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特許7691272金属含有シリルオキシ化合物、金属含有シリルオキシ基被覆粒子、その製造方法、及び分散組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-03
(45)【発行日】2025-06-11
(54)【発明の名称】金属含有シリルオキシ化合物、金属含有シリルオキシ基被覆粒子、その製造方法、及び分散組成物
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20250604BHJP
   C07F 9/32 20060101ALI20250604BHJP
   C01G 23/047 20060101ALI20250604BHJP
   C07F 7/28 20060101ALN20250604BHJP
   C07F 19/00 20060101ALN20250604BHJP
【FI】
C07F7/18 Z
C07F9/32 CSP
C01G23/047
C07F7/28 Z
C07F19/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021069877
(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2022164407
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】廖 日淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 道仁
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-211773(JP,A)
【文献】国際公開第2020/106860(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0255456(US,A1)
【文献】特表2016-533533(JP,A)
【文献】特開2010-47452(JP,A)
【文献】REGISTRY(STN) [オンライン],2017年10月11日,[検索日 2022.06.01],CAS登録番号 2133837-28-0
【文献】REGISTRY(STN) [オンライン],2017年10月11日,[検索日 2022.06.01],CAS登録番号 2133837-27-9
【文献】REGISTRY(STN) [オンライン],2017年10月11日,[検索日 2022.06.01],CAS登録番号 2133837-24-6
【文献】REGISTRY(STN) [オンライン],2017年10月11日,[検索日 2022.06.01],CAS登録番号 2133837-23-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C01G
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記式(3)で表される化合物。
【化1】
(式中、 は、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、又は炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基を表し、
は、OR で表される基、又は下記式(2)で表される基を表し、
は、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基、炭素原子数5~30のアルキルアセトアセテート基、2,4-ペンタンジオナト基、又は2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト基を表し、
n1及びn2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表し、但し、n1+2×n2は、Lの種類により決まる価数であり、
Lは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、スズ、バナジウム、又はタンタルを表し、
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基又はL(Rn1(O)n2で表される基を表す。)
【化2】
(式中、R 及びR は、酸素原子を有していてもよい、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、又は炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記化合物は下記式(30)で表される請求項1に記載の化合物。
【化3】
(式中、R、R、n1、n2、及びLは、前記の通りであり、R60及びR70は、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、又は炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基を表す。)
【請求項3】
下記式(1)で表される構造を表面に有する粒子。
【化4】
(式中、
は、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、又は炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基を表し、
は、ORで表される基、又は下記式(2)で表される基を表し、
は、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基、炭素原子数5~30のアルキルアセトアセテート基、2,4-ペンタンジオナト基、又は2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト基を表し、
n1及びn2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表し、但し、n1+2×n2は、Lの種類により決まる価数であり、
Lは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、スズ、バナジウム、又はタンタルを表し、
*は結合手を表す。)
【化5】
(式中、R及びRは、酸素原子を有していてもよい、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、又は炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基を表す。)
【請求項4】
請求項に記載の粒子を含む、分散組成物。
【請求項5】
下記式(1)で表される構造を表面に有する粒子の製造方法であって、
前記製造方法は、
水酸基を表面に有する粒子を、下記式(30)で表される化合物と反応させて、下記式(1)で表される構造を表面に有する粒子を得る粒子被覆工程
を有し、又は、
前記製造方法は、
水酸基を表面に有する粒子を、下記式(4)で表される化合物と反応させて、下記式(5)で表される構造を表面に有する粒子を得る第一の反応工程と、
第一の反応工程で得た粒子を、下記式(6)で表される化合物と反応させて、下記式(1)で表される構造を表面に有する粒子を得る第二の反応工程と、
を有する
製造方法。
【化6】
(式中、
は、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、又は炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基を表し、
は、ORで表される基、又は下記式(2)で表される基を表し、
は、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基、炭素原子数5~30のアルキルアセトアセテート基、2,4-ペンタンジオナト基、又は2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト基を表し、
n1及びn2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表し、但し、n1+2×n2は、Lの種類により決まる価数であり、
Lは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、スズ、バナジウム、又はタンタルを表し、
*は結合手を表す。)
【化7】
(式中、R及びRは、酸素原子を有していてもよい、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、又は炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基を表す。)
【化8】
(式中、R、R、n1、n2、及びLは、前記の通りであり、R60及びR70は、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、又は炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基を表す。)
【化9】
(式中、R、R60、及びR70は、前記の通りであり、Rは、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、又は炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基を表す。)
【化10】
(式中、R及びRは、前記の通りである。)
O-L(Rn1(O)n2 (6)
(式中、R、n1、n2、及びLは、前記の通りであり、Rは、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、又は炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属含有シリルオキシ化合物、金属含有シリルオキシ基被覆粒子、その製造方法、及び分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部材の形成に、高屈折率材料が用いられている。高屈折率材料として、例えば、酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子を有機成分に分散させた組成物が用いられている。金属酸化物粒子の分散性を向上させるための方法として、金属酸化物粒子の表面をキャッピング剤でキャップする方法が知られている。キャッピング剤としては、例えば、n-プロピルトリメトキシシラン等のオルガノシランが公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6698591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、光学部材に求められる性能が向上していることに伴い、高屈折率材料に求められる屈折率も向上している。
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、分散性及び屈折率に優れる粒子を与えるキャッピング剤として用いられる化合物、該化合物で表面が被覆された粒子、その製造方法、及び該粒子を含む分散組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、所定の金属含有シリルオキシ化合物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
本発明の第一の態様は、下記式(1)で表される構造を有する化合物である。
【0008】
【化1】
(式中、
は、炭素原子数1~30の有機基を表し、
は、ORで表される基、又は下記式(2)で表される基を表し、
は、炭素原子数1~30の有機基を表し、
n1及びn2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表し、但し、n1+2×n2は、Lの種類により決まる価数であり、
Lは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、スズ、バナジウム、又はタンタルを表し、
*は結合手を表す。)
【0009】
【化2】
(式中、R及びRは、酸素原子を有していてもよい炭素原子数1~30の有機基を表す。)
【0010】
本発明の第二の態様は、上記式(1)で表される構造を表面に有する粒子である。
【0011】
本発明の第三の態様は、上記粒子を含む、分散組成物である。
【0012】
本発明の第四の態様は、上記式(1)で表される構造を表面に有する粒子の製造方法であって、
前記製造方法は、
水酸基を表面に有する粒子を、下記式(30)で表される化合物と反応させて、上記式(1)で表される構造を表面に有する粒子を得る粒子被覆工程
を有し、又は、
前記製造方法は、
水酸基を表面に有する粒子を、下記式(4)で表される化合物と反応させて、下記式(5)で表される構造を表面に有する粒子を得る第一の反応工程と、
第一の反応工程で得た粒子を、下記式(6)で表される化合物と反応させて、上記式(1)で表される構造を表面に有する粒子を得る第二の反応工程と、
を有する
製造方法。
【0013】
【化3】
(式中、R、R、n1、n2、及びLは、前記の通りであり、R60及びR70は、炭素原子数1~30の有機基を表す。)
【0014】
【化4】
(式中、R、R60、及びR70は、前記の通りであり、Rは、炭素原子数1~30の有機基を表す。)
【0015】
【化5】
(式中、R及びRは、前記の通りである。)
O-L(Rn1(O)n2 (6)
(式中、R、n1、n2、及びLは、前記の通りであり、Rは、炭素原子数1~30の有機基を表す。)
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、分散性及び屈折率に優れる粒子を与えるキャッピング剤として用いられる化合物、該化合物で表面が被覆された粒子、その製造方法、及び該粒子を含む分散組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<式(1)で表される構造を有する化合物>
本発明に係る化合物は、上記式(1)で表される構造を有する。上記化合物は、分散性及び屈折率に優れる粒子を与えるキャッピング剤として用いることができる。
【0018】
上記式(1)中、Rが表す炭素原子数1~30の有機基としては、特に限定されず、例えば、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基が挙げられ、中でも、得られる粒子の分散性等の点で、炭素原子数1~30のアルキル基又は炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基が好ましい。
【0019】
が表す炭素原子数1~30のアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-オクタデシル基、n-イコシル基等が挙げられ、上記化合物の合成容易性及び得られる粒子の分散性等の点で、炭素原子数6~24のアルキル基が好ましく、炭素原子数8~20のアルキル基がより好ましい。
【0020】
が表す炭素原子数3~30のシクロアルキル基としては、特に限定されず、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロオクタデシル基、シクロイコシル基等が挙げられ、上記化合物の合成容易性及び得られる粒子の分散性等の点で、炭素原子数6~24のシクロアルキル基が好ましく、炭素原子数8~20のシクロアルキル基がより好ましい。
【0021】
が表す炭素原子数2~30のアルケニル基としては、特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられ、上記化合物の合成容易性及び得られる粒子の分散性等の点で、炭素原子数6~24のアルケニル基が好ましく、炭素原子数8~20のアルケニル基がより好ましい。
【0022】
が表す炭素原子数6~30のアリール基としては、特に限定されず、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、上記化合物の合成容易性及び得られる粒子の分散性等の点で、炭素原子数8~24のアリール基が好ましく、炭素原子数10~20のアリール基がより好ましい。
【0023】
が表す炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等が挙げられ、上記化合物の合成容易性及び得られる粒子の分散性等の点で、炭素原子数6~24のアルコキシアルキル基が好ましく、炭素原子数8~20のアルコキシアルキル基がより好ましい。
【0024】
上記式(1)中、n1が2以上の整数を表す場合、複数個存在するRは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0025】
上記式(1)中、Rとしては、例えば、ORで表され、Rが前記炭素原子数1~30のアルキル基、前記炭素原子数3~30のシクロアルキル基、前記炭素原子数2~30のアルケニル基、前記炭素原子数6~30のアリール基、又は前記炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基である基が挙げられるとともに、炭素原子数5~30のアルキルアセトアセテート基、2,4-ペンタンジオナト基(即ち、アセチルアセトナト基)、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト基も挙げられる。
【0026】
が表す前記炭素原子数5~30のアルキルアセトアセテート基としては、特に限定されず、例えば、メチルアセトアセテート基、エチルアセトアセテート基等が挙げられ、合成容易性及び安定性等の点で、エチルアセトアセテート基が好ましい。
【0027】
は、得られる粒子の分散性等の点で、上記式(2)で表される基であることが好ましい。
【0028】
上記式(1)中、Lは、得られる粒子の屈折率等の点で、イットリウム、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムが好ましく、チタン又はジルコニウムがより好ましい。
【0029】
上記式(2)中、R又はRが表す炭素原子数1~30の有機基としては、特に限定されず、例えば、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基が挙げられ、得られる粒子の分散性等の点で炭素原子数1~30のアルキル基又は炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基が好ましい。R又はRが酸素原子を有する場合、式(2)中のP(=O)におけるPに当該酸素原子が直接結合していることが好ましく、つまり、当該酸素原子を介して炭素原子数1~30の有機基が前記Pに結合していることが好ましく、前述の有機基は、炭素原子数1~30のアルキル基又は炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基であることが好ましい。式(2)中、R及びRがともにP(=O)におけるPに直接結合する酸素原子を有していてもよいし、R及びRの一方のみが当該酸素原子を有していてもよい。
【0030】
又はRが表す炭素原子数1~30のアルキル基としては、特に限定されず、例えば、Rについて具体的に例示した基等が挙げられ、上記化合物の合成容易性及び得られる粒子の分散性等の点で、炭素原子数4~18のアルキル基が好ましく、炭素原子数6~12のアルキル基がより好ましい。
【0031】
又はRが表す炭素原子数3~30のシクロアルキル基としては、特に限定されず、例えば、Rについて具体的に例示した基等が挙げられ、上記化合物の合成容易性及び得られる粒子の分散性等の点で、炭素原子数4~18のシクロアルキル基が好ましく、炭素原子数6~12のシクロアルキル基がより好ましい。
【0032】
又はRが表す炭素原子数2~30のアルケニル基としては、特に限定されず、例えば、Rについて具体的に例示した基等が挙げられ、上記化合物の合成容易性及び得られる粒子の分散性等の点で、炭素原子数4~18のアルケニル基が好ましく、炭素原子数6~12のアルケニル基がより好ましい。
【0033】
又はRが表す炭素原子数6~30のアリール基としては、特に限定されず、例えば、Rについて具体的に例示した基等が挙げられ、上記化合物の合成容易性及び得られる粒子の分散性等の点で、炭素原子数6~18のアリール基が好ましく、炭素原子数6~12のアリール基がより好ましい。
【0034】
又はRが表す炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基としては、特に限定されず、例えば、Rについて具体的に例示した基等が挙げられ、上記化合物の合成容易性及び得られる粒子の分散性等の点で、炭素原子数4~18のアルコキシアルキル基が好ましく、炭素原子数6~12のアルコキシアルキル基がより好ましい。
【0035】
上記式(1)で表される構造を有する化合物は、合成容易性及びキャッピング剤としての反応性等の点で、上記式(3)で表されることが好ましく、上記式(30)で表されることがより好ましい。
【0036】
上記式(3)中、R又はRが表す炭素原子数1~30の有機基としては、特に限定されず、例えば、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基が挙げられ、それぞれ、Rについて具体的に例示した基が挙げられるが、中でも、炭素原子数1~30のアルキル基が好ましい。
【0037】
又はRが表す炭素原子数1~30のアルキル基としては、特に限定されず、例えば、Rについて具体的に例示した基等が挙げられ、キャッピング剤としての反応性等の点で、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基等の炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましい。
【0038】
上記式(30)中、R60又はR70が表す炭素原子数1~30の有機基は、上記式(3)中、R又はRが表す炭素原子数1~30の有機基について説明したのと同様である。
【0039】
上記式(3)で表される化合物としては、例えば、下記の化合物が挙げられる。
【化6】
(式中、R、R、n1、n2、L、R60、及びR70は、前記の通りである。)
【0040】
上記式(1)で表される構造を有する化合物の具体例は、以下の通りであるが、これらに限定されるものではない。
【化7】

(式中、Rは炭素原子数1~3のアルキレン基を表し、R’は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、nは0以上の数、例えば、0以上10以下の数、好ましくは0以上5以下の数を表す。)
【0041】
上記式(1)で表される構造を有する化合物は、任意の有機合成反応を用いて製造することができ、例えば、下記スキーム1に従って、製造することができる。
【0042】
[スキーム1]
【化8】
(式中、R、R、n1、n2、L、R、R、及び*は、前記の通りである。)
【0043】
スキーム1では、上記式(5)で表される構造を有する化合物と上記式(6)で表される化合物とを、触媒の非存在下又は存在下、水中又は混合溶剤(水と有機溶剤との混合物をいう。以下、同じ)中において、加水分解縮合させて、上記式(1)で表される構造を有する化合物を得る。
【0044】
触媒は、酸触媒でもアルカリ触媒でもよい。酸触媒としては、例えば、無機酸、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられ、具体的には、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸等が挙げられる。アルカリ触媒としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-n-ブチルエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-tert-ブチルエタノールアミン、N-tert-ブチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリンハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0045】
触媒の使用量は、上記式(6)で表される化合物1モルに対して、好ましくは10-6モル~10モル、より好ましくは10-5モル~5モル、更に好ましくは10-4モル~1モルである。
【0046】
水の使用量は、上記式(6)で表される化合物におけるORで表される基1モル当たり好ましくは0.01~100モル、より好ましくは0.05~50モル、更に好ましくは0.1~30モルであり、特に好ましくは、0.5~5モルである。
【0047】
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸t-ブチル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、メチルピバロイルアセテート、メチルイソブチロイルアセテート、カプロイル酢酸メチル、ラウロイル酢酸メチル、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,3-ブタンジオール、2,3-ペンタンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール等及びこれらの2種以上の混合物等が好ましい。
【0048】
有機溶剤の使用量は、上記式(6)で表される化合物1モルに対して0~1,000mlが好ましく、特に0~500mlが好ましい。
【0049】
反応温度は、好ましくは0~100℃、より好ましくは5~80℃であり、反応時間は、好ましくは10分~3時間、より好ましくは20~1時間である。
【0050】
中でも、上記式(3)で表される化合物は、例えば、下記スキーム2に従って、製造することができる。
【0051】
[スキーム2]
【化9】
(式中、R、R、n1、n2、L、R、R、R60、R70、R、及びRは、前記の通りである。)
【0052】
スキーム2では、上記式(4)で表される化合物と上記式(6)で表される化合物とを、スキーム1と同様にして、加水分解縮合させて、上記式(3)で表される化合物を得る。
【0053】
上記式(5)中、Rが表す炭素原子数1~30の有機基は、上記式(3)中、R又はRが表す炭素原子数1~30の有機基について説明したのと同様である。
【0054】
上記式(6)中、Rが表す炭素原子数1~30の有機基としては、特に限定されず、例えば、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数2~30のアルコキシアルキル基が挙げられ、それぞれ、Rについて具体的に例示した基が挙げられるが、中でも、炭素原子数1~30のアルキル基が好ましい。
【0055】
が表す炭素原子数1~30のアルキル基としては、特に限定されず、例えば、R又はRについて具体的に例示した基等が挙げられ、合成容易性及びORで表される基との反応性等の点で、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基等の炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましい。
【0056】
<式(1)で表される構造を表面に有する粒子>
本発明に係る粒子は、上記式(1)で表される構造を有する。上記粒子は、分散性及び屈折率に優れるため、高屈折率材料に好適に用いることができる。
【0057】
上記式(1)で表される構造を表面に有する粒子は、例えば、上記式(1)で表される構造を表面に有しない粒子の表面に、上記式(1)で表される構造が導入された形態を有する。上記式(1)で表される構造を表面に有しない粒子としては、特に限定されず、例えば、水酸基を表面に有する粒子が挙げられる。水酸基を表面に有する粒子としては、特に限定されず、例えば、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化ハフニウム等の金属酸化物粒子;Si粒子等の、屈折率が高いその他の粒子が挙げられる。
【0058】
本発明に係る粒子の粒径は、特に限定されず、分散性等の点で、好ましくは1~20nmであり、より好ましくは2~15nmであり、更により好ましくは4~10nmである。なお、本明細書において、粒子の粒径とは、粒子をTEMで観察することにより測定された粒径をいう。
【0059】
本発明に係る粒子を含む分散組成物について当該粒子の平均径を測定する場合は、Malvern Zetasizer Nano S等の動的光散乱(DLS)装置により当該平均径を測定することができる。例えば、本発明に係る粒子を5質量%以下の濃度でPGMEA等の分散媒中に分散させた場合には、単分散性であり、当該平均径の範囲が20nm以下となる。
【0060】
本発明に係る分散組成物は、例えば、本発明に係る粒子と公知の有機溶媒又は公知の液状モノマー等との組み合わせを有し、当該組み合わせにおいて、本発明に係る粒子の分散性を維持する。
【0061】
上記式(1)で表される構造は、少なくとも一方の結合手を通じて、粒子と結合する。上記式(1)で表される構造と粒子との結合の形態としては、特に限定されず、例えば、下記形態(F1a)及び(F1b)が挙げられる。下記形態(F1a)において、上記式(1)で表される構造は、両方の結合手を通じて、粒子と結合する。これに対し、下記形態(F1b)において、上記式(1)で表される構造は、一方の結合手を通じて、粒子と結合する。
【0062】
【化10】
(式中、R、R、n1、n2、Lは、前記の通りであり、pは、粒子を表す。)
【0063】
[式(1)で表される構造を表面に有する粒子の製造方法]
式(1)で表される構造を表面に有する粒子は、例えば、上述の通り、粒子被覆工程を有する製造方法(以下、「製造方法1」ともいう。)、又は、第一の反応工程と第二の反応工程とを有する製造方法(以下、「製造方法2」ともいう。)により製造することができる。
【0064】
粒子被覆工程、第一の反応工程、及び第二の反応工程は、例えば、触媒の非存在下又は存在下、水中又は混合溶剤中において行うことができる。触媒の例、有機溶剤の例、反応温度、及び反応時間は、スキーム1において記載したのと同様である。
【0065】
製造方法1は、例えば、下記スキーム3又は4に従って、実施することができる。
【0066】
[スキーム3]
【化11】
(式中、R、R、n1、n2、L、R、R、及びpは、前記の通りである。)
【0067】
スキーム3では、水酸基を表面に有する粒子と上記式(3)で表される化合物とを、触媒の非存在下又は存在下、水中又は混合溶剤中において、加水分解縮合させて、上記式(1)で表される構造を上記形態(F1a)として表面に有する粒子を得る。触媒の例、有機溶剤の例、反応温度、及び反応時間は、スキーム1において記載したのと同様である。
【0068】
触媒の使用量は、上記式(3)で表される化合物1モルに対して、好ましくは10-6モル~10モル、より好ましくは10-5モル~5モル、更に好ましくは10-4モル~1モルである。
【0069】
水の使用量は、上記式(3)で表される化合物におけるORで表される基及びORで表される基の合計1モル当たり好ましくは0.01~100モル、より好ましくは0.05~50モル、更に好ましくは0.1~30モルであり、特に好ましくは1~5モルである。
【0070】
有機溶剤の使用量は、上記式(3)で表される化合物1モルに対して0~1,000mlが好ましく、特に0~500mlが好ましい。
【0071】
[スキーム4]
【化12】
(式中、R、R、n1、n2、L、R、R、及びpは、前記の通りである。)
【0072】
スキーム4では、水酸基を表面に有する粒子と上記式(3)で表される化合物とを、触媒の非存在下又は存在下、水中又は混合溶剤中において、加水分解縮合させて、上記式(1)で表される構造を上記形態(F1b)として表面に有する粒子を得る。触媒の例、触媒の使用量、有機溶剤の例、有機溶剤の使用量、反応温度、及び反応時間は、スキーム3において記載したのと同様である。
【0073】
なお、スキーム4において、Rは、L(Rn1(O)n2で表される基であることが好ましい。
【0074】
水の使用量は、上記式(3)で表される化合物におけるORで表される基1モル当たり好ましくは0.01~100モル、より好ましくは0.05~50モル、更に好ましくは0.1~30モルである。
【0075】
製造方法2は、例えば、下記スキーム5に従って、実施することができる。
【0076】
[スキーム5]
【化13】
(式中、R、R、n1、n2、L、R60、R70、R、R、及びpは、前記の通りである。)
【0077】
スキーム5では、水酸基を表面に有する粒子と上記式(4)で表される化合物とを、触媒の非存在下又は存在下、水中又は混合溶剤中において、加水分解縮合させて、上記式(5)で表される構造を上記形態(F5a)として表面に有する粒子を得(第一の反応工程)、当該粒子と上記式(6)で表される化合物とを、触媒の非存在下又は存在下、水中又は混合溶剤中において、加水分解縮合させて、上記式(1)で表される構造を上記形態(F1a)として表面に有する粒子を得る(第二の反応工程)。触媒の例及び有機溶剤の例は、スキーム1において記載したのと同様である。
【0078】
触媒の使用量は、第一の反応工程の場合は上記式(4)で表される化合物1モルに対して、又は、第二の反応工程の場合は上記式(6)で表される化合物1モルに対して、好ましくは10-6モル~10モル、より好ましくは10-5モル~5モル、更に好ましくは10-4モル~1モルである。
【0079】
水の使用量は、第一の反応工程の場合は上記式(4)で表される化合物におけるOR60で表される基及びOR70で表される基の合計1モル当たり、又は、第二の反応工程の場合は上記式(6)で表される化合物におけるORで表される基1モル当たり、好ましくは0.01~100モル、より好ましくは0.05~50モル、更に好ましくは0.1~30モルであり、特に好ましくは1~5モルである。
【0080】
有機溶剤の使用量は、第一の反応工程の場合は上記式(4)で表される化合物1モルに対して、又は、第二の反応工程の場合は上記式(6)で表される化合物1モルに対して、0~1,000mlが好ましく、特に0~500mlが好ましい。
【0081】
第一の反応工程及び第二の反応工程の各々において、反応温度は、好ましくは0~100℃、より好ましくは5~80℃であり、反応時間は、好ましくは10分~3時間、より好ましくは20~1時間である。
【実施例
【0082】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
[式(1)で表される構造を有する化合物の調製]
下記4-Aで表される化合物(以下、「化合物4-A」ともいう。)と下記6-Aで表される化合物(以下、「化合物6-A」ともいう。)とを、60分間、室温で加水分解縮合させた。化合物4-Aと化合物6-Aとのモル比は、1:1であった。加水分解縮合後の反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に供したところ、化合物4-A又は化合物6-Aを単独で上記条件下に置いた後にGPCに供した場合には観察されなかった新規ピークが出現した。この新規ピークについて、ポリスチレン換算の数平均分子量を算出したところ、1300であった。上述の結果及びH-NMR測定の結果から、上記新規ピークに該当する生成物として、下記3-Aで表される化合物が得られたことが確認された。なお、上記新規ピークは肩を有しており、その肩に基づき算出されるポリスチレン換算の数平均分子量から、下記3-Bで表される化合物が生成していることも確認された。また、生成物を13C-NMR測定に供した結果においては、原料を同様の測定に供した際にはピークが現れなかった領域である5~7ppmにかけて、生成物中の(CHO)、(CHO)、又はSiCHと考えられるピークが確認された。
【0084】
【化14】
【0085】
[被覆粒子の調製と評価]
(酸化チタン粒子の調製)
国際公開第2020/106860号の実施例8を参照して、酸化チタン粒子を回収した。酸化チタン粒子をTEMで観察したところ、形状は球形であり、粒径は7nmであった。表1において、上記酸化チタン粒子を「TiO」と表記する。
【0086】
(被覆粒子の調製)
20ccバイアル中で、表1に示す割合で、上記酸化チタン粒子と化合物4-Aとを混合した後、110℃で30分間、撹拌した。その後、上記バイアル中に、更に、化合物6-Aを添加し、110℃で20分間、撹拌して、被覆粒子を得た。なお、比較例1では、この段階で、ゲル化してしまい、続く評価を行えなかった。また、上記反応は、PGMEA中で行った。また、被覆粒子の洗浄条件を以下のように場合分けした。
1.PGMEAを含む反応系中にn-ヘプタンを添加して、被覆粒子を沈殿させた後、遠心分離した。(表1中の洗浄条件の行において、1と示す。)
2.次いで、遠心分離した被覆粒子を採取後、テトラヒドロフラン(THF)で分散し、ヘプタンを添加して、被覆粒子を沈殿させた後、遠心分離した。(表1中の洗浄条件の行において、2と示す。)
3.再度、遠心分離した被覆粒子を採取後、テトラヒドロフラン(THF)で分散し、ヘプタンを添加して、被覆粒子を沈殿させた後、遠心分離した。(表1中の洗浄条件の行において、3と示す。)
【0087】
(被覆粒子の評価)
・分散性
濾別した被覆粒子について、洗浄液:n-ヘプタンによる洗浄、濾別後に25℃での乾燥、分散媒:PGMEAへの再分散、及び濾過を試みた。
被覆粒子の分散性を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
+(良好):洗浄、乾燥、再分散、及び濾過の全てが可能であった。
-(不良):被覆粒子はゲル化しており、洗浄、乾燥、再分散、及び濾過の少なくとも1つが不可能であり、以降の測定はできなかった。
【0088】
・XPS
調製した被覆粒子について、X線光電子分光分析(XPS分析)を行い、当該被覆粒子に含まれるリンとケイ素とのモル比を算出し、更に、それに基づき、当該被覆粒子において、化合物6-Aに由来する部分と化合物4-Aに由来する部分とのモル比を算出した。結果を表1に示す。
【0089】
・被覆率
濾別した被覆粒子を分散媒:PGMEAに再分散させ、50質量%の分散液を調製した。この分散液について、熱重量分析(TGA)を行い、該分散液中の固形分に占める化合物6-Aに由来する部分及び化合物4-Aに由来する部分の合計の割合を算出し、被覆粒子の被覆率(質量%)とした。結果を表1に示す。
【0090】
・屈折率
被覆粒子中で酸化チタン粒子を被覆している部分(即ち、化合物6-Aに由来する部分と化合物4-Aに由来する部分との合計)において、チタンの含有量が多いほど、被覆粒子の屈折率がより向上しやすい。チタンは化合物6-Aに由来する部分に含まれているので、化合物6-Aに由来する部分の量が多いほど、被覆粒子の屈折率がより向上しやすくなると合理的に理解することができる。そこで、被覆粒子の屈折率を、XPSによる化合物6-A由来部分と化合物4-A由来部分とのモル比(以下、「化合物6-A/化合物4-A」ともいう。)を用いて、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
++(極めて良好):化合物6-A/化合物4-Aが0.5以上であった。
+(良好):化合物6-A/化合物4-Aが0超0.5未満であった。
-(不良):化合物6-A/化合物4-Aが0であった。又は、被覆粒子の分散性が不良であった。
【0091】
・分散組成物における粒子径
実施例1~5各々の被覆粒子を5質量%以下の濃度でPGMEA等の分散媒中に分散させて分散組成物を得、Malvern Zetasizer Nano S(動的光散乱(DLS)装置)により、該分散組成物における上記被覆粒子の平均径を測定した。その結果、平均径は、実施例1~5のいずれについても20nm以下であった。
【0092】
【表1】
【0093】
表1から分かる通り、実施例で得られた粒子は、分散性及び屈折率に優れているのに対し、比較例で得られた粒子は、分散性又は屈折率に劣ることが確認された。