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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-23
(45)【発行日】2025-06-02
(54)【発明の名称】検知装置、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/06 20060101AFI20250526BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20250526BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20250526BHJP
【FI】
B65H7/06
G03G15/00 481
G03G21/00 386
G03G21/00 370
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021088292
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181375
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】大石 真也
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-201488(JP,A)
【文献】特開2019-142682(JP,A)
【文献】特開平6-278905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00- 7/20
B65H 43/00-43/08
G03G 15/00
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが正常に搬送されているか否かを検知する検知装置であって、
搬送されるシートの搬送方向のサイズを検知するサイズ検知手段と、
搬送されるシートの厚みを検知する厚み検知手段と、
を備え、
搬送されるシートの搬送方向のサイズに関して予め取得された情報と、前記サイズ検知手段によって検知されたサイズと、が異なるときに、前記厚み検知手段の検知結果に基づいて、搬送されるシートにサイズ不一致が生じているか連送が生じているかを区別する区別判定をおこなうことを特徴とする検知装置。
【請求項2】
前記厚み検知手段は、前記サイズ検知手段に対して搬送方向下流側に設置されたことを特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記情報により定められた所定時間における前記厚さ検知手段の検知結果の変動に基づいて前記区別判定をおこなうことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の検知装置。
【請求項4】
前記所定時間内に、前記厚さ検知手段の検知結果に所定値を超えた変動がない場合には、前記サイズ不一致が生じたものと判定して、
前記所定時間内に、前記厚さ検知手段の検知結果に前記所定値を超えた変動がある場合には、前記連送が生じたものと判定することを特徴とする請求項3に記載の検知装置。
【請求項5】
複数枚のシートが連続的に搬送される場合に、前記区別判定は1枚目のシートが搬送されるときにのみおこなわれ、2枚目以降のシートについて前記情報と前記サイズ検知手段によって検知されたサイズとが異なるときには前記連送があったものと判定することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の検知装置。
【請求項6】
前記情報と前記サイズ検知手段によって検知されたサイズとが一致するときに、前記厚み検知手段の検知結果に基づいて、搬送されるシートに重送が生じているか否かを判定することを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の検知装置。
【請求項7】
シートが正常に搬送されていないものと判定されたときに、その搬送の異常を報知するとともに、シートの搬送を中断することを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の検知装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれかに記載の検知装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シートが正常に搬送されているか否かを検知する検知装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機や印刷機等の画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタや印刷機等の画像形成装置において、用紙などのシートが正常に搬送されているか否かを検知するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、特許文献1には、搬送される用紙(シート)の紙厚(厚み)を検知するセンサを設置して、そのセンサの検知結果に基づいて用紙の重送の有無を検知する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、シートが正常に搬送されないときの原因が複数あるにも関わらず、その原因を区別して検知することができなかった。そのため、シートが正常に搬送されないときに、その原因に基づいた適切な対処方法をユーザーに提示することができなかった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、シートが正常に搬送されないときの原因を区別して検知することができる、検知装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における検知装置は、シートが正常に搬送されているか否かを検知する検知装置であって、搬送されるシートの搬送方向のサイズを検知するサイズ検知手段と、搬送されるシートの厚みを検知する厚み検知手段と、を備え、搬送されるシートの搬送方向のサイズに関して予め取得された情報と、前記サイズ検知手段によって検知されたサイズと、が異なるときに、前記厚み検知手段の検知結果に基づいて、搬送されるシートにサイズ不一致が生じているか連送が生じているかを区別する区別判定をおこなうものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シートが正常に搬送されないときの原因を区別して検知することができる、検知装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
図2】給送装置を示す概略構成図である。
図3】検知装置によって検知されるシートの搬送時の態様を示す図である。
図4】厚み検知センサによる検知の態様を示す図である。
図5】検知装置でおこなわれる制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
まず、図1にて、画像形成装置1における全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としての複写機、2は原稿Dの画像情報を光学的に読み込む原稿読込部、3は原稿読込部2で読み込んだ画像情報に基づいた露光光Lを感光体ドラム5上に照射する露光部、4は感光体ドラム5上にトナー像(画像)を形成する作像部、7は感光体ドラム5上に形成されたトナー像をシートPに転写する転写部(画像形成部)、を示す。
また、10はセットされた原稿Dを原稿読込部2に搬送する原稿搬送部(自動原稿搬送装置)、12、13は給紙カセット内に収容されたシートPが給送する給送装置、を示す。
また、17は転写部7に向けてシートPを搬送するレジストローラ対(タイミングローラ対)、20はシートP上に担持されたトナー像(未定着画像)を定着する定着装置、21は定着装置20に設置された定着ローラ、22は定着装置20に設置された加圧ローラ、31は装置本体1から排紙されたシートPが積載される排紙トレイ、を示す。
また、42、43は各給送装置12、13において昇降可能に構成された載置部(昇降板)、51は各給送装置12、13に設置された給送手段としての給送機構、を示す。
また、61は検知装置におけるサイズ検知手段としてのサイズ検知センサ、62は検知装置における厚み検知手段としての厚み検知センサ、100は画像形成装置1において実行する印刷動作の内容を入力したり画像形成装置1における状態を表示したりするめの操作表示パネル、を示す。
【0011】
図1を参照して、画像形成装置本体1における、通常の画像形成時(印刷時)の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部10の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送(給送)されて、原稿読込部2上を通過する。このとき、原稿読込部2では、上方を通過する原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
そして、原稿読込部2で読み取られた光学的な画像情報は、電気信号に変換された後に、露光部3(書込部)に送信される。そして、露光部3からは、その電気信号の画像情報に基づいたレーザ光等の露光光Lが、作像部4の感光体ドラム5上に向けて発せられる。
【0012】
一方、作像部4において、感光体ドラム5は図1の時計方向に回転しており、所定の作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を経て、感光体ドラム5上に画像情報に対応した画像(トナー像)が形成される。
その後、感光体ドラム5上に形成された画像は、画像形成部としての転写部7で、レジストローラ対17により搬送されたシートP上に転写される。
【0013】
一方、転写部7(画像形成部)に搬送されるシートPは、次のように動作する。
まず、画像形成装置本体1の複数の給送装置12、13のうち、1つの給送装置が自動又は手動で選択される(例えば、下段の給送装置13が選択されたものとする。)。そして、給送装置13に収納されたシートPの最上方の1枚が、給送機構51によって給送されて、搬送経路Kに向けて搬送される。その後、シートPは、複数の搬送ローラが配設された搬送経路K(サイズ検知センサ61や厚み検知センサ62が設置されている。)を通過して、レジストローラ対17の位置に達する。このとき、レジストローラ対17は、回転停止した状態であって、そのニップにシートPの先端が突き当たることで、シートPの斜行(スキュー)が補正されることになる。
【0014】
そして、レジストローラ対17の回転が開始されて、シートPが、感光体ドラム5上に形成された画像と位置合わせをするためにタイミングを合わせて、転写部7(画像形成部)に向けて搬送される。そして、転写部7で、感光体ドラム5上の画像がシートP上に転写されることになる(転写工程である。)。
そして、転写工程後のシートPは、転写部7の位置を通過した後に、搬送経路を経て定着装置20に達する。定着装置20に達したシートPは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間に送入されて、定着ローラ21から受ける熱と双方の部材21、22から受ける圧力とによってトナー像が定着される(定着工程である)。トナー像が定着された定着工程後のシートPは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間(定着ニップである。)から送出された後に、画像形成装置本体1から排出されて、出力画像として排紙トレイ31上に積載されることになる。
こうして、一連の画像形成プロセス(印刷動作)が完了する。
【0015】
次に、図2等を用いて、本実施の形態における給送装置について詳述する。
なお、以下、装置本体1に内接された複数の給送装置12、13のうち、下段の給送装置13について説明するが、上段の給送装置12も設置位置が異なる点を除いて下段の給送装置13とほぼ同様の構成となっているため、その説明を省略することにする。
【0016】
図2等を参照して、給送装置13には、複数枚のシートPを積載できるように形成された載置部43、載置部43に載置されたシートPを給送するための給送機構51、等が設置されている。
載置部43は、載置された最上方のシートPの給送方向下流側(図2の右側である。)が所定の高さ位置(ピックアップローラ52の位置である。)に達するように、その一部が昇降可能に構成されている。具体的に、載置部43は、回転中心軸43aに回動可能な昇降板と、昇降しない固定板と、で構成されている。昇降板は、固定板よりも給送方向下流側に配置されていて、回転中心軸43aを中心に正逆方向に回動することで昇降するように構成されている。
また、図2を参照して、給送機構51は、フィードローラ53、ピックアップローラ52、分離ローラ54、等で構成されている。
【0017】
フィードローラ53は、載置部43に載置されたシートPに対して給送方向(図2の白矢印方向である。)の先端側(下流側)に設置されていて、最上方のシートPの上面に接触してシートPの給送方向に沿うように回転(図2の反時計方向の回転である。)してシートPを一点鎖線矢印で示す給送方向に給送するものである。
ピックアップローラ52は、載置部43に載置された最上方のシートPの表面(上面)に当接した状態で、走行方向に沿うように図2の反時計方向に回転して、そのシートPをフィードローラ53の位置に向けて搬送するものである。なお、ピックアップローラ52は、載置部43(昇降板)に載置されたシートP(最上方のシートP)に対して接離可能に構成されている。すなわち、ピックアップローラ52は、載置部43に載置されたシートPに対して、当接しない退避位置と、当接する当接位置(図2に示す位置である。)と、の間を移動可能に形成されている。
分離ローラ54は、フィードローラ53との間にニップ部を形成するように設置されている。
そして、分離ローラ54は、ニップ部に1枚のシートPが挟持されたときと、ニップ部にシートPが挟持されていないときと、には、給送方向に沿うように順方向(図2の破線矢印方向であって、時計方向である。)に回転する。これに対して、分離ローラ54は、ニップ部に複数枚のシートが挟持されたときには、上述した順方向に対して逆方向(図2の実線矢印方向であって、反時計方向である。)に回転する。これにより、ニップ部に挟持された複数枚のシートPのうち最上方のシートPがフィードローラ53の回転に沿って給送方向に給送されて、下方のシートPが給送方向(順方向)に対して逆方向に搬送されて、シートPの重送や連送が軽減される。
なお、本実施の形態において、分離ローラ54に替えて板状の分離パッドを用いてもよい。
【0018】
ここで、本実施の形態における給送装置13は、ピックアップローラ52が載置部43(昇降板)に積載された最上方のシートPに当接できるように、載置部43上に積載されるシートPの枚数によって、載置部43(昇降板)が上下方向に昇降する。そして、上下方向の位置が調整された載置部43(昇降板)に載置されたシートPの上面に当接する位置までピックアップローラ52が降下してから、シートPの給送動作がおこなわれることになる。
また、本実施の形態における給送装置13には、載置部43上に載置されたシートPの幅方向(図2の紙面垂直方向である。)の位置を規制する一対のサイドフェンス(不図示)が設けられている。サイドフェンスは、シートPを挟むように幅方向両端部にそれぞれ設置されていて、手動移動機構によってシートPの幅方向のサイズに合わせて幅方向に互いに連動して移動可能に構成されている(幅方向の間隔を増減可能に構成されている)。
また、本実施の形態における給送装置13には、載置部43上に載置されたシートPの給送方向(図2の左右方向である。)の位置を規制する基準フェンス107とエンドフェンス103とが設けられている。基準フェンス107は、シートPの給送方向下流側の側面(先端)が突き当てられるように設置されている。エンドフェンス103は、シートPの給送方向上流側の側面(後端)に当接するように設置されていて、手動移動機構によってシートPの給送方向のサイズに合わせて給送方向に移動可能に構成されている。
【0019】
このように構成された給送装置13において、載置部43にシートPがセットされていない状態では、その状態がエンド検知センサ(不図示)によって検知されて、ピックアップローラ52が退避位置に退避した状態になっている。
そして、載置部43にシートPがセットされると、その状態がエンド検知センサによって検知されて、ピックアップローラ52が退避位置から当接位置(図2に示す位置である。)に向けて移動される。
そして、図2に示すように、載置部43に載置された最上方のシートPの上面にピックアップローラ52が当接した状態でピックアップローラ52の反時計方向の回転駆動が開始されて、同じタイミングでフィードローラ53と分離ローラ54との回転が開始される。これにより、ピックアップローラ52によって載置部43に載置されたシート束PTのうち最上方のシートPが、フィードローラ53と分離ローラ54とのニップ部に向けて搬送されて、さらにそのニップ部から1枚のシートPが画像形成部に向けて分離され搬送されることになる。
また、載置部43に載置されたすべてのシートPが給送されて載置部43にシートPがセットされていない状態になると、その状態がエンド検知センサによって検知されて、ピックアップローラ52が再び退避位置に移動することになる。
【0020】
以下、図3図5等を用いて、本実施の形態において特徴的な、検知装置60(画像形成装置1)について説明する。
本実施の形態における検知装置60(図3参照)は、シートPが正常に搬送されているか否かを検知する装置であって、給送装置12、13からレジストローラ対17に至る搬送経路Kに設けられている。
具体的に、検知装置60は、(1)シートPが正常に搬送された状態(図3(A)参照)、(2)予定されたサイズとは異なるサイズのシートPが搬送された状態(以下、「サイズ不一致」という。図3(B)参照。)、(3)複数のシートP1、P2が互いに一部が重なった状態で搬送された状態(以下、「連送」という。図3(C)参照。)、(4)複数のシートP1、P2が互いに全部が重なった状態で搬送された状態(以下、「重送」という。図3(D)参照。)、を区別して判定(検知)するものである。
なお、「サイズ不一致」は、ユーザーが異なるサイズのシートPを給送装置12、13にセットしてしまった場合などに生じる。
【0021】
図3(及び、図1)に示すように、本実施の形態において、検知装置60には、サイズ検知手段としてのサイズ検知センサ61と、厚み検知手段としての厚み検知センサ62と、が設けられている。
サイズ検知センサ61(サイズ検知手段)は、搬送されるシートPの搬送方向のサイズを検知するものである。サイズ検知センサ61としては、公知のものであって、例えば、その位置におけるシートPの有無を光学的に検知する反射型フォトセンサを用いることができる。そして、サイズ検知センサ61で検知された検知結果に基づいて、集積回路からなるプロセッサとしての制御部70で、シートPの搬送方向サイズが換算されることになる。
厚み検知センサ62(厚み検知手段)は、搬送されるシートPの厚みHを検知するものである。厚み検知センサ62としては、公知のものであって、例えば、その位置でシートPの表面までの距離を光学的に検知する測距センサを用いることができる。そして、厚み検知センサ62で検知された検知結果に基づいて、制御部70で、シートPの厚みが換算されることになる。
また、厚み検知センサ62(厚み検知手段)は、サイズ検知センサ61(サイズ検知手段)に対して搬送方向下流側(図3の左側である。)に設置されている。なお、図3において、白矢印はシートPが搬送される方向(搬送方向)を示すものである。
【0022】
ここで、本実施の形態における検知装置60は、搬送されるシートPの搬送方向のサイズに関して予め取得された情報(以下、適宜に「サイズ情報」という。)と、サイズ検知センサ61によって検知されたサイズ(搬送方向サイズ)と、が異なるときに、厚み検知センサ62の検知結果に基づいて、搬送されるシートPにサイズ不一致が生じているか連送が生じているかを区別する判定(以下、「区別判定」という。)をおこなっている。
なお、本実施の形態では、ユーザーによって操作表示パネル100の操作によって予め入力された印刷(シートP)に関する情報に基づいて、サイズ情報を制御部70で取得して記憶している。
これに対して、給送装置12、13のエンドフェンス103(図2参照)の位置を検知するセンサの検知結果に基づいて、サイズ情報を直接的に取得することもできる。その場合、「サイズ不一致」は、ユーザーによるエンドフェンス103の操作不良(位置不良)などによって生じることになる。
【0023】
詳しくは、制御部70で取得した情報(サイズ情報)により定められた所定時間Tにおける厚さ検知センサ62の検知結果の変動に基づいて「区別判定」をおこなっている。
具体的に、上述した所定時間Tは、概ね、厚み検知センサ62の位置をシートP(サイズ情報通りの正常なものである。)の先端が通過してから後端が抜けるまでの時間であって、シートPの搬送方向サイズに応じて増減する。すなわち、A3サイズのシートPが通紙されるときに設定される所定時間Tは、A3サイズのシートPが通紙されるときに設定されるものに比べて長くなる。
【0024】
そして、所定時間T内に、厚さ検知センサ62の検知結果に所定値αを超えた変動がない場合(H2≦H1×α)には、「サイズ不一致」が生じたものと判定する。これに対して、所定時間T内に、厚さ検知センサ62の検知結果に所定値αを超えた変動がある場合(H2>H1×α)には、「連送」が生じたものと判定している。これらのことについては、後で図5のステップS11~S13にて説明する。
また、情報(サイズ情報)とサイズ検知センサ61によって検知された搬送方向サイズとが一致するときに、厚み検知センサ62の検知結果に基づいて、搬送されるシートPに「重送」が生じているか否かを判定している。このことについては、後で図5のステップS6~S8にて説明する。
【0025】
このような制御が成立する理由について、以下、図3図5を用いて説明する。
まず、図3において、操作表示パネル100に入力されたシートPのサイズ情報はX(例えば、A4サイズ)であるものとする。
給送装置(例えば、下段の給送装置13)から給送されたシートPは、搬送経路Kにおいて図3の白矢印方向に搬送されて、サイズ検知センサ61の位置を通過した後に、厚み検知センサ62の位置を通過することになる。
図3(A)は、予め設定されたサイズ情報通りのサイズXのシートPが通紙される動作を示している。このとき、制御部70は、サイズ検知センサ61の出力がオン・オフする時間(シートPの先端が通過してから後端が抜けるまでの時間である。)から、シートPの搬送方向サイズXを検出することになる。
【0026】
なお、図3において、破線で示すシートP´は先端がサイズ検知センサ61に達した状態(センサ出力がオフからオンに切り替わったとき)を示し、実線で示すシートPは後端がサイズ検知センサ61を通過した状態(センサ出力がオンからオフに切り替わったとき)を示している。
また、図3では、サイズ検知センサ61から厚み検知センサ62に至る距離が概ねXとなっているが、この距離はこれに限定されない。また、使用される給送装置12、13(給送経路)に応じて異なるサイズ検知センサ61(図1参照)を用いることもできる。
【0027】
図3(A)に示すように、予め設定された通りのサイズXのシートPが通紙された場合には、サイズ検知センサ61が狙い通りのタイミング(時間)でオン・オフすることになる(シートPが搬送される距離を、シートPの搬送速度で割った値に、余裕分の時間を足した時間以内にオン・オフする)。したがって、サイズ検知センサ61が狙い通りのタイミング(時間)でオン・オフしないときには、搬送されたシートPが予め設定されたサイズXのものでない可能性があることになる。
図3(B)は、予め設定されたサイズX(サイズ情報)とは異なるサイズ(例えば、2倍のサイズ2Xであるものとする。)のシートPが通紙されたときの動作(サイズ不一致時の動作)を示すものである。このとき、サイズ検知センサ61の出力がオンからオフに切り替わるタイミングは、狙いのサイズXのものよりも遅くなる。
図3(C)は、予め設定されたサイズXの複数枚のシートP1、P2が連送されたときの動作を示すものである。このときにも、サイズ検知センサ61の出力がオンからオフに切り替わるタイミングは、狙いのサイズXのものよりも遅くなる。
したがって、サイズ検知センサ61は、図3(B)のようにサイズ不一致が生じたときと、図3(C)のように連送が生じたときと、を区別して判定するのが難しい。特に、連送時において、シートP1とシートP2との重なる部分が短いほど、サイズ不一致と区別するのが難しい。
【0028】
本実施の形態では、このような不具合(「サイズ不一致」と「連送」とを区別できない不具合)を解決するために、サイズ検知センサ61の下流側に位置する厚み検知センサ62によって、シートP1、P2の厚み(シート厚)を検知している。
まず、図4(A)に示すように、予め設定されたサイズXのシートPが通紙された場合(図3(A)の通紙状態である。)には、厚み検知センサ62によってシート厚H分の値が長さX分出力される。
これに対して、図4(B)に示すように、サイズ不一致のシートPが通紙された場合(図3(B)の通紙状態である。)には、厚み検知センサ62によってシート厚H分の値が長さ2X分出力される。
【0029】
なお、本実施の形態では、厚み検知センサ62は、予め設定されたサイズXのシートPの、先端のシート厚H1と、後端のシート厚H2と、を検知している。換言すると、先に説明した「所定時間T」における厚み検知センサ62の2つの検知結果を取得している。したがって、図4(A)、(B)の場合には、先端のシート厚H1と、後端のシート厚H2と、が一枚分のシート厚Hで一致する(H1=H2=H)。
これに対して、「所定時間T」における厚み検知センサ62の連続的な検知結果を取得することもできる。
【0030】
一方、図4(C)に示すように、複数枚のシートP1、P2が連送された場合(図3(C)の通紙状態である。)には、シートP1、P2の長さ分(≒2X)において、厚み検知センサ62によって複数のシート厚H、2Hが出力される。具体的に、2枚のシートP1、P2が重なった部分のシート厚2Hが、その他の部分のシート厚Hの2倍になる。したがって、このようなシート厚Hの変動の有無から、「サイズ不一致」と「連送」とを区別判定することができる。すなわち、シート厚Hの変動がない場合には「サイズ不一致」が生じていて、シート厚Hの変動がある場合には「連送」が生じていることになる。
【0031】
さらに具体的に、本実施の形態では、先端のシート厚H1(所定時間T開始時のシート厚)と後端のシート厚H2(所定時間T終了時のシート厚)とを取得して、H2>H1×α(ただし、αは余裕度を加味した場合の所定値(係数)であって、例えば、1.5である。)なる条件を満たす場合には「連送」が生じているものとして、上式が満たされない場合には「サイズ不一致」が生じているものとする。
なお、図3(C)、図4(C)は、2枚のシートP1、P2が連送された場合のものを図示しているが、3枚以上のシートが連送される場合であっても、厚み検知センサ62で検知されるシート厚H1、H2は必ず異なることになるため、同様に区別判定することができる。
【0032】
ここで、図3(D)は、予め設定されたサイズXの複数枚のシートP1、P2が重送されたときの動作を示すものである。このとき、サイズ検知センサ61の出力がオンからオフに切り替わるタイミングは、狙いのサイズXのもの(図3(A)のものである。)と同じになる。したがって、このときは、シートPが正常に搬送されているのか、「重送」が生じているのか、を区別することができない。
しかし、図4(D)に示すように、複数枚のシートP1、P2が重送された場合には、シートP1、P2の長さX分において、厚み検知センサ62によって正常時よりも厚いシート厚2Hが出力される。具体的に、2枚のシートP1、P2分の2倍のシート厚2Hになる。したがって、このようなシート厚の大きさから、「正常」と「重送」とを判定(以下、適宜に「重送判定」という。)することができる。
さらに具体的に、本実施の形態では、先端のシート厚H1と、その直前に通紙されたシートPの先端のシート厚H1´と、を比較して、H1>H1´×αなる条件を満たす場合には「重送」が生じているものとして、上式が満たされない場合には「正常」な搬送がおこなわれているものとする。
これに対して、操作表示パネル100を介して入力されるシートPに関する情報として、サイズ情報の他に、シート厚に関する厚み情報を加え、その厚み情報と厚み検知センサ62で検知されるシート厚Hとを比較することで、重送判定をおこなうこともできる。
【0033】
このように、本実施の形態における検知装置60は、「サイズ不一致」と「連送」とを、さらには「重送」とを、区別して検知することができる。すなわち、シートPが正常に搬送されないときの原因が複数あっても、その原因を区別して検知することができる。そのため、シートPが正常に搬送されないときに、その原因に基づいた適切な対処方法をユーザーに提示することが可能になる。
【0034】
特に、本実施の形態では、シートPが正常に搬送されていないものと判定されたときに、その搬送の異常を報知するとともに、シートPの搬送を中断するように制御している。
具体的に、「サイズ不一致」が生じたときは、操作表示パネル100に、「給送装置にサイズの異なるシートがセットされている可能性がありますので、印刷を中断いたしました。次の手順にしたがい、搬送経路中のシートを除去(ジャム処理)するとともに、正しいサイズのものをセットしてください」などの表示がされる。また、「連送」や「重送」が生じたときは、操作表示パネル100に、「給送装置から2枚以上のシートが給送されてしまいましたので、印刷を中断いたしました。次の手順にしたがい、搬送経路中のシートを除去(ジャム処理)してください」などの表示がされる。そして、いずれの場合にも、ジャム処理が適正におこなわれた後に、中断していた印刷が再開される。
そのため、ユーザーは、シートPが正常に搬送されないときに、その原因に基づいた適切な対処をおこなうことができる。
【0035】
以下、図5のフローチャートを用いて、検知装置60でおこなわれる制御の一例について説明する。
図5に示すように、まず、ユーザーによって操作表示パネル100から入力された印刷(ジョブ)に関する入力情報に基づいて、シートPのサイズ情報が取得される(ステップS1)。これと同時に、制御部70で、サイズ情報に基づいた所定時間Tが設定される。
そして、印刷(ジョブ)が開始されると(ステップS2)、一定時間内にサイズ検知センサ61の出力がオンになったかが判別される(ステップS3)。この「一定時間」は、選択された給送装置(例えば、下段の給送装置13である。)から正常に搬送されたシートPがサイズ検知センサ61の位置に達するまでの時間である。したがって、ステップS3で、一定時間内にサイズ検知センサ61の出力がオンにならなかった場合には、シートPのジャム(詰り)が発生したものとして、その旨が表示パネル100に表示されるとともに搬送動作が中断される(ステップS4)。
これに対して、ステップS3で、一定時間内にサイズ検知センサ61の出力がオンになった場合には、シートPのジャムが発生していないものとして、次にサイズ検知センサ61の出力がオンになってから所定時間T内にオフになったかが判別される(ステップS5)。
【0036】
そして、ステップS5で、所定時間T内にサイズ検知センサ61の出力がオフになった場合には、「サイズ不一致」や「連送」が生じなかったものとして、「重送判定」がおこなわれる(ステップS6)。具体的に、先に図3(D)、図4(D)を用いて説明したように、先端のシート厚H1と、その直前に通紙されたシートPの先端のシート厚H1´と、を比較して、H1>H1´×αなる条件を満たすかが判別される。そして、そのような条件を満たす場合には「重送」が生じているものとして、その旨が表示パネル100に表示されるとともに搬送動作(印刷動作)が中断される(ステップS8)。これに対して、そのような条件を満たさない場合には「重送」が生じておらず、正常なシートPの搬送がおこなわれているものとして、そのまま搬送動作(印刷動作)が続けられる(ステップS7)。
【0037】
これに対して、ステップS5で、所定時間T内にサイズ検知センサ61の出力がオフにならなかった場合には、「サイズ不一致」又は「連送」が生じているものとして、次にその判定が連続通紙における1枚目のものに関するものであるかが判別される(ステップS9)。その結果、1枚目のものに関するものである場合には、「区別判定」がおこなわれる(ステップS11)。具体的に、先に図3(B)、(C)、図4(B)、(C)を用いて説明したように、先端のシート厚H1と後端のシート厚H2とを取得して、H2>H1×αなる条件を満たすかが判別される。そして、そのような条件を満たす場合には「連送」が生じているものとして、その旨が表示パネル100に表示されるとともに搬送動作が中断される(ステップS13)。これに対して、そのような条件を満たさない場合には「サイズ不一致」が生じているものとして、その旨が表示パネル100に表示されるとともに搬送動作が中断される(ステップS12)。
【0038】
一方、ステップS9で、判定が連続通紙における1枚目のものに関するものでない場合には、「区別判定」をおこなうことなく、「連送」が生じているものとして、その旨が表示パネル100に表示されるとともに搬送動作が中断される(ステップS10)。
すなわち、複数枚のシートが連続的に搬送される場合に、「区別判定」は1枚目のシートが搬送されるときにのみおこなわれ、2枚目以降のシートについて情報(サイズ情報)とサイズ検知センサ61によって検知されたサイズとが異なるときには「連送」があったものと判定する。
このような制御をおこなうのは、サイズ情報(予め設定されたサイズ)に対して給送装置にセットされたシートのサイズが異なるかどうかは、最初の1枚目について確認すれば充分であって、2枚目以降の確認は必要ないためである。すなわち、複数枚のシートPは束で給送装置12、13にセットされるため、1枚目が狙い通りのサイズのものであれば、2枚目以降が狙い通りのサイズのものでないということはないためである。したがって、「サイズ不一致」と「連送」とを区別する「区別判定」は1枚目に対してのみおこなっている。そして、2枚目以降のシートPについて、所定時間X内にサイズ検知センサ61の出力がオフにならなかった場合には、一様に、連送が生じたものと判定している。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態における検知装置60は、シートPが正常に搬送されているか否かを検知する検知装置であって、搬送されるシートPの搬送方向のサイズを検知するサイズ検知センサ61(サイズ検知手段)と、搬送されるシートPの厚みHを検知する厚み検知センサ62(厚み検知手段)と、が設けられている。そして、搬送されるシートPの搬送方向のサイズに関して予め取得された情報と、サイズ検知センサ61によって検知されたサイズと、が異なるときに、厚み検知センサ62の検知結果を利用して、搬送されるシートPにサイズ不一致が生じているか連送が生じているかを区別する区別判定をおこなっている。
これにより、シートPが正常に搬送されないときの原因を区別して検知することができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、モノクロの画像形成装置1に設置される検知装置60に対して本発明を適用したが、カラーの画像形成装置に設置される検知装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、電子写真方式の画像形成装置1に設置される検知装置60に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、その他の方式の画像形成装置(例えば、インクジェット方式の画像形成装置や、孔版印刷機などである。)に設置される検知装置に対しても本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、給送装置12、13から給送されたシートが正常に搬送されているか否かを検知する検知装置60に対して本発明を適用したが、原稿搬送部10(自動原稿搬送装置)から給送されたシートとしての原稿Dが正常に搬送されているか否かを検知する検知装置に対しても本発明を適用することができる。
また、本実施の形態において、サイズ検知センサ61や厚み検知センサ62の位置や数は、図1のものに限定されず、本発明の技術思想の範囲内において適宜変更することができる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0041】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0042】
なお、本願明細書等において、「シート」とは、用紙の他に、コート紙、ラベル紙、OHPシート、フィルムシート等のシート状の記録媒体のすべてを含むものと定義する。
【符号の説明】
【0043】
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
13 給送装置、
60 検知装置、
61 サイズ検知センサ(サイズ検知手段)、
62 厚み検知センサ(厚み検知手段)、
70 制御部、
100 操作表示パネル(報知手段)、
P、P1、P2 シート。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【文献】特開平6-40604号公報
図1
図2
図3
図4
図5