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特許7694787炭素材料、導電助剤、分散液、電極合剤層形成用組成物及び二次電池
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  • 特許-炭素材料、導電助剤、分散液、電極合剤層形成用組成物及び二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-10
(45)【発行日】2025-06-18
(54)【発明の名称】炭素材料、導電助剤、分散液、電極合剤層形成用組成物及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/15 20170101AFI20250611BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20250611BHJP
   H01B 1/04 20060101ALI20250611BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20250611BHJP
【FI】
C01B32/15
H01M4/62 Z
H01B1/04
H01B1/24 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024195467
(22)【出願日】2024-11-07
【審査請求日】2024-11-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】織地 学
(72)【発明者】
【氏名】大竹 裕美
(72)【発明者】
【氏名】八巻 孝信
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-013671(JP,A)
【文献】特表2021-514104(JP,A)
【文献】特開2019-052083(JP,A)
【文献】特開2017-185416(JP,A)
【文献】特開2013-180900(JP,A)
【文献】特開2012-214342(JP,A)
【文献】特開2008-285745(JP,A)
【文献】特開2006-045034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
H01M 4/00-4/62
H01B 1/00-1/24
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の炭素六角網面が繊維の太さ方向に積層された構造を有する繊維状炭素を含む炭素材料であって、d002が0.3391nm以下であり、BET比表面積が10.5m/g以上18.0m/g未満であり、前記炭素材料の窒素吸着試験において、相対圧=0.00295までの累計細孔容積の全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)に対する比率をφ1とし、ハルゼイ式を用いたBJH法によるミクロ孔容積(相対圧=0.1537までの累計細孔容積)の全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)に対する比率をφ2としたとき、φ2/φ1は、1.350~1.450である、炭素材料。
【請求項2】
前記炭素材料の窒素吸着試験において、相対圧=0.00295までの累計細孔容積が0.0030mL/g~0.0050mL/gである、請求項1に記載の炭素材料。
【請求項3】
前記炭素材料のd002は、0.3370nm~0.3390nmである、請求項1に記載の炭素材料。
【請求項4】
前記炭素材料の窒素吸着試験における全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)が0.1000mL/g以下である、請求項1に記載の炭素材料。
【請求項5】
前記炭素材料の窒素吸着試験において、ハルゼイ式を用いたBJH法によるミクロ孔容積(相対圧=0.1537までの累計細孔容積)の、全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)に対する比率であるφ2が14.0%以下である、請求項1に記載の炭素材料。
【請求項6】
圧縮密度0.8g/cmにおける圧密比抵抗が、0.0165Ω・cmより大きいか、あるいは0.0140Ω・cm未満である請求項1に記載の炭素材料。
【請求項7】
前記炭素材料の酸素含有率が0.10質量%以下である請求項1に記載の炭素材料。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の炭素材料を含む、導電助剤。
【請求項9】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の炭素材料を含む、分散液。
【請求項10】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の炭素材料を含む、電極合剤層形成用組成物。
【請求項11】
正極集電体及び前記正極集電体上に配置された正極活物質を含む正極合剤層を備える正極と、負極集電体及び前記負極集電体上に配置された負極活物質を含む負極合剤層を備える負極と、を備え、
前記正極合剤層及び前記負極合剤層の少なくとも一方が請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の炭素材料を含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭素材料、導電助剤、分散液、電極合剤層形成用組成物及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は小型、軽量、かつ高い電圧という特性を活かし、ノート型PC、携帯電話、スマートフォン、タブレット型PC等の電子機器に広く使用されている。近年、環境問題を背景に、電池のみで走行を行う電気自動車(EV)、ガソリンエンジンと電池を組み合わせたハイブリッド電気自動車(HEV)等にてリチウム系二次電池等の二次電池が普及している。
【0003】
二次電池の電極への導電性付与剤として黒鉛化カーボンナノファイバー間及び前記黒鉛化カーボンナノファイバー表面近傍に多層カーボンナノチューブが均質に分散している複合炭素繊維が提案されている(例えば、特許文献1)。当該複合炭素繊維は、樹脂等のマトリックスに凝集体を残すことなく容易に分散し且つ抵抗を低減する効果に優れ、当該複合炭素繊維を二次電池の電極に導電性付与剤として含有させると容量維持率等の電池特性が改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許5497109号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
二次電池への添加剤、例えば、正極、負極等の電極への添加剤としては、電池特性の向上が可能な材料が求められている。例えば、正極においては、ほぼ活物質からのリチウムの脱離電流と考えられる、+4.1V vs.Li/Liでの酸化電流(以下、単に「4.1V酸化電流」と称することがある。他の電位における酸化電流についても同様)の値が大きい二次電池の作製が可能な炭素材料が望ましい。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、4.1V酸化電流の値が大きく、電池特性に優れる二次電池の作製が可能な炭素材料、並びにこれを含む導電助剤、分散液、電極合剤層形成用組成物及び二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 筒状の炭素六角網面が繊維の太さ方向に積層された構造を有する繊維状炭素を含む炭素材料であって、d002が0.3391nm以下であり、BET比表面積が10.5m/g以上18.0m/g未満であり、前記炭素材料の窒素吸着試験において、相対圧=0.00295までの累計細孔容積の全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)に対する比率をφ1とし、ハルゼイ式を用いたBJH法によるミクロ孔容積(相対圧=0.1537までの累計細孔容積)の全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)に対する比率をφ2としたとき、φ2/φ1は、1.350以上である、炭素材料。
<2> 前記炭素材料の窒素吸着試験において、相対圧=0.00295までの累計細孔容積が0.0030mL/g~0.0050mL/gである、<1>に記載の炭素材料。
<3> 前記炭素材料のd002は、0.3370nm~0.3390nmである、<1>又は<2>に記載の炭素材料。
<4> 前記炭素材料の窒素吸着試験における全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)が0.1000mL/g以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の炭素材料。
<5> 前記炭素材料の窒素吸着試験において、ハルゼイ式を用いたBJH法によるミクロ孔容積(相対圧=0.1537までの累計細孔容積)の、全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)に対する比率であるφ2が14.0%以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の炭素材料。
<6> 圧縮密度0.8g/cmにおける圧密比抵抗が、0.0165Ω・cmより大きいか、あるいは0.0140Ω・cm未満である<1>~<5>のいずれか1つに記載の炭素材料。
<7> 前記炭素材料の酸素含有率が0.10質量%以下である<1>~<6>のいずれか1つに記載の炭素材料。
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載の炭素材料を含む、導電助剤。
<9> <1>~<7>のいずれか1つに記載の炭素材料を含む、分散液。
<10> <1>~<7>のいずれか1つに記載の炭素材料を含む、電極合剤層形成用組成物。
<11> 正極集電体及び前記正極集電体上に配置された正極活物質を含む正極合剤層を備える正極と、負極集電体及び前記負極集電体上に配置された負極活物質を含む負極合剤層を備える負極と、を備え、
前記正極合剤層及び前記負極合剤層の少なくとも一方が<1>~<7>のいずれか1つに記載の炭素材料を含む二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、4.1V酸化電流の値が大きく、電池特性に優れる二次電池の作製が可能な炭素材料、並びにこれを含む導電助剤、分散液、電極合剤層形成用組成物及び二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】粉体抵抗測定用セルの縦断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0011】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
【0012】
<炭素材料>
本開示の炭素材料は、筒状の炭素六角網面が繊維の太さ方向に積層された構造を有する繊維状炭素を含む炭素材料であって、d002が0.3391nm以下であり、BET比表面積が10.5m/g以上18.0m/g未満であり、前記炭素材料の窒素吸着試験において、相対圧=0.00295までの累計細孔容積の全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)に対する比率をφ1とし、ハルゼイ式を用いたBJH法によるミクロ孔容積(相対圧=0.1537までの累計細孔容積)の全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)に対する比率をφ2としたとき、φ2/φ1は、1.350以上である。本開示の炭素材料を用いることで4.1V酸化電流の値が大きく、電池特性に優れる二次電池の作製が可能である。
【0013】
炭素材料のd002は、0.3391nm以下であり、電池特性の観点から、0.3370nm~0.3390nmであることが好ましく、0.3375nm~0.3388nmであることがより好ましく、0.3380nm~0.3386nmであることがさらに好ましい。
炭素材料のd002は、炭素材料のX線回折法、具体的には学振法により求めた平均面間隔d002を意味する。
【0014】
炭素材料のBET比表面積は、10.5m/g以上18.0m/g未満であり、電池特性の観点から、11.0m/g~17.5m/gであることが好ましく、11.5m/g~17.0m/gであることがより好ましく、13.5m/g~17.0m/gであることがさらに好ましい。
炭素材料のBET比表面積は、相対圧0.1近傍、0.2近傍及び0.3近傍の3点の吸着等温線データからBET多点法にて算出する。
【0015】
本開示の炭素材料の窒素吸着試験における全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)は、0.1000mL/g以下であることが好ましく、0.0300mL/g~0.0800mL/gであることがより好ましく、0.0360mL/g~0.0600mL/gであることがさらに好ましい。
炭素材料の窒素吸着試験は、後述する実施例に記載の方法により行うことができる。
【0016】
本開示の炭素材料の窒素吸着試験における相対圧=0.00295までの細孔の累計細孔容積は、0.0030mL/g~0.0050mL/gであることが好ましく、0.0031mL/g~0.0045mL/gであることがより好ましく、0.0032mL/g~0.0042mL/gであることがさらに好ましい。
【0017】
本開示の炭素材料の窒素吸着試験における相対圧=0.00295までの細孔の累計細孔容積の、全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)に対する比率(以下、φ1ともいう。)は、13.0%以下であることが好ましく、10.0%以下であることがより好ましく、5.0%~9.0%であることがさらに好ましい。
【0018】
本開示の炭素材料の窒素吸着試験における相対圧0.1537までの細孔の累計細孔容積は、0.0040mL/g~0.0070mL/gであることが好ましく、0.0042mL/g~0.0065mL/gであることがより好ましく、0.0045mL/g~0.0060mL/gであることがさらに好ましい。
【0019】
本開示の炭素材料の窒素吸着試験において、ハルゼイ式を用いたBJH法によるミクロ孔容積(相対圧=0.1537までの細孔の累計細孔容積)の、全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)に対する比率(以下、φ2ともいう。)は、16.0%以下であることが好ましく、14.0%以下であることがより好ましく、9.0%~13.0%であることがさらに好ましい。
【0020】
本開示の炭素材料の窒素吸着試験において、φ2/φ1は、1.350以上であり、4.1V酸化電流の値がより大きく、電池特性により優れる二次電池の作製が可能となる観点から、1.370~1.450であることが好ましく、1.390~1.445であることがより好ましく、1.405~1.440であることがさらに好ましい。
【0021】
炭素材料の酸素含有率は、二次電池に炭素材料を適用した際の4.5V酸化電流/4.1V酸化電流の値を低下させる観点から、0.10質量%以下であることが好ましく、0.08質量%以下であることがより好ましく、0.06質量%以下であることがさらに好ましく、0.05質量%以下であることが特に好ましい。
炭素材料の酸素含有率の下限は特に限定されず、0質量%であってもよく、0.02質量%以上であってもよく、0.03質量%以上であってもよい。
炭素材料の酸素含有率は、不活性ガス中で炭素材料を加熱し、発生したCO及びCOを赤外線吸収法で定量することで求めてもよい。
【0022】
酸素含有率は、例えば、BET比表面積と相関があり、BET比表面積が高くなると酸素含有率も高くなる傾向にある。そこで、BET比表面積を高める処理の条件(焼成ステップ、賦活処理、粉砕条件など)を調整することで酸素含有率も調整できる傾向にある。
本開示の炭素材料に対して電磁分離機による磁選を行ってもよく、行わなくてもよい。電磁分離機による磁選を行うことで炭素材料の酸素含有率を調整することができる、と考えられる。
【0023】
繊維状炭素の平均繊維径は、優れたサイクル特性及びレート特性を有する二次電池を作製する観点から、1nm~200nmであることが好ましく、100nm~200nmであることがより好ましく、120nm~180nmであることがさらに好ましい。
【0024】
繊維状炭素の平均繊維径は、電極のSEMによって観察された、無作為に選ばれた200本の繊維の直径の算術平均から求めることができる。1本の繊維の直径は、SEM写真からある繊維の両端部を除く1か所の幅を測定し、その算術平均をとることで求めることができる。
ここで、繊維の幅とは、長手方向に垂直な方向の繊維の寸法を指す。
【0025】
繊維状炭素の平均繊維長は、優れたサイクル特性及びレート特性を有する二次電池を作製する観点から、1μm~20μmであることが好ましく、3μm~15μmであることがより好ましく、4μm~10μmであることがさらに好ましい。
【0026】
繊維状炭素の平均繊維長は、以下のようにして測定することができる。粉体を分散媒に分散させ、アルミニウム箔等の上に展開したものを乾燥後にSEM観察し、無作為に選択した200本の繊維の、繊維軸に沿った長さを測定し、その算術平均をとることで平均繊維長を測定することができる。電極を溶媒で洗浄し、バインダー等を除去した粉体を取り出し、取り出した粉体を用いて炭素繊維の平均繊維長を求めてもよい。
【0027】
本開示の炭素材料では、圧縮密度0.8g/cmにおける圧密比抵抗が、0.0165Ω・cmより大きいか、あるいは0.0140Ω・cm未満であることが好ましい。
本開示の炭素材料では、圧密比抵抗が0.0165Ω・cmより大きい、あるいは0.0140Ω・cm未満であることで、電池特性により優れる二次電池の作製が可能となる傾向にある。より具体的には、圧密比抵抗が0.0165Ω・cmより大きいことは、炭素材料の表面、例えば、炭素材料に含まれる繊維状炭素、非繊維状の炭素の表面に酸素が適度に結びついていること、あるいは、炭素材料の六角網面が乱れていることと対応し、これにより正極活物質との親和性、混合性等が良好となり、4.1V酸化電流の値が高くなる傾向にある、と推測される。一方、圧密比抵抗が0.0140Ω・cm未満であることで、正極活物質との親和性、混合性等が低下するおそれはあるが、炭素材料が十分な導電性を有することで4.1V酸化電流の値が高くなる傾向にある、と推測される。
炭素材料の圧縮密度0.8g/cmにおける圧密比抵抗の測定は、後述する実施例に記載の方法により行うことができる。
【0028】
本開示の炭素材料を用いて試験用電気化学セルを作製し、下記の条件でリニアスイープボルタンメトリー(LSV)を行った際の+4.1V vs.Li/Liでの酸化電流に対する+4.5V vs.Li/Liでの酸化電流の比率(4.5V酸化電流/4.1V酸化電流)は、3.00以下であることが好ましく、2.50以下であることがより好ましく、2.35以下であることがさらに好ましい。4.5V酸化電流/4.1V酸化電流の下限は特に限定されず、例えば、1.00以上であればよい。4.5V酸化電流/4.1V酸化電流が3.00以下であることで、電極に十分な電子及びイオンを運ぶことができ、副反応が小さい電極(特に正極)を提供することができる。
-測定条件-
走査範囲:自然浸漬電位から+5.2V vs.Li/Liまで
走査速度:3mV/s
測定温度:45℃
試験用電気化学セルは以下のようにして作製すればよい。正極活物質としてNMC811(Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O 96質量部、本開示の炭素材料2質量部、及びPVdF2.0質量部を秤量し、混練機で混合する。その後、適宜NMPを添加しながら混練機で混合し、粘度を調整した電極合剤層形成用組成物を調製する。調製した電極合剤層形成用組成物を厚さ20μmのアルミニウム箔上に、ロールコーターを用いて塗工し、乾燥させた後、さらに真空乾燥して正極合剤層を備える試験用電極を作製する。目付量(単位面積当たりの電極合剤層の質量)を17mg/cmとし、試験用電極の寸法は20mm×20mmとする。次いで、試験用電極、対極及び参照極であるLi金属並びに、電解液を用いて試験用電気化学セルを作製する。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比3:7で混合した溶媒中に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1M(mol/L)となるように溶解させて得られた溶液を用いる。
【0029】
本開示の炭素材料は、筒状の炭素六角網面が繊維の太さ方向に積層された構造を有する繊維状炭素のみからなる材料であってもよく、当該繊維状炭素とその他の炭素材料とからなる材料であってもよい。
本開示の炭素材料に含まれる繊維状炭素の含有率は、炭素材料の全量に対し、50質量%~100質量%であってもよく、70質量%~100質量%であってもよく、90質量%~100質量%であってもよい。
【0030】
本開示の炭素材料の合成法は特に制限されず、例えば、気相法によって合成されるものであってもよく、浮遊触媒法で合成し、その後不活性雰囲気下2000℃以上で熱処理して合成されるものであってもよい。
浮遊触媒法は、炭素源であるベンゼン等に触媒源であるフェロセン等及び硫黄化合物等を溶解した原料液又はそれをガス化したものを水素等のキャリアガスを用いて1000℃以上に加熱した反応炉に導入して炭素繊維を得る方法である。一般的に反応初期に触媒金属を起点にしてホローチューブが形成され、炭素繊維の長さ方向への成長が生じる。長さ方向の成長は、触媒粒子表面が炭素で覆われる等により、触媒活性が失われるまで続く。長さ方向の成長が終了すると、ホローチューブ表面に熱分解炭素が堆積し、太さ方向の成長が進行し、筒状の炭素六角網面が繊維の太さ方向に積層された構造が形成される。したがって、繊維径の調整は、反応中の炭素繊維上への熱分解炭素の堆積量、すなわち反応時間、雰囲気中の原料濃度、反応温度を制御することにより可能である。この反応により得られる炭素材料は、結晶性の低い熱分解炭素により覆われているため導電性が低いことがある。そこで、炭素繊維の結晶性を上げるためにアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で800~1500℃で熱処理を行い、次いで2000~3000℃で黒鉛化処理を行う。黒鉛化処理は同時に触媒金属を蒸発除去することができ、繊維状炭素の高純度化が可能となる。
アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で800℃~1500℃、好ましくは900℃~1300℃で熱処理(第1焼成ステップ)を行った後、温度を200℃~500℃、好ましくは1200℃~1700℃まで昇温し、30分から3時間程度保持する処理(第2焼成ステップ)を行うことが好ましい。これにより、4.1V酸化電流の値が増加し、電池特性が向上する傾向にある。また、黒鉛化処理を行う時の温度は、2500℃~3000℃が好ましく、2600℃~3000℃がより好ましい。
【0031】
本開示において、筒状の炭素六角網面が太さ方向に積層された構造とは、炭素六角網面が巻かれて筒状となった構造が太さ方向に沿って複数積層された構造(特定の構造ともいう。)を指す。特定の構造は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)で炭素材料を観察し、次のようにして確認することができる。炭素繊維の長手方向が確認できる像(以下、「TEM長手像」ともいう。)及び炭素繊維を長手方向に交わる方向で切ったときの断面が確認できる像(以下、「TEM断面像」ともいう。)を観察する。そして、TEM長手像において、炭素繊維の内部に長手方向に沿った複数の線が存在し、且つ、TEM断面像において、最大径の異なる複数の閉曲線が存在し、閉曲線は最大径が小さくなるにつれて内部側に順に配置されている場合に、特定の構造を有する炭素繊維であると確認することができる。また、X線回折法(XRD)において、(002)、(100)、(101)、(110)又は(112)の面について黒鉛粒子と同様の回折線を確認することで炭素六角網面が積層された構造を確認できる。筒状の炭素六角網面が太さ方向に積層された構造は、直径が異なる複数の円筒状の炭素六角網面が同心円状の前記断面を有するよう(例えば同心多重管のよう)に配置された構造であってもよく、直径が異なる複数の円筒状の炭素六角網面について中心軸(ある筒の各前記断面の中心を結んだ線)が全て揃っていなくてもよく、一部だけ中心軸が揃っていてもよい。筒の前記断面の形状については、真円に限定されず、楕円形状、多角形形状等であってもよく、外周の一部が真円、楕円、その他曲線、多角形形状、又はこれらの組み合わせであってもよい(上記の「閉曲線」とはこのような形状を指す。また、これらの場合「中心軸」は、各前記断面の重心を結んだ線とする)。筒状の炭素六角網面が太さ方向に積層された構造は、前記断面の最大幅が異なる複数の筒状(例えば、前記断面が楕円形状、多角形形状)の炭素六角網面の中心軸が全て一致するように配置された構造であってもよく、当該中心軸が全て揃っていなくてもよく、当該中心軸が一部だけ揃っていてもよい。
【0032】
本開示の炭素材料のd002、BET比表面積及びφ2/φ1は以下のようにして調整することができる。なお、以下の調整方法は一例であり、本開示はこれに限定されない。
002は、例えば、黒鉛化温度等の黒鉛化処理の条件、粉砕条件などを変更することで調整することができる。例えば、黒鉛化温度を高くすることで、d002が低下する傾向にある。
BET比表面積は、例えば、黒鉛化時の昇温時間、保持時間等の黒鉛化処理の条件、各焼成ステップの昇温時間、保持時間等の条件、粉砕等の各種処理の条件、粉体の合成反応条件などを変更することで調整することができる。例えば、黒鉛化時の保持時間を長くするなどによって、BET比表面積が低下する傾向にあり、第2焼成ステップを設ける、粉砕時の回転数を上げるなどによって、BET比表面積が増加する傾向にある。
φ2/φ1は、例えば、黒鉛化時の昇温時間、保持時間等の黒鉛化処理の条件、各焼成ステップの昇温時間、保持時間等の条件、粉砕等の各種処理の条件、粉体の合成反応条件などを変更することで調整することができる。
【0033】
本開示の炭素材料は、導電助剤等に用いられてもよく、分散液、電極合剤層形成用組成物等の調製に用いられてもよい。
【0034】
本開示の炭素材料は、溶媒等に分散させた分散液の形態にて用いてもよい。分散液は、正極活物質、負極活物質、バインダー、添加剤等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0035】
本開示の炭素材料は、電極合剤層形成用の組成物(電極合剤層形成用組成物)の調製に用いられてもよい。
電極合剤層形成用組成物としては、正極合剤層を形成するための正極合剤層形成用組成物、負極合剤層を形成するための負極合剤層形成用組成物等が挙げられる。
正極合剤層形成用組成物は、正極活物質及び本開示の炭素材料を含み、さらに必要に応じてカーボンブラック、バインダー、溶媒等を含んでいてもよい。
負極合剤層形成用組成物は、負極活物質及び本開示の炭素材料を含み、さらに必要に応じて導電助剤、バインダー、溶媒等を含んでいてもよい。
【0036】
<二次電池>
本開示の二次電池は、正極集電体及び前記正極集電体上に配置された正極活物質を含む正極合剤層を備える正極と、負極集電体及び前記負極集電体上に配置された負極活物質を含む負極合剤層を備える負極と、を備え、前記正極合剤層及び前記負極合剤層の少なくとも一方が本開示の炭素材料を含む。
【0037】
二次電池の形態としては、外装材に収容された正極及び負極が厚さ方向において複数積層された構造であってもよく、ラミネート型の二次電池であってもよく、巻回型の二次電池であってもよい。巻回型の二次電池としては、例えば、正極と負極とをセパレータを介して積層してなる積層体を巻回して得られた電極対及び電解液を円筒型の外装体内に封入した円筒型の二次電池であってもよく、あるいは、正極と負極とを固体電解質を介して積層してなる積層体を巻回して得られたセルを円筒型の外装体内に封入した円筒型の二次電池であってもよい。
【0038】
二次電池は、正極と負極とをセパレータを介して積層してなる積層体、及び電解液が外装材に収納された電池であってもよく、正極と負極とを固体電解質を介して積層してなる積層体が外装材に収納された電池であってもよい。
【0039】
二次電池の種類としては、特に限定されず、リチウム系二次電池、ナトリウム系二次電池、カリウム系二次電池、マグネシウム系二次電池、アルミニウム系二次電池等が挙げられる。中でも、高電圧で高エネルギー密度を達成可能なリチウム系二次電池及び低コスト化が可能なナトリウム系二次電池が好ましい。
リチウム系二次電池としては、リチウムイオン二次電池、負極が金属リチウムであるリチウム二次電池(例えば、リチウム-硫黄電池、リチウム-空気電池も包含する)等が挙げられ、電解液、ポリマー電解質、高分子ゲル電解質、固体電解質等の少なくとも何れかを含む液体電解質型電池、固体電解質型電池などが挙げられる。また、リチウム系二次電池以外の他の二次電池についても前述のリチウム系二次電池と同様に、正極活物質、負極活物質、電解質等は限定されず、種々の形態をとり得る。
以下では、一例としてリチウム系二次電池の例について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0040】
〔正極〕
本開示の二次電池は、正極集電体及び前記正極集電体上に配置された正極活物質を含む正極合剤層を備える正極を備える。
【0041】
正極集電体の材質は、高電位において酸化溶解せず、電子伝導性のある材料であれば特に制限されず、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等から選択できる。正極集電体の状態は特に制限されず、箔、穴開け箔、メッシュ等から選択できる。
一例として、正極集電体としては、アルミニウム箔が用いられる。
【0042】
正極合剤層が本開示の炭素材料を含んでいてもよい。
例えば、正極集電体上に、正極活物質及び本開示の炭素材料を含み、さらに必要に応じてカーボンブラック、バインダー、溶媒等を含む正極合剤層形成用組成物(電極合剤層形成用組成物の一種)を塗工し、塗工したスラリーを乾燥させ、次いでプレスすることで正極集電体上に正極合剤層が形成される。
【0043】
正極合剤層の厚さは、エネルギー密度及び安全性の観点から、30μm以上であってもよく、50μm~70μmであってもよく、70μm~100μmであってもよい。
【0044】
正極合剤層の密度は、エネルギー密度及び安全性の観点から、2.0g/cm以上であってもよく、3.0g/cm以上であってもよく、3.0g/cm~4.0g/cmであってもよい。
【0045】
正極合剤層の目付量は、エネルギー密度及び安全性の観点から、10.0mg/cm以上であってもよく、10.0mg/cm~30.0mg/cmであってもよい。
【0046】
1枚当たりの平均電極面積(平均正極面積及び平均負極面積)は、20cm~10000cmであってもよく、300cm~10000cmであってもよい。
【0047】
(正極活物質)
正極合剤層は、正極活物質を含む。正極活物質としては、二次電池の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びアルミニウムの少なくとも1つを含む化合物が挙げられる。正極活物質としては、ニッケルを含む酸化物、オリビン型構造を有するリン酸塩等が挙げられる。二次電池がリチウム系二次電池である場合、正極活物質としては、LiNiMnCoAl(x、y、z、w≧0、x+y+z+w=1)、LiMPO(MはFe、Co、Mn及びNiから選択される1種以上)、LiMnNi(a,b≧0、a+b=2)等が挙げられる。
【0048】
正極活物質は、LiNiMnCoAl(x、y、z、w≧0、x+y+z+w=1)を含む、あるいは、LiMPO(MはFe、Co、Mn及びNiから選択される1種以上)を含むことが好ましい。
【0049】
LiNiMnCoAl(x、y、z、w≧0、x+y+z+w=1)としては、ニッケルの割合の比較的高い、例えば、x≧0.5以上であることが好ましく、Li(NiMnCo)O(x≧0.5、y≦0.3、z≦0.3、x+y+z=1)であることがより好ましい。Li(NiMnCo)O(x≧0.5、y≦0.3、z≦0.3、x+y+z=1)で表される正極活物質としては、例えば、Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O、Li(Ni0.7Mn0.2Co0.1)O、Li(Ni0.7Mn0.1Co0.2)O、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O及びLi(Ni0.5Mn0.2Co0.3)Oが挙げられる。
【0050】
LiMPO(MはFe、Co、Mn及びNiから選択される1種以上)で表される正極活物質としては、例えば、LiFePO、LiFe0.5Mn0.5PO、LiFe0.3Mn0.7PO、LiCoPO及びLiCo0.5Mn0.5POが挙げられる。
【0051】
正極合剤層において、正極活物質の含有率は、正極容量の観点から、90.0質量%以上であることが好ましく、93.0質量%以上であることがより好ましく、95.0質量%以上であることがさらに好ましい。
【0052】
正極合剤層において、正極活物質の含有率は、他の成分の量を確保する観点から、98.0質量%以下であることが好ましく、97.0質量%以下であることがより好ましく、96.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0053】
正極合剤層が本開示の炭素材料を含んでいてもよい。
正極合剤層が上記炭素材料を含む場合、正極合剤層において、上記炭素材料の含有率は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。
【0054】
正極合剤層において、上記炭素材料の含有率は、3.0質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0055】
正極合剤層は、本開示の炭素材料以外の繊維状炭素(その他の繊維状炭素)を含んでいてもよい。その他の繊維状炭素としては、炭素繊維(カーボンファイバー)、気相法炭素繊維、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)等のカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。
【0056】
(カーボンブラック)
正極合剤層は、さらにカーボンブラックを含んでいてもよい。カーボンブラックは、二次電池の導電助剤として用いられる。カーボンブラックとしては、例えば、デンカブラック(登録商標、デンカ株式会社製)、C-NERGY(登録商標)Super C45、C65(イメリスグラファイト&カーボン製)及びケッチェンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル製)が挙げられる。
【0057】
カーボンブラックの一次粒子径は10nm~100nmであってもよい。ここでいう一次粒子とは、アグリゲートと呼ばれる数珠状の構造内の、数珠の玉一粒に相当する部分を指す。カーボンブラックの一次粒子径がこの範囲であれば、活物質表面に均一に分散する傾向にある。分散性の向上の観点から、カーボンブラックの一次粒子径は20nm~80nmであることが好ましく、30nm~70nmであることがより好ましい。
【0058】
カーボンブラックの一次粒子径は、電極のSEM写真及び断面SEM写真から、任意の100個のカーボンブラックの一次粒子を選び出し、画像認識ソフトによる、粒子の最大長さの計測結果を算術平均することにより、求めることができる。
【0059】
正極合剤層がカーボンブラックを含む場合、カーボンブラックの含有率は、優れたサイクル特性及びレート特性を得る観点から、0.2質量%以上であることが好ましく、0.6質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。
【0060】
正極合剤層において、カーボンブラックの含有率は、正極の容量を確保する観点から、6.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0061】
(バインダー)
正極合剤層は、バインダーを含んでいてもよい。バインダーとしては、通常のリチウムイオン二次電池用の正極合剤層に用いられるバインダーを好適に用いることができる。バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。
【0062】
正極合剤層がバインダーを含む場合、バインダーの含有率は、バインダーとしての機能を得る観点から、1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましい。
【0063】
正極合剤層において、バインダーの含有率は、正極の抵抗増加を抑制する観点から、5.0質量%以下であることが好ましく、4.5質量%以下であることがより好ましく、4.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0064】
(その他の成分)
正極合剤層は、上記のほか、分散剤、添加材等のその他の成分を含んでいてもよい。例えば、正極活物質を分散させるための各種分散剤、正極活物質を表面修飾するための薬剤等を含んでいてもよい。
【0065】
〔負極〕
二次電池は、負極集電体及び前記負極集電体上に配置された負極活物質を含む負極合剤層を備える負極を備える。
【0066】
負極集電体の材質は、電子伝導性のある材料であれば特に制限されず、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等から選択できる。負極集電体の状態は特に制限されず、箔、穴開け箔、メッシュ等から選択できる。
一例として、負極集電体としては、銅箔が用いられる。
【0067】
負極合剤層が本開示の炭素材料を含んでいてもよい。
例えば、負極集電体上に、負極活物質及び本開示の炭素材料を含み、さらに必要に応じて導電助剤、バインダー、溶媒等を含む負極合剤層用組成物(電極合剤層形成用組成物の一種)を塗工し、塗工したスラリーを乾燥させ、次いでプレスすることで負極集電体上に負極合剤層が形成される。
【0068】
負極合剤層の厚さは、エネルギー密度及び安全性の観点から、30μm以上であってもよく、50μm~100μmであってもよく、100μm~150μmであってもよい。
【0069】
負極合剤層の密度は、エネルギー密度及び安全性の観点から、1.3g/cm以上であってもよく、1.5g/cm~2.0g/cmであってもよい。
【0070】
負極合剤層の目付量は、エネルギー密度及び安全性の観点から、5.0mg/cm以上であってもよく、10mg/cm~20mg/cmであってもよい。
【0071】
(負極活物質)
負極合剤層は、負極活物質を含む。負極活物質としては、Si、SiO(0<x≦2)、ソフトカーボン、ハードカーボン、黒鉛、シリコンと炭素の複合化物、LiTi12、金属Li、InO(0<x≦1.5)、AlO(0<x≦1.5)、AgO(0<x≦0.5)、CdO(0<x≦1)、SbO(0<x≦1.5)、BiO(0<x≦1.5)、ZnO(0<x≦1)等の酸化物等が挙げられる。中でも、負極活物質は黒鉛を含むことが好ましい。また、負極活物質の表面の少なくとも一部は非晶質炭素でコーティングされていてもよい。
【0072】
負極合剤層において、負極活物質の含有率は、90.0質量%以上であることが好ましく、93.0質量%以上であることがより好ましく、95.0質量%以上であることがさらに好ましい。
【0073】
負極合剤層において、負極活物質の含有率は、他の成分の量を確保する観点から、98.0質量%以下であることが好ましく、97.0質量%以下であることがより好ましく、96.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0074】
負極合剤層が本開示の炭素材料を含んでいてもよい。
負極合剤層が上記炭素材料を含む場合、負極合剤層において、上記炭素材料の含有率は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。
【0075】
負極合剤層において、上記炭素材料の含有率は、3.0質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0076】
(導電助剤)
負極合剤層は、導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤としては、カーボンブラック、グラフェン等の炭素材料などが挙げられる。
【0077】
(バインダー)
負極合剤層は、バインダーを含んでいてもよい。バインダーの例としては、正極合剤層と同様にPVdF、PTFE等を用いることができるほか、スチレンブタジエンラバー(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)等を用いることができる。
【0078】
負極合剤層がバインダーを含む場合、バインダーの含有率は、バインダーとしての機能を得る観点から、1.0質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましい。
【0079】
負極合剤層において、バインダーの含有率は、負極の抵抗増加を抑制する観点から、5.0質量%以下であることが好ましく、4.5質量%以下であることがより好ましく、4.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0080】
(その他の成分)
負極合剤層は、上記のほか、分散剤、添加材等のその他の成分を含んでいてもよい。例えば、負極活物質を分散させるための各種分散剤、負極活物質を表面修飾するための薬剤等を含んでいてもよい。
【0081】
(外装材)
正極及び負極を収容する外装材としては、正極及び負極、必要に応じてセパレータ及び電解液、又は固体電解質等を収容可能であれば限定されない。外装材としては、例えば、通常市販されている電池パック、18650型の円筒型セル、アルミ包材でパックされた形態のもの等が挙げられ、外装材を自由に設計して用いることができる。
【0082】
(セパレータ)
二次電池は、正極と負極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、一般的な二次電池において用いることのできるものから、自由に選択することができ、例えばポリエチレン又はポリプロピレン製の微多孔フィルム等が挙げられる。SiO、Al等の粒子をフィラーとして混ぜたセパレータ、これらの粒子を表面に付着させたセパレータなども用いることができる。
【0083】
(電解液)
二次電池は、電解液を含んでいてもよい。電解液としては特に制限はなく、通常の二次電池において使用可能な電解液を好適に用いることができる。例えば、0.5mol/L~2.0mol/Lのリチウム塩が溶解した有機溶媒が使用可能である。
【0084】
リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiFSI等が挙げられる。
【0085】
有機溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)等が挙げられる。有機溶媒はここに挙げたもの及びそれ以外を適宜選択して混合して用いてよい。また、電解液の添加剤としては、ビニレンカーボネート(VC)、プロパンスルトン(PS)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)が挙げられる。添加剤を用いる場合、添加剤の含有率は、有機溶媒100質量%に対して、0.01質量%~20質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~5質量%であることがさらに好ましい。
【0086】
(イオン液体)
イオン液体を電解質として用いてもよく、イオン液体を前述の有機溶媒を組み合わせて用いてもよい。イオン液体としては、特に限定されず、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリニジウムカチオン、アンモニウムカチオン等のカチオンと、ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミドアニオン等のアニオンとの組み合わせが挙げられる。
【0087】
(固体電解質)
固体電解質を電解質として用いてもよい。固体電解質を用いる場合、セパレータが不要となり、正極及び負極を固体電解質で挟んだ形態の電池(例えば、全固体型リチウムイオン二次電池)を形成できる。
【0088】
固体電解質としては、ポリマー電解質、無機固体電解質等が挙げられる。ポリマー電解質としては、特に限定されず、例えばポリエチレンオキシド等のポリマーに上記リチウム塩を含浸したものが挙げられる。無機固体電解質としては、特に限定されず、例えばLi13Ti1.7Al0.3(PO、LiS-P等が挙げられる。
【0089】
本開示の二次電池は、スマートフォン、タブレットPC、携帯情報端末等の電子機器の電源;電動工具、掃除機、電動自転車、ドローン、電気自動車等の電動機の電源;燃料電池、太陽光発電、風力発電等によって得られる電力の貯蔵などに用いることができる。
【実施例
【0090】
以下、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例において得られた炭素材料の物性値は、以下に示す方法で測定した。
【0091】
<BET比表面積・全細孔容積・特定の相対圧での累計細孔容積(窒素吸着試験)>
測定装置としてNOVA4200e(カンタクローム・インスツルメンツ社製)を用い、サンプルセル(9mm×135mm)にサンプルの合計表面積が2m~5mとなるようにサンプルを入れ、300℃、真空条件下で1時間乾燥後、サンプル重量を測定し、測定を行った。測定用のガスには窒素を用いた。
【0092】
測定時の設定最低相対圧は0.005であり、設定最高相対圧は0.995とした。
炭素材料のBET比表面積は、相対圧0.1近傍、0.2近傍及び0.3近傍の3点の吸着等温線データからBET多点法にて算出した。
全細孔容積は、相対圧0.99前後2点の吸着等温線データから、直線近似で相対圧0.99での吸着量を算出し、窒素の標準状態の1モルの体積、液体窒素の密度、及び、窒素の原子量を用いて求めた。
相対圧が0.1537のときの累計細孔容積は、相対圧0.1537前後2点の吸着等温線データから、直線近似で相対圧0.1537での吸着量を算出し、全細孔容積と同様にして求めた。また、相対圧が0.00295のときの累計細孔容積を、相対圧が0.1537のときの累計細孔容積と同様にして求めた。
このとき、窒素液体の密度を0.808g/cm、窒素の標準状態(0℃、1atm)における1モルの体積を22.4133リットル、窒素の原子量を14.0067として計算した。
【0093】
相対圧が0.1537のときの累計細孔容積は、細孔の形状をシリンダー状と仮定するBJH法において、窒素の多分子吸着膜の平均厚みtとケルビン半径rの和(t+r)によってシリンダーの半径が表されるとし、さらに、前記tがハルゼイ(Halsey)式によって、そして前記rがケルビン(Kelvin)式によって表されるとすると、直径が2nm以下の細孔の容積の和であると考えられる。
本開示では、シリンダーの半径(t+r)を2倍した値を細孔の直径とし、当該直径としては小数点第1位の数値を四捨五入した値を採用する。
【0094】
ハルゼイ(Halsey)式は以下の式(1)で知られている。
t=0.354[-5/ln(p/p)]1/3・・・(1)
式(1)中、tは多分子吸着膜の平均厚み(nm)、pは圧力、pは飽和蒸気圧。よってp/pは相対圧である。
【0095】
ケルビン(Kelvin)式は、窒素吸着の場合は以下の式(2)となることが知られている。
=-0.953/ln(p/p)・・・(2)
式(2)中、rはケルビン半径(細孔の形状をシリンダー状と仮定したときの、シリンダーの中心軸から前記多分子吸着膜表面までの距離)で、単位はnmである。また、pは圧力、pは飽和蒸気圧。よってp/pは相対圧である。
【0096】
<d002(粉末X線回折)>
試料水平型多目的X線回折装置(Ultima IV、リガク社製)を用いて、学振法(最新の炭素材料実験技術(分析・解析編)、炭素材料学会編)に従い、シリコン粉末を内部標準としてd002の測定を実施した。
【0097】
<酸素含有率>
以下の条件で炭素材料の酸素含有率測定を行った。
炭素材料約20mgをニッケルカプセルに秤量し、下記酸素・窒素・水素分析装置の黒鉛坩堝中にセットした。不活性ガス中で加熱し、発生したCO及びCOを赤外線吸収法で定量した。
(測定条件)
酸素・窒素・水素分析装置:株式会社堀場製作所製 EMGA-920
キャリアガス:アルゴン
【0098】
<透過型電子顕微鏡(TEM)観察>
各炭素材料に含まれる炭素繊維をエタノールに分散させ、マイクログリッドですくいとって乾燥させたものを試料とした。前記試料のTEM観察を行った。
各炭素材料に含まれる炭素繊維はいずれも筒状の炭素六角網面が繊維の太さ方向に積層された構造を有することを以下のようにして確認した。まず、TEM-EDXによって炭素材料を観察し、炭素繊維の長手方向が確認できる像(以下、「TEM長手像」ともいう。)及び炭素繊維を長手方向に交わる方向で切ったときの断面が確認できる像(以下、「TEM断面像」ともいう。)を観察した。そして、TEM長手像において、炭素繊維の内部に長手方向に沿った複数の線が存在し、且つ、TEM断面像において、最大径の異なる複数の閉曲線が同心円状に存在することを確認した。以上により、炭素繊維における筒状の炭素六角網面が繊維の太さ方向に積層された構造を確認した。
装置名:JEM-ARM200F(日本電子株式会社製)
【0099】
<平均繊維径>
両面カーボンテープをSEM観察用の試料台に貼り付け、ミクロスパーテル半分程度の粉体をその上に散布した。これをSEM観察した。
20,000倍の倍率で観察し、複数枚のSEM写真を撮影した。直径を測定する繊維状炭素の本数は無作為に選んだ200とした。これら200本の算術平均をとることにより、平均繊維径を求めた。繊維状炭素の直径は、繊維状炭素が伸びている方向に垂直な方向の寸法である。1本の繊維状炭素につき、無作為に両端部ではない1か所の直径を測定して、これをその繊維状炭素の直径とした。
【0100】
<平均繊維長>
スクリュー管にエタノールを50mL入れ、ミクロスパーテル半分程度の粉体を入れ、超音波処理を15分行った。超音波処理後、アルミホイルの光沢がない面に分散液を散布し、風乾させた。風乾後、アルミホイルをSEM観察用の試料台に乗るサイズに切り、アルミホイル上の繊維状炭素を、両端が写る倍率で観察・撮影した。無作為に選んだ200本の繊維について繊維軸に沿った長さを測定し、その平均値を求めた。
【0101】
<圧密比抵抗、荷重-圧縮密度カーブ>
図11に示す測定治具を用いた。セル4は、平面積(1×4)cm、深さ10cmの樹脂製で、被測定物5に電流を流すための銅板製の電流端子3と、途中に電圧測定様端子1を備えている。セル4に一定量の試料を入れ、上部から圧縮ロッド2に力をかけ試料を圧縮する。試料に電流0.1Aを流し、嵩密度0.8g/cmの時点で容器底部から差し込まれた2つの電圧測定用端子1の2.0cm間の電圧を読み、以下の式から比抵抗Rを算出した。
R=(E/0.1)×D/2
式中、Rは比抵抗[Ω・cm]、Dは粉体の電流方向の断面積(深さ×幅)=10d[cm]、Eは端子間電圧[V]である。
本実施例では、嵩密度0.8g/cmに圧縮した時の比抵抗を圧密比抵抗とした。
【0102】
<電気化学的測定>
各実施例及び比較例の炭素材料を用いて、下記試験用電気化学セルを作製し、下記に示す条件で電気化学的測定を行った。
(試験用電気化学セルの作製)
正極活物質としてNMC811(Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O)96
質量部、実施例又は比較例の炭素材料2質量部、及びPVdF2.0質量部を秤量し、混練機で混合した。その後、適宜NMPを添加しながら混練機で混合し、粘度を調整した電極合剤層形成用組成物を調製した。
調製した電極合剤層形成用組成物を厚さ20μmのアルミニウム箔上に、ロールコーターを用いて塗工し、乾燥させた後、さらに真空乾燥して正極合剤層を備える試験用電極を作製した。目付量(単位面積当たりの電極合剤層の質量)は17mg/cmであり、試験用電極の寸法は20mm×20mmであった。
実施例又は比較例の試験用電極、対極及び参照極であるLi金属並びに、電解液を用いて試験用電気化学セルを作製した。電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比3:7で混合した溶媒中に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1M(mol/L)となるように溶解させて得られた溶液を用いた。
(電気化学的測定の条件)
作製した試験用電気化学セルを用い、以下に示す条件でリニアスイープボルタンメトリー(LSV)を行った。
-測定条件-
走査範囲:自然浸漬電位から+5.2V vs.Li/Liまで
走査速度:3mV/s
測定温度:45℃
【0103】
<炭素材料の作製>
以下に示すようにして実施例及び比較例の炭素材料を作製した。
【0104】
[実施例1]
製造例1(炭素材料の合成:生成炭素材料)
内径500mm、長さ2000mmの反応管とヒーターから構成される反応器を用意した。反応管上部には原料を供給するための2流体混合ノズルを配置し、反応管の下部にはコンベアを配置し、バグフィルターを設置したタンクに接続した。バグフィルターを通過した可燃性ガスは焼却炉で燃焼させた。
ベンゼンにフェロセン及び硫黄を溶解させ、原料液を調製した。原料液の組成は、ベンゼン96.4質量%、フェロセン3.5質量%及び硫黄0.1質量%であった。
キャリアガスを水素とし、調製した前記原料液を0.59g/NL(ベンゼン(g/分)/水素(NL/分))の条件で供給し、2流体ノズルで原料液を反応管内に噴霧し、1300℃に加熱した反応炉内を通過させて炭素繊維を合成した。7時間原料を供給した後、原料液及び水素の供給を停止し、窒素を供給し可燃性ガスを追い出した。この操作により生成した炭素材料を『生成炭素材料』と呼ぶことがある。
製造例2(炭素材料の焼成:焼成炭素材料)
製造例1により得られた生成炭素材料を焼成炉(内径120mm)にセットした。アルゴン雰囲気下で1000℃に加熱し、生成炭素材料に付着しているタール分を除去した。焼成後、この操作により得られた炭素材料を『焼成炭素材料』と呼ぶことがある。
製造例3(焼成炭素材料の黒鉛化:黒鉛化炭素材料)
製造例2により得られた焼成炭素材料を高周波加熱炉(内径120mm)にセットした。アルゴン雰囲気下、で2800℃に加熱して焼成炭素材料を黒鉛化した。この操作により得られた炭素材料を『黒鉛化炭素材料』と呼ぶことがある。黒鉛化処理後、回収した黒鉛化炭素材料をジェットミルタイプの粉砕機で粉砕を行った。また、得られた粉体を電磁分離機に通して磁選した。
以上のようにして炭素材料を得た。
【0105】
[実施例2]
粉体を最後に電磁分離機に通さなかったこと以外は実施例1と同様に操作を行い、炭素材料を作製した。
【0106】
[実施例3]
反応管の内径を500mmから370mmに変更し、ベンゼン流量/水素流量比を0.54(g/NL)とし、黒鉛化後の粉砕を行わなかったこと、粉体を最後に電磁分離機に通さなかったこと以外は実施例1と同様に操作を行い、炭素材料を作製した。
【0107】
[実施例4]
粉体を最後に電磁分離機に通さなかったこと以外は実施例1と同様に操作を行い、炭素材料を作製した。
【0108】
[比較例1]
実施例1において、黒鉛化工程及び黒鉛化処理後の粉砕を行わなかったこと以外は実施例1と同様に操作し、炭素材料を作製した。
【0109】
[比較例2]
実施例1において、黒鉛化時の温度を2800℃から2200℃へ変更し、黒鉛化処理後の粉砕を行わなかったこと以外は実施例1と同様に操作し、炭素材料を作製した。
【0110】
[比較例3]
実施例1において、黒鉛化処理後の粉砕を行わなかったこと以外は実施例1と同様に操作し、炭素材料を作製した。
【0111】
[比較例4]
反応時間を2時間としたこと、焼成温度を1300℃としたこと、黒鉛化処理後の粉砕を行わなかったこと以外は実施例1と同様に操作し、炭素材料を作製した。
【0112】
[比較例5]
反応管の内径を500mmから370mmに変更し、ベンゼン流量/水素流量比を0.54(g/NL)としたこと以外は実施例1と同様に操作し、炭素材料を作製した。
【0113】
実施例及び比較例にて得られた炭素材料に対し、前述の物性値の測定及び電気化学的測定を行った。結果を表1及び表2に示す。表1中、容積1は、窒素吸着試験において、相対圧=0.00295までに試料に吸着する窒素によって測定される累計細孔容積であり、直径が1nm以下の細孔の累計細孔容積を反映した値であると本発明者らは考えている。φ1は、全細孔容積に対する前記容積1の比率であり、容積2は、窒素吸着試験において、相対圧=0.1537までに試料に吸着する窒素によって測定される累計細孔容積であり、BJH法及び前記の仮定に基づき、直径が2nm以下の細孔の累計細孔容積であると考えられる。φ2は、全細孔容積に対する前記容積2の比率である。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
4.1V酸化電流は、その大部分が正極活物質であるNMC811からのリチウム脱離による電流であると考えられるため、電池特性の点では値が大きいことが望ましい。
また、4.5V酸化電流は、その大部分が正極活物質であるNMC811からのリチウム脱離による電流及び電解液の分解による電流の和であると考えられる。そのため、4.5V酸化電流は単に大きければよいというものではなく、4.5V酸化電流/4.1V酸化電流の値が小さい状態(つまり、電解液の分解の影響が少ない状態)で4.5V酸化電流が大きいことが望ましい。
表1及び表2に示すように、実施例1~4では比較例1~5と比較して4.1V酸化電流の値が大きかった。さらに、実施例1~4では4.5V酸化電流/4.1V酸化電流の値も比較例と同等以下の値となる傾向にあった。
【要約】
【課題】4.1V酸化電流の値が大きく、電池特性に優れる二次電池の作製が可能な炭素材料を提供する。
【解決手段】筒状の炭素六角網面が繊維の太さ方向に積層された構造を有する繊維状炭素を含む炭素材料であって、d002が0.3391nm以下であり、BET比表面積が10.5m/g以上18.0m/g未満であり、前記炭素材料の窒素吸着試験において、相対圧=0.00295までの累計細孔容積の全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)に対する比率をφ1とし、ハルゼイ式を用いたBJH法によるミクロ孔容積(相対圧=0.1537までの累計細孔容積)の全細孔容積(相対圧=0.99までの累計細孔容積)に対する比率をφ2としたとき、φ2/φ1は、1.350以上である、炭素材料。
【選択図】なし
図1