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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-05-26
(45)【発行日】2025-06-03
(54)【発明の名称】油脂管理装置および油脂管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20250527BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2025518023
(86)(22)【出願日】2025-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2025000689
【審査請求日】2025-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2024017989
(32)【優先日】2024-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿本 健一
(72)【発明者】
【氏名】大川 峻
(72)【発明者】
【氏名】藤原 英記
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/079692(WO,A1)
【文献】特開2020-038207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂に係るコストを管理する油脂管理装置であって、
前記油脂の所定の廃油時点における劣化度合いの基準指標値である廃油基準値が記憶された記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記廃油基準値と、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の劣化度合いの指標値である劣化指標値と、の差分を算出する差分算出部と、
前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の価値に対し、前記差分算出部にて算出された前記差分に応じた重み付けを行う重み付け部と、
前記重み付け部にて前記重み付けがなされた前記油脂の価値を、前記油脂に係る前記コストの削減可能要素として報知するための報知信号を出力する報知部と、
を含む
ことを特徴とする油脂管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油脂管理装置であって、
前記記憶部には、
前記廃油基準値と前記劣化指標値との前記差分に応じて設定された係数が重み係数として複数記憶されており、
前記重み付け部は、
前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された回数である未達再生交換回数に対し、前記差分算出部にて算出された前記差分に対応した前記重み係数をそれぞれ掛け合わせることにより前記重み付けを行い、
前記報知部は、
前記重み付け部にて前記重み付けがなされた前記未達再生交換回数を前記油脂に係る前記コストの削減期待値とする前記報知信号を出力する
ことを特徴とする油脂管理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の油脂管理装置であって、
前記重み付け部は、
前記差分算出部にて算出された前記差分に、前記廃油基準値での前記油脂の価格を0円とした場合における前記油脂の前記劣化度合いの単位あたりの価格を掛け合わせることにより、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の価格に前記重み付けを行い、
前記報知部は、
前記重み付け部にて前記重み付けがなされた前記油脂の価格を、前記油脂に係る前記コストの削減可能価格とする前記報知信号を出力する
ことを特徴とする油脂管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の油脂管理装置であって、
前記記憶部には、
単位量あたりの前記油脂の新油価格と、前記油脂の使用量と、が記憶されており、
前記記憶部に記憶されている単位量あたりの前記新油価格を前記廃油基準値で除算して、前記油脂の前記劣化度合いの単位あたりの単位量価格を算出する単位量価格算出部をさらに含み、
前記重み付け部は、
前記単位量価格算出部にて算出された前記単位量価格と、前記記憶部に記憶されている前記油脂の前記使用量と、前記差分算出部にて算出された前記差分と、を掛け合わせることにより、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の価格に前記重み付けを行う
ことを特徴とする油脂管理装置。
【請求項5】
油脂に係るコストを油脂管理装置により管理する管理方法であって、
前記油脂管理装置には、前記油脂の所定の廃油時点における劣化度合いの基準指標値である廃油基準値が記憶されており、
前記油脂管理装置が、記憶されている前記廃油基準値と、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の劣化度合いの指標値である劣化指標値と、の差分を算出する差分算出ステップと、
前記油脂管理装置が、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の価値に対し、前記差分算出ステップにて算出された前記差分に応じた重み付けを行う重み付けステップと、
前記重み付けステップにて前記重み付けがなされた前記油脂の価値を、前記油脂に係る前記コストの削減可能要素として報知するための報知信号を出力する報知ステップと、
を含む
ことを特徴とする油脂管理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の油脂管理方法であって、
前記油脂管理装置には、前記廃油基準値と前記劣化指標値との前記差分に応じて設定された係数が重み係数として複数記憶されており、
前記重み付けステップでは、
前記油脂管理装置は、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された回数である未達再生交換回数に対し、前記差分算出ステップにて算出された前記差分に対応した前記重み係数をそれぞれ掛け合わせることにより前記重み付けを行い、
前記報知ステップでは、
前記油脂管理装置は、前記重み付けステップにて前記重み付けがなされた前記未達再生交換回数を前記油脂に係る前記コストの削減期待値とする前記報知信号を出力する
ことを特徴とする油脂管理方法。
【請求項7】
請求項5に記載の油脂管理方法であって、
前記重み付けステップでは、
前記油脂管理装置は、前記差分算出ステップにて算出された前記差分に、前記廃油基準値での前記油脂の価格を0円とした場合における前記油脂の前記劣化度合いの単位あたりの価格を掛け合わせることにより、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の価格に前記重み付けを行い、
前記報知ステップでは、
前記油脂管理装置は、前記重み付けステップにて前記重み付けがなされた前記油脂の価格を、前記油脂に係る前記コストの削減可能価格とする前記報知信号を出力する
ことを特徴とする油脂管理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の油脂管理方法であって、
前記油脂管理装置には、単位量あたりの前記油脂の新油価格と、前記油脂の使用量と、が記憶されており、
前記油脂管理装置が、記憶されている単位量あたりの前記新油価格を前記廃油基準値で除算して、前記油脂の前記劣化度合いの単位あたりの単位量価格を算出する単位量価格算出ステップをさらに含み、
前記重み付けステップでは、
前記単位量価格算出ステップにて算出された前記単位量価格と、前記油脂管理装置に記憶されている前記油脂の前記使用量と、前記差分算出ステップにて算出された前記差分と、を掛け合わせることにより、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の価格に前記重み付けを行う
ことを特徴とする油脂管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂に係るコストを管理する油脂管理装置および油脂管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂は、時間経過に伴って劣化が進行し、劣化度合い(以下、単に「劣化度」とする)が所定の廃油基準値に至ると廃棄される。もし、所定の廃油基準値に至った劣化度の油脂を使用し続けると、例えば、鉱業油の場合には機械が故障する原因となったり、食用油の場合には料理の品質が著しく低下したりすることになる。したがって、油脂を使用する事業者は、油脂の劣化度を正確に把握して、適切な廃油タイミングで廃油して新油に交換する必要がある。
【0003】
油脂の劣化度を示す指標値(以下、「劣化指標値」とする)としては、例えば、酸価(AV)、極性化合物量(TPM)、色、粘度上昇率、アニシジン価、カルボニル価、発煙点、トコフェロール含量、ヨウ素価、屈折率、揮発性成分量、および揮発性成分組成などの値が挙げられる。これらの劣化指標値は、各種センサや撮像機器などを用いて測定することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、対象油脂に浸された呈色試験片と酸価値に対応する複数の色から構成されるカラーバーとをカメラで同時に撮影し、撮影内容から呈色試験片のRGB色情報とカラーバーのRGB色情報とを算出し、算出されたカラーバーのRGB色情報に対応する酸価値を参照して算出された呈色試験片のRGB色情報から対象油脂の酸価値を測定する方法が開示されている。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、電極部を有するセンサを油脂に浸漬することにより油脂中の静電容量を測定し、その測定値から油脂に含まれる極性化合物量(極性分子量)を示すTPM値を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-38207号公報
【文献】特許第6395243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の方法を用いて油脂の劣化指標値が精度良く測定されたとしても、例えば、事業者の従業員が、実際に適切な廃油タイミングで廃油していなければ、廃油されなければいけない油脂が継続して使用されていたり、反対に、まだ廃油される必要のない油脂まで廃油されていたりする可能性がある。
【0008】
特に、まだ廃油される必要のない油脂が廃油されてしまっている場合には、新油への交換回数が必要回数よりも多くなっており、事業者は、新油を無駄に購入していることになる。このような場合、事業者は、油脂が廃油時点に至っていない状態で新油に交換された回数に基づいて、どのくらいのコストを削減することができるか試算することが可能である。
【0009】
しかしながら、廃油時点に至っていない状態の油脂には、劣化度が廃油基準値から大きく乖離して下回っている状態の油脂と、劣化度が廃油基準値よりも少しだけ下回っている状態の油脂と、が含まれるため、事業者は、油脂が廃油時点に至っていない状態で新油に交換された回数に基づくだけでは、削減することが可能なコストを正確に試算することができない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、削減することが可能な油脂に係るコストを精度良く試算することができる油脂管理装置および油脂管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]上記の目的を達成するために、本発明は、油脂に係るコストを管理する油脂管理装置であって、前記油脂の所定の廃油時点における劣化度合いの基準指標値である廃油基準値が記憶された記憶部と、前記記憶部に記憶されている前記廃油基準値と、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の劣化度合いの指標値である劣化指標値と、の差分を算出する差分算出部と、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の価値に対し、前記差分算出部にて算出された前記差分に応じた重み付けを行う重み付け部と、前記重み付け部にて前記重み付けがなされた前記油脂の価値を、前記油脂に係る前記コストの削減可能要素として報知するための報知信号を出力する報知部と、を含むことを特徴とする。
【0012】
[2]好ましくは、前記[1]に記載の油脂管理装置であって、前記記憶部には、前記廃油基準値と前記劣化指標値との前記差分に応じて設定された係数が重み係数として複数記憶されており、前記重み付け部は、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された回数である未達再生交換回数に対し、前記差分算出部にて算出された前記差分に対応した前記重み係数をそれぞれ掛け合わせることにより前記重み付けを行い、前記報知部は、前記重み付け部にて前記重み付けがなされた前記未達再生交換回数を前記油脂に係る前記コストの削減期待値とする前記報知信号を出力することを特徴とする。
【0013】
[3]好ましくは、前記[1]に記載の油脂管理装置であって、前記重み付け部は、前記差分算出部にて算出された前記差分に、前記廃油基準値での前記油脂の価格を0円とした場合における前記油脂の前記劣化度合いの単位あたりの価格を掛け合わせることにより、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の価格に前記重み付けを行い、前記報知部は、前記重み付け部にて前記重み付けがなされた前記油脂の価格を、前記油脂に係る前記コストの削減可能価格とする前記報知信号を出力することを特徴とする。
【0014】
[4]好ましくは、前記[3]に記載の油脂管理装置であって、前記記憶部には、単位量あたりの前記油脂の新油価格と、前記油脂の使用量と、が記憶されており、前記記憶部に記憶されている単位量あたりの前記新油価格を前記廃油基準値で除算して、前記油脂の前記劣化度合いの単位あたりの単位量価格を算出する単位量価格算出部をさらに含み、前記重み付け部は、前記単位量価格算出部にて算出された前記単位量価格と、前記記憶部に記憶されている前記油脂の前記使用量と、前記差分算出部にて算出された前記差分と、を掛け合わせることにより、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の価格に前記重み付けを行うことを特徴とする。
【0015】
[5]また、本発明は、油脂に係るコストを油脂管理装置により管理する管理方法であって、前記油脂管理装置には、前記油脂の所定の廃油時点における劣化度合いの基準指標値である廃油基準値が記憶されており、前記油脂管理装置が、記憶されている前記廃油基準値と、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の劣化度合いの指標値である劣化指標値と、の差分を算出する差分算出ステップと、前記油脂管理装置が、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の価値に対し、前記差分算出ステップにて算出された前記差分に応じた重み付けを行う重み付けステップと、前記重み付けステップにて前記重み付けがなされた前記油脂の価値を、前記油脂に係る前記コストの削減可能要素として報知するための報知信号を出力する報知ステップと、を含むことを特徴とする。
【0016】
[6]好ましくは、前記[5]に記載の油脂管理方法であって、前記油脂管理装置には、前記廃油基準値と前記劣化指標値との前記差分に応じて設定された係数が重み係数として複数記憶されており、前記重み付けステップでは、前記油脂管理装置は、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された回数である未達再生交換回数に対し、前記差分算出ステップにて算出された前記差分に対応した前記重み係数をそれぞれ掛け合わせることにより前記重み付けを行い、前記報知ステップでは、前記油脂管理装置は、前記重み付けステップにて前記重み付けがなされた前記未達再生交換回数を前記油脂に係る前記コストの削減期待値とする前記報知信号を出力することを特徴とする。
【0017】
[7]好ましくは、前記[5]に記載の油脂管理方法であって、前記重み付けステップでは、前記油脂管理装置は、前記差分算出ステップにて算出された前記差分に、前記廃油基準値での前記油脂の価格を0円とした場合における前記油脂の前記劣化度合いの単位あたりの価格を掛け合わせることにより、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の価格に前記重み付けを行い、前記報知ステップでは、前記油脂管理装置は、前記重み付けステップにて前記重み付けがなされた前記油脂の価格を、前記油脂に係る前記コストの削減可能価格とする前記報知信号を出力することを特徴とする。
【0018】
[8]好ましくは、前記[7]に記載の油脂管理方法であって、前記油脂管理装置には、単位量あたりの前記油脂の新油価格と、前記油脂の使用量と、が記憶されており、前記油脂管理装置が、記憶されている単位量あたりの前記新油価格を前記廃油基準値で除算して、前記油脂の前記劣化度合いの単位あたりの単位量価格を算出する単位量価格算出ステップをさらに含み、前記重み付けステップでは、前記単位量価格算出ステップにて算出された前記単位量価格と、前記油脂管理装置に記憶されている前記油脂の前記使用量と、前記差分算出ステップにて算出された前記差分と、を掛け合わせることにより、前記廃油時点に至っていない状態で再生または交換された前記油脂の価格に前記重み付けを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、削減することが可能な油脂に係るコストを精度良く試算することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の各実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る揚げ油管理システムの一構成例を示すシステム構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るクラウドサーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るクラウドサーバが有する機能を示す機能ブロック図である。
図4】廃油基準値と酸価の測定値との差分と重み係数との関係の一例を示す表である。
図5】本発明の第1実施形態に係るクラウドサーバで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係るクラウドサーバが有する機能を示す機能ブロック図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るクラウドサーバで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の各実施形態に係る油脂管理装置および油脂管理方法の一態様として、例えば、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、レストランなどのチェーン店において、フライドチキンやコロッケ、唐揚げといった揚げ物の調理を行う場合に用いられる食用油に係るコストを管理する装置および方法について説明する。
【0022】
また、以下の説明において、揚げ物の調理を「揚げ調理」とし、揚げ調理に用いられる油脂(食用油)を「揚げ油」とし、揚げ調理される食材を「揚げ種」とする。
【0023】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態について、図1~5を参照して説明する。
【0024】
(揚げ油管理システム1の構成)
まず、揚げ油Pを管理する揚げ油管理システム1の構成について、図1を参照して説明する。
【0025】
図1は、第1実施形態に係る揚げ油管理システム1の一構成例を示すシステム構成図である。
【0026】
コンビニエンスストアおよびスーパーマーケットといった小売店や、ファミリーレストランといった飲食店などでは、出来立ての揚げ物を顧客に提供すべく、店舗内に設置されたフライヤー2で揚げ調理が行われている。
【0027】
フライヤー2は、例えば電気式であって、揚げ油Pを貯留する油槽21と、油槽21を収容するハウジング22と、を有して構成される。ハウジング22の側面には、揚げ種Qの種類別に揚げ油Pの温度や揚げ調理の内容を設定するための設定スイッチ23が複数設けられている。
【0028】
なお、図1では、1台のフライヤー2のみが示されているが、店舗規模や揚げ種Qの種類などに応じて複数のフライヤー2が店舗内に設置されることもある。
【0029】
顧客に提供する揚げ物の品質を確保するためには、揚げ調理に用いる揚げ油Pの品質を管理する必要がある。そこで、各店舗の従業員や調理者は、揚げ油Pの劣化度合い(以下、単に「劣化度」とする)を示す指標値である劣化指標値を定期的に測定し、例えば、測定した揚げ油Pの劣化指標値が、揚げ油Pの所定の廃油時点における劣化度の基準指標値である廃油基準値以上であった場合には、その揚げ油Pを廃油して新油に交換する。
【0030】
揚げ油Pの劣化指標値としては、例えば、揚げ油Pの酸価(AV)、揚げ油Pの極性化合物量(PC)、揚げ油Pの色、揚げ油Pの粘度、揚げ油Pの粘度上昇率、揚げ油Pのアニシジン価、揚げ油Pのカルボニル価、揚げ油Pの発煙点、揚げ油Pのトコフェロール含量、揚げ油Pのヨウ素価、揚げ油Pの屈折率、揚げ油Pの揮発性成分量、揚げ油Pの揮発性成分組成、揚げ油Pの風味、揚げ油Pで揚げた揚げ物の揮発性成分量、揚げ油Pで揚げた揚げ物の揮発性成分組成、および揚げ油Pで揚げた揚げ物の風味が用いられる。これらの値はいずれも、揚げ油Pの加熱時間の経過や使用頻度に伴って変化するパラメータである。
【0031】
揚げ油Pの各劣化指標値は、カメラやセンサなどの測定装置を用いて測定することが可能である。例えば、揚げ油Pの酸価の測定には、揚げ油Pを滴下した部分の色の変化から酸価を測定する試験紙や、揚げ油Pに浸すことで揚げ油Pの酸価を直接的に測定することが可能な測定機器などが用いられる。また、例えば、揚げ油Pの極性化合物量の測定には、揚げ油Pに浸すことで揚げ油Pに含まれる極性化合物量を直接的に測定することが可能な測定機器などが用いられる。また、例えば、揚げ油Pの揮発性成分量や揮発性成分組成、および揚げ油Pで揚げた揚げ物の揮発性成分量や揮発性成分組成の測定には、汎用のガスセンサ(例えば、半導体式ガスセンサや水晶振動子式ガスセンサ)などが用いられる。
【0032】
その他の各劣化指標値の測定方法としては、例えば、カメラで撮影された画像から画像認識技術を用いて揚げ油Pで揚げられた揚げ物の種類および個数を判別し、揚げ物の種類および個数と各劣化指標との相関に基づいて各劣化指標を推測する方法や、分光計を用いて揚げ油Pのスペクトルを測定し、揚げ油Pのスペクトルと各劣化指標との相関に基づいて各劣化指標を推測する方法、フライヤー2の設定スイッチ23が操作された回数(すなわち、揚げ調理が行われた回数)と各劣化指標値との相関に基づいて各劣化指標値を推測する方法などがある。
【0033】
なお、揚げ油Pの劣化指標値の測定に関しては、必ずしも上記の測定装置を用いることや上記の測定方法を利用することに限られず、既知の測定装置を用いたり、既知の測定方法を利用したりしてもよい。
【0034】
揚げ油管理システム1は、各店舗における揚げ油Pの劣化指標値を収集して、各店舗における揚げ油Pの使用状況や揚げ油Pに係るコストなどを一括して管理する。
【0035】
例えば、揚げ油管理システム1は、各店舗に設置された店舗端末3と、各店舗における揚げ油Pの使用状況や揚げ油Pに係るコストを管理するプログラムを実行するクラウドサーバ4と、揚げ油Pを管理する管理者(例えば、チェーン店を運営する会社の本部責任者など)が各店舗における揚げ油Pの使用状況や揚げ油Pに係るコストを確認することが可能な管理端末5と、を含んで構成されている。
【0036】
各店舗の店舗端末3は、測定された揚げ油Pの劣化指標値を管理する。例えば、店舗端末3は、揚げ油Pの酸価を測定するためのAV測定センサ6に対して通信可能に接続され、AV測定センサ6で測定された測定値AVmを取得する。具体的には、各店舗では、従業員が、AV測定センサ6を用いて定期的にフライヤー2の油槽21に貯留されている揚げ油Pの酸価を測定する。従業員が、AV測定センサ6を用いて油槽21内の揚げ油Pの酸価を測定すると、店舗端末3は、AV測定センサ6から出力された測定値AVmを取得して、該当するフライヤー2と紐づけた上で記憶する。
【0037】
なお、店舗端末3とAV測定センサ6とは、必ずしも通信可能に接続されている必要はなく、店舗端末3とAV測定センサ6とが通信可能に接続されていない場合には、AV測定センサ6で測定された測定値(劣化指標値)AVmは、例えば、外部機器を介して店舗端末3に読み込まれてもよいし、店舗の従業員によって店舗端末3に直接入力されてもよい。
【0038】
クラウドサーバ4は、揚げ油Pに係るコストを管理する油脂管理装置の一態様であって、本実施形態では、揚げ油Pに係るコストの管理に加えて、AV測定センサ6で測定された揚げ油Pの酸価の測定値AVmに基づいて揚げ油Pの使用状況を判定して管理する。すなわち、本実施形態では、クラウドサーバ4は、揚げ油Pに係るコストを管理するための処理を行うコスト管理処理部(油脂管理装置)と、揚げ油Pの使用状況を判定して管理するための処理を行う使用状況管理処理部と、を含む。
【0039】
クラウドサーバ4は、揚げ油Pの使用状況の判定として、揚げ油Pが廃油基準値AVthを超えた状態(廃油時点を過ぎた状態)で継続して使用されていないか、また反対に、揚げ油Pが廃油時点に至っていない状態で再生または交換されていないかなどの判定を行う。
【0040】
そして、クラウドサーバ4は、揚げ油Pが廃油基準値AVthを超えた状態で継続使用されていた場合にはその継続使用日数Dを、揚げ油Pが廃油時点に至っていない状態で再生または交換されていた場合にはその回数Nを、それぞれカウントする。
【0041】
具体的には、クラウドサーバ4は、AV測定センサ6での測定割合が所定の基準測定割合以上であると判定し、かつ、AV測定センサ6で測定された揚げ油Pの酸価の測定値AVmが廃油基準値AVth以上であると連続で判定した場合に、継続使用日数Dを1日とカウントする。
【0042】
また、クラウドサーバ4は、AV測定センサ6での測定割合が所定の基準測定割合以上であると判定すると共に、AV測定センサ6で測定された揚げ油Pの酸価の測定値AVmが前回の測定値未満であって、かつ、前回の測定値が廃油基準値AVth未満であると判定した場合に、揚げ油Pが廃油時点に至っていない状態で再生または交換された回数を1回とカウントする。
【0043】
なお、以下の説明では、廃油時点に至っていない状態で再生または交換された揚げ油Pのことを「未達油Pu」と表し、揚げ油Pが廃油時点に至っていない状態で再生または交換された回数N、すなわち未達油Puが再生または交換された回数Nを「未達再生交換回数N」とする。この「未達再生交換回数N」は、廃油時点に至っていない状態で再生または交換された揚げ油Pの価値を示す。
【0044】
また、揚げ油Pの「再生」とは、劣化しつつある揚げ油Pをフィルタに通して揚げカスなどを除去したり、揚げ油Pをろ過剤に通して新油に近い状態にしたりすること(ろ過)や、揚げ種Qに吸油されて減った揚げ油Pの分に対して新油を足すこと、劣化した揚げ油Pの一部を廃油して新油を足すこと(差し油)である。揚げ油Pの「交換」とは、劣化しつつある揚げ油Pを新油あるいは新油に相当する状態の油に取り換えることである。
【0045】
なお、揚げ油Pの継続使用日数Dおよび未達再生交換回数Nのカウント方法については、上記のクラウドサーバ4内でのカウント方法に限られず、他に、例えば、店舗の従業員がAV測定センサ6での測定を細かく記録してカウントする方法などであってもよい。
【0046】
油脂管理装置は、必ずしも本実施形態のような通信ネットワーク上に構築されたクラウドサーバ4である必要はなく、その他に、例えば、複数の店舗を管轄する本部センターなどに設置されたサーバ装置であってもよい。また、本実施形態では、揚げ油Pの使用状況の判定および管理は、クラウドサーバ4で行われているが、これに限られず、クラウドサーバ4とは別個の独立したサーバで行われてもよい。
【0047】
管理端末5は、クラウドサーバ4から出力された揚げ油Pの使用状況に関する情報および揚げ油Pに係るコストに関する情報をそれぞれ取得して表示(報知)する。
【0048】
「揚げ油Pの使用状況に関する情報」には、AV測定センサ6によって測定された揚げ油Pの劣化指標値である酸価の測定値AVmと、揚げ油Pが廃油時点を過ぎた状態で継続使用された継続使用日数Dと、揚げ油Pが廃油時点に至っていない状態で再生または交換された未達再生交換回数Nと、が含まれる。例えば、管理端末5では、揚げ油Pが廃油時点に至っていない状態で再生または交換された場合に、その際の揚げ油Pの酸価の測定値AVmがどのくらいであったかを表示させることが可能である。
【0049】
なお、「揚げ油Pの使用状況に関する情報」は、クラウドサーバ4から出力される場合のみならず、管理端末5に直接的に入力される場合もある。例えば、AV測定センサ6で測定された酸価の測定値AVmは、クラウドサーバ4を介さずにAV測定センサ6から管理端末5に直接的に出力されてもよい。また、例えば、揚げ油Pの継続使用日数Dおよび未達再生交換回数Nについても、クラウドサーバ4とは異なるサーバでカウントが行われた場合には、そのサーバから管理端末5に出力され、店舗の従業員がカウントした場合には、管理端末5に直接入力される。
【0050】
「揚げ油Pに係るコストに関する情報」には、揚げ油Pに係るコストをどの程度削減することが可能であるかを示す削減可能要素としての削減期待値(揚げ油Pに係るコストの削減に対する期待値)EVが含まれる。
【0051】
(クラウドサーバ4の機能を実現するハードウェア構成)
次に、クラウドサーバ4の機能を実現するハードウェア構成について、図2を参照して説明する。
【0052】
図2は、第1実施形態に係るクラウドサーバ4のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0053】
クラウドサーバ4の機能を実現するコンピュータ(例えば、クラウドシステムを提供する会社などが所有するコンピュータ)は、ハードウェア構成として、CPU(Central Processing Unit)40Aと、RAM(Random Access Memory)40Bと、ROM(Read Only Memory)40Cと、HDD(Hard Disk Drive)40Dと、I/F(Interface)40Eと、を備える。これらの各構成は、共通バス40Fを介してそれぞれ接続されている。
【0054】
CPU40Aは、演算手段であり、クラウドサーバ4の全体の動作を制御する。
【0055】
RAM40Bは、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、例えばCPU40Aが管理情報を処理する際の作業領域として用いられる。
【0056】
ROM40Cは、読み出し専用の不揮発性の記憶媒体であり、ファームウェアなどのプログラムが格納されている。
【0057】
HDD40Dは、情報の読み書きが可能であって記憶容量が大きい不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や後述する各種の情報処理を実行するための制御プログラムおよびアプリケーションプログラムなどが格納される。
【0058】
なお、HDD40Dは、不揮発性の記憶媒体として情報の格納および管理の機能を実現するものであれば、デバイスの種類は問わず、例えばSSD(Solid State Drive)などで代用することも可能である。
【0059】
I/F40Eは、通信ネットワークとの接続インターフェースであって、各店舗の店舗端末3および管理端末5などが接続されている。
【0060】
このようなハードウェア構成を備えるクラウドサーバ4は、ROM40Cに格納された制御プログラムや、HDD40Dなどの記憶媒体からRAM40Bにロードされた制御プログラムおよびアプリケーションプログラムを、CPU40Aが備える演算機能によって処理機能を実現する情報処理装置である。
【0061】
これら情報処理の実行によって、クラウドサーバ4における種々の機能モジュールを含むソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、上記の構成を含むハードウェア資源との組み合わせによって、クラウドサーバ4の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0062】
なお、クラウドサーバ4と情報通信可能に接続されている各店舗の店舗端末3および管理端末5のそれぞれについても、上記のハードウェア構成と同様のハードウェア構成を備える。また、油脂管理装置がクラウドではなくサーバ装置で構成されている場合には、サーバ装置が、上記のハードウェア構成を備えることとなる。
【0063】
(クラウドサーバ4の機能構成)
次に、クラウドサーバ4が有する機能構成について、図3および図4を参照して説明する。
【0064】
図3は、第1実施形態に係るクラウドサーバ4が有する機能を示す機能ブロック図である。図4は、廃油基準値AVthと酸価の測定値AVmとの差分AVdと重み係数αとの関係の一例を示す表である。
【0065】
クラウドサーバ4は、データ取得部41と、差分算出部42と、重み付け部43と、記憶部44と、報知部45と、を含む。
【0066】
データ取得部41は、揚げ油Pの未達再生交換回数(未達油Puの再生交換回数)Nと、N回分の各未達油Puの酸価の測定値AVmと、を管理端末5から取得する。
【0067】
差分算出部42は、揚げ油Pの廃油基準値AVthとデータ取得部41にて取得された各未達油Puの酸価の測定値AVmとの差分AVd(=AVth-AVm)をそれぞれ算出する。例えば、データ取得部41にて取得された揚げ油Pの未達再生交換回数Nが3回であった場合には(N=3)、差分算出部42は、3回分の差分AVdをそれぞれ算出する。
【0068】
ここで、廃油基準値AVthを2.5とすると、未達油Puの酸価の測定値AVmが1.0である場合には、差分AVdは1.5(=2.5-1.0)となり、未達油Puの酸価の測定値AVmが1.8である場合には、差分AVdは0.7(=2.5-1.8)となり、未達油Puの酸価の測定値AVmが2.2である場合には、差分AVdは0.3(=2.5-2.2)となる。当然ながら、未達油Puの酸価の測定値AVmが小さいほど差分AVdは大きくなり、廃油基準値AVthからの乖離幅が大きくなる。
【0069】
重み付け部43は、データ取得部41にて取得された揚げ油Pの未達再生交換回数Nに対し、差分算出部42にて算出された差分AVdに対応した重み係数αをそれぞれ掛け合わせて、削減期待値EVを算出する。
【0070】
重み係数αは、廃油基準値AVthと揚げ油Pの酸価の測定値AVm(劣化指標値)との差分AVdに応じて設定された係数であって、例えば、図4に示すように、差分AVdが0.1以上0.5未満である場合には1に、差分AVdが0.5以上1.0未満である場合には1.5に、差分AVdが1.0以上である場合には2に、それぞれ設定されている。すなわち、重み係数αは、差分AVdが大きくなるほど数が大きくなるように設定されている。
【0071】
上記の例では、未達油Puの酸価の測定値AVmが1.0のとき、重み係数αは2となり、未達油Puの酸価の測定値AVmが1.8のとき、重み係数αは1.5となり、未達油Puの酸価の測定値AVmが2.2のとき、重み係数αは1となる。
【0072】
したがって、廃油基準値AVthを2.5とし、揚げ油Pの未達再生交換回数Nが3回であって、初回の未達油Puの酸価の測定値AVmが1.0、2回目の未達油Puの酸価の測定値AVmが1.8、3回目の未達油Puの酸価の測定値AVmが2.2となっている場合には、削減期待値EVは、[1]×2+[1]×1.5+[1]×1で4.5となる(EV=4.5)。この例では、未達再生交換回数Nが3回であるのに対して、削減期待値EVは4.5となる。
【0073】
削減期待値EVは、揚げ油Pに係るコストをどの程度削減することが可能であるかを示す削減可能要素であって、重み付けされた未達再生交換回数N(揚げ油Pの価値)に相当する。この削減期待値EVは、未達再生交換回数Nに対する相対値が大きくなるほど、揚げ油Pに係るコストの削減幅が大きくなる。例えば、未達再生交換回数Nが2回のとき、削減期待値EVが2.5である場合と4.0である場合とでは、削減期待値EVが4.0である場合の方が揚げ油Pに係るコストの削減幅が大きく、コストを大幅に削減できる可能性が高くなる。
【0074】
なお、重み係数αは、必ずしも図4に示す通りに設定されている必要はなく、店舗の規模、揚げ種Qの種類や揚げ個数、および揚げ油Pの種類などに応じて適宜設定することが可能である。
【0075】
記憶部44には、廃油基準値AVthおよび差分AVdに応じて設定された複数の重み係数αがそれぞれ記憶されている。
【0076】
報知部45は、未達再生交換回数Nおよび重み付け部43にて算出された削減期待値EVを報知するための報知信号を管理端末5に対して出力する。すなわち、本実施形態では、クラウドサーバ4は、揚げ油Pの未達再生交換回数Nに対して重み付けを行い、重み付けされた未達再生交換回数Nを揚げ油Pに係るコストの削減期待値EVとして、管理端末5に対して出力する。
【0077】
これにより、管理端末5には、未達再生交換回数Nと共に削減期待値EVが表示されるため、管理者は、コストの削減が必要な店舗に対し、揚げ油Pに係るコストをどの程度削減することが可能であるか具体的に把握することができる。
【0078】
なお、報知部45は、必ずしも未達再生交換回数Nおよび削減期待値EVの両方を含む報知信号を出力する必要はなく、少なくとも削減期待値EVに係る報知信号を出力すればよい。
【0079】
(クラウドサーバ4内で実行される処理)
次に、クラウドサーバ4内で実行される処理の流れについて、図5を参照して説明する。
【0080】
図5は、第1実施形態に係るクラウドサーバ4で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0081】
クラウドサーバ4では、まず、データ取得部50が、管理端末5から出力された未達再生交換回数Nおよび各未達油Puの酸価の測定値AVmをそれぞれ取得する(ステップS401)。
【0082】
次に、差分算出部42は、記憶部44に記憶されている廃油基準値AVthとステップS401において取得された各未達油Puの酸価の測定値AVmとの差分AVd(=AVth-AVm)をそれぞれ算出する(ステップS402;差分算出ステップ)。
【0083】
次に、重み付け部43は、記憶部44に記憶されている複数の重み係数αの中から、ステップS402において算出された差分AVdに対応した重み係数αを読み出し、ステップS401において取得された未達再生交換回数Nに対して読み出した重み係数αをそれぞれ掛け合わせて削減期待値EVを算出する(ステップS403;重み付けステップ)。
【0084】
そして、報知部45は、ステップS401において取得された未達再生交換回数NおよびステップS403において算出された削減期待値EVに係る報知信号を管理端末5に対して出力し(ステップS404;報知ステップ)、クラウドサーバ4内における処理が終了する。
【0085】
このように、クラウドサーバ4が、廃油基準値AVthと未達油Puの測定値AVmとの差分AVdを考慮して、未達再生交換回数Nに対して重み付けを行って削減期待値EVを算出することにより、揚げ油Pの管理者は、削減することが可能な揚げ油Pに係るコストを精度良く試算することができる。
【0086】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るクラウドサーバ4Aについて、図6および図7を参照して説明する。なお、図6および図7において、第1実施形態に係るクラウドサーバ4について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0087】
図6は、第2実施形態に係るクラウドサーバ4Aが有する機能を示す機能ブロック図である。図7は、第2実施形態に係るクラウドサーバ4Aで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0088】
本実施形態では、クラウドサーバ4Aは、未達再生交換回数Nに対して重み付けを行った第1実施形態とは異なり、揚げ油Pの価格に重み付けを行う。そして、クラウドサーバ4Aは、重み付けされた揚げ油Pの価格を揚げ油Pに係るコストの削減可能価格Yとして、管理端末5に対して出力する。
【0089】
図6に示すように、クラウドサーバ4Aは、データ取得部41Aと、差分算出部42と、重み付け部43Aと、記憶部44Aと、報知部45Aと、単位量価格算出部46と、を含む。
【0090】
データ取得部41Aは、管理端末5から各未達油Puの酸価の測定値AVmを取得する。なお、第1実施形態におけるデータ取得部41と同様に、本実施形態におけるデータ取得部41Aも、各未達油Puの酸価の測定値AVmに加えて、未達再生交換回数Nを取得してもよい。
【0091】
単位量価格算出部46は、廃油基準値AVthでの揚げ油Pの価格を0円とした場合における揚げ油Pの単位劣化度あたりの単位量価格x[円/kg/AV]を算出する。この揚げ油Pの劣化度単位あたりの単位量価格xは、廃油基準値AVthを基準として劣化度(AV)が1上がると揚げ油Pの1kgあたりの価値がx円下がることを示し、具体的には、揚げ油Pの単位量あたりの新油価格を廃油基準値AVthで除算することにより求められる。
【0092】
なお、揚げ油Pの新油価格は、必ずしも揚げ油PがAV=0.0の新油の状態での価格に限られず、揚げ油Pが新油に近い劣化状態(誤差の範囲内でAVが0.0よりも大きい値となる状態)での価格であってもよい。
【0093】
例えば、揚げ油Pの単位量あたりの新油価格が250円/kgであって、廃油基準値AVthが酸価2.5である場合(AVth=2.5)、揚げ油Pの単位劣化度あたりの単位量価格xは、250[円/kg]÷2.5=100[円/kg/AV]となる。したがって、この例では、揚げ油Pの酸価が1上がる毎に、揚げ油Pの1kgあたりの価値が100円下がることになる。
【0094】
換言すれば、揚げ油Pの酸価が廃油基準値2.5よりも1下回っていると、揚げ油Pの1kgあたりの価値が100円分あることになる。例えば、揚げ油Pの酸価の測定値AVmが1.5のときに廃油してしまうと、1kgあたり100円分の揚げ油Pの価値を失う、すなわち揚げ油Pに係るコストを1kgあたり100円分削減することが可能であったことを意味する。
【0095】
重み付け部43Aは、単位量価格算出部46にて算出された揚げ油Pの単位劣化度あたりの単位量価格xと、揚げ油Pの使用量としてのフライヤー2の油槽21の容量Wと、差分算出部42にて算出された差分AVdと、を掛け合わせて、未達油Puの削減可能価格Yを算出する。この削減可能価格Yは、揚げ油Pに係るコストをどの程度削減することが可能であるかを示す削減可能要素であって、重み付けされた揚げ油Pの価値に相当する。
【0096】
ここで、油槽21の容量Wが10[kg]のフライヤー2において、揚げ油Pの廃油(新油への交換)が5回/月ほど行われた場合を例に挙げて説明する。
【0097】
まず、1回目の廃油時における揚げ油Pの酸価の測定値AVmが1.0であった場合、差分AVdは2.5-1.0=1.5となり、未達油Puの削減可能価格Yは、1.5[AV]×100[円/kg/AV]×10[kg]=15,000[円]となる。
【0098】
続いて、2回目の廃油時における揚げ油Pの酸価の測定値AVmが2.5であった場合、廃油基準値AVthで廃油がなされているため、差分AVdは2.5-2.5=0.0となり、未達油Puの削減可能価格Yは、0.0[AV]×100[円/kg/AV]×10[kg]=0[円]となる。
【0099】
次に、3回目の廃油時における揚げ油Pの酸価の測定値AVmが1.8であった場合、差分AVdは2.5-1.8=0.7となり、未達油Puの削減可能価格Yは、0.7[AV]×100[円/kg/AV]×10[kg]=7,000[円]となる。
【0100】
そして、4回目の廃油時における揚げ油Pの酸価の測定値AVmが2.7であった場合、廃油基準値AVthを超えているため、差分AVdを0.0として、未達油Puの削減可能価格Yは、2回目の廃油時と同様に、0.0[AV]×100[円/kg/AV]×10[kg]=0[円]となる。
【0101】
なお、廃油時における揚げ油Pの酸価の測定値AVmが廃油基準値AVthを超えている場合、その差分AVdだけ揚げ油Pの価値が下がることになるが、未達油Puの削減可能価格Yを算出するにあたっては考慮する必要がないため、差分AVdを0.0としている。
【0102】
最後に、5回目の廃油時における揚げ油Pの酸価の測定値AVmが2.2であった場合、差分AVdは2.5-2.2=0.3となり、未達油Puの削減可能価格Yは、0.3[AV]×100[円/kg/AV]×10[kg]=3,000[円]となる。
【0103】
したがって、この例の場合には、削減可能価格Yは、15,000[円]+0[円]+7,000[円]+0[円]+3,000[円]=25,000[円]となる(Y=25,000円)。すなわち、この例の店舗では、25,000[円]ほどの価値のある揚げ油Pを1ヶ月間で廃油していたことになる。
【0104】
なお、単位量あたりの揚げ油Pの新油価格(250円/kg)および揚げ油Pの使用量に相当する油槽21の容量W(10kg)はそれぞれ、廃油基準値AVthと同様にして、予め記憶部44Aに記憶されている。
【0105】
報知部45Aは、本実施形態では、未達再生交換回数Nおよび重み付け部43Aにて算出された削減可能価格Yを報知するための報知信号を管理端末5に対して出力する。すなわち、クラウドサーバ4Aは、揚げ油Pの価格に重み付けを行い、重み付けされた揚げ油Pの価格を揚げ油Pに係るコストの削減可能価格Yとして、管理端末5に対して出力する。
【0106】
これにより、管理端末5には、未達再生交換回数Nと共に削減可能価格Yが表示されるため、管理者は、コストの削減が必要な店舗に対し、揚げ油Pに係るコストをどの程度削減することが可能であるか具体的な価格で把握することができる。
【0107】
なお、報知部45Aは、必ずしも未達再生交換回数Nおよび削減可能価格Yの両方を含む報知信号を出力する必要はなく、少なくとも削減可能価格Yに係る報知信号を出力すればよい。
【0108】
図7に示すように、クラウドサーバ4Aでは、まず、データ取得部41Aが、管理端末5から出力された未達再生交換回数Nおよび各未達油Puの酸価の測定値AVmをそれぞれ取得する(ステップS411)。
【0109】
続いて、差分算出部42は、記憶部44Aに記憶されている揚げ油Pの廃油基準値AVthとステップS411において取得された各未達油Puの酸価の測定値AVmとの差分AVd(=AVth-AVm)をそれぞれ算出する(ステップS412;差分算出ステップ)。
【0110】
次に、単位量価格算出部46は、記憶部44Aに記憶されている揚げ油Pの廃油基準値AVthおよび揚げ油Pの単位量あたりの新油価格に基づいて、揚げ油Pの単位劣化度あたりの単位量価格xを算出する(ステップS413;単位量価格算出ステップ)。
【0111】
なお、本実施形態に係るクラウドサーバ4Aでは、揚げ油Pの単位劣化度あたりの単位量価格xを算出する処理(ステップS413)が、差分AVdの算出処理(ステップS412)の後に実行されているが、これに限られず、次の重み付けステップ(ステップS414)よりも前であればどのタイミングで実行されてもよい。
【0112】
次に、重み付け部43Aは、ステップS413において算出された揚げ油Pの単位劣化度あたりの単位量価格xと、記憶部44Aに記憶されている油槽21の容量Wと、ステップS412において算出された差分AVdと、を掛け合わせて、未達油Puの削減可能価格Yを算出する(ステップS414;重み付けステップ)。
【0113】
そして、報知部45Aは、ステップS411において取得された未達再生交換回数NおよびステップS414において算出された未達油Puの削減可能価格Yに係る報知信号を管理端末5に対して出力し(ステップS415;報知ステップ)、クラウドサーバ4A内における処理が終了する。
【0114】
このように、本実施形態においても、クラウドサーバ4Aが、廃油基準値AVthと未達油Puの測定値AVmとの差分AVdを考慮して、揚げ油Pの価格に重み付けを行って削減可能価格Yを算出することにより、揚げ油Pの管理者は、削減することが可能な揚げ油Pに係るコストを精度良く試算することができる。
【0115】
以上、本発明の各実施形態について説明した。なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、各実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0116】
例えば、上記の各実施形態では、複数の店舗を展開するチェーン店における揚げ油Pに係るコストの管理を想定して説明したが、これに限られず、例えば、複数の店舗を有しない個人経営の商店などに適用してもよい。
【0117】
また、上記の各実施形態では、油脂として食用油である揚げ油Pを例に挙げて説明したが、これに限られず、鉱業油などの油脂であってもよい。
【0118】
また、上記の各実施形態では、揚げ油Pに係るコストの削減可能要素として削減期待値EVおよび削減可能価格Yを例に挙げて説明したが、これに限られず、揚げ油Pに係るコストを削減することが可能であるかどうかを示すことができるパラメータであれば、パラメータの種類について特に制限はない。
【0119】
また、上記の各実施形態では、揚げ油Pの劣化指標値として酸価(AV)を例に挙げて説明したが、必ずしも酸価である必要はなく、具体的な数値で測定することが可能な劣化指標値であればよい。
【符号の説明】
【0120】
4,4A:クラウドサーバ(油脂管理装置)
42:差分算出部
43,43A:重み付け部
44,44A:記憶部
45,45A:報知部
46:単位量価格算出部
AVd:差分
AVth:廃油基準値
EV:削減期待値(削減可能要素)
N:未達再生交換回数
P:揚げ油(油脂)
W:容量(揚げ油の使用量)
x:単位劣化度あたりの単位量価格
Y:削減可能価格(削減可能要素)
α:重み係数
【要約】
削減することが可能な油脂に係るコストを精度良く試算することができる油脂管理装置および油脂管理方法を提供する。
油脂としての揚げ油Pに係るコストを管理するクラウドサーバ4,4Aであって、揚げ油Pの廃油基準値AVthが記憶された記憶部44,44Aと、廃油基準値AVthと廃油時点に至っていない状態で再生または交換された揚げ油Pの酸価の測定値AVmとの差分AVdを算出する差分算出部42と、廃油時点に至っていない状態で再生または交換された揚げ油Pの価値に対し、差分算出部42にて算出された差分AVdに応じた重み付けを行う重み付け部43,43Aと、重み付け部43,43Aにて重み付けがなされた揚げ油Pの価値を、揚げ油Pに係るコストの削減可能要素として報知するための報知信号を出力する報知部45,45Aと、を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7