(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-23
(45)【発行日】2025-06-02
(54)【発明の名称】薬剤揮散器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20250526BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20250526BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20250526BHJP
B65D 25/10 20060101ALI20250526BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20250526BHJP
【FI】
B65D83/00 F
A01M1/20 D
A61L9/12
B65D25/10
B65D25/20 N
(21)【出願番号】P 2018121712
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-05-11
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下村 真由香
(72)【発明者】
【氏名】岡本 公伸
【合議体】
【審判長】岩谷 一臣
【審判官】長谷川 一郎
【審判官】葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203286(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2526366(GB,A)
【文献】特開2011-4867(JP,A)
【文献】特開2015-182812(JP,A)
【文献】実開昭55-62327(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 25/10
B65D 25/20
A61L 9/12
A01M 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮散体を挿入する開口を上部に有するとともに内部に液状薬剤の収容空間を有する薬剤容器と、
前記開口から前記薬剤容器に挿入される複数の揮散体と、
を備える薬剤揮散器であって、
前記開口を形作る内壁面を有する口部を備え、
前記口部の内壁面は、下側の鉛直面と、上側の傾斜面とで構成されており、前記傾斜面は、前記開口に向かうに連れて下降するように傾斜しており、
前記口部の内壁面には、前記開口から挿入された前記揮散体が嵌まる嵌入部が周方向に沿って複数設けられており、
前記嵌入部は、前記口部の内壁面に形成される凹部により構成され、
前記嵌入部は、前記口部の内壁面の前記傾斜面及び前記鉛直面に跨がって設けられており、
前記嵌入部は、前記傾斜面よりも急な傾斜角度で前記開口に向かうに連れて下降するように傾斜しており、
前記嵌入部は、該嵌入部に嵌まる前記揮散体との間に隙間を有する、薬剤揮散器。
【請求項2】
揮散体を挿入する開口を上部に有するとともに内部に液状薬剤の収容空間を有する薬剤容器と、
前記開口から前記薬剤容器に挿入される複数の揮散体と、
を備える薬剤揮散器であって、
前記薬剤容器は、前記開口を形作る内壁面を有する口部を備え、
前記口部の内壁面には、前記開口から挿入された前記揮散体が嵌まる嵌入部が周方向に沿って複数設けられており、
複数の前記嵌入部は、隣り合う前記嵌入部と前記口部の内壁面の周方向に間隔をおいて設けられており、
前記嵌入部は、前記口部の内壁面から突き出る一対の突起の間の凹部により構成され、
前記突起の高さは前記突起の長さ方向の中央で最も高く前記突起の長さ方向の一方側及び他方側に向かうに連れて次第に低い、薬剤揮散器。
【請求項3】
揮散体を挿入する開口を上部に有するとともに内部に液状薬剤の収容空間を有する薬剤容器と、
前記開口から前記薬剤容器に挿入される複数の揮散体と、
を備える薬剤揮散器であって、
前記薬剤容器は、容器本体と、前記容器本体に着脱自在なキャップと、を備え、
前記キャップは、前記開口を形作る内壁面を有する筒状の口部と、前記口部の上端に前記口部を囲むように設けられる天面部と、を備え、
前記口部の内壁面は、上下方向に延びる鉛直面を含み、
前記口部の内壁面には、前記開口から挿入された前記揮散体が嵌まる嵌入部が周方向に沿って複数設けられており、
前記嵌入部は、前記口部の内壁面に形成される凹部により構成され、
前記天面部の上面は、前記口部の内壁面と連なるとともに前記開口に向かうに連れて下降するように傾斜しており、
前記嵌入部は、隣り合う前記嵌入部と前記口部の内壁面の周方向に間隔をおいて設けられており、
前記口部は、前記容器本体の筒状の首部の内側に挿通されており、前記内壁面の前記鉛直面が前記首部の下端まで延びる、薬剤揮散器。
【請求項4】
前記嵌入部は、隣り合う前記嵌入部と前記口部の内壁面の周方向に間隔をおいて設けられている、請求項
1に記載の薬剤揮散器。
【請求項5】
前記嵌入部は、前記開口に向かうに連れて下降するように傾斜している、請求項
2又は
3に記載の薬剤揮散器。
【請求項6】
前記口部の内壁面は、下側の鉛直面と、上側の傾斜面とで構成されており、前記傾斜面は、前記開口に向かうに連れて下降するように傾斜している、請求項
2又は
3に記載の薬剤揮散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤、消臭剤などの揮散性を有する液状薬剤を揮散させる薬剤揮散器に用いられる薬剤容器、及び当該薬剤容器を備えた薬剤揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
室内や車内などの空間の臭気による不快感をなくし、快適な空間を生み出すために、液状薬剤を自然に揮散させる薬剤揮散器が広く使用されている。この種の薬剤揮散器として、例えば特許文献1には、液状薬剤を収容した薬剤容器内に複数の棒状の揮散体を挿入したものが開示されている。特許文献1の薬剤揮散器は、各揮散体の下端側の一部分が液状薬剤に浸漬する一方で、各揮散体の上端側の一部分は薬剤容器の上部開口から突き出ており、薬剤容器内の液状薬剤を各揮散体により吸い上げて薬剤容器外に揮散することで、芳香効果などを発揮している。
【0003】
薬剤揮散器は、リビングや玄関などの人の目に触れる場所に設置される場合が多く、近年、インテリア性を高めた薬剤揮散器に対するニーズが高まっている。そのため、揮散体にはラタンや植物などの天然素材、造花、樹脂スティックなどが主に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の薬剤揮散器は、揮散体が液状薬剤を吸い上げるため、揮散体は液状薬剤により濡れた状態で薬剤容器内に立て掛けられている。しかし、揮散体の表面が濡れていると、揮散体同士がくっつきやすく、複数の揮散体がくっついて密集すると、その分、揮散体の表面積が減少するために液状薬剤の揮散量が低下するうえ、薬剤揮散器のインテリア性が損なわれるという点で改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、揮散体同士がくっつくことを抑制することができる薬剤容器及び薬剤揮散器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の薬剤容器は、揮散体を挿入する開口を上部に有するとともに内部に液状薬剤の収容空間を有する薬剤容器であって、前記開口を形作る内壁面を有する口部を備え、前記口部の内壁面には、前記開口から挿入された前記揮散体が嵌まる嵌入部が周方向に沿って複数設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の薬剤容器においては、前記嵌入部は、前記口部の内壁面に形成される凹部により構成されることが好ましい。
【0009】
また、本発明の薬剤容器においては、前記嵌入部は、前記口部の内壁面から突き出る一対の突起の間の凹部により構成されることが好ましい。
【0010】
また、本発明の薬剤容器においては、前記口部の内壁面は断面視多角形状を呈しており、前記嵌入部は、前記多角形の角部により構成されることが好ましい。
【0011】
また、本発明の薬剤容器においては、前記嵌入部は、隣り合う前記嵌入部と前記口部の内壁面の周方向に間隔をおいて設けられていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の薬剤容器においては、前記嵌入部は、前記開口に向かうに連れて下降するように傾斜していることが好ましい。
【0013】
また、本発明の薬剤容器においては、前記口部の内壁面は、下側の鉛直面と、上側の傾斜面とで構成されており、前記傾斜面は、前記開口に向かうに連れて下降するように傾斜していることが好ましい。
【0014】
また、本発明の薬剤容器においては、前記口部の上端に前記口部を囲むように設けられる天面部をさらに備え、前記天面部の上面は、前記口部の内壁面と連なるとともに前記開口に向かうに連れて下降するように傾斜していることが好ましい。
【0015】
本発明の薬剤揮散器は、上述した構成の薬剤容器と、前記薬剤容器内に挿入される複数の揮散体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、口部の内壁面に複数の嵌入部が周方向に沿って設けられているので、口部の開口から薬剤容器に挿入した複数の揮散体をそれぞれ嵌入部に嵌めた状態で口部の内壁面に立て掛けることにより、嵌入部によって各揮散体の口部の内壁面に沿った移動を抑制することができる。よって、例えば薬剤容器を移動させたり、揮散体に手が触れるなどしても、揮散体は、口部の内壁面に沿って移動することが規制されているので、揮散体同士がくっついて密集することを抑制することができ、揮散量の低下やインテリア性が損なわれることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態の薬剤揮散器の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態の薬剤容器の縦断面図である。
【
図6】嵌入部(凹部)を拡大して示す斜視図である。
【
図7】嵌入部(凹部)の断面視形状を概略的に示す断面図である。
【
図8】変形例の嵌入部(凹部)を有するキャップの平面図である。
【
図9】変形例の嵌入部(凹部)を拡大して示す斜視図である。
【
図10】突起及び変形例の嵌入部(凹部)の断面視形状を概略的に示す断面図である。
【
図11】揮散体が嵌入部に嵌まる状態を概略的に例示する断面図である。
【
図13】揮散体が液状薬剤を吸い上げた時の横断面を概略的に示す断面図である。
【
図14】変形例の揮散体が液状薬剤を吸い上げた時の横断面を概略的に示す断面図である。
【
図16】変形例の嵌入部(凹部)を有するキャップの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1及び
図2は、本実施形態の薬剤揮散器1を示している。薬剤揮散器1は、液状薬剤Lを収容する薬剤容器2と、薬剤容器2に挿入される複数の揮散体10とを備えている。複数の揮散体10は、下端側の一部分が薬剤容器2内で液状薬剤Lに浸漬する一方で、上端側の一部分は薬剤容器2上で露出している。薬剤揮散器1は、薬剤容器2内の液状薬剤Lを複数の揮散体10により吸い上げて薬剤容器2外に揮散することで、薬剤揮散器1が設置された周囲の空間に対して液状薬剤の薬効を発揮する。
【0020】
液状薬剤Lは、揮散性(薬効徐放性)を有し、空気中に徐々に薬剤を揮散することで薬効を奏するものである。液状薬剤Lは、例えば芳香剤、消臭剤、防虫剤などを例示することができるが、特に限定されるものではなく、使用目的に応じて、香料、消臭剤成分、防虫剤成分、着色料などを単独又は組み合わせて含ませることができる。液状薬剤Lに含まれる溶媒は、使用される添加剤の種類に応じて適宜選択され、親水性溶媒又は親油性溶媒、あるいはこれらの混合物とすることができる。液状薬剤Lが香料を含む場合には、その香り強度を高めるために、溶媒として少なくとも親油性溶媒を含むことが好ましい。親水性溶媒としては、例えば、水又はエタノール、あるいはこれらの混合物を使用することができる。親油性溶媒としては、例えば、グリコールエーテル又はイソパラフィン系溶媒、あるいはこれらの混合物を使用することができる。なお、液状薬剤には、香料、消臭成分、防虫成分、着色料などを可溶化させるために、溶解剤が含まれていてもよい。
【0021】
薬剤容器2は、
図1~
図3に示すように、上部に揮散体10を挿入する開口50を有し、内部に液状薬剤Lの収容空間30を有する有底の容器である。本実施形態では、薬剤容器2は、収容空間30を有する容器本体3と、開口50を有する筒状の口部5を備えていて容器本体3に着脱自在なキャップ4とで構成されている。
【0022】
容器本体3は、透明、半透明及び不透明のいずれであってもよく、また、無色及び有色のいずれであってもよい。なお、半透明とは、透明度が完全に透明ではないが、内部を視認することが可能な透明度を有していることをいう。容器本体3が透明又は半透明であると、外部から容器本体3内を視認可能となり、例えば容器本体3内の液状薬剤Lの残量を確認することができるので好ましい。容器本体3の材質は、特に限定されるものではなく、例えばガラス製やプラスチック製、陶器製とすることができ、美観を考慮して適宜素材が選択される。
【0023】
容器本体3は、
図3に示すように、首部31と、首部31の下端に連続する肩部32と、肩部32に連続する中空の胴部33と、胴部33の下端に連続する底部34とを備えている。
【0024】
首部31は、液状薬剤Lの注入口を有する筒状を呈している。また、首部31は、キャップ4を容器本体3に取り付けた際に口部5が内側を挿通することが可能な大きさに形成されており、口部5の開口50が首部31の注入口に位置することで開口50に差し込まれた揮散体10が容器本体3に挿入される。
【0025】
肩部32は、首部31よりも大きい平面視円形状の平坦な上面部32Aと、上面部32Aの外周縁から垂れ下がる側面部32Bと、側面部32Bの下端に連なる平面視円形状の平坦な下面部32Cとを有している。下面部32Cは、キャップ4を容器本体3に取り付けた際にキャップ4の外側周壁部41が外周縁上に当接することが可能な大きさに形成されている。
【0026】
キャップ4は、
図1~
図5に示すように、平面視円形状の天面部40と、天面部40の外周縁から垂れ下がる筒状の外側周壁部41と、外側周壁部41の内側において天面部40より垂れ下がる筒状の内側周壁部42とを備えている。また、本実施形態では、キャップ4が筒状の口部5を備えている。天面部40の中央には揮散体10を挿入するための開口50が開いており、天面部40は口部5の上端に口部5を囲むように設けられている。
【0027】
キャップ4の材質は、特に限定されるものではなく、例えば金属製やプラスチック製とすることができ、美観を考慮して適宜素材が選択される。
【0028】
天面部40は、その上面が口部5の内壁面51と連なっている。天面部40は、本実施形態では、開口50に向かうに連れて下降するように傾斜しており、天面部40の上面も同様に傾斜した状態で口部5の内壁面51と連なっている。
【0029】
外側周壁部41は、下方にいくにしたがって外径が大きくなる逆テーパ状を呈している。外側周壁部41は、キャップ4を容器本体3に取り付けた際に、その下端が容器本体3の肩部32の下面部32Cの外周縁上に当接する。これにより、容器本体3の首部31や肩部32を覆って隠すことができる。
【0030】
内側周壁部42は、外側周壁部41と同心円状に天面部40に設けられており、外側周壁部41よりも高さが低い。内側周壁部42は、キャップ4を容器本体3に取り付けた際に、その内周面が容器本体3の首部31の外周面に当接する。これにより、キャップ4を容器本体3に適切に位置決めした状態で取り付けることができる。
【0031】
口部5は、所定の肉厚を有する筒状を呈しており、内側に開口50を有している。開口50は、口部5の内壁面51により形作られている。口部5の内壁面51は、本実施形態では、上下方向に延びる下側の鉛直面51Aと、鉛直面51Aに連なる上側の傾斜面51Bとで構成されており、傾斜面51Bが天面部40の上面と連なっている。傾斜面51Bは、天面部40の上面よりも急な傾斜角度で、開口50に向かうに連れて下降するように傾斜している。
【0032】
口部5の内壁面51には、上端側の所定位置に、嵌入部6が周方向に沿って複数設けられている。嵌入部6は、
図1~
図4及び
図6に示すように、例えば口部5の内壁面51に一部分を凹ませて形成した凹部52により構成することができる。凹部52は、所定の幅w、深さh及び長さlを有している。
【0033】
凹部52は、口部5の内壁面51の鉛直面51Aに上下方向に延びるように設けられてもよいが、本実施形態では、内壁面51の傾斜面51B及び鉛直面51Aに跨がって設けられており、傾斜面51Aよりも急な傾斜角度で、開口50に向かうに連れて下降するように傾斜していて、上縁よりも下縁の方が開口50側に位置している。開口50から薬剤容器2に挿入された揮散体10は、傾斜した状態で口部5の内壁面51に立て掛けられるが、凹部52が傾斜していることで、揮散体10のより広範囲を凹部52に嵌めた状態で揮散体10を口部5の内壁面51に立て掛けることができる。
【0034】
凹部52の形状は、特に限定されるものではなく、本実施形態では
図7(a)に示すように断面視矩形状を呈しているが、例えば断面視でC字状(
図7(b))、台形状(
図7(c))、半円などの円弧状(
図7(d))、三角形状(
図7(e))など、種々の形状とすることができる。
【0035】
なお、凹部52は、図示例では、長さlの方向において深さhが変化しているが、長さlの方向で深さhが一定となっていてもよい。また、図示例では、凹部52は、長さlの方向の中央で深さhが最も深く長さ方向の一方側及び他方側に向かうに連れて次第に深さが浅くなっているが、例えば長さlの方向の一方側に向かうに連れて次第に深さが深く又は浅くなることで、長さlの方向において深さhが変化していてもよい。
【0036】
嵌入部6は、
図8及び
図9に示すように、口部5の内壁面51から突き出る一対の突起53の間の凹部54により構成することもできる。突起53は、口部5の内壁面51の鉛直面51Aに上下方向に延びるように設けられてもよいし、傾斜面51Bに斜めに延びるように設けられていてもよい。突起53を口部5の内壁面51の傾斜面51Bに設けると、凹部54は傾斜面51Bに沿って傾斜するので、開口50から薬剤容器2に挿入された揮散体10をより広範囲で凹部52に嵌めた状態で揮散体10を口部5の内壁面51に立て掛けることができる。凹部54は、突起53の間隔、高さ、長さに相当する所定の幅w、深さh及び長さlを有している。
【0037】
突起53の形状は、特に限定されるものではなく、
図8及び
図9の例では
図10(a)に示すように断面視矩形状を呈しているが、例えば断面視で台形状(
図10(b))、両側が括れた形状(
図10(c))、三角形状(
図10(d))、半円形状(
図10(e))、円形状(
図10(f))など、種々の形状とすることができる。
【0038】
なお、突起53は、図示例では、長さ方向(凹部54の長さlの方向)において高さが一定となっているが、長さ方向において高さが変化していてもよい。例えば長さ方向の一方側に向かうに連れて次第に高さが低く又は高くなっていてもよいし、長さ方向の中央で高さが最も高く長さ方向の一方側及び他方側に向かうに連れて次第に高さが低くなっていてもよい。これにより、凹部54の深さhも長さlの方向において変化する。
【0039】
開口50から挿入される揮散体10は、口部5の内壁面51に立て掛けられる。嵌入部6は、口部5の内壁面51において、開口50から挿入された揮散体10が嵌まる部分である。なお、揮散体10が嵌まるとは、揮散体10の全部又は一部分が嵌入部6の内側に入ることを意味し、例えば
図11(a)~(e)に示すように揮散体10の全部又は一部分が嵌入部6(凹部52,54)の内側に入って揮散体10が嵌入部6(凹部52,54)に落ち込む、例えば
図11(f)に示すように揮散体10の一部分が嵌入部6(凹部52)の内側にぴったりと嵌まって揮散体10が嵌入部6に密着する、又は、例えば
図11(g)~(j)に示すように揮散体10の一部分が嵌入部6(凹部52,54)の内側において挟まれて揮散体10の両側が嵌入部6(凹部52,54)により押えられるなどすることにより、揮散体10が嵌入部6(凹部52,54)に拘束されて口部5の内壁面51に沿って移動し難くなる状態を指す。このように、口部5の開口50から挿入されて内壁面51に立て掛けられた複数の揮散体10がそれぞれ嵌入部6の内側に入って嵌まることで、複数の揮散体10は口部5の内壁面51に沿って移動することが規制されるので、揮散体10同士がくっついて密集することを抑制することができる。
【0040】
凹部52,54の幅wは、特に限定されるものではなく、揮散体10の太さに応じて適宜設定されるが、揮散体10の太さ以上の幅であると、揮散体10が凹部52,54に落ち込んだり、嵌合して揮散体10が凹部52,54に保持されるので、本発明の効果を効果的に発揮することができる。例えば揮散体10の太さが1.0mmである場合は、凹部52,54の幅wは1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、2.0mm以上がさらに好ましい。一方で、凹部52,54の幅wは、大きすぎると、1つの凹部52,54の内側に複数の揮散体10が入りやすくなるので、揮散体10の太さが1.0mmである場合は、凹部52,54の幅wは4.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましい。なお、凹部52,54の幅wは、凹部52,54の底部とは反対側の頂部位置における開口広さを指す。
【0041】
凹部52,54の深さhは、特に限定されるものではなく、揮散体10の太さに応じて適宜設定されるが、揮散体10の太さの半分以上が凹部52,54の内側に入り込む深さであると、揮散体10が凹部52,54に保持されやすくなるので、本発明の効果を効果的に発揮することができる。例えば揮散体10の太さが1.0mmである場合は、凹部52,54の深さhは0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上がさらに好ましい。一方で、凹部52,54の深さhは、大きすぎると、口部5の開口50を大きくする必要があるため、揮散体10の太さが1.0mmである場合は、凹部52,54の深さhは5.0mm以下が好ましく、4.0mm以下がより好ましい。
【0042】
凹部52,54の長さlは、特に限定されるものではないが、長さが大きいと、揮散体10のより多くの部分が凹部52,54の内側に入り、凹部52,54により揮散体10を効果的に拘束して移動し難くすることができるために好ましく、例えば2.0mm以上が好ましく、4.0mm以上がより好ましく、6.0mm以上がさらに好ましい。
【0043】
凹部52,54の断面視形状は、特に限定されるものではないが、
図7(a)~(c)及び
図10(a)~(c)に示すような、凹部52,54の幅が底部から頂部まで一定である又は頂部のほうが底部よりも小さい形状であると、揮散体10が凹部52,54から抜け出し難くなるため、本発明の効果を効果的に発揮することができる。
【0044】
凹部52,54は、口部5の内壁面51において、周方向に隣り合う凹部52,54との間に間隔s(
図6や
図9に示す)をおいて設けられていることが好ましい。隣り合う凹部52,54の間に間隔sを設けることで、揮散体10が隣り合う凹部52,54に移動し難くなるため、揮散体10同士がくっついて密集することをより効果的に抑制することができる。凹部52,54同士の間隔(周方向の長さ)sは1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上がさらに好ましい。一方で、凹部52,54同士の間隔sは、大きすぎると、口部5の開口50を大きくする必要があるため、凹部52,54同士の間隔sは6.0mm以下が好ましく、5.0mm以下がより好ましい。なお、隣り合う凹部52,54の間に必ずしも間隔sをあける必要はなく、凹部52,54を周方向に間隔sをあけることなく連続して設けてもよい。
【0045】
揮散体10は、長手形状を呈しており、本実施形態では棒状を呈している。長手形状とは、一方向における長さが、前記一方向と直交する方向における長さよりも十分に長い形状をいう。なお、揮散体10は、必ずしも棒状を呈している必要はなく、例えば細長い板状を呈していてもよい。
【0046】
揮散体10の長さ(長手方向の大きさ)は、上端が薬剤容器2の上部の開口50から突き出て、下端が薬剤容器2の底部34の内底面(好ましくは内底面の外周部分)に達する長さであれば、特に限定されるものではなく、薬剤容器2の大きさにもよるが、例えば110mm以上190mm以下とすることができる。
【0047】
揮散体10の太さは、特に限定されるものではないが、細い方が薬剤揮散器1を外部から視認した際に揮散体10が外観上目立たず、デザイン性の観点から好ましい一方で、細すぎると折れやすくなるため、1.0mm以上4.0mm以下とすることが好ましい。また、揮散体10が細くて軽い場合には、揮散体10がより移動しやすいので本発明の効果を発揮しやすい。なお、揮散体10の太さは、揮散体10の横断面が内接する円の直径で定義することができる。
【0048】
揮散体10は、長手方向に垂直な断面視において、
図12に示すように、毛細管現象により液状薬剤Lを吸い上げることができるように、液状薬剤Lが長手方向に吸い上げられる流路となる微細な筋状の溝11を外周に周方向に間隔をあけて複数備えている。揮散体10は、軸部12と、軸部12の外周面から突き出るとともに軸部12の外周面を長手方向に延びる複数の突条13とで構成されており、周方向に隣り合う突条13の間に溝11が存在している。軸部12の横断面の外形は、必ずしも円形状である必要はなく、楕円形状、三角形状や四角形状などの多角形状など、種々の形状とすることができる。突条13の形状(溝11の形状)は特に限定されないが、本実施形態では、複数の突条13が軸部12の中心から放射状に広がっている。そのため、隣り合う突条13の間隔(周方向の長さ)は、突条13の頂部13Aに向かうに連れて徐々に広がっている、言い換えれば、溝11の幅は、溝底11Aから外部空間側に向かうに連れて徐々に広がっている。
【0049】
揮散体10の溝11の幅(溝底11Aにおける幅)Wは、特に限定されるものではないが、常温で液状薬剤Lを迅速に吸い上げることができるように、0.01mm以上0.15mm以下とすることが好ましい。また、揮散体10の溝11の深さ(軸部12の外周面からの突条13の高さ)Hは、特に限定されるものではないが、溝11が深すぎると突条13が折れやすくなる一方で、溝11が浅すぎると吸い上げることができる液状薬剤Lが少なくなるため、0.1mm以上1.0mm以下とすることが好ましい。
【0050】
揮散体10は、毛細管現象によって液状薬剤2を好適に吸い上げることができれば、複数の溝11に代えて又は複数の溝11に加えて、他の液状薬剤Lの流路を備えていてもよい。例えば、揮散体10を中空構造とすることで、揮散体10の内部の長手方向に延びる空洞14を液状薬剤Lの流路とすることができる。この場合には、揮散体10の内周面に微細な溝をさらに設けてもよい。
【0051】
揮散体10は、透明な材料で形成されることが好ましい。透明な材料は、無色及び有色のいずれであってもよい。揮散体10が透明な材料で形成されていることにより、揮散体10は、光の透過性を有することから、液状薬剤Lの中において液状薬剤Lとの境界で光が反射・屈折し難くなる。よって、薬剤容器2の外側から揮散体10を見たときに、揮散体10の液状薬剤Lに浸漬している部分は大きく屈折して見えないため、揮散体10の液状薬剤Lに浸漬している部分が液状薬剤Lの液面で折れて見えたり、実際よりも大きく見えたりすることを抑制することができる。そのうえ、外周の複数の溝11により揮散体10の外面において光を反射する面が多くなり、光が乱反射することで全体としてキラキラと輝くように見える。これにより、薬剤容器2の外側から揮散体10を見たときに、揮散体10の液状薬剤Lに浸漬している部分が多少は屈折して見えたとしても、薬剤容器2内で多数の揮散体10が雑然としているとの印象を与えるというより、多数の揮散体10により薬剤容器2がキラキラと輝いた印象を与える。そのため、多数の揮散体10が薬剤容器2内に挿入されていても薬剤揮散器1の美観を向上でき、薬剤揮散器1のインテリア性を高めることができる。さらに、液状薬剤Lに色が付いていても、揮散体10がキラキラと輝くことにより、各溝11内で吸い上げられる有色の液状薬剤Lが視認し難くなる。よって、揮散体10が液状薬剤Lの吸い上げ前と見た目がさほど変わらずに見え、揮散体10が液状薬剤Lで濡れているようには見えなくすることができる。なお、揮散体10を無色透明な材料で形成すると、液状薬剤Lの色を問わずに当該効果を好適に発揮させることができる。
【0052】
加えて、揮散体10は、外周の溝11及び/又は内部の空洞14を液状薬剤Lが吸い上げにより通過することで、液状薬剤Lの中でより光が透過して液状薬剤Lとの境界で光が反射・屈折し難くなるので、液状薬剤Lの中で揮散体10を見えにくくすることができる。よって、多数の揮散体10が薬剤容器2内に挿入されていても、揮散体10を液状薬剤Lとほぼ同化させることができるので、薬剤容器2内が多数の揮散体10により雑然とならず、薬剤揮散器1の美観をさらに向上でき、薬剤揮散器1のインテリア性をさらに高めることができる。なお、液状薬剤Lに色が付いていても、揮散体10は、外周の溝11及び/又は内部の空洞14を通過する液状薬剤Lにより、その大部分が外部の液状薬剤Lと同色になるため、揮散体10は液状薬剤Lの中で見えにくくなる。また、揮散体10を液状薬剤Lの色と同一色又は同系色とすると、揮散体10を液状薬剤Lの中でさらに見えにくくすることができる。なお、同系色とは、似通った色のことをいい、色相環で隣り合う色や近い位置にある色のことをいい、青色と水色、オレンジ色と黄色、緑と黄緑色などを例示することができる。
【0053】
また、揮散体10は、液状薬剤Lとの親和性が高い材料で形成されることが好ましい。揮散体10が液状薬剤Lとの親和性が高い材料で形成されていることで、液状薬剤Lが揮散体10の各溝11で吸い上げられる際に、液状薬剤Lが溝11の表面にべったりと付くように広がり、液状薬剤Lは溝11の表面に対して接触する面積が大きくなる。そのため、
図13に示すように、液状薬剤Lが揮散体10の各溝11で吸い上げられる際に、液状薬剤Lの液面の高さが溝11の深さ(突条13の高さ)Hよりも低くなり、液状薬剤Lの液面は溝11の外縁(突条13の頂部13A)よりも外部空間側へ盛り上がらない。よって、揮散体10の薬剤容器2から露出した上端側の部分に手や服、カーテンなどが触れた場合でも、突条13の頂部13Aが最初に手などに触れて、溝11内の液状薬剤Lが手などに付着し難くなるため、手などが液状薬剤Lにより汚れることを抑制することができる。
【0054】
なお、揮散体10が液状薬剤Lとの親和性が低い材料で形成されていると、液状薬剤Lが揮散体10の各溝11で吸い上げられる際に、溝11の表面で液状薬剤Lを弾いた状態となり、液状薬剤Lは溝11の表面に対して接触する面積が小さくなる。そのため、
図14に示すように、液状薬剤Lが揮散体10の各溝11で吸い上げられる際に、液状薬剤Lの液面の高さが突条13の高さHよりも高くなり、液状薬剤Lの液面は突条13の頂部13Aよりも外部空間側へ盛り上がる。よって、揮散体10の薬剤容器2から露出した上端側の部分に手や服、カーテンなどが触れた場合に、溝11内の液状薬剤Lが手などに付着し易くなる。
【0055】
液状薬剤Lとの親和性が高い材料としては、
図15に示すような液状薬剤Lの接触角αが90°以下の材料、好ましくは70°以下の材料、より好ましくは50°以下の材料、より好ましくは30°以下の材料、さらに好ましくは10°以下の材料を挙げることができる。この接触角αは、揮散体10に用いられる材料からなり、表面が平坦な薄板B(大きさ:60mm×20mm、厚み:5mm程度)の表面の汚れを除去した後、例えばマイクロピペットを用いて6μL程度の液状薬剤Lの液滴を薄板Bの表面に着滴し、1000ms後の液滴の接触角αを接触角計(協和界面化学社製:DropMaster500、測定解析統合ソフト:FAMAS)により計測することができる。
【0056】
上述した揮散体10を形成する材料としては、例えばガラスや、透明な樹脂などを用いることができ、透明な樹脂としては、例えばポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、フッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリスチレン、塩化ビニルなどを好ましく用いることができる。
【0057】
揮散体10は、上述した揮散体10を形成するための材料を用いて一般的な公知の成形方法(例えば樹脂では押出し成形など、例えばガラスではドロー成形など)により形作ることができる。なお、揮散体10は、押し出し成形などで形成することで、一本物(1つの棒状体や板状体など)で構成することが好ましく、隙間や孔が全くあるいはほとんどない緻密体とすることが好ましい。これにより、揮散体10は内部に実質的に液状薬剤Lが含浸しないので、揮散体10が過剰に液状薬剤Lを保持した状態になることがなく、薬剤容器2内から液状薬剤Lがなくなると、揮散体10も直ちに保持している液状薬剤Lを失うため、使用終期を容易に把握することができる。また、揮散体10において、外周の溝11や内部の空洞14以外に液状薬剤Lが通る流路をなくすことができるので、揮散体10による液状薬剤Lの吸い上げ速度を所望の設定速度に保持することができる。
【0058】
なお、揮散体10の材質は特に限定されるものではなく、揮散体10は、上述した材料以外で形成されてもよい。例えば、従来から揮散体10に用いられている公知の材料、例えばラタンや植物などの天然素材、造花などで揮散体10を形成してもよい。
【0059】
以上、上述した構成の薬剤容器2及び当該薬剤容器2を用いた薬剤揮散器1によれば、口部5の内壁面51に複数の嵌入部6が周方向に沿って設けられているので、口部5の開口50から薬剤容器2に挿入した複数の揮散体10をそれぞれ嵌入部6に嵌めた状態で口部5の内壁面51に立て掛けることにより、嵌入部6によって各揮散体10の口部5の内壁面51に沿った移動を抑制することができる。よって、例えば薬剤容器2を移動させたり、揮散体10に手が触れるなどしても、揮散体10は、口部5の内壁面51に沿って移動することが規制されているので、揮散体10同士がくっついて密集することを抑制することができる。
【0060】
また、嵌入部6が開口50側に向かうに連れて下降するように傾斜することにより、揮散体10のより広範囲を嵌入部6に嵌めることができる。よって、嵌入部6によって各揮散体10の口部5の内壁面51に沿った移動をより効果的に抑制することができ、揮散体10同士がくっついて密集することをより効果的に抑制することができる。
【0061】
また、嵌入部6は、口部5の内壁面51において、周方向に隣り合う嵌入部6との間に間隔をおいて設けられることにより、揮散体10が隣り合う嵌入部6に移動し難くなる。そのため、揮散体10同士がくっついて密集することをより効果的に抑制することができる。
【0062】
また、口部5の内壁面51が上側に傾斜面51Bを含むことにより、揮散体10が吸い上げた液状薬剤Lが口部5の内壁面51に付着した場合でも、傾斜面51Bに沿って付着した液状薬剤Lを開口51から薬剤容器2の内部に誘導することができる。また、キャップ4の天面部40の上面が開口50に向かうに連れて下降するように傾斜していることにより、揮散体10からの液状薬剤Lがキャップ4の天面部40に滴下した場合でも、天面部40の上面に沿って滴下した液状薬剤Lを開口51から薬剤容器2の内部に誘導することができる。よって、薬剤容器2の上面や外周面に液状薬剤Lが付着することを防止できるので、薬剤容器2の外周面を液状薬剤Lが垂れることで家財を侵すことを防止することができ、また、薬剤容器2に手や服、カーテンなどが触れても、手などが液状薬剤Lにより汚れることを防止することができる。
【0063】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0064】
例えば上記実施形態では、嵌入部6が口部5の内壁面51に形成される凹部52や、口部5の内壁面51から突き出る一対の突起53の間の凹部54により構成されているが、揮散体10が嵌まる構造であれば、特に限定されるものではなく、他の種々の構造を採用することができる。例えば、
図16に示すように、口部5の内壁面51を断面視多角形状に形成することで、多角形の内壁面51の角55で嵌入部6を構成してもよい。この場合においても、揮散体10の一部分が嵌入部6(角55)の内側において挟まれて揮散体10の両側が嵌入部6(角55)により押えられることにより、揮散体10が嵌入部6(角55)に拘束されて口部5の内壁面51に沿って移動し難くなる。よって、口部5の開口50から挿入されて内壁面51に立て掛けられた複数の揮散体10がそれぞれ嵌入部6(角55)の内側に入って嵌まることで、複数の揮散体10は口部5の内壁面51に沿って移動することが規制されるので、揮散体10同士がくっついて密集することを抑制することができる。
【0065】
口部5の内壁面51の多角形状は、特に限定されるものではないが、角55の内角が小さいほど、角55により揮散体10を効果的に拘束して移動し難くすることができるために好ましく、例えば150°以下が好ましく、140°以下がより好ましい。一方で、角55の内角が小さすぎると、口部5の内壁面51に設けることができる角55(嵌入部6)の数が少なくなるため、例えば120°以上が好ましく、130°以上がより好ましい。そのため、口部5の内壁面51は、断面視で正六角形状(
図16(a))、正八角形状(
図16(b))、又は正十二角形状(
図16(c))を呈することが好ましい。
【0066】
口部5の内壁面51の多角形状は、辺の長さが大きいほど、揮散体10が隣り合う角55に移動し難くなるため、揮散体10同士がくっついて密集することをより効果的に抑制することができる。辺の長さは1.0cm以上が好ましく、1.5cm以上がより好ましく、2.0cm以上がさらに好ましい。一方で、辺の長さは、大きすぎると、口部5の開口50を大きくする必要があるため、辺の長さは4.0cm以下が好ましく、3.0cm以下がより好ましい。
【0067】
また、上記実施形態では、口部5の内壁面51は上側に傾斜面51Bを含むが、内壁面51は鉛直面51Aのみで構成されていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、キャップ4の天面部40は上面が傾斜しているが、天面部40の上面は必ずしも傾斜している必要はなく、水平であってもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、薬剤容器2が容器本体3及びキャップ4で構成され、揮散体10を挿入するための開口50を有する口部5がキャップ4に備えられているが、薬剤容器2を容器本体3のみで構成してもよく、その場合は、容器本体3の首部31を口部5とし、首部31の内壁面に嵌入部6を形成することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 薬剤揮散器
2 薬剤容器
5 口部
6 嵌入部
10 揮散体
30 収容空間
40 天面部
50 開口
51 内壁面
51A 鉛直面
51B 傾斜面
52 凹部
53 突起
54 凹部
55 角
L 液状薬剤