(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-13
(45)【発行日】2025-06-23
(54)【発明の名称】電磁波遮蔽シート
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20250616BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20250616BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20250616BHJP
H01Q 1/52 20060101ALI20250616BHJP
【FI】
H05K9/00 W
H01B1/24 B
C01B32/168
H01Q1/52
(21)【出願番号】P 2022166107
(22)【出願日】2022-10-17
【審査請求日】2024-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2022028018
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晋士
(72)【発明者】
【氏名】塩原 利夫
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-218859(JP,A)
【文献】特開2016-074594(JP,A)
【文献】特表2017-529298(JP,A)
【文献】特開2014-189932(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101163390(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01B 1/00-1/24
C01B 32/00-32/991
H01Q 1/00-1/10;1/27-1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ1mm以下で、通気度が0.5cm
3/cm
2・s以下、比抵抗が0.005Ω・cm以下のカーボンナノチューブ不織布に樹脂を含浸した電磁波遮蔽シート。
【請求項2】
カーボンナノチューブ不織布の繊維間の隙間に無機材料を含有する請求項1に記載の電磁波遮蔽シート。
【請求項3】
含浸した樹脂が未硬化のものである請求項1又は2に記載の電磁波遮蔽シート。
【請求項4】
含浸した樹脂が硬化されたものである請求項1又は2に記載の電磁波遮蔽シート。
【請求項5】
含浸した樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1
又は2に記載の電磁波遮蔽シート。
【請求項6】
含浸した樹脂の含浸量がカーボンナノチューブ不織布100質量部に対して10~200質量部である請求項1
又は2に記載の電磁波遮蔽シート。
【請求項7】
カーボンナノチューブ不織布をカップリング剤で処理したものである請求項1
又は2に記載の電磁波遮蔽シート。
【請求項8】
含浸した樹脂が熱硬化性樹脂である請求項1
又は2に記載の電磁波遮蔽シート。
【請求項9】
熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、アリル化エポキシ樹脂、アリル化ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂、シクロペンタジエン・スチレン共重合樹脂、シリコーン樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂の群から選択される1種以上のものである請求項8に記載の電磁波遮蔽シート。
【請求項10】
熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂の群から選択される1種以上のものである請求項5に記載の電磁波遮蔽シート。
【請求項11】
無機材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、シリカ、酸化亜鉛、アルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミニウム、カーボン短繊維及びアルミナ短繊維の群から選択される1種以上である請求項2に記載の電磁波遮蔽シート。
【請求項12】
無機材料が、銅、鉄、銀若しくは金、又はこれら金属で表面コートされた樹脂粒子である請求項2に記載の電磁波遮蔽シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波遮蔽シートに関するものであり、具体的には、厚さ1mm以下のカーボンナノチューブ不織布に樹脂を含浸及び/又は積層した硬化、または未硬化のシートで且つミリ波やテラヘルツ波に対する優れた高強度な電磁波遮蔽性能を有するシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁波の高周波数帯域(1~300GHz)を利用する5Gや6Gなどの高速通信が話題となっている。電磁波を通信に利用するワイヤレス機器が増加しており、増え続ける電磁波は、電子機器が周囲からの電磁波に干渉を受けて誤動作をしたり、自ら発する電磁波により情報漏洩してしまう原因となる。また、急速に進展している自動車などの自動運転を推進するためには低周波の電磁波からミリ波までの様々な電磁環境において電磁波の送受信が正しく行われなければならない。そこで、電磁波遮蔽対策が重要な技術課題となっており、マイクロ波・ミリ波・テラヘルツ波に対して優れた電磁波遮蔽性能を持った電磁波遮蔽体材料が望まれている。また、電磁波利用の高度化により、電磁波遮蔽材料の薄膜化、軽量化、大面積化など新しい機能性に対するニーズも高まっている。
【0003】
電磁波遮蔽材料として金属材料の他、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなど、導電性高分子、誘電性酸化物などを用いた電磁波遮蔽技術が数多く提案されている。中でも炭素によって作られるカーボンナノチューブは有望な電磁波遮蔽材料として注目されている。
カーボンナノチューブを用いた電磁波遮蔽材料としては樹脂中にカーボンナノチューブを分散させたペースト材料(特許文献1)や、水溶液に分散させた水性塗料(特許文献2)などがあるが、いずれも取り扱いが難しいうえに、電磁波遮蔽性能が十分でなく、実用に耐えるレベルではない。使用しているカーボンナノチューブは微細な繊維状のため、比表面積が大きく、多量に樹脂に分散できないことから、カーボンナノチューブを用いた電磁波遮蔽材料は電気伝導性も不十分である。
また、荷電紡糸で形成されたカーボンナノチューブのシートを用いた電磁波遮蔽材料(特許文献3)があるが、強度が弱く、取り扱い難い問題点がある。
カーボンナノチューブのシートにヒドロニウムイオンや塩酸などのプロトン化剤を添加し、さらに強磁性材料である鉄やコバルトなどを加えて伝導性を向上させた電磁波遮蔽材料(特許文献4)が開示されているが、プロトン化剤が強酸性の化合物であり取り扱いが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-144000号公報
【文献】特開2012-174833号公報
【文献】特開2008-218859号公報
【文献】特許第6182176号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、ミリ波やテラヘルツ波に対する優れた電磁波遮蔽性能を有する高強度な電磁波遮蔽シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、厚さ1mm以下で、通気度が0.5cm3/cm2・s以下、比抵抗が0.005Ω・cm以下の導電性の高いカーボンナノチューブ不織布に樹脂を含浸及び/又は積層した硬化、または未硬化の電磁波遮蔽シートにより、優れた電磁波遮蔽性能が得られることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の電磁波遮蔽シートを提供する。
【0007】
[1]
厚さ1mm以下で、通気度が0.5cm3/cm2・s以下、比抵抗が0.005Ω・cm以下のカーボンナノチューブ不織布に樹脂を含浸した電磁波遮蔽シート。
[2]
カーボンナノチューブ不織布の繊維間の隙間に無機材料を含有する[1]に記載の電磁波遮蔽シート。
[3]
含浸した樹脂が未硬化のものである[1]又は[2]に記載の電磁波遮蔽シート。
[4]
含浸した樹脂が硬化されたものである[1]又は[2]に記載の電磁波遮蔽シート。
[5]
含浸した樹脂が熱可塑性樹脂である[1]~[4]のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽シート。
[6]
含浸した樹脂の含浸量がカーボンナノチューブ不織布100質量部に対して10~200質量部である[1]~[5]のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽シート。
[7]
カーボンナノチューブ不織布をカップリング剤で処理したものである[1]~[6]のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽シート。
[8]
含浸した樹脂が熱硬化性樹脂である[1]~[4]のいずれか1項に記載の電磁波遮蔽シート。
[9]
熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、アリル化エポキシ樹脂、アリル化ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂、シクロペンタジエン・スチレン共重合樹脂、シリコーン樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂の群から選択される1種以上のものである[8]に記載の電磁波遮蔽シート。
[10]
熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂の群から選択される1種以上のものである[5]に記載の電磁波遮蔽シート。
[11]
無機材料が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、シリカ、酸化亜鉛、アルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミニウム、カーボン短繊維及びアルミナ短繊維の群から選択される1種以上である[2]に記載の電磁波遮蔽シート。
[12]
無機材料が、銅、鉄、銀若しくは金、又はこれら金属で表面コートされた樹脂粒子である[2]に記載の電磁波遮蔽シート。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電磁波遮蔽シートは、厚さ1mm以下で、通気度が0.5cm3/cm2・s以下、比抵抗が0.005Ω・cm以下の導電性の高いカーボンナノチューブ不織布に樹脂を含浸及び/又は積層した硬化、または未硬化の高強度な電磁波遮蔽シートにより、優れた電磁波遮蔽性能が得られる。したがって、本発明の電磁波遮蔽シートは、高速大容量通信対応機器や車載用途等の用途に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
<カーボンナノチューブ不織布>
本発明で使用するカーボンナノチューブ不織布の厚さは1mm以下であって、直径は50nm以下で、長さが2mm以下の単層から多層のカーボンナノチューブ繊維が絡み合ったものである。この不織布は、通気度を0.5cm3/cm2・s以下とし、比抵抗を0.005Ω・cm以下、望ましくは0.003Ω・cm以下とした導電性の高いものが好ましい。
カーボンナノチューブ不織布はメタンガスを用いたプラズマ炉で紡糸したカーボンナノチューブ繊維や、カーボンナノチューブを溶解して細孔より紡糸したカーボンナノチューブ繊維を絡み合わせたものである。
【0011】
通気度はカーボンナノチューブの絡み合いや厚さをカーボンナノチューブ不織布への押圧などにより調整できる。本発明において、通気度とは、JIS R 3420に準じて測定した、フラジール形試験機を用いたクロスの通気性の値を示すこととする。通気度を0.5cm3/cm2・s以下、望ましくは0.1cm3/cm2・s以下、より望ましくは0.05cm3/cm2・s以下のカーボンナノチューブ不織布は、電気伝導性も良好で広範囲の周波数(10kHz~100GHz)で優れた電磁波遮蔽性能を持っている。しかし、カーボンナノチューブ不織布自体の強度が不足しているため容易に破れやすく、且つ基材との接着性がないことから、このままでは使いづらい。
本発明はこれらの不具合を解消するため、カーボンナノチューブ不織布に樹脂を含浸及び/又は積層させて半硬化させたBステージ状電磁波遮蔽シートや硬化した強度のある電磁波遮蔽シートに関するものである。前記カーボンナノチューブ不織布に含浸及び/又は積層される樹脂は、下記の熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂が好ましい。
【0012】
<熱硬化性樹脂>
本発明で使用する熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アリル化エポキシ樹脂、アリル化ポリフェニレンエーテル樹脂、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂、シクロペンタジエン・スチレン共重合樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。なかでも下記一般式(1)及び一般式(2)で示されるビスマレイミド樹脂が耐熱性、低弾性、強靭性及び接着性に優れていることから好ましい。
【0013】
一般式(1)で示されるビスマレイミド樹脂
【化1】
(前記式(1)中、Aは独立して芳香族環または脂肪族環を含む4価の有機基を示す。Bは2価のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族環を有する炭素数6から18のアルキレン鎖である。nは1~10の数を表す。mは0~10の数を表す。-C
36H
70-はダイマー酸骨格由来の炭化水素基を示す。)
【0014】
一般式(2)で示されるビスマレイミド樹脂
【化2】
【0015】
ここで言う、ダイマー酸とは、植物系油脂などの天然物を原料とする炭素数18の不飽和脂肪酸の二量化によって生成された、炭素数36のジカルボン酸を主成分とする液状の二塩基酸である。ダイマー酸骨格は単一の骨格ではなく、複数の構造を有し、何種類かの異性体が存在する。ダイマー酸の代表的なものは直鎖型(a)、単環型(b)、芳香族環型(c)、多環型(d)という名称で分類される。
本明細書において、ダイマー酸骨格とは、このようなダイマー酸のカルボキシ基を1級アミノメチル基で置換した構造を有するダイマージアミンから誘導される基をいう。すなわち、一般式(1)又は(2)で示されるビスマレイミド樹脂は、ダイマー酸骨格として、下記(a)~(d)で示される各ダイマー酸において、2つのカルボキシ基がメチレン基で置換された基を有するものが好ましい。
また、マレイミド化合物中のダイマー酸骨格由来の炭化水素基は、水添反応により、該ダイマー酸骨格由来の炭化水素基中の炭素-炭素二重結合が低減した構造を有するものが、硬化物の耐熱性や信頼性の観点からより好ましい。
なお、一般的に、ダイマー酸には、植物系油脂などの天然物を原料とすることに起因して、三量体(トリマー酸)が含まれる場合もあるが、ダイマー酸及びトリマー酸由来の炭化水素基のうちダイマー酸由来の炭化水素基が占める割合が例えば95質量%以上、とダイマー酸由来の炭化水素基の割合が高いがことが、誘電特性に優れ、熱時の粘度が下がりやすく成形性に優れ、吸湿の影響も少なくなる傾向にあることから好ましい。
本明細書において、ダイマー酸(トリマー酸)骨格とは、このようなダイマー酸(トリマー酸)のカルボキシ基を1級アミノメチル基で置換した構造を有するダイマージアミン(トリマートリアミン)から誘導される基をいう。
【化3】
【0016】
代表的なビスマレイミド樹脂としては、SLK-2000シリーズ(信越化学工業(株)製)、SLK-6895(信越化学工業(株)製)、SLK-3000(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。また、熱硬化性のシクロペンタジエン・スチレン共重合樹脂も高耐熱性樹脂として使用可能である。
熱硬化性樹脂は、それぞれ単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、一般式(1)及び(2)で示されるビスマレイミド樹脂に上記熱硬化性樹脂や下記熱可塑性樹脂を混合して使用してもよい。
【0017】
<反応開始剤>
前記ビスマレイミド樹脂には、マレイミド化合物の架橋反応や、マレイミド基と反応しうる反応基との反応を開始、促進するために反応開始剤を添加することができる。
反応開始剤としては架橋反応を促進するものであれば特に制限されるものではなく、イミダゾール類、有機リン系化合物、第3級アミン類、第4級アンモニウム塩類、三弗化ホウ素アミン錯体、オルガノホスフィン類、オルガノホスホニウム塩等のイオン触媒;ジアリルパーオキシド、ジアルキルパーオキシド、パーオキシドカーボネート、ヒドロパーオキシド等の有機過酸化物;アゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤などが挙げられる。
これらの中でも、ビスマレイミド樹脂単独での反応を促進したり、後述するビスマレイミド樹脂以外の、マレイミド基と反応しうる反応性基を有する熱硬化性樹脂が有する反応基がマレイミド基、アルケニル基、及び(メタ)アクリル基のような炭素-炭素二重結合を有する基である場合は、有機過酸化物及びラジカル重合開始剤が好ましい。有機過酸化物としては、ジクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシベンゾエート、ジベンゾイルパーオキシド、ジウラロイルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド等が挙げられる。
また、ビスマレイミド樹脂以外の、マレイミド基と反応しうる反応性基を有する熱硬化性樹脂が有する反応基がエポキシ基、水酸基又は酸無水物基の場合は、イミダゾール類及び第3級アミン類など塩基性の化合物や有機リン系化合物が好ましい。マレイミド基の単独重合にイミダゾール又はアミン類を使用することも可能であるが、イミダゾールや有機リン系化合物の場合は非常に高温を必要とし、アミン類はポットライフが非常に短くなる場合がある。
【0018】
反応開始剤は、ビスマレイミド樹脂100質量部に対して0.05~10質量部配合することが好ましく、0.1~5質量部配合することがより好ましい。また、組成物中にその他の熱硬化性樹脂を配合する場合は、ビスマレイミド樹脂及びその他の熱硬化性樹脂成分の総和100質量部に対して0.05~10質量部、特に0.1~5質量部の範囲内で配合することが好ましい。上記範囲を外れると、ビスマレイミド樹脂組成物の成形時に硬化が非常に遅くなったり速くなったりするおそれがあるため好ましくない。また、得られた硬化物の耐熱性及び耐湿性のバランスも悪くなるおそれがある。
反応開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂などが代表例として例示される。特に溶媒に可溶性の熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
樹脂の数平均分子量(Mn)は500~100000が好ましく、800~50000がより好ましく、1000~10000が更に好ましい。
本明細書中で言及する数平均分子量(Mn)とは、下記条件で測定したGPCによるポリスチレンを標準物質とした数平均分子量を指すこととする。
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.35mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperHZ4000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ3000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ2000(4.6mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:5μL(濃度0.2質量%のTHF溶液)
【0021】
樹脂の不織布に対する含浸量及び積層量は、カーボンナノチューブ不織布100質量部に対し10~200質量部が好ましい。
【0022】
<無機材料>
本発明の電磁波遮蔽シートに、カーボンナノチューブ繊維が絡み合っている隙間に導電性の高い無機材料、例えば、無機粉体、無機繊維や金属粒子を詰め込むことで電気伝導性をより一層高めることができるとともに10~300GHzの周波数帯域での電磁波遮蔽性能を向上させることが可能となる。
無機粉体としてはカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、シリカ、酸化亜鉛、アルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミ、カーボン短繊維及びアルミナ短繊維などが代表的なものである。また、金属粒子としては、銅、鉄、銀、金、またはこれら金属で表面コートした樹脂粒子を添加することもできる。
金属粒子及び/又は無機粉体は、ビスマレイミド樹脂に分散させてカーボンナノチューブ不織布に積層及び/又は含浸させてもよい。
【0023】
また、電磁波遮蔽シートの熱伝導性をより高めるために、シリカ、酸化亜鉛、アルミナ、ボロンナイトライド、窒化アルミニウム、カーボン短繊維、アルミナ短繊維、石英繊維、ガラス繊維などの無機粒子や無機繊維を使用してもよい。これらを使用することで電磁波遮蔽シートの熱伝導性を50~80W/mKとすることができる。
【0024】
無機材料の形状は特に限定されないが、球状に近いものが容易に充填できることから望ましく、平均粒径も0.5μm~30μmのものが放熱性や電気伝導性の面から望ましいものである。
【0025】
無機材料の不織布への散布方法は、任意の方法で散布することができるが、例えば、無機材料をプレス装置やラミネーターにより不織布へ詰め込む方法や、無機材料を任意の溶媒へ分散させ、分散液をスプレーにより不織布へ吹きかけた後に、溶媒を乾燥して除去する方法、またはこれらの方法を組み合わせることなどが挙げられる。
分散液の溶媒には、任意の溶媒を用いることができるが、揮発性の高い溶媒が好まれ、例えば、水、エタノールやIPAなどのアルコール、アセトン、トルエン、炭化水素系溶媒、シリコーン系溶媒などが挙げられる。
分散液の濃度は、無機材料100質量部に対し、0.1~100質量部が好ましい。
【0026】
無機材料の不織布に対する散布量は、カーボンナノチューブ不織布100質量部に対し0.01~100質量部が好ましい。
【0027】
<電磁波遮蔽シート製造方法>
本発明の電磁波遮蔽シートは、任意の方法で製造が可能だが、ビスマレイミド樹脂を溶媒(揮発性)に溶解して低粘度化し、カーボンナノチューブ不織布に含浸させる湿式法や、前記樹脂を加熱することで低粘度化し、カーボンナノチューブ不織布に含浸させる溶融圧延法、ビスマレイミド樹脂ワニスをコーターなどでフィルム化した後に、カーボンナノチューブ不織布へプレスやラミネーターにより転写・含浸させる転写法などが挙げられるが、いずれかで含浸したカーボンナノチューブ不織布を作製し、次いで必要により樹脂のフィルムを加圧積層して半硬化のBステージ化あるいは硬化して電磁波遮蔽シートを製造する。
【0028】
湿式法では前記樹脂を含浸させたあとで溶媒を除去して樹脂含浸の電磁波遮蔽シートを作製する。電磁波遮蔽シートに溶媒が残存した場合、成形時に悪影響を与え、作業効率が悪化するなどの問題点がある。このため、電磁波遮蔽シートに残存する溶媒量としては1質量%以下、望ましくは0.5質量%以下である。
溶媒の除去方法としては使用する溶媒の沸点にもよるが、80~150℃で10分から1時間程度の熱処理が好ましく、この熱処理により溶媒の除去を容易に達成できる。
【0029】
溶融圧延法では溶媒を取り除く工程が特に必要がなく、作業効率も比較的良好であるなど、様々な点から有利である。溶融圧延法ではカーボンナノチューブ不織布をバーなどで必要幅に拡幅させて、フィルム化した樹脂(熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂)を離型紙で上下から挟み込んだ後、カーボンナノチューブ不織布の進行方向に対してほぼ同一の高さに設置された数対の加熱金属ロールでニップすることによりカーボンナノチューブ不織布に熱硬化性樹脂及び/又は熱可塑性樹脂を含浸させて、電磁波遮蔽シートを製造することができる。溶融圧延法では、ニップ圧は線圧であるために十分な含浸性を得るためにニップロールの本数を増やすことが好ましい。また、加熱金属ロールを使用せずに加熱可能な加圧多段プレスのような成型プレスで加圧成形してもよい。
【0030】
転写法では、基材フィルムに樹脂ワニスをコーティングし、溶媒を乾燥させ樹脂フィルムを得た後、カーボンナノチューブ不織布の両面を樹脂フィルムで挟み込み、ラミネーターやプレスにより圧着し、樹脂フィルムをカーボンナノチューブ不織布へ転写・含浸させる方法である。
基材フィルムは任意のフィルムを用いることができるが、樹脂フィルムが剥離しやすい、PETフィルム、PEフィルム、PPフィルム、テフロンフィルム、アフレックスフィルムなどが好ましい。
上記基材フィルムは必要に応じて、表面をコロナ処理やプラズマ処理、またはシリコーン処理など、各種表面処理を行うことができる。
樹脂ワニスに用いる溶媒は任意の溶媒を用いることができるが、揮発性の高い溶媒が好まれ、例えば、エタノールやIPAなどのアルコール、アセトン、トルエン、キシレン、アニソール、炭化水素系溶媒、シリコーン系溶媒などが挙げられる。
樹脂ワニスの濃度は、樹脂100質量部に対し、0.1~200質量部が好ましい。
樹脂ワニスを基材フィルムにコーティングする方法としては、任意の方法を用いることができるが、スピンコーターやバーコーターを用いることが容易であるため好ましい。
基材フィルム上の樹脂フィルムを乾燥させる温度としては、熱硬化性樹脂が反応しない温度が好ましく、30℃~120℃が好ましい。
また、カーボンナノチューブ不織布の両面を樹脂フィルムで挟み込み、ラミネーターやプレスにより圧着し、樹脂フィルムをカーボンナノチューブ不織布へ転写させる際には、必要に応じて加圧や加温することができる。
【0031】
熱硬化性樹脂を使用したカーボンナノチューブ不織布の電磁波遮蔽シートとしては、完全に樹脂が硬化した電磁波遮蔽シートと半硬化状態の電磁波遮蔽シートを製造することができる。
硬化した電磁波遮蔽シートは熱硬化性樹脂の化学構造や含浸量、積層量、硬化方法を選択することにより、硬くて強靭な電磁波遮蔽シートから柔軟で形状に追随できる電磁波遮蔽シートを作製することができる。
半硬化状態の電磁波遮蔽シートは筐体や通信機器などを収納した容器の形状に合わせて電磁波遮蔽シートを加圧・加熱圧着することで筐体や容器に接着させることができる。
本発明の電磁波遮蔽シートは小面積から大面積のシートサイズが自由に製造できることから、電磁波遮蔽のための面積に限界はない。
熱可塑性樹脂を使用した場合も、熱硬化性樹脂を使用した場合と同様に、電磁波遮蔽シートを作製することができる。
【0032】
本発明では、カーボンナノチューブ不織布に樹脂を含浸させる際に、カップリング剤でカーボンナノチューブ不織布の表面を表面処理することにより、カーボンナノチューブ不織布と樹脂が密着し、電磁波遮蔽シートの耐久性を向上させることができる。
カップリング剤としてはシランカップリング剤やチタンやアルミニウムなどのアルコキシド系化合物も使用することが出来る。なかでもシランカップリング剤が好ましく、好ましいシランカップリング剤としては、例えば一般式Y-Si-X3で表される化合物を挙げることができる。ここで、Yは例えばアミノ基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、ビニル基、メタクリル基、メルカプト基等の官能基を有する有機基、Xはアルコキシ基等の加水分解性の官能基である。
一般式Y-Si-X3で表される化合物としては、具体的には、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノベンジルトリエトキシシラン、γ-アミノフェニルトリエトキシシランなどを代表例として挙げることができる。
【0033】
かかるカップリング剤の使用量としては、ビスマレイミド樹脂100質量部に対して0.5~20質量部の範囲が適当である。
本発明の電磁波遮蔽シートは、10~300GHzの周波数帯における電磁波遮蔽特性が50dB以上、好ましくは60dB以上である。
【0034】
本電磁波遮蔽シートは、ポリエステルなどの熱可塑性フィルムを保護フィルムとして、電磁波遮蔽シート上下面にラミネートして積層体としても構わない。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
実施例及び比較例で使用した各材料を以下に示す。また、本発明における物性値および特性値は、下記の方法にて測定した。
【0036】
(1)比抵抗
比抵抗は下記式により計算した。
比抵抗(Ω・cm)=表面抵抗率(Ω/□)×厚さ(cm)
表面抵抗率は、ロレスタ-GX MCP-T700(低抵抗 抵抗率計、日東精工アナリテック社製)及びハイレスタ-UX MCP-HT800(高抵抗 抵抗率計、日東精工アナリテック社製)を使用して測定した。その測定値を用いて比抵抗を算出した。
【0037】
(2)電磁波遮蔽特性
電磁波遮蔽特性(SE)は次式で定義される。このSE値が大きければ遮蔽効果が高いことを示す。
【数1】
【0038】
100GHzにおける上記計算式から得られた値及び、その値を下記の基準で定性的判定を行った。
SEが50dB以上:○
SEが50dB未満:×
【0039】
(3)引張り強さ
実施例及び比較例で作製した電磁波遮蔽シートの引張り強さを、測定方法:JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.3引張強さ及び伸び率」に準拠して測定した。
【0040】
1.カーボンナノチューブ不織布
(1)CNTM30 Tortech社製
厚さ62μm、通気度0.01cm3/cm2・s、比抵抗1.46E-03(Ω・cm)
(2)CNTM10 Tortech社製
厚さ40μm、通気度0.04cm3/cm2・s、比抵抗2.44E-03(Ω・cm)
(3)カーボンナノチューブ(比較例用)
厚さ40μm、通気度0.7cm3/cm2・s、比抵抗8.32E-03(Ω・cm)
【0041】
2.無機材料
(1)カーボンナノチューブ粉体;ZEONANO SG101 ゼオンナノテクノロジー(株)製(平均粒径100μm)
(2)カーボンブラック粉体;デンカブラック デンカ(株)製(平均粒径35μm)
(3)銀粒子;AgC-HWQ 福田金属箔粉工業(株)製(平均粒径1.5μm)
【0042】
<熱硬化性樹脂・熱可塑性樹脂>
(1)ビスマレイミド樹脂
・(A-1):下記式で示される直鎖アルキレン基含有ビスマレイミド樹脂(SLK-3000、信越化学工業(株)製、数平均分子量5200)
【化4】
n≒3(平均値)
-C
36H
70-はダイマー酸骨格由来の炭化水素基を示す。
・(A-2):下記式で示される直鎖アルキレン基含有ビスマレイミド樹脂(SLK-6895、信越化学工業(株)製、数平均分子量689)
【化5】
(2)シリコーン樹脂
・(A-3):硬化型シリコーン樹脂組成物(50%トルエン溶液)(PLF-100D、信越化学工業(株)製、数平均分子量5000)
(3)フッ素樹脂
・(A-4):熱可塑性フッ素樹脂(ダイニオンTHV 500GZ、スリーエムジャパン(株)製)
【実施例1】
【0043】
上記式1で示すビスマレイミド樹脂(A-1)(SLK-3000、信越化学工業(株)製)100質量部と硬化触媒(ジクミルパーオキサイド(商品名:「パークミルD」)、日油(株)製)1質量部とを含む厚さ30μm樹脂フィルムを調製した。
厚さ62μm、通気度が0.01cm3/cm2・sのカーボンナノチューブ不織布CNTM30の両面を、80℃で1分間上記樹脂フィルムをラミネートし、次いで150℃で15分プレスして含浸し、半硬化の固形シートを調製した。
その後、150℃で4時間加熱して電磁波遮蔽シート1を作製した。電磁波遮蔽シート1の遮蔽特性、機械的強度を表1に示す。
【実施例2】
【0044】
実施例1のCNT不織布CNTM30の代わりに、厚さ40μm、通気度が0.04cm3/cm2・sのCNTM10を用いた以外は実施例1と同様にして、電磁波遮蔽シート2を作製した。電磁波遮蔽シート2の遮蔽特性、機械的強度を表1に示す。
【実施例3】
【0045】
実施例1で使用したCNTM30の表面に、導電性粉体として5質量%カーボンナノチューブ粉体エタノール分散液(ZEONANO SG101、ゼオンナノテクノロジー(株)製)を両面にスプレー散布し溶媒を100℃で10分間乾燥した後、実施例1と同様に樹脂フィルムでラミネートし、次いで150℃で15分間プレスして含浸し、半硬化の固形シートを調製した。
その後、150℃で4時間加熱硬化して電磁波遮蔽シート3を作製した。電磁波遮蔽シート3の遮蔽特性、機械的強度を表1に示す。
【実施例4】
【0046】
実施例3と同様に、導電性粉体として5質量%カーボンブラックエタノール分散液(デンカブラック、デンカ(株)製)を両面にスプレー散布し溶媒を100℃で10分間乾燥した後、樹脂フィルムでラミネートし、次いで150℃で15分間プレスして含浸し、半硬化の固形シートを調製した。
その後、150℃で4時間加熱硬化して電磁波遮蔽シート4を作製した。電磁波遮蔽シート4遮蔽特性、機械的強度を表1に示す。
【実施例5】
【0047】
実施例3と同様に、導電性粉体として10質量%銀粒子トルエン分散液(AgC-HWQ、福田金属箔粉工業(株)製、平均粒径1.5μm)を両面にスプレー散布し溶媒を100℃で10分間乾燥した後、樹脂フィルムでラミネートし、次いで150℃で15分間プレスして含浸し、半硬化の固形シートを調製した。
その後、150℃で4時間加熱硬化して電磁波遮蔽シート5を作製した。電磁波遮蔽シート5の遮蔽特性、機械的強度を表1に示す。
【実施例6】
【0048】
上記式2で示すビスマレイミド樹脂(A-2)(SLK-6895、信越化学工業(株)製)100質量部と硬化触媒(ジクミルパーオキサイド;商品名「パークミルD」、日油(株)製)1質量部とを含むビスマレイミド樹脂組成物100質量部に、カーボンナノチューブ粉体(ZEONANO SG101、ゼオンナノテクノロジー(株)製)を5質量部添加し、自転公転ミキサーを用いて2000rpmで5分間混合した。得られた混合物を用いて、バーコーターにより厚さ30μm樹脂フィルム状に成形し、100℃で10分間加熱乾燥した。以下、実施例1と同様にして、カーボンナノチューブ不織布CNTM30を用いた半硬化の固形シートを調製し、加熱硬化して電磁波遮蔽シート6を作製した。電磁波遮蔽シート6の遮蔽特性、機械的強度を表1に示す。
【実施例7】
【0049】
実施例1のビスマレイミド樹脂(A-1)の代わりに、シリコーン樹脂(A-3)を用いて実施例1と同様にして、電磁波遮蔽シート7を作製した。電磁波遮蔽シート7の遮蔽特性、機械的強度を表1に示す。
【実施例8】
【0050】
フッ素樹脂(A-4)を、200℃でプレスにより厚さ30μmの樹脂フィルム状に成形した。カーボンナノチューブ不織布CNTM30の両面を上記フッ素樹脂フィルムで挟み、200℃で30分間プレスにより圧着させて、電磁波遮蔽シート8を作製した。電磁波遮蔽シート8の遮蔽特性、機械的強度を表1に示す。
【比較例1】
【0051】
前記実施例1と同様にして、実施例1のビスマレイミド樹脂組成物からなる厚さ30μm樹脂フィルムを調製した。該樹脂フィルムで、厚さ40μm、通気度が0.7cm3/cm2・s、比抵抗8.32E-03(Ω・cm)のカーボンナノシートの両面を、80℃で1分間ラミネートし、次いで150℃で15分間プレスして半硬化の固形シートを調製した。その後、150℃で4時間加熱して電磁波遮蔽シート9を作製した。電磁波遮蔽シート9の遮蔽特性、機械的強度を表2に示す。
【比較例2】
【0052】
カーボンナノチューブ不織布CNTM30単体を電磁波遮蔽シート10とした。電磁波遮蔽シート10の遮蔽特性、機械的強度を表2に示す。
【比較例3】
【0053】
カーボンナノチューブ不織布CNTM10単体を電磁波遮蔽シート11とした。電磁波遮蔽シート11の遮蔽特性、機械的強度を表2に示す。
【比較例4~6】
【0054】
実施例1、実施例7、実施例8で使用した厚さ30μmのビスマレイミド樹脂フィルム、シリコーン樹脂フィルムおよびフッ素樹脂フィルム単体を、それぞれ電磁波遮蔽シート12~14とした。電磁波遮蔽シート12~14の遮蔽特性、機械的強度を表2に示す。
【比較例7】
【0055】
実施例6で使用した厚さ30μmのカーボンナノチューブ粉体含有ビスマレイミド樹脂フィルム単体を電磁波遮蔽シート15とした。電磁波遮蔽シート15の遮蔽特性、機械的強度を表2に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
実施例1~2、7~8及び比較例2~7より、有機樹脂とカーボンナノチューブ不織布を組み合わせた電磁波遮蔽シートは、電磁波遮蔽特性を低下させることなく、引張り強さが向上し、信頼性の高い電磁波遮蔽シートとなった。
実施例1及び比較例1より、通気度が所定の範囲内の有機樹脂とカーボンナノチューブ不織布からなる電磁波遮蔽シートは、引張り強さが優れ、また電磁波遮蔽性の高い電磁波遮蔽シートとなった。
実施例3~6及び比較例7より、有機樹脂と無機粉体、金属粒子及びカーボンナノチューブ不織布を組み合わせた電磁波遮蔽シートは、カーボンナノチューブ不織布を含まない有機樹脂と無機粉体、金属粒子からなる電磁波遮蔽シートに比べ、引張り強さが優れ、また電磁波遮蔽性の高い電磁波遮蔽シートとなった。
【0059】
以上のように本発明の厚さ1mm以下で通気度が0.5cm3/cm2・s以下、比抵抗が0.005Ω・cm以下のカーボンナノチューブ不織布に樹脂を含浸した電磁波遮蔽シート、特に、カーボンナノチューブ繊維の繊維間の隙間に無機材料(無機粉体及び/又は金属粒子)を含有することで、ミリ波やテラヘルツ波に対する優れた電磁波遮蔽性能を有する電磁波遮蔽シートとなった。