(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-04
(45)【発行日】2025-06-12
(54)【発明の名称】磁気テープ、磁気テープカートリッジおよび磁気記録再生装置
(51)【国際特許分類】
G11B 5/84 20060101AFI20250605BHJP
G11B 5/73 20060101ALI20250605BHJP
G11B 5/78 20060101ALI20250605BHJP
G11B 5/70 20060101ALI20250605BHJP
G11B 5/738 20060101ALI20250605BHJP
G11B 5/735 20060101ALI20250605BHJP
G11B 5/706 20060101ALI20250605BHJP
G11B 5/842 20060101ALI20250605BHJP
【FI】
G11B5/84 C
G11B5/73
G11B5/78
G11B5/70
G11B5/738
G11B5/735
G11B5/706
G11B5/842 Z
(21)【出願番号】P 2021122854
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2024-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】今井 隆
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-155188(JP,A)
【文献】特開2020-184387(JP,A)
【文献】特開2020-184391(JP,A)
【文献】特開2004-022105(JP,A)
【文献】特開2003-132523(JP,A)
【文献】特開2021-064427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/62 - 5/82
G11B 5/84 - 5/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有する磁気テープであって、
前記非磁性支持体はポリアミド支持体であり、かつ
雰囲気温度32℃相対湿度65%の測定環境において前記磁気テープの長手方向に
0.55Nの荷重を96時
間印加した後に測定される磁気テープの幅方向変形率と長手方向変形率との変形率比、幅方向変形率/長手方向変形率、は0.45以下であ
り、
前記幅方向変形率および前記長手方向変形率は、前記磁気テープの長手方向に0.20Nの荷重を印加して測定される、磁気テープ。
【請求項2】
前記変形率比が0.15以上0.45以下である、請求項1に記載の磁気テープ。
【請求項3】
前記非磁性支持体と前記磁性層との間に、非磁性粉末を含む非磁性層を更に有する、請求項1または2に記載の磁気テープ。
【請求項4】
前記非磁性支持体の前記磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を更に有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気テープ。
【請求項5】
前記強磁性粉末は、六方晶バリウムフェライト粉末である、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気テープ。
【請求項6】
前記強磁性粉末は、六方晶ストロンチウムフェライト粉末である、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気テープ。
【請求項7】
前記強磁性粉末は、ε-酸化鉄粉末である、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気テープ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の磁気テープを含む磁気テープカートリッジ。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の磁気テープを含む磁気記録再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ、磁気テープカートリッジおよび磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体は、通常、磁性層と非磁性支持体とを含む(例えば特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-011215号公報
【文献】特開2003-132523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2001-011215号公報(特許文献1)および特開2003-132523号公報(特許文献2)では、いずれも磁気記録媒体の非磁性支持体として使用されるフィルムについて、ポアソン比が規定されている。ポアソン比は、フィルムを長手方向に引っ張ったときに生じる長手方向の変形率と幅方向の変形率との比として測定される(特許文献1の段落0083~0088および特許文献2の段落0058~0059参照)。
【0005】
一方、磁気記録媒体にはテープ状のものとディスク状のものがあり、データストレージ用途には、テープ状の磁気記録媒体、即ち磁気テープが主に用いられている。磁気テープに関して、本発明者の検討の結果、データが記録された磁気テープを保管した後、その磁気テープに記録および/または再生を行う際、記録不良(例えば記録済データの上書き等)、再生不良(例えばデータの読み取り不良)等の現象が見られること、および、かかる現象を抑制することは特許文献1および特許文献2に記載されているポアソン比を制御することでは困難であることが判明した。
【0006】
以上に鑑み、本発明の一態様は、保管後のデータの記録および/または再生において、良好に記録および/または再生を行うことが可能な磁気テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有する磁気テープであって、
上記非磁性支持体はポリアミド支持体であり、かつ
上記磁気テープの長手方向に96時間荷重を印加した後に測定される磁気テープの幅方向変形率と長手方向変形率との変形率比、幅方向変形率/長手方向変形率、は0.45以下である磁気テープ、
に関する。
【0008】
一形態では、上記変形率比は、0.15以上0.45以下であることができる。
【0009】
一形態では、上記磁気テープは、上記非磁性支持体と上記磁性層との間に、非磁性粉末を含む非磁性層を更に有することができる。
【0010】
一形態では、上記磁気テープは、上記非磁性支持体の上記磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を更に有することができる。
【0011】
一形態では、上記強磁性粉末は、六方晶バリウムフェライト粉末であることができる。
【0012】
一形態では、上記強磁性粉末は、六方晶ストロンチウムフェライト粉末であることができる。
【0013】
一形態では、上記強磁性粉末は、ε-酸化鉄粉末であることができる。
【0014】
本発明の一態様は、上記磁気テープを含む磁気テープカートリッジに関する。
【0015】
本発明の一態様は、上記磁気テープを含む磁気記録再生装置に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、保管後のデータの記録および/または再生において、良好に記録および/または再生を行うことが可能な磁気テープを提供することができる。また、本発明の一態様によれば、かかる磁気テープを含む磁気テープカートリッジおよび磁気記録再生装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[磁気テープ]
本発明の一態様は、非磁性支持体と、強磁性粉末を含む磁性層と、を有する磁気テープに関する。上記磁気テープにおいて、上記非磁性支持体はポリアミド支持体であり、かつ上記磁気テープの長手方向に96時間荷重を印加した後に測定される磁気テープの幅方向変形率と長手方向変形率との変形率比(幅方向変形率/長手方向変形率)は0.45以下である。
【0018】
以下、上記磁気テープについて、更に詳細に説明する。
【0019】
<非磁性支持体>
上記磁気テープの非磁性支持体は、ポリアミド支持体である。本発明および本明細書において、「ポリアミド」とは、複数のアミド結合を含む樹脂を意味する。「ポリアミド支持体」とは、少なくとも1層のポリアミドフィルムを含む支持体を意味する。「ポリアミドフィルム」とは、このフィルムを構成する成分の中で質量基準で最も多くを占める成分がポリアミドであるフィルムをいうものとする。本発明および本明細書における「ポリアミド支持体」には、この支持体に含まれる樹脂フィルムがすべてポリアミドフィルムであるものと、ポリアミドフィルムと他の樹脂フィルムとを含むものとが包含される。ポリアミド支持体の具体的形態としては、単層のポリアミドフィルム、構成成分が同じ2層以上のポリアミドフィルムの積層フィルム、構成成分が異なる2層以上のポリアミドフィルムの積層フィルム、1層以上のポリアミドフィルムおよび1層以上のポリアミド以外の樹脂フィルムを含む積層フィルム等を挙げることができる。積層フィルムにおいて隣り合う2層の間に接着層等が任意に含まれていてもよい。
【0020】
(変形率比)
本発明者は、保管後のデータの記録および/または再生において、良好に記録および/または再生を行うことが可能な磁気テープを得るべく検討を行う中で、ポリアミド支持体を含む磁気テープにおいて、上記変形率比を0.45以下にすることが、保管後の磁気テープに対するデータの記録および/または再生において、良好に記録および/または再生を行うことを可能にすることに寄与し得ることを新たに見出した。かかる変形率比は、以下の方法によって求められる。
測定対象の磁気テープは、雰囲気温度23℃相対湿度50%の保管環境において24時間以上保管した後に、以下の測定に付す。磁気テープカートリッジに収容されている磁気テープは、磁気テープカートリッジごと上記保管環境に保管する。
測定装置としては、磁気テープの長手方向に荷重を印加した状態で磁気テープの長さおよび幅を測定できる装置を使用する。かかる装置としては、例えば、Measurement Analysis Corporation(U.S.A)社製の測定装置(TDSMS 102H)を使用することができる。
測定は、雰囲気温度32℃相対湿度65%の測定環境において実施する。上記保管後の磁気テープの任意の位置から長手方向の長さ600mmのテープ片を切り出す。切り出したテープ片を測定装置にセットする。テープ片がセットされた測定装置が設置されている環境の雰囲気温度および相対湿度が既に上記の測定環境の雰囲気温度および相対湿度である場合には、測定装置にテープ片をセットしてから30分以上経過した後に、テープ片の長手方向に0.20N(ニュートン)の荷重を印加した状態で保持する。測定装置が設置されている環境の雰囲気温度および相対湿度が上記の測定環境の雰囲気温度および相対湿度とは異なる場合には、この環境の雰囲気温度および相対湿度が上記の測定環境の雰囲気温度および相対湿度になるように温湿度調整を行う。テープ片がセットされた測定装置が設置されている環境の雰囲気温度および相対湿度が温湿度調整によって上記の測定環境の雰囲気温度および相対湿度に到達してから30分以上経過した後に、テープ片の長手方向に0.20Nの荷重を印加した状態で保持する。
0.20Nの荷重印加開始時点を0分とし、30分経過したときのテープ片の幅方向の寸法(即ち幅)および長手方向の寸法(即ち長さ)を測定する。幅方向および長手方向の寸法の測定は、測定装置に付属されている計測装置部(例えばレーザースキャンマイクロメーター)によって行うことができる。以下に記載の寸法の測定についても同様である。ここで測定された幅方向の寸法を幅方向の初期値「W0」とし、長手方向の寸法を長手方向の初期値「L0」とする。
0.20Nの荷重印加開始から30分経過した後に長手方向に印加する荷重を0.55Nとし、0.55Nの荷重を96時間印加する。
長手方向に0.55Nの荷重を96時間印加した後、長手方向に印加する荷重を0.20Nに変化させ、0.20Nの荷重を印加した状態で保持する。荷重を0.20Nに変化させてから5分間経過したときのテープ片の幅方向の寸法および長手方向の寸法を測定する。ここで測定された幅方向の寸法を「W96」とし、長手方向の寸法を「L96」とする。荷重印加開始時点の荷重を0.20Nに設定する理由は、テープ片に弛みが生じないように保持するためである。一方、長手方向に0.55Nの荷重を96時間印加した後に0.20Nの荷重を印加して上記測定を行う理由は、96時間の0.55Nの荷重印加後の残留歪みを計測するためである。この残留歪みには、不可逆的なクリープ性および/または時定数が長い可逆的な歪みが含まれると本発明者は考えている。
磁気テープの長手方向に96時間荷重を印加した後に測定される磁気テープの幅方向変形率は、上記で測定されたW96とW0から、W96とW0との差分の絶対値をW0で除した値に106を掛け合わせた値(幅方向変形率=|W96-W0|/W0×106)として算出される。幅方向変形率および以下の長手方向変形率の単位は、ppm(parts per million)である。幅方向変形率を算出するにあたり、W96とW0とは同じ単位の値とする。以下の長手方向変形率を算出するにあたり、L96とL0とは同じ単位の値とする。単位は、例えば「mm」である。
磁気テープの長手方向に96時間荷重を印加した後に測定される磁気テープの長手方向変形率は、上記で測定されたL96とL0から、L96とL0との差分の絶対値をL0で除した値に106を掛け合わせた値(長手方向変形率=|L96-L0|/L0×106)として算出される。
そして、上記変形率比は、上記の幅方向変形率と長手方向変形率との比(幅方向変形率/長手方向変形率)として算出される。
【0021】
上記変形率比は、一般にポアソン比と呼ばれる幅方向と長手方向との変形率比とは大きく異なる。この点に関する本発明者の推察を以下に記載する。ただし、本発明は、本明細書に記載の推察に限定されるものではない。
上記変形率比は、先に記載したように96時間もの長時間にわたり荷重が印加された磁気テープの変形特性の指標ということができる。なお、荷重印加時間の96時間は、後述のデータ記録後の磁気テープを保管する際の保管時間の一例として採用した値であって、上記磁気テープの保管期間を何ら限定するものではない。
一方、ポアソン比は、磁気テープのような所謂粘弾性体が弾性的に振る舞うと考えられる短時間(長くても数分程度以内)で観測される現象についての測定値である。かかるポアソン比は、磁気テープがより粘性的に振る舞うと考えられる磁気テープの保管中に生じる磁気テープの変形特性の指標とはなり得ないと本発明者は考えている。実際、後述の実施例で示すように、上記変形率比と、短時間の荷重印加での幅方向と長手方向との変形率比との間には、相関は見られなかった。
そして本発明者は、ポリアミド支持体を含む磁気テープにおいて、かかる変形率比を0.45以下にすることは、データが記録された磁気テープを保管した後、記録および/または再生を行う際、磁気テープの変形によってデータを記録および/または再生するための磁気ヘッドが狙いのトラック位置からずれてデータの記録および/または再生を行ってしまうことを抑制することに寄与し得ると考えている。この点について、より詳しく以下に説明する。
磁気テープへのデータの記録および再生は、通常、以下のように行われる。磁気記録再生装置(一般に「ドライブ」と呼ばれる。)内で磁気テープを走行させる。かかる走行中、サーボ信号を利用したヘッドトラッキングが行われる。詳しくは、磁気ヘッドのサーボ信号の読み取り素子を磁気テープの所定のサーボトラックに追従させることによって、データの記録のための記録素子が目的とするデータトラック上を通過するように制御しデータを記録する。データトラックの移動は、サーボ信号読み取り素子が読み取るサーボトラックを、テープ幅方向に変更することにより行われる。また、記録されたデータの再生時には、通常、磁気記録再生装置内で磁気テープを走行させ、磁気ヘッドのサーボ信号読み取り素子を磁気テープの所定のサーボトラックに追従させることによって、データの再生のための再生素子が目的とするデータトラック上を通過するように制御し記録されたデータの読み取りを行う。そして、かかる記録後または再生後、磁気テープは、通常、次に記録および/または再生が行われるまで、保管される。
上記保管後、記録および/または再生が行われる際、磁気テープの変形によってデータを記録および/または再生するための磁気ヘッドが狙いのトラック位置からずれてデータの記録および/または再生を行ってしまうと、記録不良(例えば記録済データの上書き等)、再生不良(例えばデータの読み取り不良)等の現象が発生してしまう。本発明者は、ポリアミド支持体を含む磁気テープであって、上記変形率比が0.45以下である磁気テープは、そのような現象を引き起こし得る変形が生じ難い磁気テープであると考えている。その結果、上記磁気テープによれば、保管後の磁気テープに対するデータの記録および/または再生において、良好に記録および/または再生を行うことが可能になると、本発明者は推察している。近年、データストレージ分野では、データバックアップ、アーカイブ等のデータの長期保管に対するニーズが高まっている。しかし、一般に、保管期間が長くなるほど磁気テープの変形は生じ易い傾向がある。したがって、保管後の上記現象の発生を抑制できる磁気テープは、今後の長期保管に対するニーズに応え得る磁気テープということができ好ましいと本発明者は考えている。
【0022】
上記磁気テープの上記変形率比は、0.45以下であり、保管後のデータの記録および/または再生において、より良好に記録および/または再生を行うことを可能にする観点から、0.43以下であることが好ましく、0.40以下、0.38以下、0.35以下、0.33以下、0.30以下、0.28以下、0.25以下、0.20以下の順により好ましい。上記変形率比は、例えば、0.10以上もしくは0.15以上であることができ、またはここに例示した値を下回ることもできる。
【0023】
上記変形率比は、例えば磁気テープの製造条件によって制御することができる。この点について、詳細は後述する。
【0024】
上記磁気テープについて、上記変形率比が0.45以下であれば、長手方向に96時間荷重を印加した後に測定される磁気テープの幅方向変形率の値および長手方向変形率の値は特に限定されるものではない。上記幅方向変形率は、例えば85ppm以下、80ppm以下もしくは75ppm以下であることができ、また、例えば10ppm以上、15ppm以上もしくは20ppm以上であることができる。また、上記長手方向変形率は、例えば185ppm以下もしくは180ppm以下であることができ、また、例えば50ppm以上、55ppm以上もしくは60ppm以上であることができる。
【0025】
非磁性支持体には、その上に磁性層等の層を形成する前に、コロナ放電、プラズマ処理、易接着処理等の処理の一種以上を施してもよい。
【0026】
<磁性層>
(強磁性粉末)
磁性層は、強磁性粉末を含む。磁性層に含まれる強磁性粉末としては、各種磁気記録媒体の磁性層において用いられる強磁性粉末として公知の強磁性粉末を使用することができる。強磁性粉末として平均粒子サイズの小さいものを使用することは記録密度向上の観点から好ましい。この点から、強磁性粉末の平均粒子サイズは50nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることが更に好ましく、35nm以下であることが一層好ましく、30nm以下であることがより一層好ましく、25nm以下であることが更に一層好ましい。一方、磁化の安定性の観点からは、強磁性粉末の平均粒子サイズは5nm以上であることが好ましく、8nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、15nm以上であることが一層好ましく、20nm以上であることがより一層好ましい。
【0027】
六方晶フェライト粉末
強磁性粉末の好ましい具体例としては、六方晶フェライト粉末を挙げることができる。六方晶フェライト粉末の詳細については、例えば、特開2011-225417号公報の段落0012~0030、特開2011-216149号公報の段落0134~0136、特開2012-204726号公報の段落0013~0030および特開2015-127985号公報の段落0029~0084を参照できる。
【0028】
本発明および本明細書において、「六方晶フェライト粉末」とは、X線回折分析によって、主相として六方晶フェライトの結晶構造が検出される強磁性粉末をいうものとする。主相とは、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークが帰属する構造をいう。例えば、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークが六方晶フェライトの結晶構造に帰属される場合、六方晶フェライトの結晶構造が主相として検出されたと判断するものとする。X線回折分析によって単一相のみが検出された場合には、この検出された構造を主相とする。六方晶フェライトの結晶構造は、構成原子として、少なくとも鉄原子、二価金属原子および酸素原子を含む。二価金属原子とは、イオンとして二価のカチオンになり得る金属原子であり、ストロンチウム原子、バリウム原子、カルシウム原子等のアルカリ土類金属原子、鉛原子等を挙げることができる。本発明および本明細書において、六方晶ストロンチウムフェライト粉末とは、この粉末に含まれる主な二価金属原子がストロンチウム原子であるものをいい、六方晶バリウムフェライト粉末とは、この粉末に含まれる主な二価金属原子がバリウム原子であるものをいう。主な二価金属原子とは、この粉末に含まれる二価金属原子の中で、原子%基準で最も多くを占める二価金属原子をいうものとする。ただし、上記の二価金属原子には、希土類原子は包含されないものとする。本発明および本明細書における「希土類原子」は、スカンジウム原子(Sc)、イットリウム原子(Y)、およびランタノイド原子からなる群から選択される。ランタノイド原子は、ランタン原子(La)、セリウム原子(Ce)、プラセオジム原子(Pr)、ネオジム原子(Nd)、プロメチウム原子(Pm)、サマリウム原子(Sm)、ユウロピウム原子(Eu)、ガドリニウム原子(Gd)、テルビウム原子(Tb)、ジスプロシウム原子(Dy)、ホルミウム原子(Ho)、エルビウム原子(Er)、ツリウム原子(Tm)、イッテルビウム原子(Yb)、およびルテチウム原子(Lu)からなる群から選択される。
【0029】
以下に、六方晶フェライト粉末の一形態である六方晶ストロンチウムフェライト粉末について、更に詳細に説明する。
【0030】
六方晶ストロンチウムフェライト粉末の活性化体積は、好ましくは800~1500nm3の範囲である。上記範囲の活性化体積を示す微粒子化された六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、優れた電磁変換特性を発揮する磁気テープの作製のために好適である。六方晶ストロンチウムフェライト粉末の活性化体積は、好ましくは800nm3以上であり、例えば850nm3以上であることもできる。また、電磁変換特性の更なる向上の観点から、六方晶ストロンチウムフェライト粉末の活性化体積は、1400nm3以下であることがより好ましく、1300nm3以下であることが更に好ましく、1200nm3以下であることが一層好ましく、1100nm3以下であることがより一層好ましい。
【0031】
「活性化体積」とは、磁化反転の単位であって、粒子の磁気的な大きさを示す指標である。本発明および本明細書に記載の活性化体積および後述の異方性定数Kuは、振動試料型磁力計を用いて保磁力Hc測定部の磁場スイープ速度3分と30分とで測定し(測定温度:23℃±1℃)、以下のHcと活性化体積Vとの関係式から求められる値である。なお異方性定数Kuの単位に関して、1erg/cc=1.0×10-1J/m3である。
Hc=2Ku/Ms{1-[(kT/KuV)ln(At/0.693)]1/2}
[上記式中、Ku:異方性定数(単位:J/m3)、Ms:飽和磁化(単位:kA/m)、k:ボルツマン定数、T:絶対温度(単位:K)、V:活性化体積(単位:cm3)、A:スピン歳差周波数(単位:s-1)、t:磁界反転時間(単位:s)]
【0032】
熱揺らぎの低減、換言すれば熱的安定性の向上の指標としては、異方性定数Kuを挙げることができる。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、好ましくは1.8×105J/m3以上のKuを有することができ、より好ましくは2.0×105J/m3以上のKuを有することができる。また、六方晶ストロンチウムフェライト粉末のKuは、例えば2.5×105J/m3以下であることができる。ただしKuが高いほど熱的安定性が高いことを意味し好ましいため、上記例示した値に限定されるものではない。
【0033】
六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、希土類原子を含んでいてもよく、含まなくてもよい。六方晶ストロンチウムフェライト粉末が希土類原子を含む場合、鉄原子100原子%に対して、0.5~5.0原子%の含有率(バルク含有率)で希土類原子を含むことが好ましい。希土類原子を含む六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、一形態では、希土類原子表層部偏在性を有することができる。本発明および本明細書における「希土類原子表層部偏在性」とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を酸により部分溶解して得られた溶解液中の鉄原子100原子%に対する希土類原子含有率(以下、「希土類原子表層部含有率」または希土類原子に関して単に「表層部含有率」と記載する。)が、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を酸により全溶解して得られた溶解液中の鉄原子100原子%に対する希土類原子含有率(以下、「希土類原子バルク含有率」または希土類原子に関して単に「バルク含有率」と記載する。)と、
希土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0
の比率を満たすことを意味する。後述の六方晶フェライト粉末の希土類原子含有率とは、希土類原子バルク含有率と同義である。これに対し、酸を用いる部分溶解は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部を溶解するため、部分溶解により得られる溶解液中の希土類原子含有率とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部における希土類原子含有率である。希土類原子表層部含有率が、「希土類原子表層部含有率/希土類原子バルク含有率>1.0」の比率を満たすことは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子において、希土類原子が表層部に偏在(即ち内部より多く存在)していることを意味する。本発明および本明細書における表層部とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面から内部に向かう一部領域を意味する。
【0034】
六方晶フェライト粉末が希土類原子を含む場合、希土類原子含有率(バルク含有率)は、鉄原子100原子%に対して0.5~5.0原子%の範囲であることが好ましい。上記範囲のバルク含有率で希土類原子を含み、かつ六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に希土類原子が偏在していることは、繰り返し再生における再生出力の低下を抑制することに寄与すると考えられる。これは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末が上記範囲のバルク含有率で希土類原子を含み、かつ六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に希土類原子が偏在していることにより、異方性定数Kuを高めることができるためと推察される。異方性定数Kuは、この値が高いほど、いわゆる熱揺らぎと呼ばれる現象の発生を抑制すること(換言すれば熱的安定性を向上させること)ができる。熱揺らぎの発生が抑制されることにより、繰り返し再生における再生出力の低下を抑制することができる。六方晶ストロンチウムフェライト粉末の粒子表層部に希土類原子が偏在することが、表層部の結晶格子内の鉄(Fe)のサイトのスピンを安定化することに寄与し、これにより異方性定数Kuが高まるのではないかと推察される。
また、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末を磁性層の強磁性粉末として用いることは、磁気ヘッドとの摺動によって磁性層表面が削れることを抑制することにも寄与すると推察される。即ち、磁気テープの走行耐久性の向上にも、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末が寄与し得ると推察される。これは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表面に希土類原子が偏在することが、粒子表面と磁性層に含まれる有機物質(例えば、結合剤および/または添加剤)との相互作用の向上に寄与し、その結果、磁性層の強度が向上するためではないかと推察される。
繰り返し再生における再生出力の低下をより一層抑制する観点および/または走行耐久性の更なる向上の観点からは、希土類原子含有率(バルク含有率)は、0.5~4.5原子%の範囲であることがより好ましく、1.0~4.5原子%の範囲であることが更に好ましく、1.5~4.5原子%の範囲であることが一層好ましい。
【0035】
上記バルク含有率は、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を全溶解して求められる含有率である。なお本発明および本明細書において、特記しない限り、原子について含有率とは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を全溶解して求められるバルク含有率をいうものとする。希土類原子を含む六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、希土類原子として一種の希土類原子のみ含んでもよく、二種以上の希土類原子を含んでもよい。二種以上の希土類原子を含む場合の上記バルク含有率とは、二種以上の希土類原子の合計について求められる。この点は、本発明および本明細書における他の成分についても同様である。即ち、特記しない限り、ある成分は、一種のみ用いてもよく、二種以上用いてもよい。二種以上用いられる場合の含有量または含有率とは、二種以上の合計についていうものとする。
【0036】
六方晶ストロンチウムフェライト粉末が希土類原子を含む場合、含まれる希土類原子は、希土類原子のいずれか一種以上であればよい。繰り返し再生における再生出力の低下をより一層抑制する観点から好ましい希土類原子としては、ネオジム原子、サマリウム原子、イットリウム原子およびジスプロシウム原子を挙げることができ、ネオジム原子、サマリウム原子およびイットリウム原子がより好ましく、ネオジム原子が更に好ましい。
【0037】
希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末において、希土類原子は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に偏在していればよく、偏在の程度は限定されるものではない。例えば、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末について、後述する溶解条件で部分溶解して求められた希土類原子の表層部含有率と後述する溶解条件で全溶解して求められた希土類原子のバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は1.0超であり、1.5以上であることができる。「表層部含有率/バルク含有率」が1.0より大きいことは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子において、希土類原子が表層部に偏在(即ち内部より多く存在)していることを意味する。また、後述する溶解条件で部分溶解して求められた希土類原子の表層部含有率と後述する溶解条件で全溶解して求められた希土類原子のバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は、例えば、10.0以下、9.0以下、8.0以下、7.0以下、6.0以下、5.0以下、または4.0以下であることができる。ただし、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末において、希土類原子は六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子の表層部に偏在していればよく、上記の「表層部含有率/バルク含有率」は、例示した上限または下限に限定されるものではない。
【0038】
六方晶ストロンチウムフェライト粉末の部分溶解および全溶解について、以下に説明する。粉末として存在している六方晶ストロンチウムフェライト粉末については、部分溶解および全溶解する試料粉末は、同一ロットの粉末から採取する。一方、磁気テープの磁性層に含まれている六方晶ストロンチウムフェライト粉末については、磁性層から取り出した六方晶ストロンチウムフェライト粉末の一部を部分溶解に付し、他の一部を全溶解に付す。磁性層からの六方晶ストロンチウムフェライト粉末の取り出しは、例えば、特開2015-91747号公報の段落0032に記載の方法によって行うことができる。
上記部分溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認できる程度に溶解することをいう。例えば、部分溶解により、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を構成する粒子について、粒子全体を100質量%として10~20質量%の領域を溶解することができる。一方、上記全溶解とは、溶解終了時に液中に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の残留が目視で確認されない状態まで溶解することをいう。
上記部分溶解および表層部含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。ただし、下記の試料粉末量等の溶解条件は例示であって、部分溶解および全溶解が可能な溶解条件を任意に採用できる。
試料粉末12mgおよび1mol/L塩酸10mlを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度70℃のホットプレート上で1時間保持する。得られた溶解液を0.1μmのメンブレンフィルタでろ過する。こうして得られたろ液の元素分析を誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)分析装置によって行う。こうして、鉄原子100原子%に対する希土類原子の表層部含有率を求めることができる。元素分析により複数種の希土類原子が検出された場合には、全希土類原子の合計含有率を、表層部含有率とする。この点は、バルク含有率の測定においても、同様である。
一方、上記全溶解およびバルク含有率の測定は、例えば、以下の方法により行われる。
試料粉末12mgおよび4mol/L塩酸10mlを入れた容器(例えばビーカー)を、設定温度80℃のホットプレート上で3時間保持する。その後は上記の部分溶解および表層部含有率の測定と同様に行い、鉄原子100原子%に対するバルク含有率を求めることができる。
【0039】
磁気テープに記録されたデータを再生する際の再生出力を高める観点から、磁気テープに含まれる強磁性粉末の質量磁化σsが高いことは望ましい。この点に関して、希土類原子を含むものの希土類原子表層部偏在性を持たない六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、希土類原子を含まない六方晶ストロンチウムフェライト粉末と比べてσsが大きく低下する傾向が見られた。これに対し、そのようなσsの大きな低下を抑制するうえでも、希土類原子表層部偏在性を有する六方晶ストロンチウムフェライト粉末は好ましいと考えられる。一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末のσsは、45A・m2/kg以上であることができ、47A・m2/kg以上であることもできる。一方、σsは、ノイズ低減の観点からは、80A・m2/kg以下であることが好ましく、60A・m2/kg以下であることがより好ましい。σsは、振動試料型磁力計等の磁気特性を測定可能な公知の測定装置を用いて測定することができる。本発明および本明細書において、特記しない限り、質量磁化σsは、磁場強度1194kA/m(15kOe)で測定される値とする。
【0040】
六方晶フェライト粉末の構成原子の含有率(バルク含有率)に関して、ストロンチウム原子含有率は、鉄原子100原子%に対して、例えば2.0~15.0原子%の範囲であることができる。一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、この粉末に含まれる二価金属原子がストロンチウム原子のみであることができる。また他の一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、ストロンチウム原子に加えて一種以上の他の二価金属原子を含むこともできる。例えば、バリウム原子および/またはカルシウム原子を含むことができる。ストロンチウム原子以外の他の二価金属原子が含まれる場合、六方晶ストロンチウムフェライト粉末におけるバリウム原子含有率およびカルシウム原子含有率は、それぞれ、例えば、鉄原子100原子%に対して、0.05~5.0原子%の範囲であることができる。
【0041】
六方晶フェライトの結晶構造としては、マグネトプランバイト型(「M型」とも呼ばれる。)、W型、Y型およびZ型が知られている。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、いずれの結晶構造を取るものであってもよい。結晶構造は、X線回折分析によって確認することができる。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、X線回折分析によって、単一の結晶構造または二種以上の結晶構造が検出されるものであることができる。例えば一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、X線回折分析によってM型の結晶構造のみが検出されるものであることができる。例えば、M型の六方晶フェライトは、AFe12O19の組成式で表される。ここでAは二価金属原子を表し、六方晶ストロンチウムフェライト粉末がM型である場合、Aはストロンチウム原子(Sr)のみであるか、またはAとして複数の二価金属原子が含まれる場合には、上記の通り原子%基準で最も多くをストロンチウム原子(Sr)が占める。六方晶ストロンチウムフェライト粉末の二価金属原子含有率は、通常、六方晶フェライトの結晶構造の種類により定まるものであり、特に限定されるものではない。鉄原子含有率および酸素原子含有率についても、同様である。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、少なくとも、鉄原子、ストロンチウム原子および酸素原子を含み、更に希土類原子を含むこともできる。更に、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、これら原子以外の原子を含んでもよく、含まなくてもよい。一例として、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、アルミニウム原子(Al)を含むものであってもよい。アルミニウム原子の含有率は、鉄原子100原子%に対して、例えば0.5~10.0原子%であることができる。繰り返し再生における再生出力低下をより一層抑制する観点からは、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、鉄原子、ストロンチウム原子、酸素原子および希土類原子を含み、これら原子以外の原子の含有率が、鉄原子100原子%に対して、10.0原子%以下であることが好ましく、0~5.0原子%の範囲であることがより好ましく、0原子%であってもよい。即ち、一形態では、六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、鉄原子、ストロンチウム原子、酸素原子および希土類原子以外の原子を含まなくてもよい。上記の原子%で表示される含有率は、六方晶ストロンチウムフェライト粉末を全溶解して求められる各原子の含有率(単位:質量%)を、各原子の原子量を用いて原子%表示の値に換算して求められる。また、本発明および本明細書において、ある原子について「含まない」とは、全溶解してICP分析装置により測定される含有率が0質量%であることをいう。ICP分析装置の検出限界は、通常、質量基準で0.01ppm(parts per million)以下である。上記の「含まない」とは、ICP分析装置の検出限界未満の量で含まれることを包含する意味で用いるものとする。六方晶ストロンチウムフェライト粉末は、一形態では、ビスマス原子(Bi)を含まないものであることができる。
【0042】
金属粉末
強磁性粉末の好ましい具体例としては、強磁性金属粉末を挙げることもできる。強磁性金属粉末の詳細については、例えば特開2011-216149号公報の段落0137~0141および特開2005-251351号公報の段落0009~0023を参照できる。
【0043】
ε-酸化鉄粉末
強磁性粉末の好ましい具体例としては、ε-酸化鉄粉末を挙げることもできる。本発明および本明細書において、「ε-酸化鉄粉末」とは、X線回折分析によって、主相としてε-酸化鉄の結晶構造が検出される強磁性粉末をいうものとする。例えば、X線回折分析によって得られるX線回折スペクトルにおいて最も高強度の回折ピークがε-酸化鉄の結晶構造に帰属される場合、ε-酸化鉄の結晶構造が主相として検出されたと判断するものとする。ε-酸化鉄粉末の製造方法としては、ゲーサイトから作製する方法、逆ミセル法等が知られている。上記製造方法は、いずれも公知である。また、Feの一部がGa、Co、Ti、Al、Rh等の置換原子によって置換されたε-酸化鉄粉末を製造する方法については、例えば、J. Jpn. Soc. Powder Metallurgy Vol. 61 Supplement, No. S1, pp. S280-S284、J. Mater. Chem. C, 2013, 1, pp.5200-5206等を参照できる。ただし、上記磁気テープの磁性層において強磁性粉末として使用可能なε-酸化鉄粉末の製造方法は、ここで挙げた方法に限定されない。
【0044】
ε-酸化鉄粉末の活性化体積は、好ましくは300~1500nm3の範囲である。上記範囲の活性化体積を示す微粒子化されたε-酸化鉄粉末は、優れた電磁変換特性を発揮する磁気テープの作製のために好適である。ε-酸化鉄粉末の活性化体積は、好ましくは300nm3以上であり、例えば500nm3以上であることもできる。また、電磁変換特性の更なる向上の観点から、ε-酸化鉄粉末の活性化体積は、1400nm3以下であることがより好ましく、1300nm3以下であることが更に好ましく、1200nm3以下であることが一層好ましく、1100nm3以下であることがより一層好ましい。
【0045】
熱揺らぎの低減、換言すれば熱的安定性の向上の指標としては、異方性定数Kuを挙げることができる。ε-酸化鉄粉末は、好ましくは3.0×104J/m3以上のKuを有することができ、より好ましくは8.0×104J/m3以上のKuを有することができる。また、ε-酸化鉄粉末のKuは、例えば3.0×105J/m3以下であることができる。ただしKuが高いほど熱的安定性が高いことを意味し、好ましいため、上記例示した値に限定されるものではない。
【0046】
磁気テープに記録されたデータを再生する際の再生出力を高める観点から、磁気テープに含まれる強磁性粉末の質量磁化σsが高いことは望ましい。この点に関して、一形態では、ε-酸化鉄粉末のσsは、8A・m2/kg以上であることができ、12A・m2/kg以上であることもできる。一方、ε-酸化鉄粉末のσsは、ノイズ低減の観点からは、40A・m2/kg以下であることが好ましく、35A・m2/kg以下であることがより好ましい。
【0047】
本発明および本明細書において、特記しない限り、強磁性粉末等の各種粉末の平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡を用いて、以下の方法により測定される値とする。
粉末を、透過型電子顕微鏡を用いて撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントするか、ディスプレイに表示する等して、粉末を構成する粒子の写真を得る。得られた粒子の写真から目的の粒子を選びデジタイザーで粒子の輪郭をトレースし粒子(一次粒子)のサイズを測定する。一次粒子とは、凝集のない独立した粒子をいう。
以上の測定を、無作為に抽出した500個の粒子について行う。こうして得られた500個の粒子の粒子サイズの算術平均を、粉末の平均粒子サイズとする。上記透過型電子顕微鏡としては、例えば日立製透過型電子顕微鏡H-9000型を用いることができる。また、粒子サイズの測定は、公知の画像解析ソフト、例えばカールツァイス製画像解析ソフトKS-400を用いて行うことができる。後述の実施例に示す平均粒子サイズは、特記しない限り、透過型電子顕微鏡として日立製透過型電子顕微鏡H-9000型、画像解析ソフトとしてカールツァイス製画像解析ソフトKS-400を用いて測定された値である。本発明および本明細書において、粉末とは、複数の粒子の集合を意味する。例えば、強磁性粉末とは、複数の強磁性粒子の集合を意味する。また、複数の粒子の集合とは、集合を構成する粒子が直接接触している態様に限定されず、後述する結合剤、添加剤等が、粒子同士の間に介在している態様も包含される。粒子との語が、粉末を表すために用いられることもある。
【0048】
粒子サイズ測定のために磁気テープから試料粉末を採取する方法としては、例えば特開2011-048878号公報の段落0015に記載の方法を採用することができる。
【0049】
本発明および本明細書において、特記しない限り、粉末を構成する粒子のサイズ(粒子サイズ)は、上記の粒子写真において観察される粒子の形状が、
(1)針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粒子を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、
(2)板状または柱状(ただし、厚みまたは高さが板面または底面の最大長径より小さい)の場合は、その板面または底面の最大長径で表され、
(3)球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粒子を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。
【0050】
また、粉末の平均針状比は、上記測定において粒子の短軸の長さ、即ち短軸長を測定し、各粒子の(長軸長/短軸長)の値を求め、上記500個の粒子について得た値の算術平均を指す。ここで、特記しない限り、短軸長とは、上記粒子サイズの定義で(1)の場合は、粒子を構成する短軸の長さを、同じく(2)の場合は、厚みまたは高さを各々指し、(3)の場合は、長軸と短軸の区別がないから、(長軸長/短軸長)は、便宜上1とみなす。
そして、特記しない限り、粒子の形状が特定の場合、例えば、上記粒子サイズの定義(1)の場合、平均粒子サイズは平均長軸長であり、同定義(2)の場合、平均粒子サイズは平均板径である。同定義(3)の場合、平均粒子サイズは、平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)である。
【0051】
磁性層における強磁性粉末の含有率(充填率)は、磁性層の全質量に対して、好ましくは50~90質量%の範囲であり、より好ましくは60~90質量%の範囲である。磁性層において強磁性粉末の充填率が高いことは、記録密度向上の観点から好ましい。
【0052】
(結合剤)
上記磁気テープは塗布型磁気テープであることができ、磁性層に結合剤を含むことができる。即ち、一形態では、上記磁気テープからは、金属薄膜型磁気テープは除かれる。金属薄膜型磁気テープとは、公知の通り、磁性層として、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等によって成膜された強磁性金属薄膜層を有する磁気テープである。
【0053】
結合剤は、一種以上の樹脂である。結合剤としては、塗布型磁気記録媒体の結合剤として通常使用される各種樹脂を用いることができる。例えば、結合剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等を共重合したアクリル樹脂、ニトロセルロース等のセルロース樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルキラール樹脂等から選ばれる樹脂を単独で用いるか、または複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいものはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂、および塩化ビニル樹脂である。これらの樹脂は、ホモポリマーでもよく、コポリマー(共重合体)でもよい。これらの樹脂は、後述する非磁性層および/またはバックコート層においても結合剤として使用することができる。以上の結合剤については、特開2010-24113号公報の段落0028~0031、特開2004-5795号公報の段落0006~0021等を参照できる。結合剤として使用される樹脂の平均分子量は、重量平均分子量として、例えば10,000以上200,000以下であることができる。本発明および本明細書における平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、下記測定条件により測定された値をポリスチレン換算して求められる値である。後述の実施例に示す結合剤の平均分子量は、下記測定条件によって測定された値をポリスチレン換算して求めた値である。結合剤は、強磁性粉末100.0質量部に対して、例えば1.0~80.0質量部の量で使用することができる。非磁性層およびバックコート層の結合剤量については、磁性層の結合剤量に関する記載を、強磁性粉末を非磁性粉末に読み替えて適用することができる。
GPC装置:HLC-8120(東ソー社製)
カラム:TSK gel Multipore HXL-M(東ソー社製、7.8mmID(Inner Diameter)×30.0cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
【0054】
結合剤として使用可能な樹脂とともに硬化剤を使用することもできる。硬化剤は、一形態では加熱により硬化反応(架橋反応)が進行する化合物である熱硬化性化合物であることができ、他の一形態では光照射により硬化反応(架橋反応)が進行する光硬化性化合物であることができる。硬化剤は、磁性層形成工程の中で硬化反応が進行することにより、少なくとも一部は、結合剤等の他の成分と反応(架橋)した状態で磁性層に含まれ得る。この点は、他の層を形成するために用いられる組成物が硬化剤を含む場合に、この組成物を用いて形成される層についても同様である。好ましい硬化剤は、熱硬化性化合物であり、ポリイソシアネートが好適である。ポリイソシアネートの詳細については、特開2011-216149号公報の段落0124~0125を参照できる。磁性層形成用組成物の硬化剤の含有量は、結合剤100.0質量部に対して例えば0~80.0質量部であることができ、磁性層の強度向上の観点からは50.0~80.0質量部であることができる。この点は、非磁性層形成用組成物およびバックコート層形成用組成物についても同様である。
【0055】
(添加剤)
磁性層には、必要に応じて一種以上の添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、一例として、上記の硬化剤が挙げられる。また、磁性層に含まれる添加剤としては、非磁性粉末(例えば無機粉末、カーボンブラック等)、潤滑剤、分散剤、分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を挙げることができる。例えば、潤滑剤については、特開2016-126817号公報の段落0030~0033、0035および0036を参照できる。後述する非磁性層に潤滑剤が含まれていてもよい。非磁性層に含まれ得る潤滑剤については、特開2016-126817号公報の段落0030~0031、0034、0035および0036を参照できる。分散剤については、特開2012-133837号公報の段落0061および0071を参照できる。また、磁性層の添加剤については、特開2016-51493号公報の段落0035~0077も参照できる。分散剤を非磁性層形成用組成物に添加してもよい。非磁性層形成用組成物に添加し得る分散剤については、特開2012-133837号公報の段落0061を参照できる。また、磁性層に含まれ得る非磁性粉末としては、研磨剤として機能することができる非磁性粉末、磁性層表面に適度に突出する突起を形成する突起形成剤として機能することができる非磁性粉末(例えば非磁性コロイド粒子等)等が挙げられる。なお後述の実施例に示すコロイダルシリカ(シリカコロイド粒子)の平均粒子サイズは、特開2011-048878号公報の段落0015に平均粒径の測定方法として記載されている方法により求められた値である。添加剤は、所望の性質に応じて市販品を適宜選択して、または公知の方法で製造して、任意の量で使用することができる。研磨剤を含む磁性層に研磨剤の分散性を向上するために使用され得る添加剤の一例としては、特開2013-131285号公報の段落0012~0022に記載の分散剤を挙げることができる。
【0056】
以上説明した磁性層は、非磁性支持体表面上に直接、または非磁性層を介して間接的に、設けることができる。
【0057】
<非磁性層>
次に非磁性層について説明する。上記磁気テープは、非磁性支持体表面上に直接磁性層を有していてもよく、非磁性支持体表面上に非磁性粉末を含む非磁性層を介して磁性層を有していてもよい。非磁性層に使用される非磁性粉末は、無機粉末でも有機粉末でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機粉末としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物等の粉末が挙げられる。これらの非磁性粉末は、市販品として入手可能であり、公知の方法で製造することもできる。その詳細については、特開2011-216149号公報の段落0146~0150を参照できる。非磁性層に使用可能なカーボンブラックについては、特開2010-24113号公報の段落0040~0041も参照できる。非磁性層における非磁性粉末の含有率(充填率)は、非磁性層の全質量に対して、好ましくは50~90質量%の範囲であり、より好ましくは60~90質量%の範囲である。
【0058】
非磁性層は結合剤を含むことができ、必要に応じて添加剤を含むこともできる。非磁性層の結合剤、添加剤等のその他詳細は、非磁性層に関する公知技術が適用できる。また、例えば、結合剤の種類および含有量、添加剤の種類および含有量等に関しては、磁性層に関する公知技術も適用できる。
【0059】
本発明および本明細書において、非磁性層には、非磁性粉末とともに、例えば不純物として、または意図的に、少量の強磁性粉末を含む実質的に非磁性な層も包含されるものとする。ここで実質的に非磁性な層とは、この層の残留磁束密度が10mT以下であるか、保磁力が7.96kA/m(100Oe)以下であるか、または、残留磁束密度が10mT以下であり、かつ保磁力が7.96kA/m(100Oe)以下である層をいうものとする。非磁性層は、残留磁束密度および保磁力を持たないことが好ましい。
【0060】
<バックコート層>
上記磁気テープは、非磁性支持体の磁性層を有する表面側とは反対の表面側に、非磁性粉末を含むバックコート層を有することもでき、有さないこともできる。バックコート層には、カーボンブラックおよび無機粉末のいずれか一方または両方が含有されていることが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、平均粒子サイズが17nm以上50nm以下のカーボンブラック(以下、「微粒子カーボンブラック」と記載する。)を使用することができ、平均粒子サイズが50nm超300nm以下のカーボンブラック(以下、「粗粒子カーボンブラック」と記載する。)を使用することもできる。また、微粒子カーボンブラックと粗粒子カーボンブラックとを併用することもできる。
無機粉末としては、一般に非磁性層に使用される非磁性粉末、一般に磁性層に研磨剤として使用される非磁性粉末等を挙げることができ、中でもα-酸化鉄、α-アルミナ等が好ましい。バックコート層の無機粉末の平均粒子サイズは、例えば5~250nmの範囲であることができる。バックコート層の非磁性粉末として、カーボンブラックと無機粉末とを併用する場合、一形態では、非磁性粉末の合計量100.0質量部に対して、無機粉末が50.0質量部超含まれることが好ましく、70.0~90.0質量部含まれることがより好ましい。以上のバックコート層の非磁性粉末に関する記載は、一形態では、非磁性層の非磁性粉末についても適用され得る。
【0061】
バックコート層は、結合剤を含むことができ、必要に応じて添加剤を含むこともできる。バックコート層の結合剤および添加剤については、バックコート層に関する公知技術を適用することができ、磁性層および/または非磁性層の処方に関する公知技術を適用することもできる。例えば、特開2006-331625号公報の段落0018~0020および米国特許第7,029,774号明細書の第4欄65行目~第5欄38行目の記載を、バックコート層について参照できる。
【0062】
<各種厚み>
磁気テープの厚みが薄いことは、磁気テープカートリッジ1巻あたりの高容量化の観点から好ましい。非磁性支持体の厚みを薄くすることは、磁気テープの厚みを薄くすることにつながり得るため好ましい。この点から、上記磁気テープに含まれる非磁性支持体の厚みは、10.0μm未満であることが好ましく、9.0μm以下であることがより好ましく、8.0μm以下であることが更に好ましく、7.0μm以下であることが一層好ましく、6.0μm以下であることがより一層好ましい。また、非磁性支持体の厚みは、例えば、0.5μm以上または1.0μm以上であることができる。
【0063】
磁性層の厚みは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量、ヘッドギャップ長、記録信号の帯域等により最適化することができ、一般には0.01μm~0.15μmであり、高密度記録化の観点から、好ましくは0.015μm~0.12μmであり、更に好ましくは0.02μm~0.1μmである。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する二層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。二層以上に分離する場合の磁性層の厚みとは、これらの層の合計厚みとする。
非磁性層の厚みは、例えば0.1~1.5μmであり、0.1~1.0μmであることが好ましい。
バックコート層の厚みは、0.9μm以下であることが好ましく、0.1~0.7μmであることが更に好ましい。
【0064】
本発明および本明細書における非磁性支持体の厚みおよび各層の厚みは、公知の方法によって求めることができる。例えば、磁性層の厚みは、以下の方法によって求めることができる。磁気テープの厚み方向の断面を、イオンビーム、ミクロトーム等の公知の手法により露出させた後、露出した断面について走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)または透過型電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)により断面画像を取得する。無作為に選択した10箇所について断面画像を取得する。こうして取得された10画像について、各画像の無作為に選択した1箇所において磁性層の厚みを測定する。こうして10画像について求められた10個の測定値の算術平均として、磁性層の厚みを求めることができる。磁性層の厚みを求める際、磁性層と隣接する部分(例えば非磁性層)との界面は、特開2017-33617号公報の段落0029に記載の方法により特定することができる。その他の厚みも、同様に求めることができる。または、各種厚みは、製造条件等から算出される設計厚みとして求めることもできる。
【0065】
<製造工程>
(各層形成用組成物の調製)
磁性層、非磁性層またはバックコート層を形成するための組成物を調製する工程は、通常、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程を含むことができる。個々の工程はそれぞれ二段階以上に分かれていてもかまわない。各層形成用組成物の調製に用いられる成分は、どの工程の最初または途中で添加してもかまわない。溶剤としては、塗布型磁気記録媒体の製造に通常用いられる各種溶剤の一種または二種以上を用いることができる。溶媒については、例えば特開2011-216149号公報の段落0153を参照できる。また、個々の成分を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、結合剤を混練工程、分散工程および分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。上記磁気テープを製造するためには、公知の製造技術を各種工程において用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダ等の強い混練力をもつものを使用することが好ましい。混練工程の詳細については、特開平1-106338号公報および特開平1-79274号公報を参照できる。分散機は公知のものを使用することができる。各層形成用組成物を調製する任意の段階において、公知の方法によってろ過を行ってもよい。ろ過は、例えばフィルタろ過によって行うことができる。ろ過に用いるフィルタとしては、例えば孔径0.01~3μmのフィルタ(例えばガラス繊維製フィルタ、ポリプロピレン製フィルタ等)を用いることができる。
【0066】
(塗布工程)
磁性層は、磁性層形成用組成物を、非磁性支持体表面上に直接塗布するか、または非磁性層形成用組成物と逐次もしくは同時に重層塗布することにより形成することができる。バックコート層は、バックコート層形成用組成物を、非磁性支持体の非磁性層および/または磁性層を有する(または非磁性層および/または磁性層が追って設けられる)表面とは反対側の表面に塗布することにより形成することができる。各層形成のための塗布の詳細については、特開2010-231843号公報の段落0066を参照できる。なお、磁気テープの製造時、非磁性支持体は、通常、フィルムのMD方向(Machine direction)を長手方向、TD方向(Transverse diretion)を幅方向として使用される。
【0067】
(その他の工程)
磁気テープの製造のためのその他の各種工程については、公知技術を適用できる。各種工程については、例えば特開2010-231843号公報の段落0067~0070を参照できる。例えば、磁性層形成用組成物の塗布層には、この塗布層が湿潤(未乾燥)状態にあるうちに配向処理を施すことができる。配向処理については、特開2010-24113号公報の段落0052の記載をはじめとする各種公知技術を適用することができる。例えば、垂直配向処理は、異極対向磁石を用いる方法等の公知の方法によって行うことができる。配向ゾーンでは、乾燥風の温度、風量および/または配向ゾーンにおける搬送速度によって塗布層の乾燥速度を制御することができる。また、配向ゾーンに搬送する前に塗布層を予備乾燥させてもよい。
各種工程を経ることによって、長尺状の磁気テープ原反を得ることができる。得られた磁気テープ原反は、公知の裁断機によって、磁気テープカートリッジに巻装すべき磁気テープの幅に裁断(スリット)される。上記の幅は規格にしたがい決定され、例えば、1/2インチである。1インチ=0.0254メートルである。
【0068】
例えば、スリット前の磁気テープ原反を長手方向に高荷重が印加された状態で高温高湿下に置くこと(以下、「スリット前高温高湿下荷重印加処理」とも呼ぶ。)によって、上記変形率比が先に記載した範囲の磁気テープを得ることができる。ここで、高温とは、例えば30~60℃の雰囲気温度であることができ、高湿とは、例えば40~100%の相対湿度であることができ、高荷重とは、例えば1.0~5.0Nの荷重であることができる。かかる荷重は、例えばロール状に巻かれた磁気テープ原反を巻き替える際に磁気テープ原反の長手方向に印加する荷重であることができる。上記の巻き替えは、内部の温度および湿度を制御可能なチャンバー内で行うことができる。例えば、ロール状に巻かれた磁気テープ原反を、温度および湿度を制御しない状態のチャンバー内に配置して長手方向に荷重を印加して巻き替えを行い、この巻き替えによりロール状に巻かれた磁気テープ原反が配置されたチャンバー内を昇温および昇湿して高温高湿状態として所定時間保持し、次いで降温および降湿することができる。上記の所定時間は、例えば10~60時間とすることができる。上記保持後、巻き替えを行わずにチャンバー内を降温および降湿してもよく、異なる荷重をかけて巻き替えを行った後にチャンバー内を降温および降湿してもよい。昇温速度、昇湿速度、降温速度および降湿速度は、特に限定されるものではない。一例として、例えば、昇温速度は20~60℃/時、昇湿速度は40~90%/時、降温速度は5~60℃/時、降湿速度は80~120%/時とすることができる。
【0069】
上記のように製造された磁気テープには、磁気記録再生装置における磁気ヘッドのトラッキング制御、磁気テープの走行速度の制御等を可能とするために、公知の方法によってサーボパターンを形成することができる。「サーボパターンの形成」は、「サーボ信号の記録」ということもできる。以下に、サーボパターンの形成について説明する。
【0070】
サーボパターンは、通常、磁気テープの長手方向に沿って形成される。サーボ信号を利用する制御(サーボ制御)の方式としては、タイミングベースサーボ(TBS)、アンプリチュードサーボ、周波数サーボ等が挙げられる。
【0071】
ECMA(European Computer Manufacturers Association)―319(June 2001)に示される通り、LTO(Linear Tape-Open)規格に準拠した磁気テープ(一般に「LTOテープ」と呼ばれる。)では、タイミングベースサーボ方式が採用されている。このタイミングベースサーボ方式において、サーボパターンは、互いに非平行な一対の磁気ストライプ(「サーボストライプ」とも呼ばれる。)が、磁気テープの長手方向に連続的に複数配置されることによって構成されている。サーボシステムとは、サーボ信号を利用してヘッドトラッキングを行うシステムである。本発明および本明細書において、「タイミングベースサーボパターン」とは、タイミングベースサーボ方式のサーボシステムにおけるヘッドトラッキングを可能とするサーボパターンをいう。上記のように、サーボパターンが互いに非平行な一対の磁気ストライプにより構成される理由は、サーボパターン上を通過するサーボ信号読み取り素子に、その通過位置を教えるためである。具体的には、上記の一対の磁気ストライプは、その間隔が磁気テープの幅方向に沿って連続的に変化するように形成されており、サーボ信号読み取り素子がその間隔を読み取ることによって、サーボパターンとサーボ信号読み取り素子との相対位置を知ることができる。この相対位置の情報が、データトラックのトラッキングを可能にする。そのために、サーボパターン上には、通常、磁気テープの幅方向に沿って、複数のサーボトラックが設定されている。
【0072】
サーボバンドは、磁気テープの長手方向に連続するサーボパターンにより構成される。このサーボバンドは、通常、磁気テープに複数本設けられる。例えば、LTOテープにおいて、その数は5本である。隣接する2本のサーボバンドに挟まれた領域が、データバンドである。データバンドは、複数のデータトラックで構成されており、各データトラックは、各サーボトラックに対応している。
【0073】
また、一形態では、特開2004-318983号公報に示されているように、各サーボバンドには、サーボバンドの番号を示す情報(「サーボバンドID(identification)」または「UDIM(Unique DataBand Identification Method)情報」とも呼ばれる。)が埋め込まれている。このサーボバンドIDは、サーボバンド中に複数ある一対のサーボストライプのうちの特定のものを、その位置が磁気テープの長手方向に相対的に変位するように、ずらすことによって記録されている。具体的には、複数ある一対のサーボストライプのうちの特定のもののずらし方を、サーボバンド毎に変えている。これにより、記録されたサーボバンドIDはサーボバンド毎にユニークなものとなるため、一つのサーボバンドをサーボ信号読み取り素子で読み取るだけで、そのサーボバンドを一意に(uniquely)特定することができる。
【0074】
なお、サーボバンドを一意に特定する方法には、ECMA―319(June 2001)に示されているようなスタッガード方式を用いたものもある。このスタッガード方式では、磁気テープの長手方向に連続的に複数配置された、互いに非平行な一対の磁気ストライプ(サーボストライプ)の群を、サーボバンド毎に磁気テープの長手方向にずらすように記録する。隣接するサーボバンド間における、このずらし方の組み合わせは、磁気テープ全体においてユニークなものとされているため、2つのサーボ信号読み取り素子によりサーボパターンを読み取る際に、サーボバンドを一意に特定することも可能となっている。
【0075】
また、各サーボバンドには、ECMA―319(June 2001)に示されている通り、通常、磁気テープの長手方向の位置を示す情報(「LPOS(Longitudinal Position)情報」とも呼ばれる。)も埋め込まれている。このLPOS情報も、UDIM情報と同様に、一対のサーボストライプの位置を、磁気テープの長手方向にずらすことによって記録されている。ただし、UDIM情報とは異なり、このLPOS情報では、各サーボバンドに同じ信号が記録されている。
【0076】
上記のUDIM情報およびLPOS情報とは異なる他の情報を、サーボバンドに埋め込むことも可能である。この場合、埋め込まれる情報は、UDIM情報のようにサーボバンド毎に異なるものであってもよいし、LPOS情報のようにすべてのサーボバンドに共通のものであってもよい。
また、サーボバンドに情報を埋め込む方法としては、上記以外の方法を採用することも可能である。例えば、一対のサーボストライプの群の中から、所定の対を間引くことによって、所定のコードを記録するようにしてもよい。
【0077】
サーボパターン形成用ヘッドは、サーボライトヘッドと呼ばれる。サーボライトヘッドは、通常、上記一対の磁気ストライプに対応した一対のギャップを、サーボバンドの数だけ有する。通常、各一対のギャップには、それぞれコアとコイルが接続されており、コイルに電流パルスを供給することによって、コアに発生した磁界が、一対のギャップに漏れ磁界を生じさせることができる。サーボパターンの形成の際には、サーボライトヘッド上に磁気テープを走行させながら電流パルスを入力することによって、一対のギャップに対応した磁気パターンを磁気テープに転写させて、サーボパターンを形成することができる。各ギャップの幅は、形成されるサーボパターンの密度に応じて適宜設定することができる。各ギャップの幅は、例えば、1μm以下、1~10μm、10μm以上等に設定可能である。
【0078】
磁気テープにサーボパターンを形成する前には、磁気テープに対して、通常、消磁(イレース)処理が施される。このイレース処理は、直流磁石または交流磁石を用いて、磁気テープに一様な磁界を加えることによって行うことができる。イレース処理には、DC(Direct Current)イレースとAC(Alternating Current)イレースとがある。ACイレースは、磁気テープに印加する磁界の方向を反転させながら、その磁界の強度を徐々に下げることによって行われる。一方、DCイレースは、磁気テープに一方向の磁界を加えることによって行われる。DCイレースには、更に2つの方法がある。第一の方法は、磁気テープの長手方向に沿って一方向の磁界を加える、水平DCイレースである。第二の方法は、磁気テープの厚み方向に沿って一方向の磁界を加える、垂直DCイレースである。イレース処理は、磁気テープ全体に対して行ってもよいし、磁気テープのサーボバンド毎に行ってもよい。
【0079】
形成されるサーボパターンの磁界の向きは、イレースの向きに応じて決まる。例えば、磁気テープに水平DCイレースが施されている場合、サーボパターンの形成は、磁界の向きがイレースの向きと反対になるように行われる。これにより、サーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号の出力を、大きくすることができる。なお、特開2012-53940号公報に示されている通り、垂直DCイレースされた磁気テープに、上記ギャップを用いた磁気パターンの転写を行った場合、形成されたサーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号は、単極パルス形状となる。一方、水平DCイレースされた磁気テープに、上記ギャップを用いた磁気パターンの転写を行った場合、形成されたサーボパターンが読み取られて得られるサーボ信号は、双極パルス形状となる。
【0080】
磁気テープは、通常、磁気テープカートリッジに収容される。
【0081】
[磁気テープカートリッジ]
本発明の一態様は、上記磁気テープを含む磁気テープカートリッジに関する。
【0082】
上記磁気テープカートリッジに含まれる磁気テープの詳細は、先に記載した通りである。
【0083】
磁気テープカートリッジでは、一般に、カートリッジ本体内部に磁気テープがリールに巻き取られた状態で収容されている。リールは、カートリッジ本体内部に回転可能に備えられている。磁気テープカートリッジとしては、カートリッジ本体内部にリールを1つ具備する単リール型の磁気テープカートリッジおよびカートリッジ本体内部にリールを2つ具備する双リール型の磁気テープカートリッジが広く用いられている。単リール型の磁気テープカートリッジは、磁気テープへのデータの記録および/または再生のために磁気記録再生装置に装着されると、磁気テープカートリッジから磁気テープが引き出されて磁気記録再生装置側のリールに巻き取られる。磁気テープカートリッジから巻き取りリールまでの磁気テープ搬送経路には、磁気ヘッドが配置されている。磁気テープカートリッジ側のリール(供給リール)と磁気記録再生装置側のリール(巻き取りリール)との間で、磁気テープの送り出しと巻き取りが行われる。この間、例えば、磁気ヘッドと磁気テープの磁性層表面とが接触し摺動することにより、データの記録および/または再生が行われる。これに対し、双リール型の磁気テープカートリッジは、供給リールと巻き取りリールの両リールが、磁気テープカートリッジ内部に具備されている。上記磁気テープカートリッジは、単リール型および双リール型のいずれの磁気テープカートリッジであってもよい。上記磁気テープカートリッジは、本発明の一態様にかかる磁気テープを含むものであればよく、その他については公知技術を適用することができる。
【0084】
[磁気記録再生装置]
本発明の一態様は、上記磁気テープを含む磁気記録再生装置に関する。
【0085】
本発明および本明細書において、「磁気記録再生装置」とは、磁気テープへのデータの記録および磁気記録媒体に記録されたデータの再生の少なくとも一方を行うことができる装置を意味するものとする。かかる装置は、一般にドライブと呼ばれる。上記磁気記録再生装置は、例えば、摺動型の磁気記録再生装置であることができる。摺動型の磁気記録再生装置とは、磁気テープへのデータの記録および/または記録されたデータの再生を行う際に磁気テープの磁性層表面と磁気ヘッドとが接触し摺動する装置をいう。例えば、上記磁気記録再生装置は、上記磁気テープカートリッジを着脱可能に含むことができる。
【0086】
上記磁気記録再生装置は磁気ヘッドを含むことができる。磁気ヘッドは、磁気テープへのデータの記録を行うことができる記録ヘッドであることができ、磁気テープに記録されたデータの再生を行うことができる再生ヘッドであることもできる。また、上記磁気記録再生装置は、一形態では、別々の磁気ヘッドとして、記録ヘッドと再生ヘッドの両方を含むことができる。他の一形態では、上記磁気記録再生装置に含まれる磁気ヘッドは、データの記録のための素子(記録素子)とデータの再生のための素子(再生素子)の両方を1つの磁気ヘッドに備えた構成を有することもできる。以下において、データの記録のための素子および再生のための素子を、「データ用素子」と総称する。再生ヘッドとしては、磁気テープに記録されたデータを感度よく読み取ることができる磁気抵抗効果型(MR;Magnetoresistive)素子を再生素子として含む磁気ヘッド(MRヘッド)が好ましい。MRヘッドとしては、AMR(Anisotropic Magnetoresistive)ヘッド、GMR(Giant Magnetoresistive)ヘッド、TMR(Tunnel Magnetoresistive)ヘッド等の公知の各種MRヘッドを用いることができる。また、データの記録および/またはデータの再生を行う磁気ヘッドには、サーボ信号読み取り素子が含まれていてもよい。または、データの記録および/またはデータの再生を行う磁気ヘッドとは別のヘッドとして、サーボ信号読み取り素子を備えた磁気ヘッド(サーボヘッド)が上記磁気記録再生装置に含まれていてもよい。例えば、データの記録および/または記録されたデータの再生を行う磁気ヘッド(以下、「記録再生ヘッド」とも呼ぶ。)は、サーボ信号読み取り素子を2つ含むことができ、2つのサーボ信号読み取り素子のそれぞれが、隣接する2つのサーボバンドを同時に読み取ることができる。2つのサーボ信号読み取り素子の間に、1つまたは複数のデータ用素子を配置することができる。
【0087】
上記磁気記録再生装置において、磁気テープへのデータの記録および/または磁気記録媒体に記録されたデータの再生は、例えば、磁気テープの磁性層表面と磁気ヘッドとを接触させて摺動させることにより行うことができる。上記磁気記録再生装置は、本発明の一態様にかかる磁気テープを含むものであればよく、その他については公知技術を適用することができる。
【0088】
例えば、データの記録および/または記録されたデータの再生の際には、まず、サーボ信号を利用したヘッドトラッキングを行うことができる。即ち、サーボ信号読み取り素子を所定のサーボトラックに追従させることによって、データ用素子が、目的とするデータトラック上を通過するように制御することができる。データトラックの移動は、サーボ信号読み取り素子が読み取るサーボトラックを、テープ幅方向に変更することにより行われる。
また、記録再生ヘッドは、他のデータバンドに対する記録および/または再生を行うことも可能である。その際には、先に記載したUDIM情報を利用してサーボ信号読み取り素子を所定のサーボバンドに移動させ、そのサーボバンドに対するトラッキングを開始すればよい。
【実施例】
【0089】
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明する。ただし本発明は、実施例に示す態様に限定されるものではない。以下に記載の「部」および「%」は、特記しない限り、「質量部」および「質量%」を示す。「eq」は、当量(equivalent)であり、SI単位に換算不可の単位である。下記工程および評価は、特記しない限り、23℃±1℃の大気中で行った。
【0090】
[実施例1]
(1)アルミナ分散物の調製
アルファ化率約65%、BET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積20m2/gのアルミナ粉末(住友化学社製HIT-80)100.0部に対し、10.0部の2,3-ジヒドロキシナフタレン(東京化成社製)、極性基としてSO3Na基を有するポリエステルポリウレタン樹脂(東洋紡社製UR-4800(極性基量:80meq/kg))の32%溶液(溶剤はメチルエチルケトンとトルエンの混合溶剤)を31.3部、溶剤としてメチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1(質量比)の混合溶液570.0部を混合した混合物を、ビーズ径0.3mmのジルコニアビーズとともに横型ビーズミル分散機に入れ、「(ビーズ体積/(上記混合物の体積+ビーズ体積))×100」が80%になるように調整し、120分間ビーズミル分散処理を行った。ビーズミル分散処理後の液を取り出し、取り出した液に、フロー式の超音波分散ろ過装置を用いて超音波分散ろ過処理を施した。こうしてアルミナ分散物を調製した。
【0091】
(2)磁性層形成用組成物処方
(磁性液)
強磁性粉末 100.0部
平均粒子サイズ(平均板径)21nmの六方晶バリウムフェライト粉末(表1中、「BaFe」)
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂 14.0部
重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.2meq/g
シクロヘキサノン 150.0部
メチルエチルケトン 150.0部
(研磨剤液)
上記(1)で調製したアルミナ分散物 6.0部
(シリカゾル(突起形成剤液))
コロイダルシリカ(平均粒子サイズ120nm) 2.0部
メチルエチルケトン 1.4部
(その他の成分)
ステアリン酸 2.0部
ステアリン酸アミド 0.2部
ブチルステアレート 2.0部
ポリイソシアネート(東ソー社製コロネート(登録商標)L) 2.5部
(溶剤-1)
シクロヘキサノン 200.0部
メチルエチルケトン 200.0部
(溶剤-2)
シクロヘキサノン 350.0部
メチルエチルケトン 350.0部
【0092】
(3)非磁性層形成用組成物処方
非磁性無機粉末:α-酸化鉄 100.0部
平均粒子サイズ(平均長軸長):150nm
平均針状比:7
BET比表面積:52m2/g
カーボンブラック 20.0部
平均粒子サイズ:20nm
SO3Na基含有ポリウレタン樹脂 18.0部
重量平均分子量:70,000、SO3Na基:0.2meq/g
ステアリン酸 2.0部
ステアリン酸アミド 0.2部
ブチルステアレート 2.0部
シクロヘキサノン 300.0部
メチルエチルケトン 300.0部
【0093】
(4)各層形成用組成物の調製
磁性層形成用組成物を、以下の方法により調製した。磁性液を、上記成分をバッチ式縦型サンドミルを用いて24時間分散(ビーズ分散)することにより調製した。分散ビーズとしては、ビーズ径0.5mmのジルコニアビーズを使用した。上記サンドミルを用いて、調製した磁性液、上記研磨剤液、シリカゾル、その他の成分および溶剤-1を混合し、ディゾルバー撹拌機に導入し、周速10m/秒で30分間撹拌した後、フロー式超音波分散機により流量7.5kg/分で3パス処理した。その後、0.5μmの孔径を有するフィルタを用いてろ過を行った後、溶剤-2を添加して磁性層形成用組成物を調製した。
非磁性層形成用組成物を、以下の方法により調製した。潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸アミドおよびブチルステアレート)を除く上記成分を、オープンニーダにより混練および希釈処理し、その後、横型ビーズミル分散機により分散処理を実施した。その後、潤滑剤(ステアリン酸、ステアリン酸アミドおよびブチルステアレート)を添加して、ディゾルバー撹拌機にて撹拌および混合処理を施して非磁性層形成用組成物を調製した。
バックコート層形成用組成物は、上記非磁性層形成用組成物について記載した方法で調製した組成物に、更に以下の溶剤を追加して希釈して調製した。
シクロヘキサノン 300.0部
メチルエチルケトン 300.0部
【0094】
(5)磁気テープの作製方法
厚み3.6μmの市販のポリアミド支持体の表面上に、乾燥後の厚みが0.7μmとなるように非磁性層形成用組成物を塗布および乾燥させて非磁性層を形成した。
次いで、非磁性層の表面上に、乾燥後の厚みが0.1μmとなるように磁性層形成用組成物を塗布および乾燥させて磁性層を形成した。
その後、上記支持体の非磁性層および磁性層を形成した表面とは反対側の表面上に、乾燥後の厚みが0.5μmとなるようにバックコート層形成用組成物を塗布および乾燥させてバックコート層を形成した。
その後、2本の金属ロールからなるカレンダロールを用いて、速度100m/分、線圧294kN/m(300kg/cm)、および95℃のカレンダ温度(カレンダロールの表面温度)にて表面平滑化処理(カレンダ処理)を行った後、炉内雰囲気温度70℃の熱処理炉内に40時間保管することにより熱処理を行い、長手方向に0.3Nの荷重をかけてロール状に巻き取った。
こうしてロール状に巻き取られた後の磁気テープ原反(長さ5500m)に対して、以下に記載の方法によって、スリット前高温高湿下荷重印加処理を実施した。
上記のロール状に巻き取られた後の磁気テープ原反を、チャンバー内の内部の温度および湿度を制御可能なチャンバー内に配置し、チャンバー内の温度および湿度を制御しない状態で、長手方向に3.0Nの荷重(表1中、「長手方向印加荷重」)をかけて巻き替えを行った。温度および湿度を制御しない状態で、チャンバー内の温度は25℃であり、相対湿度は30%であった。
上記巻き替えによりロール状に巻かれた磁気テープ原反が配置されている上記チャンバー内を、表1に示す昇温速度および昇湿速度で、表1に示すチャンバー内温度およびチャンバー内相対湿度まで昇温昇湿した後、48時間保持した。上記の長手方向印加荷重をかけて巻き替えた後に上記の昇温昇湿を行ったため、表1中、「チャンバー内昇温昇湿時荷重」の欄に「あり」と記載した。
次いで、表1に示すチャンバー内温度およびチャンバー内相対湿度の上記チャンバー内で、長手方向に0.3Nの荷重(表1中、「チャンバー内降温降湿時荷重」)をかけて上記磁気テープ原反の巻き替えを行った後、この巻き替えによりロール状に巻かれた磁気テープ原反が配置されている上記チャンバー内を、表1に示す降温速度および降湿速度で温度25℃相対湿度30%まで降温降湿した。
上記チャンバー内から取り出した磁気テープ原反を1/2インチ(1インチは0.0254メートル)幅にスリットし、スリット品の送り出しおよび巻き取り装置を持った装置に不織布とカミソリブレードが磁性層表面に押し当たるように取り付けたテープクリーニング装置で磁性層の表面のクリーニングを行った。その後、市販のサーボライターによって磁性層にLTO Ultriumフォーマットにしたがう配置および形状のサーボパターン(タイミングベースサーボパターン)を形成した。スリット前高温高湿下荷重印加処理後のロール状に巻き取られた状態において、磁気テープ原反の巻き取りリール側の端部を0mの位置と呼び、他方の端部を5500mの位置と呼び、5500mの位置の端部から0mの位置の端部に向かう側を内側と呼び、他方を外側と呼ぶと、上記のサーボパターン形成後の磁気テープの5400mの位置から長手方向で内側に向かう長さ1100mの領域を切り出して、長さ1100mの磁気テープを取得した。この磁気テープを、単リール型の磁気テープカートリッジのリールに巻き取り、磁気テープカートリッジ内に収容した。
以上により、実施例1の磁気テープカートリッジを作製した。
【0095】
[実施例2~7、比較例1]
各種項目を表1に示すように変更した点以外、実施例1について記載した方法によって磁気テープカートリッジを作製した。
実施例3および実施例4では、実施例1について記載したように長手方向に0.3Nの荷重をかけてロール状に巻き取った後の磁気テープ原反へのスリット前高温高湿下荷重印加処理を、以下のように行った。
上記のロール状に巻き取られた後の磁気テープ原反を、チャンバー内の内部の温度および湿度を制御可能なチャンバー内に配置し、チャンバー内の温度および湿度を制御しない状態で、長手方向に3.0Nの荷重(表1中、「長手方向印加荷重」)をかけて巻き替えを行った。温度および湿度を制御しない状態で、チャンバー内の温度は25℃であり、相対湿度は30%であった。
上記巻き替えによりロール状に巻かれた磁気テープ原反が配置されている上記チャンバー内を、表1に示す昇温速度および昇湿速度で、表1に示すチャンバー内温度およびチャンバー内相対湿度まで昇温昇湿した後、48時間保持した。上記の長手方向印加荷重をかけて巻き替えた後に上記の昇温昇湿を行ったため、表1中、「チャンバー内昇温昇湿時荷重」の欄に「あり」と記載した。
上記保持後、チャンバー内を表1に示す降温速度および降湿速度で温度25℃相対湿度30%まで降温降湿した後、長手方向に0.3Nの荷重をかけて磁気テープ原反を巻き替えた。降温降湿前には巻き替えを行わなかったため、表1中、「チャンバー内降温降湿時荷重」の欄には、「長手方向印加荷重」と同じ値を記載した。
実施例5については、磁気テープカートリッジ内に収容される長さ1100mの磁気テープは、100mの位置から長手方向で外側に向かう長さ1100mの領域を切り出すことによって取得した。
比較例1については、スリット前高温高湿下荷重印加処理は実施しなかった。
【0096】
実施例1~7および比較例1について、それぞれ磁気テープカートリッジを2つ作製し、1つは後述の変形率比測定のために使用し、他の1つは後述の保管後ドライブでのエラーレート評価のために使用した。
【0097】
[強磁性粉末の作製方法]
<六方晶ストロンチウムフェライト粉末の作製方法>
表1に示す「SrFe」は、以下の方法により作製された六方晶ストロンチウムフェライト粉末である。
SrCO3を1707g、H3BO3を687g、Fe2O3を1120g、Al(OH)3を45g、BaCO3を24g、CaCO3を13g、およびNd2O3を235g秤量し、ミキサーにて混合し原料混合物を得た。
得られた原料混合物を、白金ルツボで溶融温度1390℃で溶融し、融液を撹拌しつつ白金ルツボの底に設けた出湯口を加熱し、融液を約6g/秒で棒状に出湯させた。出湯液を水冷双ローラーで圧延急冷して非晶質体を作製した。
作製した非晶質体280gを電気炉に仕込み、昇温速度3.5℃/分にて635℃(結晶化温度)まで昇温し、同温度で5時間保持して六方晶ストロンチウムフェライト粒子を析出(結晶化)させた。
次いで六方晶ストロンチウムフェライト粒子を含む上記で得られた結晶化物を乳鉢で粗粉砕し、ガラス瓶に粒径1mmのジルコニアビーズ1000gと濃度1%の酢酸水溶液を800mL加えてペイントシェーカーにて3時間分散処理を行った。その後、得られた分散液をビーズと分離させステンレスビーカーに入れた。分散液を液温100℃で3時間静置させてガラス成分の溶解処理を行った後、遠心分離器で沈澱させてデカンテーションを繰り返して洗浄し、炉内温度110℃の加熱炉内で6時間乾燥させて六方晶ストロンチウムフェライト粉末を得た。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末の平均粒子サイズは18nm、活性化体積は902nm3、異方性定数Kuは2.2×105J/m3、質量磁化σsは49A・m2/kgであった。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末から試料粉末を12mg採取し、この試料粉末を先に例示した溶解条件によって部分溶解して得られたろ液の元素分析をICP分析装置によって行い、ネオジム原子の表層部含有率を求めた。
別途、上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末から試料粉末を12mg採取し、この試料粉末を先に例示した溶解条件によって全溶解して得られたろ液の元素分析をICP分析装置によって行い、ネオジム原子のバルク含有率を求めた。
上記で得られた六方晶ストロンチウムフェライト粉末の鉄原子100原子%に対するネオジム原子の含有率(バルク含有率)は、2.9原子%であった。また、ネオジム原子の表層部含有率は8.0原子%であった。表層部含有率とバルク含有率との比率、「表層部含有率/バルク含有率」は2.8であり、ネオジム原子が粒子の表層に偏在していることが確認された。
【0098】
上記で得られた粉末が六方晶フェライトの結晶構造を示すことは、CuKα線を電圧45kVかつ強度40mAの条件で走査し、下記条件でX線回折パターンを測定すること(X線回折分析)により確認した。上記で得られた粉末は、マグネトプランバイト型(M型)の六方晶フェライトの結晶構造を示した。また、X線回折分析により検出された結晶相は、マグネトプランバイト型の単一相であった。
PANalytical X‘Pert Pro回折計、PIXcel検出器
入射ビームおよび回折ビームのSollerスリット:0.017ラジアン
分散スリットの固定角:1/4度
マスク:10mm
散乱防止スリット:1/4度
測定モード:連続
1段階あたりの測定時間:3秒
測定速度:毎秒0.017度
測定ステップ:0.05度
【0099】
<ε-酸化鉄粉末の作製方法>
表1に示す「ε-酸化鉄」は、以下の方法により作製されたε-酸化鉄粉末である。
純水90gに、硝酸鉄(III)9水和物8.3g、硝酸ガリウム(III)8水和物1.3g、硝酸コバルト(II)6水和物190mg、硫酸チタン(IV)150mg、およびポリビニルピロリドン(PVP)1.5gを溶解させたものを、マグネチックスターラーを用いて撹拌しながら、大気雰囲気中、雰囲気温度25℃の条件下で、濃度25%のアンモニア水溶液4.0gを添加し、雰囲気温度25℃の温度条件のまま2時間撹拌した。得られた溶液に、クエン酸1gを純水9gに溶解させて得たクエン酸水溶液を加え、1時間撹拌した。撹拌後に沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で乾燥させた。
乾燥させた粉末に純水800gを加えて再度粉末を水に分散させて分散液を得た。得られた分散液を液温50℃に昇温し、撹拌しながら濃度25%アンモニア水溶液を40g滴下した。50℃の温度を保ったまま1時間撹拌した後、テトラエトキシシラン(TEOS)14mLを滴下し、24時間撹拌した。得られた反応溶液に、硫酸アンモニウム50gを加え、沈殿した粉末を遠心分離によって採集し、純水で洗浄し、炉内温度80℃の加熱炉内で24時間乾燥させ、強磁性粉末の前駆体を得た。
得られた強磁性粉末の前駆体を、大気雰囲気下、炉内温度1000℃の加熱炉内に装填し、4時間の加熱処理を施した。
加熱処理した強磁性粉末の前駆体を、4mol/Lの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液中に投入し、液温を70℃に維持して24時間撹拌することにより、加熱処理した強磁性粉末の前駆体から不純物であるケイ酸化合物を除去した。
その後、遠心分離処理により、ケイ酸化合物を除去した強磁性粉末を採集し、純水で洗浄を行い、強磁性粉末を得た。
得られた強磁性粉末の組成を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES;Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectrometry)により確認したところ、Ga、CoおよびTi置換型ε-酸化鉄(ε-Ga0.28Co0.05Ti0.05Fe1.62O3)であった。また、先に六方晶ストロンチウムフェライト粉末の作製方法について記載した条件と同様の条件でX線回折分析を行い、X線回折パターンのピークから、得られた強磁性粉末が、α相およびγ相の結晶構造を含まない、ε相の単相の結晶構造(ε-酸化鉄の結晶構造)を有することを確認した。
得られたε-酸化鉄粉末の平均粒子サイズは12nm、活性化体積は746nm3、異方性定数Kuは1.2×105J/m3、質量磁化σsは16A・m2/kgであった。
【0100】
上記の六方晶ストロンチウムフェライト粉末およびε-酸化鉄粉末の活性化体積および異方性定数Kuは、各強磁性粉末について、振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて、先に記載の方法により求められた値である。
また、質量磁化σsは、振動試料型磁力計(東英工業社製)を用いて磁場強度1194kA/m(15kOe)で測定された値である。
【0101】
[評価方法]
(1)変形率比
測定装置として、Measurement Analysis Corporation(U.S.A)社製の測定装置(TDSMS 102H)を使用し、先に記載の方法によって、磁気テープの長手方向に96時間荷重を印加した後の長手方向変形率および幅方向変形率を求めた。幅方向および長手方向の寸法の測定は、上記測定装置に付属されているレーザースキャンマイクロメーターによって行った。こうして求められた磁気テープの幅方向変形率と長手方向変形率から、変形率比(幅方向変形率/長手方向変形率)を算出した。
【0102】
(2)参照値:変形率比(短時間評価)
一般にポアソン比と呼ばれる短時間で観測される現象についての測定値が、上記の変形率比とは相関しないことを示すために、以下の方法によって、参照値として短時間評価の変形率比を求めた。
測定は、雰囲気温度32℃相対湿度65%の測定環境において実施した。
上記(1)の先に記載した方法での測定において保管環境に保管した後の磁気テープカートリッジの任意の位置から切り出した長さ600mmのテープ片を、上記(1)で使用した測定装置にセットし、この測定装置が設置されている環境の雰囲気温度および相対湿度が雰囲気温度32℃相対湿度65%に到達してから30分経過した後に、テープ片の長手方向に0.2Nの荷重を印加した状態で保持した。0.2Nの荷重印加開始時点を0分とし、30分経過したときのテープ片の幅方向の寸法および長手方向の寸法を、上記測定装置に付属されているレーザースキャンマイクロメーターによって測定した。ここで測定された幅方向の寸法を幅方向の初期値「Wref(0)」とし、長手方向の寸法を長手方向の初期値「Lref(0)」とする。これらの単位は、mmとする。refは、参照(reference)の略称である。
0.2Nの荷重印加開始から30分経過した後に長手方向に印加する荷重を、0.2Nから20μm/秒の変形速度で最終荷重1.0Nまで変化させながら、幅方向の寸法および長手方向の寸法を経時的に上記測定装置に付属のレーザースキャンマイクロメーターによって測定した。上記の経時的な測定中の測定点数は、20点以上とした。
上記の印加荷重変化中の時間tでの磁気テープの幅方向の寸法をWref(t)とし、長手方向の寸法をLref(t)とする。これらの単位は、mmとする。
時間tを媒介変数として、(X,Y)=(Lref(t)/Lref(0),Wref(t)/Wref(0))とした(X,Y)群に対し、Y=a×X+bの一次式で最小自乗計算した際のaの値を、参照値の短時間評価の変形率比とした。
【0103】
(3)保管後ドライブでのエラーレート評価
実施例1~7および比較例1の各磁気テープカートリッジを、ドライブ(磁気記録再生装置)にセットし、テープ長手方向の巻き応力(テープの断面積当たりにかかる張力)が6MPa(メガパスカル)になるように、サーボ信号を利用したヘッドトラッキングを行いながら磁気テープの長手方向に信号を記録し、この記録時のエラーレートをドライブに付属されている測定装置によって測定した。
上記記録後の磁気テープを収容した磁気テープカートリッジを、雰囲気温度32℃相対湿度65%の保管環境で3カ月保管した後、再びドライブ(磁気記録再生装置)にセットしてドライブ内で磁気テープをテープ長手方向の巻き応力が6MPaになるように走行させて、サーボ信号を利用したヘッドトラッキングを行いながら磁気テープに記録されている信号を再生し、この再生時のエラーレートをドライブに付属されている測定装置によって測定した。
表1中、保管前と比べて保管後の走行においてエラーレートの上昇が見られた場合を「上昇あり」、保管前と比べてエラーレートの上昇が見られなかった場合を「上昇なし」と記載した。
【0104】
以上の結果を表1に示す。
【0105】
【0106】
表1に示す結果から、実施例1~7において、保管後の磁気テープにおけるデータの再生において、保管前に記録されたデータを、再生不良の発生を抑制して良好に再生できたことが確認できる。かかる磁気テープであれば、保管後のデータの記録においても、保管前に記録されたデータへの上書き等の記録不良の発生を抑制して良好に記録を行うことができる。
なお、表1に示す変形率比と参照値(短時間評価の変形率比)との対比から、表1に示す変形率比は参照値とは相関しないことが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の一態様は、データバックアップ、アーカイブ等の各種データストレージ用途において有用である。