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特許7696540透明シート、合わせガラス、及びガラス積層板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-13
(45)【発行日】2025-06-23
(54)【発明の名称】透明シート、合わせガラス、及びガラス積層板
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20250616BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20250616BHJP
【FI】
C03C27/12 Z
B32B5/18
C03C27/12 D
C03C27/12 F
C03C27/12 Q
C03C27/12 R
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021101911
(22)【出願日】2021-06-18
(65)【公開番号】P2023000852
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】室伏 英伸
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/155551(WO,A1)
【文献】特開2009-299893(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155550(WO,A1)
【文献】特開2020-015631(JP,A)
【文献】特開2021-079549(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090686(WO,A1)
【文献】特開2020-015774(JP,A)
【文献】特開2021-004985(JP,A)
【文献】特開平10-324585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キセロゲル層と、
前記キセロゲル層を厚み方向に挟んで圧縮した状態で互いに貼合されている第1貼合層及び第2貼合層と、
を備え
前記キセロゲル層の厚み方向における圧縮率は、0.5%~20%である、
透明シート。
【請求項2】
前記第1貼合層、及び前記第2貼合層は、前記キセロゲル層に接しており、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)を含む、請求項に記載の透明シート。
【請求項3】
前記第1貼合層と前記第2貼合層は、可塑剤を含み、
前記第1貼合層と前記キセロゲル層の間に、前記第1貼合層から前記キセロゲル層への可塑剤の移行を抑える第1バリア層を備え、
前記第2貼合層と前記キセロゲル層の間に、前記第2貼合層から前記キセロゲル層への可塑剤の移行を抑える第2バリア層を備える、請求項に記載の透明シート。
【請求項4】
前記第1貼合層、及び前記第2貼合層は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB樹脂)を含む、請求項に記載の透明シート。
【請求項5】
前記第1貼合層と前記第2貼合層は、周縁全体で貼合されている、請求項1~のいずれか1項に記載の透明シート。
【請求項6】
前記第1貼合層と前記第2貼合層は、互いに対向する2辺で貼合されている、請求項1~のいずれか1項に記載の透明シート。
【請求項7】
第1ガラス板と、
前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の間に配置される中間シートと、
を備え、
前記中間シートは、請求項1~のいずれか1項に記載の透明シートである、合わせガラス。
【請求項8】
前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記中間シートとは、湾曲形状を有する、請求項に記載の合わせガラス。
【請求項9】
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の少なくとも1つが、無機ガラスを含む、請求項7又は8に記載の合わせガラス。
【請求項10】
前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の1つが、有機ガラスを含む、請求項に記載の合わせガラス。
【請求項11】
第1ガラス板と、
前記第1ガラス板に積層される請求項1~のいずれか1項に記載の透明シートと、
備える、ガラス積層板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明シート、合わせガラス、及びガラス積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の断熱性シートは、エアロゲルを含むエアロゲル層と、エアロゲル層の少なくとも一方の面に積層された熱可塑性樹脂を含む樹脂層との積層体からなる。この断熱性シートは、例えば合わせガラス用中間膜として用いられる。合わせガラス用中間膜を一対のガラス板の間に介在させることで、合わせガラスが得られる。
【0003】
特許文献2に記載の複層ガラスは、2枚の板ガラスと、2枚の板ガラスに挟持された平板状の透明多孔体、及び窓枠を備える。透明多孔体は、メチル化シリカキセロゲルを使用する。窓枠は、2枚の板ガラスの間隔を固定することで、透明多孔体を両側から締め付ける。
【0004】
特許文献3に記載の断熱用透明多孔体は、エアロゲルと、エアロゲルの表面の全部又は一部に透明樹脂による保護被膜と、を備える。保護被膜は、熱軟化性樹脂であるエチレン/酢酸ビニル共重合体に低密度ポリエチレンが積層されたフィルムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/155551号
【文献】特開2009-286685号公報
【文献】特開平10-324585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キセロゲル層は、脆く、2枚の板ガラスで挟んで固定する前に、ハンドリングによって割れてしまうことがあった。
【0007】
特許文献1及び3にはエアロゲル層と樹脂層とを積層することが記載されているが、エアロゲル層の強度が不十分であった。
【0008】
特許文献2では、2枚の板ガラスで挟んで固定する前に、キセロゲル層の強度を向上する技術については検討されていない。
【0009】
本発明の一態様は、キセロゲル層の強度を向上する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔1〕本発明の一態様に係る透明シートは、キセロゲル層と、前記キセロゲル層を厚み方向に挟んで圧縮した状態で互いに貼合されている第1貼合層及び第2貼合層と、を備える。
【0011】
〔2〕上記〔1〕に記載の透明シートであって、前記キセロゲル層の厚み方向における圧縮率は、0.5%~20%である。
【0012】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の透明シートであって、前記第1貼合層、及び前記第2貼合層は、前記キセロゲル層に接しており、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)を含む。
【0013】
〔4〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の透明シートであって、前記第1貼合層と前記第2貼合層は、可塑剤を含む。前記透明シートは、前記第1貼合層と前記キセロゲル層の間に、前記第1貼合層から前記キセロゲル層への可塑剤の移行を抑える第1バリア層を備える。前記透明シートは、前記第2貼合層と前記キセロゲル層の間に、前記第2貼合層から前記キセロゲル層への可塑剤の移行を抑える第2バリア層を備える。
【0014】
〔5〕上記〔4〕に記載の透明シートであって、前記第1貼合層、及び前記第2貼合層は、ポリビニルブチラール樹脂(PVB樹脂)を含む。
【0015】
〔6〕上記〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の透明シートであって、前記第1貼合層と前記第2貼合層は、周縁全体で貼合されている。
【0016】
〔7〕上記〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の透明シートであって、前記第1貼合層と前記第2貼合層は、互いに対向する2辺で貼合されている。
【0017】
〔8〕本発明の一態様に係る合わせガラスは、第1ガラス板と、前記第1ガラス板に対向する第2ガラス板と、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の間に配置される中間シートと、を備える。前記中間シートは、上記〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の透明シートである。
【0018】
〔9〕上記〔8〕に記載の合わせガラスであって、前記第1ガラス板と、前記第2ガラス板と、前記中間シートとは、湾曲形状を有する。
【0019】
〔10〕上記〔8〕又は〔9〕に記載の合わせガラスであって、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の少なくとも1つが、無機ガラスを含む。
【0020】
〔11〕上記〔10〕に記載の合わせガラスであって、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板の1つが、有機ガラスを含む。
【0021】
〔12〕本発明の一態様に係るガラス積層板は、第1ガラス板と、前記第1ガラス板に積層される上記〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の透明シートと、を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、キセロゲル層を厚み方向に圧縮することで、キセロゲル層の強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1実施形態に係るキセロゲル層の製造方法を示すフローチャートである。
図2図2は、第1実施形態に係る積層体と真空バックを示す断面図である。
図3図3は、図2に示す真空バックの内部を真空引きした状態の一例を示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る透明シートを示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態に係る積層体と一対のニップローラを示す断面図である。
図6図6は、第1実施形態に係る合わせガラスを示す断面図である。
図7図7は、合わせガラスの変形例を示す断面図である。
図8図8は、第2実施形態に係る積層体と真空バックを示す断面図である。
図9図9は、図8に示す真空バックの内部を真空引きした状態の一例を示す断面図である。
図10図10は、第2実施形態に係る透明シートを示す断面図である。
図11図11は、第2実施形態に係る積層体と一対のニップローラを示す断面図である。
図12図12は、透明シートの破断試験方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
先ず、本明細書及び特許請求の範囲における用語について説明する。「ゲル」とは、「湿潤ゲル」と「キセロゲル」との両方を含む。
【0025】
「湿潤ゲル」とは、三次元網目が膨潤剤によって膨潤したゲルを意味する。膨潤剤が水であるヒドロゲル、膨潤剤がアルコールであるアルコゲル、膨潤剤が有機溶媒であるオルガノゲルを包含する。
【0026】
「キセロゲル」とは、「国際純正応用化学連合(IUPAC)無機化学部会及び高分子部会高分子用語法小委員会」の「ゾル,ゲル,網目,及び無機有機複合材料の構造とプロセスに関する術語の定義(IUPAC勧告2007)」によれば「ゲルから膨潤剤を除去して形成された開放網目からなるゲル。」を意味する。超臨界乾燥によって膨潤剤を除去したものをエアロゲル、通常の蒸発乾燥によって膨潤剤を除去したものをキセロゲル、凍結乾燥によって膨潤剤を除去したものをクライオゲルとする分類法もあるが、本明細書及び特許請求の範囲においては、これらを総称してキセロゲルと称する。
【0027】
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0029】
先ず、図1を参照して、第1実施形態に係るキセロゲル層の製造方法について説明する。キセロゲル層の製造方法は、例えば、原料液の調液(ステップS1)と、ゲル化(ステップS2)と、溶媒置換(ステップS3)と、乾燥(ステップS4)と、を有する。
【0030】
なお、キセロゲル層の製造方法は図3に示す処理を全て含まなくてもよく、例えば原料液の溶媒が乾燥(ステップS4)に適したものである場合、溶媒置換(ステップS3)が実施されなくてもよい。また、キセロゲル層の製造方法は、図3に示す処理とは別の処理を含んでもよい。
【0031】
ステップS1では、原料液を調製する。原料液は、キセロゲルの種類に応じて選択される。キセロゲルの種類は、例えば(1)ポリシロキサンキセロゲルであるが、(2)ポリマーキセロゲル、及び(3)セルロースキセロゲルなどの多糖類キセロゲルから選択されてもよい。
【0032】
原料液は、例えばゲルの原料(以下、「ゲル原料」とも呼ぶ。)と、ゲル原料を溶かす溶媒とを含む。ゲル原料は、最終的に得られるキセロゲルの種類に応じて適宜選択される。溶媒は、例えば水又は有機溶媒である。有機溶媒としては、例えば、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等)、非プロトン性極性有機溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、ケトン(シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等)、又は炭化水素(n-ヘキサン、ヘプタン等)等が挙げられる。複数の有機溶媒を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
キセロゲルが(1)ポリシロキサンキセロゲルの場合、ゲル原料としては、例えば(1A)シラン化合物と(1B)触媒とを含むものが挙げられる。(1B)触媒は、ゲル化を均一に促進するためのものである。ゲル原料は、(1C)界面活性剤を更に含んでもよい。
【0034】
(1A)シラン化合物としては、アルコキシシラン、6員環含有骨格と加水分解性シリル基とを有する6員環含有シラン化合物、有機ポリマー骨格と加水分解性シリル基とを有するシリル基含有ポリマー等が挙げられる。
【0035】
アルコキシシランとしては、例えば、テトラアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)、モノアルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等)、ジアルキルジアルコキシシラン(ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等)、トリメトキシフェニルシラン、アルキレン基の両末端にアルコキシシリル基を有する化合物(1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(メチルジメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(メチルジエトキシシリル)ヘキサン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(メチルジエトキシシリル)エタン等)、ペルフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン(ペルフルオロポリエーテルトリエトキシシラン、ペルフルオロポリエーテルメチルジエトキシシラン等)、ペルフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン(ペルフルオロエチルトリエトキシシラン等)、ペンタフルオロフェニルエトキシジメチルシラン、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン、ビニル基を有するアルコキシシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン等)、アリル基を有するアルコキシシラン(アリルトリメトキシシラン、アリルジメトキシメチルシラン、アリルジエトキシメチルシラン等)、エポキシ基を有するアルコキシシラン(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等)、アクリロイルオキシ基を有するアルコキシシラン(3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、メタクリロイルオキシ基を有するアルコキシシラン(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等)等、又は上記のアルコキシシランのオリゴマーが挙げられる。複数の上記材料を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
6員環含有シラン化合物における6員環含有骨格は、例えば、イソシアヌル環、トリアジン環、又はベンゼン環などからなる6員環を有する有機骨格である。
【0037】
シリル基含有ポリマーにおける有機ポリマー骨格は、例えば、ポリエチレン鎖、ポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、又はポリカーボネート鎖などからなる鎖を有する有機骨格である。
【0038】
(1B)触媒としては、塩基触媒又は酸触媒が挙げられ、それらの水溶液であってもよい。塩基触媒としては、例えば、アミン(トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等)、尿素、アンモニア、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等が挙げられる。酸触媒としては、例えば、無機酸(硝酸、硫酸、塩酸等)、又は有機酸(ギ酸、シュウ酸、酢酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸等)が挙げられる。
【0039】
(1C)界面活性剤としては、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、プルロニック(登録商標)F127及びPE10500(BASF社商品名)、又はEH-208(日油社商品名)などが挙げられる。
【0040】
キセロゲルが(2)ポリマーキセロゲルの場合、ゲル原料としては、熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂等が挙げられる。
【0041】
熱可塑性樹脂としては、加熱すると溶媒に溶解し、冷却するとモノリス(多孔体)を形成できるものが挙げられ、具体的には、例えば、ポリメチルメタクリレート、又はポリスチレン等が挙げられる。
【0042】
硬化性樹脂としては、例えば、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、アクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は両方と光重合開始剤とを含むもの等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、アクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は両方と熱重合開始剤とを含むものなどの他に、レゾルシノールとホルムアルデヒドとの付加縮合物、又はメラミンとホルムアルデヒドとの付加縮合物等が挙げられる。
【0043】
キセロゲルが(3)多糖類キセロゲルの場合、ゲル原料としては、(3A)多糖類ナノファイバーと(3B)酸とを含むものが挙げられる。多糖類としては、セルロースの他に、キチン、キトサン、又はジェランガムなども挙げられる。
【0044】
(3A)多糖類ナノファイバーとしては、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)酸化セルロースナノファイバー等が挙げられる。(3A)多糖類ナノファイバーとしては、セルロースナノファイバーの他に、キチンナノファイバー、又はキトサンナノファイバーなども挙げられる。
【0045】
(3B)酸としては、前記無機酸又は前記有機酸が挙げられる。酸の代わりに、塩基も使用可能である。
【0046】
ステップS2では、原料液を容器の内部に注入し、原料液を含む原料液層を作製し、作製した原料液層を容器の内部でゲル化する。ゲル化によって、原料液の全体で架橋が進み、高分子の三次元骨格構造が形成される。ゲル化は、熟成を含む。ゲル化によって、湿潤ゲル層が得られる。
【0047】
ゲル原料が(1A)シラン化合物と(1B)触媒とを含むものである場合、ゲル化は、加熱によって行われる。シラン化合物は、酸触媒などで加水分解され、シラノール基(Si-OH)を有するゾルになる。ゾルが加熱されると、シラノール基同士が分子間で脱水縮合反応しSi-O-Si結合を形成し、原料液がゲル化される。
【0048】
なお、原料液層をゲル化させる手段は、加熱器には限定されず、ゲル原料の種類に応じて適宜選択される。
【0049】
例えば、ゲル原料が熱可塑性樹脂である場合、原料液層をゲル化させる手段は、冷却器である。
【0050】
ゲル原料が光硬化性樹脂である場合、原料液層をゲル化させる手段は、光源である。光源は、原料液層に対して紫外線等の光を照射し、光硬化性モノマーを硬化し、原料液層をゲル化する。
【0051】
ゲル原料が熱硬化性樹脂である場合、原料液層をゲル化させる手段は、加熱器である。
【0052】
ゲル原料が多糖類ナノファイバーである場合、多糖類ナノファイバーは酸触媒又は塩基触媒に接触すると、短時間でゲル化する。従って、原料液は、多糖類ナノファイバーを含み、酸触媒又は塩基触媒を含まなくてよい。酸触媒又は塩基触媒は、原料液層に対して、上方からシャワー状に供給されてよい。この場合、原料液層をゲル化させる手段は、原料液層に対して上方から酸触媒又は塩基触媒を供給する供給器である。
【0053】
ゲル化の最終段階では、硬化収縮が生じるので、その硬化収縮によって湿潤ゲル層の外周が容器の側壁から剥離されてもよい。
【0054】
ステップS3では、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒を別の溶媒に置換する。湿潤ゲル層は、微細な多孔質体であり、内部に溶媒を含む。溶媒置換(ステップS3)は、乾燥(ステップS4)の前に実施され、乾燥時に溶媒の表面張力によって湿潤ゲル層が収縮するのを抑制し、湿潤ゲル層の微細構造が破損するのを抑制する目的で実施される。
【0055】
溶媒置換では、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒を、ゲル化に適した溶媒(つまり、原料液の溶媒)から、乾燥に適した溶媒に置換する。置換後の溶媒は、乾燥方法に応じて適宜選択される。乾燥方法としては、超臨界乾燥、凍結乾燥、又は常圧乾燥が用いられる。
【0056】
超臨界乾燥は、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒を、超臨界流体に置換する。超臨界乾燥に適した溶媒として、例えばメタノール、エタノール、又はイソプロピルアルコールなどが用いられる。超臨界流体として、一般的に、超臨界状態の二酸化炭素ガスが用いられる。超臨界乾燥は、密閉式の高圧容器の内部で実施される。
【0057】
凍結乾燥は、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒を凍結した後で、真空中で蒸発させる。通常これを、昇華と呼ぶ。凍結乾燥に適した溶媒として、水、tert-ブチルアルコール、シクロヘキサン、1,4-ジオキサン、又はフッ素系溶媒等が用いられる。凍結乾燥は、密閉式の真空容器の内部で実施される。
【0058】
常圧乾燥は、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒を、常圧下で蒸発させる。溶媒蒸発に伴う毛細管力による湿潤ゲル層の微細骨格の収縮力を小さくすることが重要なので、常圧乾燥に適した溶媒としては、表面張力の小さな溶媒、例えばヘキサン若しくはヘプタンなどの低分子量の脂肪族炭化水素系の溶媒、又はフッ素系溶媒が用いられる。常圧乾燥は、常圧で行われるので、密閉式の容器が不要である。
【0059】
溶媒置換は、溶媒の沸騰によって湿潤ゲル層の微細構造が破損するのを抑制すべく、溶媒の沸点以下の温度で実施される。但し、溶媒の置換効率を高めるべく、溶媒を沸点以下の温度で加熱してもよい。加熱温度は、例えば40℃~100℃である。
【0060】
溶媒の置換回数は、本実施形態では1回であるが、複数回であってもよい。つまり、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒は、原料液の溶媒から、原料液の溶媒とは異なる組成の第1溶媒に置換され、更に原料液の溶媒及び第1溶媒とは異なる組成の第2溶媒に置換されてもよい。
【0061】
原料液の溶媒と第2溶媒との相溶性が低い場合には、置換効率が悪くなるので、その間に一旦、第1溶媒での置換を導入することで、原料液の溶媒から第2溶媒への置換にかかる時間を短縮できる。第1溶媒としては、原料液の溶媒と第2溶媒との両方に対し高い相溶性を有するものが用いられる。
【0062】
なお、原料液の溶媒が乾燥に適したものである場合、溶媒置換は不要である。
【0063】
ステップS4では、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒を除去する。湿潤ゲル層の乾燥方法としては、上記の通り、超臨界乾燥、凍結乾燥、又は常圧乾燥が用いられる。これらの中でも、常圧乾燥は、密閉式の容器が不要である点で優れている。
【0064】
常圧乾燥は、溶媒の沸騰によって湿潤ゲル層の微細構造が破損するのを抑制すべく、溶媒の沸点以下の温度で実施される。但し、溶媒の除去効率を高めるべく、湿潤ゲル層を沸点以下の温度で加熱してもよい。湿潤ゲル層の乾燥温度は、例えば室温~100℃である。
【0065】
常圧乾燥では、湿潤ゲル層に対して風を送ることで、湿潤ゲル層の内部に含まれる溶媒の蒸発を促進できる。常圧乾燥で蒸発させた溶媒は、回収され、廃棄又は必要に応じてリサイクルされる。
【0066】
乾燥(ステップS4)によって、キセロゲル層が得られる。キセロゲル層の厚みは、例えば0.1mm~20mm、好ましくは0.5mm~10mmである。キセロゲル層は、キセロゲルを含む。キセロゲルは、多孔質なモノリスであって、透明性と断熱性とを有するものであってよい。透明性と断熱性を有するキセロゲル層は、例えば、自動車用窓ガラスや建物用窓ガラスにおける透明断熱材として用いられる。
【0067】
キセロゲル層の用途が透明断熱材である場合、キセロゲル層の波長500nmにおける透過率は、厚み1mm換算で70%以上が好ましく、80%以上が好ましく、90%以上が好ましい。透過率は、日本工業規格(JIS R 3106:1998)に準拠して測定される。透過率を測定する装置としては、例えば島津製作所社製の分光光度計(Solid Spec-3700DUV)が用いられる。
【0068】
キセロゲル層の用途としては、例えば、断熱材の他に、フィルター、吸着剤、吸音材、吸湿材、吸油材、又は分離膜が挙げられる。
【0069】
次に、図2図4を参照して、第1実施形態に係る透明シート20の製造方法について説明する。先ず、図2に示すように、第1離型フィルム41と、第1貼合層25と、キセロゲル層21と、第2貼合層26と、第2離型フィルム42とが、この順番で重ね合わされ、積層体40が作製される。積層体40は、例えば真空バック50の内部に挿入される。
【0070】
第1離型フィルム41は、真空バック50と第1貼合層25の貼合を防止し、真空バック50から取り出された後で第1貼合層25から剥離される。第2離型フィルム42は、真空バック50と第2貼合層26の貼合を防止し、真空バック50から取り出された後で第2貼合層26から剥離される。なお、積層体40は第1離型フィルム41及び第2離型フィルム42を含まなくてもよく、真空バック50の内面に離型剤が塗布されてもよい。第1離型フィルム41の代わりに第1ガラス板が用いられ、第2離型フィルム42の代わりに第2ガラス板が用いられてもよい。この場合、図3に示す工程によって、合わせガラスを作製することが可能である。
【0071】
図3に示すように、真空バック50の内部を減圧しながら真空バック50を外部から加熱する。真空バック50の内部の気圧は、大気圧を基準として、例えば-100kPa~-65kPaである。真空バック50の加熱温度は、例えば70℃~110℃である。その後、真空バック50から取り出した積層体40を、100℃~150℃で加熱しながら、0.3MPa~1.3MPaの圧力で熱圧着する。熱圧着には、例えばオートクレーブが用いられる。
【0072】
図4に示すように、透明シート20が得られる。透明シート20は、第1貼合層25と、キセロゲル層21と、第2貼合層26と、をこの順番で備える。第1貼合層25と第2貼合層26が、キセロゲル層21を厚み方向に挟んで圧縮した状態で、互いに貼合されている。なお、第1貼合層25と第2貼合層26の間に配置されるキセロゲル層21の数は、複数であってもよい。複数のキセロゲル層がタイルのように面状に並べて配列されてもよい。
【0073】
第1貼合層25と第2貼合層26は、周縁全体に亘って貼合されてもよいし、互いに対向する2辺のみで貼合されてもよい。キセロゲル層21を厚み方向に圧縮した状態に維持できればよい。キセロゲル層21は、引張応力に比べて、圧縮応力に対して高い耐性を有する。キセロゲル層21に予め圧縮応力を与えておけば、ハンドリング時に引張応力の発生を抑制できる。よって、キセロゲル層21の強度を向上でき、ハンドリング性を向上できる。
【0074】
キセロゲル層21の厚み方向における圧縮率CRは、例えば0.5%~20%である。、圧縮率CRは、CR=(TB-TA)/TB×100の式で求められる。TBは圧縮前の厚みであり、TAは圧縮後の厚みである。
【0075】
圧縮率CRが0.5%以上であれば、圧縮応力が大きく、強度が高い。圧縮率CRが20%以下であれば、キセロゲル層21の微細構造を維持でき、キセロゲル層21の白化、又はクラックを抑制できる。圧縮率CRは、好ましくは1%以上であり、より好ましくは5%以上である。
【0076】
第1貼合層25と第2貼合層26は、特に限定されないが、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)、又はポリビニルブチラール樹脂(PVB樹脂)を含む。PVB樹脂は、EVA樹脂に比べて、耐貫通性に優れており、自動車のフロントガラスなどに適している。但し、PVB樹脂は、EVA樹脂とは異なり、可塑剤を含む。可塑剤は、柔軟性を高めるための添加剤であるが、キセロゲル層21に移行すると、キセロゲル層21の微細構造を破壊し、キセロゲル層21の白化、又はクラックを生じさせてしまう。第1貼合層25と第2貼合層26は、キセロゲル層21に接する場合、可塑剤を含まないことが好ましい。可塑剤を含まない熱可塑性樹脂の具体例としては、例えばEVA樹脂が挙げられる。
【0077】
図4に示す透明シート20は、図5に示すように一対のニップローラ51を用いて作製してもよい。一対のニップローラ51は、それぞれ、ローラ52と、ローラ52の軸方向一端に設けられる第1フランジ53と、ローラ52の軸方向他端に設けられる第2フランジ54と、を有する。
【0078】
一対のローラ52が、キセロゲル層21を圧縮する。一対の第1フランジ53が、第1貼合層25と第2貼合層26の側端同士を貼合する。一対の第2フランジ54が、第1貼合層25と第2貼合層26の別の側端同士を貼合する。第1貼合層25と第2貼合層26は、キセロゲル層21を厚み方向に挟んで圧縮した状態に維持し、キセロゲル層21の強度を向上する。
【0079】
ニップローラ51は、第1貼合層25と第2貼合層26を加熱すべく、不図示のヒータを内部に有してもよい。
【0080】
なお、図5に示す積層体40は、第1離型フィルム41及び第2離型フィルム42を含むが、含まなくてもよく、ニップローラ51の外周面に離型剤が塗布されてもよい。また、詳しくは後述するが、ローラ52は、その外周面にエンボスパターンを有し、そのエンボスパターンを第1貼合層25及び第2貼合層26の少なくとも1つに転写してもよい。
【0081】
次に、図6を参照して、第1実施形態に係る合わせガラス30について説明する。合わせガラス30は、第1ガラス板31と、第1ガラス板31に対向する第2ガラス板32と、第1ガラス板31と第2ガラス板32の間に配置される中間シート33と、を備える。中間シート33は、例えば、図4に示す透明シート20である。なお、透明シート20は、第1ガラス板31の端面、及び第2ガラス板32の端面からはみ出す部分が切除されてもよい。
【0082】
透明シート20は、キセロゲル層21の片側に第1貼合層25を備え、キセロゲル層21の反対側に第2貼合層26を備える。第1貼合層25は、例えば加熱によって接着性を示し、キセロゲル層21と第1ガラス板31とを接着する。第2貼合層26は、例えば加熱によって接着性を示し、キセロゲル層21と第2ガラス板32とを接着する。透明シート20を介して第1ガラス板31と第2ガラス板32を接着することで、合わせガラス30が得られる。
【0083】
透明シート20は、均一な厚みを有するが、不均一な厚みを有してもよい。例えば、ヘッドアップディスプレイの画像が合わせガラス30に投影される場合、画像が二重に見えてしまうのを抑制すべく、透明シート20の厚みは下側から上側に向かうほど厚くなってもよい。この場合、透明シート20はくさび形に形成され、そのくさび角度は例えば1.0mrad以下である。
【0084】
第1ガラス板31と、第2ガラス板32は、同じ材質でも、異なる材質でもよい。第1ガラス板31と第2ガラス板32の材質は、無機ガラスでも、有機ガラスでもよい。第1ガラス板31と第2ガラス板32の少なくとも1つは、無機ガラスを含むことが好ましい。残りの1つは、無機ガラスでも、有機ガラスでもよい。
【0085】
有機ガラスとしては、例えば、アクリル樹脂、又はポリカーボネート樹脂が挙げられる。無機ガラスとしては、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、又はホウ珪酸ガラス等が挙げられる。無機ガラスを板状に成形する方法は、特に限定されないが、例えばフロート法などである。
【0086】
第1ガラス板31と、第2ガラス板32は、未強化ガラス(生ガラス)であってよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したガラスであり、風冷強化処理、化学強化処理等の強化処理が施されていないものである。未強化ガラスは、衝撃を受けて割れたときに、網状若しくは蜘蛛の巣状のひび割れ等を生じにくく、視界を確保できる。
【0087】
第1ガラス板31と、第2ガラス板32とは、同じ厚みでも、異なる厚みでもよい。第1ガラス板31が第2ガラス板32の車外側に設けられる場合、第1ガラス板31の厚みは第2ガラス板32の厚みよりも厚くてもよい。第1ガラス板31の厚みは、例えば1.1mm以上3.5mm以下である。第2ガラス板32の厚みは、0.5mm以上2.3mm以下である。合わせガラス30全体の厚みは、2.3mm以上8.0mm以下である。
【0088】
合わせガラス30は、透明シート20と同様に製造される。例えば、先ず、第1ガラス板31と、透明シート20と、第2ガラス板32とをこの順番で有する積層体を作製する。次に、積層体を真空バックの内部に挿入し、真空バックの内部を減圧しながら真空バックを外部から加熱する。その後、真空バックから取り出した積層体を、例えばオートクレーブなどで熱圧着する。これにより、合わせガラス30が得られる。
【0089】
透明シート20は、熱圧着前に、第1ガラス板31に接する面、及び第2ガラス板32に接する面の少なくとも1つに、エンボスパターンを有してもよい。例えば、ローラ52が外周面にエンボスパターンを有しており、そのエンボスパターンを透明シート20に転写してもよい。透明シート20のエンボスパターンは、真空バックの内部を減圧する際に排気効率を向上し、合わせガラス30に気泡が噛み込むのを抑制する。
【0090】
合わせガラス30は、例えば、自動車の窓ガラスとして用いられる。合わせガラス30は、図7に示すように、全体的に又は部分的に車外側に凸に湾曲していてもよい。合わせガラス30は、車両の前後方向及び上下方向に湾曲した複曲であるが、前後方向又は上下方向にのみ湾曲した単曲であってもよい。
【0091】
湾曲形状を有する合わせガラス30を製造する場合、第1ガラス板31と第2ガラス板は予め曲げ成形される。積層体は、熱圧着前に、湾曲形状を有する第1ガラス板31と、平らな透明シート20と、湾曲形状を有する第2ガラス板32と、をこの順番で含む。その結果、熱圧着時に、透明シート20が曲げ加工され、キセロゲル層21が曲げ加工される。
【0092】
本実施形態によれば、曲げ加工前にキセロゲル層21に圧縮応力を与えてあるので、曲げ加工時に引張応力がキセロゲル層21に生じるのを抑制できる。よって、曲げ加工時にキセロゲル層21が割れるのを抑制できる。
【0093】
なお、図7では第1ガラス板31と中間シート33と第2ガラス板32とで合わせガラス30が構成されるが、第1ガラス板31と中間シート33でガラス積層板が構成されてもよい。つまり、ガラス積層板は、中間シート33の片側のみに、ガラス板を有してもよい。下記の第2実施形態について同様である。
【0094】
次に、図8図10を参照して、第2実施形態に係る透明シート20について説明する。本実施形態の透明シート20も、合わせガラス30の中間シートとして使用可能である。以下、第1実施形態と第2実施形態の相違点について主に説明する。
【0095】
図8に示すように、第1離型フィルム41と、第1貼合層25と、第1バリア層22と、キセロゲル層21と、第2バリア層23と、第2貼合層26と、第2離型フィルム42とが、この順番で重ね合わされ、積層体40が作製される。積層体40は、例えば真空バック50の内部に挿入される。
【0096】
図9に示すように、真空バック50の内部を減圧しながら真空バック50を外部から加熱する。その後、真空バック50から取り出した積層体40を、例えばオートクレーブで熱圧着する。これにより、図10に示すように、透明シート20が得られる。
【0097】
透明シート20は、第1貼合層25と、第1バリア層22と、キセロゲル層21と、第2バリア層23と、第2貼合層26と、をこの順番で備える。第1貼合層25と第2貼合層26が、キセロゲル層21を厚み方向に挟んで圧縮した状態で、互いに貼合されている。なお、第1貼合層25と第2貼合層26の間に配置されるキセロゲル層21の数は、複数であってもよい。複数のキセロゲル層がタイルのように面状に並べて配列されてもよい。
【0098】
第1貼合層25と第2貼合層26は、周縁全体に亘って貼合されてもよいし、互いに対向する2辺のみで貼合されてもよい。キセロゲル層21を厚み方向に圧縮した状態に維持できればよい。キセロゲル層21は、引張応力に比べて、圧縮応力に対して高い耐性を有する。キセロゲル層21に予め圧縮応力を与えておけば、ハンドリング時に引張応力の発生を抑制できる。よって、キセロゲル層21の強度を向上でき、ハンドリング性を向上できる。
【0099】
第1バリア層22は、第1貼合層25が可塑剤を含む場合に用いられる。第1バリア層22は、第1貼合層25とキセロゲル層21の間に配置され、第1貼合層25からキセロゲル層21への可塑剤の移行を抑える。可塑剤がキセロゲル層21の微細構造を破壊するのを第1バリア層22によって抑制しつつ、第1貼合層25に可塑剤を含めることで、合わせガラス30の耐貫通性を向上できる。可塑剤を含む熱可塑性樹脂の具体例としては、例えばPVB樹脂が挙げられる。
【0100】
第2バリア層23は、第2貼合層26が可塑剤を含む場合に用いられる。第2バリア層23は、第2貼合層26とキセロゲル層21の間に配置され、第2貼合層26からキセロゲル層21への可塑剤の移行を抑える。可塑剤がキセロゲル層21の微細構造を破壊するのを第2バリア層23によって抑制しつつ、第2貼合層26に可塑剤を含めることで、合わせガラス30の耐貫通性を向上できる。
【0101】
図10に示す透明シート20は、図11に示すように一対のニップローラ51を用いて作製してもよい。図11に示す積層体40は、第1離型フィルム41及び第2離型フィルム42を含むが、含まなくてもよく、ニップローラ51の外周面に離型剤が塗布されてもよい。また、ローラ52は、その外周面にエンボスパターンを有し、そのエンボスパターンを第1貼合層25及び第2貼合層26の少なくとも1つに転写してもよい。
【実施例
【0102】
以下、実験データについて説明する。後述する例1が比較例であり、後述する例2及び例3が実施例である。
【0103】
(キセロゲル層)
先ず、原料液であるゾル液を作製した。具体的には、メチルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)を40g、テトラメトキシシラン(東京化成工業社製)を10g、5ミリモル/Lの酢酸水溶液を100g、尿素を30g、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業社製)を10g、マグネット撹拌子の入ったポリ容器に入れ、25℃にて800rpmの回転数で60分間撹拌し、アルコキシシランを加水分解させてゾル化し、ゾル液を作製した。
【0104】
次に、12cm角のポリスチレン製容器に厚みが10mm程度になるようにゾル液を流し入れ、容器に蓋を付けた状態で、容器を60℃オーブン中で4日間加熱して、湿潤ゲル層を得た。
【0105】
次に、湿潤ゲル層に含まれる溶媒を置換した。具体的には、水をメタノールに置換する1次置換と、メタノールをイソプロパノールに置換する2次置換と、イソプロパノールをヘプタンに置換する3次置換とを実施した。1次置換では、湿潤ゲル層をメタノールに8時間浸漬することを3回繰り返し、1回目と2回目の間と、2回目と3回目の間でメタノールを交換した。2次置換、及び3次置換も、1次置換と同様に実施した。
【0106】
次に、3次置換の済んだ湿潤ゲル層を、50℃のオーブンに入れ、24時間常圧乾燥することで、キセロゲル層として、透明なポリシロキサンゲルを得た。ポリシロキサンゲルの厚みは9.4mmであった。その後、ポリシロキサンゲルを切断し、長さ110mm、幅30mm、厚み9.4mmの長方形の試験片を3つ作製した。3つの試験片について、外見上の差異は認められなかった。各試験片の厚みと透過率を、表1に示す。
【0107】
(例1)
例1では、1つの試験片を、2枚のEVAフィルムで挟み、さらに外側から2枚の離型フィルムで挟むように、積層体を作製した。各EVAフィルムとしては、東ソー社製の商品名メルセンG(厚み0.38mm)を用いた。各離型フィルムとしては、AGC社製のETFEフィルムを用いた。
【0108】
次に、作製した積層体を真空包装用バッグ(明和産商社製 耐熱バリアラミネート規格袋 400×500mm R-4050 H)に入れて減圧吸引し、各層の界面に残留する空気を脱気し、封印した。これを、大気圧下で、110℃で30分間加熱して、透明シートを得た。
【0109】
(例2)
例2では、別の試験片を用いて積層体を作製し、作製した積層体を真空包装用バックに封印した後、オートクレーブを用いて0.3MPaの圧力を加えた状態で、110℃で15分間加熱した以外、例1と同様にして、透明シートを得た。
【0110】
(例3)
例3では、残りの試験片を用いて積層体を作製し、作製した積層体を真空包装用バックに封印した後、オートクレーブを用いて1.0MPaの圧力を加えた状態で、110℃で15分間加熱した以外、例1と同様にして、透明シートを得た。
【0111】
(評価)
貼合後のキセロゲル層の厚みは、透明シートの長手方向中央の厚みT1(図12参照)と、透明シートの長手方向一端の厚みT2(図12参照)との差分として求めた。
【0112】
貼合後のキセロゲル層の圧縮率CRは、CR=(TB-TA)/TB×100の式を用いて求めた。TBは貼合前のキセロゲル層の厚みであり、TAは貼合後のキセロゲル層の厚みである。
【0113】
貼合後の透明シートの透過率は、貼合前のキセロゲル層の透過率と同様に測定した。
【0114】
貼合後の透明シートの強度は、図12に示す方法で評価した。具体的には、一対のU字状の治具100で透明シート101の長手方向両端をつかんで、透明シート101を湾曲させ、キセロゲル層が破断した時の弦長dと矢高hから、曲率半径rをニュートン・ラフソン法で算出した。
【0115】
評価結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
表1から明らかなように、キセロゲル層を圧縮しなかった例1に比べて、キセロゲル層を圧縮した例2及び例3では、キセロゲル層が曲げ破断した時の曲率半径rが小さく、キセロゲル層の強度の大幅な向上が認められた。
【0117】
以上、本発明に係る透明シート、合わせガラス、及びガラス積層板について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0118】
20 透明シート
21 キセロゲル層
25 第1貼合層
26 第2貼合層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12