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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】自動分析装置の制御方法、自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20250527BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20250527BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20250527BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20250527BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20250527BHJP
   G01N 1/40 20060101ALI20250527BHJP
【FI】
G01N35/02 G
G01N35/04 G
G01N35/10 C
G01N35/10 B
G01N35/00 E
G01N1/10 C
G01N1/10 E
G01N1/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023556286
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2022037885
(87)【国際公開番号】W WO2023074351
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2021173792
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真結子
(72)【発明者】
【氏名】松岡 晋弥
(72)【発明者】
【氏名】海老原 大介
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-102735(JP,A)
【文献】国際公開第2021/002431(WO,A1)
【文献】特開2008-180538(JP,A)
【文献】特開2005-156272(JP,A)
【文献】特開2014-206381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00~35/10
G01N 1/10
G01N 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を分析する自動分析装置を制御する制御方法であって、
前記自動分析装置は、
液体を吸引または吐出するノズル、
前記液体を収容する第1容器が置かれる第1設置部、
前記液体を収容する第2容器が置かれる第2設置部、
前記第1容器と前記第2容器を搬送する搬送機構、
を備え、
前記ノズルと前記搬送機構はともに、前記第1設置部に置かれている前記第1容器と前記第2設置部に置かれている前記第2容器それぞれに対してアクセス可能であり、
前記第1設置部と前記第2設置部は、前記搬送機構が前記第2設置部に置かれている前記第2容器に対してアクセスしている間において前記ノズルが前記第1設置部に置かれている前記第1容器に対してアクセスすると、前記搬送機構と前記ノズルが接触する位置にそれぞれ設置されており、
前記制御方法は、
前記ノズルによって、前記第1設置部に置かれている前記第1容器から前記液体を吸引するステップ、
前記ノズルが前記第1容器から前記液体を吸引した後、前記搬送機構によって、前記第2容器を前記第2設置部に置くステップ、
前記ノズルによって、前記第2容器に対して前記液体を吐出するステップ、
を有し、
前記制御方法はさらに、前記搬送機構が前記第2容器を前記第2設置部に置いた後、前記ノズルが前記第2容器に対して前記液体を吐出する前に、前記搬送機構を前記第2設置部から退避させるステップを有し、
前記液体を吐出するステップにおいては、前記搬送機構を退避させるステップによって生じたスペースに対して前記ノズルを移動させることにより、前記ノズルが前記第2容器に対して前記液体を吐出することができる位置に前記ノズルを移動させる
ことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
試料を分析する自動分析装置を制御する制御方法であって、
前記自動分析装置は、
液体を吸引または吐出するノズル、
前記液体を収容する第1容器が置かれる第1設置部、
前記液体を収容する第2容器が置かれる第2設置部、
前記第1容器と前記第2容器を搬送する搬送機構、
を備え、
前記ノズルと前記搬送機構はともに、前記第1設置部に置かれている前記第1容器と前記第2設置部に置かれている前記第2容器それぞれに対してアクセス可能であり、
前記第1設置部と前記第2設置部は、前記搬送機構が前記第2設置部に置かれている前記第2容器に対してアクセスしている間において前記ノズルが前記第1設置部に置かれている前記第1容器に対してアクセスすると、前記搬送機構と前記ノズルが接触する位置にそれぞれ設置されており、
前記制御方法は、
前記ノズルによって、前記第1設置部に置かれている前記第1容器から前記液体を吸引するステップ、
前記ノズルが前記第1容器から前記液体を吸引した後、前記搬送機構によって、前記第2容器を前記第2設置部に置くステップ、
前記ノズルによって、前記第2容器に対して前記液体を吐出するステップ、
を有し、
前記制御方法はさらに、前記ノズルが前記第1容器から前記液体を吸引した後、前記搬送機構が前記第2容器を前記第2設置部に置く前に、前記ノズルを前記第1設置部から退避させるステップを有し、
前記第2容器を前記第2設置部に置くステップにおいては、前記ノズルを退避させることによって前記搬送機構と前記ノズルが接触しない状態となった後に、前記搬送機構が前記第2容器を前記第2設置部に置くことができる位置に前記搬送機構を移動させる
ことを特徴とする制御方法。
【請求項3】
前記ノズルを前記第1設置部から退避させるステップにおいては、前記ノズルが前記第1容器から吸引した前記液体を前記ノズル内に保持したまま、前記ノズルを前記第1設置部から退避させ、
前記第2容器に対して前記液体を吐出するステップにおいては、前記ノズル内に保持している前記液体を前記第2容器に対して吐出する
ことを特徴とする請求項記載の制御方法。
【請求項4】
前記自動分析装置はさらに、前記試料を反応させるとき前記試料を収容する反応容器を載置する反応ディスクを備え、
前記第1設置部と前記第2設置部は、前記反応ディスクの外に配置されており、
前記制御方法はさらに、前記第1設置部と前記反応ディスクとの間で前記第1容器を移動させ、または、前記第2設置部と前記反応ディスクとの間で前記第2容器を移動させることにより、前記反応容器として前記第1容器または前記第2容器を前記反応ディスク上に載置し、または前記反応ディスクから前記第1設置部もしくは前記第2設置部へ移動させるステップを有する
ことを特徴とする請求項1または2記載の制御方法。
【請求項5】
前記自動分析装置はさらに、容器内の液体に含まれる磁性粒子を分離する磁気分離装置を備え、
前記第1設置部は、前記磁気分離装置に対して前記第1容器を設置する場所として構成されており、
前記吸引するステップは、前記磁気分離装置に置く前記第1容器に対して実施される
ことを特徴とする請求項1または2記載の制御方法。
【請求項6】
前記自動分析装置はさらに、容器に収容された液体を蒸発させることにより前記液体を濃縮する蒸発濃縮装置を備え、
前記第2設置部は、前記蒸発濃縮装置に対して前記第2容器を設置する場所として構成されており、
前記第2容器を置くステップ、および前記吐出するステップは、前記蒸発濃縮装置に置く前記第2容器に対して実施される
ことを特徴とする請求項1または2記載の制御方法。
【請求項7】
前記制御方法はさらに、前記第2容器に対して前記液体を吐出した後、前記第2容器内の前記液体を蒸発濃縮するステップを有する
ことを特徴とする請求項記載の制御方法。
【請求項8】
試料を分析する自動分析装置であって、
請求項1または2記載の制御方法を実施することにより前記自動分析装置を制御するコントローラを備えることを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料の自動分析装置は、例えば血液や尿などの検体内に含まれる特定成分を分析する。自動分析装置は、検体や試薬などの液体を、ノズルによって容器から吸引し、または容器に対して吐出する。自動分析装置はさらに、容器を設置場所へ移動する搬送機構を備える。
【0003】
特許文献1は、ラックに搭載された液体容器をノズルのもとまで搬送する技術を開示している(段落0006参照)。特許文献2は、反応ディスク上に配列された反応容器へ検体や試薬を吐出する技術を開示している(段落0038参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-102735号公報
【文献】特開2014-206381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~2のような従来技術においては、搬送機構が容器を設置場所へ移動させ、ノズルもその設置場所へ移動して液体を容器から吸引しまたは容器に対して液体を吐出する。すなわち、容器が設置される空間に対して、搬送機構とノズルがともにアクセスする必要がある。
【0006】
搬送機構とノズルそれぞれの形状やサイズによっては、これらのうちいずれか一方のみが、容器の設置場所に対してアクセスすることができるようになっていることがある。例えば設置場所が固定されており、搬送機構とノズルのうち一方が設置場所から退避しなければ他方が設置場所に対してアクセスすることができない場合がこれに相当する。これにより、搬送機構またはノズルの動作が制約されるので、自動分析装置の動作タイムチャート上においてこれにともなう制約が生じることになる。
【0007】
本開示は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、搬送機構とノズルが同じ設置場所に対してアクセスすることにともなう、自動分析装置の動作タイムチャート上の制約を緩和することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る自動分析装置の制御方法において、前記自動分析装置は、容器の搬送機構とノズルが前記容器の設置部に対して同時にアクセスできないように構成されており、前記ノズルが前記設置部に設置されている第1容器から液体を吸引した後、前記ノズルが前記設置部に設置されている第2容器に対して前記液体を吐出する前に、前記搬送機構が前記設置部に対して前記第2容器を設置する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る自動分析装置の制御方法によれば、搬送機構とノズルが同じ設置場所に対してアクセスすることにともなう、自動分析装置の動作タイムチャート上の制約を緩和することができる。本開示のその他特徴、利点、構成などについては、以下の詳細説明を参照することにより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る自動分析装置100の全体構成を概略的に示す図である。
図2】搬送機構とノズルの従来の動作を説明する図である。
図3】実施形態1における搬送機構132とノズル133の動作を説明する図である。
図4図2で説明した従来動作のタイムチャートである。
図5図3で説明した本実施形態1における動作のタイムチャートである。
図6】実施形態2に係る自動分析装置100の全体構成図である。
図7A】実施形態3に係る自動分析装置100の全体構成図である。
図7B】実施形態3に係る自動分析装置100の別構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1:装置構成>
図1は、本開示の実施形態1に係る自動分析装置100の全体構成を概略的に示す図である。図1において、自動分析装置100は、試料の前処理を実施する前処理部101、試料中の成分を分離する分離部102、分離された成分を分析する分析部103、自動分析装置100全体の動作を制御する制御部104、ユーザが装置に情報を入力するための入力部105、ユーザに情報を表示するための表示部106、自動分析装置100の制御に係る種々の情報を記憶する記憶媒体などの記憶部107、を備えている。
【0012】
制御部104、入力部105、表示部106、及び、記憶部107は、自動分析装置100の全体の動作を制御する制御装置を構成する。
【0013】
前処理部101は、分析対象である試料が収容された試料容器111を試料分注位置まで搬送する搬送機構112、反応容器116を複数の開口部119に搭載することによって反応容器116内の溶液を一定温度で保持可能な反応容器ディスク120、試薬が収容された複数の試薬容器121を保持する試薬ディスク122、試料分注位置に搬送された試料容器111から反応容器ディスク120の開口部119に収容された反応容器116に対して試料を分注する試料分注機構113、を備える。
【0014】
前処理部101はさらに、試薬容器121から反応容器ディスク120の反応容器116に対して試薬を分注する試薬分注機構123、試料分注機構113のノズルに装着されるディスポーザブルな分注チップ115aであって未使用のものを搭載した分注チップ搭載ラック115、試料分注機構113のノズルから使用済みの分注チップ115aを取り外して破棄したり、ノズルに未使用の分注チップ115aを装着したりする分注チップ装脱着部114、を備える。
【0015】
前処理部101はさらに、未使用の反応容器116を搭載した反応容器搭載ラック117、分注チップ搭載ラック115から分注チップ装脱着部114への未使用の分注チップ115aの搬送、反応容器ディスク120の開口部119から破棄部(図示せず)への使用済みの反応容器116の搬送、及び、反応容器搭載ラック117から反応容器ディスク120の開口部119への未使用の反応容器116の搬送を実施する搬送機構118、を備える。
【0016】
前処理部101はさらに、反応容器116に収容された溶液中の磁性ビーズを磁石の磁力によって分離する磁気分離機構124、反応容器116内の溶液中の分析対象成分を蒸発濃縮する蒸発濃縮機構131、反応容器ディスク120/磁気分離機構124/蒸発濃縮機構131の間で反応容器116を搬送する搬送機構132、を備える。
【0017】
前処理部101はさらに、分離部102に対して蒸発濃縮後の反応容器116内の溶液を分注する分離部用分注機構133を備える。分離部用分注機構133は後述するように、磁気分離機構124が保持している容器と蒸発濃縮機構131が保持している容器との間で液体を分注する役割も有する。
【0018】
反応容器ディスク120は、開口部119に設置された反応容器116の温度を一定に保つインキュベータとして機能し、開口部119に設置された反応容器116を一定時間インキュベートする。
【0019】
分離部102は、例えば、LC(Liquid Chromatography)であって、分離部用分注機構133により分注される反応溶液中の成分を分離する機能としてカラムなどを備えている。分離部102は、分離部用分注機構133によって反応容器116から分注される反応溶液中の成分を分離し、分離された成分を分析部103に対して逐次導入する。
【0020】
分析部103は、例えば、MS(Mass Spectrometry:質量分析装置)であって、分離部102から導入される成分をイオン化および質量分析する機能として電子増倍管などを備えている。分析部103は、分離部102から導入された成分をイオン化してイオン量(すなわち、成分量)を検出し、検出結果を制御部104に対して出力する。
【0021】
制御部104は、磁気分離機構124の動作、蒸発濃縮機構131の動作、分離部102の動作、分析部103の動作、など自動分析装置100全体の動作を制御する。また、制御部104は、分析部103からの検出結果(イオン量)と予め取得した検量線とを用いて試料中の成分の濃度値を算出し、分析結果として記憶部107に記憶するとともに、分析結果を表示部106に表示させる。
【0022】
<実施の形態1:搬送機構とノズルの動作>
図2は、搬送機構とノズルの従来の動作を説明する図である。ここでは磁気分離機構124または蒸発濃縮機構131に対して搬送機構132が容器を設置し、その容器に対して分離部用分注機構133のノズル(便宜上、以下単にノズル133と呼ぶ)がアクセスして液体を吸引または吐出する場面を想定する。搬送機構132とノズル133は、制御部104によって制御される。
【0023】
図2に示す例において、磁気分離機構124は、容器を設置するための箇所(容器を受け入れる孔)として、第1設置部221を備える。同様に蒸発濃縮機構131は、容器を設置するための箇所として、第2設置部222を備える。搬送機構132は、これらの設置部に対してアクセスし、それぞれ容器を設置する。図2においては第1設置部221において第1容器211が設置済である状態を示した(図2(1))。第1容器211および後述する第2容器212としては、任意の容器が考えられる。例えば反応容器116を第1容器211または第2容器212として設置することが考えられる。
【0024】
搬送機構132は、第2設置部222に対して、第2容器212を設置する(図2(2))。搬送機構132は、例えば第2容器212を挟み込むことによって保持し、第2容器212を第2設置部222に対して挿入した後、第2容器212を解放するように構成された機構である。このような機構はある程度の空間サイズを必要とする。これにより、搬送機構132が第1設置部221または第2設置部222に対してアクセスしている間は、ノズル133は第1設置部221および第2設置部222に対してアクセスすることができない(アクセスしようとすると搬送機構132とノズル133が衝突する)。したがって、搬送機構132が第2設置部222に対して第2容器212を設置する間、ノズル133は第1設置部221および第2設置部222から離れた位置に退避している。
【0025】
搬送機構132は、第1設置部221および第2設置部222から離れた位置に退避する。ノズル133は、搬送機構132が退避することによって、第1設置部221および第2設置部222に対してアクセスすることができるようになる。ノズル133は、第1設置部221が保持している第1容器211に対してアクセスする(すなわちノズル133を第1容器211内に導入する)。ノズル133は、第1容器211が収容している液体を吸引する(図2(3))。
【0026】
ノズル133は、第2設置部222に対してアクセスする(すなわち第2設置部222の上方に移動する)。ノズル133は、第2設置部222が保持している第2容器212に対してアクセスする(すなわちノズル133を第2容器212内に導入する)。ノズル133は、ノズル133内に吸引した液体を、第2容器212に対して吐出する(図2(4))。
【0027】
以上の吸引および吐出動作を行う必要がある場合の一例として、測定対象物質の精製に使用した磁性ビーズが分離部102に導入されることを防ぐために、第1設置部221に磁性ビーズを含む液体を収容した第1容器211を設置し、上澄み液のみを第2設置部222に設置された第2容器212に移し替えることがあげられる。
【0028】
以上説明した従来の動作によれば、搬送機構132は、ノズル133が液体を吸引開始してからその液体を吐出完了するまで(および搬送機構132に対して衝突しない位置にノズル133が退避するまで)は、第1設置部221および第2設置部222に対してアクセスできない(すなわち次の容器を設置することができない)。これにより、自動分析装置100の動作タイムチャートにおいて、制約が生じることになる。
【0029】
この原因の1つとしては、搬送機構132とノズル133が第1設置部221または第2設置部222に対して同時にアクセスできないことが挙げられる。これに加えて、図2に示す従来の動作手順が、このような制約を生じさせている。本実施形態1においては特に、ノズル133が液体を吸引してから吐出するまでの間に、搬送機構132が待機しなければならないことに着目する。
【0030】
図3は、本実施形態1における搬送機構132とノズル133の動作を説明する図である。図2と同様に、第1設置部221において第1容器211が設置済である状態から説明を開始する(図3(1))。
【0031】
ノズル133は、搬送機構132が第2容器212を第2設置部222に対して設置する前に、第1設置部221に対してアクセスする(第1設置部221の上方に移動する)。ノズル133は、第1設置部221が保持している第1容器211に対してアクセスする(第1容器211に対してノズル133を導入する)。ノズル133は、第1容器211が収容している液体を吸引する(図3(2))。
【0032】
ノズル133は、第1設置部221および第2設置部222から離れた位置に退避する(図3(3))。搬送機構132は、ノズル133が退避することによって、第1設置部221および第2設置部222に対してアクセスすることができるようになる。
【0033】
搬送機構132は、第2容器212を保持して、第2設置部222に対してアクセスする(第2設置部222の上方に移動する)。搬送機構132は、第2設置部222に対して、第2容器212を設置する(図3(4))。
【0034】
搬送機構132は、第1設置部221および第2設置部222から離れた位置に退避する。ノズル133は、第2設置部222に対してアクセスする(第2設置部222の上方に移動する)。ノズル133は、第2設置部222が保持している第2容器212に対してアクセスする(ノズル133を第2容器212内に導入する)。ノズル133は、ノズル133内に吸引した液体を、第2容器212に対して吐出する(図3(5))。
【0035】
以上説明した本実施形態1における動作によれば、ノズル133が液体を吸引してからその液体を吐出するまでの間において、搬送機構132が第2容器212を設置する動作が介在する。これにより、図2と比較して、搬送機構132はノズル133が液体を吸引してから吐出するまで待機する必要がなくなる。すなわち、自動分析装置100の動作タイムチャート上の制約を、図2よりも緩和することができる。
【0036】
図4は、図2で説明した従来動作のタイムチャートである。搬送機構132が第2容器212を第2設置部222に対して設置する間は、ノズル133は液体の吸引または吐出を実施できない(図4「容器設置」「分注不可」、図2(2)に対応する期間)。搬送機構132が退避した後、ノズル133は第1容器211から液体を吸引し、その液体を第2容器212に対して吐出する(図4「液吸引」「液吐出」、図2(3)(4)に対応する期間)。液体吐出が完了してノズル133が退避すると、搬送機構132は次の容器を第1設置部221または第2設置部222に対して搬送できるようになる。
【0037】
ノズル133が液体を吐出した後、蒸発濃縮機構131は、第2容器212内を減圧することによって蒸発濃縮を開始する(図4「蒸発開始」)。
【0038】
図5は、図3で説明した本実施形態1における動作のタイムチャートである。ノズル133が第1容器211から液体を吸引した後(図5「液吸引」、図3(2)に対応する期間)、ノズル133は例えば洗浄槽の近傍などへ退避する(図5「退避」、図3(3)に対応する期間)。ノズル133が退避している間に、搬送機構132は第2容器212を設置する(図5「容器設置」、図3(4)に対応する期間)。搬送機構132が退避した後にノズル133は液体を第2容器212に対して吐出する(図5「液吐出」、図3(5)に対応する期間)。
【0039】
ノズル133が液体を吐出した後、蒸発濃縮機構131は、第2容器212内を減圧することによって蒸発濃縮を開始する(図5「蒸発開始」)。
【0040】
本実施形態1において、動作タイムチャート上の制約が緩和される理由は、以下のように考えることができる。本実施形態1においては、ノズル133が第1容器211内の液体を吸引してからその液体を第2容器212に対して吐出するまでの間に、搬送機構132が第2容器212を第2設置部222に対して設置する動作が介在する。すなわち、搬送機構132が搬送不可である期間やノズル133が分注不可である期間が、従来動作と比較して細分されることになる。これにより、動作不可期間と動作可能期間をタイムチャート上で従来よりも柔軟に配置することができるので、タイムチャート上の制約を最適化することが従来よりも容易である。本実施形態1における制約緩和は、これに起因する。
【0041】
液体の吸引は一般に、低速で行うことで安定した挙動を示す。従来動作では、ノズル133による液吸引時間を長くするほど、搬送機構132の退避が必要な時間が長くなるため、タイムチャート上の制約が増加する。本実施形態1を用いることで、搬送機構132のタイムチャート上の制約を増加させずに、吸引時間を延長することができる。
【0042】
本実施形態1において、第1設置部221と第2設置部222を移動させる機構(例:反応容器ディスク120と同様の機構)を用いて図3と同様の動作手順を実現することも考えられる。しかしその場合は、設置部を移動させるための機構が大型になりやすく、装置のサイズやコストの観点から必ずしも望ましくない。本実施形態1は、そのような装置サイズの観点からも有利である。換言すると、第1設置部221と第2設置部222は反応容器ディスク120の外に配置されており、反応容器ディスク120上に載置している容器を第1設置部221または第2設置部222へ設置して図3の動作を実施し、あるいは第1設置部221と第2設置部222上で図3の動作を実施した後で反応容器ディスク120に対して容器を移動させることになる。
【0043】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係る自動分析装置100において、搬送機構132とノズル133は第1設置部221または第2設置部222に対して同時にアクセスできないように構成されており、ノズル133が第1容器211から液体を吸引した後、ノズル133が第2容器212に対してその液体を吐出する前に、搬送機構132は第2容器212を第2設置部222に対して設置する。これにより、装置上の複数の機構間で反応容器116を搬送するため動作が多く、タイムチャート作成上の制約も大きい搬送機構132が、ノズル133と衝突する位置から退避する必要がある時間間隔を従来よりも短縮できる。すなわち、自動分析装置100の動作タイムチャート上の制約を緩和することができる。
【0044】
本実施形態1に係る自動分析装置100は、搬送機構132が第1設置部221または第2設置部222に対してアクセスするときはノズル133を退避させ、ノズル133が第1設置部221または第2設置部222に対してアクセスするときは搬送機構132を退避させる。これにより、搬送機構132とノズル133が衝突することを回避しつつ、自動分析装置100の動作タイムチャート上の制約を緩和することができる。
【0045】
本実施形態1に係る自動分析装置100において、搬送機構132が第2容器212を設置してから蒸発濃縮機構131が蒸発濃縮を開始するまでの期間は、従来動作と比較して短縮される。蒸発濃縮機構131が加熱蒸発を併用している場合、第2容器212を蒸発濃縮機構131上に設置したまま工程を進めずに長時間が経過すると、第2容器212を不必要に加熱することになる。本実施形態1によれば、そのような加熱時間を短縮できる点が有利である。
【0046】
<実施の形態2>
図6は、本開示の実施形態2に係る自動分析装置100の全体構成図である。実施形態1においては、第1設置部221と第2設置部222が磁気分離機構124または蒸発濃縮機構131の一部として構成されている例を説明した。第1設置部221と第2設置部222を配置する場所はこれに限られるものではなく、第1容器211と第2容器212との間で液体をノズルによって移し替えるために各容器を配置するその他任意の場所であってもよい。例えば液体を移し替えるために容器を一時的に設置する一時設置ポジション600として、第1設置部221と第2設置部222を用いることができる。その他適当な場所に第1設置部221と第2設置部222を配置してもよい。
【0047】
図6に示す例においては、一時設置ポジション600は、第1設置部221と第2設置部222を備える。一時設置ポジション600は、容器を一時的に仮設置するための空きスペースである。例えば、第1容器211に収容された液体を希釈する場合に、少量を第2容器212に移し替え、希釈液吐出ノズル(図示せず)により希釈液を添加するスペースとして、一時設置ポジション600を用いることもできる。第1設置部221と第2設置部222についての動作タイムチャートは実施形態1と同じである。
【0048】
<実施の形態3>
図7Aは、本開示の実施形態3に係る自動分析装置100の全体構成図である。実施形態1においては、磁気分離機構124と蒸発濃縮機構131との間で液体を分注する場合における動作例を説明したが、第1設置部221と第2設置部222を配置する場所はこれに限られるものではない。例えば図7Aに示すように、磁気分離機構124が第1設置部221を有し、一時設置ポジション600が第2設置部222を有し、第1設置部221と第2設置部222との間で実施形態1と同様の動作を実施してもよい。
【0049】
図7Bは、本実施形態3に係る自動分析装置100の別構成図である。図7Bに示すように、一時設置ポジション600が第1設置部221を有し、蒸発濃縮機構131が第2設置部222を有し、第1設置部221と第2設置部222との間で実施形態1と同様の動作を実施してもよい。
【0050】
<本開示の変形例について>
本開示は、上述した実施形態に限定されるものでなく、様々な変形例を含んでいる。例えば、上述した実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備える必要はない。また、ある実施形態の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の実施形態の構成の一部を追加、削除または置換することもできる。
【0051】
実施形態1においては、入力部105と表示部106とを別体として示したが、これに代えて例えば、タッチパネル式のモニタのように入力部105と表示部106とを一体的に構成してもよい。
【0052】
以上の実施形態において、搬送機構132は、タイムチャート上の「搬送不可」期間において、第1容器211または第2容器212以外の物品を搬送してもよい。これにより搬送機構132の稼働効率を高めることができる。
【0053】
以上の実施形態において、第1容器211と第2容器212の例として反応容器116を例示し、さらに第1容器211と第2容器212に対して液体を分注する機構としてノズル133を例示した。容器と分注機構はこれらに限るものではなく、その他任意の容器および分注機構について、本開示に係る手法を適用できることを付言しておく。
【0054】
以上の実施形態において、蒸発濃縮機構131は、容器内を減圧することによって液体を濃縮することを説明したが、液体を濃縮する手法はこれに限るものではなく、その他適当な手法によって濃縮してもよい。その場合であっても本開示に係る手法を適用可能であることを付言しておく。
【0055】
以上の実施形態において、制御部104(コントローラ)は、その機能を実装した回路デバイスなどのハードウェアによって構成することもできるし、その機能を実装したソフトウェアを演算装置(例えばCentral Processing Unit:CPU)が実行することによって構成することもできる。
【0056】
以上の実施形態において、図4図5が示す数値は1例であり、これらの数値によって本開示が限定されるものではないことを付言しておく。
【符号の説明】
【0057】
100:自動分析装置
104:制御部
124:磁気分離機構
131:蒸発濃縮機構
132:搬送機構
133:ノズル
211:第1容器
212:第2容器
221:第1設置部
222:第2設置部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B