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特許7691824使用済み吸収性物品の前処理方法及び前処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-04
(45)【発行日】2025-06-12
(54)【発明の名称】使用済み吸収性物品の前処理方法及び前処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/70 20220101AFI20250605BHJP
   B09B 3/20 20220101ALI20250605BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20250605BHJP
【FI】
B09B3/70
B09B3/20
B29B17/00 ZAB
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021006542
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2022110858
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝義
(72)【発明者】
【氏名】栗田 範朋
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-007765(JP,A)
【文献】特開2003-154286(JP,A)
【文献】特開2000-218246(JP,A)
【文献】登録実用新案第3048030(JP,U)
【文献】特開2012-066156(JP,A)
【文献】特開2018-171589(JP,A)
【文献】特開2004-160399(JP,A)
【文献】特開平06-071493(JP,A)
【文献】特開平09-276988(JP,A)
【文献】特開平06-271067(JP,A)
【文献】特開昭60-008006(JP,A)
【文献】米国特許第05292075(US,A)
【文献】特開2019-058906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/70
B09B 3/20
B29B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品に付着した汚れ及び吸収された水分を除去する前処理方法であって、
複数の前記使用済み吸収性物品を含む回収袋を、機器である破袋部で、前記複数の前記使用済み吸収性物品を破壊することなく破袋して、前記回収袋から前記複数の前記使用済み吸収性物品を取り出す破袋工程と、
前記使用済み吸収性物品を破壊することなく破袋された前記回収袋から取り出された前記使用済み吸収性物品を、挟持部で、挟持しつつ、第1処理槽内の不活化剤を含む第1水溶液に浸漬させ、前記使用済み吸収性物品を破壊することなく、前記使用済み吸収性物品に付着した汚れの除去、及び、前記使用済み吸収性物品の内部の高吸水性ポリマーの不活化を実施する浸漬工程、を具備し、
前記破袋部は、前記回収袋に所定の大きさの切り込みを入れる破袋刃と、前記使用済み吸収性物品を前記回収袋の切り込みから個別に放出させる放出部と、を備える、
前処理方法。
【請求項2】
前記浸漬工程後、前記使用済み吸収性物品を、圧縮部で、第2処理槽において圧縮し、脱水する脱水工程、を更に具備する、
請求項1に記載の前処理方法。
【請求項3】
前記第1処理槽と前記第2処理槽とは同一である、
請求項2に記載の前処理方法。
【請求項4】
前記脱水工程後、前記使用済み吸収性物品から放出され、前記第2処理槽に貯留された排水を、前記浸漬工程の前記第1水溶液の一部又は全部として前記第1処理槽へ移送する再利用工程、を更に具備する、
請求項2又は3に記載の前処理方法。
【請求項5】
前記脱水工程は、前記使用済み吸収性物品を、前記圧縮部で、圧縮し、脱水しつつ、前記第2処理槽に対して相対的に移動させる工程を含む、
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の前処理方法。
【請求項6】
前記圧縮部は、ロールプレス装置を備える、
請求項2乃至5のいずれか一項に記載の前処理方法。
【請求項7】
前記圧縮部は、圧縮用プッシャー装置を備える、
請求項2乃至5のいずれか一項に記載の前処理方法。
【請求項8】
前記浸漬工程は、挟持された前記使用済み吸収性物品を、前記挟持部で、前記第1水溶液に浸漬させつつ、前記第1処理槽に対して相対的に移動させる工程を含む、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の前処理方法。
【請求項9】
前記挟持部は、一対の搬送コンベヤを備える、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の前処理方法。
【請求項10】
前記挟持部は、挟持用プッシャー装置を備える、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の前処理方法。
【請求項11】
高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品に付着した汚れ及び吸収された水分を除去する前処理装置であって
複数の前記使用済み吸収性物品を含む回収袋を、前記複数の前記使用済み吸収性物品を破壊することなく破袋して、前記回収袋から前記複数の前記使用済み吸収性物品を取り出す、機器である破袋部と、
不活化剤を含む第1水溶液を有する第1処理槽と、
前記複数の前記使用済み吸収性物品を挟持する挟持部と、
を具備し、
前記破袋部は、前記回収袋に所定の大きさの切り込みを入れる破袋刃と、前記使用済み吸収性物品を前記回収袋の切り込みから個別に放出させる放出部と、を備え、
前記破袋部で、前記使用済み吸収性物品を破壊することなく破袋された前記回収袋から取り出された前記複数の前記使用済み吸収性物品が、前記挟持部で、挟持されつつ、前記第1処理槽内で、前記第1水溶液に浸漬され、前記使用済み吸収性物品が破壊されることなく、前記使用済み吸収性物品に付着した汚れの除去、及び、前記使用済み吸収性物品の内部の高吸水性ポリマーの不活化が実施されるように構成された、
前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み吸収性物品の前処理方法及び前処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み吸収性物品を再利用するための処理工程を実施する際、使用済み吸収性物品に付着した汚れ及び吸収された水分等を除去する前処理方法が知られている。例えば、特許文献1には、直列に配置された複数基の水洗槽を有する連続洗濯機を用い、使用済み紙オムツを前段の水洗槽から後段の水洗槽へ順次移動させながら水洗することを特徴とする使用済み紙オムツの処理方法が開示されている。この方法では、使用済み紙オムツを、予洗槽で予洗し、本洗槽で本洗しており、そのとき生石灰(CaO)を水に混合して高吸水性ポリマーを脱水している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-183893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法では、使用済み紙おむつを、予洗槽・本洗槽のような処理槽に貯留された水溶液に浸漬させた状態で、使用済み紙おむつに付着した汚れの除去や、高吸水性ポリマーの脱水を行うとされている。しかし、吸収性物品は、通常、使用済みであっても比重が水溶液よりも小さく、かつ、資材間の空隙(例示:シート間や構成繊維間の隙間)に空気を含有しているため、水槽に投入されても水面に浮き易い。そのため、使用済みの吸収性物品を水槽に投入しても、水溶液に浸漬させられないおそれがある。そのうえ、生石灰(CaO)のような不活化剤を、使用済み吸収性物品の内部の高吸水性ポリマーに到達させられないおそれがある。そうなると、高吸水性ポリマーの脱水や、使用済み吸収性物品に付着した汚れの除去を行うことは困難である。特に、使用済み紙おむつが、排泄物が表側に露出しないように、かつ、臭気が周囲に拡散しないように、排泄物が排泄された表面シートを内側にして、折り畳まれた状態で回収される場合、その傾向は顕著である。
【0005】
本発明の目的は、使用済み吸収性物品の前処理において、使用済みの吸収性物品の内部の高吸水性ポリマーの不活化、及び、使用済み吸収性物品に付着した汚れの除去を安定的に実施可能な方法・装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、使用済み吸収性物品に付着した汚れ及び吸収された水分を除去する前処理方法であって、前記使用済み吸収性物品を、挟持部で、挟持しつつ、第1処理槽内の不活化剤を含む第1水溶液に浸漬させる浸漬工程、を具備する、前処理方法、である。
【0007】
本発明の他の態様は、使用済み吸収性物品に付着した汚れ及び吸収された水分を除去する前処理装置であって不活化剤を含む第1水溶液を有する第1処理槽と、前記使用済み吸収性物品を挟持する挟持部と、を具備し、前記使用済み吸収性物品が、前記挟持部で、挟持されつつ、前記第1処理槽内の前記第1水溶液に浸漬されるように構成された、前処理装置、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、使用済み吸収性物品の前処理において、使用済みの吸収性物品の内部の高吸水性ポリマーの不活化、及び、使用済み吸収性物品に付着した汚れの除去を安定的に実施可能な方法・装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る前処理装置の構成例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る浸漬部の構成例を示す模式図である。
図3】実施形態に係る脱水部の構成例を示す模式図である。
図4】実施形態に係る前処理方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品に付着した汚れ及び吸収された水分を除去する前処理方法であって、前記使用済み吸収性物品を、挟持部で、挟持しつつ、第1処理槽内の不活化剤を含む第1水溶液に浸漬させる浸漬工程、を具備する、前処理方法。
本態様の前処理方法は、上記の浸漬工程を具備している。その浸漬工程において、使用済み吸収性物品を、挟持部で挟持しつつ、強制的に第1水溶液に浸漬させることで、使用済み吸収性物品の資材間の空隙の空気を除去でき、使用済み吸収性物品を内部まで第1水溶液で満たすことができる。それにより、使用済み吸収性物品の内部の高吸水性ポリマーに不活化剤を到達させ、不活化(脱水)させることができると共に、不活化により高吸水性ポリマーから放出された排泄物と、使用済み吸収性物品に付着した汚れとを第1水溶液へ流出させることができる。したがって、第1水溶液に使用済み吸収性物品を確実に浸漬でき、使用済み吸収性物品を破壊することなく、使用済み吸収性物品に付着した汚れの除去や、使用済み吸収性物品の内部の高吸水性ポリマーの不活化を安定的に実施できる。
そして、使用済み吸収性物品を再利用するための処理工程前に、使用済み吸収性物品の軽量化を図ることができ、処理工程前の保管や輸送などの効率や、処理工程そのものの効率を向上することができる。また、処理工程での汚物や異物の除去を実質的に不要とすることができる。また、処理工程で高吸水性ポリマーの不活化処理を不要とすることができるので、処理工程で使用される処理水は水でもよく、処理工程での処理水の廃水処理の負荷を大幅に低減することができる。
【0011】
[態様2]前記浸漬工程後、前記使用済み吸収性物品を、圧縮部で、第2処理槽において圧縮し、脱水する脱水工程、を更に具備する、態様1に記載の前処理方法。
本態様の前処理方法は、上記の脱水工程を更に具備している。その脱水工程において、使用済み吸収性物品を、圧縮部で、挟持しつつ、第2処理槽において圧縮することで、高吸水性ポリマーから放出されて使用済み吸収性物品内に留まった、水溶性の汚物を含む水分等を、使用済み吸収性物品の外部(第2処理槽内)へ放出させることができる。それに加え、使用済み吸収性物品の資材間の隙間に存在する汚物や異物を、その水分等と共に、使用済み吸収性物品の外部へ流出させることができる。それにより、使用済み吸収性物品を破壊することなく、使用済み吸収性物品の内部に存在していた汚物や異物を取り除くことができる。
【0012】
[態様3]前記第1処理槽と前記第2処理槽とは同一である、態様2に記載の前処理方法。
本態様の前処理方法は、第1処理槽と前記第2処理槽とが同一であるため、高吸水性ポリマーの不活化(脱水)、及び、使用済み吸収性物品の汚物や異物の除去を、省スペースかつ効率的に行うことができる。
【0013】
[態様4]前記脱水工程後、前記使用済み吸収性物品から放出され、前記第2処理槽に貯留された排水を、前記浸漬工程の前記第1水溶液の一部又は全部として前記第1処理槽へ移送する再利用工程、を更に具備する、態様2又は3に記載の前処理方法。
本態様の前処理方法は、上記の再利用工程を更に具備している。その再利用工程において、第2処理槽に貯留された排水を、第1処理槽の第1水溶液の一部又は全部として再利用することで、第1処理槽の第1水溶液と第2処理槽の排水とを合わせた水溶液の使用量を削減できる。それにより、全体の排水の量を削減でき、環境負荷を低減できる。
【0014】
[態様5]前記脱水工程は、前記使用済み吸収性物品を、前記圧縮部で、圧縮し、脱水しつつ、前記第2処理槽に対して相対的に移動させる工程を含む、態様2乃至4のいずれか一項に記載の前処理方法。
本態様の前処理方法では、脱水工程において、使用済み吸収性物品を、圧縮部で、圧縮し、脱水しつつ、第2処理槽に対して相対的に動かすので、高吸水性ポリマーから放出されて使用済み吸収性物品内に留まった、水溶性の汚物を含む水分等や、使用済み吸収性物品の資材間の隙間に存在する汚物や異物を、より容易に、使用済み吸収性物品の外部(第2処理槽内)へ放出させることができる。それにより、使用済み吸収性物品の内部に存在していた汚物や異物をより容易に取り除くことができる。
【0015】
[態様6]前記圧縮部は、ロールプレス装置を備える、態様2乃至5のいずれか一項に記載の前処理方法。
本態様の前処理方法では、圧縮部がロールプレス装置を備えるため、脱水工程において、使用済み吸収性物品を、容易に、圧縮しつつ、ロールで送る、すなわち第2処理槽に対して相対的に移動させることができる。それにより、使用済み吸収性物品の汚物や異物をより容易に外部へ放出して、取り除くことができる。
【0016】
[態様7]前記圧縮部は、圧縮用プッシャー装置を備える、態様2乃至5のいずれか一項に記載の前処理方法。
本態様の前処理方法では、圧縮用がプッシャー装置を備えるため、脱水工程において、使用済み吸収性物品を、圧縮しつつ、段階的に押す、すなわち第2処理槽に対して相対的に移動させることができる。それにより、使用済み吸収性物品の汚物や異物をより容易に外部へ放出して、取り除くことができる。
【0017】
[態様8]前記浸漬工程は、挟持された前記使用済み吸収性物品を、前記挟持部で、前記第1水溶液に浸漬させつつ、前記第1処理槽に対して相対的に移動させる工程を含む、態様1乃至7のいずれか一項に記載の前処理方法。
本態様の前処理方法では、浸漬工程において、挟持部で、挟持された使用済み吸収性物品を挟持しつつ、第1処理槽に対して相対的に動かすので、使用済み吸収性物品の高吸水性ポリマーに不活化剤をより容易に到達させることができる。それにより、高吸水性ポリマーをより容易に不活化(脱水)させることができると共に、不活化により高吸水性ポリマーから放出された排泄物と、使用済み吸収性物品に付着した汚れとをより容易に第1水溶液へ流出させることができる。
【0018】
[態様9]前記挟持部は、一対の搬送コンベヤを備える、態様1乃至8のいずれか一項に記載の前処理方法。
本態様の前処理方法では、挟持部が一対の搬送コンベヤを備えるため、浸漬工程において、使用済み吸収性物品を挟持して、第1水溶液に浸漬させつつ、第1水溶液内で搬送することで、第1処理槽において相対的に移動させることができる。それにより、高吸水性ポリマーをより容易に不活化(脱水)できると共に、使用済み吸収性物品の排泄物や汚れをより容易に第1水溶液へ流出させることができる。
【0019】
[態様10]前記挟持部は、挟持用プッシャー装置を備える、態様1乃至8のいずれか一項に記載の前処理方法。
本態様の前処理方法では、挟持用がプッシャー装置を備えるため、浸漬工程において、使用済み吸収性物品を挟持して、第1水溶液に浸漬させつつ、第1水溶液内で段階的に押すことで、第1処理槽において相対的に移動させることができる。それにより、高吸水性ポリマーをより容易に不活化(脱水)できると共に、使用済み吸収性物品の排泄物や汚れをより容易に第1水溶液へ流出させることができる。
【0020】
[態様11]高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品に付着した汚れ及び吸収された水分を除去する前処理装置であって不活化剤を含む第1水溶液を有する第1処理槽と、前記使用済み吸収性物品を挟持する挟持部と、を具備し、前記使用済み吸収性物品が、前記挟持部で、挟持されつつ、前記第1処理槽内の前記第1水溶液に浸漬されるように構成された、前処理装置。
本態様の前処理装置は、上記の構成を具備している。そのため、使用済み吸収性物品を、挟持部で挟持しつつ、強制的に第1水溶液に浸漬させることで、使用済み吸収性物品の資材間の空隙の空気を除去でき、使用済み吸収性物品を内部まで第1水溶液で満たすことができる。それにより、使用済み吸収性物品の内部の高吸水性ポリマーに不活化剤を到達させ、不活化(脱水)させることができると共に、不活化により高吸水性ポリマーから放出された排泄物と、使用済み吸収性物品に付着した汚れとを第1水溶液へ流出させることができる。したがって、第1水溶液に使用済み吸収性物品を確実に浸漬でき、使用済み吸収性物品に付着した汚れの除去や、使用済み吸収性物品の内部の高吸水性ポリマーの不活化を安定的に実施できる。
【0021】
以下、実施形態に係る前処理方法及び前処理装置について説明する。前処理方法及び前処理装置は、高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品を再利用するために、使用済み吸収性物品に付着した汚れ及び吸収された水分をあらかじめ除去する方法及び装置である。ただし、使用済み吸収性物品とは、使用者によって使用された吸収性物品であり、未使用だが廃棄されたものを含む。吸収性物品としては、例えば、使い捨ておむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、ベッドシート、ペットシートが挙げられる。
【0022】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る前処理装置について説明する。図1は実施形態に係る前処理装置Aの構成例を示すブロック図である。前処理装置Aは、使用済み吸収性物品10aを処理装置50へ導入するために、使用済み吸収性物品10aに付着した汚れ及び吸収された水分を除去する前処理を行う装置であり、後述の前処理方法を実施する。処理装置50は、使用済み吸収性物品を再利用するための処理を行う装置である。処理装置50としては、特に制限はないが、例えば、特開2020-183585号公報に記載された、使用済み吸収性物品からフィルム、高吸水性ポリマー、パルプ繊維を分離、回収する処理を行うシステムが挙げられる。本実施形態の処理装置50では、そのシステムの破袋装置は除かれている。
【0023】
前処理装置Aは、浸漬部2を備えており、本実施形態では、更に、破袋部1と、脱水部3と、再利用部4と、を備えている。
【0024】
破袋部1は、複数の使用済み吸収性物品10aを含む回収袋10を破袋し、回収袋10から複数の使用済み吸収性物品10aを取り出す。破袋部1は、上記の機能を発揮できれば、特に制限されない。本実施形態では、破袋部1は、回収袋10に所定の大きさの切り込みを入れる破袋刃(図示されず)と、使用済み吸収性物品10aを回収袋10の切り込みから個別に放出させる放出部(図示されず)と、を備えている。放出部は、例えば、切り込みを下にして回収袋10を持ち上げて揺する機器が挙げられる。それらの構成としては、それぞれ公知の機器を用いてもよいし、人手で行ってもよい。
【0025】
浸漬部2は、使用済み吸収性物品10aを、強制的に、不活化剤を含む第1水溶液に浸漬させる。図2は、実施形態に係る浸漬部2の構成例を示す模式図である。浸漬部2は、不活化剤を含む第1水溶液L1を有する第1処理槽11と、使用済み吸収性物品10aを挟持する挟持部12と、を具備しており、使用済み吸収性物品10aが、挟持部12で、挟持されつつ、第1処理槽11内の第1水溶液L1に浸漬されるように構成されている。
【0026】
挟持部12は、上記の機能を発揮できれば、特に制限されない。本実施形態では、挟持部12は、対面配置された一対の搬送コンベヤ13、14を備えている。搬送コンベヤ13、14の移動経路は、最初は第1処理槽11上を通り、途中で、第1処理槽11内の第1水溶液L1の中を通過し、その後に再び第1処理槽11上を通る。搬送コンベヤ13は、液体が透過可能なメッシュ状のベルト13aと、駆動用及び送り用の複数のローラ13bとを含んでいる。ベルト13aの移動経路は、途中で、第1処理槽11内の第1水溶液L1の中を通過する。一方、搬送コンベヤ14は、液体が透過可能なメッシュ状のベルト14aと、駆動用及び送り用の複数のローラ14bとを含んでいる。ベルト14aの移動経路は、途中で、第1処理槽11内の第1水溶液の中を通過する。そして、ベルト13aとベルト14aとは、使用済み吸収性物品10aを挟持して搬送する。
【0027】
したがって、挟持部12は、使用済み吸収性物品10aを、一対の搬送コンベヤ13、14、すなわち一対のベルト13a、14aで挟持しつつ、第1処理槽11内の、不活化剤を含む第1水溶液L1に浸漬させる。その結果、使用済み吸収性物品10aは、高吸収性ポリマーが第1水溶液L1に含まれる不活化剤によって不活化された使用済み吸収性物品10bとなる。そのとき、挟持部12は、挟持された使用済み吸収性物品10aを、第1水溶液L1に浸漬させつつ、第1処理槽11内で搬送することで、第1処理槽11に対して所定の速度で相対的に移動させている。
【0028】
使用済み吸収性物品10aを挟持するベルト13aとベルト14aとの距離は、搬送方向の上流側から下流側まで概ね一定とすることが好ましい。それにより、使用済み吸収性物品10bの資材(例示:不織布、パルプ繊維)に第1水溶液L1(高吸水性ポリマーから放出された水分を含む)を保持させることができる。その結果、高吸水性ポリマーに安定的に不活化剤を接触させ続けることができると共に、使用済み吸収性物品の資材間の隙間(資材本体同士の隙間や資材本体を構成する繊維間の隙間)に元々存在していた汚物や異物を資材から剥離させ易くすることができる。なお、その距離を、搬送方向の下流側に進むに連れて徐々に少しだけ小さくしてもよい。それにより、上記の効果を維持しつつ、高吸水性ポリマーからの水分の放出で使用済み吸収性物品10bが薄くなっても、使用済み吸収性物品10bを確実に挟持し、搬送できる。その場合、最小の距離は、例えば、挟持開始時の最大の距離の80~99%の距離が挙げられ、確実な挟持及び水溶液の到達の観点から、85~95%の距離が好ましい。
【0029】
不活化剤を含む第1水溶液L1としては、酸性水溶液、すなわち無機酸及び有機酸の水溶液が好ましい。石灰や塩化カルシウムなどの水溶液と比較して、プラスチック材料やパルプ繊維に灰分が残留しないからであり、不活化の程度(粒径や比重の大きさ)をpHで調整し易いからでもある。酸性水溶液のpHとしては1.0~4.0が好ましい。pHを1.0以上にすると、設備が腐食し難く、排水処理時の中和処理に必要なアルカリ薬品も低減できる。pHを4.0以下にすると、高吸水性ポリマーを十分に小さくでき、殺菌能力も高められる。有機酸としては、例えばクエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、アスコルビン酸、等が挙げられ、クエン酸が好ましい。クエン酸のキレート効果により、排泄物中の金属イオン等がトラップされ除去可能であり、かつクエン酸の洗浄効果で、高い汚れ成分除去効果が期待できる。一方、無機酸としては、例えば硫酸、塩酸、硝酸が挙げられるが、塩素を含まないことやコスト等の観点から硫酸が好ましい。pHは水温により変化するため、本発明におけるpHは、水溶液温度20℃で測定したpHとする。有機酸水溶液の有機酸濃度は、特に限定されないが、有機酸がクエン酸の場合は、0.5質量%以上4質量%以下が好ましい。無機酸水溶液の無機酸濃度は、特に限定されないが、無機酸が硫酸の場合は、0.1質量%以上0.5質量%以下が好ましい。本実施形態では、不活化水溶液として、有機酸のクエン酸を用いる。
【0030】
第1水溶液L1の温度は、不活化の反応が進む限り、特に限定されない。その温度は、室温でもよいし、室温よりも高くしてもよいが、例えば15~30℃が挙げられる。また、浸漬部2での浸漬時間、すなわち不活化剤を含む第1水溶液L1に使用済み吸収性物品10aを浸漬する時間は、高吸水性ポリマーが不活化され、脱水される限り、特に限定されないが、例えば1~60分が挙げられ、2~30分が好ましく、5~20分がより好ましい。不活化剤を含む第1水溶液L1の量は使用済み吸収性物品10aが含浸できる量であれば、特に限定されないが、例えば使用済み吸収性物品10aの乾燥重量の5倍以上が挙げられる。
【0031】
脱水部3は、使用済み吸収性物品10bを圧縮し、脱水する。図3は、実施形態に係る脱水部3の構成例を示す模式図である。脱水部3は、第2処理槽21と、使用済み吸収性物品10bを第2処理槽21において圧縮し、脱水する圧縮部22と、を具備しており、圧縮部22により使用済み吸収性物品10bから放出された液体LDは、第2処理槽21に排水L2として貯留される。排水L2は、外部へ排出されるか、又は、再利用部4を介して浸漬部2へ送出される(後述)。ただし、脱水部3は、第2処理槽21内(第2処理槽21に貯留された又は貯留され得る排水L2の液面の上方)で圧縮等してもよいし、第2処理槽21外(第2処理槽21の上方)で圧縮等してもよい(以下同じ)。
【0032】
圧縮部22は、上記の機能を発揮できれば、特に制限されない。本実施形態では、圧縮部22は、対面配置された一対のコンベヤ23、24を含むロールプレス装置を備えている。コンベヤ23は、液体が透過可能なメッシュ状のベルト23aと、駆動用及び送り用の複数のローラ23bとを含んでいる。一方、コンベヤ24は、ベルト24aと、駆動用及び送り用の複数のローラ24bとを含んでいる。そして、ベルト23aとベルト24aとは、第2処理槽21において(第2処理槽21内又は第2処理槽21外で)、使用済み吸収性物品10bを挟持して搬送する。このとき、複数のローラ23bの各々は、複数のローラ24bの各々と対面配置されており、ローラ23b、24bの対が複数、形成されている。そして、複数対のローラ23b、24bの各々は、順次、使用済み吸収性物品10bを挟持して、圧縮する。
【0033】
使用済み吸収性物品10bを挟持する、対をなすベルト23aとベルト24aとの距離は、搬送方向の下流側に進むに連れて徐々に小さくなるように構成されている。すなわち、対をなすローラ23bとローラ24bとの距離は、搬送方向の下流側に位置するローラ23b、24bの対ほど小さくなるように構成されている。それにより、圧縮部22は、使用済み吸収性物品10bを、一対のベルト23a、24a(各対のローラ23b、24b)で挟持し、搬送して行くに連れて、より圧縮することができる。その場合、最小の距離は、例えば、挟持開始時の最大の距離の10~70%の距離が挙げられ、資材の低損傷及び確実な圧縮の観点から、15~60%以下の距離が好ましく、20~50%の距離がより好ましい。あるいは、圧縮時に使用済み吸収性物品10bに加える圧力は、例えば、0.1~10kPaが挙げられ、資材の低損傷及び確実な圧縮の観点から、0.2~5kPaが好ましく、0.5~2kPaがより好ましい。
【0034】
したがって、圧縮部22は、使用済み吸収性物品10bを、ロールプレス装置である一対のコンベヤ23、24、すなわち一対のベルト23a、24a、よって複数対のローラ23b、24bで、第2処理槽21において圧縮し、脱水する。それにより、使用済み吸収性物品10bは、高吸水性ポリマーから放出されて使用済み吸収性物品10b内に留まった、水溶性の汚物を含む水分等や、使用済み吸収性物品10bの資材間の隙間に存在する汚物や異物を含んだ液体LDが外部へ放出された使用済み吸収性物品10cとなる。そのとき、圧縮部22は、使用済み吸収性物品10bを、圧縮しつつ、第2処理槽21において搬送することで、第2処理槽21に対して所定の速度で相対的に移動させている。なお、圧縮部22による脱水は物理的に行われ、不活化剤による高吸水性ポリマーの化学的な脱水とは異なる。脱水の程度は、使用済み吸収性物品10bを破壊することなく水分等や汚物や異物を低減する観点から、使用済み吸収性物品10bの重量が吸収性物品の乾燥重量の2倍以下の重量になるまで脱水することが好ましく、1.5倍以下の重量になるまで脱水することがより好ましい。
【0035】
なお、浸漬部2の第1処理槽11と脱水部3の第2処理槽21とは同一であってもよい。ただし、「同一」とは、第1処理槽11と第2処理槽21とが同じ一つの槽であり、その槽に挟持部12と圧縮部22とが配置されている場合だけで無く、第1処理槽11と第2処理槽21とが直接的又は間接的に連結して一体となり、実質的に一つの槽とみなせる場合も含む。例えば、大きさの異なる第1処理槽11と第2処理槽21とが、直接的に連結している場合や、水溶液が往来自在な水路で間接的に連結されている場合である。
【0036】
再利用部4は、使用済み吸収性物品10bから放出され、第2処理槽21に貯留された排水L2を、脱水部3から浸漬部2へ流す。再利用部4は、上記の機能を発揮できれば、特に制限されない。本実施形態では、再利用部4は、例えば、送液ポンプである。
【0037】
次に、実施形態に係る前処理方法について説明する。図4は、実施形態に係る前処理方法の一例を示すフローチャートである。前処理方法は、使用済み吸収性物品10aを処理工程S50へ導入するために、使用済み吸収性物品10aに付着した汚れ及び吸収された水分を除去する前処理を行う方法であり、上述の前処理装置Aにより実施される。処理工程S50は、使用済み吸収性物品を再利用するための処理を行う方法である。処理工程S50としては、特に制限はないが、例えば、特開2020-183585号公報に記載された、使用済み吸収性物品からフィルム、高吸水性ポリマー、パルプ繊維を分離、回収する処理を行う方法が挙げられる。本実施形態の処理工程S50では、その方法の穴開け工程は除かれている。
【0038】
前処理方法は、浸漬工程S2を備えており、本実施形態では、更に、破袋工程S1と、脱水工程S3と、再利用工程S4と、を備えている。
【0039】
破袋工程S1は、破袋部1により実施され、複数の使用済み吸収性物品10aを含む回収袋10を破袋し、回収袋10から複数の使用済み吸収性物品10aを取り出す。取り出された複数の使用済み吸収性物品10aは、搬送装置(図示されず)により、浸漬工程S2(浸漬部2)へ搬送される。
【0040】
浸漬工程S2は、浸漬部2により実施され、使用済み吸収性物品10aを、挟持部12で、挟持しつつ、第1処理槽11内の不活化剤を含む第1水溶液L1に浸漬させる。それにより、第1処理槽11に投入された使用済み吸収性物品10aは水面に浮くことなく、確実に第1水溶液L1に浸漬されて、使用済み吸収性物品10aの資材間の空隙(例示:シート間や構成繊維間の隙間)の空気が第1水溶液L1に置き換わる。したがって、使用済み吸収性物品10a内の高吸収性ポリマーが第1水溶液L1に含まれる不活化剤によって不活化され、高吸収性ポリマーの内部の水分が外部へ放出された(脱水された)使用済み吸収性物品10a、すなわち使用済み吸収性物品10bが得られる。その後、複数の使用済み吸収性物品10bは、第1水溶液L1から引き揚げられ、脱水工程S3(脱水部3)へ搬送される。
【0041】
脱水工程S3は、脱水部3により実施され、浸漬工程S2後、使用済み吸収性物品を、圧縮部で、第2処理槽において圧縮し、脱水する。それにより、使用済み吸収性物品10bの資材間の領域(例示:シート間や構成繊維間の領域)が押しつぶされて、その領域に存在していた液体が放出される。したがって、使用済み吸収性物品10b内の高吸水性ポリマーから放出されて使用済み吸収性物品10b内に留まった、水溶性の汚物を含む水分等や、使用済み吸収性物品10bの資材間の隙間に存在する汚物や異物を含んだ液体LDが外部へ放出された使用済み吸収性物品10b、すなわち使用済み吸収性物品10cが得られる。その後、複数の使用済み吸収性物品10cは、搬送装置(図示されず)、処理工程S50(処理装置50)へ搬送される。
【0042】
再利用工程S4は、再利用部4で実施され、脱水工程S3後、使用済み吸収性物品10cから放出され、第2処理槽21に貯留された排水L2を、浸漬工程S2の第1水溶液L1の一部又は全部として第1処理槽11へ移送する。なお、排水L2の全部または一部を外部(例示:(工業用)下水道)へ排出してもよい。
【0043】
以上のように、前処理方法が(前処理装置Aにより)実行される。
【0044】
なお、使用済み吸収性物品10cは、処理工程S50において、使用済み吸収性物品10cを再利用するための処理を施される。
【0045】
上記の前処理装置は、上記の前処理方法を実施する。その前処理方法(及び前処理装置)は、上記の浸漬工程S2(浸漬部2)により、使用済み吸収性物品10aを、挟持部12で挟持しつつ、強制的に第1水溶液L1に浸漬させることで、使用済み吸収性物品10aの資材間の空隙の空気を除去でき、使用済み吸収性物品10aを内部まで第1水溶液L1で満たすことができる。それにより、使用済み吸収性物品10aの内部の高吸水性ポリマーに不活化剤を到達させ、不活化(脱水)させることができると共に、不活化により高吸水性ポリマーから放出された排泄物と、使用済み吸収性物品に付着した汚れとを第1水溶液L1へ流出させることができる。したがって、上記の前処理装置及び前処理方法は、第1水溶液L1に使用済み吸収性物品10aを確実に浸漬でき、使用済み吸収性物品を破壊することなく、使用済み吸収性物品10aに付着した汚れの除去や、使用済み吸収性物品10aの内部の高吸水性ポリマーの不活化を安定的に実施できる。
そして、処理工程S50前の使用済み吸収性物品10aの軽量化を図ることができ、処理工程S50前の使用済み吸収性物品10aの保管や輸送などの効率、及び、処理工程S50の処理効率をいずれも向上することができる。また、処理工程S50での汚物や異物の除去を実質的に不要とすることができる。また、処理工程S50で高吸水性ポリマーの不活化処理を不要とすることができるので、処理工程S50で使用される処理水は水でもよく、処理工程での処理水の廃水処理の負荷を大幅に低減することができる。
【0046】
本前処理方法(及び前処理装置)では、好ましい態様として、浸漬工程S2(浸漬部2)において、挟持部12で、挟持された使用済み吸収性物品10aを、挟持しつつ、第1処理槽11に対して相対的に動かしており、したがって第1水溶液L1内で動かしている。それゆえ、第1水溶液L1に流れが生じるなどして、使用済み吸収性物品10aの高吸水性ポリマーに第1水溶液L1の不活化剤をより容易に到達させることができる。それにより、高吸水性ポリマーをより容易に不活化(脱水)させることができると共に、不活化により高吸水性ポリマーから放出された排泄物と、使用済み吸収性物品10aに付着した汚れとをより容易に第1水溶液L1へ流出させることができる。
【0047】
本前処理方法(及び前処理装置)では、好ましい態様として、挟持部12が一対の搬送コンベヤ13、14を備えている。そのため、浸漬工程S2において、使用済み吸収性物品10aを挟持して、第1水溶液L1に浸漬させつつ、第1水溶液L1内で搬送することで、第1処理槽11に対して相対的に移動させることができる。それにより、高吸水性ポリマーをより容易に不活化(脱水)できると共に、使用済み吸収性物品10aの排泄物や汚れをより容易に第1水溶液L1へ流出させることができる。
【0048】
本前処理方法(及び前処理装置)は、好ましい態様として、浸漬工程S2(浸漬部2)の後に、上記の脱水工程S3(脱水部3)を更に具備している。そのため、脱水工程S3(脱水部3)により、使用済み吸収性物品10bを、圧縮部22で、挟持しつつ、第2処理槽21において圧縮することで、高吸水性ポリマーから放出されて使用済み吸収性物品10b内に留まった、水溶性の汚物を含む水分等を、使用済み吸収性物品10bの外部(第2処理槽21内)へ放出させることができる。それに加え、使用済み吸収性物品10bの資材間の隙間に存在する汚物や異物を、その水分等と共に、使用済み吸収性物品10bの外部へ流出させることができる。それにより、使用済み吸収性物品を破壊することなく、使用済み吸収性物品10bの内部に存在していた汚物や異物を取り除くことができる。
【0049】
本前処理方法(及び前処理装置)では、好ましい態様として、脱水工程S3(脱水部3)において、使用済み吸収性物品10bを、圧縮部22で、圧縮し、脱水しつつ、第2処理槽21において搬送することで、第2処理槽21に対して相対的に動かしている。それゆえ、搬送中の使用済み吸収性物品10bの近傍に空気に流れが生じるなどして、高吸水性ポリマーから放出されて使用済み吸収性物品10b内に留まった、水溶性の汚物を含む水分等や、使用済み吸収性物品10bの資材間の隙間に存在する汚物や異物を、より容易に、使用済み吸収性物品10bの外部(第2処理槽21内)へ放出させることができる。それにより、使用済み吸収性物品10bの内部に存在していた汚物や異物をより容易に取り除くことができる。
【0050】
本前処理方法(及び前処理装置)では、好ましい態様として、圧縮部22がロールプレス装置を備えている。そのため、脱水工程S3において、使用済み吸収性物品10bを、容易に、圧縮しつつ、ロールで送ることで、第2処理槽21に対して相対的に移動させることができる。それにより、使用済み吸収性物品10bの汚物や異物をより容易に外部へ放出して、取り除くことができる。
【0051】
本前処理方法(及び前処理装置)では、好ましい態様として、第1処理槽11と第2処理槽21とが同一である。それにより、使用済み吸収性物品10aの高吸水性ポリマーの不活化(脱水)、及び、使用済み吸収性物品10bの汚物や異物の除去を、省スペースかつ効率的に行うことができる。
【0052】
本前処理方法(及び前処理装置)は、好ましい態様として、上記の再利用工程S4(再利用部4)を更に具備している。そのため、その再利用工程S4(再利用部4)により、第2処理槽21に貯留された排水L2を、第1処理槽11の第1水溶液L1の一部又は全部として再利用することで、第1処理槽11の第1水溶液L1と第2処理槽21の排水L2とを合わせた水溶液の使用量を削減できる。それにより、全体の排水の量を削減でき、環境負荷を低減できる。
【0053】
(第2実施形態)
第2実施形態の前処理装置は、浸漬部2の挟持部及び脱水部3の圧縮部がコンベヤ装置ではなく、プッシャー装置(図示されず)である点で、第1実施形態の前処理装置と相違する。以下、第1実施形態と相違する点について主に説明する。
【0054】
浸漬部2の挟持部は、挟持用プッシャー装置を備えている。プッシャー装置は、特に制限されないが、第1の例としては、第1処理槽11内に配置され、押し板と、押し板を押すシリンダ機構と、を含んでいる。プッシャー装置は、第1処理槽11の内側面と押し板との間に使用済み吸収性物品10aを挟持した状態で、第1処理槽11内に第1水溶液L1を供給する。それにより、使用済み吸収性物品10aを、強制的に、不活化剤を含む第1水溶液L1に浸漬させることができる。
【0055】
あるいは、プッシャー装置は、第2の例としては、第1処理槽11内に配置され、一対の押し板と、一対の押し板の各々を押すシリンダ機構と、を含んでいる。プッシャー装置は、一対の押し板の間に使用済み吸収性物品10aを挟持した状態で、第1処理槽11内に第1水溶液L1を供給する。それにより、使用済み吸収性物品10aを、強制的に、不活化剤を含む第1水溶液L1に浸漬させることができる。
【0056】
あるいは、プッシャー装置は、第3の例としては、第1処理槽11内又は外に、上下方向に移動可能に配置され、一対の押し板と、一対の押し板の各々を押すシリンダ機構と、を含んでいる。プッシャー装置は、第1処理槽11の上方で、一対の押し板の間に使用済み吸収性物品10aを挟持し、その状態を維持したまま、第1水溶液L1を貯留した第1処理槽11内に一対の押し板を下方へ降ろす。それにより、使用済み吸収性物品10aを、強制的に、不活化剤を含む第1水溶液L1に浸漬させることができる。
【0057】
脱水部3の圧縮部は、圧縮用プッシャー装置を備えている。プッシャー装置は、特に制限されないが、第1の例としては、第2処理槽21上に配置され、押し板と、押し板を押すシリンダ機構と、を含んでいる。プッシャー装置は、使用済み吸収性物品10bを、第2処理槽21の内側面と押し板との間に挟持しつつ、第2処理槽21の内側面へ押し板を近づける。それにより、使用済み吸収性物品10bを圧縮し、脱水することができる。
【0058】
あるいは、プッシャー装置は、第2の例としては、第2処理槽21上に配置され、一対の押し板と、一対の押し板の各々を押すシリンダ機構と、を含んでいる。プッシャー装置は、一対の押し板の間に使用済み吸収性物品10bを挟持しつつ、一対の押し板を互いに近づける。それにより、使用済み吸収性物品10bを圧縮し、脱水することができる。
【0059】
あるいは、プッシャー装置は、第3の例としては、第2処理槽21内又は外に、上下方向に移動可能に配置され、一対の押し板と、一対の押し板の各々を押すシリンダ機構と、を含んでいる。プッシャー装置は、第2処理槽21の上方で、一対の押し板の間に使用済み吸収性物品10bを挟持し、その状態を維持したまま、第2処理槽21内に一対の押し板を下方へ降ろし、その後、一対の押し板を互いに近づける。それにより、使用済み吸収性物品10bを圧縮し、脱水することができる。
【0060】
ここで、第1処理槽11と第2処理槽21とが同一であってもよい。更に、挟持部と圧縮部とが同一であってもよい。それにより、使用済み吸収性物品10aの高吸水性ポリマーの不活化(脱水)、及び、使用済み吸収性物品10bの汚物や異物の除去を、省スペースかつ効率的に行うことができる。特に、第1処理槽11と第2処理槽21とが同一かつ挟持部と圧縮部とが同一の場合、その効果は顕著である。その際、同一の処理槽として機能する槽では、浸漬工程S2のときには第1水溶液L1を満たし、脱水工程S3のときには第1水溶液L1を除いておくか、又は、第1水溶液L1の液面が圧縮される使用済み吸収性物品に接しない高さとする。その場合、前処理装置Aをコンパクトな装置にすることができ、そのような装置を病院や介護施設、家庭などに設置することが可能になる。そして、使用済み吸収性物品10aを、処理装置50を有する処理施設へ搬送する前に、病院や介護施設、家庭などにおいて上記の前処理方法で処理することで、搬送する使用済み吸収性物品10cの重量及び体積を削減できる。
【0061】
本前処理方法(及び前処理装置)では、好ましい態様として、挟持部がプッシャー装置を備えるため、浸漬工程S2において、使用済み吸収性物品10aを挟持して、第1水溶液L1に浸漬させつつ、第1水溶液L1内で段階的に押すことで、第1処理槽11において相対的に移動させることができる。それにより、高吸水性ポリマーをより容易に不活化(脱水)できると共に、使用済み吸収性物品10aの排泄物や汚れをより容易に第1水溶液へ流出させることができる。
【0062】
本前処理方法(及び前処理装置)では、好ましい態様として、圧縮部がプッシャー装置を備えるため、脱水工程S3において、使用済み吸収性物品10bを、圧縮しつつ、段階的に押す、すなわち第2処理槽21に対して相対的に移動させることができる。それにより、使用済み吸収性物品10bの汚物や異物をより容易に外部へ放出して、取り除くことができる。
【0063】
なお、処理装置50を備える処理施設内に前処理装置Aも配置され、処理施設内で前処理方法を実施し、そのまま連続的に処理施設内で処理工程S50を実施してもよい。あるいは、病院や介護施設、家庭などに前処理装置Aが配置され、病院や介護施設、家庭などで個々に前処理方法を実施した後、別途、処理施設内で処理工程S50を実施してもよい。
【0064】
本発明の前処理装置及び前処理方法は、上述した実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜変更や公知技術との組合せ等が可能である。
【符号の説明】
【0065】
10a 使用済み吸収性物品
11 第1処理槽
12 挟持部
L1 第1水溶液
S2 浸漬工程
図1
図2
図3
図4