(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】ゴム用配合剤およびゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20250611BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20250611BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250611BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20250611BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20250611BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20250611BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20250611BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L9/00
C08K3/013
C08K5/544
C08K5/548
B60C1/00 Z
C07F7/18 T
(21)【出願番号】P 2021153193
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣神 宗直
(72)【発明者】
【氏名】木村 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】峯村 正彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 勉
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-002165(JP,A)
【文献】特開2002-201312(JP,A)
【文献】国際公開第2020/011463(WO,A1)
【文献】特表2017-514978(JP,A)
【文献】特開平10-025368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00
C07F 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される有機ケイ素化合物
および(B)ポリスルフィド基、チオエステル基およびメルカプト基から選ばれる1種以上と、アルコキシシリル基とを有する有機ケイ素化合物を含有するゴム用配合剤。
【化1】
(式中、R
1は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基を表し、Lは、2価の連結基を表す。Xは、-O-を表し、かつZは、-N=R
5(R
5は、炭素原子数6~20のアリール基もしくはヘテロアリール基で置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキリデン基を表す。)を表すか、またはXは、-NR
2-を表し、R
2およびZは、互いに結合してこれらが結合する窒素原子とともに形成される下記式から選ばれる環構造を表す。mは、1~3の整数を表す。)
【化2】
(式中、波線は、結合箇所を表す。)
【請求項2】
前記(A)成分が、下記式で表される有機ケイ素化合物から選ばれる1種または2種以上である請求項1記載のゴム用配合剤。
【化3】
(式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。)
【請求項3】
前記(A)成分が、下記式で表される有機ケイ素化合物から選ばれる1種または2種以上である請求項2記載のゴム用配合剤。
【化4】
(式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。)
【請求項4】
(A)成分と(B)成分との配合比が、質量比で、(B)/(A)=10/90~95/5である請求項
1~3のいずれか1項記載のゴム用配合剤。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項記載のゴム用配合剤を含有するゴム組成物。
【請求項6】
さらに、
(C)ジエン系ゴム、および
(D)充填剤
を含有する請求項
5記載のゴム組成物。
【請求項7】
ゴム組成物が(A)~(D)成分を含み、(A)および(B)成分の合計配合量が、(D)成分100質量部に対して3~30質量部であり、(D)成分の配合量が、(C)成分100質量部に対して5~200質量部である請求項
6記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項
5~
7のいずれか1項記載のゴム組成物を成形してなるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ケイ素化合物を含むゴム用配合剤およびゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ充填タイヤは、自動車用途で優れた性能を有し、特に、耐摩耗性、転がり抵抗およびウェットグリップ性に優れている。これらの性能向上は、タイヤの低燃費性向上と密接に関連しているため、特に、溶液重合スチレン・ブタジエンゴム(S-SBR)を用いた乗用車用タイヤの業界において昨今盛んに研究されている。
【0003】
シリカ充填ゴム組成物は、タイヤの転がり抵抗を低減し、ウェットグリップ性を向上させるものの、未加硫粘度が高く、多段練り等を要し、作業性に問題がある。
そのため、シリカ等の無機質充填剤を単に配合したゴム組成物においては、充填剤の分散が不足し、破壊強度および耐摩耗性が大幅に低下するといった問題が生じる。そこで、無機質充填剤のゴム中への分散性を向上させるとともに、充填剤とゴムマトリックスとを化学結合させるため、含硫黄有機ケイ素化合物が必須であった。
【0004】
ゴム用配合剤として使用される含硫黄有機ケイ素化合物としては、アルコキシシリル基とポリスルフィドシリル基を分子内に含む化合物、例えば、ビス-トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドやビス-トリエトキシシリルプロピルジスルフィド等が有効であることが知られている(特許文献1~4参照)。
【0005】
また、トラックやバスなどに装着される高耐荷重タイヤは、過酷な条件下での使用にも耐えうるよう、高い耐破壊特性が要求され、ゴムとしては天然ゴムが使用されているが、そのようなタイヤにおいても、低燃費性や耐摩耗性の向上要求が高まっている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2004-525230号公報
【文献】特開2004-18511号公報
【文献】特開2002-145890号公報
【文献】特開2000-103795号公報
【文献】特開2019-131649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ゴム組成物に添加した場合に、組成物の加工性やその硬化物の硬度、引張特性を維持したまま、所望の低燃費性能、耐摩耗性能を実現し得るゴム組成物を与える有機ケイ素化合物を含むゴム用配合剤、このゴム用配合剤を配合してなるゴム組成物、およびこのゴム組成物から形成されたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ブロック化イソシアネート基および加水分解性シリル基を有する所定の有機ケイ素化合物が、ゴム用配合剤として好適であることを見出すとともに、当該ゴム用配合剤を含むゴム組成物から得られたタイヤが、硬度および引張特性を維持したまま、所望の低燃費性能および耐摩耗性能を実現し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. (A)ブロック化イソシアネート基および加水分解性シリル基を有する化合物を含有するゴム用配合剤、
2. 前記(A)成分が、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物である1記載のゴム用配合剤、
【化1】
(式中、R
1は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8のアルキル基を表し、Lは、2価の連結基を表し、Xは、-O-または-NR
2-を表し、Zは、水素原子または1価の有機基を表し、R
2は、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基またはZと結合して環構造を形成することが可能な基を表し、mは、1~3の整数を表す。)
3. 前記(A)成分が、下記式(2)で表される有機ケイ素化合物である2記載のゴム用配合剤、
【化2】
(式中、R
1、R
2、Zおよびmは、前記と同じである。)
4. さらに、(B)ポリスルフィド基、チオエステル基およびメルカプト基から選ばれる1種以上と、アルコキシシリル基とを有する有機ケイ素化合物を含有する1~3のいずれかに記載のゴム用配合剤、
5. 1~4のいずれかに記載のゴム用配合剤を含有するゴム組成物、
6. さらに、(C)ジエン系ゴム、および(D)充填剤を含有する5記載のゴム組成物、
7. 5または6記載のゴム組成物を成形してなるタイヤ
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴム用配合剤を配合したゴム組成物は、加工性に優れ、このゴム組成物を用いて形成されたタイヤは、硬度、引張特性を維持したまま、所望の低燃費タイヤ特性および耐摩耗性能を満足することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
〔ゴム用配合剤〕
本発明のゴム用配合剤は、下記(A)成分を含む。
【0012】
[1](A)成分
(A)成分は、ブロック化イソシアネート基および加水分解性シリル基を有する化合物であり、イソシアネート基がブロック剤によってブロックされた潜在イソシアネート基を含有するブロック化イソシアネート基と、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等の加水分解性シリル基を有する化合物である。
【0013】
(A)成分は、好ましくは下記式(1)で表される有機ケイ素化合物である。
【化3】
【0014】
式(1)において、R1は、それぞれ独立して、炭素原子数1~8、好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基を表し、Lは、2価の連結基を表し、Xは、-O-または-NR2-を表し、Zは、水素原子または1価の有機基を表し、R2は、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基またはZと結合して環構造を形成することが可能な基を表し、mは、1~3の整数、好ましくは3を表す。
【0015】
R1の炭素原子数1~8のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル基等が挙げられ、これらの中でも、R1は、炭素原子数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0016】
Lの2価の連結基の具体例としては、アルキレン基、-O-、-S-、-NR-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-NRCO-、-SO2-およびこれらの組み合わせからなるものが挙げられる。ここで、Rは、水素原子または炭素原子数1~4のアルキル基を表し、水素原子が好ましい。なお、アルキル基としては、上記で例示したアルキル基のうち、炭素原子数1~4のものが挙げられる。
これらの中でも、Lの2価の連結基としては、有機ケイ素化合物を製造する際の原料の入手性から、-(CH2)n-(nは、1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~4の整数である。)で表されるアルキレン基、またはこの-(CH2)n-のうち1個以上のメチレン単位が、-O-、-S-、-NH-、-C(=O)-および-C(=O)O-に置換されている基が好ましく、-(CH2)3-(トリメチレン基)がより好ましい。
【0017】
式(1)におけるXは、-O-または-NR2-であるが、ブロック化イソシアネートシラン化合物の保護基の一部を形成する基であり、加熱により脱離されるため、特に制限されるものではない。
Xの-NR2-において、R2は、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基またはZと結合して環構造を形成することが可能な基を表す。
R2の炭素原子数1~8のアルキル基としては、上記R1で例示した基と同様のものが挙げられるが、中でも直鎖状または分岐状の炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
-NR2-において、R2がZと結合して環構造を形成することが可能な基を表す場合、-NR2-は、式(1)中のZとヘテロ環構造を形成するものが好ましい。このようなヘテロ環構造中におけるヘテロ原子としては、窒素原子を2個以上含むことが好ましく、窒素原子を2個含むことがより好ましい。ヘテロ環構造としては、5員環または6員環構造が好ましく、5員環構造がより好ましい。
【0018】
式(1)におけるZは、水素原子または1価の有機基であるが、ブロック化イソシアネートシラン化合物の保護基の一部を形成する基であり、加熱により脱離されるため、特に制限されるものではない。
Zの1価の有機基の具体例としては、置換基を有していてもよく、エーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい(ただし、酸素原子との結合末端にOを含み、-O-O-結合を生じるものを除く。)、炭素原子数1~20の1価炭化水素基、水酸基(ただし、Xが、-O-の場合を除く。)、-N=R5(R5は、炭素原子数6~20のアリール基またはヘテロアリール基で置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキリデン基を表す。)等が挙げられる。
上記炭素原子数1~20の1価炭化水素基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基等が挙げられる。
上記アルキル基の具体例としては、R1で例示した基に加え、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-イコシル基等が挙げられる。
上記アリール基の具体例としては、フェニル、ナフチル基等が挙げられる。
上記アラルキル基の具体例としては、ベンジル、フェニルエチル基等が挙げられる。
また、これらの基は、その水素原子の少なくとも一部が、その他の置換基で置換されていてもよく、その他の置換基としては、カルボキシル基、水酸基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)等が挙げられる。
上記式-N=R5において、R5の、炭素原子数6~20のアリール基またはヘテロアリール基で置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキリデン基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチリデン、エチリデン、プロピリデン、プロパン-2-イリデン、ブチリデン、ブタン-2-イリデン、ペンチリデン、4-メチルペンタン-2-イリデン、ヘキシリデン、シクロヘキシリデン、へプチリデン、オクチリデン、ノニリデン、デシリデン基等が挙げられる。
炭素原子数6~20のアリール基の具体例としては、上記1価炭化水素基で例示した基と同様のものが挙げられる。
炭素原子数6~20のヘテロアリール基の具体例としては、ピロール-1-イル、1H-ピロール-2-イル、イミダゾール-1-イル、イミダゾール-2-イル、ピラゾール-1-イル、ピラゾール-3-イル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル基等が挙げられる。
置換アルキリデン基の具体例としては、フェニルメチリデン、ジフェニルメチリデン基等が挙げられる。
【0019】
(A)成分は、下記式(2)で表されるものが特に好ましい。
【0020】
【化4】
(式中、R
1、R
2、Zおよびmは、前記と同じである。)
【0021】
R2およびZの具体例としては、上記と同様であるが、中でも、これらは互いに結合してR2およびZが結合する窒素原子とともに環構造を形成していることが好ましい。環構造の具体例としては、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3-トリアゾール環、1,2,4-トリアゾール環が好ましく、ピラゾール環がより好ましい。
なお、上記環構造は、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、カルボキシル基、水酸基、エステル基、オキソ基(=O)、塩素、臭素等のハロゲン基、ニトロ基等の置換基を有していてもよい。
好適な環構造としては、下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
【0023】
(A)成分の好ましい具体例としては、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
【化6】
(式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。)
【0025】
(A)成分の製造方法は、特に制限されないが、1分子中にイソシアネート基および加水分解性シリル基を有する化合物と、ブロック剤とを反応させて製造する方法が好ましい。
1分子中にイソシアネート基および加水分解性シリル基を有する化合物としては、例えば、下記式(3)で表される化合物を用いることができる。
【0026】
【化7】
(式中、R
1は、Lおよびmは、上記と同じである。)
【0027】
式(3)で表される化合物の具体例としては、例えば、1-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、1-イソシアネートメチルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、6-イソシアネートヘキシルトリメトキシシラン、6-イソシアネートヘキシルトリエトキシシラン、8-イソシアネートオクチルトリメトキシシラン、8-イソシアネートオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0028】
ブロック剤としては、従来公知のものをいずれも使用することができ、例えば、下記式(4)で示されるものを用いることができる。
【化8】
(式中、XおよびZは、上記と同じである。)
【0029】
式(4)で表される化合物の具体例としては、例えば、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム等のオキシム系化合物;フェノール、パラ-tert-ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール系化合物;n-ブタノール、2-エチルヘキサノール、フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のアルコール系化合物;ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタム等のラクタム系化合物;ピロール、2H-ピロール、1-メチルピロール、2,4-ジメチルピロール、2,5-ジメチルピロール、N-メチルピロール等のピロール系化合物;インドール、N-メチルインドール、2-メチルインドール等のインドール系化合物、ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、メチル-5-メチルピラゾール-3-カルボキシレート、3-メチル-5-フェニルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール-4-カルボキシアニリド等のピラゾール系化合物;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系化合物;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系化合物;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系化合物;イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール系化合物;1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール等のトリアゾール系化合物;ピペリジン、N-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン等のピペリジン系化合物;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系化合物;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系化合物;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのイミン系化合物などが挙げられる。
また、上記化合物に加えて、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸イソプロピル、アセチルアセトン等の活性メチレン系化合物;n-ブチルメルカプタン、tert-ブチルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系化合物;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系化合物なども用いることができる。
これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ブロック剤としては、ラクタム系化合物、ピラゾール系化合物、ピロール系化合物、インドール系化合物、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ピペリジン系化合物が好ましく、下記化合物がより好ましい。
【0030】
【0031】
1分子中にイソシアネート基および加水分解性シリル基を有する化合物と、ブロック剤との反応は、大気下または窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、1分子中にイソシアネート基および加水分解性シリル基を有する化合物1モルに対して、ブロック剤を0.1~5モルの割合で使用することが好ましく、0.5~3モルがより好ましい。
反応温度は、特に制限されないが、50~150℃が好ましく、60~120℃がより好ましく、反応時間も、特に制限されないが、1~10時間が好ましく、2~6時間がより好ましい。
【0032】
[2](B)成分
本発明のゴム用配合剤には、上記(A)成分に加えて、(B)ポリスルフィド基、チオエステル基およびメルカプト基から選ばれる1種以上と、アルコキシシリル基とを有する有機ケイ素化合物を用いることができる。
(B)成分としては、このような官能基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシランカップリング剤を用いることができる。
【0033】
上記シランカップリング剤の具体例としては、ビス-(3-ビストリエトキシシリルプロピル)-テトラスルフィド、ビス-(3-ビストリエトキシシリルプロピル)-ジスルフィド等のポリスルフィド系有機ケイ素化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプト系有機ケイ素化合物;3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン等のチオエステル系有機ケイ素化合物などが挙げられる。
また、上記硫黄原子を有する有機ケイ素化合物と、ポリエーテル基を含有するアルコールとの反応物や、これらの有機ケイ素化合物の加水分解縮合物、これらの有機ケイ素化合物とアルコキシシリル基を有するその他の有機ケイ素化合物との共加水分解縮合物などを用いることもできる。
なお、(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明のゴム用配合剤において、(B)成分を配合する場合、上記(A)成分と(B)成分との配合比は、特に限定されないが、質量比で、(B)/(A)=10/90~95/5が好ましく、50/50~95/5がより好ましい。
【0035】
本発明のゴム用配合剤には、少なくとも1種の粉体を添加してもよい。
粉体の具体例としては、カーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
これらの中でも、補強性の観点から、シリカおよび水酸化アルミニウムが好ましく、シリカがより好ましい。
【0036】
粉体を配合する場合、その配合量は、ゴム用配合剤の取り扱い性や、輸送費等を考慮すると、粉体合計量(Y)に対する、上記(A)成分または(A)および(B)成分の合計量(X)の質量比((X)/(Y))で、70/30~5/95が好ましく、60/40~10/90がより好ましい。
【0037】
なお、本発明のゴム用配合剤は、脂肪酸、脂肪酸塩、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシアルキレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体等の有機ポリマーやゴムと混合されたものでもよく、加硫剤、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑剤等のタイヤ用、その他の一般ゴム用に通常用いられる各種添加剤などが配合されたものでもよい。
また、その形態としては、液体状でも固体状でもよく、さらに有機溶剤に希釈したものでもよく、またエマルジョン化したものでもよい。
【0038】
〔ゴム組成物〕
本発明のゴム組成物は、上述したゴム用配合剤を含有する。好ましくは、上述した(A)成分または(A)および(B)成分と、(C)ジエン系ゴムと、(D)充填剤とを含むものである。
本発明のゴム組成物における(A)成分または(A)および(B)成分の配合量は、得られるゴムの物性や、発揮される効果の程度と経済性とのバランス等を考慮すると、後に詳述する(D)成分100質量部に対し、(A)成分または(A)および(B)成分の合計3~30質量部が好ましく、5~20質量部がより好ましい。
【0039】
[3](C)成分
(C)成分のジエン系ゴムとしては、従来、各種ゴム組成物に一般的に用いられている任意のゴムを用いることができ、その具体例としては、天然ゴム等の各種イソプレンゴム(IR)、各種スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等のジエン系ゴムなどが挙げられ、これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
特に、(C)成分は、天然ゴムを含むことが好ましく、高荷重車両用タイヤとして用いた場合にも十分な耐破壊特性が得られる点から、(C)成分中の天然ゴムの含有量は、50質量%以上が好ましく、70~100質量%がより好ましい。
天然ゴムとしては、RSS#3、SIR20、TSR20等のタイヤ工業において一般的なものを使用できる。また、エポキシ化天然ゴム、水素化天然ゴム、グラフト化天然ゴム、脱タンパク質天然ゴム等の改質天然ゴムなどを使用することもできる。
【0041】
また、ジエン系ゴム以外に、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPR,EPDM)等の非ジエン系ゴムなどを併用してもよい。
【0042】
[4](D)成分
(D)成分の充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどタイヤ工業において一般的に使用される充填剤が挙げられ、これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、シリカおよびカーボンブラックを含むことが好ましく、シリカおよびカーボンブラックのみを含むことがより好ましい。
【0043】
カーボンブラックとしては、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなど、タイヤ工業において一般的なものが挙げられる。
シリカとしては、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)など、タイヤ工業において一般的なものが挙げられ、中でもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製されたシリカが好ましい。
特に、シリカは、窒素吸着比表面積(N2SA)70m2/g以上のものが好ましく、100m2/g以上のものがより好ましい。なお、N2SAの上限は、特に限定されるものではないが、取り扱い易さ等の観点から、500m2/g以下が好ましく、400m2/g以下がより好ましい。
【0044】
本発明のゴム組成物に(D)成分を配合する場合、その配合量は、分散性、低燃費性および成形加工性等の観点から、(C)成分100質量部に対して5~200質量部が好ましく、10~150質量部がより好ましく、20~130質量部がより一層好ましい。なお、ゴム用配合剤に粉体が含まれる場合、上記配合量は、当該粉体との合計量である。
【0045】
なお、本発明のゴム組成物には、上記(A)~(D)の各成分に加えて、硫黄、架橋剤、加硫促進剤、架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、各種レジン、ワックス、酸化亜鉛等のタイヤ用、その他ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。これら添加剤の配合量は、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0046】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等から入手可能な製品を使用できる。
【0047】
硫黄を配合する場合、その配合量は、(C)成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上5.0質量部以下であり、より好ましくは0.3質量部以上2.0質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上1.5質量部以下である。上記範囲内であると、引張特性と耐摩耗性能のバランスが良い。
【0048】
〔ゴム製品(タイヤ)〕
本発明のゴム組成物は、上述した(A)~(D)成分およびその他の成分を一般的な方法で組成物とし、これを加硫または架橋することで、例えば、タイヤ等のゴム製品の製造に使用することができる。特に、タイヤを製造する場合、本発明のゴム組成物がトレッドに用いられることが好ましい。
本発明のゴム組成物を用いて得られるタイヤは、転がり抵抗の低減に加え、耐摩耗性が向上することから、所望の低燃費性を実現できる。
なお、タイヤの構造は、従来公知の構造とすることができ、その製法も、従来公知の製法を採用すればよい。また、気体入りのタイヤの場合、タイヤ内に充填する気体として、通常、空気や、酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、下記例において、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表す。
【0050】
[1]有機ケイ素化合物の合成
[合成例1-1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLセパラブルフラスコに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE9007N、信越化学工業(株)製)247g(1.0モル)を納めた後、イミダゾール(東京化成工業(株)製)68g(1.0モル)を80℃で投入し、80℃で4時間熟成を行った。その後、濾過工程を行うことにより、下記式で表される有機ケイ素化合物(A-1)を得た。
【0051】
【0052】
[合成例1-2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLセパラブルフラスコに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE9007N、信越化学工業(株)製)247g(1.0モル)を納めた後、2-メチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)82g(1.0モル)を80℃で投入し、80℃で4時間熟成を行った。その後、濾過工程を行うことにより、下記式で表される有機ケイ素化合物(A-2)を得た。
【0053】
【0054】
[合成例1-3]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLセパラブルフラスコに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE9007N、信越化学工業(株)製)247g(1.0モル)を納めた後、2-ウンデシルイミダゾール(東京化成工業(株)製)222g(1.0モル)を80℃で投入し、80℃で4時間熟成を行った。その後、濾過工程を行うことにより、下記式で表される有機ケイ素化合物(A-3)を得た。
【0055】
【0056】
[合成例1-4]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLセパラブルフラスコに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE9007N、信越化学工業(株)製)247g(1.0モル)を納めた後、3,5-ジメチルピラゾール(東京化成工業(株)製)96g(1.0モル)を80℃で投入し、80℃で4時間熟成を行った。その後、濾過工程を行うことにより、下記式で表される有機ケイ素化合物(A-4)を得た。
【0057】
【0058】
[合成例1-5]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLセパラブルフラスコに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE9007N、信越化学工業(株)製)247g(1.0モル)を納めた後、1,2,3-ベンゾトリアゾール(東京化成工業(株)製)119g(1.0モル)を80℃で投入し、80℃で4時間熟成を行った。その後、濾過工程を行うことにより、下記式で表される有機ケイ素化合物(A-5)を得た。
【0059】
【0060】
[合成例1-6]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLセパラブルフラスコに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE9007N、信越化学工業(株)製)247g(1.0モル)を納めた後、1,2,4-トリアゾール(東京化成工業(株)製)69g(1.0モル)を80℃で投入し、80℃で4時間熟成を行った。その後、濾過工程を行うことにより、下記式で表される有機ケイ素化合物(A-6)を得た。
【0061】
【0062】
[合成例1-7]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた500mLセパラブルフラスコに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE9007N、信越化学工業(株)製)247g(1.0モル)を納めた後、ε-カプロラクタム(東京化成工業(株)製)113g(1.0モル)を80℃で投入し、80℃で4時間熟成を行った。その後、濾過工程を行うことにより、下記式で表される有機ケイ素化合物(A-7)を得た。
【0063】
【0064】
[合成例1-8]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(KBE-846、信越化学工業(株)製)539g(1.0モル)、オクチルトリエトキシシラン(KBE-3083、信越化学工業(株)製)222g(0.8モル)、エタノール200gを納めた後、室温にて0.5N塩酸25.2g(水1.4モル)を滴下した。次いで、80℃にて10時間撹拌した。その後、プロピレンオキサイド3.0gを滴下し、80℃で2時間撹拌した。さらに、減圧濃縮、濾過することで、動粘度が80mm2/sの下記平均組成式で表される褐色透明液体のオルガノポリシロキサン(B-2)を得た。
(-C3H6-S4-C3H6-)0.36(-C8H17)0.28(-OC2H5)2.00SiO0.50
・・・(B-2)
【0065】
[2]ゴム用配合剤の製造
[実施例1-1~1-9]
撹拌機を備えた200mLセパラブルフラスコを用いて、表1に示す配合量(質量部)で各成分を混合し、ゴム用配合剤を得た。
【0066】
【表1】
(B-1):ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(KBE-846、信越化学工業(株)製)
【0067】
[3]ゴム組成物の製造
[実施例2-1~2-9、比較例2-1,2-2]
4Lのインターナルミキサー(MIXTRON、(株)神戸製鋼所製)を用いて、表2,3記載の天然ゴムを60秒間混練した。
次いで、表2,3記載の天然ゴム、カーボンブラック、シリカ、実施例1-1~1-9で得られたゴム用配合剤、ステアリン酸、老化防止剤、レジン、およびワックスを加え、内温を150℃まで上昇させ、排出した。その後、ロールを用いて延伸した。得られたゴム組成物を、再度インターナルミキサー(MIXTRON、(株)神戸製鋼所製)を用いて内温が145℃になるまで混練し、排出した後、ロールを用いて延伸した。これに表2,3記載の酸化亜鉛、加硫促進剤および硫黄を加えて混練し、ゴム組成物を得た。
【0068】
天然ゴム:RSS#3
カーボンブラック:シースト9H(東海カーボン(株)製)
シリカ:ニプシルAQ(東ソー・シリカ(株)製)
ステアリン酸:工業用ステアリン酸(花王(株)製)
老化防止剤:ノクラック6C(大内新興化学工業(株)製)
レジン:T-REZ RA-100(ENEOS(株)製)
ワックス:オゾエース0355(日本精蝋(株)製)
酸化亜鉛:亜鉛華3号(三井金属鉱業(株)製)
加硫促進剤(a):ノクセラーDM-P(大内新興化学工業(株)製)
加硫促進剤(b):ノクセラーCZ-G(大内新興化学工業(株)製)
硫黄:5%オイル処理硫黄(細井化学工業(株)製)
【0069】
上記実施例2-1~2-9、比較例2-1,2-2で得られたゴム組成物について、未加硫物性および加硫物性を下記の方法で測定した。結果を表2,3に併せて示す。なお、加硫物性に関しては、得られたゴム組成物をプレス成形(145℃、30分)して、加硫ゴムシート(厚み2mm)を作製した。
【0070】
〔未加硫物性〕
(1)ムーニー粘度
JIS K 6300-1:2013に準拠し、余熱1分、測定4分、温度130℃にて測定し、比較例2-1を100として指数で表した。指数値が小さいほど、ムーニー粘度が低く、加工性に優れている。
〔加硫物性〕
(2)硬度
JIS K 6253-3:2012に準拠してデュロメーター(タイプA)硬さを測定し、比較例2-1を100として指数で表した。
(3)引張特性
JIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251に準拠して行い、300%モジュラス(M300)[MPa]を室温にて測定した。得られた結果を、比較例2-1を100として指数で表した。指数値が大きいほど、モジュラスが高く引張特性に優れることを示す。
(4)動的粘弾性(歪分散)
粘弾性測定装置(メトラビブ社製)を使用し、温度25℃、周波数55Hzの条件にて、歪0.5%の貯蔵弾性率E’(0.5%)と歪3.0%の貯蔵弾性率E’(3.0%)を測定し、[E’(0.5%)-E’(3.0%)]の値を算出した。なお、試験片は厚さ0.2cm、幅0.5cmのシートを用い、使用挟み間距離2cmとして初期荷重を1Nとした。[E’(0.5%)-E’(3.0%)]の値は、比較例2-1を100として指数で表した。指数値が小さいほど、シリカの分散性が良好であることを示す。
(5)動的粘弾性(温度分散)
粘弾性測定装置(メトラビブ社製)を使用し、引張の動歪1%、周波数55Hzの条件にて測定した。なお、試験片は厚さ0.2cm、幅0.5cmのシートを用い、使用挟み間距離2cmとして初期荷重を1Nとした。tanδ(60℃)の値は、比較例2-1を100として指数で表した。tanδ(60℃)の値は、指数値が小さいほど、転がり抵抗が良好であることを示す。
(6)耐摩耗性
FPS試験機((株)上島製作所製)を用いて、サンプルスピード200m/分、荷重20N、路面温度30℃、スリップ率5%とスリップ率20%の条件で試験を行った。得られた結果を、比較例2-1を100として指数で表した。指数値が大きいほど、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。
【0071】
【0072】
【0073】
表2および表3に示されるように、実施例2-1~2-9のゴム組成物の加硫物は、比較例2-1,2-2のゴム組成物の加硫物に比べ、硬度、引張特性を維持したまま、動的粘弾性が低い、すなわち、ヒステリシスロスが小さく低発熱性であり、また、耐摩耗性に優れていることがわかる。