(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】植物の環境ストレス緩和剤、植物生長促進剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/06 20060101AFI20250527BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20250527BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20250527BHJP
A01N 65/38 20090101ALI20250527BHJP
【FI】
A01G7/06 A
A01G31/00 601A
A01P21/00
A01N65/38
(21)【出願番号】P 2023111004
(22)【出願日】2023-07-05
【審査請求日】2024-09-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 クラウジオ 健治
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0327558(US,A1)
【文献】特表2012-514975(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107646392(CN,A)
【文献】特開2012-197249(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0245620(US,A1)
【文献】特開2023-060271(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115942872(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008812(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0084908(US,A1)
【文献】国際公開第2023/078710(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/06
A01G 31/00
A01N 1/00 - 65/48
A01P 1/00 - 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物抽出物とカルシウムイオンを含有
し、
前記植物抽出物が、アセチルコリン、又はポリフェノール類、フラボノイド類及び有機酸から選ばれる1種以上のアセチルコリンエステラーゼ阻害物質を含有する、ナス、トマト、ローズマリー、ササ、ミント、ユーカリ、タイム、レモンバーム、マツ、ココナッツ、竹、プラム、ハヤトウリ、レタス、ダイズ、キャッサバ、アスパラガス、マンゴー、ハイビスカス、タンポポ、スギナ、ジョロキア、カカオからなる群より選ばれる1種以上の植物の抽出物である、植物の環境ストレス緩和剤。
【請求項2】
さらに鉄イオン及び微量要素を含有する、請求項1に記載の植物の環境ストレス緩和剤。
【請求項3】
前記カルシウムイオンを、植物に施用する際の濃度として0.001mM~100mM含有する、請求項1に記載の植物の環境ストレス緩和剤。
【請求項4】
水耕液に添加することにより用いられる、請求項1に記載の植物の環境ストレス緩和剤。
【請求項5】
レタス、シュンギク、キャベツ、ホウレンソウ、トマト、ナスから選ばれる1種以上の植物に適用される、請求項1に記載の植物の環境ストレス緩和剤。
【請求項6】
植物抽出物とカルシウムイオンを含有
し、
前記植物抽出物が、アセチルコリン、又はポリフェノール類、フラボノイド類及び有機酸から選ばれる1種以上のアセチルコリンエステラーゼ阻害物質を含有する、ナス、トマト、ローズマリー、ササ、ミント、ユーカリ、タイム、レモンバーム、マツ、ココナッツ、竹、プラム、ハヤトウリ、レタス、ダイズ、キャッサバ、アスパラガス、マンゴー、ハイビスカス、タンポポ、スギナ、ジョロキア、カカオからなる群より選ばれる1種以上の植物の抽出物である、植物生長促進剤。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の植物の環境ストレス緩和剤を植物に施用することによる、植物の環境ストレスを緩和する方法。
【請求項8】
請求項
6に記載の植物生長促進剤を植物に施用することによる、植物の生長促進方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物の環境ストレス緩和剤、植物生長促進剤及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化を始めとする気候変動により、植物に対する非生物的ストレスが増加し、収量や品質への影響が懸念されている。日本では夏季に温度が非常に上がり、植物に高温ストレスがかかる。高温ストレス下では、床土の水分が十分に保持されているにも関わらず、発芽率の低下、初期生育抑制、徒長、病虫害などが引き起こされる。また、施設栽培では、夜間温度も下がりにくく、高品質の野菜が作りにくい環境になっている。高温ストレスの対処法としては、夜冷育苗、高冷地育苗、遮光栽培などが挙げられるが、十分な方法は確立していない。
【0003】
近年、高温ストレスなど植物の環境ストレスの対策として、バイオスティミュラント資材の利用に注目が集まっている。現在国内外の市場で出回っているバイオスティミュラント資材は腐植質、海藻、アミノ酸、ミネラル、微生物資材などから作られている。例えば、L-アルギニンが高温条件下で植物の生長を促進することが報告されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Matysiak, K. et al.(2020) Agronomy 10:769. doi: 10.3390/agronomy10060769
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のバイオスティミュラント資材の効果は十分なものではなかった。したがって、さらに有用かつ強力な環境ストレス緩和剤及び植物生長促進剤の開発が求められていた。
【0006】
本開示の課題は、高温などの環境ストレスに対する優れた軽減効果を有する新たな植物の環境ストレス緩和剤及び植物生長促進剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、上記課題を解決するため種々検討の結果、未利用バイオマスの1つであるナス残渣の抽出物を、カルシウムイオンとともに植物に施用することにより、前記植物に高温などの環境ストレスに対する耐性を賦与することができ、その効果も従来のバイオスティミュラント資材より大きいものであることを見出した。また、本願発明者は、ナス残渣以外の未利用バイオマスの抽出物を用いた場合にも、ナス残渣と同等又はそれ以上の効果が得られること、そして、これらの新しい資材は従来のバイオスティミュラント資材に比べて製造工程も簡略化でき、使用法も簡便であることを見出した。これらの知見に基づいて、本開示は完成された。
【0008】
すなわち、本開示は、植物抽出物とカルシウムイオンを含有する植物の環境ストレス緩和剤を提供する。また、本開示は、植物抽出物とカルシウムイオンを含有する植物生長促進剤を提供する。
【0009】
さらに、本開示は、前記した植物の環境ストレス緩和剤を植物に施用することによる、植物の環境ストレスを緩和する方法を提供する。また、本開示は、前記した植物生長促進剤を植物に施用することによる、植物の生長促進方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示では、ナスなどの植物抽出物を、カルシウムイオンとともに植物に施用することにより、前記植物に高温などの環境ストレスに対する耐性を賦与することが可能となり、その効果は従来のバイオスティミュラント資材に比べて大きい。この効果は、植物抽出物に含まれるアセチルコリンなどの神経伝達物質もしくはアセチルコリンエステラーゼ阻害物質とカルシウムイオンが、植物が本来持っている高温ストレス耐性機能を活性化したことに起因するものと推測されるが、詳細なメカニズムはまだ解明されていない。
【0011】
このように、本開示によれば、高温などの環境ストレスに対する優れた軽減効果を有する新たな環境ストレス緩和剤及び植物生長促進剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】ナス芽抽出物及びナス果肉抽出物(カルシウム無添加)を用いた高温耐性試験の様子を示す写真像図である(試験例2)。
【
図1B】ナス芽抽出物及びナス果肉抽出物(カルシウム0.5mM)を用いた高温耐性試験の様子を示す写真像図である(試験例2)。
【
図1C】ナス芽抽出物及びナス果肉抽出物(カルシウム1.0mM)を用いた高温耐性試験の様子を示す写真像図である(試験例2)。
【
図2】ナス芽抽出物及びナス果肉抽出物を用いた高温耐性試験(2週間)の結果を示すグラフである(試験例2)。図中、縦軸は収量(新鮮重(mg/株))、横軸は処理区、バーは標準偏差を示し、異なるアルファベットは有意水準5%で有意差(LSD法)があることを示す。
【
図3】試験例2の試験終了後のレタス幼植物中のカルシウム濃度を示すグラフである。図中、(A)はカルシウム無添加、(B)はカルシウム0.5mM、(C)はカルシウム1.0mMでの結果を示す。各グラフにおいて、縦軸はCa濃度(%)、横軸は収量(新鮮重(mg/株))を示す。
【
図4】ナス以外の植物抽出物を用いた環境ストレス緩和剤による高温耐性試験(2週間)の結果を示すグラフである(試験例3)。図中、縦軸は相対収量(%)、横軸は処理区を示す。
【
図5】各種標準物質とカルシウムイオンによる高温ストレス緩和効果を示すグラフである(試験例4)。図中、縦軸は相対収量(%)、横軸は処理区を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態の植物の環境ストレス緩和剤について詳しく説明する。本実施の形態に係る環境ストレス緩和剤は、植物抽出物とカルシウムイオンを含有することを特徴とする。
【0014】
本明細書において「環境ストレス」とは、植物が受ける非生物的ストレスを意味し、例えば高温ストレス、低温ストレス、塩ストレス、酸化ストレスなどが例示される。また、環境ストレス緩和剤の形態は特に限定されないが、水溶液の形態とすることが好ましい。
【0015】
「植物抽出物」の抽出原料である植物は、食品加工工場から排出される有機性廃棄物、農業において収穫後に発生する作物残渣などの未利用バイオマスであることが、製造コストの削減やフードロス問題の解決などの観点から好ましい。また、前記植物は、神経伝達物質及び/又はアセチルコリンエステラーゼ阻害物質を含むものであることが好ましい。前記神経伝達物質は、アセチルコリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、セロトニン、ドーパミン、アミノ酸(特にグルタミン酸 、アラニン、グリシン、プロリン、ロイシン、トレオニン、フェニルアラニン、GABA、アルギニン、ヒスチジン、システイン及びアスパラギン)から選ばれる1種以上、好ましくはアセチルコリンであることができる。前記アセチルコリンエステラーゼ阻害物質は、ポリフェノール類、フラボノイド類及び有機酸から選ばれる1種以上、好ましくはリンゴ酸、フマル酸、トコフェロールから選ばれる1種以上であることができる。
【0016】
前記植物は、前記神経伝達物質及び/又は前記アセチルコリンエステラーゼ阻害物質を含むことから、例えば、ナス、ブロッコリー、バナナ、ココナッツ、ミカン、ハーブ類(コリアンダー、クミン、セージ、レモングラス、ヨモギ、コンフリー、セージ、シソ、レモンバーム、オレガノ、キャットニップ、コモンタイム、タイム、ディル、ダークオパール、バジル、ヒソップ、ペパーミント、スペアミント、ラムズイヤー)、ドクダミ、ラベンダー、マリーゴールド、ブドウ、コーヒー(コーヒーノキ)、茶(チャノキ)、カカオ、アカシア、スギ、マツ、サトウキビ、マンゴー、バナナ、パパイア、アボカド、リンゴ、サクランボ(桜桃)、グァバ、オリーブ、イモ類(サツマイモ、紫イモ(紫色素を多く含有するサツマイモ)、ジャガイモ、ヤマイモ、タロイモ(サトイモ、エビイモなど)、コンニャクイモなど)、柿(カキノキ)、クワ、ブルーベリー、ポプラ、イチョウ、キク、ヒマワリ、竹、柑橘類(レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツ、ネーブル、ゆず、きんかん、かぼす、夏みかん、はっさく、いよかん、ライム、温州ミカン、シークヮーサー、マンダリンなど)、イチゴ、ブラックベリー、クランベリー、ラズベリー、ビルベリー、ハックルベリー、ウメ、桃、スモモ、ナシ、西洋ナシ、ビワ、キウイフルーツ、マンゴスチン、シシトウ、プルーン、メロン、ドラゴンフルーツ、クコ、カシス、カシュー、ガマズミ、ザクロ、アサイー、アロニア、トマト、大豆、黒大豆、小豆、サヤインゲン、落花生、黒胡麻、蕎麦、ダッタンソバ、ゴマ、紫キャベツ、ウルシ、ヌルデ、シュンギク、ホウレンソウ、コマツナ、ミツバ、オクラ、蕗、タマネギ、モロヘイヤ、ニンニク、紫タマネギ、アスパラガス、パセリ、ユーカリ、ウド、ギムネマ・シルベスタ、センナ、タンポポ、スギナ、シダ(ワラビ、ゼンマイなど)、ナラ、クヌギ、カエデ、セコイヤ、メタセコイヤ、ヒノキ、アカメガシワ、タカノツメ、アマチャ、アケビ、ヤマウコギ、リョウブ、タムシバ、コブシ、サルナシ、シロモジ、クロモジ、コシアブラ、クサギ、ホオノキ、マタタビ、バナバ、ルイボス、ラフマ、クコ、クズ、メグスリノキ、ウリン、メルバオ、アオギリ、スオウ、ブラジルボク、メリンジョ、サクラ、モクレン、イェルバ・マテ、メヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ハマザクロ、ニッパヤシ、ヒルギダマシ、ヒルギモドキ、サキシマスオウノキ、ゴボウ、ウコン、レンコン、ナズナ、マツ、ニンジン、ピーマン、トウガラシ、パプリカ、タケ、タケノコ、セイダカアワダチ草、キャッサバ、ササ、クローブ、イチョウ、キンジソウ、ダイコン、カラシナなど、又はこれらの加工品とすることができる。前記植物のうち、特にナス、トマト、ローズマリー、ササ、ミント、ユーカリ、タイム、レモンバーム、マツ、ココナッツ、竹、プラム、ハヤトウリ、レタス、ダイズ、キャッサバ、アスパラガス、マンゴー、ハイビスカス、タンポポ、スギナ、ジョロキア、カカオが好適に用いられる。前記植物は、茎、葉、果実、根、種子、外皮、芽、花、地下茎など植物体の一部であってもよい。これらの植物は、2種以上を併用することもできる。
【0017】
「植物抽出物」は、前記植物を適当な抽出溶媒で抽出して得られた抽出物、抽出液、又はこれらの乾燥物、精製物などであってもよい。また、抽出物と同等の成分を含んでいることから、前記植物の搾汁液、その濃縮物、乾燥物、精製物等も、「植物抽出物」に含まれるものとする。前記植物抽出物の濃度は特に限定されないが、植物に施用する際の固形分質量比として、例えば水耕栽培の場合は1.000ppm~100.000ppm、好ましくは10.000ppm~80.000ppmとすることができる。
【0018】
「抽出溶媒」は、水、熱水、アルコール(特にエタノール)、含水アルコール(特に含水エタノール)、石油エーテルであることが好ましいが、これらに限定されない。
【0019】
「乾燥物」は、破砕、粉砕、粉末化などの処理を行ったものであることが望ましく、粒子径の小さい粉末が特に望ましい。
【0020】
「カルシウムイオン」は、カルシウムの水溶性塩とすることができ、本開示の植物の環境ストレス緩和又は生長促進効果が奏されるものであれば特に限定されない。前記カルシウムイオンは、例えば、硫酸カルシウム、塩化カルシウムなどの無機塩、乳酸カルシウムなどの有機酸塩などであってよく、特に塩化カルシウムが好ましい。前記カルシウムイオンの濃度は特に限定されないが、植物に施用する際の濃度として、例えば水耕栽培の場合は0.001mM~100mMとすることができ、好ましくは0.01mM~10mM、より好ましくは0.1mM~1.0mM、特に好ましくは0.2mM~0.7mMである。
【0021】
本実施の形態に係る環境ストレス緩和剤は、本開示の植物の環境ストレス緩和又は生長促進効果を阻害するものでなければ、前記植物抽出物と前記カルシウムイオンの他に、鉄イオンその他の作物の生育に必要な栄養素、他のバイオスティミュラント資材、他の植物生長促進剤、殺菌剤、殺虫剤、植物ホルモン剤などを含んでいてもよい。
【0022】
「鉄イオン」は、鉄(II)又は鉄(III)の水溶性塩とすることができ、本開示の植物の環境ストレス緩和又は生長促進効果を阻害するものでなければ特に限定されない。前記鉄イオンは、例えば、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)などであってよく、特に塩化鉄(II)が好ましい。前記鉄イオンの濃度は特に限定されないが、植物に施用する際の濃度として、例えば水耕栽培の場合は0.001mM~100mMとすることができ、好ましくは0.01mM~10mM、より好ましくは0.1mM~1.0mM、特に好ましくは0.2mM~0.7mMである。
【0023】
環境ストレス緩和剤に含まれ得る「その他の作物の生育に必要な栄養素」は、例えば鉄以外の微量要素(ホウ素、マンガン、亜鉛、銅、モリブデンなど)や多量要素(窒素、リン酸、カリウム)であってよく、前記微量要素が好ましいが、これらに限定されない。
【0024】
本実施の形態の環境ストレス緩和剤を施用し得る植物は、特に限定されないが、例えば葉菜類、果菜類、根菜類、花菜類などの野菜、イネ、麦類などの穀物、花卉、果樹などとすることができ、好ましくはレタス、シュンギク、キャベツ、ホウレンソウ、トマト、ナス、パプリカなどである。
【0025】
次に、本実施の形態に係る植物の環境ストレス緩和剤の製造方法について説明する。本実施の形態に係る植物の環境ストレス緩和剤は、植物抽出物と前記カルシウムイオンを水の存在下で混合することにより製造することができる。
【0026】
前記植物抽出物は、前述の植物を前述の抽出溶媒を用いて抽出することにより得ることができる。抽出条件は特に限定されない。また、抽出後に精製、濃縮、乾燥等の操作を行うこともできる。
【0027】
前記植物抽出物と前記カルシウムイオンとの混合操作は、水存在下において行われる。ここで水存在下とは、前記植物抽出物と前記カルシウムイオンが、水を媒質として反応できる条件であればよい。水の量としては、少なくとも前記植物抽出物と前記カルシウムイオンとの混合や撹拌が可能な液量であれば良く、前記植物抽出物と前記カルシウムイオンとの混合物が湿潤する程度の量であってもよい。前記植物抽出物として、植物の搾汁液や抽出液などを液体のまま用いる場合、あるいは、前記カルシウムイオンを水溶液の形態で用いる場合には、新たに媒質を添加することなく、直接両者を混合することができる。
【0028】
混合操作としては、スターラー等で単純な撹拌混合を行えばよいが、ミキサー、大型撹拌槽、ボルテックス、シェーカーなどによっても行うことができる。混合時の温度条件は特に限定されず、例えば室温程度(例えば10~35℃)とすることができる。混合時間としては、植物抽出物とカルシウムイオンが十分に接触するまでとすることができ、特に限定されない。
【0029】
このようにして得られる植物の環境ストレス緩和剤は、植物が本来有する高温耐性、低温耐性、塩ストレス耐性、酸化ストレス耐性といった様々なストレス耐性機構のスイッチをオンにする機能を持っていると考えられる。そのため、本実施の形態に係る植物の環境ストレス緩和剤は、これを植物に施用することにより、人為的に植物の環境ストレス耐性機構を制御可能であると期待される。例えば、植物の細胞が高温などの環境ストレスにさらされると、イオンチャネルを介した細胞外からのカルシウムイオンの流入が引き起こされる。本実施の形態の植物の環境ストレス緩和剤は、このイオンチャネルを開状態にすることで細胞内のカルシウムシグナル伝達を活性化し、植物に環境ストレス耐性を賦与できると考えられる。なお、本実施の形態の環境ストレス緩和剤が適用可能な植物に、特に制限はない。
【0030】
また、本実施の形態の環境ストレス緩和剤は、植物に環境ストレス耐性を賦与することによって、環境ストレス下での植物の生長を促進することができる。したがって、本実施の形態の環境ストレス緩和剤は、植物生長促進剤と言うこともできる。
【0031】
次に、本実施の形態の環境ストレス緩和剤の使用方法について説明する。本実施の形態の環境ストレス緩和剤は、従来の肥料や植物生長促進剤、バイオスティミュラント資材と同様の方法で、有効量を植物に施用することによって使用できる。有効量は、植物に対する環境ストレス緩和又は植物生長促進効果が奏される量であってよい。
【0032】
例えば、水耕栽培の場合は、水耕液に本実施の形態の環境ストレス緩和剤を適量添加する使用方法が、簡便であり好ましい。また、例えば、本実施の形態の環境ストレス緩和剤を、植物の葉面に適量散布又は塗布してもよい。また、例えば、植物が生育している土壌に潅注したり、種子に処理したり、液体状の肥料や植物生長促進剤、バイオスティミュラント資材といった他の農業資材に混合して使用したりすることができる。
【0033】
本実施の形態の環境ストレス緩和剤を水耕液や他の農業資材などに添加する際の添加量及び濃度は、環境ストレス緩和剤に含まれる植物抽出物やカルシウムイオンの濃度が前記した範囲内となるように、あるいは、植物に対する環境ストレス緩和又は植物生長促進効果が奏されるように、適宜調整すればよい。また、環境ストレス緩和剤の使用時期及び使用回数は、作物が環境ストレスを受けやすい時期等に合わせて適宜設定することができ、特に限定されない。
【0034】
なお、本実施の形態の環境ストレス緩和剤を植物生長促進剤として使用する場合の使用方法も、上記と同様である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本実施の形態を詳しく説明する。
【0036】
(試験例1)レタス幼植物を用いた高温耐性試験(その1)
日本で栽培される野菜には高温耐性の低いものが多い。レタスも比較的冷涼な気象条件に適応しており、生育適温は18~23℃である。高温時の結球レタス栽培では、過大球、小球、タケノコ球、中肋部突出球などの異常球が発生しやすく、Ca欠乏による生理障害(チップバーン)の発生が問題となる。従来、これらの症状に基づいて作物の高温耐性を確認する試験には、数ヶ月程度の時間を要していた。そこで、本願発明者は、レタス幼植物では、高温・長日条件により花芽や抽台の分化が誘導され、茎が伸長することを利用して、2週間の高温栽培試験によりレタスの高温耐性獲得の有無を調べるモデル実験系を開発した。
【0037】
(1)ナス残渣を用いた環境ストレス緩和剤の調製
ナス残渣として、(a) ナス収穫後の果皮を取り除いた果肉50g、(b) ナスの栽培管理で取り除いた芽20g、(c) ナス収穫後の果皮20g、(d) ナス収穫後の根20g、を用いた。これらのナス残渣をそれぞれ1Lビーカーに入れ、そこに蒸留水700mLを加え、120℃で20分間加熱した。その後、上澄みを濾紙で濾過し、濾液(ナス残渣抽出物)にホウ酸(3g)、硫酸マンガン(2g)、硫酸亜鉛(0.22g)、硫酸銅(0.05g)、モリブデン酸ナトリウム(0.01g)、硫酸鉄(15g)、塩化カルシウム(55g)を加え、さらに蒸留水を加えて各1Lのナス残渣混合液(a~d)を得た。なお、塩化カルシウムを加えなかったこと以外は上記と同様にして、カルシウムイオン無添加のナス残渣混合液(a’~d’)を調製し、比較例とした。
【0038】
(2)レタス幼植物の水耕栽培試験
以下の養液A~Dを各1mLと、上記で調製したナス残渣混合液(a~d, a’~d’)のいずれか1mLとを合わせ、さらに蒸留水を加えて1Lの水耕液を作製した。各水耕液(1L)の作製に用いた養液の量を表1に示す。なお、各水耕液におけるカルシウム及び微量要素の濃度は、ホウ酸0.05mM、硫酸マンガン0.01mM、硫酸亜鉛0.001mM、硫酸銅0.0003mM、モリブデン酸ナトリウム0.0005mM、硫酸鉄0.1mM、塩化カルシウム0.5mMである。各水耕液におけるナス残渣抽出物の固形分濃度は、果肉(a,a’)50.000mg/L、芽(b,b’) 20.000mg/L、果皮(c,c’) 20.000 mg/L、根(d,d’) 20.000 mg/Lである。
【0039】
養液A:1Lビーカーに蒸留水700mLとKNO3 202gを入れ、溶解するまで撹拌し、さらに蒸留水を加えて1Lとした。
養液B:1Lビーカーに蒸留水700mLとKH2PO4 178gを入れ、溶解するまで撹拌し、さらに蒸留水を加えて1Lとした。
養液C:1Lビーカーに蒸留水700mLとNH4NO3 44gを入れ、溶解するまで撹拌し、さらに蒸留水を加えて1Lとした。
養液D:1Lビーカーに蒸留水700mLとMgSO4・7H2O 489gを入れ、溶解するまで撹拌し、さらに蒸留水を加えて1Lとした。
【0040】
作製した水耕液をそれぞれ1.2L容の簡易水耕栽培器に入れ、レタス幼植物(播種後10日目)を定植して、12h明期/35℃、12h暗期/25℃、湿度60%の栽培条件で、14日間栽培した。なお、対照区としてナス残渣混合液(a~d, a’~d’)を加えずに作製した水耕液を用いた。14日間栽培後にレタスを収穫し、収量を測定した。
【0041】
【0042】
(3)結果と考察
結果を表2に示す。表2の数値は、各対照区(養液A~Dのみ)の収量を100%とした場合の各処理区における相対収量(%、生重量比)を表す。表2から、ナス残渣抽出物とカルシウムイオン(塩化カルシウム)を添加した水耕液を用いた処理区は、カルシウムイオンを添加しない水耕液を用いた比較例の処理区に比べて、4倍~10.5倍と大幅に収量が増加したことが示された。この結果から、本実施の形態の環境ストレス緩和剤を水耕液に添加して栽培することによって、高温条件(25℃~35℃)でレタス幼植物の生長が大きく促進され、高温ストレス耐性が賦与されることが分かった。
【0043】
【0044】
(試験例2)レタス幼植物を用いた高温耐性試験(その2)
次に、カルシウム濃度の変化による高温ストレス緩和効果への影響を調べた。
【0045】
(1)ナス残渣を用いた環境ストレス緩和剤の調製
ナス残渣として、ナスの栽培管理で取り除いた芽20g、ナス収穫後の果実(皮つき)50g、を用いた。これらのナス残渣をそれぞれ1Lビーカーに入れ、そこに蒸留水1000mLを加え、120℃で20分間加熱した。その後、上澄みを濾紙で濾過し、濾液(ナス残渣抽出物)にホウ酸(3g)、硫酸マンガン(2g)、硫酸亜鉛(0.22g)、硫酸銅(0.05g)、モリブデン酸ナトリウム(0.01g)、硫酸鉄(15g)、塩化カルシウム(55g又は110g)を加え、さらに蒸留水を加えて各1Lのナス芽混合液及びナス果実混合液を得た。なお、塩化カルシウムを加えなかったこと以外は上記と同様にして、カルシウムイオン無添加のナス芽混合液及びナス果実混合液を調製し、比較例とした。
【0046】
(2)レタス幼植物の水耕栽培試験
試験例1の養液A~Dを各1mLと、上記で調製したナス芽混合液及びナス果実混合液のいずれか1mLとを合わせ、さらに蒸留水を加えて1Lの水耕液を作製した。各水耕液(1L)の作製に用いた養液の量を表3に示す。なお、各水耕液におけるカルシウム及び微量要素の濃度は、ホウ酸0.05mM、硫酸マンガン0.01mM、硫酸亜鉛0.001mM、硫酸銅0.0003mM、モリブデン酸ナトリウム0.0005mM、硫酸鉄0.1mM、塩化カルシウム0.5mM又は1.0mMである。各水耕液におけるナス残渣抽出物の固形分濃度は、芽20.000mg/L、果実50.000mg/Lである。
【0047】
作製した水耕液をそれぞれ1.2L容の簡易水耕栽培器に入れ、レタス幼植物(播種後10日目)を定植して、12h明期/35℃、12h暗期/25℃、湿度60%の栽培条件で、14日間栽培した。なお、対照区としてナス芽混合液及びナス果実混合液の代わりに、所定量の塩化カルシウム水溶液を添加した水耕液を用いた。14日間栽培後にレタスを収穫して収量を測定し、植物中のCa濃度をICP発光分析装置を用いて測定した。
【0048】
【0049】
(3)結果と考察
結果を表4及び
図1A、B、C、
図2、
図3に示す。
図1A、B、Cは高温耐性試験の様子を示す写真像図であり、
図1Aはカルシウム無添加、
図1Bはカルシウム0.5mM、
図1Cはカルシウム1.0mMの各処理区である。
図2はレタス収量の測定値を、
図3はレタス収量とカルシウム濃度との関係を、それぞれ示すグラフである。表4及び
図2の数値は、各対照区の収量を100%とした場合の各処理区における相対収量(%、生重量比)を表す。
【0050】
図1A(カルシウム無添加)では、いずれの処理区も葉が黄変し、高温障害によるCa欠乏症の症状が表れていたが、
図1B(カルシウム0.5mM)では、ナス残渣抽出物無添加の対照区(無処理)に比べて、ナス残渣抽出物を添加した処理区では葉の高温障害が見られず、明らかに生長が促進されていた。
図1C(カルシウム1.0mM)では、対照区(無処理)でも葉の障害は見られなかったが、ナス残渣抽出物を添加した処理区では明らかな生長促進効果が認められた。
【0051】
表4及び
図2から、ナス残渣抽出物とカルシウムイオン(塩化カルシウム)を添加した水耕液を用いた処理区は、いずれのカルシウムイオン濃度においても、ナス残渣抽出物を添加しない水耕液を用いた各対照区に比べて、2倍~6.5倍と大幅にかつ有意に収量が増加したことが示された。これに対し、カルシウムイオン無添加の処理区においては、対照区(養液A~Dのみ)に対して有意差は認められなかった。これらの結果から、本実施の形態の環境ストレス緩和剤を水耕液に添加して栽培することによって、高温条件(25℃~35℃)でレタス幼植物の生長が大きく促進され、高温ストレス耐性が賦与されることが示された。
【0052】
図3(B)及び(C)では、本実施の形態の環境ストレス緩和剤を適用した処理区において、カルシウムイオン濃度が上昇していることが示された。また、植物中のカルシウムイオン濃度が高いほど収量も上がる傾向であることから、カルシウムイオン濃度の上昇が高温耐性の獲得と関連していることが示唆された。前述したように、細胞内でのカルシウムイオン濃度の上昇が、植物における様々なストレス耐性機構のスイッチをオンにすると考えられる。したがって、本実施の形態の環境ストレス緩和剤は、高温ストレス以外にも様々な環境ストレスを緩和する効果を有することが推測された。
【0053】
【0054】
(試験例3)ナス残渣以外の未利用バイオマスとの比較
ナス残渣以外の未利用バイオマスを用いて本実施の形態の環境ストレス緩和剤を調製し、効果を比較した。
【0055】
(1)環境ストレス緩和剤の調製
以下の表5に示す各種作物残渣を用いた。表5に示す量の各作物残渣をそれぞれ1Lビーカーに入れ、そこに蒸留水700mLを加え、120℃で20分間加熱した。その後、上澄みを濾紙で濾過し、濾液(作物残渣抽出物)を得た。この濾液にホウ酸(3g)、硫酸マンガン(2g)、硫酸亜鉛(0.22g)、硫酸銅(0.05g)、モリブデン酸ナトリウム(0.01g)、硫酸鉄(15g)、塩化カルシウム(55g)を加え、さらに蒸留水を加えて各1Lの作物残渣混合液を得た。
【0056】
【0057】
(2)レタス幼植物の水耕栽培試験
試験例1の養液A~Dを各1mLと、上記で調製した各種作物残渣混合液のいずれか1mLとを合わせ、さらに蒸留水を加えて1Lの水耕液を作製した。各水耕液における作物残渣抽出物の固形分濃度は、10.000 mg/Lである。
【0058】
作製した水耕液をそれぞれ1.2L容の簡易水耕栽培器に入れ、レタス幼植物(播種後10日目)を定植して、12h明期/35℃、12h暗期/25℃、湿度60%の栽培条件で、14日間栽培した。なお、対照区として、作物残渣混合液の代わりに0.5M 塩化カルシウム水溶液 1mLを添加した水耕液を用いた。また、比較例として、作物残渣混合液の代わりに従来高温ストレス緩和作用が報告されている腐植質類(フミン酸0.3g/L)、アミノ酸類(グルタミン酸0.1mM)を添加した水耕液を用いた。14日間栽培後にレタスを収穫して収量を測定した。
【0059】
(3)結果と考察
結果を表6及び
図4に示す。表6及び
図4の数値は、対照区の収量を100%とした場合の各処理区における相対収量(%、生重量比)を表す。表6及び
図4から、作物残渣抽出物とカルシウムイオン(塩化カルシウム)を添加した水耕液を用いた処理区は、作物残渣抽出物を添加しない水耕液を用いた対照区に比べて、2倍~11倍と大幅に収量が増加したことが示された。特に、ナス、トマト、ローズマリー、ササ、ミント、ユーカリ、タイム、レモンバーム、マツ、ココナッツ、竹、プラム、ハヤトウリ、レタス、ダイズ、キャッサバ、アスパラガス、マンゴー、ハイビスカス、タンポポ、スギナ、ジョロキア、カカオを用いた環境ストレス緩和剤は、従来技術の腐植質やアミノ酸に比べて顕著な効果を示した。この結果から、本実施の形態の環境ストレス緩和剤は、ナス以外の植物抽出物を用いた場合でも、植物に高温ストレス耐性を賦与できることが分かった。
【0060】
【表6】
**従来技術として、腐植質類(フミン酸0.3g/L)、アミノ酸類(グルタミン酸0.1mM)を用いた。
【0061】
(試験例4)標準物質による高温ストレス軽減効果
本実施の形態の植物の環境ストレス緩和剤は、細胞内のCaシグナル伝達を活性化し、植物に環境ストレス耐性を賦与できると考えられる。また、試験例2では高温耐性の向上と植物中のCa濃度の上昇との間に相関関係があることが示唆された。そこで、本試験例では、細胞内へのCaイオンの流入を引き起こす神経伝達物質又はアセチルコリンエステラーゼ阻害物質として知られる標準物質をカルシウムイオンとともに用いた場合の環境ストレス軽減効果を調べることで、本開示のメカニズム解明の一助とすることを目的とした。
【0062】
(1)試験方法
図5に示す標準物質を各20gとり、それにホウ酸(3g)、硫酸マンガン(2g)、硫酸亜鉛(0.22g)、硫酸銅(0.05g)、モリブデン酸ナトリウム(0.01g)、硫酸鉄(15g)、塩化カルシウム(55g)を加え、さらに蒸留水を加えて各1Lの標準物質混合液を得た。次に、試験例1の養液A~Dを各1mLと、上記で調製した標準物質混合液のいずれか1mLとを合わせ、さらに蒸留水を加えて1Lの水耕液を作製した。作製した水耕液をそれぞれ1.2L容の簡易水耕栽培器に入れ、レタス幼植物(播種後10日目)を定植して、12h明期/35℃、12h暗期/25℃、湿度60%の栽培条件で、14日間栽培した。なお、対照区(無処理)として、標準物質混合液の代わりに0.5M 塩化カルシウム水溶液 1mLを添加した水耕液を用いた。また、比較例として、標準物質の代わりに従来高温ストレス緩和作用が報告されているGABA(終濃度0.516 g/L)、フミン酸(終濃度0.3g/L)、アラニン(終濃度0.5g/L)を添加した水耕液を用いた。14日間栽培後にレタスを収穫して収量を測定した。
【0063】
(2)結果と考察
結果を
図5に示す。
図5の数値は、対照区(無処理)の収量を100%とした場合の各処理区における相対収量(%、生重量比)を表す。
図5から、リンゴ酸、フマル酸、アセチルコリン、トコフェロール、コハク酸を用いた処理区は、対照区や比較例の処理区に比べて、大幅に収量が増加したことが示された。アセチルコリンは多くの植物に含有されることが知られている神経伝達物質であり、リンゴ酸、フマル酸、トコフェロールはいずれも植物に含まれるアセチルコリンエステラーゼ阻害物質である。この結果から、本実施の形態の環境ストレス緩和剤は、これらのアセチルコリンやアセチルコリンエステラーゼ阻害物質が有効成分として働いている可能性が高いことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
上記実施例に示されるように、本開示に係る植物抽出物とカルシウムイオンを含有する環境ストレス緩和剤を植物に施用することにより、十分な生長促進作用を保持しつつ環境ストレスに対する耐性を植物に賦与することができる。また、本開示の環境ストレス緩和剤は、原料として農業で発生する作物残渣や食品加工工場から出る廃棄物などの未利用バイオマスを利用することができる。したがって、本開示は農業及び食品加工産業において利用可能である。