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特許7687984磁気冷凍材料の製造方法及び磁気冷凍材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】磁気冷凍材料の製造方法及び磁気冷凍材料
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/01 20060101AFI20250527BHJP
   F25B 21/00 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
H01F1/01 120
F25B21/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022048219
(22)【出願日】2022-03-24
(65)【公開番号】P2023141739
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-02-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】福田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】久米 哲也
(72)【発明者】
【氏名】廣田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】中村 元
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05887449(US,A)
【文献】特開2009-204234(JP,A)
【文献】国際公開第2011/039804(WO,A1)
【文献】特開2014-015678(JP,A)
【文献】特開2018-080853(JP,A)
【文献】国際公開第2013/147177(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/138648(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/00- 1/01
F25B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)を満たす第1の磁気冷凍材料と、前記第1の磁気冷凍材料と異なり、下記式(2)を満たす第2の磁気冷凍材料を用意する工程、及び
前記第1の磁気冷凍材料及び前記第2の磁気冷凍材料を混合して第3の磁気冷凍材料を得る工程を含み、
前記第3の磁気冷凍材料における前記第1の磁気冷凍材料の含有量(A)及び前記第2の磁気冷凍材料の含有量(A)の合計100質量部に対する前記第1の磁気冷凍材料の含有量(A)及び前記第2の磁気冷凍材の含有量(A)が下記の式(3)~(4)を満たし、
前記第1の磁気冷凍材料及び前記第2の磁気冷凍材料がR-Fe-Si系合金(Rは希土類元素)及びR-Fe-Si-H系合金(Rは希土類元素)からなる群から選ばれる少なくとも1種の合金を含む磁気冷凍材料の製造方法。
-0.9≦(T1-T)/W≦0.9 (1)
-0.9≦(T1-T)/W≦0.9 (2)
((T-T)/(T-T))×100-20≦A≦((T-T)/(T-T))×100+20 (3)
((T-T)/(T1-T))×100-20≦A≦((T-T)/(T1-T))×100+20 (4)
ここで、Tは前記第1の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Tは前記第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Wは前記第1の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表し、Wは前記第2の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表し、Tは前記第3の磁気冷凍材料の目標の磁気転移温度(K)を表す。
【請求項2】
前記第1の磁気冷凍材料及び前記第2の磁気冷凍材料のうちの少なくとも1種の磁気冷凍材料が、2種類の磁気冷凍材料を混合した材料であり、
前記2種類の磁気冷凍材料において、前記2種類の磁気冷凍材料の磁気転移温度の間の差分を、磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅で割り算した値の絶対値がそれぞれ0.9以下である請求項1に記載の磁気冷凍材料の製造方法。
【請求項3】
前記第1の磁気冷凍材料が下記式(5)をさらに満たし、前記第2の磁気冷凍材料が下記式(6)をさらに満たす請求項1又は2に記載の磁気冷凍材料の製造方法。
-0.4≦(T1-T)/W≦0.4 (5)
-0.4≦(T1-T)/W≦0.4 (6)
ここで、Tは前記第1の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Tは前記第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Wは前記第1の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表し、Wは前記第2の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表す。
【請求項4】
前記第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度(T)(K)と目標の磁気転移温度(T)(K)との間の差分(T-T)の絶対値が0.7K以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気冷凍材料の製造方法。
【請求項5】
下記式(7)を満たす第1の磁気冷凍材料と、前記第1の磁気冷凍材料と異なり、下記式(8)を満たす第2の磁気冷凍材料を少なくとも含有し、
前記第1の磁気冷凍材料及び前記第2の磁気冷凍材料がR-Fe-Si系合金(Rは希土類元素)及びR-Fe-Si-H系合金(Rは希土類元素)からなる群から選ばれる少なくとも1種の合金を含む磁気冷凍材料。
-0.9≦(T1-T)/W≦0.9 (7)
-0.9≦(T1-T)/W≦0.9 (8)
ここで、Tは前記第1の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Tは前記第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Wは前記第1の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表し、Wは前記第2の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気転移温度を精密に制御することが出来る磁気冷凍材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フロン類がオゾン層破壊物質であり地球温暖化ガスでもあることから、環境保全のためにフロンを用いない新規冷凍空調システムが注目されている。フロンに代わる冷媒の開発が活発に行われているが、性能、コスト及び安全性の面において満足できる新規冷媒の実用化には至っていない。
【0003】
一方、従来の冷凍空調システムとは異なり、磁場の増大に伴うエントロピーの変化(磁気熱量効果、ΔS)を利用する磁気冷凍システムが注目されている。ΔSの絶対値が大きな材料としてはMn(As1-xSb)(特許文献1)やLa(Fe1-xSi13(特許文献2)等が挙げられる。特に前者はΔSが-30J/kgKと非常に大きく、優れた磁気冷凍材料になりうる。しかし、Mn(As1-xSb)の成分のAsが毒性を示すため実質的には適用が困難である。La(Fe1-xSi13は、ΔSが~25J/kgKとMn(As1-xSb)に次いで大きく、かつ構成元素は毒性を示さず、レアメタルではないことから最も有望視されている物質である。また、ΔSの変化は磁気熱量効果を示す物質のキュリー温度(T)付近に限られ、一種類の材料ではある一点の温度でしか動作できないため、実質的に広い温度差を作り出す必要がある冷凍システムはできない。そこで、動作温度を変化させるために成分の一部を他の元素で置換するといった方法がとられる。
【0004】
これらの物質は室温近傍(-70~+70℃程度)で動作することが要件となる。しかし、気体冷凍では生成が困難な極低温を生成する手段として用いられてきた従来の磁気冷凍とは異なり、上記動作温度では格子振動が無視できないために磁気熱量効果が低下するという問題があった。この格子振動を蓄熱効果として利用するAMR(Active Magnetic Regenerative)サイクルが開発され、磁気熱量効果を利用した室温近傍での冷凍空調システムが現実味を帯びてきた。
【0005】
AMRサイクルでは水等の熱媒体が通過可能な隙間を有した状態で磁気冷凍材料が充填される(ベッド部と呼ばれる)。熱媒体は隙間を通じて高温端および低温端に移動できる。低温端側に熱媒体がある状態で、永久磁石等で磁場をベッド部に印加し磁気冷凍材料のエントロピーを低下させ、磁気冷凍材料の温度を上昇させる。熱媒体を低温端側から高温端側に移動させる。このとき、熱媒体は磁気冷凍材料から熱を受け取って、高温端側に移動し、高温端で熱交換器を用いて排熱する。続いて永久磁石の磁場を取り去り磁気冷凍材料のエントロピーが上昇するとともに温度が低下する。熱媒体を高温端側から低温端側に移動させる。このとき、熱媒体は磁気冷凍材料により冷却される。冷却された熱媒体は熱交換器で吸熱する。このサイクルを繰り返していくことで、高温端と低温端との間に温度差を発生させ、冷凍サイクルが作られる。
【0006】
AMRサイクルにおいて、単一組成の材料で発生することのできる温度差は材料にもよるが2~10K程度である。冷蔵庫や空調などの用途で求められるような大きな温度差を発生させるためには、異なる磁気転移温度(T)を持つ磁気冷凍材料を高温端側から低温端側にかけてTが高いものから低いものへと順に充填(カスケード充填)し、隣合う磁気冷凍材料間で熱交換を行うことで大きな温度差が生成可能となる。この時、熱交換が行われるためには隣合う磁気冷凍材料間で作動温度がある程度オーバーラップする必要がある。そのためカスケードを構成する各磁気冷凍材料は材料の半値幅を考慮しながらTが制御されている必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-28532号公報
【文献】特開2006-89839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、カスケード充填を利用したAMRサイクルの熱交換の効率をさらに改善するためには、カスケードを構成する各磁気冷凍材料の磁気転移温度(T)をさらに精度よく調整する必要がある。例えば、有望な材料であるLa(Fe1-xSi13の場合、Tを調整したとしても、目標のTに対して1K程度の製造ばらつきが生じる恐れがある。Tが目標からずれた材料をAMR装置に組み込んで稼働させた場合、Tのばらつきによりカスケードのつながりが悪くなることで目標とした温度差が発生しない、温度差発生にかかる時間が長くなる、などの性能劣化が発生しやすい。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、磁気冷凍材料の磁気転移温度を精度よく調整することができる磁気冷凍材料の製造方法及び磁気転移温度を精度よく調整することができる磁気冷凍材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、転移温度差/半値幅が0.9以下であり、磁気転移温度が異なる2種以上の磁気冷凍材料を所定の割合で混合することにより、目標の磁気転移温度に0.7K以内の精度で磁気冷凍材料の磁気転移温度を調整できることを見出し、本発明を完成したものである。
即ち、本発明は以下の[1]~[5]の手段を提供する。
[1]下記式(1)を満たす第1の磁気冷凍材料と、前記第1の磁気冷凍材料と異なり、下記式(2)を満たす第2の磁気冷凍材料を用意する工程、及び
前記第1の磁気冷凍材料及び前記第2の磁気冷凍材料を混合して第3の磁気冷凍材料を得る工程を含み、
前記第3の磁気冷凍材料における前記第1の磁気冷凍材料の含有量(A)及び前記第2の磁気冷凍材料の含有量(A)の合計100質量部に対する前記第1の磁気冷凍材料の含有量(A)及び前記第2の磁気冷凍材の含有量(A)が下記の式(3)~(4)を満たす磁気冷凍材料の製造方法。
-0.9≦(T1-T)/W≦0.9 (1)
-0.9≦(T1-T)/W≦0.9 (2)
((T-T)/(T-T))×100-20≦A≦((T-T)/(T-T))×100+20 (3)
((T-T)/(T1-T))×100-20≦A≦((T-T)/(T1-T))×100+20 (4)
ここで、Tは前記第1の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Tは前記第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Wは前記第1の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表し、Wは前記第2の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表し、Tは前記第3の磁気冷凍材料の目標の磁気転移温度(K)を表す。
[2]前記第1の磁気冷凍材料及び前記第2の磁気冷凍材料のうちの少なくとも1種の磁気冷凍材料が、2種類の磁気冷凍材料を混合した材料であり、
前記2種類の磁気冷凍材料において、前記2種類の磁気冷凍材料の磁気転移温度の間の差分を、磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅で割り算した値の絶対値がそれぞれ0.9以下である上記[1]に記載の磁気冷凍材料の製造方法。
[3]前記第1の磁気冷凍材料が下記式(5)をさらに満たし、前記第2の磁気冷凍材料が下記式(6)をさらに満たす上記[1]又は[2]に記載の磁気冷凍材料の製造方法。
-0.4≦(T1-T)/W≦0.4 (5)
-0.4≦(T1-T)/W≦0.4 (6)
ここで、Tは前記第1の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Tは前記第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Wは前記第1の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表し、Wは前記第2の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表す。
[4]前記第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度(T)(K)と目標の磁気転移温度(T)(K)との間の差分(T-T)の絶対値が0.7K以下である上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の磁気冷凍材料の製造方法。
[5]下記式(7)を満たす第1の磁気冷凍材料と、前記第1の磁気冷凍材料と異なり、下記式(8)を満たす第2の磁気冷凍材料を少なくとも含有し、磁気転移温度と目標の磁気転移温度との間の差分の絶対値が0.7K以下である磁気冷凍材料。
-0.9≦(T1-T)/W≦0.9 (7)
-0.9≦(T1-T)/W≦0.9 (8)
ここで、Tは前記第1の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Tは第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Wは前記第1の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表し、Wは前記第2の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表す。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁気転移温度(T)を精度よく調整できる磁気冷凍材料を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は実施例1のΔS-T特性を示す図である。
図2図2は比較例1のΔS-T特性を示す図である。
図3図3は実施例9のΔS-T特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[磁気冷凍材料の製造方法]
本発明の磁気冷凍材料の製造方法は、下記式(1)を満たす第1の磁気冷凍材料と、第1の磁気冷凍材料と異なり、下記式(2)を満たす第2の磁気冷凍材料を用意する工程、及び第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料を混合して第3の磁気冷凍材料を得る工程を含み、第3の磁気冷凍材料における第1の磁気冷凍材料の含有量(A)及び第2の磁気冷凍材料の含有量(A)の合計100質量部に対する第1の磁気冷凍材料の含有量(A)(質量部)及び第2の磁気冷凍材の含有量(A)(質量部)が下記の式(3)~(4)を満たす。
-0.9≦(T1-T)/W≦0.9 (1)
-0.9≦(T1-T)/W≦0.9 (2)
((T-T)/(T-T))×100-20≦A≦((T-T)/(T-T))×100+20 (3)
((T-T)/(T1-T))×100-20≦A≦((T-T)/(T1-T))×100+20 (4)
ここで、Tは第1の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Tは第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Wは第1の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表し、Wは第2の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表し、Tは第3の磁気冷凍材料の目標の磁気転移温度を表す。なお、AMRサイクルにおいて、磁気転移温度が高いものから低いものへと順にヘッド部に磁気冷凍材料を充填する。このため、磁気転移温度が高いものから低いものへと順に磁気転移温度を変更した複数の磁気冷凍材料が要求される。第3の磁気冷凍材料の目標の磁気転移温度(T)は、例えば、AMRサイクルのヘッド部を構成する磁気冷凍材料として要求される磁気転移温度である。
【0014】
本発明の磁気冷凍材料の製造方法で使用する第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料は、室温域において大きな磁気熱量効果を安定して得られるという観点及び毒性元素を含まないという観点から、主成分がNaZn13型構造を有するR-Fe-Si系合金(Rは希土類元素)及びR-Fe-Si-H系合金(Rは希土類元素)からなる群から選ばれる少なくとも1種の合金を含むことが好ましい。ここで、R-Fe-Si系合金は、常法に従い、溶解・鋳造、及び均質化処理をすることで得ることが出来る。また、R-Fe-Si-H系合金は、常法に従い、溶解・鋳造、均質化処理、及び水素化処理をすることで得ることが出来る。なお、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料における上記合金の含有量は、それぞれ、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。
【0015】
主成分がNaZn13型構造を有するR-Fe-Si系合金には、例えば、NaZn13型構造を有するR(Fe,Si)13化合物( R:7.14原子% )を主成分とする合金が挙げられる。この合金の合金組成としては、Rは6~10原子%(Rは希土類元素及びZrから選ばれる1種又は2種以上であり、Laを必須とする)Si量としては化合物のR以外の元素のうちの9~12原子% であることが好ましい。さらにR(Fe,Si)13化合物のFeの一部をM(Co,Mn,Ni,Al,Zr,Nb,W,Ta,Cr,Cu,Ag,Ga,Ti及びSnからなる群から選択される1種又は2種以上の元素)で置換することで、キュリー温度の異なる一連の合金(例えば、NaZn13型構造を有するR1(Fe,M,Si)13化合物(R:7.14原子%)を主成分とする合金)を作製することが好ましい。
【0016】
上記合金は原料金属あるいは合金を真空あるいは不活性ガス、好ましくはAr雰囲気で溶解した後、平型やブックモールドに鋳込む、あるいは液体急冷法やストリップキャストにより鋳造することで得られる。アトマイズ法により粉末状合金を得ることも好適である。合金組成にもよるが、鋳造合金が初晶のα-Fe相とR-Si相から成る場合がある(Rは希土類元素)。この場合、R(Fe,Si)13化合物(Rは希土類元素)を生成させるために、化合物の分解温度(合金組成に大きく依存するが900~1300℃ 程度) 近傍あるいはそれ以下で所定時間(組織形態によるが、10時間~30日)均質化処理を施してもよい。
【0017】
R(Fe,Si)13化合物が主成分となった均質化後の合金は脆性を示し、機械的粉砕により容易に数百μm以下の粉末とすることができる。Hを吸収させる場合は、粗粉砕後、あるいは粗粉砕なしで水素雰囲気中での熱処理を施してもよい。吸収させる水素量に応じて処理条件を変化させるが一般的には0.1~0.5MPa程度の水素分圧下で200~500℃、1~20時間程度の熱処理を施すことが好ましい。水素化処理後の合金はさらに脆くなっており、取り出した時点で数百μm以下の粉末になっていることが多い。
【0018】
本発明の磁気冷凍材料の製造方法で使用する第1の磁気冷凍材料は上記式(1)を満たし、本発明の磁気冷凍材料の製造方法で使用する第2の磁気冷凍材料は上記式(2)を満たす。第1の磁気冷凍材料が上記式(1)を満たさず、第2の磁気冷凍材料が上記式(2)を満たさないと、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料を混合した後に得られる第3の磁気冷凍材料におけるエントロピー変化の温度依存性(ΔS-T特性)を示す曲線のピークが、二山に分裂することになる。その結果、第3の磁気冷凍材料が、見かけ上、2つの磁気転移温度を有することになり、磁気冷凍材料をカスケード充填したAMRサイクルの熱交換効率が悪化する場合がある。このような観点から、第1の磁気冷凍材料は下記式(5-1)をさらに満たし、第2の磁気冷凍材料は下記式(6-1)をさらに満たすことが好ましく、第1の磁気冷凍材料は下記式(5-2)をさらに満たし、第2の磁気冷凍材料は下記式(6-2)をさらに満たすことが好ましい。なお、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料を組み合わせて使用すると、第1の磁気冷凍材料もしくは第2の磁気冷凍材料を単独に使用した場合に較べてΔSの値が小さくなる場合がある。しかし、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料が下記式を満たすことにより、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料を組み合わせたことによるΔSの低下率をさらに小さくすることができる。
-0.4≦(T1-T)/W≦0.4 (5-1)
-0.4≦(T1-T)/W≦0.4 (6-1)
-0.2≦(T1-T)/W≦0.2 (5-2)
-0.2≦(T1-T)/W≦0.2 (6-2)
ここで、Tは第1の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Tは第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Wは第1の磁気冷凍材料のΔS-T特性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表し、Wは第2の磁気冷凍材料のΔS-T特性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表す。
【0019】
磁気冷凍材料のΔS-T特性は以下のようにして導出できる。試料振動型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer:VSM)を使用して、0Tから1Tまで0.2Tのステップの磁場下で、高温から低温に向けて磁気冷凍材料の磁気モーメント(M)を測定し、磁気モーメント(M)の詳細な温度(T)及び磁場(H)の依存性(M(T,H))を求める。次に、この結果を次の式に代入して、磁気冷凍材料のΔS-T特性を導出できる。
【数1】
【0020】
磁気冷凍材料のΔS-T特性を示す曲線のピークの半値幅(K)は、本明細書において、以下のように定義する。ΔS-T特性を示す曲線のピークの頂点のΔSの値をΔSMaxとしたとき、ピークにおけるΔSの値がΔSMaxの値の半分の値となる2つの温度(Ta、Tb)の間の差(Ta-Tb)の絶対値を半値幅とする。
【0021】
第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料を混合して第3の磁気冷凍材料を得る。ここで、第3の磁気冷凍材料における第1の磁気冷凍材料の含有量(A)及び第2の磁気冷凍材料の含有量(A)の合計100質量部に対する第1の磁気冷凍材料の含有量(A)(質量部)及び第2の磁気冷凍材の含有量(A)(質量部)が上記の式(3)~(4)を満たす。第1の磁気冷凍材料の含有量(A)(質量部)及び第2の磁気冷凍材の含有量(A)(質量部)が上記の式(3)~(4)を満たさないと、第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度を目標の磁気転移温度(T)に精度よく調整することができない場合がある。第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度(T)(K)と目標の磁気転移温度(T)との間の差分(T-T)の絶対値は、例えば0.7K以下であり、好ましくは0.5K以下であり、より好ましくは0.3K以下である。なお、磁気転移温度の測定には±0.2℃程度の測定誤差が含まれるため、上記式(3)及び(4)において20質量部程度の誤差が生じてしまうが、20質量部以内のずれであればシステムへの影響は小さい。このため、上記式(3)及び(4)において、20の値を引き算及び足し算している。混合方法は特に限定されないが、例えばVブレンダーによって行うことが出来る。
【0022】
第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度をさらに精度よく調整するという観点から、第3の磁気冷凍材料における第1の磁気冷凍材料の含有量(A)及び第2の磁気冷凍材料の含有量(A)の合計100質量部に対する第1の磁気冷凍材料の含有量(A)(質量部)及び第2の磁気冷凍材の含有量(A)(質量部)が、下記の式(3-1)及び(4-1)を満たすことが好ましく、下記の式(3-2)及び(4-2)を満たすことがより好ましく、下記の式(3-3)及び(4-3)を満たすことがさらに好ましく、下記の式(3-4)及び(4-4)を満たすことがよりさらに好ましい。
((T-T)/(T-T))×100-10≦A≦((T-T)/(T-T))×100+10 (3-1)
((T-T)/(T1-T))×100-10≦A≦((T-T)/(T1-T))×100+10 (4-1)
((T-T)/(T-T))×100-5≦A≦((T-T)/(T-T))×100+5 (3-2)
((T-T)/(T1-T))×100-5≦A≦((T-T)/(T1-T))×100+5 (4-2)
((T-T)/(T-T))×100-3≦A≦((T-T)/(T-T))×100+3 (3-3)
((T-T)/(T1-T))×100-3≦A≦((T-T)/(T1-T))×100+3 (4-3)
((T-T)/(T-T))×100-1≦A≦((T-T)/(T-T))×100+1 (3-4)
((T-T)/(T1-T))×100-1≦A≦((T-T)/(T1-T))×100+1 (4-4)
【0023】
また、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料のうちの1種の磁気冷凍材料が、2種類の磁気冷凍材料を混合した材料であってもよいし、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の両方の磁気冷凍材料が、2種類の磁気冷凍材料を混合した材料であってもよい。この場合、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料をそれぞれ構成する2種類の磁気冷凍材料において、2種類の磁気冷凍材料の磁気転移温度の間の差分を、磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅で割り算した値の絶対値がそれぞれ0.9以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましく、0.2以下であることがさらに好ましい。
【0024】
上記のようにして作製した磁気冷凍材料では、目標の磁気転移温度(T)に対して転移温度のばらつきを0.7K以内に抑えることが可能であり、磁気冷凍材料をAMRサイクルに適用する際に要求される磁気転移温度の精度を十分に満たすことができる。
【0025】
[磁気冷凍材料]
本発明の磁気冷凍材料は、下記式(7-1)を満たし、好ましくは下記式(7-2)を満たす第1の磁気冷凍材料と、前記第1の磁気冷凍材料と異なり、下記式(8-1)を満たし、好ましくは下記式(8-2)を満たす第2の磁気冷凍材料を少なくとも含有し、磁気転移温度と目標の磁気転移温度との間の差分の絶対値が0.7K以下であり、好ましくは0.5K以下であり、より好ましくは0.3K以下である。
-0.9≦(T1-T)/W≦0.9 (7-1)
-0.4≦(T1-T)/W≦0.4 (7-2)
-0.9≦(T1-T)/W≦0.9 (8-1)
-0.4≦(T1-T)/W≦0.4 (8-2)
ここで、Tは第1の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Tは第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Wは第1の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表し、Wは第2の磁気冷凍材料の磁気エントロピー変化の温度依存性を示す曲線のピークの半値幅(K)を表す。
【0026】
本発明の磁気冷凍材料の第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料は、本発明の磁気冷凍材料の製造方法で説明したものと同様であるので、本発明の磁気冷凍材料の第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の説明は省略する。
【0027】
本発明の磁気冷凍材料は、本発明の効果を阻害しない範囲で、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料以外の磁気冷凍材料を含んでもよい。
【実施例
【0028】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
[磁気冷凍材料のΔS-T特性]
磁気冷凍材料のΔS-T特性は、VSM(Quantum Design社製、Versa Lab)を使用して、磁気冷凍材料の磁気モーメントの温度及び磁場の依存性を測定し、これらの結果から、上述の明細書に記載の方法により磁気冷凍材料のΔS-T特性を導出した。また、第1の磁気冷凍材料のΔS-T特性のピークの頂点のΔSの値(ΔS)と第2の磁気冷凍材料のΔS-T特性のピークの頂点のΔSの値(ΔS)との平均値(ΔSav)に対する、第3の磁気冷凍材料のΔS-T特性のピークの頂点のΔSの値(ΔS)の低下率((ΔSav-ΔS)/ΔSav×100)(%)を算出した。
【0030】
[実施例1]
表1に示す組成の合金1及び合金2を用意した。これらの合金に対して、それぞれ1160℃の熱処理温度及び50時間の熱処理時間で、熱処理を実施して合金の均質化を施し、その後、450℃の処理温度、8時間の処理時間及び0.27 MPaの圧力で水素化処理を施して、合金1から第1の磁気冷凍材料を、合金2から第2の磁気冷凍材料をそれぞれ作製した。なお、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料は、Fe及びMnの含有量を変えることで第1の磁気冷凍材料の磁気転移温度及び第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度を異なるようにしている。第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の半値幅及び磁気転移温度、並びに、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の間の磁気転移温度差を半値幅で割り算した値(磁気転移温度差/半値幅)を表2に示す。なお、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料を混合して得られる第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度が298.8K(目標の磁気転移温度)となるように、下記の(9)式及び(10)式に従って、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の配合量を決定した。得られた第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度及びΔSの値の低下率を表2に示し、得られた第3の磁気冷凍材料のΔS-T特性を図1に示す。
第1の磁気冷凍材料の配合量(質量%)=((T-T)/(T-T))×100 (9)
第2の磁気冷凍材料の配合量(質量%)=((T-T)/(T1-T))×100 (10)
ここで、Tは第1の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Tは第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度(K)を表し、Tは目標の磁気転移温度(K)を表す。
【0031】
[比較例1]
表1に示す組成の合金1及び合金2を用意した。これらの合金に対して、実施例1と同様の処理を実施して、合金1から第1の磁気冷凍材料を、合金2から第2の磁気冷凍材料をそれぞれ作製した。なお、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料は、Mnの含有量を変えることで第1の磁気冷凍材料の磁気転移温度及び第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度を異なるようにしている。第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の半値幅、磁気転移温度、及び磁気転移温度差/半値幅を表2に示す。なお、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料を混合して得られる第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度が295.6K(目標の磁気転移温度)となるように、上記の(9)式及び(10)式に従って、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の配合量を決定した。得られた第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度及びΔSの値の低下率を表2に示し、得られた第3の磁気冷凍材料のΔS-T特性を図2に示す。
【0032】
[実施例2~8]
表1に示す組成の合金1及び合金2を用意した。これらの合金に対して、実施例1と同様の処理を実施して、合金1から第1の磁気冷凍材料を、合金2から第2の磁気冷凍材料をそれぞれ作製した。なお、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料は、Fe及びMnの含有量を変えることで第1の磁気冷凍材料の磁気転移温度及び第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度を異なるようにしている。第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の半値幅、磁気転移温度、及び磁気転移温度差/半値幅を表2に示す。なお、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料を混合して得られる第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度が表2に示す目標の磁気転移温度となるように、上記の(9)式及び(10)式に従って、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の配合量を決定した。得られた第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度及びΔSの値の低下率を表2に示す。
【0033】
[実施例9]
実施例9では、実施例6で作製した第3の磁気冷凍材料を第1の磁気冷凍材料として使用し、実施例7で作製した第3の磁気冷凍材料を第2の磁気冷凍材料として使用した。第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の半値幅、磁気転移温度、及び磁気転移温度差/半値幅を表2に示す。なお、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料を混合して得られる第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度が表2に示す目標の磁気転移温度となるように、上記の(9)式及び(10)式に従って、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の配合量を決定した。得られた第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度及びΔSの値の低下率を表2に示し、得られた第3の磁気冷凍材料のΔS-T特性を図3に示す。
【0034】
[比較例2]
第1の磁気冷凍材料の配合量を、上記の(9)式に従って決定した配合量から40%減らした配合量に変更した。また、第2の磁気冷凍材料の配合量を、上記の(10)式に従って決定した配合量から40%増やした配合量に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして第3の磁気冷凍材料を作製した。得られた第3の磁気冷凍材料の磁気転移温度及びΔSの値の低下率を表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
これらの結果より、上記の(3)式及び(4)式を満たす配合量で第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の混合を行うことで、目標とした磁気転移温度に対して0.7K以下の範囲内の精度で、目標とした磁気転移温度を有する第3の磁気冷凍材料の製造が可能であることが分かった。すなわち、磁気冷凍材料の磁気転移温度を精度よく制御することができた。また、磁気転移温度差/半値幅の値が0.4よりも大きく0.9以下の実施例3及び実施例9ではΔSの低下率が大きいのに対して、磁気転移温度差/半値幅の値が0.4以下のものではΔSの低下率が減少することが分かった。
【0038】
実施例1のΔS-T特性を図1に示す。第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度差/半値幅が0.9以下であるため、ΔS-T特性のピークは分離していなかった。
【0039】
比較例1のΔS-T特性を図2に示す。第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度差/半値幅が0.9よりも大きかったため、ΔS-T特性のピークが2つに分離した。このため、第3の磁気冷凍材料の1つの磁気転移温度を規定することができなかった。なお、第3の磁気冷凍材料が複数の磁気転移温度を有すると、AMRサイクルでカスケード充填して使用する磁気冷凍材料として、第3の磁気冷凍材料を使用することが難しくなる。
【0040】
実施例9のΔS-T特性を図3に示す。第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の磁気転移温度差/半値幅が0.8でありΔSが低下率が大きかった。しかし、磁気転移温度差/半値幅の値が0.9以下であるため、ΔS-T特性のピークは分離しておらず、第3の磁気冷凍材料の目標の磁気転移温度に対しての測定した磁気転移温度のずれは0.7K以下であった。
【0041】
比較例2では、第1の磁気冷凍材料及び第2の磁気冷凍材料の混合割合が上記の(3)式及び(4)式を満たしていなかったため、第3の磁気冷凍材料の目標の磁気転移温度に対しての測定した磁気転移温度のずれが0.8Kと大きかった。
図1
図2
図3