(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-06
(45)【発行日】2025-06-16
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及び終点検出方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20250609BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20250609BHJP
【FI】
H01L21/302 103
H01L21/302 101H
H05H1/46 R
(21)【出願番号】P 2021158816
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2024-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2021078326
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 雅一
【審査官】菊地 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-093781(JP,A)
【文献】特開昭61-145825(JP,A)
【文献】特開2001-168086(JP,A)
【文献】特開平06-069163(JP,A)
【文献】特表2014-531753(JP,A)
【文献】特開平08-218186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置される載置台が内部に設けられたチャンバと、
前記チャンバ内
に配置された電極と、
前記電極又は前記電極に接続された配線に設けられ、電圧、電流の何れかを計測する計測部と、
前記チャンバ内
にガスを供給するガス供給部と、
前記チャンバ内に供給された前記ガス
からプラズマ
を生成するための第1の周波数を有する第1高周波電力を前記チャンバに供給する第1の高周波電源と、
プラズマ中のイオンを前記基板に引き込むための前記第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2高周波電力を前記電極に供給する第2の高周波電源と、
前記チャンバ内に生成されたプラズマによるプラズマ処理の終点を検出する検出部と、
を有
し、
前記第1高周波電力および前記第2高周波電力の少なくともいずれか一方は、100Hz~10kHzの周波数でパルス状に供給され、
前記検出部は、前記第2高周波電力が供給される期間に前記計測部により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、前記チャンバ内に生成されたプラズマによるプラズマ処理の終点を検出する、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記ガス
はエッチングガス
であり、
前記プラズマ処理はエッチング
処理である、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記ガス
はクリーニングガス
であり、
前記プラズマ処理はクリーニング
処理である、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記検出部は、供給される前記第1高周波電力と前記第2高周波電力の組み合わせがエッチングおよび選択比に最も寄与するタイミング
でエッチングの終点を検出する
請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
基板が載置される載置台が内部に設けられたチャンバと、
前記チャンバ内の配置された電極と、
前記電極又は前記電極に接続された配線に設けられ、電圧、電流の何れかを計測する計測部と、
前記チャンバ内にエッチングガスを供給するガス供給部と、
前記チャンバ内に供給された前記エッチングガスをプラズマ化するための第1の周波数の第1高周波電力と、プラズマ中のイオン成分を前記載置台に引き込むための前記第1の周波数よりも低い第2の周波数の第2高周波電力を、供給する期間の一部を重複させて又は供給する期間を重複させずにそれぞれパルス状に供給する高周波電源と、
前記第2高周波電力のみが供給される期間に前記計測部により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出する検出部と、
を有するプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記基板は、エッチング対象の膜
を有する、
請求項2、4、
5の何れか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第1高周波電力及び前記第2高周波電力は100Hz~10kHzの周波数でパルス状に供給
される
請求項
5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記電極に接続された配線に設けられる整合回路をさらに有し、
前記電極は、前記載置台に設けられ、
前記電極に
前記第2高周波電力が供給され、
前記計測部は、前記配線の前記整合回路よりも前記電極側に設けられ
る、
請求項1~
7の何れか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記検出部は、供給される前記第1高周波電力と前記第2高周波電力の組み合わせがクリーニングに最も寄与するタイミング
でクリーニングの終点を検出する
請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
基板が載置される載置台が内部に設けられたチャンバと、
前記チャンバ内の配置された電極と、
前記電極又は前記電極に接続された配線に設けられ、電圧、電流の何れかを計測する計測部と、
前記チャンバ内にクリーニングガスを供給するガス供給部と、
前記チャンバ内に供給された前記クリーニングガスをプラズマ化するための第1の周波数の第1高周波電力と、プラズマ中のイオン成分を前記載置台に引き込むための前記第1の周波数よりも低い第2の周波数の第2高周波電力のうち、少なくとも一方をパルス状として、前記第1高周波電力を前記載置台又は前記チャンバの天部に供給し、前記第2高周波電力を前記載置台に供給する高周波電源と、
前記第1高周波電力が供給される期間に前記計測部により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、前記チャンバ内の前記天部部分のクリーニングの終点を検出し、前記第2高周波電力が供給される期間に前記計測部により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、前記載置台部分のクリーニングの終点を検出する検出部と、
を有するプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記検出部は、前記第1高周波電力及び前記第2高周波電力が供給される期間
に前記チャンバ内の側壁部分のクリーニングの終点を検出する
請求項
9又は
10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記第1の周波数は、40MHz~130MHzの範囲の周波数とし、
前記第2の周波数は、前記第1の周波数よりも低く且つ400kHz~40MHzの範囲の周波数とする、
請求項
9~
11の何れか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記高周波電源は、前記第1の周波数と前記第2の周波数の間の第3の周波数
を有する第3高周波電力をパルス状に供給し、
前記検出部は、前記第3高周波電力が供給される期間
に前記チャンバ内の側壁部分のクリーニングの終点を検出する
請求項
10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記第3の周波数は、前記第1の周波数よりも低く且つ前記第2の周波数よりも高
い周波数であって、13MHz~60MHzの範囲の周波数
である、
請求項
13に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記検出部は、
前記期間に前記計測部により計測される電圧の単位時間当たりの変化量を求め、変化量がピークとなるタイミングを基準としてクリーニングの終点を検出する
請求項
1、3、9~14の何れか1つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記検出部は、前記変化量がピークとなるタイミングから所定のマージン時間を経過したタイミングをクリーニングの終点と検出する
請求項
15に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
基板が載置される載置台が内部に設けられたチャンバ内
にガスを供給する工程と、
前記ガスの供給と共に、前記チャンバ内に供給された前記ガス
からプラズマ化
を生成するための第1の周波数を有する第1高周波電力と、プラズマ中のイオン成分を前記基板に引き込むための前記第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する第2高周波電力を前記チャンバに供給する工程と、
前記チャンバ内に生成されたプラズマによるプラズマ処理の終点を検出する工程と、
を有
し、
前記第1高周波電力および前記第2高周波電力の少なくともいずれか一方は、100Hz~10kHzの周波数でパルス状に供給され、
前記検出する工程は、前記第2高周波電力が供給される期間における電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、前記チャンバ内に生成されたプラズマによるプラズマ処理の終点を検出する、
終点検出方法。
【請求項18】
前記ガス
はエッチングガス
であり、
前記
プラズマ処理はエッチング
である、
請求項
17に記載の終点検出方法。
【請求項19】
前記ガス
はクリーニングガス
であり、
前記プラズマ処理はクリーニング
である、
請求項
17に記載の終点検出方法。
【請求項20】
基板が載置される載置台が内部に設けられ、電極が内部に配置されたチャンバにエッチングガスを供給する工程と、
前記エッチングガスの供給と共に、前記チャンバ内に供給された前記エッチングガスをプラズマ化するための第1の周波数の第1高周波電力と、プラズマ中のイオン成分を前記載置台に引き込むための前記第1の周波数よりも低い第2の周波数の第2高周波電力を、供給する期間の一部を重複させて又は供給する期間を重複させずにそれぞれパルス状に供給する工程と、
前記電極又は前記電極に接続された配線に設けられ、電圧、電流の何れかを計測する計測部により、前記第2高周波電力のみが供給される期間に計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出する工程と、
を有する終点検出方法。
【請求項21】
基板が載置される載置台が内部に設けられ、電極が内部に配置されたチャンバ内にクリーニングガスを供給する工程と、
前記クリーニングガスの供給と共に、前記チャンバ内に供給された前記クリーニングガスをプラズマ化するための第1の周波数の第1高周波電力と、プラズマ中のイオン成分を前記載置台に引き込むための前記第1の周波数よりも低い第2の周波数の第2高周波電力のうち、少なくとも一方をパルス状として、前記第1高周波電力を前記載置台又は前記チャンバの天部に供給し、前記第2高周波電力を前記載置台に供給する工程と、
前記電極又は前記電極に接続された配線に設けられ、電圧、電流の何れかを計測する計測部により、前記第1高周波電力が供給される期間に計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、前記チャンバ内の前記天部部分のクリーニングの終点を検出し、前記第2高周波電力が供給される期間に計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、前記載置台部分のクリーニングの終点を検出する工程と、
を有する終点検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及び終点検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、プラズマエッチング中にVIプローブで計測した信号からエッチングの終点(エンドポイント)を検出する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2005/0217795号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ処理の終点を精度良く検出する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によるプラズマ処理装置は、チャンバと、電極と、計測部と、ガス供給部と、高周波電源と、検出部とを有する。チャンバは、基板が載置される載置台が内部に設けられている。電極は、チャンバ内の配置されている。計測部は、電極又は電極に接続された配線に設けられ、電圧、電流の何れかを計測する。ガス供給部は、チャンバ内にプラズマ化するガスを供給する。高周波電源は、チャンバ内に供給されたガスをプラズマ化する高周波電力をパルス状にチャンバに供給する。検出部は、高周波電力のパルスの周期に同期したタイミングで計測部により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理の終点を検出する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、プラズマ処理の終点を精度良く検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置の概略的な構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る制御部の概略的な構成の一例を示したブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るエッチングの終点の検出を説明する図である。
【
図4】
図4は、従来のエッチングの終点の検出を説明する図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係るエッチング対象とされた基板の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るエッチングの終点の検出を説明する図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係るエッチングの終了の検出の一例を説明する図である。
【
図8A】
図8Aは、第1実施形態に係る基板の一例を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、第1実施形態に係る基板の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る計測部による計測結果の一例を説明する図である。
【
図10】
図10は、比較例のOESによる計測結果の一例を説明する図である。
【
図11A】
図11Aは、第1実施形態に係るソースRF信号及びバイアスRF信号とエッチングの終点を検出する期間の一例を示す図である。
【
図11B】
図11Bは、第1実施形態に係るソースRF信号及びバイアスRF信号とエッチングの終点を検出する期間の一例を示す図である。
【
図11C】
図11Cは、第1実施形態に係るソースRF信号及びバイアスRF信号とエッチングの終点を検出する期間の一例を示す図である。
【
図11D】
図11Dは、第1実施形態に係るソースRF信号及びバイアスRF信号とエッチングの終点を検出する期間の一例を示す図である。
【
図11E】
図11Eは、第1実施形態に係るソースRF信号及びバイアスRF信号とエッチングの終点を検出する期間の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る終点検出方法の処理順序の一例を説明する図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置の概略的な構成の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る制御部の概略的な構成の一例を示したブロック図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る高周波電力の供給の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係るクリーニングの終点の検出を説明する図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態に係るクリーニングの流れを説明する図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態に係るクリーニングの終点を検出する流れの一例を説明する図である。
【
図19】
図19は、第2実施形態に係る終点検出方法の処理順序の一例を説明する図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態に係る高周波電力の供給の他の一例を示す図である。
【
図21】
図21は、第2実施形態に係る高周波電力の供給の他の一例を示す図である。
【
図22】
図22は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置におけるRF信号の供給経路の一例を概略的に示した図である。
【
図23】
図23は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置におけるRF信号の供給経路の他の一例を概略的に示した図である。
【
図24】
図24は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置におけるRF信号の供給経路の他の一例を概略的に示した図である。
【
図25】
図25は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置におけるRF信号の供給経路の他の一例を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本願の開示するプラズマ処理装置及び終点検出方法の実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、開示するプラズマ処理装置及び終点検出方法が限定されるものではない。
【0009】
プラズマエッチングでは、過剰なエッチングを防いでパターン形状の変動を抑制するために、リアルタイムにエッチングの終点を検出してエッチング処理を停止する方法が適用される。従来のエッチングの終点を検出する手法としては、例えば、OES(Optical Emission Sensor)を用いてエッチング中のプラズマの発光強度の変化からエッチングの終点を検出する手法がある。また、プラズマエッチング中にVIプローブで計測した信号からエッチングの終点を検出する手法がある。
【0010】
ところで、従来の時間的に一定のパワーの高周波(RF)電力を印加するエッチングと比べて、RF電力をパルス状に繰り返し印加するサイクルエッチングが、加工精度の向上に有効である。サイクルエッチングは、加工精度が厳しい工程をはじめとして、エッチングの主流となりつつある。しかし、従来のエッチングの終点を検出する手法では、エッチングの終点を精度良く検出できない。そこで、エッチングの終点を精度良く検出する技術が期待されている。
【0011】
また、プラズマ処理装置では、プラズマを用いてプラズマ処理チャンバ内に付着したデポジションを除去するクリーニングが行われる。このようなクリーニングでも、RF電力をパルス状に繰り返し印加する手法が、デポジションの除去に有効である。クリーニングでもプラズマによるプラズマ処理チャンバ内の過剰なエッチングを防ぐため、クリーニングの終点を精度良く検出する技術が期待されている。
【0012】
このように、エッチングやクリーニングなどのプラズマ処理の終点を精度良く検出する技術が期待されている。
【0013】
[第1実施形態]
[装置構成]
第1実施形態では、基板をエッチングするプラズマ処理の終点を検出する場合を説明する。本開示のプラズマ処理装置の一例について説明する。
図1は、第1実施形態に係るプラズマ処理装置1の概略的な構成の一例を示す図である。
【0014】
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合プラズマ処理装置の構成例について説明する。容量結合プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0015】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、基台及び静電チャックを含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置される。静電チャックの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0016】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0017】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0018】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0019】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号と同じ周波数、もしくはソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~50MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0020】
例えば、第1のRF生成部31aは、配線などの導電部33aを介してシャワーヘッド13の導電性部材と電気的に接続されている。導電部33aには、インピーダンス整合回路34aが設けられている。インピーダンス整合回路34aは、第1のRF生成部31aの出力インピーダンスと負荷側(シャワーヘッド13側)の入力インピーダンスを整合させる。第1のRF生成部31aは、プラズマを生成するための第1の周波数の第1高周波電力をシャワーヘッド13の導電性部材に供給する。例えば、第1のRF生成部31aは、第1高周波電力として、上述したソースRF信号を導電部33a及びインピーダンス整合回路34aを介してシャワーヘッド13の導電性部材に供給する。ソースRF信号は、例えば、60MHzとする。シャワーヘッド13の導電性部材は、電極として機能する。ソースRF信号が供給されることにより、プラズマ処理チャンバ10内には、高密度のプラズマが生成される。
【0021】
また、例えば、第2のRF生成部31bは、配線などの導電部33bを介して基板支持部11の基台の導電性部材と電気的に接続されている。導電部33bには、インピーダンス整合回路34bが設けられている。インピーダンス整合回路34bは、第2のRF生成部31bの出力インピーダンスと負荷側(基板支持部11側)の入力インピーダンスを整合させる。第2のRF生成部31bは、プラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むための第1の周波数よりも低い第2の周波数の第2高周波電力を基板支持部11の導電性部材に供給する。例えば、第2のRF生成部31bは、第2高周波電力として、上述したバイアスRF信号を導電部33b及びインピーダンス整合回路34bを介して基板支持部11の導電性部材に供給する。バイアスRF信号は、例えば、40MHzとする。基板支持部11の導電性部材は、電極として機能する。バイアスRF信号が供給されることにより、プラズマ処理チャンバ10内に生成されたプラズマ中のイオン成分が、基板Wに引き込まれる。
【0022】
本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、サイクルエッチングを行うため、RF電源31から高周波電力をパルス状にプラズマ処理チャンバ10に供給する。例えば、RF電源31は、第1のRF生成部31a、第2のRF生成部31bのうち、少なくとも一方がパルス状に高周波電力を供給する。
【0023】
プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10内の配置された電極又は電極に接続された配線に、電圧、電流の何れかを計測する計測部35が設けられている。本実施形態では、基板支持部11の導電性部材に接続された導電部33bに計測部35が設けられている。計測部35は、電流、電圧を検出するプローブを含んで構成されており、電圧、電流を計測する。計測部35は、バイアスRF信号が流れる導電部33bの電圧、電流を計測し、計測した電圧、電流を示す信号を後述する制御部100へ出力する。
【0024】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0025】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0026】
上記のように構成されたプラズマ処理装置1は、後述する制御部100をさらに含む。
図2は、第1実施形態に係る制御部100の概略的な構成の一例を示したブロック図である。
図1に示したプラズマ処理装置1は、制御部100によって、その動作が統括的に制御される。
【0027】
制御部100は、例えば、コンピュータであり、プラズマ処理装置1の各部を制御する。プラズマ処理装置1は、制御部100によって、その動作が統括的に制御される。制御部100は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させる制御を行う。制御部100は、外部インターフェース101と、プロセスコントローラ102と、ユーザインターフェース103と、記憶部104とが設けられている。
【0028】
外部インターフェース101は、プラズマ処理装置1の各部と通信可能とされ、各種のデータを入出力する。例えば、外部インターフェース101には、計測部35で計測された電圧、電流を示す信号が入力する。
【0029】
プロセスコントローラ102は、CPU(Central Processing Unit)を備えプラズマ処理装置1の各部を制御する。
【0030】
ユーザインターフェース103は、工程管理者がプラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマ処理装置1の稼動状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0031】
記憶部104には、プラズマ処理装置1で実行される各種処理をプロセスコントローラ102の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や、処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。なお、制御プログラムやレシピは、コンピュータで読み取り可能なコンピュータ記録媒体(例えば、ハードディスク、DVDなどの光ディスク、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用してもよい。また、制御プログラムやレシピは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0032】
プロセスコントローラ102は、プログラムやデータを格納するための内部メモリを有し、記憶部104に記憶された制御プログラムを読み出し、読み出した制御プログラムの処理を実行する。プロセスコントローラ102は、制御プログラムが動作することにより各種の処理部として機能する。例えば、プロセスコントローラ102は、プラズマ制御部102aと、検出部102bの機能を有する。なお、本実施形態では、プロセスコントローラ102が、プラズマ制御部102a及び検出部102bの機能を有する場合を例に説明する。しかし、プラズマ制御部102a及び検出部102bの機能は、複数のコントローラで分散して実現してもよい。
【0033】
プラズマ制御部102aは、プラズマ処理を制御する。例えば、プラズマ制御部102aは、排気システム40を制御して、プラズマ処理チャンバ10内を所定の真空度まで排気する。プラズマ制御部102aは、ガス供給部20を制御し、ガス供給部20から処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入する。プラズマ制御部102aは、電源30を制御し、処理ガスの導入に合わせて、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bからソースRF信号及びバイアスRF信号を供給してプラズマ処理チャンバ10内にプラズマを生成する。
【0034】
本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、サイクルエッチングを行う。プラズマ制御部102aは、RF電源31を制御し、RF電源31から高周波電力をパルス状に供給する。RF電源31は、ソースRF信号と、バイアスRF信号のうち、少なくとも一方をパルス状に供給する。例えば、プラズマ制御部102aは、RF電源31を制御し、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bからソースRF信号及びバイアスRF信号をそれぞれパルス状に供給する。ソースRF信号及びバイアスRF信号の供給をオン、オフするパルスの周波数は、100Hz~10kHzとする。以下では、ソースRF信号とバイアスRF信号のうち、周波数の高いソースRF信号をHF(High Frequency)とも称し、周波数の低いバイアスRF信号をLF(Low Frequency)とも称する。
【0035】
検出部102bは、計測部35から入力した信号の電圧、電流からプラズマ処理の終点を検出する。例えば、検出部102bは、高周波電力のパルスの周期に同期したタイミングで計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理の終点を検出する。本実施形態では、検出部102bは、高周波電力のパルスの周期に同期したタイミングで計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出する。検出部102bは、供給されるソースRF信号とバイアスRF信号の組み合わせがエッチングおよび選択比に最も寄与するタイミングで計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出する。例えば、本実施形態では、バイアスRF信号が供給される期間がエッチングおよび選択比に最も寄与する。検出部102bは、バイアスRF信号が供給される期間に計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出する。
【0036】
プラズマ制御部102aは、検出部102bの検出結果に基づき、プラズマ処理を制御する。例えば、プラズマ制御部102aは、検出部102bによりエッチングの終点が検出されると、プラズマエッチングを終了する。
【0037】
ここで、エッチングの終点の検出を具体的に説明する。
図3は、第1実施形態に係るエッチングの終点の検出を説明する図である。
図3には、ソースRF信号とバイアスRF信号が供給される期間が示されている。「HF」は、ソースRF信号が供給される期間を示している。「LF」は、バイアスRF信号が供給される期間を示している。ソースRF信号とバイアスRF信号は、それぞれOnの期間に供給される。
図3では、ソースRF信号及びバイアスRF信号が、期間を重複させずにそれぞれパルス状に供給される。
図3では、ソースRF信号及びバイアスRF信号をOn、Offするパルスの周波数が1kHzとされており、1msの周期でソースRF信号及びバイアスRF信号がOn、Offされてサイクルエッチングが行われる。
【0038】
図3には、プラズマに含まれるラジカル(Radical)と、イオン、電子(Ion/Electron)の追従特性が示されている。ラジカルは、高周波電力のオン、オフに対する追従が1ms以上である。このため、オン、オフの1サイクル中には、異なるパルスレベルで生成されたラジカルが混在する。例えば、LFのオンの期間には、前のHFがオンの期間のラジカルと、LFがオンとなったラジカルとが混在する。従って、特定のパルスレベルで生成されるバイプロダクトなどのラジカルを対象としてエッチングの終点を検出する場合、他のパルスレベルで生成されたラジカルやその信号波長付近の裾引きがノイズになる。例えば、LFのオンの期間では、前のHFがオンの期間のラジカルがノイズになる。
【0039】
一方、イオンや電子は、高周波電力のオン、オフに対する追従が0.1ms以下である。このため、100Hz~10kHzのRFパルスを用いたサイクルエッチングでは、異なるパルスレベルによる干渉は生じない。
【0040】
図4は、従来のエッチングの終点の検出を説明する図である。サイクルエッチングの場合、プラズマには、上述のように異なるパルスレベルで生成されたラジカルが混在する。このため、OESによりエッチング中のプラズマの発光強度を検出し、検出される発光強度の変化からからエッチングの終点を検出しようとしても、エッチングの終点を精度良く検出できない。例えば、LFのオンの期間のプラズマの発光強度の変化からからエッチングの終点を検出しようとしても、LFのオンの期間には、HFがオンの期間のラジカルによる発光が混在するため、エッチングの終点を精度良く検出できない。
【0041】
ここで、エッチングの終点を検出の一例を説明する。
図5は、第1実施形態に係るエッチング対象とされた基板Wの一例を示す図である。基板WにSAC(Self-Aligned Contact)工程を実施した場合を示している。基板Wは、複数のトランジスタ120が形成されている。トランジスタ120上には、SiO
2膜などの酸化膜121が形成されている。酸化膜121上には、パターン122が形成されている。SAC工程では、パターン122をマスクとして酸化膜121をエッチングする。例えば、プラズマ処理装置1は、C
4F
6ガス、Arガス、O
2ガスを含んだ処理ガスをエッチングガスとして用いたサイクルエッチングによりSAC工程の酸化膜121のエッチングを実施する。エッチング中、エッチングされた酸化膜121の成分がプラズマ中に継続的に放出されるが、酸化膜121のエッチングが終了する酸化膜121の成分の放出が無くなり、プラズマの特性が変化する。検出部102bは、計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終了を検出する。
【0042】
図6は、第1実施形態に係るエッチングの終点の検出を説明する図である。
図6には、酸化膜121のエッチングが丁度終了するジャストエッチの前の期間(Before just-etch)とジャストエッチの後の期間(After just-etch)でのOESにより計測される発光強度の変化が概略的に示さてれている。OESにより計測される信号には、HFオンとLFオンの信号が重なるため、エッチングの終点を精度良く検出できない。また、
図6には、ジャストエッチの前の期間とジャストエッチの後の期間でのHFとLFが供給されるそれぞれの期間に計測部35により計測された信号(VI signal)の変化が概略的に示さてれている。信号(VI signal)は、計測部35により計測された電圧や電流の変化が概略的に示しており、HFとLFがそれぞれ供給される期間に対応して信号を「HF」と「LF」に分けて示している。「HF」の信号は、ジャストエッチの前とジャストエッチの後で変化が小さい。一方、「LF」の信号は、ジャストエッチの前とジャストエッチの後で大きく変化する。
図7は、第1実施形態に係るエッチングの終了の検出の一例を説明する図である。
図7には、酸化膜121をエッチング中の「LF」の信号(VI signal)の変化が示されている。「LF」の信号は、酸化膜121のジャストエッチのタイミングの前後で大きく変化する。よって、LFが供給される期間の電圧、電流の変化を計測することで、エッチングの終了を精度よく検出できる。
【0043】
検出部102bは、計測部35から入力した信号の電圧、電流からエッチングの状況を検出する。例えば、検出部102bは、バイアスRF信号が供給される期間に計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの状況として酸化膜121のエッチングの終了を検出する。検出部102bは、計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差をリアルタイムにモニタし、有意に変化した瞬間をエッチングの終点とみなす。検出部102bは、終点を検出するデータ処理に、移動平均や時間微分など、ノイズを低減するための一般的な数学的手法が適用してもよい。計測部35は、電圧、電流の信号に、周波数フィルタを通すことによって特定の周波数の信号を抜き出してもよい。
【0044】
ここで、サイクルエッチング中、例えば、従来技術のように、VIプローブで継続的に計測した信号の移動平均からエッチングの終点を検出した場合、LFが供給される期間以外の期間の信号がノイズとなって、エッチングの終点を精度良く検出できない。
【0045】
一方、
図3に示した本実施形態のサイクルエッチングでは、バイアスRF信号が供給される期間がエッチングおよび選択比に最も寄与する。このため、検出部102bは、バイアスRF信号が供給される期間に計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、酸化膜121のエッチングの終了を検出することで、エッチングの終了を精度よく検出できる。
【0046】
ところで、半導体デバイスの微細化に伴い、基板Wは、エッチングする領域の割合が小さくなっている。例えば、
図5に示した基板Wでは、微細化に伴い、マスクとするパターン122の開口の径が小さくなり、酸化膜121が露出した領域の割合が小さくなっている。そこで、基板Wのエッチングする領域の割合が変わった場合のエッチングの終点検出の精度について説明する。
図8A及び
図8Bは、第1実施形態に係る基板Wの一例を示す図である。
図8Aは、基板Wの上面図である。
図8Bは、基板Wの側面図である。基板Wは、ベアウェハ(Bare wafer)130上に、チップ131が設けられている。チップ131は、シリコン膜132上に、SiO
2膜などの酸化膜133が形成されている。基板Wは、チップ131の表面積の変えることで、基板Wの表面積に対する酸化膜133の領域の割合を変えることができる。基板Wの表面積に対する酸化膜133の領域の割合を0%、0.04%、0.1%、0.6%、1%、4%とした基板Wをそれぞれ準備した。そして、本実施形態に係るプラズマ処理装置1により、それぞれの基板Wの酸化膜133のエッチングをサイクルエッチングで行い、バイアスRF信号が供給される期間に計測部35により電圧、電流の計測を実施した。
【0047】
図9は、第1実施形態に係る計測部35による計測結果の一例を説明する図である。
図9には、基板Wの表面積に対する酸化膜133の領域の割合(Area ratio)が0%、0.04%、0.1%、0.6%、1%、4%の基板Wをそれぞれサイクルエッチングした際に計測部35により計測した電圧、電流の計測結果が示されている。
図9には、計測部35により計測した電圧Vのpeak to peakの値V
PPを、電流Iのpeak to peakの値I
PPで割ったV
PP/I
PPの値の変化の波形が計測結果として示されている。すなわち、
図9には、計測部35における抵抗値の変化が示されている。また、
図9の右側には、0%、0.04%、0.1%、0.6%の基板Wの波形を拡大した拡大図が示されている。また、
図9には、酸化膜133のジャストエッチのタイミングT1が示されている。
図9に示すように、0.04%、0.1%、0.6%、1%、4%の基板Wでは、ジャストエッチのタイミングT1の前後で波形が変化しており、特に0.6%以上では波形が大きく変化している。このことから、エッチングの終点を検出できる。
【0048】
ここで、比較例として、OESにより計測した発光強度の変化を説明する。
図10は、比較例のOESによる計測結果の一例を説明する図である。
図10には、上述した0%、0.04%、0.1%、0.6%、1%、4%の基板Wをそれぞれサイクルエッチングした際にOESにより計測した発光強度の変化の波形が示されている。また、
図10には、酸化膜133のジャストエッチのタイミングT2が示されている。
図9と
図10を比較した場合、実施形態に係る計測部35による計測結果の方が、比較例よりもジャストエッチの前後の波形の変化が大きく、エッチングの終点検出のS/n比がよい。よって、実施形態に係る計測部35は、比較例よりもエッチングの終点を精度よく検出できる。
【0049】
なお、
図9では、計測部35により計測される電圧、電流のV
PP/I
PPの値の変化から、エッチングの終点を検出した場合を例に説明した。しかし、これに限定されるものではない。計測部35により計測される電圧、電流は、何れもジャストエッチのタイミングT1の前後で波形の最大値や、周期(周波数)、平均値、実効値が変化する。よって、検出部102bは、電圧、電流のどちらか一方の最大値や、周期(周波数)、平均値、実効値の変化や、電圧と電流の位相差の変化からエッチングの終点を検出してもよい。また、検出部102bは、電圧、電流、電圧と電流の位相差から算出されるインピーダンス値、リアクタンス値、電力値、力率の変化からエッチングの終点を検出してもよい。この場合も、検出部102bは、エッチングの終点を精度よく検出できる。
【0050】
また、第1実施形態では、基板支持部11に接続された導電部33bに計測部35を設けた場合を例に説明した。しかし、これに限定されるものではない。計測部35は、プラズマ処理チャンバ10内にプラズマの状態を計測するため、プラズマ処理チャンバ10内の配置された電極又は電極に接続された配線に設けられていればよい。例えば、計測部35は、シャワーヘッド13の導電性部材に接続された導電部33aに設けられてもよい。また、プラズマ処理チャンバ10内に、計測用の電極を配置し、当該電極又は電極に接続された配線に計測部35を設けてもよい。また、本実施形態では、導電部33bのインピーダンス整合回路34bよりも基板支持部11側に計測部35を設けている。これにより、計測部35は、プラズマ処理チャンバ10内にプラズマの状態を計測できる。
【0051】
また、第1実施形態では、ソースRF信号及びバイアスRF信号を、期間を重複させずにそれぞれパルス状に供給する場合を例に説明した。しかし、これに限定されるものではない。RF電源31は、ソースRF信号とバイアスRF信号のうち、少なくとも一方をパルス状に供給すればよい。また、RF電源31は、ソースRF信号とバイアスRF信号のパワーを変化させてもよい。検出部102bは、ソースRF信号とバイアスRF信号の組み合わせがエッチングおよび選択比に最も寄与するタイミングで計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出すればよい。
図11A~
図11Eは、第1実施形態に係るソースRF信号及びバイアスRF信号とエッチングの終点を検出する期間の一例を示す図である。「HF」は、ソースRF信号が供給される期間を示している。「LF」は、バイアスRF信号が供給される期間を示している。
図11Aは、上述した実施形態と同様に、RF電源31からソースRF信号及びバイアスRF信号を、期間を重複させずにそれぞれパルス状に供給した場合を示している。この場合、検出部102bは、バイアスRF信号が供給される期間T3に計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出すればよい。
図11Bは、RF電源31からソースRF信号及びバイアスRF信号を、期間の一部を重複させてそれぞれパルス状に供給した場合を示している。この場合、検出部102bは、バイアスRF信号のみが供給される期間T4に計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出すればよい。
図11Bでは、検出部102bは、バイアスRF信号が供給される期間T3のうち、ソースRF信号と重複する期間T5を除いた期間T4を、エッチングの終点を検出する期間とする。
図11Cは、RF電源31からソースRF信号を継続的に供給しつつ、バイアスRF信号をパルス状に供給した場合を示している。この場合、検出部102bは、バイアスRF信号が供給される期間T3に計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出する。
図11Dは、RF電源31からバイアスRF信号を継続的に供給しつつ、ソースRF信号をパルス状に供給した場合を示している。この場合、検出部102bは、ソースRF信号がオフとなり、バイアスRF信号のみが供給される期間T6に計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出する。
図11Eは、RF電源31からソースRF信号及びバイアスRF信号を、期間の一部を重複させてそれぞれパルス状に供給した場合を示している。また、ソースRF信号とバイアスRF信号は、オンの期間のパワーが変化している。この場合、検出部102bは、バイアスRF信号のみが供給される期間T7に計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出する。
【0052】
また、第1実施形態では、
図5においてSAC工程をサイクルエッチングで実施した場合の終点検出を例に説明した。しかし、これに限定されるものではない。何れのサイクルエッチングの工程でも、終点検出に適用できる。例えば、BEOL(back end of line)工程やMOL(Middle Of the Line)工程をサイクルエッチングで実施した場合の終点検出にも適用できる。
【0053】
次に、第1実施形態に係るプラズマ処理装置1が実施する終点検出方法の処理の流れについて説明する。
図12は、第1実施形態に係る終点検出方法の処理順序の一例を説明する図である。第1実施形態では、終点検出方法によりエッチングの終点を検出する。
図12に示す終点検出方法の処理は、エッチング対象の膜が形成された基板Wが基板支持部11に載置され、サイクルエッチングが行う場合に実行される。
【0054】
プラズマ制御部102aは、サイクルエッチングを開始する(S10)。例えば、プラズマ制御部102aは、排気システム40を制御して、プラズマ処理チャンバ10内を所定の真空度まで排気する。プラズマ制御部102aは、ガス供給部20を制御し、ガス供給部20から処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入する。プラズマ制御部102aは、電源30を制御し、処理ガスの導入に合わせて、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bからソースRF信号及びバイアスRF信号の少なくとも一方をパルス状に供給して、サイクルエッチングを開始する。
【0055】
検出部102bは、バイアスRF信号が供給される期間に計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出する(S11)。例えば、検出部102bは、計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチング対象の膜のエッチングの終了を検出する。検出部102bは、計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差をリアルタイムにモニタし、有意に変化した瞬間をエッチングの終点とみなす。
【0056】
プラズマ制御部102aは、検出部102bによりエッチングの終点が検出されたか否かを判定する(S12)。エッチングの終点が検出されていない場合(S12:No)、S11へ移行する。
【0057】
一方、エッチングの終点が検出された場合(S12:Yes)、プラズマ制御部102aは、サイクルエッチングを終了し(S13)、処理を終了する。
【0058】
以上のように、第1実施形態に係るプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10と、基板支持部11の導電性部材(電極)と、計測部35と、ガス供給部20と、RF電源31(高周波電源)と、検出部102bとを有する。プラズマ処理チャンバ10は、基板Wが載置される基板支持部11(載置台)が内部に設けられている。基板支持部11の導電性部材は、プラズマ処理チャンバ10内の配置されている。計測部35は、基板支持部11の導電性部材又は基板支持部11の導電性部材に接続された導電部33b(配線)に設けられ、電圧、電流の何れかを計測する。ガス供給部20は、プラズマ処理チャンバ10内にプラズマ化するガスを供給する。RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10内に供給されたガスをプラズマ化する高周波電力をパルス状にプラズマ処理チャンバ10に供給する。検出部102bは、高周波電力のパルスの周期に同期したタイミングで計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理の終点を検出する。これにより、プラズマ処理装置1は、プラズマ処理の終点を精度良く検出できる。
【0059】
また、ガス供給部20は、プラズマ化するガスとしてエッチングガスを供給する。検出部102bは、高周波電力のパルスの周期に同期したタイミングで計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出する。これにより、プラズマ処理装置1は、エッチングの終点を精度良く検出できる。
【0060】
また、RF電源31は、プラズマを生成するためのソースRF信号(第1高周波電力)と、プラズマ中のイオン成分を基板に引き込むためのバイアスRF信号(第2高周波電力)のうち、少なくとも一方をパルス状に供給する。検出部102bは、供給されるソースRF信号とバイアスRF信号の組み合わせがエッチングおよび選択比に最も寄与するタイミングで計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出する。これにより、プラズマ処理装置1は、エッチングの終点を精度良く検出できる。
【0061】
また、検出部102bは、バイアスRF信号が供給される期間に計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出する。これにより、プラズマ処理装置1は、エッチングの終点を精度良く検出できる。
【0062】
また、RF電源31は、ソースRF信号とバイアスRF信号を供給する期間の一部を重複させて又は供給する期間を重複させずにそれぞれパルス状に供給する。検出部102bは、バイアスRF信号のみが供給される期間に計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、エッチングの終点を検出する。これにより、プラズマ処理装置1は、エッチングの終点を精度良く検出できる。
【0063】
また、RF電源31は、高周波電力を100Hz~10kHzの周波数でパルス状に供給する。これにより、プラズマ処理装置1は、OESでエッチングの終点を検出する場合よりも、エッチングの終点を精度良く検出できる。
【0064】
また、電極は、基板支持部11に設けられている。電極に接続された導電部33bは、インピーダンス整合回路34bが設けられ、RF電源31から高周波電力が供給される。計測部35は、導電部33bのインピーダンス整合回路34bよりも電極側に設けられている。これにより、プラズマ処理装置1は、計測部35により計測される電圧、電流からプラズマの状態を精度よく計測できるため、エッチングの終点を精度良く検出できる。
【0065】
また、基板Wは、エッチング対象の膜(酸化膜121)が形成されている。検出部102bは、膜(酸化膜121)のエッチングの終了を検出する。これにより、プラズマ処理装置1は、エッチング対象の膜のエッチングの終点を精度良く検出できる。
【0066】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、プラズマ処理チャンバ内をクリーニングするプラズマ処理の終点を検出する場合を説明する。
図13は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置1の概略的な構成の一例を示す図である。第2実施形態に係るプラズマ処理装置1は、
図1に示した第1実施形態に係るプラズマ処理装置1と一部同様の構成であるため、同一部分に同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分について主に説明する。
【0067】
プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10内の配置された電極又は電極に接続された配線に、電圧、電流の何れかを計測する計測部35が設けられている。第2実施形態に係るプラズマ処理装置1は、シャワーヘッド13の導電性部材に接続された導電部33aに計測部35aが設けられている。また、第2実施形態に係るプラズマ処理装置1は、基板支持部11の導電性部材に接続された導電部33bに計測部35bが設けられている。計測部35a、35bは、電流、電圧を検出するプローブを含んで構成されている。計測部35a、35bは、電圧、電流を計測する。計測部35aは、ソースRF信号が流れる導電部33aの電圧、電流を計測する。計測部35aは、計測した電圧、電流を示す信号を制御部100へ出力する。計測部35bは、バイアスRF信号が流れる導電部33bの電圧、電流を計測する。計測部35bは、計測した電圧、電流を示す信号を制御部100へ出力する。
【0068】
図14は、第2実施形態に係る制御部100の概略的な構成の一例を示したブロック図である。第2実施形態に係る制御部100は、
図2に示した第1実施形態に係る制御部100と一部同様の構成であるため、同一部分に同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分について主に説明する。
図14に示したプラズマ処理装置1は、制御部100によって、その動作が統括的に制御される。
【0069】
外部インターフェース101は、プラズマ処理装置1の各部と通信可能とされ、各種のデータを入出力する。例えば、外部インターフェース101には、計測部35a、35bで計測された電圧、電流を示す信号が入力する。
【0070】
プラズマ制御部102aは、プラズマ処理を制御する。例えば、プラズマ制御部102aは、プラズマ処理チャンバ10内に付着したデポジションを除去するプラズマクリーニングを制御する。プラズマ制御部102aは、排気システム40を制御して、プラズマ処理チャンバ10内を所定の真空度まで排気する。プラズマ制御部102aは、ガス供給部20を制御し、ガス供給部20からクリーニングガスをプラズマ処理空間10s内に導入する。クリーニングガスは、プラズマ処理チャンバ10内に付着したデポジション等を除去することが可能なガスであればよい。クリーニングガスとしては、例えば、O2ガスなどの酸素含有ガスが挙げられる。プラズマ制御部102aは、電源30を制御し、クリーニングガスの導入に合わせて、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bからソースRF信号及びバイアスRF信号を供給してプラズマ処理チャンバ10内にプラズマを生成する。ソースRF信号の周波数は、40MHz~130MHzの範囲の周波数とする。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の第1の周波数よりも低く且つ400kHz~40MHzの範囲の周波数とする。
【0071】
第2実施形態に係るプラズマ処理装置1は、RF電力をパルス状に繰り返してプラズマクリーニングを行う。プラズマ制御部102aは、RF電源31を制御し、RF電源31から高周波電力をパルス状に供給する。RF電源31は、ソースRF信号と、バイアスRF信号のうち、少なくとも一方をパルス状に供給する。例えば、プラズマ制御部102aは、RF電源31を制御し、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bからソースRF信号及びバイアスRF信号をそれぞれパルス状に供給する。ソースRF信号及びバイアスRF信号の供給をオン、オフするパルスの周波数は、100Hz~10kHzとする。以下では、ソースRF信号とバイアスRF信号のうち、周波数の高いソースRF信号をHF(High Frequency)とも称し、周波数の低いバイアスRF信号をLF(Low Frequency)とも称する。
【0072】
図15は、第2実施形態に係る高周波電力の供給の一例を示す図である。
図15には、ソースRF信号とバイアスRF信号が供給される期間及び供給電力(Power)が示されている。「HF」は、ソースRF信号が供給される期間を示している。「LF」は、バイアスRF信号が供給される期間を示している。ソースRF信号とバイアスRF信号は、それぞれOnの期間に供給される。
図15では、ソースRF信号及びバイアスRF信号が、期間を重複させずにそれぞれパルス状に供給される。
図15では、ソースRF信号及びバイアスRF信号をOn、Offするパルスの周波数が1kHzとされており、1msの周期でソースRF信号及びバイアスRF信号がOn、Offされてクリーニングが行われる。
【0073】
検出部102bは、計測部35a、35bから入力した信号の電圧、電流からプラズマ処理の終点を検出する。例えば、検出部102bは、高周波電力のパルスの周期に同期したタイミングで計測部35a、35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理の終点を検出する。本実施形態では、検出部102bは、高周波電力のパルスの周期に同期したタイミングで計測部35a、35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、クリーニングの終点を検出する。検出部102bは、供給されるソースRF信号とバイアスRF信号の組み合わせがクリーニングに最も寄与するタイミングで計測部35a、35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、クリーニングの終点を検出する。例えば、ソースRF信号が供給されると、プラズマ処理チャンバ10は、上部電極付近(例えばシャワーヘッド13)にソースRF信号が流れるパスが形成され、内部の上部付近にプラズマが生成される。このため、ソースRF信号が供給される期間が、プラズマ処理チャンバ10内の上部電極付近(例えばシャワーヘッド13)のクリーニングに最も寄与する。検出部102bは、ソースRF信号が供給される期間に計測部35aにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の上部電極付近のクリーニングの終点を検出する。また、バイアスRF信号が供給されると、プラズマ処理チャンバ10は、下部電極付近(例えば基板支持部11)にバイアスRF信号が流れるパスが形成され、下部電極付近にプラズマが生成される。このため、バイアスRF信号が供給される期間は、プラズマ処理チャンバ10内の下部電極付近(例えば基板支持部11)のクリーニングに最も寄与する。検出部102bは、バイアスRF信号が供給される期間に計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の下部電極付近のクリーニングの終点を検出する。
【0074】
プラズマ制御部102aは、検出部102bの検出結果に基づき、プラズマ処理を制御する。例えば、プラズマ制御部102aは、検出部102bによりクリーニングの終点が検出されると、クリーニングを終了する。
【0075】
ここで、クリーニングの終点の検出を具体的に説明する。
図16は、第2実施形態に係るクリーニングの終点の検出を説明する図である。
図16は、計測部35a、35bにより計測される信号(VI signal)の変化が概略的に示さてれている。
図16は、プラズマ処理チャンバ10内にデポジションが付着した状態(Dirty)と、プラズマ処理チャンバ10内のデポジションが除去された状態(Clean)での信号(VI signal)の変化を概略的に示している。信号(VI signal)は、計測部35a、35bにより計測された電圧や電流の変化が概略的に示しており、HFとLFがそれぞれ供給される期間に対応して信号を「HF」と「LF」に分けて示している。
図16では、信号(VI signal)は、電圧を示している。「HF」は、ソースRF信号により計測部35aで計測される電圧の変化を概略的に示している。「LF」は、バイアスRF信号により計測部35bで計測される電圧の変化を概略的に示している。ソースRF信号とバイアスRF信号は、それぞれOnの期間に供給される。
図16には、ソースRF信号とバイアスRF信号それぞれOnの期間を示している。「HF」は、ソースRF信号がOnの期間に対応して電圧の変化が上昇している。「LF」は、バイアスRF信号がOnの期間に対応して電圧の変化が上昇している。
【0076】
ソースRF信号及びバイアスRF信号がそれぞれOnの期間に計測部35a、35bにより計測される電圧は、プラズマ処理チャンバ10内のデポジションが除去されることで変化する。例えば、
図16に示すように、ソースRF信号及びバイアスRF信号がそれぞれOnの期間に計測部35a、35bにより計測される電圧は、プラズマ処理チャンバ10内がDirtyからCleanに変わるとなることで上昇する。
【0077】
プラズマ処理チャンバ10内の上部電極付近は、ソースRF信号により生成されたプラズマによりクリーニングされる。上部電極付近のプラズマは、上部電極付近のデポジションなどの影響を受ける。このため、ソースRF信号がOnの期間に計測部35aにより計測される電圧は、上部電極付近のデポジションのクリーニングの状況によって変化する。例えば、
図16に示すように、ソースRF信号がOnの期間に計測部35aにより計測される電圧は、プラズマ処理チャンバ10内のシャワーヘッド13のデポジションが除去されることで上昇する。よって、ソースRF信号がOnの期間に計測部35aにより計測される電圧の変化からシャワーヘッド13のクリーニングの終点の検出できる。
【0078】
また、プラズマ処理チャンバ10内の下部電極付近は、バイアスRF信号により生成されたプラズマによりクリーニングされる。下部電極付近のプラズマは、下部電極付近のデポジションなどの影響を受ける。このため、バイアスRF信号がOnの期間に計測部35bにより計測される電圧は、下部電極付近のデポジションのクリーニングの状況によって変化する。例えば、
図16に示すように、バイアスRF信号がOnの期間に計測部35bにより計測される電圧は、プラズマ処理チャンバ10内の基板支持部11のデポジションが除去されることで上昇する。よって、バイアスRF信号がOnの期間に計測部35bにより計測される電圧から基板支持部11のクリーニングの終点の検出できる。
【0079】
本実施形態では、検出部102bは、ソースRF信号がOnの期間に計測部35aにより計測される電圧の変化から、プラズマ処理チャンバ10内のシャワーヘッド13部分のクリーニングの終点を検出する。また、検出部102bは、バイアスRF信号がOnの期間に計測部35bにより計測される電圧の変化から、プラズマ処理チャンバ10内の基板支持部11部分のクリーニングの終点を検出する。
【0080】
なお、
図16に示した、バイアスRF信号及びソースRF信号がOnの期間の電圧の変化は、一例であり、電圧の変化はこれに限定されるものではない。例えば、プラズマ処理装置1の構成等によっては、デポジションが除去されることで電圧が低下する変化となる場合もある。このような場合でも、電圧の変化から、クリーニングの終点を検出できる。
【0081】
また、バイアスRF信号及びソースRF信号がOnの期間に計測部35a、35bにより計測される電流や電圧と電流の位相差は、電圧と同様に、デポジションが除去されることで変化する。このため、検出部102bは、バイアスRF信号及びソースRF信号がOnの期間に計測部35a、35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の変化から、プラズマ処理チャンバ10内のクリーニングの終点を検出することができる。例えば、検出部102bは、計測部35a、35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差をリアルタイムにモニタし、デポジションが除去されたとみなせる程度有意に変化した瞬間をクリーニングの終点とみなしてもよい。
【0082】
次に、第2実施形態に係るプラズマ処理装置1がプラズマ処理チャンバ10内をクリーニングする流れを簡単に説明する。クリーニングを実施する場合、基板支持部11には、基板Wとして、クリーニング用のダミーウェハDWが載置される。ダミーウェハDWは、クリーニング中、適宜交換される。プラズマ処理装置1は、排気システム40により排気を行い、プラズマ処理チャンバ10内を所定の真空度まで排気する。そして、プラズマ処理装置1は、ガス供給部20からクリーニングガスをプラズマ処理空間10s内に導入する。プラズマ処理装置1は、クリーニングガスの導入に合わせて、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bからソースRF信号及びバイアスRF信号をパルス状に供給してプラズマ処理チャンバ10内にプラズマを生成してクリーニングを実施する。プラズマ処理装置1は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のパルスの周期に同期したタイミングで計測部35a、35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、クリーニングの終点を検出する。例えば、プラズマ処理装置1は、ソースRF信号及びバイアスRF信号がそれぞれOnの期間に計測部35a、35bにより計測される電圧の変化から、クリーニングの終点を検出する。
【0083】
図17は、第2実施形態に係るクリーニングの流れを説明する図である。
図17は、計測部35a、35bにより計測される信号(VI signal)の変化が概略的に示さてれている。信号(VI signal)は、計測部35a、35bにより計測された電圧や電流の変化が概略的に示しており、HFとLFがそれぞれ供給される期間に対応して信号を「HF」と「LF」に分けて示している。
図17では、信号(VI signal)は、電圧を示している。「HF」は、ソースRF信号により計測部35aで計測される電圧の変化を概略的に示している。「LF」は、バイアスRF信号により計測部35bで計測される電圧の変化を概略的に示している。また、
図17は、プラズマ処理チャンバ10内の上部電極付近(例えばシャワーヘッド13)と下部電極付近(例えば基板支持部11)のデポジションの状態が示されている。Dirtyは、デポジションが付着した状態である。Cleanは、デポジションが除去された状態である。
図17では、上部電極付近と下部電極付近は、共にDirtyであるが、クリーニングにより、上部電極付近がCleanとなり、その後、下部電極付近がCleanとなる。ソースRF信号がOnの期間に計測部35aにより計測される電圧は、上部電極付近がCleanとなると上昇する。また、バイアスRF信号がOnの期間に計測部35bにより計測される電圧は、下部電極付近がCleanとなると上昇する。
【0084】
プラズマ処理装置1は、ソースRF信号及びバイアスRF信号がそれぞれOnの期間に計測部35a、35bにより計測される電圧の変化から、上部電極付近と下部電極付近のクリーニングの終点をそれぞれ検出する。例えば、プラズマ処理装置1は、ソースRF信号がOnの期間に計測部35aにより計測される電圧が上昇する変化から、シャワーヘッド13のクリーニングの終点を検出する。また、プラズマ処理装置1は、バイアスRF信号がOnの期間に計測部35bにより計測される電圧が上昇する変化から、基板支持部11付近のクリーニングの終点を検出する。
【0085】
プラズマ処理装置1は、上部電極付近のクリーニングの終点を検出すると、ソースRF信号の供給を停止する。これにより、上部電極付近のプラズマが消失し、上部電極付近のクリーニングが停止する。また、プラズマ処理装置1は、下部電極付近のクリーニングの終点を検出すると、バイアスRF信号の供給を停止する。これにより、下部電極付近のプラズマが消失し、下部電極付近のクリーニングが停止する。
【0086】
図18は、第2実施形態に係るクリーニングの終点を検出する流れの一例を説明する図である。
図18には、ソースRF信号がOnの期間に計測部35aにより計測される信号(VI signal)の変化を概略的に示した線L1と、バイアスRF信号がOnの期間に計測部35bにより計測される信号(VI signal)の変化を概略的に示した線L2とが示されている。線L1、L2は、例えば、それぞれOnの期間の電圧の平均値の変化を示している。また、
図18には、線L1の時間微分を示した線L3と、線L2の時間微分を示した線L4が示されている。線L3は、線L1の単位時間当たりの変化量を示している。線L4は、線L2の単位時間当たりの変化量を示している。
【0087】
上部電極付近がCleanとなると、線L1に示すように、ソースRF信号がOnの期間の電圧が上昇する。プラズマ処理装置1は、線L1に示す電圧の変化から、上部電極付近のクリーニングの終点を検出する。例えば、プラズマ処理装置1は、線L1に示す電圧を時間微分して、線L3に示す単位時間当たりの変化量を求め、変化量がピークとなるタイミングT11を基準として上部電極付近のクリーニングの終点を検出する。例えば、プラズマ処理装置1は、タイミングT11から所定のマージン時間MT1を経過したタイミングを上部電極付近のクリーニングの終点と検出する。マージン時間MT1は、タイミングT11から、上部電極付近のデポジションが除去されてCleanとなったみなせる経過時間である。マージン時間MT1は、例えば、実験やシミュレーションにより定める。
【0088】
また、下部電極付近がCleanとなると、線L2に示すように、バイアスRF信号がOnの期間の電圧が上昇する。プラズマ処理装置1は、線L2に示す電圧の変化から、下部電極付近のクリーニングの終点を検出する。例えば、プラズマ処理装置1は、線L2に示す電圧を時間微分して、線L4に示す単位時間当たりの変化量を求め、変化量がピークとなるタイミングT12を基準として下部電極付近のクリーニングの終点を検出する。例えば、プラズマ処理装置1は、タイミングT12から所定のマージン時間MT2を経過したタイミングを下部電極付近のクリーニングの終点と検出する。マージン時間MT2は、タイミングT12から、下部電極付近のデポジションが除去されてCleanとなったみなせる経過時間である。マージン時間MT2も、例えば、実験やシミュレーションにより定める。
【0089】
なお、検出部102bは、線L1に示す電圧の上昇が飽和したタイミングを上部電極付近のクリーニングの終点と検出してもよい。また、検出部102bは、線L2に示す電圧の上昇が飽和したタイミングを下部電極付近のクリーニングの終点と検出してもよい。
【0090】
次に、第2実施形態に係るプラズマ処理装置1が実施する終点検出方法の処理の流れについて説明する。第2実施形態では、終点検出方法によりクリーニングの終点を検出する。
図19は、第2実施形態に係る終点検出方法の処理順序の一例を説明する図である。
図19に示す終点検出方法の処理は、ダミーウェハDWが基板支持部11に載置され、プラズマ処理チャンバ10内のクリーニングが行う場合に実行される。
【0091】
プラズマ制御部102aは、第1フラグ及び第2フラグをそれぞれ0に初期化する(S20)。第1フラグは、上部電極付近のクリーニングを終了したか示すフラグである。第2フラグは、下部電極付近のクリーニングを終了したか示すフラグである。第1フラグ及び第2フラグには、クリーニングを終了していない場合、0をセットし、クリーニングを終了した場合、1をセットする。
【0092】
プラズマ制御部102aは、クリーニングを開始する(S21)。例えば、プラズマ制御部102aは、排気システム40を制御して、プラズマ処理チャンバ10内を所定の真空度まで排気する。プラズマ制御部102aは、ガス供給部20を制御し、ガス供給部20からクリーニングガスをプラズマ処理空間10s内に導入する。プラズマ制御部102aは、電源30を制御し、クリーニングガスの導入に合わせて、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bからソースRF信号及びバイアスRF信号をパルス状に供給して、クリーニングを開始する。
【0093】
検出部102bは、第1フラグの値が1であるか否かを判定する(S22)。すなわち、検出部102bは、上部電極付近のクリーニングが終了済みであるか否かを判定する。
【0094】
第1フラグの値が1である場合(S22:Yes)、後述するS27へ移行する。すなわち、上部電極付近のクリーニングが終了済みである場合、S27へ移行する。
【0095】
一方、第1フラグの値が1ではない場合(S22:No)、検出部102bは、ソースRF信号がOnの期間に計測部35aにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、上部電極付近のクリーニングの終点を検出する(S23)。
【0096】
プラズマ制御部102aは、検出部102bにより、上部電極付近のクリーニングの終点が検出されたか否かを判定する(S24)。上部電極付近のクリーニングの終点が検出されていない場合(S24:No)、後述するS27へ移行する。
【0097】
一方、上部電極付近のクリーニングの終点を検出した場合(S24:Yes)、プラズマ制御部102aは、電源30を制御し、第1のRF生成部31aからのソースRF信号の供給を停止する(S25)。そして、プラズマ制御部102aは、上部電極付近のクリーニングの終了を示す1を第1フラグにセットする(S26)。
【0098】
検出部102bは、第2フラグの値が1であるか否かを判定する(S27)。すなわち、検出部102bは、下部電極付近のクリーニングが終了済みであるか否かを判定する。
【0099】
第2フラグの値が1である場合(S27:Yes)、後述するS32へ移行する。すなわち、下部電極付近のクリーニングが終了済みである場合、S32へ移行する。
【0100】
一方、第2フラグの値が1ではない場合(S27:No)、検出部102bは、バイアスRF信号がOnの期間に計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、下部電極付近のクリーニングの終点を検出する(S28)。
【0101】
プラズマ制御部102aは、検出部102bにより、下部電極付近のクリーニングの終点が検出されたか否かを判定する(S29)。下部電極付近のクリーニングの終点が検出されていない場合(S29:No)、後述するS32へ移行する。
【0102】
一方、下部電極付近のクリーニングの終点を検出した場合(S29:Yes)、プラズマ制御部102aは、電源30を制御し、第2のRF生成部31bからの、バイアスRF信号の供給を停止する(S30)。そして、プラズマ制御部102aは、下部電極付近のクリーニングの終了を示す1を第2フラグにセットする(S31)。
【0103】
プラズマ制御部102aは、第1フラグ及び第2フラグの値がそれぞれ1であるか否かを判定する(S32)。すなわち、プラズマ制御部102aは、上部電極付近及び下部電極付近のクリーニングが終了した否かを判定する。第1フラグ及び第2フラグの値がそれぞれ1ではない場合(S32:No)、上述のS22へ移行する。すなわち、上部電極付近、下部電極付近のクリーニングが終了していない場合は、S22へ移行してクリーニングを継続する。
【0104】
一方、第1フラグ及び第2フラグの値がそれぞれ1である場合(S32:Yes)、処理を終了する。
【0105】
なお、上記の第2実施形態では、
図15に示したように、RF電源31から、ソースRF信号及びバイアスRF信号の供給をオンの期間を重複させずにオン、オフして供給した場合を例に説明した。しかし、これに限定されるものではない。ソースRF信号とバイアスRF信号のうち、少なくとも一方は、オフとして供給電力を0Wとしなくもよい。
図20は、第2実施形態に係る高周波電力の供給の他の一例を示す図である。
図20には、ソースRF信号とバイアスRF信号が供給される期間及び供給電力(Power)が示されている。「HF」は、ソースRF信号が供給される期間及び供給電力を示している。「LF」は、バイアスRF信号が供給される期間及び供給電力を示している。
図20では、ソースRF信号が、供給電力を高電力と低電力の2つの状態に交互に切り替えてパルス状に供給される。また、
図20では、ソースRF信号の供給電力が低電力の期間に、バイアスRF信号がパルス状に供給される。この場合、高電力のソースRF信号が供給される期間が、プラズマ処理チャンバ10内の上部電極付近(例えばシャワーヘッド13)のクリーニングに最も寄与する。検出部102bは、高電力のソースRF信号が供給される期間に計測部35aにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の上部電極付近のクリーニングの終点を検出できる。また、バイアスRF信号が供給される期間は、低電力のソースRF信号も供給される。バイアスRF信号及び低電力のソースRF信号が供給されると、プラズマ処理チャンバ10は、内部の側壁及び下部電極付近にプラズマが生成される。このため、バイアスRF信号及び低電力のソースRF信号が供給される期間が、プラズマ処理チャンバ10内の側壁及び下部電極付近(例えば基板支持部11)のクリーニングに最も寄与する。検出部102bは、バイアスRF信号及び低電力のソースRF信号が供給される期間に計測部35a、35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の側壁及び下部電極付近のクリーニングの終点を検出できる。
【0106】
また、ソースRF信号とバイアスRF信号は、供給電力を段階的に変えて供給してもよい。
図21は、第2実施形態に係る高周波電力の供給の他の一例を示す図である。
図21には、ソースRF信号とバイアスRF信号が供給される期間及び供給電力(Power)が示されている。「HF」は、ソースRF信号が供給される期間及び供給電力を示している。「LF」は、バイアスRF信号が供給される期間及び供給電力を示している。
図21では、ソースRF信号が、供給電力を高電力と低電力と0Wの3つの状態に順に切り替えて繰り返し供給される。また、
図21では、ソースRF信号の切り替えに同期して、ソースRF信号が、供給電力を高電力と低電力と0Wの3つの状態に順に切り替えて繰り返し供給される。
図21では、ソースRF信号が高電力の期間にバイアスRF信号が0Wとされる。また、ソースRF信号が0Wの期間にバイアスRF信号が高電力で供給される。また、ソースRF信号が低電力の期間にバイアスRF信号が低電力で供給される。この場合、高電力のソースRF信号が供給される期間が、プラズマ処理チャンバ10内の上部電極付近(例えばシャワーヘッド13)のクリーニングに最も寄与する。検出部102bは、高電力のソースRF信号が供給される期間に計測部35aにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の上部電極付近のクリーニングの終点を検出できる。また、高電力のバイアスRF信号が供給される期間が、プラズマ処理チャンバ10内の下部電極付近(例えば基板支持部11)のクリーニングに最も寄与する。検出部102bは、高電力のバイアスRF信号が供給される期間に計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の下部電極付近のクリーニングの終点を検出できる。また、低電力のバイアスRF信号が供給される期間は、低電力のソースRF信号も供給される。低電力のバイアスRF信号及び低電力のソースRF信号が供給されると、プラズマ処理チャンバ10は、内部の側壁付近にプラズマが生成される。このため、低電力のバイアスRF信号及び低電力のソースRF信号が供給される期間が、プラズマ処理チャンバ10内の側壁付近のクリーニングに最も寄与する。検出部102bは、低電力のバイアスRF信号及び低電力のソースRF信号が供給される期間に計測部35a、35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の側壁のクリーニングの終点を検出できる。
【0107】
また、プラズマ処理装置1は、第1のRF生成部31aからソースRF信号をシャワーヘッド13に供給し、第2のRF生成部31bからバイアスRF信号を基板支持部11に供給する場合を例に説明した。
図22は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置1におけるRF信号の供給経路の一例を概略的に示した図である。
図22は、
図13に示したプラズマ処理装置1におけるRF信号の供給経路を概略的に示している。第1のRF生成部31aは、ソースRF信号を導電部33a及びインピーダンス整合回路34aを介してシャワーヘッド13の導電性部材に供給する。第2のRF生成部31bは、バイアスRF信号を導電部33b及びインピーダンス整合回路34bを介して基板支持部11の導電性部材に供給する。しかし、RF信号の供給経路は、これに限定されるものではない。例えば、ソースRF信号及びバイアスRF信号を共に基板支持部11に供給してもよい。
図23は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置1におけるRF信号の供給経路の他の一例を概略的に示した図である。導電部33aは、コンデンサ37を介して接地されている。また、導電部33bは、分岐して第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bに接続されている。第1のRF生成部31aは、ソースRF信号を導電部33b及びインピーダンス整合回路34bを介して基板支持部11の導電性部材に供給する。第2のRF生成部31bは、バイアスRF信号を導電部33b及びインピーダンス整合回路34bを介して基板支持部11の導電性部材に供給する。このようにソースRF信号を基板支持部11に供給する場合でも、ソースRF信号が供給されると、プラズマ処理チャンバ10は、上部電極付近にソースRF信号が流れるパスが形成され、内部の上部付近にプラズマが生成される。よって、検出部102bは、ソースRF信号が供給される期間に計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の上部電極付近のクリーニングの終点を検出できる。また、検出部102bは、バイアスRF信号が供給される期間に計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の下部電極付近のクリーニングの終点を検出できる。
【0108】
また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11又はシャワーヘッド13に第3のRF信号を供給してもよい。第3のRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数よりも低く且つバイアスRF信号の周波数よりも高い周波数とする。例えば、ソースRF信号の周波数は、40MHz~130MHzの範囲の周波数とする。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数よりも低く且つ400kHz~40MHzの範囲の周波数とする。第3のRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数よりも低く且つバイアスRF信号の周波数よりも高く且つ13MHz~60MHzの範囲の周波数とする。
図24は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置1におけるRF信号の供給経路の他の一例を概略的に示した図である。導電部33bは、分岐して第2のRF生成部31b及び第3のRF生成部31cに接続されている。第1のRF生成部31aは、ソースRF信号を導電部33a及びインピーダンス整合回路34aを介してシャワーヘッド13の導電性部材に供給する。第2のRF生成部31bは、バイアスRF信号を導電部33b及びインピーダンス整合回路34bを介して基板支持部11の導電性部材に供給する。第3のRF生成部31cは、第3のRF信号を導電部33b及びインピーダンス整合回路34bを介して基板支持部11の導電性部材に供給する。例えば、第1のRF生成部31a、第2のRF生成部31b、及び第3のRF生成部31cは、ソースRF信号、バイアスRF信号及び第3のRF信号を、期間を重複させずにそれぞれパルス状に供給する。第3のRF信号が供給されると、プラズマ処理チャンバ10は、内部の側壁付近にプラズマが生成される。このため、第3のRF信号が供給される期間が、プラズマ処理チャンバ10内の側壁付近のクリーニングに最も寄与する。よって、検出部102bは、第3のRF信号が供給される期間に計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の側壁付近のクリーニングの終点を検出できる。また、検出部102bは、ソースRF信号が供給される期間に計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の上部電極付近のクリーニングの終点を検出できる。また、検出部102bは、バイアスRF信号が供給される期間に計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の下部電極付近のクリーニングの終点を検出できる。
【0109】
また、ソースRF信号、バイアスRF信号及び第3のRF信号を基板支持部11に供給してもよい。
図25は、第2実施形態に係るプラズマ処理装置1におけるRF信号の供給経路の他の一例を概略的に示した図である。導電部33aは、コンデンサ37を介して接地されている。また、導電部33bは、分岐して第1のRF生成部31a、第2のRF生成部31b及び第3のRF生成部31cに接続されている。第1のRF生成部31aは、ソースRF信号を導電部33b及びインピーダンス整合回路34bを介して基板支持部11の導電性部材に供給する。第2のRF生成部31bは、バイアスRF信号を導電部33b及びインピーダンス整合回路34bを介して基板支持部11の導電性部材に供給する。第3のRF生成部31cは、第3のRF信号を導電部33b及びインピーダンス整合回路34bを介して基板支持部11の導電性部材に供給する。例えば、第1のRF生成部31a、第2のRF生成部31b、及び第3のRF生成部31cは、ソースRF信号、バイアスRF信号及び第3のRF信号を、期間を重複させずにそれぞれパルス状に供給する。このような構成とした場合でも、検出部102bは、ソースRF信号が供給される期間に計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の上部電極付近のクリーニングの終点を検出できる。また、検出部102bは、バイアスRF信号が供給される期間に計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の下部電極付近のクリーニングの終点を検出できる。また、検出部102bは、第3のRF信号が供給される期間に計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の側壁付近のクリーニングの終点を検出できる。
【0110】
以上のように、第2実施形態に係るプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10と、基板支持部11の導電性部材(電極)と、計測部35a、35bと、ガス供給部20と、RF電源31(高周波電源)と、検出部102bとを有する。プラズマ処理チャンバ10は、基板Wが載置される基板支持部11(載置台)が内部に設けられている。基板支持部11の導電性部材は、プラズマ処理チャンバ10内の配置されている。計測部35a、35bは、基板支持部11の導電性部材又は基板支持部11の導電性部材に接続された導電部33a、33b(配線)に設けられ、電圧、電流の何れかを計測する。ガス供給部20は、プラズマ処理チャンバ10内にプラズマ化するガスを供給する。RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10内に供給されたガスをプラズマ化する高周波電力をパルス状にプラズマ処理チャンバ10に供給する。検出部102bは、高周波電力のパルスの周期に同期したタイミングで計測部35a、35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理の終点を検出する。これにより、プラズマ処理装置1は、プラズマ処理の終点を精度良く検出できる。
【0111】
また、ガス供給部20は、プラズマ化するガスとしてクリーニングガスを供給する。検出部102bは、高周波電力のパルスの周期に同期したタイミングで計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、クリーニングの終点を検出する。これにより、プラズマ処理装置1は、クリーニングの終点を精度良く検出できる。
【0112】
また、RF電源31は、プラズマを生成するためのソースRF信号(第1高周波電力)と、プラズマ中のイオン成分を基板に引き込むためのバイアスRF信号(第2高周波電力)のうち、少なくとも一方をパルス状に供給する。検出部102bは、供給されるソースRF信号とバイアスRF信号の組み合わせがクリーニングに最も寄与するタイミングで計測部35により計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、クリーニングの終点を検出する。これにより、プラズマ処理装置1は、クリーニングの終点を精度良く検出できる。
【0113】
また、RF電源31は、ソースRF信号を基板支持部11又はプラズマ処理チャンバ10の天部(シャワーヘッド13)に供給し、バイアスRF信号を基板支持部11に供給する。検出部102bは、ソースRF信号が供給される期間に計測部35a又は計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の天部部分のクリーニングの終点を検出する。また、検出部102bは、バイアスRF信号が供給される期間に計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、基板支持部11部分のクリーニングの終点を検出する。これにより、プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10内の天部部分と、基板支持部11部分のクリーニングの終点を個別に精度良く検出できる。
【0114】
また、検出部102bは、ソースRF信号及びバイアスRF信号が供給される期間に計測部35a又は計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の側壁部分のクリーニングの終点を検出する。これにより、プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10内の側壁部分のクリーニングの終点を精度良く検出できる。
【0115】
また、ソースRF信号の周波数は、40MHz~130MHzの範囲の周波数とする。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数よりも低く且つ400kHz~40MHzの範囲の周波数とする。これにより、プラズマ処理装置1は、ソースRF信号によりプラズマ処理チャンバ10内の天部部分をクリーニングでき、バイアスRF信号により基板支持部11部分をクリーニングできる。
【0116】
また、第3のRF生成部31cは、ソースRF信号の周波数とバイアスRF信号の周波数の間の第3の周波数の第3のRF信号(第3高周波電力)をパルス状に供給する。検出部102bは、第3のRF信号が供給される期間に計測部35bにより計測される電圧、電流、電圧と電流の位相差の何れかの変化から、プラズマ処理チャンバ10内の側壁部分のクリーニングの終点を検出する。これにより、プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10内の側壁部分のクリーニングの終点を精度良く検出できる。
【0117】
また、第3のRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数よりも低く且つバイアスRF信号の周波数よりも高く且つ13MHz~60MHzの範囲の周波数とする。これにより、プラズマ処理装置1は、第3のRF信号によりプラズマ処理チャンバ10内の側壁部分をクリーニングできる。
【0118】
また、検出部102bは、高周波電力のパルスの周期に同期したタイミングで計測部35a、35bにより計測される電圧の単位時間当たりの変化量を求め、変化量がピークとなるタイミングを基準としてクリーニングの終点を検出する。また、検出部102bは、変化量がピークとなるタイミングから所定のマージン時間を経過したタイミングをクリーニングの終点と検出する。これにより、プラズマ処理装置1は、クリーニングの終点を精度良く検出できる。
【0119】
以上、実施形態について説明してきたが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上述した実施形態は、多様な形態で具現され得る。また、上述した実施形態は、請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0120】
例えば、上記の実施形態では、基板Wとして半導体ウェハにプラズマ処理を行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。基板Wは、何れであってもよい。
【0121】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1 プラズマ処理装置
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
13 シャワーヘッド
20 ガス供給部
30 電源
31 RF電源
32 DC電源
32a 第1のDC生成部
32b 第2のDC生成部
31a 第1のRF生成部
31b 第2のRF生成部
31c 第3のRF生成部
33a、33b 導電部
34a、34b インピーダンス整合回路
35、35a、35b 計測部
40 排気システム
100 制御部
101 外部インターフェース
102 プロセスコントローラ
102a プラズマ制御部
102b 検出部
103 ユーザインターフェース
104 記憶部
W 基板