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特許7686095液体容器把持機構及び液体容器把持機構を備えた自動分析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-22
(45)【発行日】2025-05-30
(54)【発明の名称】液体容器把持機構及び液体容器把持機構を備えた自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20250523BHJP
【FI】
G01N35/04 G
G01N35/04 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023580072
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2022040485
(87)【国際公開番号】W WO2023153029
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2024-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2022020738
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】武田 直大
(72)【発明者】
【氏名】山下 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 洸幾
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-142122(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198707(WO,A1)
【文献】特開2017-096924(JP,A)
【文献】特開平06-050981(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02746774(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体容器を把持する第1把持部材と、
前記液体容器を間にして前記第1把持部材に対向する側に配置され、前記第1把持部材と共に前記液体容器を把持する第2把持部材と、
前記第1把持部材と前記第2把持部材を連結する連結部と、
を備え、
前記第1把持部材および前記第2把持部材は、前記液体容器と接触して把持する部分が前記液体容器の高さ方向に長く形成され、
前記第1把持部材は第1回転軸を回転中心として回転し、前記第2把持部材は第2回転軸を回転中心として回転し、前記連結部を介して互いに反対方向に略同一角度だけ回転し、
前記第1把持部材の下方部に前記液体容器を把持する第1容器把持部が形成され、前記第1容器把持部の上方部に第1干渉回避用空間が形成され、前記第2把持部材の上方部に前記液体容器を把持する第2容器把持部が形成され、前記第2容器把持部の下方部に第2干渉回避用空間が形成されていることを特徴とする液体容器把持機構。
【請求項2】
請求項1に記載の液体容器把持機構において、
前記連結部は、ギヤの形状となっており、前記ギヤ同士が噛み合って前記第1把持部材と前記第2把持部材を連結させていることを特徴とする液体容器把持機構。
【請求項3】
請求項1に記載の液体容器把持機構において、
前記第1把持部材を支持する第1把持部材固定部と、前記第2把持部材を支持する第2把持部材固定部と、を備え、前記第1把持部材固定部は、前記第1回転軸に形成された第1穴に挿入され、前記第2把持部材固定部は、前記第2回転軸に形成された第2穴に挿入されていることを特徴とする液体容器把持機構。
【請求項4】
請求項1に記載の液体容器把持機構において、
前記第1把持部材と前記第2把持部材との間に取り付けられる弾性部材を備え、前記弾性部材は、前記第1把持部材と前記第2把持部材との間に弾性力を作用させ、前記第1把持部材は、前記第1回転軸を中心として回転運動し、前記第2把持部材は、前記第2回転軸を中心として回転運動し、前記第1把持部材及び前記第2把持部材の回転量は、互いに略等しくなるように構成されていることを特徴とする液体容器把持機構。
【請求項5】
請求項1に記載の液体容器把持機構において、
前記第1把持部材及び前記第2把持部材のそれぞれは、前記液体容器103と接して把持力を付与する液体容器接触部を備えることを特徴とする液体容器把持機構。
【請求項6】
請求項1に記載の液体容器把持機構において、
前記第1把持部材及び前記第2把持部材のそれぞれの上端部は、テーパ形状の面となっていることを特徴とする液体容器把持機構。
【請求項7】
請求項1に記載の液体容器把持機構において、
前記液体容器の架設時に前記第1把持部材及び前記第2把持部材の間に一定の隙間が生じることを特徴とする液体容器把持機構。
【請求項8】
請求項1に記載の液体容器把持機構において、
上記液体容器は、検体容器であることを特徴する液体容器把持機構。
【請求項9】
分析対象の液体を充填した複数の液体容器を架設する液体容器架設部と、
分析対象の液体を分析する分析部と、
前記液体容器架設部に架設された前記液体容器から液体を分注する液体分注機構と、
前記液体容器架設部に架設される前記液体容器を把持する複数の液体容器把持機構と、
を備え、
前記液体容器把持機構は、
前記液体容器を把持する第1把持部材と、
前記液体容器を間にして前記第1把持部材に対向する側に配置され、前記第1把持部材と共に前記液体容器を把持する第2把持部材と、
前記第1把持部材と前記第2把持部材を連結する連結部と、
を有し、
前記第1把持部材および前記第2把持部材は、前記液体容器と接触して把持する部分が前記液体容器の高さ方向に長く形成され、
前記第1把持部材は第1回転軸を回転中心として回転し、前記第2把持部材は第2回転軸を回転中心として回転し、前記連結部を介して互いに反対方向に略同一角度だけ回転し、
前記第1把持部材の下方部に前記液体容器を把持する第1容器把持部が形成され、前記第1容器把持部の上方部に第1干渉回避用空間が形成され、前記第2把持部材の上方部に前記液体容器を把持する第2容器把持部が形成され、前記第2容器把持部の下方部に第2干渉回避用空間が形成され、
複数の前記液体容器把持機構は、互いに隣接して前記液体容器架設部に配置され、互いに隣接する2つの前記液体容器把持機構は、前記第1把持部材の前記第1容器把持部と前記第2把持部材の第2干渉回避空間とが互いに対向し、前記第1把持部材の前記第1干渉回避用空間と前記第2把持部材の第2容器保持部とが互いに対向するように、配置されていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項10】
請求項9に記載の自動分析装置において、
前記分析対象の液体は検体であり、前記液体容器は検体容器であり、前記液体容器架設部は検体容器架設ディスクであり、前記液体容器把持機構は検体容器把持機構であり、前記検体容器把持機構は、前記検体容器架設ディスクの円周上に複数個配置されることを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体容器把持機構及び液体容器把持機構を備えた自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検体に含まれる測定対象物を検出する自動分析装置において、検体や試薬等の液体の分注を行うためには、液体容器である検体容器が傾いたりせず、検体架設部の正しい位置に把持されている必要がある。分析装置の測定対象となる検体は、様々な種類の検体容器に充填されており、それぞれ外径が異なるため、検体容器の架設部は異なる外径の容器を単一の機構にて把持する必要がある。
【0003】
特許文献1には、自動分析装置において、二の把持部材が共通の軸の周りを回動して両側から反応菅を把持する構造が記載されている。
【0004】
また、特許文文献2には、自動分析装置において、標準カップの場合は、この標準カップの頭部のでっぱりを複数のツメにより固定することが記載されている。さらに、特許文献2には、試験管の場合は、複数のツメによりそれぞれ均等な応力で試験管を押して試験管の太さに関わらず、中心位置で支持する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-186997号公報
【文献】実開平05-062859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、二つの把持用部材が共通の軸の周りを回動して両側から反応菅を把持する構造であるため、二つの把持用部材の変位角に差が生じてしまい、外力に差が生じて把持すべき容器を正しくセンタリングすることが困難であり、把持の目標位置を定義できない。そのため反応菅を正確な位置にセンタリングが行われない可能性がある。
【0007】
特許文献2に記載の技術においても、複数のツメの外力に差が生じて把持すべき容器を正しくセンタリングすることが困難である。
【0008】
本発明の目的は、外径が異なる多種類の液体容器に対して、液体容器の傾斜を抑制することが可能な液体容器把持機構及びこの液体容器把持機構を備える自動分析装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成される。
【0010】
液体容器把持機構において、液体容器を把持する第1把持部材と、前記液体容器を間にして前記第1把持部材に対向する側に配置され、前記第1把持部材と共に前記液体容器を把持する第2把持部材と、前記第1把持部材と前記第2把持部材を連結する連結部と、を備え、前記第1把持部材および前記第2把持部材は、前記液体容器と接触して把持する部分が前記液体容器の高さ方向に長く形成され、 前記第1把持部材は第1回転軸を回転中心として回転し、前記第2把持部材は第2回転軸を回転中心として回転し、前記連結部を介して互いに反対方向に略同一角度だけ回転し、前記第1把持部材の下方部に前記液体容器を把持する第1容器把持部が形成され、前記第1容器把持部の上方部に第1干渉回避用空間が形成され、前記第2把持部材の上方部に前記液体容器を把持する第2容器把持部が形成され、前記第2容器把持部の下方部に第2干渉回避用空間が形成されている
【0011】
また、自動分析装置において、分析対象の液体を充填した複数の液体容器を架設する液体容器架設部と、分析対象の液体を分析する分析部と、前記液体容器架設部に架設された前記液体容器から液体を分注する液体分注機構と、前記液体容器架設部に架設される前記液体容器を把持する複数の液体容器把持機構と、を備え、前記液体容器把持機構は、前記液体容器を把持する第1把持部材と、前記液体容器を間にして前記第1把持部材に対向する側に配置され、前記第1把持部材と共に前記液体容器を把持する第2把持部材と、前記第1把持部材と前記第2把持部材を連結する連結部と、を有し、前記第1把持部材および前記第2把持部材は、前記液体容器と接触して把持する部分が前記液体容器の高さ方向に長く形成され、前記第1把持部材は第1回転軸を回転中心として回転し、前記第2把持部材は第2回転軸を回転中心として回転し、前記連結部を介して互いに反対方向に略同一角度だけ回転し、前記第1把持部材の下方部に前記液体容器を把持する第1容器把持部が形成され、前記第1容器把持部の上方部に第1干渉回避用空間が形成され、前記第2把持部材の上方部に前記液体容器を把持する第2容器把持部が形成され、前記第2容器把持部の下方部に第2干渉回避用空間が形成され、
複数の前記液体容器把持機構は、互いに隣接して前記液体容器架設部に配置され、互いに隣接する2つの前記液体容器把持機構は、前記第1把持部材の前記第1容器把持部と前記第2把持部材の第2干渉回避空間とが互いに対向し、前記第1把持部材の前記第1干渉回避用空間と前記第2把持部材の第2容器保持部とが互いに対向するように、配置されている。
【発明の効果】
【0012】
外径が異なる多種類の液体容器に対して、液体容器の傾斜を抑制することが可能な液体容器把持機構及びこの液体容器把持機構を備える自動分析装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】自動分析装置の概略構成の一例を示す図。
図2】検体容器交換時のフローチャート。
図3】検体容器交時のGUI画面を示す図。
図4A】検体容器把持機構の上面図。
図4B】検体容器把持機構の正面図。
図5A】検体容器把持機構の検体容器の検体容器架設時の上面図。
図5B】検体容器把持機構の検体容器の検体容器架設時の正面図。
図6A】検体容器把持機構上で検体容器が外力を受け傾いた際の上面図。
図6B】検体容器把持機構上で検体容器が外力を受け傾いた際の正面図。
図7A】互いに隣接する検体容器把持機構の一方を示す図。
図7B】互いに隣接する検体容器把持機構の他方を示す図。
図8】従来及び本実施例の比較実験の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【実施例
【0015】
まず、検体容器把持機構を備える自動分析装置について説明する。以下では、自動分析装置の全体構成について説明した後に、この自動分析装置に搭載される検体容器、及びこの検体容器を把持するための検体容器把持機構について詳細に説明する。ただし、本発明は、検体のみならず、試薬等の液体を充填した液体容器、液体分注機構、液体容器把持機構にも適用可能である。
【0016】
(自動分析装置101)
図1において、自動分析装置101は、検体を所定の分析項目に応じた試薬を用いて分析するための装置であり、検体容器架設ディスク(液体容器架設部)102、検体分注機構104、試薬保管庫105、試薬分注機構108、反応槽(反応ディスク)109、生化学検出ユニット110(分析部)、制御部111、操作部112等を備えている。
【0017】
検体容器架設ディスク102は、環状に検体容器103を架設する構造となっている。検体分注の際に検体容器架設ディスク102が回転し、検体分注機構104のアクセスポジション(アクセス位置)へ検体容器103を輸送する。
【0018】
検体容器103には後述するバーコード116が表示されており、バーコードリーダ115がバーコード116を読み取り、バーコード116の情報を制御部111に伝達する。
【0019】
検体分注機構104は回転駆動機構、上下駆動機構、及び分注プローブから構成されており、回転駆動機構及び上下駆動機構により検体吸引位置と検体吐出位置との間を移動する。
【0020】
試薬保管庫105は、試薬が収容された試薬パックを保管するための機構であり、試薬ディスク106及び試薬パック保持部107を有する。試薬保管庫105は、保冷機能を備えている。
【0021】
試薬ディスク106上には試薬パック保持部107が二重環状に並んでおり、複数の試薬パックを保持できるように構成されている。試薬ディスク106は回転駆動機構を有し、回転運動によって各々の試薬パックを円周部上の所定位置へ移動させる。
【0022】
試薬分注機構108は回転駆動機構、上下駆動機構、及び分注プローブから構成されている。試薬ディスク106上の所定の種類の試薬パック位置へ試薬分注機構108が回転及び下降し、所定の量の試薬を吸引する。試薬吸引後、試薬分注機構108は上昇する。次に試薬吐出先として反応槽109上の所定の反応セルへ回転及び下降し、各々の試薬を吐出する。
【0023】
以下、生化学分析フローを処理の順に説明する。
【0024】
反応槽109は、検体と試薬の反応を促進する目的で適温に温調されている。
【0025】
最初に、検体分注機構104は、反応槽109上の所定の反応セルに対して所定の量の検体を分注する。その後、反応槽109が回転し、検体が吐出された反応セルを試薬分注機構108のアクセスポジションに移動させ、試薬分注機構108は検体が吐出された反応セルに対して所定の量の試薬を分注する。
【0026】
反応槽109上での検体と試薬の反応プロセスが完了すると、反応槽109が回転し、反応完了後の反応液が入った反応セルを生化学検出ユニット110の設置ポジションに移動させる。
【0027】
その後、生化学検出ユニット110内の検出部により反応シグナルの測定が実施される。
【0028】
自動分析装置101のうち、以上説明した機構を分析動作部と称する。
【0029】
さらに、自動分析装置101は、分析動作部に加えて、自動分析装置101内の各機器の動作を制御する制御部111と操作部112とを備えている。
【0030】
制御部111は、例えばハードウェア基板とコンピュータとで構成され、ハードディスクなどの記憶装置113や制御装置114を内蔵している。
【0031】
記憶装置113には例えば各ユニットに対応した制御パラメータなどが記憶されている。
【0032】
制御部111は、専用の回路基板によってハードウェアとして構成されていてもよいし、コンピュータで実行されるソフトウェアによって構成されてもよい。ハードウェアにより構成する場合には、処理を実行する複数の演算器を配線基板上、または半導体チップまたはパッケージ内に集積することにより実現できる。ソフトウェアにより構成する場合には、コンピュータに高速な汎用CPUを搭載して、所望の演算処理を実行するプログラムを実行することで実現できる。このプログラムが記録された記録媒体により、既存の装置をアップグレードすることも可能である。また、これらの装置や回路、コンピュータ間は、有線または無線のネットワークで接続され、適宜データが送受信される。
【0033】
操作部112は、ディスプレイである表示装置や、マウス、キーボードなどの入力装置から構成されている。
【0034】
(検体容器架設ディスク102)
検体容器架設ディスク102は複数の検体容器103を円周上に架設できる。架設された検体容器103が検体分注機構104のプローブに対して傾いていたり、検体容器103の中心が分注プローブのアクセスポジションとずれて把持されていたりすると、分注プローブが検体容器103の内壁に衝突して分注プローブの破損や、分注が正しく行われない恐れがある。そのため、検体容器103の把持は精度よく行われている必要がある。
【0035】
検体容器103の架設/交換プロセスについて、図2を参照して説明する。検体容器交換プロセスの開始時(ステップ201)、ユーザはGUI画面である検体容器交換時画面301(図3に示す)上で検体容器交換開始ボタン302(図3に示す)を押す(ステップ202)。ゲートカバーのインターロックが解除され、ゲートカバーを開けて検体容器架設ディスク102にアクセス可能な状態とする(ステップ203)。
【0036】
検体容器架設ディスク102には突起が円周上に複数個配置されており、ユーザはこの突起を掴んで検体容器架設ディスク102を回転させ、架設/交換対象のポジションを手前に移動させ、検体容器103を架設/交換する(ステップ205)。ゲートカバーを閉じてGUI上で検体容器交換終了ボタン303(図3に示す)を押して(ステップ207)、検体容器103の架設/交換プロセスは完了する(ステップ208)。
【0037】
(検体容器103)
検体容器103は、測定項目や充填される検体の種類によって使い分ける。そのため検体容器架設ディスク102は、異なる外径の検体容器103を架設できる機構を備えている必要がある。本実施例では、検体容器103は、底面が検体容器架設機構400(図4A図6Bに示す)の備える半球状の検体容器受け410(図4Bに示す)に接触するまでユーザが押し込むことで、検体容器103の高さ方向の位置が決まる。検体容器受け410の形状は半球状ではなく、平面でもよい。検体容器把持機構400の備える把持爪405(第1把持部材)及び把持爪406(第2把持部材)(図4A図5A図6Aに示す)が、検体容器103を両側から把持する(第2把持部材406は、検体容器103を間にして第1把持部材405に対向する側に配置されている)ことで検体容器103はセンタリングされる。センタリングの理想位置は、検体容器103の中心と半球状の検体容器受け410の中心とが一致する位置である。
【0038】
検体容器103の中には半球状の検体容器受け410に達する長さに満たないものがある。これらの検体容器103は、検体容器架設ディスク102の上面に引っかかることで高さ方向の位置が決まる。センタリングは半球状の検体容器受け410に達する長さを持つ検体容器103と同様、把持爪405及び把持爪406にて行う。
【0039】
検体容器103の識別に関しては、上述したようにバーコード116が検体容器103に貼付されており、バーコードリーダ115が読み取ることで行っている。
【0040】
(検体容器把持機構400)
運用対象の検体容器103の外径はφ11からφ16の間であり、図4A及び図4Bはφ11の外径の検体容器103を把持している状態を示した図、図5A及び図5Bはφ13の外径の検体容器103を把持している状態を示した図、図6A及び図6Bはφ16の外径の検体容器103を把持している状態を示した図である。2つの把持爪405乃至406の間にはメカストッパ408が配置してあり、検体容器103が挿入されていないとき、把持爪405乃至406はメカストッパ408に接触し、φ11の検体容器103の挿入時よりも狭い開き幅となっている。
【0041】
把持爪405と把持爪406の間には金属バネ401(弾性部材)が取り付けてあり、検体容器103の挿入の際、金属バネ401が押し縮められ、弾性力によって把持爪405及び把持爪406が回動しようとする力で検体容器103を左右方向から把持する。つまり、把持爪405(第1把持部材)と把持爪406(第2把持部材)との間に取り付けられる金属バネ401(弾性部材)を備え、金属バネ401(弾性部材)は、把持爪405(第1把持部材)と把持爪406(第2把持部材)との間に弾性力を作用させ、把持爪405(第1把持部材)は、回転軸402(第1回転軸)を中心として回転運動し、把持爪406(第2把持部材)は、回転軸404(第2回転軸)を中心として回転運動し、把持爪405(第1把持部材)及び把持爪406(第2把持部材)の回転量は、互いに略等しくなるように構成されている。
【0042】
把持爪405と把持爪406との間に設置する金属バネ401(弾性部材)は、把持爪405と把持爪406との間に案内棒を設けて、ねじりばねとすることもできる。さらに、金属バネに限らず、把持爪405及び把持爪406自体を樹脂バネ形状に加工して用いることができる。
【0043】
把持爪405と把持爪406とは検体容器架設ディスク102の底面と上面の円柱に差し込まれて固定されており、この円柱を回転軸402(第1回転軸)及び回転軸404(第2回転軸)として把持爪405及び把持爪406は回転する。回転軸402は、固定された中心軸402A(第1把持部材固定部)に支持されている。回転軸404は、固定された中心軸404A(第2把持部材固定部)に支持されている。中心軸402Aは、把持爪405の回転軸402に形成された第1穴405Hに挿入され、中心軸404Aは、把
持爪406の回転軸404に形成された第2穴406Hに挿入されている。
【0044】
把持爪405及び把持爪406が円柱を持ち、検体容器架設ディスク102の底面と上面に空いた穴に差し込む形状でもよい。
【0045】
2つの把持爪405及び把持爪406は互いに連結部403により連結されており、連結部403は、円盤の外周に歯が等間隔で並び、2つの連結部403のそれぞれの歯がかみ合いながら回転する形状となっており、把持爪405及び把持爪406の回転量は略常に同一で回転する。つまり、連結部403は、ギヤ形状となっており、ギヤ同士が噛み合って把持爪405と把持爪406とを連結させている。
【0046】
これにより、検体容器架設ディスク102の中心と、検体容器103のセンタリング理想位置とを結んだ線を中心位置として、左右の把持爪405及び把持爪406は互いに略等しい変位量で回転運動する。把持爪405及び把持爪406同士が接触している部分は、ゴム面が接触し一方の動力を摩擦力によりもう一方に伝えるような摩擦車の構造や、把持爪把持爪405及び把持爪406間にベルトを張り、把持爪把持爪405及び把持爪406にプーリの構造をもたせることで変位角度の大きさを同期させる構造でもよいが、ギヤを採用することで、部品点数を少なく、また変位角度の大きさを厳密に等しい量とすることができる。
【0047】
検体容器103が外力を受けて把持状態から傾き、検体容器103に対して右側の把持爪406にのみ接する状態となったと仮定する(図6A及び図6Bに示す)。このとき、左側の把持爪405も検体容器103の傾きに応じて回転運動し、右側の把持爪406と同等の変位量を持つ。外力が加わらない状態になると、検体容器103は右側の把持爪406に押され、左側に戻ろうとする。
【0048】
検体容器103の傾きが少なくなり、右側の把持爪406の回転角が小さくなると左側の把持爪405の回転角も小さくなり、やがて左側の把持爪405が検体容器103に接する。2つの把持爪405及び把持爪406の変位量は等しく、また共通の金属バネ401で回転運動をしているため検体容器103に及ぼす力の大きさも等しい。そのため、検体容器103を理想位置で把持するための位置に把持爪405及び把持爪406が戻り、検体容器103は外力を受ける前と同じ位置に正確に戻ることになる。
【0049】
把持爪405及び把持爪406のそれぞれは、検体容器103(液体容器)と接して把持力を付与する円柱状の検体容器接触部407(液体容器接触部)を2つ備えており、左右の把持爪405及び把持爪406で計4点検体容器103と接している。これら検体容器接触部407が形成されている位置はφ11、13、16の検体容器103を把持する際に、それぞれの径の検体容器103の把持位置の差異を最も小さくするような位置にある。
【0050】
これらの特徴から、把持爪405及び把持爪406が把持する検体容器103は、検体容器103の外径によらずほぼ同一の位置に把持される。検体容器103の把持時、把持爪405及び把持爪406と検体容器103との接触部をこの円柱状の検体容器接触部407のみとするために、把持爪405及び把持爪406の検体容器103を把持する部分は、上から見たときに円柱の中央部分を切り欠いた形状としている。
【0051】
図5A及び図5Bはφ16の外径の検体容器103を把持している状態を正面から見た図である。把持爪405及び把持爪406は縦長の形状となっており、検体容器103と把持爪405及び把持爪406が接触する部分を高さ方向に長くすることで、検体容器103の傾きを抑制している。
【0052】
図7A及び図7Bは、互いに隣接する2つの検体容器把持機構400を示す図であり、隣の検体容器把持機構400の把持爪405及び把持爪406が開いたときに、互いに干渉しない構成の説明図である。図7A及び図7Bは、説明の都合上、一部図示を省略している。
【0053】
図7A及び図7Bにおいて、把持爪405及び把持爪406が互いに干渉しないように、検体容器103を把持する右側の把持爪406の下側に、切り欠きである第2干渉回避用空間701B、702Bが形成されている。
【0054】
また、検体容器103を把持する左側の把持爪405の上側に、切り欠きである第1干渉回避用空間701C、702Cが形成されている。
【0055】
隣の検体容器把持機構400の把持爪405及び把持爪406が開いたとき、図7Aに示した第2容器把持部701Aは、図7Bに示す第1干渉回避空間702Cに侵入することで、把持爪405と把持爪406との干渉が回避される。また、図7Bに示した第1容器把持部702Dは、図7Aに示す第1干渉回避空間702Cに侵入することで、把持爪405と把持爪406との干渉が回避される。
【0056】
同様に、隣の検体容器把持機構400の把持爪405及び把持爪406が開いたとき、第2容器把持部702Aは、第1干渉回避空間701Cに侵入することで、把持爪405と把持爪406との干渉が回避される。また、第1容器把持部701Dは、第2干渉回避空間702Bに侵入することで、把持爪405と把持爪406との干渉が回避される。
【0057】
把持爪405と把持爪406の上端部は、検体容器103の挿入時のガイド409が形成されている。把持爪405の上端部に形成されたガイド409は、把持爪406に向かって傾斜する斜めの面(テーパ形状の面)となっており、把持爪406の上端部に形成されたガイド409は、把持爪405に向かって傾斜する斜めの面(テーパ形状の面)となっている。ガイド409を把持爪405と把持爪406の上端部に形成することで、検体容器103の底面が最初に接する部分を斜めの面とし、衝撃を抑えて検体容器103を挿入することができる。
【0058】
把持爪405と把持爪406との側面側は、一定の隙間(バーコード116の幅以上の隙間)が形成されるように構成され、Φ11の検体容器103を把持している際、把持爪405及び把持爪406の開き幅は、バーコード116の読み取りに十分な幅(3mm)を確保している。
【0059】
検体容器架設ディスク102上の円周上に複数の検体容器把持機構400が配置され、複数の検体容器103を円周上に架設することができる。
【0060】
(本発明とは異なる例の場合)
一般的な検体容器架設ディスクの例として、複数(例えば4本)の樹脂のバネが検体容器に接触することで検体容器を把持している。検体容器が鉛直に把持されている状態から、検体容器が外力を受けて傾く場合を考える。
【0061】
検体容器が右側に傾くと、右側の樹脂バネが押されて変形量が大きくなる。このとき、左側の樹脂バネも検体容器の外壁に追従して動く。そのため、右側の樹脂バネの変形量が大きく、左側は小さいという状態になる。この状態で検体容器の外力が作用しなくなると、左右の樹脂バネの弾性力がつり合う位置まで検体容器が戻ることになる。しかし、左側の樹脂バネ接触部と検体容器外壁の間で摩擦力が発生すると、左側の検体容器外壁が受ける力は樹脂バネの弾性力と摩擦力の合力となる。これに対して右側の検体容器外壁が受ける力は弾性力のみとなるため、必要な弾性力の大きさが左側に対して大きくなるので、右側の樹脂バネの変形量は左側より大きくなる。その結果、検体容器は右側に傾いたままの状態で把持されることになり、検体容器を正しくセンタリングすることが困難である。
【0062】
(本発明の実施例と本発明とは異なる例との比較)
本発明の実施例と、上述した本発明とは異なる例による検体容器把持機構の比較、つまり、新旧構造の比較を行う。以下に比較のための実験方法を述べる。
【0063】
検体容器架設部に検体容器を挿入した後、検体容器の上端を持ち、検体容器を水平方向に傾ける。その後、検体容器の中心軸と垂直線との角度θを計測する。理想的な角度との誤差の値を算出し、本発明とは異なる例の構造における誤差の値により無次元化したものをΔθとする。そして、本発明の実施例と本発明とは異なる例のΔθを比較する。図8は、新旧構造のΔθを比較した結果のグラフである。図8において、網線を施したものが本発明とは異なる例であり、複数の横線を施したものが本発明の例である。外径Φ11においてΔθは両者に変化はない。外径Φ13において66.7%、外径Φ16において33.3%だけ本発明の例が本発明と異なる例より減少している。
【0064】
このことから、本発明の実施例は、本発明とは異なる例より検体把持機構としての性能が向上していることがわかる。
【0065】
本発明においては、検体容器103を把持する2つの把持爪405及び把持爪406の変位量が等しくなるように構成され、共通の金属バネ401で回転運動するので、把持爪405及び把持爪406が及ぼす力の大きさも等しくなり、検体容器103の位置決めが正しく行われる。
【0066】
以上のように、本発明によれば、二つの把持爪405及び把持爪406を金属バネ401で互いに連結し、かつ、互いに噛み合う歯を有する連結部403により連結するように構成したので、二つの把持爪405及び把持爪406の開度及び検体容器103に及ぼす押圧力が力等しくなり、外径が異なる多種類の検体容器に対して、検体容器の傾斜を抑制することが可能な検体容器把持機構及びこの検体容器把持機構を備える自動分析装置を実現することができる。
【0067】
なお、連結部403は、歯と歯が噛み合う構成となっているが、歯の構成ではなく、互いに摩擦力が高い材質で形成し、回転力を伝達する例や、回転軸402と回転軸404とを互いに逆方向に回転するようにベルトにより接続し、回転力を伝達する例であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
101・・・自動分析装置、102・・・検体容器架設ディスク、103・・・検体容器、104・・・検体分注機構、105・・・試薬保管庫、106・・・試薬ディスク、107・・・試薬パック保持部、108・・・試薬分注機構、109・・・反応槽ディスク、110・・・生化学検出ユニット、111・・・制御部、112・・・操作部、113・・・記憶装置、114・・・制御装置、115・・・バーコードリーダ、116・・・バーコード、201・・・検体容器交換開始、202・・・検体容器交換開始ボタン押下処理、203・・・ゲートカバー開放処理、204・・・検体ディスク回転処理、205・・・検体容器架設/交換処理、206・・・ゲートカバー閉鎖処理、207・・・検体容器交換終了ボタン押下処理、208・・・検体容器交換終了、301・・・検体容器交換時画面、302・・・検体容器交換開始ボタン、303・・・検体容器交換終了ボタン、400・・・検体容器把持機構、401・・・金属バネ(弾性部材)、402・・・回転軸(第1回転軸)、402A・・・中心軸(第1把持部材固定部)、403・・・連結部、404・・・回転軸(第2回転軸)、404A・・・中心軸(第2把持部材固定部)、405・・・把持爪(第1把持部材)、405H・・・第1穴、406・・・把持爪(第2把持部材)、406H・・・第2穴、407・・・検体容器接触部(液体容器接触部)、408・・・メカストッパ、409・・・ガイド、410・・・検体容器受け、701A、702A・・・第2容器把持部、701B、702B・・・第2干渉回避用空間、701C、702C・・・第1干渉回避用空間、701D、702D・・・第1容器把持部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8