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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】半導体装置および溶接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20250527BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20250527BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20250527BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20250527BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20250527BHJP
【FI】
B23K26/21 N
B23K26/21 G
B23K26/067
H01L21/60 321E
H01L25/04 C
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021106058
(22)【出願日】2021-06-25
(65)【公開番号】P2022013800
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2024-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2020113426
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 史香
(72)【発明者】
【氏名】松本 暢康
(72)【発明者】
【氏名】安岡 知道
(72)【発明者】
【氏名】寺田 淳
(72)【発明者】
【氏名】尹 大烈
(72)【発明者】
【氏名】梅野 和行
(72)【発明者】
【氏名】金子 昌充
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/039099(WO,A1)
【文献】特開2015-119072(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159857(WO,A1)
【文献】特開2011-018823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
B23K 26/067
H01L 21/60
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向の端部で当該第一方向と交差した第一面を有した基板と、
電極を有し、前記第一面上に設けられた半導体パワーデバイスと、
前記第一面上に設けられ、前記電極と電気的に接続された導体と、
前記第一方向の端部で前記第一方向と交差した表面を有し、前記導体に対して前記第一方向に隣接したバスバーと、
前記導体と前記バスバーとを機械的かつ電気的に接続する溶接部と、
を備え、
前記溶接部は、
前記表面から前記第一方向の反対方向に延びるとともに、前記表面に沿って前記第一方向と交差した第二方向に延び、
第一部位と、少なくとも当該第一部位に対して前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向における両側に位置し前記第一方向に沿った断面における結晶粒の断面積の平均値が前記第一部位よりも大きい第二部位と、を有した溶接金属と、
前記溶接金属の周囲に位置された熱影響部と、
を有し
前記溶接金属の前記導体と前記バスバーとの溶融前境界よりも前記導体側の領域における前記第一部位の体積比率が、当該領域における前記第二部位の体積比率よりも小さい、半導体装置。
【請求項2】
前記第二部位は、第一部位に対して前記第一方向の反対方向に隣接した部位を含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記溶接金属の前記表面での幅に対する前記溶接金属の前記表面からの深さの比が、0.5以上かつ10以下である、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記溶接部として、一つのバスバーについて複数の溶接部を有した、請求項1~3のうちいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項5】
記導体と前記バスバーとの間には隙間が設けられ、
前記溶接部は、前記隙間内に存在する介在部位を有した、請求項1~4のうちいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記導体および前記バスバーのそれぞれは、銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、およびニッケルめっきが施された金属材料のうちのいずれか一つで作られている、請求項1~のうちいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか一つに記載の半導体装置の導体部分の溶接方法であって、
前記表面にレーザ光を照射することにより、前記導体と前記バスバーとを溶接する第一ステップを有し、
前記レーザ光は、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長の第一レーザ光と、550[nm]以下の波長の第二レーザ光と、を含む、溶接方法。
【請求項8】
前記第二レーザ光の波長は、400[nm]以上かつ500[nm]以下である、請求項に記載の溶接方法。
【請求項9】
前記レーザ光は、前記表面上で掃引方向に掃引され、
前記表面上において、前記第二レーザ光によって前記表面上に形成される第二スポットの少なくとも一部は、前記第一レーザ光によって前記表面上に形成される第一スポットよりも前記掃引方向の前方に位置している、請求項またはに記載の溶接方法。
【請求項10】
前記表面上において、前記第一スポットと前記第二スポットとは少なくとも部分的に重なっている、請求項に記載の溶接方法。
【請求項11】
前記表面上において、前記第二スポットの第二外縁は、前記第一スポットの第一外縁を取り囲んでいる、請求項に記載の溶接方法。
【請求項12】
前記バスバーの前記第一方向に沿った厚さは、0.2[mm]以上かつ1[mm]以下であり、
前記第一レーザ光によって前記表面が前記レーザ光と垂直な平面である場合の当該平面上に形成される第一スポットのスポット径は、14[μm]以上かつ150[μm]以下であり、
前記第一レーザ光のパワーは、0.3[kW]以上かつ2[kW]以下であり、
前記第二レーザ光によって前記表面が前記レーザ光と垂直な平面である場合の当該平面上に形成される第二スポットのスポット径は、100[μm]以上かつ900[μm]以下であり、
前記第二レーザ光のパワーは、0.01[kW]以上かつ1[kW]以下である、請求項11のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項13】
前記導体と前記バスバーとの積層体の前記第一方向の厚さは、0.2[mm]以上かつ1[mm]以下であり、
前記第一方向の単位長さあたりの前記第一レーザ光のエネルギ密度は、120[J/mm]以上であり、
前記第一方向の単位長さあたりの前記第二レーザ光のエネルギ密度は、5[J/mm]以上かつ50[J/mm]以下である、請求項12のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項14】
前記第一面上において、前記第二レーザ光のパワー密度が、0.15[MW/cm]以上かつ5[MW/cm]以下である、請求項13のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項15】
前記レーザ光は、複数のビームを含む、請求項14のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項16】
前記レーザ光は、ビームシェイパにより複数のビームに分割された、請求項15に記載の溶接方法。
【請求項17】
前記レーザ光の照射時間が、0.01[s]以上かつ0.5[s]以下である、請求項16のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項18】
前記半導体装置は、前記電極と電気的に接続された導体としてのワイヤを有し、
前記溶接方法は、第三レーザ光を照射することにより、前記ワイヤと前記導体とを溶接する第二ステップを有し、
前記第三レーザ光の波長は、400[nm]以上かつ500[nm]以下である、請求項17のうちいずれか一つに記載の溶接方法。
【請求項19】
前記ワイヤは、銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、およびニッケルめっきが施された金属材料のうちのいずれか一つで作られている、請求項18に記載の溶接方法。
【請求項20】
前記第三レーザ光によって前記ワイヤの被照射面が前記レーザ光の照射方向と垂直な平面である場合の当該平面上に形成される第三スポットのスポット径は、50[μm]以上かつ800[μm]以下であり、
前記第三レーザ光のパワーは、0.05[kW]以上かつ2[kW]以下であり、
前記第三レーザ光の一箇所あたりの照射時間は、0.05[s]以上かつ0.5[s]以下である、請求項18または19に記載の溶接方法。
【請求項21】
前記第三レーザ光のパワー密度が、0.2[MW/cm]以上かつ1.3[MW/cm]以下である、請求項20に記載の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部にレーザ溶接によって接合されている導体の接続部分を有した半導体装置が、知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5633581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の溶接においては、所要の接合強度の確保は勿論のこと、周囲の素子や、基板、配線等にスパッタが飛んだり熱影響を与えたりしないようにすることは、重要である。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、より改善された溶接方法によって電気的に接続された導体の接続部分を有した半導体装置、および当該溶接方法を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の半導体装置にあっては、例えば、第一方向の端部で当該第一方向と交差した第一面を有した基板と、電極を有し、前記第一面上に設けられた半導体パワーデバイスと、前記第一面上に設けられ、前記電極と電気的に接続された導体と、前記第一方向の端部で前記第一方向と交差した表面を有し、前記導体に対して前記第一方向に隣接したバスバーと、前記導体と前記バスバーとを機械的かつ電気的に接続する溶接部と、を備え、前記溶接部は、第一部位と、前記第一方向に沿った断面における結晶粒の断面積の平均値が前記第一部位よりも大きい第二部位と、を有した溶接金属と、前記溶接金属の周囲に位置された熱影響部と、を有している。
【0007】
前記半導体装置では、例えば、前記溶接金属の前記導体と前記バスバーとの溶融前境界よりも前記導体側の領域における前記第一部位の体積比率が、当該領域における前記第二部位の体積比率よりも小さい。
【0008】
前記半導体装置では、例えば、前記溶接金属の前記表面での幅に対する前記溶接金属の前記表面からの深さの比が、0.5以上かつ10以下である。
【0009】
前記半導体装置では、例えば、前記溶接部は、前記表面に沿って前記第一方向と交差した第二方向に延びている。
【0010】
前記半導体装置は、例えば、前記溶接部として、一つのバスバーについて複数の溶接部を有している。
【0011】
また、本発明の半導体装置にあっては、例えば、第一方向の端部で当該第一方向と交差した第一面を有した基板と、電極を有し、前記第一面上に設けられた半導体パワーデバイスと、前記第一面上に設けられ、前記電極と電気的に接続された導体と、前記第一方向の端部で前記第一方向と交差した表面を有し、前記導体に対して前記第一方向に隣接したバスバーと、前記導体と前記バスバーとを機械的かつ電気的に接続する溶接部と、を備え、前記導体と前記バスバーとの間には隙間が設けられ、前記溶接部は、前記隙間内に存在する介在部位を有している。
【0012】
また、本発明の半導体装置にあっては、例えば、第一方向の端部で当該第一方向と交差した第一面を有した基板と、電極を有し、前記第一面上に設けられた半導体パワーデバイスと、前記第一面上に設けられ、前記電極と電気的に接続された導体と、前記第一方向の端部で前記第一方向と交差した表面を有し、前記導体に対して前記第一方向に隣接したバスバーと、前記導体と前記バスバーとを機械的かつ電気的に接続する溶接部と、を備え、前記溶接部は、前記溶接部の前記表面での幅に対する前記溶接部の前記表面からの前記第一方向の反対方向への深さの比が、0.5以上かつ10以下である。
【0013】
前記半導体装置では、例えば、前記導体および前記バスバーのそれぞれは、銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、およびニッケルめっきが施された金属材料のうちのいずれか一つで作られている。
【0014】
また、本発明の溶接方法にあっては、例えば、第一方向の端部で当該第一方向と交差した第一面を有した基板と、電極を有し、前記第一面上に設けられた半導体パワーデバイスと、前記第一面上に設けられ、前記電極と電気的に接続された導体と、前記第一方向の端部で前記第一方向と交差した表面を有し、前記導体に対して前記第一方向に隣接したバスバーと、前記導体と前記バスバーとを機械的かつ電気的に接続する溶接部と、を備えた半導体装置の導体部分の溶接方法であって、前記表面にレーザ光を照射することにより、前記導体と前記バスバーとを溶接する第一ステップを有し、前記レーザ光は、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長の第一レーザ光と、550[nm]以下の波長の第二レーザ光と、を含んでいる。
【0015】
前記溶接方法では、例えば、前記第二レーザ光の波長は、400[nm]以上かつ500[nm]以下である。
【0016】
前記溶接方法では、例えば、前記レーザ光は、前記表面上で掃引方向に掃引され、前記表面上において、前記第二レーザ光によって前記表面上に形成される第二スポットの少なくとも一部は、前記第一レーザ光によって前記表面上に形成される第一スポットよりも前記掃引方向の前方に位置している。
【0017】
前記溶接方法では、例えば、前記表面上において、前記第一スポットと前記第二スポットとは少なくとも部分的に重なっている。
【0018】
前記溶接方法では、例えば、前記表面上において、前記第二スポットの第二外縁は、前記第一スポットの第一外縁を取り囲んでいる。
【0019】
前記溶接方法では、例えば、前記バスバーの前記第一方向に沿った厚さは、0.2[mm]以上かつ1[mm]以下であり、前記第一レーザ光によって前記表面が前記レーザ光と垂直な平面である場合の当該平面上に形成される第一スポットのスポット径は、14[μm]以上かつ150[μm]以下であり、前記第一レーザ光のパワーは、0.3[kW]以上かつ2[kW]以下であり、前記第二レーザ光によって前記表面が前記レーザ光と垂直な平面である場合の当該平面上に形成される第二スポットのスポット径は、100[μm]以上かつ900[μm]以下であり、前記第二レーザ光のパワーは、0.01[kW]以上かつ1[kW]以下である。
【0020】
前記溶接方法では、例えば、前記導体と前記バスバーとの積層体の前記第一方向の厚さは、0.2[mm]以上かつ1[mm]以下であり、前記第一方向の単位長さあたりの前記第一レーザ光のエネルギ密度は、120[J/mm]以上であり、前記第一方向の単位長さあたりの前記第一レーザ光のエネルギ密度は、5[J/mm]以上かつ50[J/mm]以下である。
【0021】
前記溶接方法では、例えば、前記第一面上において、前記第二レーザ光のパワー密度が、0.15[MW/cm]以上かつ5[MW/cm]以下である。
【0022】
前記溶接方法では、例えば、前記レーザ光は、複数のビームを含んでいる。
【0023】
前記溶接方法では、例えば、前記レーザ光は、ビームシェイパにより複数のビームに分割されている。
【0024】
前記溶接方法では、例えば、前記レーザ光の照射時間が、0.01[s]以上かつ0.5[s]以下である。
【0025】
前記溶接方法では、例えば、前記半導体装置は、前記電極と電気的に接続された導体としてのワイヤを有し、前記溶接方法は、第三レーザ光を照射することにより、前記ワイヤと前記導体とを溶接する第二ステップを有し、前記第三レーザ光の波長は、400[nm]以上かつ500[nm]以下である。
【0026】
前記溶接方法では、例えば、前記ワイヤは、銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、およびニッケルめっきが施された金属材料のうちのいずれか一つで作られている。
【0027】
前記溶接方法では、例えば、前記第三レーザ光によって前記ボンディングワイヤの被照射面が前記レーザ光の照射方向と垂直な平面である場合の当該平面上に形成される第三スポットのスポット径は、50[μm]以上かつ800[μm]以下であり、前記第三レーザ光のパワーは、0.05[kW]以上かつ2[kW]以下であり、前記第三レーザ光の一箇所あたりの照射時間は、0.05[s]以上かつ0.5[s]以下である。
【0028】
前記溶接方法では、例えば、前記第三レーザ光のパワー密度が、0.2[MW/cm]以上かつ1.3[MW/cm]以下である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、例えば、より改善された溶接方法によって電気的に接続された導体の接続部分を有した半導体装置、および当該溶接方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、第1実施形態のレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
図2図2は、第1実施形態のレーザ溶接装置の加工対象としての積層体の例示的かつ模式的な断面図である。
図3図3は、第1実施形態の半導体装置の例示的かつ模式的な側面図である。
図4図4は、第1実施形態のレーザ溶接装置によって加工対象の表面上に形成されるレーザ光のビーム(スポット)を示す例示的な模式図である。
図5図5は、照射するレーザ光の波長に対する各金属材料の光の吸収率を示すグラフである。
図6図6は、第1実施形態のレーザ溶接装置に含まれる回折光学素子の原理の概念を示す説明図である。
図7図7は、第1実施形態のレーザ溶接装置による導体とバスバーとの溶接部における第一レーザ光のパワー密度と第二レーザ光のパワー密度との組み合わせによる溶接の実験結果を示すグラフである。
図8図8は、第1実施形態のレーザ溶接装置によるバスバーとボンディングワイヤとの溶接部における第三レーザ光の照射時間と第三レーザ光のパワー密度との組み合わせによる実験結果を示すグラフである。
図9図9は、第2実施形態のレーザ溶接装置の加工対象としての積層体の例示的かつ模式的な断面図である。
図10図10は、第3実施形態のレーザ溶接装置の加工対象としての積層体の例示的かつ模式的な断面図である。
図11図11は、第3実施形態の半導体装置の一部の例示的かつ模式的な平面図である。
図12図12は、第4実施形態の半導体装置の例示的かつ模式的な側面図である。
図13図13は、実施形態のレーザ溶接装置によって加工対象の表面上に形成されるレーザ光のビーム(スポット)の一例を示す模式図である。
図14図14は、実施形態のレーザ溶接装置によって加工対象の表面上に形成されるレーザ光のビーム(スポット)の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0032】
以下に示される実施形態および変形例は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態および変形例の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0033】
また、各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表している。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに直交している。Z方向は、加工対象Wの表面Wa(加工面、溶接面)の法線方向であり、積層体10の厚さ方向であり、導体12とバスバー13との積層方向である。また、各図では、便宜上、レーザ光Lの表面Waにおける掃引方向SDがX方向に沿っている例が図示されているが、掃引方向SDは、表面Waに沿うとともにZ方向と交差していればよく、X方向のみに沿うものではない。
【0034】
また、本明細書において、序数は、部品や、部材、部位、レーザ光、方向等を区別するために便宜上付与されており、優先度や順番を示すものではない。
【0035】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のレーザ溶接装置100の概略構成図である。図1に示されるように、レーザ溶接装置100は、レーザ装置111と、レーザ装置112と、光学ヘッド120と、光ファイバ130と、を備えている。レーザ溶接装置100は、溶接装置の一例である。
【0036】
レーザ装置111,112は、それぞれ、レーザ発振器を有しており、例えば、数kWのパワーのレーザ光を出力できるよう構成されている。レーザ装置111,112は、380[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長のレーザ光を出射する。レーザ装置111,112は、内部に、例えば、ファイバレーザや、半導体レーザ(素子)、YAGレーザ、ディスクレーザのような、レーザ光源を有している。レーザ装置111,112は、複数の光源の出力の合計として、数kWのパワーのマルチモードのレーザ光を出力できるよう構成されてもよい。
【0037】
レーザ装置111は、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長の第一レーザ光を出力する。レーザ装置111は、第一レーザ装置の一例である。一例として、レーザ装置111は、レーザ光源として、ファイバレーザかあるいは半導体レーザ(素子)を有する。レーザ装置111が有するレーザ発振器は、第一レーザ発振器の一例である。
【0038】
他方、レーザ装置112は、550[nm]以下の波長の第二レーザ光を出力する。レーザ装置112は、第二レーザ装置の一例である。一例として、レーザ装置112は、レーザ光源として、半導体レーザ(素子)を有する。レーザ装置112は、400[nm]以上かつ500[nm]以下の波長の第二レーザ光を出力するのが好適である。レーザ装置112が有するレーザ発振器は、第二レーザ発振器の一例である。
【0039】
光ファイバ130は、それぞれ、レーザ装置111,112から出力されたレーザ光を光学ヘッド120に導く。
【0040】
光学ヘッド120は、レーザ装置111,112から入力されたレーザ光を、加工対象Wに向かって照射するための光学装置である。光学ヘッド120は、コリメートレンズ121と、集光レンズ122と、ミラー123と、フィルタ124と、を備えている。コリメートレンズ121、集光レンズ122、ミラー123、およびフィルタ124は、光学部品とも称されうる。
【0041】
光学ヘッド120は、加工対象Wの表面Wa上でレーザ光Lの照射を行いながらレーザ光Lを掃引するために、加工対象Wとの相対位置を変更可能に構成されている。光学ヘッド120と加工対象Wとの相対移動は、光学ヘッド120の移動、加工対象Wの移動、または光学ヘッド120および加工対象Wの双方の移動により、実現されうる。
【0042】
なお、光学ヘッド120は、図示しないガルバノスキャナ等を有することにより、表面Wa上でレーザ光Lを掃引可能に構成されてもよい。
【0043】
コリメートレンズ121(121-1,121-2)は、それぞれ、光ファイバ130を介して入力されたレーザ光をコリメートする。コリメートされたレーザ光は、平行光になる。
【0044】
ミラー123は、コリメートレンズ121-1で平行光となった第一レーザ光を反射する。ミラー123で反射した第一レーザ光は、Z方向の反対方向に進み、フィルタ124へ向かう。なお、第一レーザ光が光学ヘッド120においてZ方向の反対方向へ進むように入力される構成にあっては、ミラー123は不要である。
【0045】
フィルタ124は、第一レーザ光を透過し、かつ第二レーザ光を透過せずに反射するハイパスフィルタである。第一レーザ光は、フィルタ124を透過してZ方向の反対方向へ進み、集光レンズ122へ向かう。他方、フィルタ124は、コリメートレンズ121-2で平行光となった第二レーザ光を反射する。フィルタ124で反射した第二レーザ光は、Z方向の反対方向に進み、集光レンズ122へ向かう。
【0046】
集光レンズ122は、平行光としての第一レーザ光および第二レーザ光を集光し、レーザ光L(出力光)として、加工対象Wへ照射する。
【0047】
加工対象Wは、基板11上の導体12とバスバー13とが、Z方向に積層された積層体10である。積層体10は、積層体の一例である。
【0048】
図2は、積層体10の断面図である。積層体10は、導体12と、バスバー13と、溶接部14と、を有している。溶接部14は、導体12とバスバー13とを、機械的かつ電気的に接続している。導体12およびバスバー13は、導電性を有した金属材料で作られており、金属部材とも称されうる。
【0049】
導体12は、基板11の面11a上に設けられている。面11aは、基板11のZ方向の端部に位置し、Z方向と交差するとともに直交して広がっている。面11aは、第一面の一例である。基板11は、絶縁性を有しており、例えば、セラミック基板である。
【0050】
導体12は、一例として、Z方向と交差して広がった板状の形状を有している。ただし、導体12は、板状の部材には限定されない。また、バスバー13も、一例として、Z方向と交差して広がった板状の形状を有している。ただし、バスバー13は、板状の部材には限定されない。バスバー13は、溶接部14によって溶接される部分(以下、被溶接部分と称する)においては、導体12に対してZ方向に隣接して設けられ、導体12に対して当該Z方向に略密着した状態に積層されている。
【0051】
積層体10は、レーザ溶接装置100によって溶接されるに際し、不図示の固定具によって上述した積層状態で一体的に仮止めされ、例えば、表面Waの法線方向がZ方向と略平行となる姿勢で、セットされる。表面Waは、バスバー13の被溶接部分において、Z方向の端部でZ方向と交差するとともに直交して広がっている。表面Waは、バスバー13の被溶接部分のZ方向の端面であり、積層体10のZ方向の端面でもある。
【0052】
レーザ光Lは、光学ヘッド120から、表面Waに対してZ方向の反対方向に向けて、言い換えると、表面Waに対して導体12とは反対側からZ方向に沿って、照射される。表面Waは、レーザ光Lの照射面であり、光学ヘッド120と面した対向面とも称されうる。Z方向は、第一方向の一例である。
【0053】
このようなレーザ光Lの照射により、溶接部14は、表面Waから、Z方向の反対方向に向けて、すなわち導体12に向けて延びることになる。Z方向の反対方向は、溶接部14の深さ方向とも称されうる。また、レーザ光Lが表面Wa上でX方向(掃引方向SD)に掃引されることにより、溶接部14は、図2と略同様の断面形状で、表面Waに沿って、X方向にも延びることになる。X方向は、第二方向の一例であり、溶接部14の長手方向や延び方向とも称されうる。また、Y方向は、溶接部14の幅方向とも称されうる。
【0054】
溶接部14は、表面WaからZ方向の反対方向に延びた溶接金属14aと、当該溶接金属14aの周囲に位置される熱影響部14bと、を有している。溶接金属14aは、レーザ光Lの照射によって溶融し、その後凝固した部位である。溶接金属14aは、溶融凝固部とも称されうる。また、熱影響部14bは、加工対象Wの母材が熱影響を受けた部位であって、溶融はしていない部位である。
【0055】
また、発明者らによる当該断面の詳細な分析により、溶接金属14aは、第一部位14a1と、第二部位14a2と、を含むことが判明した。第一部位14a1は、第一レーザ光の照射によるキーホール型の溶融によって得られた部位であり、第二部位14a2は、第二レーザ光の照射による熱伝導型の溶融によって得られた部位である。図2の例では、第一部位14a1は、溶接部14の幅方向(Y方向)の略中央部において、表面WaからZ方向の反対方向に延びている。第二部位14a2は、第一部位14a1に対してY方向の両側に隣接して位置されている。EBSD法(electron back scattered diffraction pattern、電子線後方散乱回折)による解析により、第一部位14a1と第二部位14a2とでは、結晶粒のサイズが異なっており、具体的には、X方向(掃引方向SD)と直交する断面において、第二部位14a2の結晶粒の断面積の平均値は、第一部位14a1の結晶粒の断面積の平均値よりも大きいことが判明した。発明者らは、実験的な分析により、第二部位14a2内の結晶粒の断面積の平均値は、第一部位14a1内の結晶粒の断面積の平均値の1.8倍以上であることを確認した。
【0056】
また、発明者らの実験的な解析により、図2に示されるように、溶接部14の導体12とバスバー13との溶融前境界BLよりも導体12側の領域Zdにおける第一部位14a1の体積比率が、当該領域Zdにおける第二部位14a2の体積比率よりも小さいのが好ましいことが判明した。これは、第一部位14a1が、領域Zd内、すなわち、導体12内へ深く進入するほど、基板11に対する熱影響が大きくなるからである。
【0057】
また、発明者らの実験的な解析により、溶接金属14aの表面WaにおけるY方向の幅wbに対する溶接金属14aの表面WaからのZ方向の反対方向への深さdmの比(dm/wb、以下アスペクト比と称する)は、0.5以上かつ10以下であるのが好適であることが判明した。これは、アスペクト比が小さすぎると溶接前境界BLにおける溶接金属14aの幅が小さくなって溶接強度が不足し、逆にアスペクト比が大きすぎると溶接金属14aが基板11の面11aへ到達し当該基板11への熱影響が大きくなるからである。このような効果は、第一部位14a1と第二部位14a2とを有しない溶接金属14a、すなわち、第一部位14a1のみまたは第二部位14a2のみを有する溶接金属14aによっても得られる。ただし、発明者らの実験的な解析により、溶接金属14aのアスペクト比が0.5以上かつ10以下となる形態は、光学ヘッド120から第一レーザ光と第二レーザ光とを照射した場合に得られやすいことが、判明した。
【0058】
図3は、半導体装置1の一部の側面図である。半導体装置1は、半導体パワーデバイス20を有したアセンブリ(パッケージ)である。半導体パワーデバイス20は、例えば、IGBT(insulated gate bipolar transistor)であるが、これには限定されない。
【0059】
半導体装置1は、半導体パワーデバイス20の他、絶縁性材料で構成された不図示のハウジングと、基板11と、導体12と、バスバー13,16と、熱伝導体17と、接合層15,18と、放熱部材19と、を備えている。
【0060】
基板11は、板状の形状を有している。基板11は、Z方向と交差するとともに直交して広がっている。基板11は、Z方向の端面としての面11aと、Z方向の反対方向の端面としての面11bと、を有している。面11aと面11bとは、互いに略平行である。面11aは、第一面の一例である。面11bは、第二面とも称されうる。
【0061】
面11a上には、導体12が設けられている。導体12は、Z方向と交差するとともに直交して広がっている。導体12のZ方向の端部には、面12aが設けられている。面12aは、Z方向と交差するとともに直交して広がっている。
【0062】
面12a上には、バスバー13(の被溶接部分)が隣接するとともに、接合層15を介して半導体パワーデバイス20が実装されている。バスバー13は、上述したように溶接部14(図1,2参照)によって導体12と電気的かつ機械的に接続されている。接合層15は、例えばはんだである。接合層15は、半導体パワーデバイス20のZ方向の反対方向の端面に設けられた電極20bと導体12とを電気的かつ機械的に接続している。このような構成により、電極20bとバスバー13とは、接合層15、導体12、および溶接部14を介して、電気的に接続されている。
【0063】
半導体パワーデバイス20のZ方向の端面には、電極20aが設けられている。電極20aは、ボンディングワイヤ21を介して、バスバー16と電気的に接続されている。ボンディングワイヤ21の一端は、はんだ接合や溶接等により電極20aと電気的かつ機械的に接続されている。また、ボンディングワイヤ21の他端は、バスバー16のZ方向の端面16a上に隣接して位置され、光学ヘッド120からのレーザ光L3の照射による溶接により、当該バスバー16と電気的かつ機械的に接続されている。このような構成により、電極20aとバスバー16とは、ボンディングワイヤ21を介して電気的に接続されている。なお、図3では、電極20a、ボンディングワイヤ21、およびバスバー16は、それぞれ一つのみ図示されているが、半導体パワーデバイス20は、互いに電気的に接続された電極20a、ボンディングワイヤ21、およびバスバー16の二つの組み合わせを備えている。ボンディングワイヤ21は、ワイヤの一例である。レーザ光L3は、第三レーザ光の一例である。
【0064】
バスバー13および二つのバスバー16は、それぞれ不図示のハウジングを貫通し、当該ハウジング外に露出している。すなわち、バスバー13,16は、半導体パワーデバイス20の外部端子である。なお、外部端子は、対応するバスバー13,16と電気的に接続された別部材であってもよい。
【0065】
また、基板11の面11b上には、熱伝導体17が設けられている。熱伝導体17は、基板11のZ方向の反対方向に隣接している。また、熱伝導体17は、Z方向と交差するとともに直交して広がっている。熱伝導体17のZ方向の反対側、言い換えると、熱伝導体17に対して基板11とは反対側には、放熱部材19が位置されている。放熱部材19は、接合層18を介して熱伝導体17と熱的かつ機械的に接続されている。接合層18は、例えばはんだである。放熱部材19は、不図示のハウジングを貫通し、当該ハウジング外に露出している。放熱部材19は、ヒートシンクとも称されうる。
【0066】
半導体装置1にあっては、半導体パワーデバイス20から、接合層15、導体12、基板11、熱伝導体17、および接合層18を介して、放熱部材19へ至る伝熱経路(放熱経路)が構成されている。すなわち、接合層15、導体12、基板11、熱伝導体17、および接合層18は、いずれも、熱伝導性の比較的良好な材料で作られる。
【0067】
レーザ光Lの照射による溶接の加工対象Wとしての導体12およびバスバー13、ならびに、レーザ光L3の照射による溶接の加工対象であるバスバー16およびボンディングワイヤ21のそれぞれは、導電性を有した金属材料で作られ得る。このような金属材料は、例えば、銅系金属材料や、アルミニウム系金属材料、ニッケルめっきが施された金属材料などであり、具体的には、銅や、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケルめっきが施された銅、ニッケルめっきが施された銅合金、ニッケルめっきが施されたアルミニウム、ニッケルめっきが施されたアルミニウム合金等である。導体12およびバスバー13は、同じ材料で作られてもよいし、異なる材料で作られてもよい。また、熱伝導体17は、導体12と同じ材質で作られるのが好適であるが、導体12とは異なる材料で作られてもよい。
【0068】
図4は、表面Wa上に照射されたレーザ光Lのビーム(スポット)を示す模式図である。ビームB1およびビームB2のそれぞれは、そのビームの光軸方向と直交する断面の径方向において、たとえばガウシアン形状のパワー分布を有する。ただし、ビームB1およびビームB2のパワー分布はガウシアン形状に限定されない。また、図4のように各ビームB1,B2を円で表している各図において、当該ビームB1,B2を表す円の直径が、各ビームB1,B2のビーム径である。各ビームB1,B2のビーム径は、そのビームのピークを含み、ピーク強度の1/e以上の強度の領域の径として定義する。なお、図示されないが、円形でないビームの場合は、掃引方向SDと垂直方向における、ピーク強度の1/e以上の強度となる領域の長さをビーム径と定義できる。また、表面Waにおけるビーム径は、スポット径と称する。
【0069】
図4に示されるように、本実施形態では、一例として、レーザ光Lのビームは、表面Wa上において、第一レーザ光のビームB1と第二レーザ光のビームB2とが重なり、ビームB2がビームB1よりも大きく(広く)、かつ、ビームB2の外縁B2aがビームB1の外縁B1aを取り囲むよう、形成されている。この場合、ビームB2のスポット径D2は、ビームB1のスポット径D1よりも大きい。表面Wa上において、ビームB1は、第一スポットの一例であり、ビームB2は、第二スポットの一例である。
【0070】
また、本実施形態では、図4に示されるように、表面Wa上において、レーザ光Lのビーム(スポット)は、中心点Cに対する点対称形状を有しているため、任意の掃引方向SDについて、スポットの形状は同じになる。よって、レーザ光Lの表面Wa上での掃引のために光学ヘッド120と加工対象Wとを相対的に動かす移動機構を備える場合、当該移動機構は、少なくとも相対的に並進可能な機構を有すればよく、相対的に回転可能な機構は省略できる場合がある。
【0071】
[波長と光の吸収率]
ここで、金属材料の光の吸収率について説明する。図5は、照射するレーザ光Lの波長に対する各金属材料の光の吸収率を示すグラフである。図5のグラフの横軸は波長であり、縦軸は吸収率である。図5には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、およびチタン(Ti)について、波長と吸収率との関係が示されている。
【0072】
材料によって特性が異なるものの、図5に示されている各金属に関しては、一般的な赤外線(IR)のレーザ光(第一レーザ光)を用いるよりも、青や緑のレーザ光(第二レーザ光)を用いた方が、エネルギの吸収率がより高いことが理解できよう。この特徴は、銅(Cu)や、金(Au)等においては顕著となる。
【0073】
使用波長に対して吸収率が比較的低い加工対象Wにレーザ光が照射された場合、大部分の光エネルギは反射され、加工対象Wに熱としての影響を及ぼさない。そのため、十分な深さの溶融領域を得るには比較的高いパワーを与える必要がある。その場合、ビーム中心部は急激にエネルギが投入されることで、昇華が生じ、キーホールが形成される。
【0074】
他方、使用波長に対して吸収率が比較的高い加工対象Wにレーザ光が照射された場合、投入されるエネルギの多くが加工対象Wに吸収され、熱エネルギへと変換される。すなわち、過度なパワーを与える必要はないため、キーホールの形成を伴わず、熱伝導型の溶融となる。
【0075】
本実施形態では、加工対象Wの第二レーザ光に対する吸収率が、第一レーザ光に対する吸収率よりも高くなるよう、第一レーザ光の波長、第二レーザ光の波長、および加工対象Wの材質が、選択される。この場合、掃引方向が図5に示される掃引方向SDである場合、レーザ光Lのスポットの掃引により、加工対象Wの溶接される部位(以下、被溶接部位と称する)には、まずは、第二レーザ光のビームB2の、図5におけるSDの前方に位置する領域B2fによって、第二レーザ光が照射される。その後、被溶接部位には、第一レーザ光のビームB1が照射され、その後、第二レーザ光のビームB2の、掃引方向SDの後方に位置する領域B2bによって、再度第二レーザ光が照射される。
【0076】
したがって、被溶接部位には、まずは、領域B2fにおける吸収率が高い第二レーザ光の照射により、熱伝導型の溶融領域が生じる。その後、被溶接部位には、第一レーザ光の照射によって、より深いキーホール型の溶融領域が生じる。この場合、被溶接部位には、予め熱伝導型の溶融領域が形成されているため、当該熱伝導型の溶融領域が形成されない場合に比べて、より低いパワーの第一レーザ光によって所要の深さの溶融領域を形成することができる。さらにその後、被溶接部位には、領域B2bにおける吸収率が高い第二レーザ光の照射により、溶融状態が変化する。このような観点から、第二レーザ光の波長は550[nm]以下が好ましく、500[nm]以下がより好ましい。
【0077】
また、発明者らの実験的な研究により、図4のようなビームのレーザ光Lの照射による溶接にあっては、スパッタやブローホールのような溶接欠陥を低減できることが確認されている。これは、ビームB1が到来する前にビームB2の領域B2fによって加工対象Wを予め加熱しておくことにより、ビームB2およびビームB1によって形成される加工対象Wの溶融池がより安定化するためであると推定できる。
【0078】
[溶接方法]
レーザ溶接装置100を用いた溶接にあっては、まず、不図示の保持具によって導体12とバスバー13とが一体的に仮止めされた積層体10が、レーザ光Lが表面Waに照射されるようにセットされる。そして、ビームB1およびビームB2を含むレーザ光Lが表面Waに照射されている状態で、レーザ光Lと積層体10とが相対的に動かされる。これにより、レーザ光Lが表面Wa上に照射されながら当該表面Wa上を掃引方向SDに移動する(掃引する)。レーザ光Lが照射された部分は、溶融し、その後、温度の低下に伴って凝固することにより、導体12とバスバー13とが溶接され、積層体10が一体化される(第一ステップ)。
【0079】
次に、不図示の保持具によってボンディングワイヤ21とバスバー16とが一体的に仮止めされた積層体が、レーザ光L3がボンディングワイヤ21に照射されるようにセットされレーザ光L3が照射される。レーザ光L3が照射された部分は、溶融し、その後、温度の低下に伴って凝固することにより、ボンディングワイヤ21とバスバー16とが溶接され一体化される(第二ステップ)。
【0080】
[DOE]
また、図1に示されるように、光学ヘッド120は、コリメートレンズ121-1とミラー123との間に、DOE125を有している。
【0081】
DOE125は、第一レーザ光のビームB1の形状(以下、ビーム形状と称する)を成形する。図6に概念的に例示されるよう、DOE125は、例えば、周期の異なる複数の回折格子125aが重ね合わせられた構成を備えている。DOE125は、平行光を、各回折格子125aの影響を受けた方向に曲げたり、重ね合わせたりすることにより、ビーム形状を成形することができる。DOE125は、ビームシェイパとも称されうる。
【0082】
なお、光学ヘッド120は、コリメートレンズ121-2の後段に設けられ第二レーザ光のビーム形状を調整するビームシェイパや、フィルタ124の後段に設けられ第一レーザ光および第二レーザ光のビーム形状を調整するビームシェイパ等を有してもよい。ビームシェイパによってレーザ光Lのビーム形状を適宜に整えることにより、溶接において溶接欠陥の発生をより一層抑制することができる。また、DOE125により、第一レーザ光のビームを、複数のビームに分割することができる。
【0083】
[レーザ光のパワー密度]
図7は、加工対象Wの表面Wa上における第一レーザ光のパワー密度Pd1と第二レーザ光のパワー密度Pd2との組み合わせにおける溶接の実験結果を示すグラフである。図7中、「○」は、ブローホールが非常に少なかった場合(優)、「△」は、ブローホール数が少なかった場合、また、「×」は、ブローホールが多かった場合(不可)を示す。ここでは、一例として、「優」は、線状の溶接部位の単位長さ(例えば、1[cm])あたりのブローホール数が1個以下であった場合を示し、「良」は、溶接部位の単位長さあたりのブローホール数が2個以上かつ5個未満である場合を示し、「不可」は、溶接部位の単位長さあたりのブローホール数が5個以上であった場合を示す。また、この実験において、第一レーザ光の波長は、1070[nm]、出力は、1.0または1.3[kW]であり、第二レーザ光の波長は、465[nm]、出力は、150[W]であった。
【0084】
図7に示されるように、第二レーザ光のパワー密度Pd2が、0.15[MW/cm]以上かつ5.0[MW/cm]以下である場合に、ブローホール数を抑制できることが判明した。さらに、第二レーザ光のパワー密度Pd2が0.15[MW/cm]以上かつ1.5[MW/cm」以下であると、ブローホール数をより一層抑制できることができ、より一層好ましいことが判明した。これは、第二レーザ光のパワー密度Pd2が0.15[MW/cm](下限値)未満である場合には、銅板表面に吸収される光エネルギ量が不足することにより予熱効果が充分には得られず、1.5[MW/cm]を超える場合には第二レーザ光における加工と第一レーザ光における加工の相互作用により溶接形状の不安定化につながるためである。
【0085】
[バスバーの厚さ、各ビームのスポット径、各ビームのパワー]
また、発明者らは、実験的な解析により、バスバー13の厚さ、各ビームB1,B2の表面Wa上におけるビーム径(スポット径)、および各ビームB1,B2のパワーについて、積層体10において好適な溶接状態が得られる条件を見いだした。ここで、好適な溶接状態とは、ブローホールの状態が上記の「優」または「良」であることを意味する。
【0086】
発明者らの実験的な解析により、バスバー13の、Z方向における厚さT(図2参照)が、0.2[mm]以上かつ1[mm]以下である場合にあっては、
ビームB1によるスポット径(第一スポット径)が、14[μm]以上かつ150[μm]以下であり、かつ、
ビームB1のパワー(レーザ装置111の出力)が、0.3[kW]以上かつ2[kW]以下であり、かつ、
ビームB2によるスポット径(第二スポット径)が、100[μm]以上かつ900[μm]以下であり、かつ、
ビームB1のパワー(レーザ装置112の出力)が、0.01[kW]以上かつ1[kW]以下である場合に、好適な溶接状態が得られることが、判明した。
【0087】
[エネルギ密度]
また、発明者らは、当該実験的な解析において、積層体10の単位体積あたりのレーザ光の照射のエネルギ密度という新規な指標を導入し、当該エネルギ密度について、好適な溶接状態が得られる条件を見いだした。当該エネルギ密度は、以下の式(1)で表すことができる。
=P/(V×D×Ta) ・・・ (1)
ここに、Eは、エネルギ密度[J/mm]、Pは、レーザ装置によるレーザ光のパワー[W]、Vは、掃引速度[mm/s]、Dは、表面Waにおけるスポット径[mm]、Taは、積層体10のZ方向の厚さ[mm]である。ここでは、下付のnにより、各パラメータを区別しており、n=1は、第一レーザ光のパラメータ、n=2は、第二レーザ光のパラメータを示す。
【0088】
発明者らの実験的解析によれば、導体12とバスバー13との積層体10のZ方向の厚さが0.2[mm]以上かつ1[mm]以下である場合においては、ビームB1のエネルギ密度Eが、120[J/mm]以上であり、かつ、ビームB2のエネルギ密度Eが、5[J/mm]以上かつ50[J/mm]以下である場合に、好適な溶接状態が得られることが判明した。
【0089】
[ボンディングワイヤとバスバーとの溶接条件]
また、発明者らは、ボンディングワイヤ21とバスバー16との溶接についても、実験的な解析を行い、好適な溶接条件を見いだした。
【0090】
発明者らの実験的な解析により、レーザ装置112からのレーザ光(第二レーザ光)のみを含み、すなわち、レーザ光L3の波長は、550[nm]以下、より好ましくは400[nm]以上かつ500[nm]以下であり、
レーザ光L3のボンディングワイヤ21の被照射面が当該レーザ光L3の照射方向と垂直な平面である場合の当該平面上に形成されるスポット(第三スポット)のスポット径が、50[μm]以上かつ800[μm]以下であり、かつ、
レーザ光L3のパワー(レーザ装置112の出力)が、0.05[kW]以上かつ2[kW]以下であり、かつ、
レーザ光L3の一箇所あたりの照射時間が、0.05[s]以上かつ0.5[s]以下である場合に、好適な溶接状態が得られることが、判明した。この場合、ボンディングワイヤ21とバスバー16との溶接形態は、レーザ光L3によるスポット溶接となる。
【0091】
ボンディングワイヤ21に関し、電動車両用のパワーモジュール等では、従来のアルミニウム系材料で作られたボンディングワイヤ21から、より電導率の高い銅系材料で作られたボンディングワイヤ21への変更が、求められている。ここで、銅系材料で作られたボンディングワイヤ21は、アルミニウム系材料で作られたボンディングワイヤ21に比べて剛性が高いため、例えば、接合前の状態において隙間があるような場合にあっては、ボンディングワイヤ21から接合部材に作用する力が大きくなりやすい。界面に薄く合金層を形成する接合であるはんだ接合の場合には、ボンディングワイヤ21から作用する力に耐えられなくなる虞があるため、各部材の寸法管理を厳しくせざるを得ない場合もある。これに対し、レーザ溶接の場合には、溶接部が二つの部材間に渡って形成されるとともに、溶接部がはんだ接合の場合と比較してより深く二つの部材の内部に進入した状態が得られるため、より強固なかつより確実な接合状態が得られる。さらに、400[nm]以上かつ500[nm]以下のレーザ光L3の照射によるレーザ溶接によれば、熱伝導型の溶接となり、溶融池の湯面が安定するとともに溶融池が大きくより広い溶融領域が得られるため、接合前の状態において隙間があるような場合にも、所要の接合状態が得られやすい。また、内部空隙のような溶接欠陥を抑制することができるため、電気抵抗が小さくかつより強固な接合状態を得ることができる。
【0092】
また、図8は、レーザ光L3の照射時間Trとレーザ光L3による加工対象の表面(ボンディングワイヤ21の表面)上におけるレーザ光L3のパワー密度Pd3との組み合わせにおける溶接の実験結果を示すグラフである。図8中の結果を示す印の意味は、図7と同じである。
【0093】
図8に示されるように、レーザ光L3のパワー密度Pd3が、0.2[MW/cm]以上かつ1.3[MW/cm]以下である場合に、ブローホール数を抑制できることが判明した。
【0094】
また、レーザ光L3による溶接部にあっては、溶接金属の表面Waでの幅に対する溶接金属の表面Waからの深さの比が、0.5以上かつ1.5以下であるのが好ましいことが判明した。
【0095】
以上、説明したように、本実施形態の半導体装置1およびその内部導体の溶接方法にあっては、例えば、導体12とバスバー13とを接合する溶接部14を、レーザ光Lの照射によって形成し、当該レーザ光Lは、800[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長のビームB1と550[nm]以下の波長のビームB2とを含む。
【0096】
また、本実施形態では、例えば、第二レーザ光の波長は、400[nm]以上かつ500[nm]以下である。
【0097】
また、本実施形態では、例えば、溶接部14の溶接金属14aは、第一部位14a1と、Z方向(第一方向)に沿った断面における結晶粒の断面積の平均値が第一部位14a1よりも大きい第二部位14a2と、を有している。
【0098】
また、本実施形態では、例えば、溶接金属14aの導体12とバスバー13との溶融前境界BLよりも導体12側の領域Zdにおける第一部位14a1の体積比率が、当該領域Zdにおける第二部位14a2の体積比率よりも小さい。
【0099】
また、本実施形態では、例えば、溶接金属14aの表面Waでの幅wbに対する溶接金属14aの表面Waからの深さdmの比が、0.5以上かつ10以下である。
【0100】
このような構成および方法によれば、例えば、所要の接合強度を確保しながら、スパッタやブローホールのような溶接欠陥の少ないより高品質な溶接を実行することができる上、基板11や半導体パワーデバイス20等に対する熱影響を抑制することができる。これにより、内部に溶接により飛散したスパッタ等の無い高品質な溶接構造を有した半導体装置1を得ることができる。
【0101】
また、本実施形態では、例えば、第一レーザ光と第二レーザ光とを含むレーザ光Lが表面Wa上でX方向(第二方向、掃引方向SD)掃引され、溶接部14は、表面Waに沿って当該X方向に沿って延びている。
【0102】
また、本実施形態では、例えば、表面Wa上において、第二レーザ光のビームB2(第二スポット)の少なくとも一部は、第一レーザ光のビームB1(第一スポット)よりも掃引方向SDの前方に位置している。
【0103】
また、本実施形態では、例えば、表面Wa上において、ビームB1とビームB2とは少なくとも部分的に重なっている。
【0104】
また、本実施形態では、例えば、表面Wa上において、ビームB2は、ビームB1よりも広い。
【0105】
また、本実施形態では、例えば、表面Wa上において、ビームB2の外縁B2a(第二外縁)は、ビームB1の外縁B1a(第一外縁)を取り囲んでいる。
【0106】
上述したように、発明者らは、表面Wa上にこのようなビームB1,B2を形成するレーザ光Lの照射による溶接にあっては、溶接欠陥をより一層低減できることを確認した。これは、上述したように、ビームB1が到来する前にビームB2の領域B2fによって加工対象Wを予め加熱しておくことにより、ビームB2およびビームB1によって形成される加工対象Wの溶融池がより安定化するためであると推定できる。よって、このようなビームB1,B2を有したレーザ光Lによれば、例えば、より溶接欠陥の少ないより溶接品質の高い溶接を実行することができる。また、このようなビームB1,B2の設定によれば、例えば、第一レーザ光のパワーをより低くすることができるという利点も得られる。また、ビームB1とビームB2とが同軸で照射される場合にあっては、光学ヘッド120と加工対象Wとの相対的な回転が不要となるという利点も得られる。
【0107】
また、本実施形態では、例えば、導体12、バスバー13,16、ボンディングワイヤ21(ワイヤ)のそれぞれは、銅系金属材料、アルミニウム系金属材料、およびニッケルめっきが施された金属材料のうちのいずれか一つで作られる。
【0108】
本実施形態の溶接方法による効果は、導体12、バスバー13,16、ボンディングワイヤ21のそれぞれが上記材料のうちのいずれかで作られている場合に、得られる。
【0109】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態の半導体装置1Aの積層体10の断面図である。図9に示されるように、本実施形態では、導体12とバスバー13との間に、敢えて隙間gが設けられている。また、レーザ光Lは、レーザ装置111からの第一レーザ光のみを含んでおり、溶接部14A中の溶接金属14aは、第一部位14a1のみを含んでいる。この場合、溶接金属14aは、バスバー13を貫通して、隙間g内に漏出する。これにより、溶接金属14aは、隙間g内に介在する介在部位14cを有することになる。導体12とバスバー13とは、介在部位14cにより電気的かつ機械的に接合される。このような構成および方法によれば、溶接部14が導体12内に深く進入するのを抑制することができるため、溶接部14による基板11への熱影響をより一層抑制することができる。
【0110】
[第3実施形態]
図10は、第3実施形態の半導体装置1Bの積層体10の断面図であり、図11は、本実施形態の半導体装置1Bの一部の平面図である。図10,11から明らかとなるように、本実施形態では、溶接部14Bは、一つのバスバー13について、X方向に離間した複数箇所に、スポット溶接として形成されている。発明者らの実験的な解析により、このようなスポット溶接の場合においても、加工対象Wの表面Wa近傍においてより吸収率の高い第二レーザ光による熱伝導型の溶融が生じることが、加工対象Wに対して予熱効果を与えることになり、第一レーザ光が単独で照射される場合に比べて、よりスパッタやブローホールの少ない高品質な溶接部14Bが得られることが判明した。発明者らの実験的な解析によれば、この場合のレーザ光Lの照射時間は、0.01[s]以上かつ0.5[s]以下であるのが好適であることが判明した。
【0111】
[第4実施形態]
図12は、第4実施形態の半導体装置1Cの側面図である。図12に示されるように、本実施形態では、基板11の面11a上には、導体12とは別に、当該導体12とは絶縁された導体12Cが設けられている。導体12Cには、バスバー16が溶接されるとともに、ボンディングワイヤ21が溶接されている。導体12Cとバスバー16との溶接は、光学ヘッド120からのレーザ光Lの照射により、導体12とバスバー13との溶接と同様の溶接条件で行われる。すなわち、導体12Cと、当該導体12Cに対してZ方向に隣接するとともに面12Ca上に積層されたバスバー16と、を有する積層体10C(加工対象W)に、レーザ光Lが照射されることにより、導体12とバスバー13との溶接部14と同様の溶接部14(図2参照、図12には不図示)が形成される。レーザ光Lは、バスバー16のZ方向の端面16a(表面Wa)に照射される。
【0112】
他方、ボンディングワイヤ21と導体12Cとの溶接は、導体12Cに対してZ方向に隣接するとともに面12Ca上に積層されたボンディングワイヤ21の端部に対する光学ヘッド120からのレーザ光L3の照射により、第1実施形態におけるボンディングワイヤ21とバスバー16との溶接と同様の溶接条件で行われる。このような本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0113】
[ビームの配置の変形例]
図13,14は、表面Wa上に形成されたレーザ光のビームB1,B2の例を示している。発明者らの研究により、表面Wa上において、図13,14のように、ビームB2(第二スポット)の少なくとも一部がビームB1(第一スポット)よりも掃引方向SDの前方に位置している場合、およびビームB1とビームB2とが互いに接するかあるいは少なくとも部分的に重なっている場合においては、ビームB2の予熱効果による第1実施形態と同様の効果が得られることが判明している。また、ビームB2の少なくとも一部がビームB1よりも掃引方向SDの前方に位置している場合にあっては、ビームB1とビームB2とは微少距離離間していてもよいことも判明している。なお、図13,14は、それぞれ一例に過ぎず、ビームB1,B2の配置や各ビームB1,B2のサイズは、図13,14の例には限定されない。
【0114】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0115】
また、加工対象に対してレーザ光を掃引する際に、公知のウォブリングやウィービングや出力変調等により掃引を行い、溶融池の表面積を調節するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1,1A~1C…半導体装置
10,10C…積層体
11…基板
11a…面(第一面)
11b…面(第二面)
12,12C…導体
12a,12Ca…面
13…バスバー
14,14A,14B…溶接部
14a…溶接金属
14a1…第一部位
14a2…第二部位
14b…熱影響部
14c…介在部位
15…接合層
16…バスバー
16a…端面
17…熱伝導体
18…接合層
19…放熱部材
20…半導体パワーデバイス
20a,20b…電極
21…ボンディングワイヤ(ワイヤ)
100…レーザ溶接装置(溶接装置)
111…レーザ装置(第一レーザ発振器)
112…レーザ装置(第二レーザ発振器)
120…光学ヘッド
121,121-1,121-2…コリメートレンズ
122…集光レンズ
123…ミラー
124…フィルタ
125…DOE(回折光学素子)
125a…回折格子
130…光ファイバ
B1…ビーム(第一スポット)
B1a…外縁
B2…ビーム(第二スポット)
B2a…外縁
B2b…領域
B2f…領域
BL…境界
C…中心点
D1…スポット径(外径)
D2…スポット径(外径)
…スポット径
dm…深さ
,E,E…エネルギ密度
g…隙間
L…レーザ光
L3…レーザ光(第三レーザ光)
Pd1~Pd3…パワー密度
…パワー
SD…掃引方向
T…(バスバーの)厚さ
Tr…照射時間
V…掃引速度
W…加工対象
Wa…表面
wb…(溶接金属の表面での)幅
X…方向(第二方向)
Y…方向
Z…方向(第一方向)
Zd…領域
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14