の動作サイクルにおいて、ステップS302で洗剤63が吐出された反応容器(第1洗剤収容セル)が、ある攪拌機構(例えば第1攪拌機構5a)の攪拌位置に停止する(ステップS305)とともに、ステップS304で洗剤63が吐出された反応容器(第2洗剤収容セル)が、別の攪拌機構(例えば第2攪拌機構5b)の攪拌位置に停止する(ステップS306)。
【0071】
このとき、制御部41は、第1攪拌機構5aの圧電素子202のうち、ある1個の分割電極のImpSを測定する(ステップS307)。そして、制御部41は、当該分割電極が故障しているか否かを判定する(ステップS308)。ステップS308において、故障していると判定された場合、制御部41は、出力部46を介してアラームを出力する(ステップS309)。
【0072】
一方、ステップS308において、故障していないと判定された場合、制御部41は、第2攪拌機構5bの圧電素子202のうち、ある1個の分割電極のImpSを測定する(ステップS310)。そして、制御部41は、当該分割電極が故障しているか否かを判定する(ステップS311)。ステップS311において、故障していると判定された場合、制御部41は、出力部46を介してアラームを出力する(ステップS312)。
【0073】
一方、ステップS311において、故障していないと判定された場合、サイクルが進み、所定の動作サイクルにおいて、第1洗剤収容セルが、洗剤吸引位置に停止し(ステップS313)、洗浄機構3が、第1洗剤収容セルから洗剤63を吸引する(ステップS314)。
【0074】
さらに、サイクルが進み、所定の動作サイクルにおいて、第2洗剤収容セルが、洗剤吸引位置に停止し(ステップS315)、洗浄機構3が、第2洗剤収容セルから洗剤63を吸引する(ステップS316)。
【0075】
他の反応容器についても同様に、洗剤63の吐出と吸引が行われ、漬け置き洗いされる。そして、その日のバックグラウンドメンテナンスの対象となるすべて(例えば45個)の反応容器の漬け置き洗いが完了するまでに、すべて(78個)の分割電極が異常判定される。
【0076】
このように、本実施例では、一度の反応ディスク停止時に、複数の攪拌機構における分割電極のImpSを測定することで、バックグラウンドメンテナンスの対象となる洗剤収容セルの個数を超える数の分割電極すべての異常判定が可能となる。なお、本実施例では、一度の反応ディスク停止時で、2つの攪拌機構の分割電極のImpSを測定したが、時間的に可能であれば、3つ以上の攪拌機構の分割電極のImpSを測定してもよい。
【0077】
前述の各実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、前述の各実施例のバックグラウンドメンテナンスでは、試料を分注しなかった空の反応容器に試薬分注機構が洗剤を分注して漬け置き洗いしたが、試薬分注機構が空の反応容器に洗剤以外の同一成分の液体(例えば水や試薬)を分注して漬け置き洗いしてもよい。また、漬け置く液体の中に、ビーズなどの音波散乱体を含ませ、圧電素子から届いた音波を散乱させることで、液体から圧電素子へ戻る反射波を低減させ、ImpS測定に対するノイズを抑制することも可能である。
【0078】
また、バックグラウンドメンテナンスでなくても、オペレーション状態中に分析と並行して、同一成分の液体が収容された反応容器が、攪拌機構の攪拌位置に停止する動作が組み込まれていれば、その停止中に、分割電極のImpSを測定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…反応ディスク、2…反応容器、3…洗浄機構、4…分光光度計、5…攪拌機構、5a…第1攪拌機構、5b…第2攪拌機構、5c…第3攪拌機構、6…攪拌機構、6a…第4攪拌機構、6b…第5攪拌機構、6c…第6攪拌機構、7,8,9,10…試薬分注機構、11…試薬ディスク、12…試薬ボトル、13,14…試料分注機構、17…試料容器、18…ラック、19…試料搬送機構、20…試薬用ポンプ、21…試料用ポンプ、22…洗浄用ポンプ、30…恒温槽、41…制御部、42…データ格納部、43…入力部、44…測定部、45…解析部、46…出力部、51…シャフト、52…θ1アーム、53…θ2アーム、54…分注ノズル、55…シリンジ、56…チューブ、57…プランジャ、58…接触検知器、61…超音波、62…反射波、63…洗剤、201…コネクタ、202…圧電素子、203…治具、204…分割電極、205…恒温水側電極、206…電力増幅器、207…インピーダンス測定回路、208…恒温水、209…分割電極(下側)、210…関数発生回路、211…終段増幅回路、212…電流モニタ、213…リレー群、214…第2切替スイッチ、215…第1切替スイッチ、216…端子、217…出力端子、218…入力端子、219…端子、220…グランド、221…第1インターフェース部、222…第2インターフェース部、223…反射板、301…DDS、302…アンプ、305…検出抵抗、306…オペアンプ、307…対数増幅器、308,309…配線、310…MCU、311…制御信号