(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-02
(45)【発行日】2025-06-10
(54)【発明の名称】鼻腔洗浄用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/14 20170101AFI20250603BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250603BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20250603BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20250603BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20250603BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20250603BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20250603BHJP
A61K 31/14 20060101ALI20250603BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20250603BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20250603BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20250603BHJP
【FI】
A61K47/14
A61K9/08
A61K9/12
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/18
A61K31/14
A61P11/02
A61K47/26
A61K47/44
(21)【出願番号】P 2020207441
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 貴史
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-258070(JP,A)
【文献】特開2016-137233(JP,A)
【文献】特表2015-520622(JP,A)
【文献】特開2005-279251(JP,A)
【文献】特開2006-151955(JP,A)
【文献】特開2014-196367(JP,A)
【文献】特開2003-146891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防腐剤、増粘剤、及びノニオン性界面活性剤を含有
し、
前記防腐剤が、パラオキシ安息香酸エステルを含み、
前記増粘剤が、カルメロース及びその塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びポリビニルメチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である、鼻腔洗浄用組成物。
【請求項2】
前記防腐剤が、
さらに第四級アンモニウム塩
を含む、請求項1に記載の鼻腔洗浄用組成物。
【請求項3】
滴下又は噴霧により鼻腔内に内容物を液滴状にして吐出できる容器に収容されている、請求項1
又は2に記載の鼻腔洗浄用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防腐剤及び増粘剤を含み、白濁が抑制されている鼻腔洗浄用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鼻腔粘膜は、直接外界に露出されており、外界からの刺激に対して敏感に反応する上皮組織である。鼻腔粘膜に、花粉、微生物、ハウスダスト等の異物が付着すると、耐え難い不快感を生じたり、アレルギー疾患や感染症等の各種疾患を発症したりすることが知られている。このような鼻腔粘膜症状を予防又は改善するには、鼻腔洗浄用組成物によって粘膜に付着した異物を除去することが有効になる。
【0003】
鼻腔洗浄用組成物には、外出時に使用したり、繰り返し使用したりすることがあるため、防腐性能を有していることが求められている。そこで、従来、塩化ベンザルコニウム等の防腐剤を配合した鼻腔洗浄用組成物の処方が種々報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鼻腔洗浄用組成物の使用感の向上、鼻腔洗浄用組成物を液滴状で鼻腔内に導入する場合には形成させる液滴の粒径の制御等を図るために、増粘剤の配合が有効である。そこで、本発明者は、防腐剤及び増粘剤を含む鼻腔洗浄用組成物を開発すべく検討を進めたところ、防腐剤及び増粘剤を含む鼻腔洗浄用組成物では、白濁が生じ、外観性状の悪化が生じることを知得した。
【0006】
そこで、本発明は、防腐剤及び増粘剤を含み、白濁が抑制されている鼻腔洗浄用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、鼻腔洗浄用組成物において、防腐剤及び増粘剤と共にノニオン性界面活性剤を配合することによって、白濁を抑制し、優れた外観性状を備えさせ得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 防腐剤、増粘剤、及びノニオン性界面活性剤を含有する、鼻腔洗浄用組成物。
項2. 前記防腐剤が、パラオキシ安息香酸エステル及び/又は第四級アンモニウム塩である、項1に記載の鼻腔洗浄用組成物。
項3. 前記増粘剤が、セルロース系増粘剤及び/又はポリビニル系増粘剤である、項1又は2に記載の鼻腔洗浄用組成物。
項4. 前記ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である、項1~3のいずれかに記載の鼻腔洗浄用組成物。
項5. 滴下又は噴霧により鼻腔内に内容物を液滴状にして吐出できる容器に収容されている、項1~4のいずれかに記載の鼻腔洗浄用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の鼻腔洗浄用組成物は、防腐剤及び増粘剤を含んでいながらも、白濁を抑制し、優れた外観性状を備えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.鼻腔洗浄用組成物
本発明の鼻腔洗浄用組成物は、防腐剤、増粘剤、及びノニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする。以下、本発明の鼻腔洗浄用組成物について詳述する。
【0011】
[防腐剤]
本発明の鼻腔洗浄用組成物は、防腐剤を含有する。本発明の鼻腔洗浄用組成物では防腐剤を含むことにより、防腐性能を具備することが可能になっている。
【0012】
本発明で使用される防腐剤については、鼻腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、第四級アンモニウム塩、クロロブタノール、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン酢酸塩、デヒドロ酢酸又はその塩、ベンジルアルコール、塩化亜鉛、パラクロルメタキシレノール、クロルクレゾール、フェネチルアルコール、塩化ポリドロニウム、チメロサール、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
【0013】
これらの防腐剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
これらの防腐剤の中でも、好ましくはパラオキシ安息香酸エステル、第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0015】
パラオキシ安息香酸エステルとは、パラオキシ安息香酸のアルキルエステル又はベンジルエステルである。パラオキシ安息香酸のアルキルエステルにおけるアルキル基としては、例えば、炭素数1~5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。パラオキシ安息香酸エステルとして、具体的には、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。これらのパラオキシ安息香酸エステルの中でも、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピルが挙げられる。
【0016】
第四級アンモニウム塩としては、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム等が挙げられる。これらの第四級アンモニウム塩は、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。これらの第四級アンモニウム塩の中でも、好ましくは塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
【0017】
防腐剤としてパラオキシ安息香酸エステルと第四級アンモニウム塩とを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、パラオキシ安息香酸エステルの総量100重量部当たり、第四級アンモニウム塩が総量で0.01~20重量部、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは1~5重量部が挙げられる。
【0018】
本発明の鼻腔洗浄用組成物における防腐剤の含有量については、使用する防腐剤の種類、備えさせるべき防腐性能等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、防腐剤の総量で0.00005~0.6重量%、好ましくは0.0001~0.5重量%、より好ましくは0.001~0.35重量%が挙げられる。より具体的には、防腐剤としてパラオキシ安息香酸エステルを使用する場合であれば、パラオキシ安息香酸エステルの含有量として、0.005~0.5重量%、好ましくは0.01~0.4重量%、より好ましくは0.05~0.2重量%が挙げられる。また、防腐剤として第四級アンモニウム塩を使用する場合であれば、第四級アンモニウム塩の含有量として、例えば、0.00005~0.1重量%、好ましくは0.0001~0.1重量%、より好ましくは0.001~0.01重量%が挙げられる。
【0019】
[増粘剤]
本発明の鼻腔洗浄用組成物には、増粘剤が含まれる。
【0020】
本発明で使用される増粘剤については、鼻腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、セルロース系増粘剤、ポリビニル系増粘剤、増粘多糖類、アクリル酸系増粘剤等が挙げられる。
【0021】
セルロース系増粘剤としては、具体的には、カルメロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらのセルロース系増粘剤は、塩の形態であってもよい。塩の形態のセルロース系増粘剤としては、例えば、カルメロースナトリウム等が挙げられる。
【0022】
ポリビニル系増粘剤としては、具体的には、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテルが挙げられる。
【0023】
増粘多糖類としては、具体的には、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸等が挙げられる。これらの増粘多糖類は、塩の形態であってもよい。塩の形態の増粘多糖類としては、例えば、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0024】
アクリル酸系増粘剤としては、具体的には、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムベントナイト等が挙げられる。
【0025】
これらの増粘剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
これらの増粘剤の中でも、好ましくはセルロース系増粘剤、ポリビニル系増粘剤、より好ましくはカルメロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマーが挙げられる。
【0027】
本発明の鼻腔洗浄用組成物における増粘剤の含有量については、使用する増粘剤の種類、付与すべき粘性等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、増粘剤の総量で0.005~2重量%、好ましくは0.05~1重量%、より好ましくは0.1~0.5重量%が挙げられる。
【0028】
本発明の鼻腔洗浄用組成物において、防腐剤と増粘剤の比率については、特に制限されないが、例えば、防腐剤の総量1重量部当たり、増粘剤が総量で0.01~50重量部、好ましくは0.1~25重量部、より好ましくは0.5~5重量部が挙げられる。
【0029】
[ノニオン性界面活性剤]
本発明の鼻腔洗浄用組成物は、ノニオン性界面活性剤を含有する。従来技術では、鼻腔洗浄用組成物において防腐剤と増粘剤を共存させると白濁が生じるが、本発明の鼻腔洗浄用組成物では、防腐剤及び増粘剤と共にノニオン性界面活性剤を含有させることにより、白濁を抑制して、優れた外観性状を備えさせることが可能になっている。
【0030】
本発明で使用されるノニオン性界面活性剤としては、鼻腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
これらのノニオン性界面活性剤の中でも、白濁をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0032】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する酸化エチレン(EO)の平均付加モル数としては、特に制限されないが、例えば、5~40モル、好ましくは10~30モル、より好ましくは15~25モルが挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数としては、特に制限されないが、例えば、10~22個、好ましくは14~22個、より好ましくは16~20個が挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとして、具体的には、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。これらのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの中でも、好ましくは酸化エチレン(EO)の平均付加モル数が20であるモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)、酸化エチレン(EO)の平均付加モル数が20であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60)が挙げられる。
【0033】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油における酸化エチレン(EO)の平均付加モル数としては、特に制限されないが、例えば、5~100モル、好ましくは20~80モル、より好ましくは40~80モルが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80が挙げられる。
が挙げられる。
【0034】
本発明の鼻腔洗浄用組成物におけるノニオン性界面活性剤の含有量としては、例えば、0.005~5重量%が挙げられる。白濁をより一層効果的に抑制するという観点から、本発明の鼻腔洗浄用組成物におけるノニオン性界面活性剤の含有量として、好ましくは0.01~2重量%、より好ましくは0.1~0.5重量%が挙げられる。
【0035】
本発明の鼻腔洗浄用組成物において、防腐剤とノニオン性界面活性剤の比率については、特に制限されないが、例えば、防腐剤の総量1重量部当たり、ノニオン性界面活性剤が総量で0.01~50重量部が挙げられる。白濁をより一層効果的に抑制するという観点から、防腐剤の総量1重量部当たり、ノニオン性界面活性剤が総量で、好ましくは0.1~25重量部、より好ましくは0.5~5重量部が挙げられる。
【0036】
[アルカリ金属の無機塩]
本発明の鼻腔洗浄用組成物は、浸透圧の調節等のために、必要に応じて、アルカリ金属の無機塩を含んでいてもよい。
【0037】
アルカリ金属の無機塩としては、鼻腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、アルカリ金属の塩化物、アルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。アルカリ金属の塩化物としては、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。アルカリ金属の炭酸塩としては、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのアルカリ金属の無機塩の中でも、好ましくはアルカリ金属の塩化物、更に好ましくは塩化ナトリウムが挙げられる。アルカリ金属の無機塩を含有させる場合、当該無機塩の含有量については、特に制限されないが、例えば、0.01~5重量%、好ましくは0.1~3重量%、より好ましくは0.3~2重量%が挙げられる。
【0038】
[多価アルコール]
本発明の鼻腔洗浄用組成物は、必要に応じて多価アルコールを含んでいてもよい。
【0039】
本発明で使用される多価アルコールとしては、鼻腔内に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等の3価アルコールが挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの多価アルコールの中でも、好ましくは2価アルコール、より好ましくはプロピレングリコールが挙げられる。多価アルコールを含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.3~2重量%が挙げられる。
【0040】
[その他の成分]
本発明の鼻腔洗浄用組成物には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、製剤化等に必要とされる他の基剤や添加剤が含まれていてもよい。このような基剤や添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、炭素数1~5の1価低級アルコール、ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤、アルカリ土類金属の無機塩、着色剤、粘稠剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、キレート剤、香料、無機塩類、水等の添加剤が挙げられる。これらの基材や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
また、本発明の鼻腔洗浄用組成物には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の薬理成分を含有していてもよい。このような薬理成分としては、例えば、ビタミン類、アミノ酸類、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、血行促進成分、収斂剤、清涼化剤、ムコ多糖類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
[剤型・用途・製品形態]
本発明の鼻腔洗浄用組成物は液剤であり、水に対して、配合される各成分を所定量添加して溶解させ、必要に応じて滅菌処理に供することにより調製される。
【0043】
本発明の鼻腔洗浄用組成物は、鼻腔内の洗浄に使用される。本発明の鼻腔洗浄用組成物を用いて鼻腔内を洗浄する方法としては、例えば、本発明の鼻腔洗浄用組成物を一方の鼻腔に導入し、当該鼻腔から当該鼻腔洗浄用組成物をそのまま流し出す方法;本発明の鼻腔洗浄用組成物を鼻腔に導入し、口から当該鼻腔洗浄用組成物を流し出す方法;本発明の鼻腔洗浄用組成物を一方の鼻腔に導入し、他方の鼻腔から当該鼻腔洗浄用組成物を流し出す方法等が挙げられる。また、本発明の鼻腔洗浄用組成物を鼻腔内に導入する際には、液滴状(特に、ミスト状)にして導入してもよく、また液流として導入してもよい。
【0044】
本発明の鼻腔洗浄用組成物は、鼻腔内に内容物を吐出できる容器に収容して使用される。当該容器は、滴下又は噴霧により内容物を液滴状にして吐出できる容器であってもよく、また、内容物を液流として吐出できる容器であってもよい。本発明の鼻腔洗浄用組成物は、増粘剤を含むことにより、液滴状(特に、ミスト状)にして吐出させるのに適した特性を有しているため、本発明の鼻腔洗浄用組成物を収容する容器の好適な一例として、滴下又は噴霧により鼻腔内に内容物を液滴状にして吐出できる容器が挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
試験例1
表1に示す組成の鼻腔洗浄用組成物(液剤)を調製した。得られた鼻腔洗浄用組成物を200ml容のガラス瓶に充填し、鼻腔洗浄用組成物の外観を目視にて観察し、「全体に亘って白濁は全く認められず、澄明な状態」を15点、「全体が白濁しており、完全に不透明な状態になっている状態」を1点として、白濁の程度を1~15点の間で評点化した。
【0047】
結果を表1に示す。防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル及び/又は塩化ベンザルコニウム)と増粘剤(カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はカルボキシビニルポリマー)を含み、ノニオン性界面活性剤を含まない鼻腔洗浄用組成物では、顕著な白濁が認められた(比較例1~6)。なお、比較例1~6の各鼻腔洗浄用組成物において、増粘剤を配合しないように組成変更した場合には、白濁は認められず、澄明な外観であった。
【0048】
一方、防腐剤と増粘剤と共に、ノニオン性界面活性剤(ポリソルベート80又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)を含む鼻腔洗浄用組成物では、白濁が抑制され、澄明な外観を有していた(実施例1~7)。防腐剤及びカルメロースナトリウムを含み、ノニオン性界面活性剤を含まない鼻腔洗浄用組成物(比較例1)では、特に顕著に白濁が認められたのに対し、これにポリソルベート80を含む鼻腔洗浄用組成物(実施例3)では、格別顕著に白濁が抑制され、澄明な外観を有していた。また、実施例3の鼻腔洗浄用組成物のカルメロースナトリウムの含有量を0.5重量%に変更しても顕著に白濁が抑制され、澄明な外観を有していた。
【0049】
【0050】
試験例2
表1の比較例1~5、並びに実施例1及び3~7の鼻腔洗浄用組成物におけるパラオキシ安息香酸メチルを、パラオキシ安息香酸エチル又はパラオキシ安息香酸プロピルに変更した鼻洗浄用組成物を調製し、試験例1と同様の方法で白濁の程度を評価した。ノニオン性界面活性剤を含まない鼻洗浄用組成物において、パラオキシ安息香酸エチル又はパラオキシ安息香酸プロピルを含む場合には、比較例1~5と同様に白濁が認められた。これに対して、パラオキシ安息香酸エチル又はパラオキシ安息香酸プロピルと共にノニオン性界面活性剤を含む場合には、実施例1及び3~7と同様に白濁が抑制され澄明な外観を有していた。
【0051】
試験例3
表1の実施例1~6の鼻腔洗浄用組成物におけるポリソルベート80をモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60)又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80に変更した鼻洗浄用組成物を調製し、試験例1と同様の方法で白濁の程度を評価したところ、実施例1~6と同様に白濁が抑制され澄明な外観を有していた。
【0052】
処方例
表2に示す組成の鼻腔洗浄用組成物を調製した。得られた鼻腔洗浄用組成物について、試験例1と同様の方法で、白濁の程度を評価したところ、処方例1~5の鼻腔洗浄用組成物は、いずれも白濁は抑制され、澄明な外観を有していた。
【0053】