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特許7691884電子素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、及び照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-04
(45)【発行日】2025-06-12
(54)【発明の名称】電子素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、及び照明装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/165 20230101AFI20250605BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20250605BHJP
   H10K 59/95 20230101ALI20250605BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20250605BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20250605BHJP
【FI】
H10K50/165
H10K59/10
H10K59/95
H10K85/60
G09F9/30 365
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021132055
(22)【出願日】2021-08-13
(65)【公開番号】P2023026239
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2024-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】大久 哲
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/013533(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/058776(WO,A1)
【文献】特開2013-232520(JP,A)
【文献】特開2013-232521(JP,A)
【文献】特開2013-251480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極の間に位置する電荷輸送層と、を具える電子素子において、
前記電荷輸送層が、金属酸化物と、該金属酸化物よりも還元性が高い化合物と、を含み、
前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物の含有量が、前記金属酸化物100質量部に対して3質量部以下であり、
前記金属酸化物が、式:H PW 12 40 で表されるリンタングステン酸であることを特徴とする、電子素子。
【請求項2】
前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物が、モリブデン酸、ヨウ化銅(I)、及びジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の電子素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子素子と、発光層と、を具え、
前記発光層が、前記陽極と前記陰極の間に位置することを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする、表示装置。
【請求項5】
請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子、並びに、これを用いた有機エレクトロルミネッセンス(以下、エレクトロルミネッセンス(電界発光)を「EL」と記す場合がある。)素子、表示装置、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機物に電界を印加した時に発する光を利用する有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略す場合がある。)を用いた表示装置や照明装置の研究開発が盛んに行われ、その普及が急速に進んでいる。また、近年、その更なる性能向上のために、電荷輸送層として有機物よりも抵抗の低い無機物を用いる有機-無機ハイブリッド素子の開発が盛んである。その中でも特に、溶液プロセスで成膜する金属酸化物導電膜の開発が盛んである。
【0003】
一般に有機EL素子において、良好な特性を得るためには、素子内部の光学干渉を適切に制御する必要があり、そのためには、数十nm以上の厚膜の電荷輸送層が必要となる。しかしながら、一部の透明導電膜を除いて、一般的な金属酸化物は、可視光領域において光を吸収してしまうため、有機EL素子内部に厚い金属酸化物層を設けた場合、電荷の再結合により発せられた光が金属酸化物層に吸収されて発光効率が低下してしまう。そのため、金属酸化物を数十nm以上の厚膜で利用した際に高い発光効率を得る事は難しいという課題がある。また、この課題は、有機EL素子に限らず、有機太陽電池等の電子素子(特には、光学素子)における一般的な課題と言える。
【0004】
溶液プロセスで利用可能な、可視光領域において無色透明な金属酸化物として、リン酸と三酸化タングステンからなるリンタングステン酸(PWA)が知られている。該PWAに含まれる三酸化タングステンは、電気抵抗が高いものの、一度、電流を流すとタングステンが還元されて、電気抵抗が低下する。しかしながら、該PWAは、タングステンが還元された際に、混合原子価状態になるために、青色に着色してしまうという問題がある。
【0005】
一方、ドライプロセスで成膜する透明導電膜としてよく知られているスズ添加酸化インジウム(ITO)では、スパッタ成膜の際の酸素分圧等の条件を変える事で金属の価数を制御し、可視光領域において高透明性を実現している(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】「透明導電膜の技術」,オーム社出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、スズ添加酸化インジウム(ITO)では、スパッタ成膜の際の酸素分圧等の条件を変える事で金属の価数を制御することができるが、溶液プロセスにおいては、金属の価数を制御することは難しい。従って、溶液プロセスで成膜でき、金属酸化物を含みつつも、高導電性と可視光領域での高透明性とを両立した電荷輸送層を具える電子素子の開発が課題となっている。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、金属酸化物を含みつつ、高導電性と可視光領域での高透明性とを両立した電荷輸送層を具える電子素子を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかる電子素子を用いた有機EL素子、表示装置及び照明装置を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0010】
本発明の電子素子は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極の間に位置する電荷輸送層と、を具える電子素子において、
前記電荷輸送層が、金属酸化物と、該金属酸化物よりも還元性が高い化合物と、を含み、
前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物の含有量が、前記金属酸化物100質量部に対して10質量部以下であることを特徴とする。
かかる本発明の電子素子は、金属酸化物を含みつつも、高導電性と可視光領域での高透明性とを両立することができる。
【0011】
本発明の電子素子の好適例においては、前記金属酸化物が、式:HPW1240で表されるリンタングステン酸である。この場合、電荷輸送層の可視光領域での透明性が更に向上し、また、電荷輸送層の平滑性が向上する。
【0012】
本発明の電子素子の他の好適例においては、前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物が、モリブデン酸、ヨウ化銅(I)、及びジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)からなる群から選択される少なくとも一種である。この場合、電荷輸送層の透明性を高いレベルで維持することができる。
【0013】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、上記の電子素子と、発光層と、を具え、前記発光層が、前記陽極と前記陰極の間に位置することを特徴とする。かかる本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光効率が高い。
【0014】
また、本発明の表示装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。かかる本発明の表示装置は、発光効率が高い。
【0015】
また、本発明の照明装置は、上記の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。かかる本発明の照明装置は、発光効率が高い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属酸化物を含みつつ、高導電性と可視光領域での高透明性とを両立した電荷輸送層を具える電子素子を提供することができる。
また、本発明によれば、かかる電子素子を用いた有機EL素子、表示装置及び照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】PWAの薄膜の吸収スペクトルと、PWAとHAT-CNを含み、PWA100質量部に対して、HAT-CNを0.5質量部、1質量部、3質量部又は10質量部添加して形成した薄膜の吸収スペクトルである。
図2】PWAの薄膜の吸収スペクトルと、PWAとPMAを含み、PWA100質量部に対して、PMAを0.5質量部、1質量部、3質量部又は10質量部添加して形成した薄膜の吸収スペクトルである。
図3】PWAの薄膜の吸収スペクトルと、PWAとCuIを含み、PWA100質量部に対して、CuIを0.5質量部、1質量部又は3質量部添加して形成した薄膜の吸収スペクトルである。
図4】PWAの薄膜のW4fのXPSスペクトルである。
図5】PWA100質量部に対して、HAT-CNを3質量部添加して形成した薄膜のW4fのXPSスペクトルである。
図6】PWA100質量部に対して、PMAを3質量部添加して形成した薄膜のW4fのXPSスペクトルである。
図7】PWA100質量部に対して、CuIを3質量部添加して形成した薄膜のW4fのXPSスペクトルである。
図8】本実施形態の電子素子の一例を説明するための断面模式図である。
図9】PWAからなる電荷輸送層を有する素子(比較例1-1)の電圧印加前後の吸収スペクトルの差を示すグラフである。
図10】PWAとHAT-CNを含む電荷輸送層を有する素子(実施例1-1~1-4)の電圧印加前後の吸収スペクトルの差を示すグラフである。
図11】PWAとPMAを含む電荷輸送層を有する素子(実施例1-5~1-8)の電圧印加前後の吸収スペクトルの差を示すグラフである。
図12】PWAとCuIを含む電荷輸送層を有する素子(実施例1-9~1-11)の電圧印加前後の吸収スペクトルの差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の電子素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、表示装置、及び照明装置を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0019】
<電子素子>
本発明の電子素子は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極の間に位置する電荷輸送層と、を具える。そして、本発明の電子素子においては、前記電荷輸送層が、金属酸化物と、該金属酸化物よりも還元性が高い化合物と、を含み、前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物の含有量が、前記金属酸化物100質量部に対して10質量部以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明の電子素子においては、電荷輸送層が、金属酸化物と、該金属酸化物よりも還元性が高い化合物と、を含み、電流が流れた際に、金属酸化物よりも還元性が高い化合物が還元されることで、金属酸化物の還元を抑制することができる。そして、金属酸化物の還元が抑制されることで、電荷輸送層の着色を防止して、可視光領域での高透明性を維持することができる。また、本発明の電子素子においては、前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物の含有量が、前記金属酸化物100質量部に対して10質量部以下と少量であるため、電気伝導特性に与える影響が小さい。
従って、本発明の電子素子の電荷輸送層は、金属酸化物を含みつつも、高導電性と可視光領域での高透明性とを両立することができる。
【0021】
ここで、本発明において、金属酸化物よりも還元性が高い化合物の「還元性」は、XPSで判断する。具体的には、金属酸化物に添加することで、電流をかけた後において、低結合エネルギー側のスペクトル強度を低下させる作用を有する化合物を、金属酸化物よりも還元性が高い化合物とする。一例として、金属酸化物がタングステン(W)を含む金属酸化物である場合は、W4fのXPSスペクトルを測定することで、金属酸化物よりも還元性が高い化合物の「還元性」を評価できる。
【0022】
前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物(以下、「着色防止剤」と称することがある。)としては、可視光領域において、光吸収の少ないものが好ましく、下記構造式:
【化1】
で表されるジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)、リンモリブデン酸(PMA)、ヨウ化銅(I)(CuI)が特に好ましい。
【0023】
次に、本発明の電子素子の電荷輸送層の一例として、金属酸化物として、リンタングステン酸(PWA)を含み、金属酸化物よりも還元性が高い化合物(着色防止剤)として、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)、リンモリブデン酸(PMA)、又はヨウ化銅(I)(CuI)を含む薄膜を例として詳述する。
【0024】
図1に、リンタングステン酸(PWA)の薄膜の吸収スペクトルと、リンタングステン酸(PWA)とHAT-CNを含み、PWA100質量部に対して、HAT-CNを0.5質量部、1質量部、3質量部又は10質量部添加して形成した薄膜の吸収スペクトルを示す。
また、図2に、リンタングステン酸(PWA)の薄膜の吸収スペクトルと、リンタングステン酸(PWA)とリンモリブデン酸(PMA)を含み、PWA100質量部に対して、PMAを0.5質量部、1質量部、3質量部又は10質量部添加して形成した薄膜の吸収スペクトルを示す。
また、図3に、リンタングステン酸(PWA)の薄膜の吸収スペクトルと、リンタングステン酸(PWA)とCuIを含み、PWA100質量部に対して、CuIを0.5質量部、1質量部又は3質量部添加して形成した薄膜の吸収スペクトルを示す。
【0025】
図1図3から、金属酸化物がリンタングステン酸(PWA)の場合、HAT-CN、PMA、CuIを加えても、可視光領域における吸収が増大していない事が分かる。
【0026】
リンタングステン酸(PWA)を含む電荷輸送層を具える電子素子を駆動した際の着色を抑えるためには、添加剤(着色防止剤)がPWAよりも還元され易い事が求められ、この還元のされ易さは、上述のように、W4fのXPSスペクトルを測定する事で評価できる。
【0027】
図4は、リンタングステン酸(PWA)の薄膜のW4fのXPSスペクトルである。
また、図5は、リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して、HAT-CNを3質量部添加して形成した薄膜のW4fのXPSスペクトルである。
また、図6は、リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して、PMAを3質量部添加して形成した薄膜のW4fのXPSスペクトルである。
また、図7は、リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して、CuIを3質量部添加して形成した薄膜のW4fのXPSスペクトルである。
【0028】
図4に示すPWAの薄膜のXPSスペクトルは、図5図7に示すPWAに対してHAT-CN、PMA又はCuIを添加して形成した薄膜のXPSスペクトルに比べて、低結合エネルギー側の肩の強度が大きい事が分かる。ここで、低結合エネルギー側の部分は、より価数の小さいタングステンの存在を表している。ピーク分離を行い、Wの原子価数の存在比をまとめたものを表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1から分かるように、PWAの薄膜(添加剤無し)では、タングステン(W)の原子価が6のものが89.0%であり、残りの11%はそれよりも原子価が小さい。
一方、PWAに対してHAT-CNを加えた薄膜では、タングステン(W)の原子価が6のものが95.5%であり、PWAに対してPMAを加えた薄膜では、タングステン(W)の原子価が6のものが93.3%であり、PWAに対してCuIを加えた薄膜では、タングステン(W)の原子価が6のものが90.8%であり、いずれも、PWAの薄膜(添加剤無し)に比べて、原子価の高いタングステン(W)の割合が大きく、酸化されている事が分かる。従って、HAT-CN、PMA、及びCuIは、全てPWAを酸化する能力(PWAの還元を抑制する能力)を有している事が分かる。また、このことから、PWAが還元される際に、代わりにHAT-CN、PMA、CuIが還元される事が分かる。
なお、本発明では、HAT-CN、PMA、CuIに限られず、金属酸化物よりも還元性が高い化合物を着色防止剤として、金属酸化物に添加することで、金属酸化物の還元を抑制して、金属酸化物の着色を防止することができる。
【0031】
次に、本発明の電子素子の一実施態様を、図面を参照しながら詳細に説明する。図8は、本実施形態の電子素子の一例を説明するための断面模式図である。
【0032】
図8に示す本実施形態の電子素子1においては、基板10上に陽極又は陰極となる電極20(図8では、陰極20)が設けられている。また、図8に示す電子素子1においては、電極20(図8では、陰極20)の上層に、金属酸化物に着色防止剤を添加してなる電荷輸送層30、機能層40が順に積層されており、最後に電極20の対向電極となる電極50(図2では、陽極50)が積層されている。ここで、機能層40は、有あっても無くてもよい。
【0033】
(基板10)
基板10は、ガラス、樹脂等の材料からできており、適宜用いる事ができる。基板10の材料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
基板10に用いられるガラス材料としては、石英ガラス、ソーダガラス等が挙げられる。
一方、基板10に用いられる樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等が挙げられる。基板10の材料として、樹脂材料を用いた場合、柔軟性に優れた電子素子1が得られる。
基板10の平均厚さは、特に限定されないが、0.1~30mmであることが好ましく、0.1~10mmであることがより好ましい。
【0034】
(電極20)
電極20には、一般的に電子素子で用いられる電極材料を好適に用いる事ができる。
例えば、ITO(インジウム酸化錫)、IZO(インジウム酸化亜鉛)、FTO(フッ素酸化錫)、InSnZnO(インジウム酸化亜鉛錫、ITZO)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等からなる導電性の高い透明電極や、アルミニウム、銀等からなる、反射率が高く、導電性の高い電極を適宜、用いる事ができる。
電極20(図2では、陰極20)の平均厚さは、特に制限されないが、10~500nmであることが好ましく、50~200nmであることがより好ましい。
【0035】
(電荷輸送層30)
電荷輸送層30の材料としては、上述した金属酸化物に、該金属酸化物よりも還元性が高い化合物(着色防止剤)を添加したものが用いられる。
【0036】
--金属酸化物--
前記金属酸化物としては、ポリオキソメタレートが好ましく、ヘテロポリオキソメタレートが更に好ましい。該ヘテロポリオキソメタレートとは、ヘテロ原子(P5+、Si4+、Ge4+、Bi3+等)を中心とし、ポリ原子(W6+、Mo6+、V5+等)がヘテロ原子に酸素を介して配位した構造を有する化合物であり、ケギン(Keggin)型、ドーソン(Dawson)型等の構造が知られている。
【0037】
前記ポリオキソメタレートとしては、リンタングステン酸(PWA)、リンモリブデン酸(PMA)、ケイタングステン酸(SWA)等の酸や、これらの酸のナトリウム塩であるPWAのナトリウム塩(PWA-Na)、PMAのナトリウム塩(PMA-Na)等を用いる事ができる。
前記ポリオキソメタレートは、溶剤への溶解性が高く、溶剤に溶かしてインクとし塗布成膜することで数百nmの厚膜の電荷輸送層を形成し易い。なお、形成される膜は、表面が平滑であることが好ましい。
【0038】
前記金属酸化物としては、式:HPW1240で表されるリンタングステン酸(PWA)が好ましい。リンタングステン酸(PWA)は、溶剤への溶解性が特に高く、また、可視光領域での透明性が高く、更には、電荷輸送層の形成にリンタングステン酸(PWA)を使用した場合、形成される膜(電荷輸送層)の平滑性が向上する。なお、不純物の濃度により、作製した膜の平滑性が異なるため、より平滑となる原材料を適宜選択して用いる事が好ましい。
【0039】
電荷輸送層30中の金属酸化物の含有率は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上が更に好ましく、また、99.9質量%以下が好ましく、99.5質量%以下が更に好ましく、99質量%以下がより一層好ましい。
【0040】
--金属酸化物よりも還元性が高い化合物--
前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物は、使用する金属酸化物に応じて選択され、電子素子に電流を流した際に、金属酸化物の代わりに電子を受容できる化合物であればよい。ここで、化合物の「還元性」は、XPSで判断する。前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物は、金属酸化物の還元による着色を抑制し、所謂、着色防止剤として作用する。
【0041】
前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物としては、モリブデン酸等のポリオキソメタレート、ヨウ化銅(I)、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)等の電子受容性有機化合物、更には、一般の有機EL素子で正孔注入層や電荷発生層中の電荷受容層の材料として用いられる化合物が好ましい。ここで、モリブデン酸は、モリブデンのオキソアニオンを含む化合物であり、該モリブデン酸には、リンモリブデン酸(PMA)等のポリオキソメタレートも包含される。
また、金属酸化物よりも還元性が高い化合物として、モリブデン酸、ヨウ化銅(I)、HAT-CNを使用した場合、金属酸化物の還元を抑制する効果が高く、金属酸化物の着色を更に抑制して、電荷輸送層の透明性を高いレベルで維持することができる。
【0042】
また、前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物としては、前記金属酸化物が溶解するアルコール、アセトニトリル、エステル等の極性溶媒への溶解性が高い化合物が好ましい。具体的には、金属酸化物よりも還元性が高い化合物は、溶媒1mL当たり20mg以上溶解する事が好ましい。
【0043】
前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物(着色防止剤)の含有量は、前記金属酸化物100質量部に対して10質量部以下である。金属酸化物よりも還元性が高い化合物の含有量が、前記金属酸化物100質量部に対して10質量部以下であれば、電荷輸送層30の電気伝導特性に与える影響が小さく、高い導電性を維持できる。
なお、前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物(着色防止剤)の含有量は、前記金属酸化物の電気伝導性を著しく阻害しない限り、高い事が好ましい。金属酸化物よりも還元性が高い化合物(着色防止剤)の含有量が低いと、金属酸化物の着色防止の効果が小さい。具体的には、前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物の含有量は、前記金属酸化物100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上が更に好ましく、1質量部以上がより一層好ましく、また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下が更に好ましい。特には、前記金属酸化物よりも還元性が高い化合物(着色防止剤)の含有量は、1質量部以上3質量部以下の範囲が好ましい。
【0044】
前記電荷輸送層30の厚さ(平均厚さ)は、100nm以上であることが好ましく、120nm以上であることが更に好ましい。なお、電荷輸送層30の厚さ(平均厚さ)の上限は、特に限定されるものではないが、効果とコストのバランスの観点から、1000nm以下が好ましく、500nm以下が更に好ましい。
ここで、電荷輸送層30の厚さ(平均厚さ)は、分光エリプソメトリー法等の非接触式光学膜厚測定装置や非接触式表面形状測定装置で測定することができる。
【0045】
(機能層40)
本発明の電子素子は、機能層40を有しても、有しなくても良いが、例えば、本発明の電子素子では、後述のように、有機EL素子を構成する層を機能層として用いる事ができる。また、本発明の電子素子は、有機EL素子以外の無機材料で構成されるダイオード素子や太陽電池素子等にも用いる事ができる。
【0046】
(電極50)
電極50は、機能層40がある場合は、機能層40を構成する材料とスムーズに電荷をやり取りできるもの、機能層40がない場合は、電荷輸送層30を構成する材料とスムーズに電荷をやり取りできるものがよく、例えば、アルミニウム等の金属材料が好ましい。
電極50(図2では、陽極50)の平均厚さは、特に制限されないが、10~500nmであることが好ましく、50~200nmであることがより好ましい。
【0047】
(形成方法)
図8に示す電子素子1において、全ての層を形成する方法は、特に制限されず、気相成膜法であるプラズマCVD、熱CVD、レーザーCVD等の化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、溶射法、そして液相成膜法である電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、ゾル・ゲル法、MOD法、スプレー熱分解法、微粒子分散液を用いたドクターブレード法、スピンコート法、インクジェット法、スクリーンプリンティング法等の印刷技術等を用いることができ、材料に応じた適切な方法を選択して用いることができる。
これらの方法は各層の材料の特性に応じて選択するのが好ましく、層ごとに作製方法が異なっていてもよい。
【0048】
<エレクトロルミネッセンス素子>
上述した機能層40は、有機EL素子や量子ドットEL素子等の発光素子の一部とすることができる。
順構造のEL素子においては、EL素子内部において、電荷を発生させ、発生により得られた電子を前記電荷輸送層30が受け取るキャリア輸送メカニズムが好ましい。
一方、逆構造のEL素子においては、陰極から前記電荷輸送層30に電子を注入・輸送し、機能層40に電子を注入するキャリア輸送メカニズムとなるが、電荷輸送層30から機能層40への電子注入を容易にするために、電荷輸送層30と機能層40の間に低仕事関数を有する材料からなる層を挿入する事が好ましい。そのような材料は、例えば、アルミニウムや銀等の金属、ITO等の透明導電膜である。光吸収やデバイスの面方向への電子伝導を抑える観点から、金属を用いる場合、低仕事関数を有する材料からなる層は、3nm以下の厚さで用いることが好ましい。
【0049】
<有機エレクトロルミネッセンス素子>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、上述の電子素子と、発光層と、を具え、前記発光層が、前記陽極と前記陰極の間に位置することを特徴とする。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、上述の高導電性と可視光領域での高透明性とを両立した電子素子を具えるため、発光効率が高い。
【0050】
本発明の一実施形態の有機EL素子は、基板上に陰極が設けられている、所謂、逆構造の有機EL素子であり、該陰極上に上述の電荷輸送層が設けられている。ここで、該電荷輸送層は、上述の金属酸化物と、該金属酸化物よりも還元性が高い化合物と、を含む。また、電荷輸送層の上部(基板に対して反対側)には、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極等を、この順で設けることができる。
なお、本発明の有機EL素子の構成は、これに限らず、陰極から陽極までの間に、少なくとも一層の発光層が含まれていればよく、本発明の有機EL素子の実施形態は、この例に限らない。
【0051】
<表示装置>
本発明の表示装置は、上述の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。本発明の表示装置は、上述の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えるため、発光効率が高い。
前記表示装置は、一般的に有機ELディスプレイの駆動に用いられるTFT回路等の上層に、本発明の有機EL素子を形成することで、形成できる。
【0052】
<照明装置>
本発明の照明装置は、上述の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えることを特徴とする。本発明の照明装置は、上述の有機エレクトロルミネッセンス素子を具えるため、発光効率が高い。
前記照明装置は、一般的に有機EL照明に用いられる照明器具に、本発明の有機EL素子を組み込むことで、形成できる。
【実施例
【0053】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
(比較例1-1及び実施例1-1~1-11)
以下のようにして、比較例1-1及び実施例1-1~1-11の電子素子1を製造した。
製造した電子素子1の構造は、図8に示す通りである。但し、作製した電子素子1は、機能層40を有しない。
【0055】
幅15mm、厚さ150nmのITO付きガラス基板を洗浄、続いてUVオゾン処理し、窒素で満たしたグローブボックス中に移動した。173nmの膜厚が得られるように所定の濃度に調整したリンタングステン酸(PWA)のアセトニトリル溶液(比較例1-1)と、該溶液に、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して0.5質量部のHAT-CNを添加した溶液(実施例1-1)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して1質量部のHAT-CNを添加した溶液(実施例1-2)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して3質量部のHAT-CNを添加した溶液(実施例1-3)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して10質量部のHAT-CNを添加した溶液(実施例1-4)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して0.5質量部のリンモリブデン酸(PMA)を添加した溶液(実施例1-5)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して1質量部のリンモリブデン酸(PMA)を添加した溶液(実施例1-6)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して3質量部のリンモリブデン酸(PMA)を添加した溶液(実施例1-7)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して10質量部のリンモリブデン酸(PMA)を添加した溶液(実施例1-8)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して0.5質量部のヨウ化銅(CuI)を添加した溶液(実施例1-9)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して1質量部のヨウ化銅(CuI)を添加した溶液(実施例1-10)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して3質量部のヨウ化銅(CuI)を添加した溶液(実施例1-11)と、を用意した。
【0056】
各溶液を、スピンコーターのスピン台上に固定された基板上に滴下し、5000rpmで180秒間スピン回転させて、着色防止剤添加無しの電荷輸送層(比較例1-1)と、着色防止剤添加有りの電荷輸送層(実施例1-1~1-11)を塗布成膜した。この時、塗布したくない部分はマスクでカバーし、塗布後にマスクを取り除いた。次に、窒素下で150℃、10分間の加熱処理を施して、溶媒を除いた。
次に、真空チャンバー中に基板を移し、幅10mmのAlを1~10Å/秒の成膜レートで、厚さ12nmの陽極を蒸着成膜した。
続いて、真空チャンバー中から窒素で満たしたグローブボックス中に基板を取り出し、UV硬化接着剤を塗布したガラス管を素子部にかぶせてUV照射することで中空封止した。作製した素子の面積は、150mmである。
【0057】
<検証のための測定結果:着色の評価>
作製した素子のAlの膜厚は12nmと薄く、可視光の一部を透過させられるため、吸収スペクトルの評価を行う事ができる。また、素子面積は10mm×15mmであり、一般の吸収スペクトル測定に用いる光の形状よりも十分に大きい。
始めに、素子のITO電極を陰極、Alを陽極として、電源をつなぎ、電圧をかけずに素子部の吸収スペクトルを測定した。
次に、素子に電圧を印加した。0Vから徐々に電圧を増大させて電流を流し、7Vまで増大させた。7Vで1分間保持した後、電圧の印加を止めた。再び素子部の吸収スペクトルを測定した。電圧印加前後の吸収スペクトルの差を図9図12に示し、また、685nm、480nmにおける吸光度の差を表2、表3に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
図9図12、表2、表3から、着色防止剤を添加した全ての素子(実施例1-1~1-11)は、PWAのみのもの(比較例1-1)と比べて、素子に電圧を印加して駆動した後の着色が抑制されている事が分かる。これは、PWAの代わりに着色防止剤が電子を受け取る事で、PWA中のタングステンの還元が抑制されたためである。
【0061】
(比較例2-1及び実施例2-1~2-6)
以下のようにして、比較例2-1及び実施例2-1~2-6の電子素子1を製造した。
製造した電子素子1の構造は、図8に示す通りである。但し、作製した電子素子1は、機能層40を有しない。
【0062】
幅3mm、厚さ150nmのITO付きガラス基板を洗浄、続いてUVオゾン処理し、窒素で満たしたグローブボックス中に移動した。173nmの膜厚が得られるように所定の濃度に調整したリンタングステン酸(PWA)のアセトニトリル溶液(比較例2-1)と、該溶液に、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して1質量部のHAT-CNを添加した溶液(実施例2-1)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して3質量部のHAT-CNを添加した溶液(実施例2-2)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して1質量部のリンモリブデン酸(PMA)を添加した溶液(実施例2-3)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して3質量部のリンモリブデン酸(PMA)を添加した溶液(実施例2-4)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して1質量部のヨウ化銅(CuI)を添加した溶液(実施例2-5)と、
リンタングステン酸(PWA)100質量部に対して3質量部のヨウ化銅(CuI)を添加した溶液(実施例2-6)と、を用意した。
【0063】
各溶液を、スピンコーターのスピン台上に固定された基板上に滴下し、5000rpmで180秒間スピン回転させて、着色防止剤添加無しの電荷輸送層(比較例2-1)と、着色防止剤添加有りの電荷輸送層(実施例2-1~2-6)と、を塗布成膜した。この時、塗布したくない部分はマスクでカバーし、塗布後にマスクを取り除いた。次に、窒素下で150℃、10分間の加熱処理を施して、溶媒を除いた。
次に、真空チャンバー中に基板を移し、3mm幅のAlを1~10Å/秒の成膜レートで、厚さ100nmの電極を蒸着成膜した。
続いて、真空チャンバー中から窒素で満たしたグローブボックス中に基板を取り出し、UV硬化接着剤を塗布したガラス管に乾燥剤を貼り付けた後、素子部にかぶせてUV照射することで中空封止した。作製した素子の面積は、9mmである。
【0064】
<検証のための測定結果:電流密度-電圧特性の評価>
各素子について、始めに、ITOを陽極、Alを陰極とした順構造の素子の特性評価を行った。0Vから徐々に電圧を増大させ、電流密度-電圧特性を評価した。電流密度22.2mA/cmまで増大させ、同電流密度で10秒間保持した。続いて、二回目に電流密度-電圧測定を評価した。2.5mA/cm時の電圧を表4にまとめた。
【0065】
次に、上記とは別の測定点を用いて、ITOを陰極、Alを陽極とした逆構造の素子の特性評価を上記と同様に行った。2.5mA/cm時の電圧を表4にまとめた。
【0066】
【表4】
【0067】
表4から分かるように、着色防止剤を添加しなかった素子(比較例2-1)は、0.3Vで駆動した。着色防止剤を1質量部加えた素子(実施例2-1、2-3、2-5)は、3種類とも0.3Vとほぼ同等の駆動電圧であった。着色防止剤を3質量部加えた素子(実施例2-2、2-4、2-6)は、それよりも若干高駆動電圧となったが、駆動電圧の上昇幅は十分に小さかった。このことから、着色防止剤の添加によって、電気特性の劣化を抑制しつつ、着色を抑制できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の電子素子は、金属酸化物を含みつつも、高導電性と可視光領域での高透明性とを両立した電荷輸送層を具え、有機EL素子に適用することで、低電圧で駆動させつつ、発光効率を向上させることができる。また、かかる有機EL素子を表示装置や照明装置に組み込むことで、表示装置や照明装置の発光効率を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1:電子素子
10:基板
20:電極(陰極)
30:電荷輸送層
40:機能層
50:電極(陽極)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12