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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】単結晶製造装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 15/04 20060101AFI20250527BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
C30B15/04
C30B29/06 502C
C30B29/06 502H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022558915
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2021034488
(87)【国際公開番号】W WO2022091635
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2020180302
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】早川 裕
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070428(JP,A)
【文献】特開2010-143777(JP,A)
【文献】特開平03-290392(JP,A)
【文献】特表2014-512330(JP,A)
【文献】特開2001-010892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 15/04
C30B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーと、
前記チャンバー内に設置されたルツボと、
前記ルツボの上方に配置された熱遮蔽部材と、
前記チャンバーの外側から前記ルツボ内に粒状のドーパントを供給するドーパント供給装置とを備え、
前記ドーパント供給装置は、前記チャンバーを貫通して前記ルツボの上方に達するドーパント供給管を含み、
前記ドーパント供給管は、前記チャンバーを貫通する第1ドープ管と、前記第1ドープ管から分離独立して前記第1ドープ管の下端の直下に配置された第2ドープ管とを有し、
前記第1ドープ管は、前記熱遮蔽部材から分離独立しており、
前記第2ドープ管は、前記チャンバーから分離独立しかつ前記熱遮蔽部材に設置されており、
前記熱遮蔽部材は前記チャンバー内で昇降自在に構成されており、前記熱遮蔽部材の昇降に応じて、前記第1ドープ管と前記第2ドープ管の相対的な位置関係が変化することを特徴とする単結晶製造装置。
【請求項2】
前記第2ドープ管は前記熱遮蔽部材に対して上下動可能に設置されている、請求項1に記載の単結晶製造装置。
【請求項3】
前記第2ドープ管は、前記第1ドープ管の下端の内径よりも大きな開口径を有する大径部と、前記大径部よりも小さな開口径を有する小径部と、前記大径部と前記小径部とを接続するテーパー部とを有する、請求項1又は2に記載の単結晶製造装置。
【請求項4】
鉛直軸に対して鋭角をなす前記テーパー部の外面のテーパー角度は、前記テーパー部と対向する前記熱遮蔽部材の内壁面の前記鉛直軸に対する傾斜角度以下である、請求項3に記載の単結晶製造装置。
【請求項5】
前記第2ドープ管の軸線が当該第2ドープ管の上端から下端まで直線状に伸びている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の単結晶製造装置。
【請求項6】
前記ドーパント供給管は石英製である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の単結晶製造装置。
【請求項7】
前記チャンバーは、前記ルツボが設置されるメインチャンバーと、前記メインチャンバーの上部開口を覆うトップチャンバーとを有し、前記トップチャンバーは前記メインチャンバーから着脱可能に構成されており、前記トップチャンバーの着脱に応じて、前記第1ドープ管と前記第2ドープ管の相対的な位置関係が変化する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の単結晶製造装置。
【請求項8】
前記第2ドープ管は前記熱遮蔽部材に形成された貫通穴に挿入されており、前記第2ドープ管の下端は露出することなく前記貫通穴の下側開口端よりも内側で終端されており、前記第2ドープ管の下端はカーボン製のリングキャップに覆われている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の単結晶製造装置。
【請求項9】
前記リングキャップの外側開口は、斜め下方であって前記ルツボの側壁部側を向いている、請求項8に記載の単結晶製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶製造装置に関し、特に、チョクラルスキー法(CZ法)による単結晶の引き上げ工程前あるいは引き上げ工程中にドーパントを供給するために用いられるドーパント供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの基板材料となるシリコン単結晶の多くはCZ法により製造されている。CZ法は、石英ルツボ内に収容されたシリコン融液に種結晶を浸漬し、種結晶及び石英ルツボを回転させながら種結晶を徐々に引き上げることにより、種結晶の下方に大きな直径の単結晶を成長させるものである。CZ法によれば、高品質のシリコン単結晶インゴットを高い歩留まりで製造することが可能である。
【0003】
シリコン単結晶の電気抵抗率(以下、単に抵抗率と称す)の調整には各種のドーパントが使用される。代表的なドーパントは、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ボロン(B)などである。これらのドーパントは、例えば多結晶シリコン原料と共に石英ルツボ内に投入され、ヒータによる加熱でシリコン原料と共に融解される。これにより、所定量のドーパントを含んだシリコン融液が生成される。
【0004】
ドーパントは結晶引き上げ途中でシリコン融液に投入されることもある。例えば、アンチモンはリンやボロンと比べると融点が低く、減圧下では蒸発速度が非常に速いため、リンやボロンと同様に多結晶シリコン原料と一緒に融解すると、原料溶解から結晶引き上げ工程の序盤にかけてドーパントが多量に蒸発し、シリコン融液中のドーパント濃度を高めることができない。そのため、結晶引き上げ途中でドーパントを追加供給し、これによりシリコン融液中のドーパント濃度の低下を抑制する。
【0005】
また、蒸発速度が比較的遅いドーパントを用いる場合でも、供給したドーパントが単結晶の引き上げ方向に沿って偏析する現象が発生して、引き上げ方向に均一な抵抗率を得ることが難しくなる。このような問題を解消するには、多結晶シリコン原料の初期チャージ時のみならず、結晶引き上げの途中でドーパントを供給する方法が有効である。例えば、初期チャージしたドーパントと同じ導電型のドーパントを追加供給することで、抵抗率が大きく異なる2種類のシリコン単結晶を引き上げることができる。また、初期チャージしたドーパントと逆の導電型のドーパントを追加供給することで、引き上げ方向に均一な抵抗率を有する単結晶の結晶長をできるだけ長くすることができる。
【0006】
単結晶の引き上げ直前又は引き上げ途中にドーパントを供給する方法に関し、例えば特許文献1には、チャンバーの上部を貫通してチャンバー内のルツボの上方に達するドープ供給管と、このドープ供給管がチャンバーを貫通する部分を密閉するシール用キャップと、チャンバーの外部でドープ供給管にドープ供給コックを介して取り付けられたドープ用ホッパーと、このドープ用ホッパーとチャンバーの内部とを連通する連通管とを具備するドープ剤添加装置が記載されている。ドーパントの供給時にチャンバー内は減圧下のアルゴンガス雰囲気であるが、このドープ剤添加装置によれば、ドープ剤添加装置内をチャンバー内と同じ雰囲気に調整することが可能である。
【0007】
また特許文献2には、ルツボの上方に熱遮蔽部材が配置されている場合でもルツボ内の原料融液にドーパントを問題なく供給できるようにするため、熱遮蔽部材の上方において熱遮蔽部材の内側に配設されたドープ供給管が途中から熱遮蔽部材の外側に導出され、ドープ供給管の少なくとも下端部を熱遮蔽部材の外側に臨ませた構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平9-227275号公報
【文献】特開平11-343196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のドーパント供給装置は、単一のドーパント供給管がチャンバーや熱遮蔽部材に固定された構造を有するため、部品の折損や脱落がしばしば発生していた。また、従来のドーパント供給装置は、熱遮蔽部材が上下方向に移動可能な構造に対応できないか、ないしは熱遮蔽部材の移動を制限するものとなっていた。
【0010】
したがって、本発明の目的は、部品の折損や脱落がなく、熱遮蔽部材の上下方向の移動にも対応可能なドーパント供給装置を備えた単結晶製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明による単結晶製造装置は、チャンバーと、前記チャンバー内に設置されたルツボと、前記ルツボの上方に配置された熱遮蔽部材と、前記チャンバーの外側から前記ルツボ内にドーパントを供給するドーパント供給装置とを備え、前記ドーパント供給装置は、前記チャンバーを貫通して前記ルツボの上方に達するドーパント供給管を含み、前記ドーパント供給管は、前記チャンバーを貫通する第1ドープ管と、前記第1ドープ管から分離独立して前記第1ドープ管の下端の直下に配置された第2ドープ管とを有し、前記第1ドープ管は、前記熱遮蔽部材から分離独立しており、前記第2ドープ管は、前記チャンバーから分離独立しかつ前記熱遮蔽部材に設置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、ドーパント供給管の設置が容易であり、部品の折損や脱落がなく、熱遮蔽部材の上下方向の移動にも対応可能な単結晶製造装置を提供することができる。
【0013】
本発明において、前記第1ドープ管と前記第2ドープ管は互いに完全に離間しても良く、前記第1ドープ管の一部が前記第2ドープ管の内部に挿入されても良い。また、前記第1ドープ管と前記第2ドープ管が互いに完全に離間する場合、前記第1ドープ管の下端の真下に前記第2ドープ管の上側開口部を配置することが好ましい。前記第1ドープ管と前記第2ドープ管が互いに分離独立した構造にすることにより、前記第1ドープ管を前記熱遮蔽部材から分離独立させ、かつ前記第2ドープ管を前記チャンバー(特にトップチャンバー)から分離独立させることができる。
【0014】
本発明において、前記第2ドープ管は前記熱遮蔽部材に対して上下動可能に設置されていることが好ましい。この構成によれば、第2ドープ管の設置が容易であり、部品の折損や脱落がなく、熱遮蔽部材の上下方向の移動に対応することができる。
【0015】
本発明において、前記第2ドープ管は、前記第1ドープ管の下端の内径よりも大きな開口径を有する大径部と、前記大径部よりも小さな開口径を有する小径部と、前記大径部と前記小径部とを接続するテーパー部とを有することが好ましい。この場合、前記大径部は、前記小径部よりも上、すなわち前記第1ドープ管側に配置される。この構成によれば、第1ドープ管から第2ドープ管へのドーパントの受け渡しを確実に行うことができ、また熱遮蔽部材への第2ドープ管の設置も容易である。
【0016】
本発明において、前記テーパー部の外面の鉛直軸に対するテーパー角度(鋭角)は、前記テーパー部と対向する前記熱遮蔽部材の内壁面の前記鉛直軸に対する傾斜角度以下であることが好ましく、前記熱遮蔽部材の内壁面の傾斜角度と略等しいことが特に好ましい。これにより、第2ドープ管を熱遮蔽部材に対して点接触又は線接触の状態で支持することができ、第2ドープ管の破損や変形を抑制することができる。
【0017】
本発明において、前記第2ドープ管の軸線は当該第2ドープ管の上端から下端まで直線状に伸びていることが好ましい。これにより、製造が容易で安価な第2ドープ管を用いることができる。
【0018】
本発明において、前記ドーパント供給管は石英製であることが好ましい。例えばカーボン製のドーパント供給管を使用した場合には、ドーパントのカーボン汚染によってシリコン単結晶中のカーボン濃度が上昇するおそれがある。しかし、ドーパント供給管を石英製とした場合には、ドーパントの不純物汚染を防止することができる。石英管は常温下で割れやすく、また高温下で熱変形するおそれがある。しかし、第2ドープ管が単に熱遮蔽部材の貫通穴に差し込まれているだけである場合には、ドーパント供給管の破損や変形することを防止することができる。
【0019】
本発明において、前記熱遮蔽部材は前記チャンバー内で昇降自在に構成されており、前記熱遮蔽部材の昇降に応じて、前記第1ドープ管と前記第2ドープ管の相対的な位置関係が変化することが好ましい。これによれば、熱遮蔽部材の上下方向に移動に合わせてドーパント供給管の全長を調整することができ、熱遮蔽部材の上下動がドーパント供給管によって制限されることがない。また、熱遮蔽部材が昇降自在である場合、ルツボ内に山積みの固体原料を充填したとしても熱遮蔽部材を上方に退避させることで熱遮蔽部材と固体原料との干渉を回避することができ、融液の初期チャージ量を増やすことができる。
【0020】
本発明において、前記チャンバーは、前記ルツボが設置されるメインチャンバーと、前記メインチャンバーの上部開口を覆うトップチャンバーとを有し、前記トップチャンバーは前記メインチャンバーから着脱可能に構成されおり、前記トップチャンバーの着脱に応じて、前記第1ドープ管と前記第2ドープ管の相対的な位置関係が変化することが好ましい。この場合、第1ドープ管はトップチャンバー側に固定され、第2ドープ管はメインチャンバー内の熱遮蔽部材に取り付けられているので、トップチャンバーをメインチャンバーに取り付けたり、あるいはメインチャンバーから取り外したりする作業が容易である。
【0021】
本発明において、前記第2ドープ管は前記熱遮蔽部材に形成された貫通穴に挿入されており、前記第2ドープ管の下端は露出することなく前記貫通穴の下側開口端よりも内側で終端されており、前記第2ドープ管の下端はカーボン製のリングキャップに覆われていることが好ましい。第2ドープ管が熱遮蔽部材の貫通穴に挿入されているだけであるため、その設置が容易である。また、第2ドープ管の下端は露出することなくリングキャップに覆われているので、第2ドープ管の下端を熱から保護することができ、熱変形等を防止することができる。
【0022】
本発明において、前記リングキャップの外側開口は、斜め下方であって前記ルツボの側壁部側を向いていることが好ましい。これにより、第2ドープ管が真っ直ぐ下方に伸びる形状であっても、ドーパントをルツボ内のできるだけ内壁面寄りに投入することができ、投入時の融液の液跳ねや単結晶の有転位化を防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、部品の折損や脱落がなく、熱遮蔽部材の上下方向の移動にも対応可能なドーパント供給装置を備えた単結晶製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施の形態による単結晶製造装置の構成を示す略側面断面図である。
図2図2は、図1のドーパント供給装置の拡大図である。
図3図3は、結晶引き上げ工程を開始する前の準備段階において熱遮蔽部材を上昇させた状態を示す略断面図である。
図4図4は、チャンバーを分解した状態を示す略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態による単結晶製造装置の構成を示す略側面断面図である。
【0027】
図1に示すように、単結晶製造装置1は、チャンバー10と、チャンバー10内に設置された石英ルツボ12と、石英ルツボ12を支持するグラファイト製のサセプタ13と、サセプタ13を昇降及び回転可能に支持するシャフト14と、サセプタ13の周囲に配置されたヒータ15と、石英ルツボ12の上方に配置された熱遮蔽部材16と、石英ルツボ12の上方であってシャフト14と同軸上に配置された単結晶引き上げワイヤー17と、チャンバー10の上方に配置されたワイヤー巻き取り機構18と、石英ルツボ12内にドーパントを供給するドーパント供給装置20とを備えている、
【0028】
チャンバー10は、メインチャンバー10aと、メインチャンバー10aの上部開口を覆うトップチャンバー10bと、トップチャンバー10bの上部開口に連結された細長い円筒状のプルチャンバー10cとで構成されており、石英ルツボ12、サセプタ13、ヒータ15及び熱遮蔽部材16はメインチャンバー10a内に設けられている。サセプタ13はチャンバー10の底部中央を貫通して鉛直方向に設けられたシャフト14の上端部に固定されており、シャフト14はシャフト駆動機構19によって昇降及び回転駆動される。
【0029】
ヒータ15は、石英ルツボ12内に充填された多結晶シリコン原料を融解してシリコン融液3を生成するために用いられる。ヒータ15はカーボン製の抵抗加熱式ヒータであり、サセプタ13内の石英ルツボ12を取り囲むように設けられている。ヒータ15の外側には断熱材11が設けられている。断熱材11はメインチャンバー10aの内壁面に沿って配置されており、これによりメインチャンバー10a内の保温性が高められている。
【0030】
熱遮蔽部材16は、ヒータ15及び石英ルツボ12からの輻射熱によってシリコン単結晶2が加熱されることを防止すると共に、シリコン融液3の温度変動を抑制するために設けられている。熱遮蔽部材16は上方から下方に向かって直径が縮小した略円筒状の部材であり、シリコン融液3の上方を覆うと共に、育成中のシリコン単結晶2を取り囲むように設けられている。熱遮蔽部材16の材料としてはグラファイトを用いることが好ましい。熱遮蔽部材16の下端部は石英ルツボ12の内側に位置するので、石英ルツボ12を上昇させても熱遮蔽部材16と干渉することがない。熱遮蔽部材16の中央にはシリコン単結晶2の直径よりも大きな開口部が設けられており、シリコン単結晶2は開口部を通って上方に引き上げられる。
【0031】
詳細は後述するが、熱遮蔽部材16はチャンバー10内で昇降自在に構成されていることが好ましい。熱遮蔽部材16はジャッキ等により持ち上げてもよく、ワイヤー等により引っ張り上げてもよい。熱遮蔽部材16が昇降自在である場合、石英ルツボ12内に山積みの固体シリコン原料を充填したとしても熱遮蔽部材16を上方に退避させることで熱遮蔽部材16と固体シリコン原料との干渉を回避することができ、石英ルツボ12内のシリコン融液3の初期チャージ量を増やすことができる。
【0032】
石英ルツボ12の上方には、シリコン単結晶2の引き上げ軸であるワイヤー17と、ワイヤー17を巻き取るワイヤー巻き取り機構18が設けられている。ワイヤー巻き取り機構18はワイヤー17と共にシリコン単結晶2を回転させる機能を有している。ワイヤー巻き取り機構18はプルチャンバー10cの上方に配置されており、ワイヤー17はワイヤー巻き取り機構18からプルチャンバー10c内を通って下方に延びており、ワイヤー17の先端部はメインチャンバー10aの内部空間まで達している。図1には、育成途中のシリコン単結晶2がワイヤー17に吊設された状態が示されている。単結晶の引き上げ時には種結晶をシリコン融液3に浸漬し、石英ルツボ12と種結晶をそれぞれ回転させながらワイヤー17を徐々に引き上げることにより単結晶を成長させる。
【0033】
プルチャンバー10cの上部にはチャンバー10内にアルゴンガスを導入するためのガス吸気口10dが設けられており、メインチャンバー10aの底部にはチャンバー10内のアルゴンガスを排気するためのガス排気口10eが設けられている。アルゴンガスはガス吸気口10dからチャンバー10内に導入され、その導入量はバルブにより制御される。また密閉されたチャンバー10内のアルゴンガスはガス排気口10eからチャンバーの外部へ排気されるので、チャンバー10内のSiOガスやCOガスを回収してチャンバー10内を清浄に保つことが可能となる。
【0034】
ドーパント供給装置20は、チャンバー10を貫通してその下端部が石英ルツボ12の上方に達するドーパント供給管21と、チャンバー10の外側に設置され、ドーパント供給管21の上端に接続されたドーパントホッパー22と、ドーパント供給管21が貫通するトップチャンバー10bの開口部10fを密閉するシールキャップ23とを備えている。
【0035】
シリコン単結晶2の製造では、石英ルツボ12内に多結晶シリコン原料を充填し、ワイヤー17の先端部に種結晶を取り付ける。次に石英ルツボ12内のシリコン原料をヒータ15で加熱してシリコン融液3を生成する。
【0036】
単結晶の引き上げ工程では、まず単結晶を無転位化するためダッシュネック法による種結晶のネッキングを行う。次に、必要な直径の単結晶を得るために直径が徐々に広がったショルダー部を育成し、単結晶が所望の直径になったところで直径が一定に維持されたボディ部を育成する。ボディ部を所定の長さまで育成した後、無転位の状態で単結晶をシリコン融液3から切り離すためにテール部の育成を行なう。
【0037】
シリコン単結晶2の引き上げ開始直前又は結晶引き上げ工程の途中でドーパント供給装置20からシリコン融液3にドーパント5が供給される。
【0038】
図2は、図1のドーパント供給装置20の拡大図である。
【0039】
図1及び図2に示すように、ドーパント供給装置20は、チャンバー10を貫通して石英ルツボ12の上方に達するドーパント供給管21と、ドーパント供給管21の上端に接続されたドーパントホッパー22と、トップチャンバー10bに形成された開口部10fを密閉するシールキャップ23とを備えている。ドーパントホッパー22から供給されるドーパント原料はドーパント供給管21を通ってチャンバー10内に移送される。
【0040】
ドーパント供給管21は石英ガラス製であり、トップチャンバー10bの開口部10fを通ってメインチャンバー10a内に引き込まれた第1ドープ管24と、メインチャンバー10a内であって第1ドープ管24の下端の直下に配置された第2ドープ管25とで構成されている。
【0041】
第1ドープ管24は、ドーパントホッパー22の設置位置からトップチャンバー10bの開口部10fを通って第2ドープ管25の直上まで到達するように曲がりくねった石英ガラス管である。第1ドープ管24は、シールキャップ23を介してトップチャンバー10bに固定されている。第1ドープ管24は熱遮蔽部材16から分離独立している。
【0042】
第2ドープ管25は、第1ドープ管24の下端よりも大きな開口径を有する大径部25aと、開口径が徐々に小さくなるテーパー部25bと、大径部25aよりも小さな開口径を有する小径部25cとを有している。すなわち、第2ドープ管25は、その上端部の開口サイズが下端部の開口サイズよりも広がった漏斗形状を有している。
【0043】
第2ドープ管25の中心軸線はその上端から下端まで直線状に伸びており、曲がった部分を有していない。そのため、第2ドープ管25の小径部25cを貫通穴16aに差し込むだけで第2ドープ管25を熱遮蔽部材16に取り付けることができる。このような第2ドープ管25はその形状が比較的単純であるため、製造が容易で製造コストも安価である。第2ドープ管25は、熱遮蔽部材16の貫通穴16a内に挿入されているだけであり、熱遮蔽部材16に対して上下動可能に設置されている。さらに、第2ドープ管25はチャンバー10から分離独立している。
【0044】
熱遮蔽部材16にはその内周面側から外周面側まで垂直方向に貫通する貫通穴16aが設けられており、第2ドープ管25の小径部25cはこの貫通穴16aに挿入されている。第2ドープ管25の小径部25cの周囲は熱遮蔽部材16に囲まれているので、ヒータ15やシリコン融液3からの輻射熱の影響を抑えて第2ドープ管25の熱変形を防止することができる。
【0045】
第2ドープ管25のテーパー部25bの外面の鉛直軸に対するテーパー角度(鋭角)は、テーパー部25bと対向する熱遮蔽部材16の内壁面16bの鉛直軸に対する傾斜角度と略等しいことが好ましい。これにより、熱遮蔽部材16と線接触した状態で第2ドープ管25を支持することができ、第2ドープ管25の破損や変形を抑制することができる。なおテーパー角度の頂点はテーパー部25bの下端である。テーパー部25bの外面のテーパー角度は、テーパー部25bと対向する内壁面16bの傾斜角度よりも小さくても良い。この場合、第2ドープ管25はテーパー部25bの付け根の一点で熱遮蔽部材16に支持されるが、問題なく支持することができる。
【0046】
上記のように、第1ドープ管24及び第2ドープ管25はともに石英製である。例えば第1ドープ管24及び第2ドープ管25の少なくとも一方をカーボン製とした場合には、ドーパントのカーボン汚染によってシリコン単結晶中のカーボン濃度が上昇する。しかし、第1ドープ管24及び第2ドープ管25をともに石英製とした場合には、ドーパントの不純物汚染を防止することができる。また石英管は常温下で割れやすく、また高温下で熱変形するおそれがあるが、第2ドープ管25は単に熱遮蔽部材16の貫通穴16aに差し込まれているだけであり、ネジ等で強固に固定されていないため、その設置が容易なだけでなく、第2ドープ管25の破損や変形を防止することができる。
【0047】
熱遮蔽部材16の貫通穴16aに挿入された第2ドープ管25の小径部25cの下端は露出することなく貫通穴16aの下側開口端よりも内側で終端されており、第2ドープ管25の下端はSiCコートされたカーボン製のリングキャップ16cに覆われている。そのため、第2ドープ管25の下端部を熱から保護することができ、熱変形等を防止することができる。
【0048】
リングキャップ16cの外側開口は、石英ルツボ12の側壁部に近づく斜め下方を向いていることが好ましい。これにより、第2ドープ管25が真っ直ぐ下方に伸びる形状であっても、ドーパント5を石英ルツボ12内のできるだけ内壁面寄りに投入することができ(図1参照)、投入時の融液の液跳ねや単結晶の有転位化を防止することができる。
【0049】
以上の構成において、シリコン単結晶2の引き上げ開始直前及び結晶引き上げ工程の途中には、ドーパント供給装置20から石英ルツボ12内のシリコン融液3に粒状のドーパント5が追加供給される。ドーパントホッパー22から排出されたドーパント5は、第1ドープ管24及び第2ドープ管25を通ってシリコン融液3に供給される。
【0050】
図3は、結晶引き上げ工程を開始する前の準備段階において熱遮蔽部材16を上昇させた状態を示す略断面図である。
【0051】
図3に示すように、準備段階では石英ルツボ12内にできるだけ多くのシリコン原料4をチャージするため、石英ルツボ12内には固体のシリコン原料4が山積みされ、これを融解することにより、多量のシリコン融液3を生成することができる。このとき、多結晶シリコン原料と干渉しないように熱遮蔽部材16を上方に退避させることにより、熱遮蔽部材16が山積みのシリコン原料4と干渉することを回避することができる。さらに、ドーパント供給管21は第1ドープ管24と第2ドープ管25とに分かれているので、熱遮蔽部材16の動きに対応することができる。
【0052】
図4は、チャンバー10を分解した状態を示す略側面断面図である。
【0053】
図4に示すように、チャンバー10はメインチャンバー10a、トップチャンバー10b、プルチャンバー10cの組み合わせによって構成されており、これらは図示のように分解可能である。このとき、ドーパント供給管21は第1ドープ管24と第2ドープ管25に分かれているので、メインチャンバー10aに対するトップチャンバー10bの取り外し及び取り付けが容易である。このように、第1ドープ管24と第2ドープ管25の相対的な位置関係は、トップチャンバー10bの着脱に応じて変化する。
【0054】
以上説明したように、本実施形態による単結晶製造装置1は、チャンバー10の外側から内部にドーパントを送り込むためのドーパント供給管21が二分割されているので、熱遮蔽部材16の上下方向に移動に合わせてドーパント供給管21の全長を調整することができる。また第2ドープ管25は熱遮蔽部材16の貫通穴16aに差し込まれているだけであるため、その設置が容易であるだけでなく、破損や変形を防止することができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0056】
例えば、上記実施形態においては、ドーパント供給管21が独立した2つのドープ管24,25で構成されているが、3つ以上のドープ管を用いて構成することも可能である。
【0057】
例えば、結晶引き上げ工程中に第1ドープ管24と第2ドープ管25は上下方向において重ならず分離しているが、重なるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 単結晶製造装置
2 シリコン単結晶
3 シリコン融液
4 固体シリコン原料
5 ドーパント粒
10 チャンバー
10a メインチャンバー
10b トップチャンバー
10c プルチャンバー
10d ガス吸気口
10e ガス排気口
10f 開口部
11 断熱材
12 石英ルツボ
13 サセプタ
14 シャフト
15 ヒータ
15b テーパー部
16 熱遮蔽部材
16a 熱遮蔽部材の貫通穴
16b 熱遮蔽部材の内壁面
16c リングキャップ
17 ワイヤー
18 ワイヤー巻き取り機構
19 シャフト駆動機構
20 ドーパント供給装置
21 ドーパント供給管
22 ドーパントホッパー
23 シールキャップ
24 第1ドープ管
25 第2ドープ管
25a 大径部
25b テーパー部
25c 小径部
図1
図2
図3
図4