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特許7687079含クロマイトスラリーの分配装置及びこれを用いたクロマイトの回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】含クロマイトスラリーの分配装置及びこれを用いたクロマイトの回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 61/00 20060101AFI20250527BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20250527BHJP
   C22B 34/32 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
C22B61/00
C22B1/00 101
C22B34/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021104387
(22)【出願日】2021-06-23
(65)【公開番号】P2023003298
(43)【公開日】2023-01-11
【審査請求日】2024-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】内田 勇太
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-155400(JP,A)
【文献】実開昭58-142483(JP,U)
【文献】特開昭53-019329(JP,A)
【文献】特開2015-086457(JP,A)
【文献】特開2013-166984(JP,A)
【文献】特開2015-114302(JP,A)
【文献】特開2012-107289(JP,A)
【文献】特開2017-052992(JP,A)
【文献】特開2015-206068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 61/00
C22B 1/00
C22B 34/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含クロマイトスラリーからクロマイトを分離する複数の分離装置に対して、該含クロマイトスラリーを均等に分配して供給する含クロマイトスラリーの分配装置であって、
上下方向に移動可能な複数の堰が前記複数の分離装置の基数と同じ数だけ周方向に均等な間隔をあけて設けられた略円筒形状の分配槽と、該分配槽の中央部に設けられた撹拌機とからなり、前記複数の堰が最も下方に位置しているときのそれらの上端部よりも前記複数の分離装置の供給部が下方に位置しており、前記分配槽の内壁面には、前記複数の堰をオーバーフローする含クロマイトスラリーをそれぞれガイドする上下両端部が開放された複数の流路部が設けられていることを特徴とする含クロマイトスラリーの分配装置。
【請求項2】
前記複数の堰が最も下方に位置しているときのそれらの上端部と前記複数の分離装置の供給部との高低差が3m以上であることを特徴とする、請求項1に記載の含クロマイトスラリーの分配装置。
【請求項3】
前記複数の堰の各々をオーバーフローする含クロマイトスラリーの流量が10m/hr以上200m/hr以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の含クロマイトスラリーの分配装置。
【請求項4】
ニッケルの湿式製錬方法の原料に用いるニッケル酸化鉱石を粉砕した後に水を加えて調製した鉱石スラリーに含まれるクロマイトを回収する方法であって、
前記鉱石スラリーをハイドロサイクロンに導入することで含クロマイトスラリーと脱クロマイト鉱石スラリーとに分離する遠心分離工程と、該含クロマイトスラリーを複数基の分離装置にそれぞれ分配して導入することで該含クロマイトスラリーに含まれる微粒子を分離する分離工程とからなり、該含クロマイトスラリーの分配に請求項1又は2に記載の分配装置を用いることを特徴とするクロマイトの回収方法。
【請求項5】
前記鉱石スラリーは、その粒子径が45μm以上1.4mm以下あることを特徴とする、請求項に記載のクロマイトの回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル酸化鉱石からクロマイトを分離する複数基の分離装置に対して、粉砕したニッケル酸化鉱石に水を加えて調製した含クロマイトスラリーを分配して供給する分配装置及び該分配装置を用いたクロマイトの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケルの湿式製錬方法の原料に用いるニッケル酸化鉱石には、クロム元素を主成分とする鉱物であるクロマイトが含まれている。ニッケル酸化鉱石の中でクロマイト鉱石の形態で存在しているこのクロマイトは、他の鉱石成分に比べて真比重が高いうえ粒子径も大きいため、粉砕したニッケル酸化鉱石に水を加えて調製した鉱石スラリー中では、クロマイト鉱石は高い沈降特性を有している。
【0003】
また、クロマイトは研磨材などの用途で工業的に利用されていることからも分かるように、ニッケル酸化鉱石に含まれる他の鉱石成分に比べて硬度が高いため、ニッケルの湿式製錬プラントで処理する上記鉱石スラリーにクロマイトが含まれている場合は、機器や配管等の接液箇所が著しく摩耗することが懸念される。そのため、クロマイトを含んだ鉱石スラリーを取り扱う送液ポンプ、配管、バルブ等の機器において、該鉱石スラリーが接液する箇所にはコストのかかる摩耗対策を施す必要があった。
【0004】
そこで、ニッケルの湿式製錬方法の原料に用いるニッケル酸化鉱石にクロマイトが含まれる場合は、上流工程でクロマイトを分離して回収することが提案されている。例えば、特許文献1、2、及び3には、原料のニッケル酸化鉱石に硫酸を加えて高温高圧下で酸浸出処理を施す高圧酸浸出法(High Pressure Acid Leaching)において、該ニッケル酸化鉱石を粉砕した後に水を加えて調製した鉱石スラリーに対して上記酸浸出処理を施す前に、該鉱石スラリーを遠心力や比重差を利用した分級工程で処理することでクロマイトを分離して回収する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-107289号公報
【文献】特開2017-052991号公報
【文献】特開2017-052992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の比重差を利用した分級工程では、鉱石スラリーを沈降槽に導入することで、真比重の高いクロマイトを該沈降槽内で重力沈降させて槽底部から回収すると共に、クロマイトよりも真比重の低い粒子を含んだスラリーを上澄み液としてオーバーフローさせることで槽上部の樋から回収することができる。しかしながら、かかる比重差を利用した分級装置は、市販されているものでは処理能力に限度があり、低品位のニッケル酸化鉱石を湿式製錬する場合のように、大量の鉱石スラリーを連続的に処理する場合は、1基だけの分級装置だけでは足りない場合があった。この場合は、並列に設けた複数基の分級装置に対して、上記の鉱石スラリーを均一に分配して各々一定流量で連続的に供給することが必要になる。
【0007】
上記のように複数基の分級装置に対して鉱石スラリーを等量ずつ分配して送液する方法としては、鉱石スラリーの供給配管を各分級装置ごとに分岐すると共に各分岐配管にバルブを設け、該バルブの開度を調整する方法を挙げることができる。あるいは、上記の各分岐配管に送液ポンプを設け、該送液ポンプの運転を流量制御する方法を挙げることができる。しかしながら、これらの方法は、いずれもバルブ内部や送液ポンプのケーシング内部において摩耗が生じやすく、その補修に手間とコストがかかるうえ、補修している間は装置の運転を停止する必要があるためプラントの稼働率が低下することがあった。
【0008】
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、ニッケルの湿式製錬方法の原料に用いるニッケル酸化鉱石に含まれるクロマイトを分離して回収すべく、並列に設けた複数基の分離装置に対して、粉砕したニッケル酸化鉱石に水を加えて調製した鉱石スラリー等の含クロマイトスラリーを等量ずつ分配して各々一定流量で連続的に供給することが可能な分配供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る含クロマイトスラリーの分配装置は、含クロマイトスラリーからクロマイトを分離する複数の分離装置に対して、該含クロマイトスラリーを均等に分配して供給する含クロマイトスラリーの分配装置であって、上下方向に移動可能な複数の堰が前記複数の分離装置の基数と同じ数だけ周方向に均等な間隔をあけて設けられた略円筒形状の分配槽と、該分配槽の中央部に設けられた撹拌機とからなり、前記複数の堰が最も下方に位置しているときのそれらの上端部よりも前記複数の分離装置の供給部が下方に位置しており、前記分配槽の内壁面には、前記複数の堰をオーバーフローする含クロマイトスラリーをそれぞれガイドする上下両端部が開放された複数の流路部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ニッケルの湿式製錬方法の原料に用いるニッケル酸化鉱石からクロマイトを分離して回収する複数基の並列に設けた分離装置に対して、粉砕したニッケル酸化鉱石に水を加えて調製した鉱石スラリー等の含クロマイトスラリーを等量ずつ分配して各々一定流量で連続的に供給することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の含クロマイトスラリーの分配装置が好適に適用されるニッケルの湿式製錬方法の工程フロー図である。
図2図1の湿式製錬方法が有するクロマイト回収工程の一具体例の工程フロー図である。
図3】本発明の実施形態の含クロマイトスラリーの分配装置の天板部を取り外したときの平面図である。
図4図3の分配装置をIV-IV部分で切断した縦断面図である。
図5図3の分配装置の分解斜視図である。
図6】本発明の実施形態のクロマイト回収方法で好適に使用されるスパイラルコンセントレーターの正面図である。
図7】本発明の実施形態のクロマイト回収方法で好適に使用されるデンシティーセパレーターの縦断面図である。
図8】本発明の実施形態のクロマイト回収方法で好適に使用されるシェーキングテーブルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るクロマイトを含んだスラリー(以下、含クロマイトスラリーとも称する)の分配装置の実施形態について、該含クロマイトスラリーがニッケル酸化鉱石を粉砕して水を加えることで調製した鉱石スラリーをハイドロサイクロンに導入したときにそのボトム側排出口から排出される粗粒側スラリーである場合を例に挙げて説明する。なお、本発明の含クロマイトスラリーの分配装置は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更例や代替例等を含むものである。すなわち、本発明の権利範囲は、特許請求の範囲及びその均等の範囲に及ぶものである。
【0013】
1.ニッケルの湿式製錬方法
本発明の実施形態に係る含クロマイトスラリーの分配装置は、ニッケルの湿式製錬方法において原料として用いる粉砕したニッケル酸化鉱石に水を加えて調製した鉱石スラリーに対して、上流工程においてクロマイトを分離して回収する際に用いるものである。そこで、先ずニッケルの湿式製錬方法について説明する。ニッケルの湿式製錬方法は、高温高圧下で鉱石スラリーを酸浸出処理して得たニッケル等の有価金属を含む浸出液に対して硫化処理を施すことで該有価金属を硫化物の形態で回収する方法である。
【0014】
より具体的に説明すると、図1に示すように、ニッケルの湿式製錬方法は、原料のニッケル酸化鉱石に対して粉砕や篩分け等の前処理を行なうと共に水を添加することで所定のスラリー濃度を有する鉱石スラリーの調製を行なう前処理工程S1と、上記の鉱石スラリーからクロマイトを分離してこれを副産物として回収するクロマイト回収工程S2と、該クロマイトが分離除去された後の鉱石スラリーに対してオートクレーブ内で硫酸及び高圧蒸気を添加して高温高圧下で酸浸出処理を施す浸出工程S3と、該酸浸出処理により浸出された有価金属としてのニッケル及びコバルトを含む浸出スラリーをフラッシュドラムで降圧降温した後、連続する複数のシックナーの最上流側に導入することで、最下流側に導入した洗浄水によって洗浄しながら浸出残渣の分離除去を行なう向流多段洗浄工程S4と、該浸出残渣が分離除去された後の浸出液に中和剤を添加して該浸出液に含まれる不純物元素を中和澱物として分離除去する中和工程S5と、該中和澱物が分離除去された後の中和終液に硫化剤を添加することによりニッケル及びコバルトを混合硫化物の形態で回収する硫化工程S6と、上記混合硫化物の回収時に排出されるニッケル貧液及び上記向流多段洗浄工程S4で除去された浸出残渣に中和剤を添加して無害化処理を行なう最終中和工程S7とから一般的に構成される。
【0015】
上記のニッケルの湿式製錬方法において原料として用いるニッケル酸化鉱石には、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱が用いられる。ラテライト鉱のニッケル含有量は一般的に0.8~2.5質量%であり、ニッケルは水酸化物又は含水ケイ苦土(ケイ酸マグネシウム)鉱物として含まれている。また、ラテライト鉱の鉄含有量は一般的に10~50質量%であり、この場合の鉄は主として3価の水酸化物(ゲーサイト)の形態を有しているが、一部2価の鉄が含水ケイ苦土鉱物等に含まれている。
【0016】
上記のラテライト鉱は、更にクロム、マグネシア、珪素を含んでいる。それらのうち、クロム分の多くは、鉄やマグネシウムを含むクロマイト鉱物として、通常はラテライト鉱に1~5質量%程度含まれている。また、マグネシア分は、含水ケイ苦土鉱物のほか、未風化で硬度が高いニッケルをほとんど含有しないケイ苦土鉱物に含まれている。珪酸分は、石英、クリストバライト(無定形シリカ)等のシリカ鉱物や含水ケイ苦土鉱物に含まれている。ラテライト鉱に含まれているこれらクロマイト鉱物、ケイ苦土鉱物、及びシリカ鉱物は、ニッケルをほとんど含有しておらず、脈石成分と称される。
【0017】
2.クロマイト回収工程
次に、上記のニッケルの湿式製錬方法のうち、クロマイト回収工程S2について図2を参照しながら説明する。クロマイト回収工程S2は、前処理工程S1で調製したクロマイトを含む鉱石スラリー(含クロマイト鉱石スラリーとも称する)をハイドロサイクロンで遠心分離処理することで、粗大なクロマイトを含む粗粒側スラリーをボトム側排出口から排出させると共に、ゲーサイト等の微細な粒子を含む脱クロマイト鉱石スラリーをトップ側排出口から排出させる遠心分離工程S21と、該粗粒側スラリーを後工程の装置の基数に対応させて分配する分配工程S22と、該分配された粗粒側スラリーに含まれるゲーサイトを比重差を利用して分離する比重分離工程S23と、比重分離工程S23でゲーサイトが分離された後の粗粒側スラリーを濃縮装置に導入してクロマイトの濃度を更に高める濃縮工程S24と、濃縮工程S24でクロマイト濃度が高められた粗粒側スラリーに含まれる着磁物を磁力を用いて分離する磁選工程S25とから構成される。
【0018】
上記のように、ニッケルの湿式製錬方法において原料として用いるニッケル酸化鉱石にクロマイトが含まれていても、前処理工程S1において粉砕や篩分けにより好ましくは粒子径45μm以上1.4mm以下となるように粒度を揃えると共に、所定のスラリー濃度となるように水を加えて鉱石スラリーを調製した後、この鉱石スラリーに対してクロマイト回収工程S2においてクロマイトを分離することで、後工程の浸出工程S3以降において、配管やポンプ等の機器の接液部がクロマイトで著しく磨耗する問題を抑えることが可能になる。
【0019】
これにより、機器のメンテナンスコストを抑えることができるうえ、メンテナンスによる運転停止の頻度を減らすことができるので、湿式製錬プラントの操業効率を高めることができる。なお、本明細書においては、上記の粒子径A以上B以下とは、目開きAの篩上であって且つ目開きBの篩下であることを意味する。以下、かかるクロマイト回収工程S2を構成する各工程について具体的に説明する。
【0020】
2.1遠心分離工程
遠心分離工程S21は、前処理工程S1で調製した含クロマイト鉱石スラリーをハイドロサイクロンで分級処理する工程である。ハイドロサイクロンは、円筒部とその下端部に接続する逆円錐形状の縮径部とから構成される分級装置であり、ポンプで昇圧した含クロマイト鉱石スラリーを該円筒部に接線方向から導入することで、該含クロマイト鉱石スラリーを内壁面に沿って高速で旋回しながら下降させることができるので、これにより生じる遠心力により、真比重が高く且つ粒子径の大きな粗粒子であるクロマイトは、ボトム側排出口から粗粒側スラリー(アンダーフロー「U/F」とも称する)として排出される。
【0021】
このボトム側排出口からはハイドロサイクロンに導入した鉱石スラリーの一部しか排出されないので、それ以外の鉱石スラリーは、中心部分を上昇してトップ側排出口から微細なゲーサイト等の微粒子を含む微粒側スラリー(オーバーフロー「O/F」とも称する)として排出される。この微粒側スラリーには、後工程の比重分離工程S23、濃縮工程S24、及び磁選工程S25で分離される主としてゲーサイトからなる微粒子が合流し、脱クロマイト鉱石スラリーとして後工程の浸出工程S3において酸浸出処理が施される。
【0022】
上記のクロマイトとゲーサイトとの分級は、分級処理対象となる含クロマイト鉱石スラリーの分級粒度(分級点)を適切な範囲内に設定することで実現でき、この分級粒度は、ハイドロサイクロンの運転条件により調整することができる。具体的には、含クロマイト鉱石スラリーに対して効果的に分級を行なうには、分級粒度が20~150μmの範囲内にあるのが好ましく、45~75μmの範囲内にあるのがより好ましい。
【0023】
この分級粒度が20μm未満では、粗粒側スラリーへの微粒子の混入割合が高くなるので回収したクロマイトの品位が不十分になる。また、後工程の浸出工程S3で処理される脱クロマイト鉱石スラリー中に本来含まれるべきニッケルが粗粒側スラリーに混入する割合が高くなるのでニッケルのロスが増加する。逆に、上記分級粒度が150μmを超えると、微粒側スラリーに粗大なクロマイト、ケイ苦土鉱、及びシリカ鉱物が混入する割合が高くなるので、浸出工程S3以降の工程において摩耗が生じたり処理能力が低下したりするおそれがある。なお、この遠心分離工程S21では、粗粒側スラリーのクロマイト濃度が41質量%以上に濃縮されていることが好ましい。
【0024】
上記の分級粒度を実現するために適宜調整を行なうハイドロサイクロンの運転条件としては、例えばハイドロサイクロンに導入する含クロマイト鉱石スラリーのスラリー濃度(パルプ濃度)、ハイドロサイクロンの運転圧力、粗粒側スラリーのスラリー濃度(パルプ濃度)、ハイドロサイクロンへの含クロマイト鉱石スラリーの供給量、ハイドロサイクロンの内径に代表される形状等を挙げることができる。
【0025】
上記の運転条件のうち、ハイドロサイクロンに供給する含クロマイト鉱石スラリーのパルプ濃度は、特に限定するものではないが10~30質量%程度に調整することが好ましく、15~20質量%程度に調整することがより好ましい。このパルプ濃度が10質量%未満でもある程度ハイドロサイクロンで分級することができるものの、前処理工程S1における鉱石スラリーの調製に大量の水が必要になるうえ、後工程において例えば沈降濃縮等により水を除去する必要が生じるので処理コストが高くなるおそれがある。逆に、パルプ濃度が30質量%を超えると、含クロマイト鉱石スラリーの粘度が高くなりすぎて、ハイドロサイクロンによる分級が困難になるおそれがある。
【0026】
また、ハイドロサイクロンの運転圧力、すなわちハイドロサイクロンに供給する含クロマイト鉱石スラリーの圧力は、特に限定するものではないが、分級性能や処理速度等を考慮して0.1~0.3MPaG程度の範囲内であることが好ましい。更に、ハイドロサイクロンのアンダーフローとしての粗粒側スラリーのパルプ濃度は、15質量%以上であることが好ましい。このアンダーフローのパルプ濃度は、例えばハイドロサイクロンのボトム側排出口に設けたバルブの開度で調整することができる。
【0027】
上記のように、分級性能や処理速度等を考慮したハイドロサイクロンの運転条件のうち、ハイドロサイクロンに供給する鉱石スラリーの圧力及び該鉱石スラリーのパルプ濃度の調整により、粗粒側スラリーの固形分中における粒子サイズが-45μm(目開き45μmのスクリーンを通過できるもの)の粒子の割合が30質量%以下となるように調整することが特に好ましい。すなわち、粗粒側スラリーに含まれる粒子には、粒子サイズが-45μmの粒子の割合が0質量%に近いほど望ましいが、このように-45μmの粒子の割合を0質量%に近づければ近づけるほど微粒側スラリーに低ニッケル品位の粗粒子が混じりやすくなるので湿式製錬プロセスにおけるニッケルの回収ロスの要因となる可能性がある。
【0028】
上記のように、クロマイトはゲーサイト等の水酸化鉄に比べて真比重が大きく且つ粒子径も一般的に大きいため、分級装置としてハイドロサイクロンを使用することによって、粗粒子のクロマイトをそれ以外のゲーサイト等の微粒子から精度よく分離することができる。すなわち、オーバーフローとしてトップ側排出口から排出される微粒側スラリーへのクロマイトの分配をほとんど無くすことが可能になる。また、ハイドロサイクロンは可動部がないため、大量の鉱石スラリーを低コストで処理する場合に適しており、特に、トップ側からの排出量がボトム側からの排出量に比べて多い場合の処理に適している。なお、ハイドロサイクロンの段数は上記の1段に限定されるものではなく、2段以上であってもよい。
【0029】
2.2分配工程
分配工程S22は、上記の遠心分離工程S21で分離された粗粒側スラリーを分配装置を用いて分配する工程である。具体的に説明すると、分配装置は、図3~5に示すように、有底円筒形状の分配槽10と、この分配槽10の中心軸部分に設けられた撹拌機20とから構成される。分配槽10は、その上端部において周方向に均等な間隔をあけて後段の比重分離装置の基数と同じ数の複数の略矩形の切り欠き部10a(図3では4個の切り欠き部10aが図示されている。)が設けられている。これら複数の切り欠き部10aをそれぞれ内側から塞ぐように、且つオーバーフローの液位を変更できるように、複数の堰11が上下方向に移動可能に設けられている。分配槽10は好ましくは円板状の蓋12で覆われており、その略中央部に撹拌機20のモーター21が据付けられている。
【0030】
かかる構成により、前工程のハイドロサイクロンのボトム側排出口から排出された粗粒側スラリーは、必要に応じて設けられたスラリーポンプで昇圧された後、図示しないフィードパイプにより分配槽10内に導入され、撹拌機20のシャフト22の先端部に設けた撹拌羽根23により均一に混合されながらこれら複数の堰11をオーバーフローすることで等量ずつ分配される。これら複数の堰11をオーバーフローした粗粒側スラリーは、分配槽10の外側において各々の堰11に対応して設けられている貯留部13内に一時的に受け入れられた後、その底部に設けられている開口部13aから排出して該開口部13aに接続している排出管14を介して図示しない後段の比重分離装置に送液される。
【0031】
上記構造の分配装置は、上記の複数の堰11が最も下方に位置しているときのそれらの上端部よりも上記の複数の比重分離装置の供給部が下方に位置するように設置されている。これにより、分配装置によって等量ずつ均等に分配した粗粒側スラリーを、高低差のみを利用して上記複数の比重分離装置に連続的に送液することができる。なお、上記の高低差は3m以上あるのが好ましい。この高低差が3m未満では、排出管14の圧力損失や粗粒側スラリーの粒度やパルプ濃度に変動が生じたときに安定的に送液できなくなるおそれがある。また、上記の複数の堰11の各々をオーバーフローする粗粒側スラリーの流量は、10m/hr以上200m/hr以下であるのが好ましい。各堰11をオーバーフローする流量が10m/hr以上200m/hr以下の範囲内であれば、これら複数の堰11から安定的に粗粒側スラリーをオーバーフローさせることができるので、より均等に分配することが可能になる。
【0032】
上記の分配槽10内では、撹拌機20の撹拌羽根23による撹拌で液面に波立ちが生じるので、上記の複数の堰11をオーバーフローする流量にばらつきが生じることがある。この流量のばらつきを抑えるため、複数の堰11をオーバーフローする粗粒側スラリーをそれぞれガイドする上下両端部が開放された複数の流路部15が分配槽10の内壁面に設けられている。なお、これら複数の流路部15は、撹拌機20の撹拌羽根23によって分配槽10内のスラリーが内壁面に沿って回転するのを防ぐ邪魔板の役割を担わせることもできる。
【0033】
2.3比重分離工程
比重分離工程S23は、上記の分配工程S22において分配された各粗粒側スラリーに対して比重分離装置を使用して比重分離処理を行なうことで、該粗粒側スラリーに含まれているゲーサイト等の微粒子を分離する工程であり、これによりクロマイトを濃縮させることも可能になる。すなわち、前述した遠心分離工程S21において、アンダーフローとしてハイドロサイクロンのボトム側排出口から回収した粗粒側スラリーには主としてクロマイトが含まれているが、一部ゲーサイト等の微粒子も含まれている。
【0034】
そこで、この比重分離工程S23において、このようなクロマイトのほかに微粒子を含む粗粒側スラリーに対して比重分離処理を施すことによって、このゲーサイト等の微粒子をクロマイトから効果的に分離することができる。これは、言い換えると粗粒側スラリー中のクロマイトを更に濃縮することになる。なお、この比重分離工程S23で分離されたゲーサイトを含む微粒子は、前述したハイドロサイクロンのオーバーフローに混合して湿式製錬プロセスの酸浸出処理で処理する脱クロマイト鉱石スラリーとすることができる。
【0035】
比重分離工程S23で使用する比重分離装置には、少なくともスパイラルコンセントレーターを使用するのが好ましい。この場合は、スパイラルコンセントレーターの後段に、デンシティーセパレーター、シェーキングテーブル、及びスパイラルコンセントレーターから選択される比重分離装置を更に1段以上設けるのが好ましい。これらの組み合わせの中では、スパイラルコンセントレーター1段と、大量処理に適したデンシティーセパレーター1段とを連続的に設けることが好ましい。以下、これら比重分離装置について具体的に説明する。
【0036】
(スパイラルコンセントレーター)
スパイラルコンセントレーターは、図6に例示するように、鉛直方向に延在する中心軸のまわりに螺旋状に樋を設けた構造を有しており、最上部に位置するフィード部からスラリーを供給して最下部に位置する排出口に向けて重力により旋回させながら流下させることで、その際に生じる遠心力により比重の小さなゲーサイト等の微粒子を含むスラリーが外周側に押しやられ、比重の大きなクロマイトを含むスラリーが内周側を流れるようになる。これにより、該最下部の排出口において内周側と外周側とを別々に回収することで、ゲーサイト等の微粒子をクロマイトから分離することが可能になる。
【0037】
このスパイラルコンセントレーターによる比重分離処理では、特に限定するものではないが、上記のフィード部に供給するスラリーのパルプ濃度を15質量%を超えて35質量%未満とすることが好ましく、20質量%を超えて30質量%未満とすることがより好ましい。このパルプ濃度が15質量%以下であると、分離性能が悪化する可能性があり、逆に、35質量%以上であると、比重分離処理中にクロマイトの濃縮側となるスパイラルコンセントレーターの内周側において粒子の流れが滞留してビルドアップが生じやすくなり、上記の分離が良好に行われなくなる可能性がある。
【0038】
また、スパイラルコンセントレーターによる比重分離処理では、複数のスパイラルコンセントレーターを連続的に接続することで、処理対象のスラリーを複数段の装置で比重分離してもよい。この場合は、スパイラルコンセントレーターの内周側のスラリーとして回収したクロマイトを含むスラリーを後段のスパイラルコンセントレーターに供給するのが好ましい。これにより、処理対象のスラリーに含まれるクロマイトの成分をより高い濃度まで効果的に濃縮できるのでクロマイト回収率をより一層高めることができる。
【0039】
(デンシティーセパレーター)
デンシティーセパレーターはTeeter-bedセパレーターとも称され、図7に例示するように、筒状部とその下部に位置する傾斜部とから構成され、該筒状部の下端部分にはTeeter waterと称する水が供給される複数本のパイプが設けられている。かかる構成により、該筒状部の上部から導入されたスラリーに含まれる微粒子をTeeter waterによる上昇流に伴って該筒状部の上端部でオーバーフローさせると共に、スラリーに含まれる粗粒子をTeeter waterによる上昇流に逆らって沈降させ、該傾斜部内で堆積させた後、底部からアンダーフローとして回収することができる。
【0040】
このデンシティーセパレーターによる比重分離処理では、特に限定するものではないが、Teeter waterの供給量を0.5~7.0m・h-1/mとすることが好ましい。この供給量が0.5m・h-1/m未満では、干渉沈降の効果が小さくなり、比重分離が効率よく行われない可能性がある。逆に、この供給量が7.0m・h-1/mを超えると、クロマイト粒子まで上昇させ、オーバーフロー側に移行してしまう可能性がある。この場合はクロマイトの回収率が減少するうえ、浸出処理に供給される鉱石スラリー中のクロマイト含有量が増えるので、ヘマタイト中のCr品位を低減させるのが困難になる。
【0041】
なお、上記のデンシティーセパレーターによる比重分離処理では、複数基のデンシティーセパレーターを連続的に接続することで、処理対象のスラリーを複数段の装置で比重分離してもよい。これにより、より効果的にクロマイトを分離することができるので、最終段のデンシティーセパレーターからアンダーフローとして抜き出されるスラリー中のクロマイト品位(Cr品位)をより一層高めることができる。
【0042】
(シェーキングテーブル)
シェーキングテーブルは、図8に例示するように、駆動部により水平方向に往復動する略矩形のテーブルからなり、該テーブル上の一隅部にスラリーを供給すると共に、該一隅部から該テーブルの長手方向に延在するパイプに設けた複数の開口部から水が供給されるようになっている。かかる構成により、ゲーサイト等の微粒子は、上記パイプから供給される水の流れに伴って該パイプが設けられているテーブルの一端部とは反対側の他側部から落下するのに対して、粗粒子のクロマイトは該水の流れには影響されずに該テーブルの振動によってその長手方向に端から端まで搬送されて上記一隅部とは反対側の隅部で回収される。
【0043】
上記のシェーキングテーブルによる比重分離処理では、特に限定するものではないが、上記のテーブル上の一隅部から供給するスラリーのパルプ濃度を、15質量%を超えて35質量%未満に調整することが好ましく、20質量%を超えて30質量%未満とすることがより好ましい。
【0044】
2.4濃縮工程
濃縮工程S24は、後工程の磁選工程S25において採用される磁力選鉱装置の供給条件として好ましいスラリー濃度になるように、前工程の比重分離工程S23で処理された濃縮前スラリーのスラリー濃度を調整する工程である。この濃縮工程S24で用いる濃縮装置の種類には特に限定はないが、比較的低コストでスラリーを濃縮できるシックナーなどの重力沈降装置が好ましい。
【0045】
2.5磁選工程
磁選工程S25は、前工程の濃縮工程S24において濃縮された濃縮後スラリーに対して、磁力選鉱装置を使用して着磁物を除去する工程である。遠心分離工程S21において粗粒側に分級分離した粗粒側スラリーは、主としてクロマイトで構成されるもののマグネタイトが含まれることがあり、更にゲーサイトも含まれている。磁選工程S25では、このようなクロマイトに加えて他の鉱物成分を含む濃縮後スラリーに対して磁力選鉱処理を施すことによって、着磁物としてのマグネタイトを非着磁物としてのクロマイトから分離することができ、これは言い換えるとクロマイトを更に濃縮することを意味している。
【0046】
この磁選工程S25で分離された着磁物としてのマグネタイトを含む混合物は、前述したハイドロサイクロンのオーバーフローに混合して湿式製錬プロセスの酸浸出処理で処理する脱クロマイト鉱石スラリーとすることができる。また、この磁力選鉱処理の処理対象である濃縮後スラリーにゲーサイトが微量に含まれている場合は、この磁力選鉱処理によって、上記のマグネタイトを含む混合物側に含ませることができるので、マグネタイトと共に酸浸出処理に供給する鉱石スラリーとすることができる。
【0047】
上記の磁力選鉱装置は特に限定するものではないが、5~20KGaussの範囲内の比較的に高い磁界強度を発生する高磁界磁力選鉱装置を用いることが好ましい。これにより、極めて効率よくクロマイトを分離して除去することができる。この磁界強度が5KGauss未満では着磁物のマグネタイトを効果的に分離できなくなるおそれがある。逆に、この磁界強度が20kGaussを超えると、クロマイトも同時に着磁してしまう可能性がある。
【0048】
上記のように高磁界磁力選鉱装置を使用することでマグネタイト及びゲーサイトの両方とも分離除去することができるが、着磁物のマグネタイトは、比較的低い磁界強度を有する磁石でも引き付けられるため、磁界強度が高すぎると磁石から取り除きにくくなる。一方で、ゲーサイトは、比較的低い磁界強度を有する磁石には引き付けられないが、高い磁界強度を有する磁石には引き付けられる。そこで、この磁選工程S25では、高磁界磁力選鉱装置で磁力選鉱する前に、該高磁界磁力選鉱装置の磁界強度よりも小さい500~2000Gauss程度の磁界強度を発生する低磁界磁力選鉱装置を使用して磁力選鉱するのが好ましい。
【0049】
以上説明したように、本発明の実施形態の含クロマイトスラリーの分配装置は、ポンプやバルブ等を特に要さないので、摩耗が生じやすいこれら機器の数量を減らすことができ、よって設備の建設コスト及びメンテナンスコストを削減することができるうえ、摩耗による機器トラブルやメンテナンスの頻度が減るのでプラントの稼働率を高めることができる。また、駆動部を減らすことができるので運転コストも削減できる。更に、機器を摩耗させやすいクロマイトを含むスラリーの分配装置からの送液には、高低差を用いるので、ポンプによる送液に比べて配管内の流速を遅くすることができる。その結果、当該配管や必要に応じて設けられるバルブの摩耗を抑えることができる。
【実施例
【0050】
[参考例]
図3~5に示すような、切り欠き部10a及びこれを覆う上下にスライド可能な堰11が上端部の4箇所(A、B、C、D)に均等な間隔をあけて設けられた分配槽10と、分配槽10の中心軸部に設けられた撹拌機20とからなる分配装置を作製した。そして、回転数103rpmで撹拌機20を回転しながら温度20~30℃の水を供給し、上記の4箇所の堰11から均等に水がオーバーフローするか否か調べた。なお、上記の分配槽10に設けた4枚の堰11は、全て同じ高さとなるように調整した。この測定結果を下記表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
上記表1から分かるように、分配槽10の上端部の4箇所(A、B、C、D)の堰11からそれぞれオーバーフローした水の流量は、それらの平均値から-2.9%~+3.0の範囲内でばらついたが、ニッケルの湿式製錬方法において原料として調製される鉱石スラリーからクロマイトを回収する場合は、通常は並列に設けた複数の分離装置に分配する場合のそれらのばらつきの許容範囲は5%以下であるので、上記の分配槽10により均等に分配できることが分かった。
【0053】
[実施例]
ニッケルの湿式製錬プラントにおいて高圧酸浸出法によりニッケルコバルト混合硫化物を作製する際の原料となるニッケル酸化鉱石にクロマイトが含まれていたので、粉砕機及びスクリーンにより粒子径45μm以上1.4mm以下に揃えた粉粒体からなるニッケル酸化鉱石に水を加えてスラリー濃度20質量%に調製した鉱石スラリーを、図2に示すような工程フロー図のうち、遠心分離工程S21、分配工程S22及び比重分離工程S23の順で処理することで該鉱石スラリーからクロマイトを分離して回収した。
【0054】
具体的には、遠心分離工程S21ではSalter Cyclones Limited社製のハイドロサイクロンを使用し、上記鉱石スラリーをポンプで0.2MPaGに昇圧して供給し、ハイドロサイクロンのボトム側排出口からパルプ濃度15質量%の粗粒側スラリーを抜き出した。分配工程S22では該粗粒側スラリーを図3~5に示すような分配装置を用いて回転数103rpmで撹拌機20を回転しながら分配し、それらを4基の並列に設けたスパイラルコンセントレーターにそれぞれ供給して比重分離工程S23の分級を行なった。なお、該分配装置の分配槽10の堰11は4枚とも最も下方に位置させたところ、それらの上端部は該スパイラルコンセントレーターのフィード部よりも3m高くなった。
【0055】
その結果、分配槽10の4枚の堰11の各々において粗粒側スラリーを約20m/hrの流量でオーバーフローさせることができ、それら流量の平均値からのばらつきを5%以下に抑えることができた。また、4基のスパイラルコンセントレーターを安定的に運転してクロマイトを回収することが可能になり、ニッケルの湿式製錬プラントの接液部においても激しい摩耗は特に認められなかった。
【符号の説明】
【0056】
10 分配槽
10a 切り欠き部
11 堰
12 蓋
13 貯留部
13a 開口部
14 排出管
15 流路部
20 撹拌機
21 モーター
22 シャフト
23 撹拌羽根
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8