(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物、二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物の製造方法、研磨方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20250617BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20250617BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20250617BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550M
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
H01L21/304 621D
H01L21/304 622B
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
(21)【出願番号】P 2021002204
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-11-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】篠田 敏男
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-216582(JP,A)
【文献】特開2008-181954(JP,A)
【文献】特開2019-071413(JP,A)
【文献】特開2019-029660(JP,A)
【文献】特表2016-538359(JP,A)
【文献】特開2020-158752(JP,A)
【文献】特開2020-037669(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169602(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の両方を研磨する用途に用いられる研磨用組成物であって、
アミノシランカップリング剤で化学的表面修飾されたカチオン化コロイダルシリカと、
アニオン性界面活性剤と、を含み、
pHの値が3より大きく、かつ6より小さく、
前記窒化ケイ素膜に対する前記二酸化ケイ素膜の研磨速度の選択比が
51.47以上87.61以下である、
二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物。
【請求項2】
前記アニオン性界面活性剤は、ドデシル硫酸Na、ヘキサデシルメチル(3-スルホプロピル)ヒドロキシド分子内塩、1-ドデカンスルホン酸Na、ビス-(2-エチルへキシル)スルホコハク酸Na及びポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートアミン塩から選ばれる一種以上を含む、請求項
1に記載の二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物。
【請求項3】
前記アミノシランカップリング剤は、アミノトリアルコキシシランを含む、請求項1
又は2に記載の二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物。
【請求項4】
前記アミノシランカップリング剤は、アミノプロピルトリエトキシシランを含む、請求項1から
3のいずれか1項に記載の二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物。
【請求項5】
前記カチオン化コロイダルシリカのゼータ電位は、30mV以上である、請求項1から
4のいずれか1項に記載の二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物。
【請求項6】
前記アニオン性界面活性剤は、硫酸基、スルホン酸基及びリン酸基から選ばれる一種以上の官能基を有する有機酸塩を含む、請求項1
、3から
5のいずれか1項に記載の二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物。
【請求項7】
前記アニオン性界面活性剤は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を含む、請求項1
、3から
6のいずれか1項に記載の二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物。
【請求項8】
水溶性高分子をさらに含む、請求項1から
7のいずれか1項に記載の二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物。
【請求項9】
前記水溶性高分子は、平均分子量が100以上150000以下であるポリビニルアルコールを含む、請求項
8に記載の二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物。
【請求項10】
前記水溶性高分子は、平均分子量が200以上150000以下であるポリエチレングリコールを含む、請求項
8又は
9に記載の二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか1項に記載の二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物の製造方法であって、
アミノシランカップリング剤で化学的表面修飾されたカチオン化コロイダルシリカと、アニオン性界面活性剤と、pH調整剤とを液状媒体中で混合する工程、を含む、二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜研磨用の研磨用組成物を用いて、基板上に設けられた研磨対象物を研磨する工程を含み、
前記研磨対象物は二酸化ケイ素膜及び窒化ケイ素膜の両方を含む、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板表面の多層配線化に伴い、半導体装置(デバイス)を製造する際に、半導体基板を研磨して平坦化する、いわゆる、化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing;CMP)技術が利用されている。CMPは、シリカやアルミナ、セリア等の砥粒、防食剤、界面活性剤などを含む研磨用組成物(スラリー)を用いて、半導体基板等の研磨対象物(被研磨物)の表面を平坦化する方法である。研磨対象物(被研磨物)は、シリコン、ポリシリコン、シリコン酸化膜(酸化ケイ素)、シリコン窒化物や、金属等からなる配線、プラグなどである。
【0003】
半導体基板をCMPにより研磨する際に使用する研磨用組成物については、これまでに様々な提案がなされている。
例えば、特許文献1には、「正のζ電位を有するコロイダルシリカ粒子と、アニオン性界面活性剤とを含み、且つpHの値が1.5~7.0の範囲である研磨液を用いて、ポリシリコン又は変性ポリシリコンを含む第1層と、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸化炭化ケイ素、及び酸窒化ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種を含む第2層とを少なくとも有して構成される被研磨体を研磨する」ことが記載されている。特許文献1において、コロイダルシリカ粒子は、負の電荷を有するコロイダルシリカの表面に、カチオン性化合物が吸着することで、正のζ電位を示すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
研磨対象物のなかで、特に、テトラエトキシシラン((Si(OC2H5)4))を用いて形成される二酸化ケイ素膜(以下、TEOS膜)の研磨速度に関して、従来の研磨用組成物には、改善の余地があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、TEOS膜の研磨速度を向上させることが可能な研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討を進めた。その結果、アミノシランカップリング剤で化学的表面修飾されたカチオン化コロイダルシリカと、アニオン性界面活性剤と、を含み、pHの値が3より大きく、かつ6より小さい研磨用組成物を使用することにより、TEOS膜の研磨速度を高める(向上させる)ことを見出し、発明を完成させた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、TEOS膜の研磨速度を向上させることが可能な研磨用組成物、研磨用組成物の製造方法、研磨方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施形態の研磨用組成物は、アミノシランカップリング剤で化学的表面修飾されたカチオン化コロイダルシリカと、アニオン性界面活性剤と、を含み、pHの値が3より大きく、かつ6より小さい、研磨用組成物である。
この研磨用組成物は、単体シリコン、シリコン化合物、金属等の研磨対象物を研磨する用途、例えば、半導体デバイスの製造プロセスにおいて半導体基板である単体シリコン、ポリシリコン、シリコン化合物、金属等を含んだ表面を研磨する用途に好適である。そして、テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)を用いて形成される二酸化ケイ素膜、すなわち、TEOS膜を研磨する用途に特に好適である。この研磨用組成物を用いて研磨を行えば、特にTEOS膜を高い研磨速度で研磨することができる。
【0009】
以下に、本実施形態の研磨用組成物について詳細に説明する。
<砥粒>
(砥粒の種類)
本発明の実施形態に係る研磨用組成物は、砥粒として、コロイダルシリカを含む。コロイダルシリカの製造方法としては、ケイ酸ソーダ法、ゾルゲル法が挙げられる。いずれの製造方法で製造されたコロイダルシリカであってもよいが、金属不純物低減の観点から、ゾルゲル法により製造されたコロイダルシリカが好ましい。ゾルゲル法によって製造されたコロイダルシリカは、半導体中で拡散する性質を有する金属不純物や塩化物イオン等の腐食性イオンの含有量が少ないため好ましい。ゾルゲル法によるコロイダルシリカの製造は、従来公知の手法を用いて行うことができ、具体的には、加水分解可能なケイ素化合物(例えば、アルコキシシランまたはその誘導体)を原料とし、加水分解・縮合反応を行うことにより、コロイダルシリカを得ることができる。
【0010】
(表面修飾)
コロイダルシリカは、アミノシランカップリング剤の化学処理による表面修飾が行われている。本明細書では、化学処理による表面修飾を化学的表面修飾ともいう。化学的表面修飾により、コロイダルシリカの表面にはアミノ基が固定化されて、カチオン化されている。この固定は、物理吸着ではなく、化学結合である。なお、本明細書では、カチオン化されたコロイダルシリカを「カチオン化コロイダルシリカ」という。
アミノ基を有するコロイダルシリカの製造方法として、特開2005-162533号公報に記載されているような、アミノエチルトリメトキシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤をシリカ粒子の表面に固定化する方法が挙げられる。なお、本明細書では、アミノ基を有するシランカップリング剤を「アミノシランカップリング剤」という。
【0011】
アミノシランカップリング剤として、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、4-アミノ3,3-ジメチルブチルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、2-(4-ピリジルエチル)トリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、3-トリメトキシリルプロピルジエチルジエチレントリアミン、N,N′-BIS[(3-トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、[3-(1-ピぺラジニル)プロピル]メチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン等が挙げられる。
【0012】
アミノシランカップリング剤として、例えば下記式(1)に示す構造を有するアミノトリアルコキシシランを用いることができる。式(1)中、Xは炭素(C)数が1以上10以下(C1~C10と記す。以下同様)のアルキル基、窒素を1以上含むアミノアルキル基(C1~C10)、もしくは単結合である。また、R1、R2およびR3は、それぞれ独立してアルキル基(C1~C3)、水素(H)、またはこれらの塩である。塩は、例えば塩酸塩である。
【0013】
【0014】
上記アミノトリアルコシキシランには、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、4-アミノ3,3-ジメチルブチルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、3-トリメトキシリルプロピルジエチルジエチレントリアミン等が含まれる。
上記したアミノシランカップリング剤のうち、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)は、式(2)に示す構造を有する。アミノシランカップリング剤として、3-アミノプロピルトリエトキシシランを用いる場合、コロイダルシリカの表面にはアミノプロピル基が固定化されて、カチオン化される。
【0015】
【0016】
アミノシランカップリング剤の化学処理により表面修飾されたカチオン化コロイダルシリカのゼータ(ζ)電位は、酸性条件下において、好ましくは、10mV以上であり、より好ましくは20mV以上であり、さらに好ましくは30mV以上である。安定して正のゼータ電位を得るという観点から、アミノシランカップリング剤としては、上記アミノトリアルコキシシランを用いることが好ましく、その中でもAPTESを用いることが好ましい。
【0017】
アミノシランカップリング剤は、化学処理において、加水分解反応および脱水縮合反応により、コロイダルシリカと化学結合、例えばSi-O-Si結合を生じる。このようにシランカップリング剤の化学処理により表面修飾されたカチオン化コロイダルシリカのゼータ電位は、酸性条件下において未修飾のコロイダルシリカと比較して大きな正の値を有する。これにより、本発明の効果が得られやすい。
通常のコロイダルシリカは、酸性条件下ではゼータ電位の値がゼロに近いため、酸性条件下ではコロイダルシリカの粒子同士が互いに電気的に反発せず、凝集しやすい。これに対して、酸性条件下においてもカチオン化コロイダルシリカの粒子同士は互いに強く反発して良好に分散し、凝集しにくい。その結果、研磨用組成物の保存安定性が向上する。
【0018】
(アスペクト比)
表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカのアスペクト比は、研磨速度の観点から、1.0以上であることが好ましく、1.02以上であることがより好ましく、1.05以上であることがさらに好ましく、1.10以上であることがよりいっそう好ましい。また、表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカのアスペクト比は、1.4未満であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましく、1.25以下であることがさらに好ましい。これにより、砥粒の形状が原因となる研磨対象物の表面粗さを良好なものとすることができる。また、砥粒の形状による欠陥の発生を抑制することができる。なお、このアスペクト比は、コロイダルシリカ粒子に外接する最小の長方形の長辺の長さを同じ長方形の短辺の長さで除することにより得られる値の平均値であり、走査型電子顕微鏡によって得たコロイダルシリカ粒子の画像から、一般的な画像解析ソフトウエアを用いて求めることができる。
【0019】
(平均一次粒子径)
表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカの平均一次粒子径は、100nm以下であることが好ましく、70nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましく、以下順に、40nm以下、35nm以下であることがよりいっそう好ましい。また、表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカの平均一次粒子径は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましく、25nm以上であることがよりいっそう好ましい。このような範囲であれば、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度が向上する。また、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面にディッシングが生じることをより抑えることができる。なお、コロイダルシリカの平均一次粒子径は、例えば、BET法で測定されるコロイダルシリカの比表面積に基づいて算出される。
【0020】
(平均二次粒子径)
表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカの平均二次粒子径は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましく、以下順に、80nm以下、75nm以下であることがよりいっそう好ましい。また、表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカの平均二次粒子径は、30nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、60nm以上であることがさらに好ましく、65nm以上であることがよりいっそう好ましい。このような範囲であれば、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度が向上する。また、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面に表面欠陥が生じることをより抑えることができる。なお、二次粒子とは、表面に有機酸を固定化したコロイダルシリカ(一次粒子)が研磨用組成物中で会合して形成する粒子をいう。二次粒子の平均二次粒子径は、例えば動的光散乱法により測定することができる。
【0021】
(粒度分布)
表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカの粒度分布において、微粒子側からの積算粒子質量が全粒子質量の90%に達したときの粒子の直径D90と、微粒子側からの積算粒子質量が全粒子質量の10%に達したときの粒子の直径D10との比D90/D10は、1.5以上であることが好ましく、1.8以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。また、この比D90/D10は、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましい。このような範囲であれば、研磨対象物の研磨速度が向上し、また、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面に表面欠陥が生じることをより抑えることができる。なお、表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカの粒度分布は、例えばレーザー回折散乱法により求めることができる。
【0022】
(含有量)
表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカの研磨用組成物全体における含有量は、0.005質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、0.75質量%以上であることがよりいっそう好ましい。また、表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカの研磨用組成物全体における含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることさらに好ましく、以下順に、2質量%以下、1.5質量%以下であることがよりいっそう好ましい。このような範囲であれば、研磨対象物の研磨速度が向上する。
また、表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカの研磨用組成物全体における含有量は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。このような範囲であれば、研磨用組成物のコストを抑えることができる。また、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面に表面欠陥が生じることをより抑えることができる。
【0023】
<アニオン性界面活性剤>
本発明の実施形態に係る研磨用組成物は、アニオン性界面活性剤を含む。アニオン性界面活性剤として、硫酸基、スルホン酸基及びリン酸基から選ばれる一種以上の官能基を有するアニオン性界面活性剤が好適である。アニオン性界面活性剤は、これら官能基を有する有機酸またはその塩を含む。このようなアニオン性界面活性剤として、例えば、ドデシル硫酸Na、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸Na、ヘキサデシルメチル(3-スルホプロピル)ヒドロキシド分子内塩、1-ドデカンスルホン酸Na、ビス-(2-エチルへキシル)スルホコハク酸Na、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸(ブチル基)、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェートアミン塩、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート等が挙げられる。なお、本発明の効果を損なわない範囲で、アニオン性界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤と併用することができる。
例えば、上記したアニオン性界面活性剤のうち、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸Naは、式(3)に示す構造を有する。式(3)において、Rは、直鎖状のアルキル基を示す。直鎖状のアルキル基の炭素(C)の数は、例えば10以上16以下である。
【0024】
【0025】
アニオン性界面活性剤が研磨対象物であるTEOS膜の表面に吸着すると、TEOS膜の表面は、官能基によりアニオン化される。また、上記したように、表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカのゼータ(ζ)電位は、酸性条件下において正の値である。このため、砥粒であるカチオン化コロイダルシリカは、酸性条件下において、被研磨対象物であるTEOS膜に静電気力で引き寄せられる。これにより、TEOS膜の研磨速度が向上する。
【0026】
<液状媒体>
本発明の実施形態に係る研磨用組成物は、液状媒体を含む。研磨用組成物の各成分(表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカ、アニオン性界面活性剤、pH調整剤などの添加剤)を分散又は溶解するための分散媒又は溶媒として機能する。液状媒体としては水、有機溶剤があげられ、1種を単独で用いることができるし、2種以上を混合して用いることができるが、水を含有することが好ましい。ただし、各成分の作用を阻害することを防止するという観点から、不純物をできる限り含有しない水を用いることが好ましい。具体的には、イオン交換樹脂にて不純物イオンを除去した後にフィルタを通して異物を除去した純水や超純水、あるいは蒸留水が好ましい。
【0027】
<pH調整剤>
本発明の実施形態に係る研磨用組成物は、pHの値が3より大きく、かつ6より小さい。また、pHの値のより好ましい範囲は3.5以上5以下である。pHの値は、4以下であることがさらに好ましく、4未満であることがよりいっそう好ましい。また、研磨用組成物のpHが低い方が、表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカのゼータ(ζ)電位が正の値となりやすい。これにより、TEOS膜の研磨速度向上に有利となる。一方、pHが前述した下限値より低下するにつれて、研磨対象物であるTEOS膜のゼータ電位が負の値からゼロまたは正の値に変化する。そのため、pHが下限値より小さいと、カチオン化コロイダルシリカとTEOS膜との間の相互作用が弱まり、その結果、TEOS膜の研磨速度が低下する。したがって、研磨用組成物のpHが上述した範囲内であれば、TEOS膜の研磨速度を向上させやすくなる。上記したpHの値を実現するため、研磨用組成物はpH調整剤を含んでもよい。
【0028】
研磨用組成物のpHの値は、pH調節剤の添加により調整することができる。pH調節剤は、酸、塩基、またはその両方を使用してもよく、また、無機化合物、有機化合物またはその両方を使用してもよい。
pH調整剤としての酸の具体例としては、無機酸や、有機酸があげられる。無機酸の具体例としては、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸等があげられる。pH調整剤としては、無機酸を使用することが好ましく、その中でも硫酸および硝酸がさらに好ましく、硝酸が特に好ましい。有機酸には、カルボン酸、および有機硫酸が含まれる。カルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸等があげられる。さらに、有機硫酸の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸等があげられる。これらの酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、研磨対象物にSiNが含まれる場合、リン酸系の無機酸や、カルボン酸系またはホスホン酸系の有機酸を用いることで、SiNの研磨速度を向上させることができる。これらの酸は、研磨用組成物にpH調整剤として含まれていてもよいし、研磨速度の向上のための添加剤として含まれていてもよいし、これらの組み合わせでもよい。
【0029】
pH調整剤としての塩基の具体例としては、アルカリ金属の水酸化物又はその塩、アルカリ土類金属の水酸化物又はその塩、水酸化第四級アンモニウム又はその塩、アンモニア、アミン等があげられる。アルカリ金属の具体例としては、カリウム、ナトリウム等があげられる。また、アルカリ土類金属の具体例としては、カルシウム、ストロンチウム等があげられる。さらに、塩の具体例としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、酢酸塩等があげられる。さらに、第四級アンモニウムの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等があげられる。
【0030】
水酸化第四級アンモニウム化合物としては、水酸化第四級アンモニウム又はその塩を含み、具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等があげられる。さらに、アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン等があげられる。
【0031】
これらの塩基は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの塩基の中でも、アンモニア、アンモニウム塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属塩、水酸化第四級アンモニウム化合物、及びアミンが好ましく、さらに、アンモニア、カリウム化合物、水酸化ナトリウム、水酸化第四級アンモニウム化合物、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸ナトリウムがより好ましい。また、研磨用組成物には、塩基として、金属汚染防止の観点からカリウム化合物を含むことがさらに好ましい。カリウム化合物としては、カリウムの水酸化物又はカリウム塩があげられ、具体的には水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カリウム等があげられる。
【0032】
更には、pH調整剤として、酸及び当該酸の塩の混合物である緩衝系のpH調整剤を用いる場合、TEOS研磨時にpH変動がなく好ましい。酸および当該酸の塩の組み合わせとしては、例えば酢酸および乳酸などの酸と、当該酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、およびカリウム塩などの塩との組み合わせが挙げられる。なお、不純物の観点から、アンモニウム塩を用いることが特に好ましい。
【0033】
<水溶性高分子>
本発明の実施形態に係る研磨用組成物は、水溶性高分子を含んでもよい。研磨対象物にポリシリコンが含まれる場合は、研磨用組成物に水溶性高分子を添加することにより、研磨速度を高くしたり低くしたりするなど、研磨速度を調整することができる。
水溶性高分子として、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、オキシエチレン(EO)とオキシプロピレン(PO)の共重合体、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストリン、プルラン等が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。砥粒およびTEOS表面への界面活性剤の影響を妨げさせないという観点(ゼータ電位を変動させない)から、水溶性高分子の中でもノニオン性高分子が好ましい。
【0034】
なお、水溶性高分子は、ノニオン性高分子に限定されるものではない。水溶性高分子は、カチオン性でもよいし、アニオン性でもよい。カチオン性高分子として、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミン等が挙げられる。アニオン性高分子として、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルスルホン酸、ポリアネトールスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等が挙げられる。
【0035】
水溶性高分子としてPVAを用いると、ポリシリコンの研磨速度を高くすることができるため好ましい。PVAの平均分子量は、例えば100以上150000以下である。疎水膜への作用のしやすさの観点からいうと平均分子量は大きいほうが好ましく、スラリー分散性の観点からいうと平均分子量は小さいほうが好ましい。例えば、PVAの平均分子量は、疎水膜への作用のしやすさの観点から、1000以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましく、6000以上、8000以上となるにつれてよりいっそう好ましくなる。また、PVAの平均分子量は、スラリー分散性の観点から、150000以下であることが好ましく、100000以下であることがより好ましく、80000以下、40000以下、20000以下、15000以下となるにつれてよりいっそう好ましくなる。
【0036】
また、水溶性高分子としてPEGを用いると、ポリシリコンの研磨速度を低くすることができるため好ましい。PEGの平均分子量は、例えば200以上150000以下である。疎水膜への作用のしやすさの観点からいうと平均分子量は大きいほうが好ましく、スラリー分散性の観点からいうと平均分子量は小さいほうが好ましい。例えば、PEGの平均分子量は、疎水膜への作用のしやすさの観点から、1000以上であることが好ましく、3000以上であることがより好ましく、6000以上、8000以上となるにつれてよりいっそう好ましくなる。また、PEGの平均分子量は、スラリー分散性の観点から、150000以下であることが好ましく、100000以下であることがより好ましく、80000以下、40000以下、20000以下、15000以下となるにつれてよりいっそう好ましくなる。
【0037】
<酸化剤>
本発明の実施形態に係る研磨用組成物は、酸化剤を含んでもよい。研磨対象物にシリコン、例えばPoly-Si(多結晶シリコン)が含まれる場合は、研磨用組成物に酸化剤を添加することにより、研磨速度を調整することができる。すなわち、研磨用組成物に添加する酸化剤の種類を選択することで、Poly-Siの研磨速度を早くしたり、遅くしたりできる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酢酸、過炭酸塩、過酸化尿素、過塩素酸、過硫酸塩等があげられる。過硫酸塩の具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等があげられる。これら酸化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの酸化剤の中でも、過硫酸塩、過酸化水素が好ましく、特に好ましいのは過酸化水素である。
【0038】
研磨用組成物全体における酸化剤の含有量が多いほど、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度を変化させやすい。よって、研磨用組成物全体における酸化剤の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。また、研磨用組成物全体における酸化剤の含有量が少ないほど、研磨用組成物の材料コストを抑えることができる。また、研磨使用後の研磨用組成物の処理、すなわち廃液処理の負荷を軽減することができる。さらに、酸化剤による研磨対象物の表面の過剰な酸化が起こりにくくなる。よって、研磨用組成物全体における酸化剤の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0039】
<防カビ剤、防腐剤>
研磨用組成物には防カビ剤、防腐剤を含んでもよい。防カビ剤、防腐剤の具体例としては、イソチアゾリン系防腐剤(例えば2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノールがあげられる。これらの防カビ剤、防腐剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
<研磨用組成物の製造方法>
本実施形態の研磨用組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、アミノシランカップリング剤の化学処理による表面修飾が行われた(すなわち、表面にアミノ基が固定化された)カチオン化コロイダルシリカと、アニオン性界面活性剤と、pH調整剤と、必要に応じて各種添加剤(例えば、水溶性高分子、酸化剤、錯化剤、防カビ剤、防腐剤等)と、を水等の液状媒体中で攪拌、混合することによって製造することができる。混合時の温度は特に限定されるものではないが、例えば10℃以上40℃以下が好ましく、溶解速度を向上させるために加熱してもよい。また、混合時間も特に限定されない。
【0041】
<研磨対象物>
本発明の実施形態にかかる研磨用組成物は、TEOS膜の研磨速度の向上が可能である。このため、研磨対象物はTEOS膜であることが好ましい。ただし、研磨対象物の種類はTEOSに限定されるものではないが、単体シリコン、TEOS以外のシリコン化合物、金属等であってもよい。単体シリコンとしては、例えば単結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン等があげられる。また、シリコン化合物としては、例えば窒化ケイ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素等があげられる。シリコン化合物膜には、比誘電率が3以下の低誘電率膜が含まれる。さらに、金属としては、例えば、タングステン、銅、アルミニウム、ハフニウム、コバルト、ニッケル、チタン、タンタル、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等があげられる。これらの金属は、合金又は金属化合物の形態で含まれていてもよい。
【0042】
<研磨方法>
研磨装置の構成は特に限定されるものではないが、例えば、研磨対象物を有する基板等を保持するホルダーと、回転速度を変更可能なモータ等の駆動部と、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤と、を備える一般的な研磨装置を使用することができる。研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、液状の研磨用組成物が溜まるような溝加工が施されているものを使用することができる。
【0043】
研磨条件は特に制限はないが、例えば、研磨定盤の回転速度は、10rpm(0.17s-1)以上500rpm(8.3s-1)以下が好ましい。研磨対象物を有する基板にかける圧力(研磨圧力)は、0.5psi(3.4kPa)以上10psi(68.9kPa)以下が好ましい。研磨パッドに研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、ポンプ等で連続的に供給する方法が採用される。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に本発明の一態様の研磨用組成物で覆われていることが好ましい。
本発明の実施形態に係る研磨用組成物は一液型であってもよいし、二液型をはじめとする多液型であってもよい。また、研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水等の希釈液を使って、例えば10倍以上に希釈することによって調製されてもよい。
【0044】
研磨終了後、基板を例えば流水で洗浄し、スピンドライヤ等により基板上に付着した水滴を払い落として乾燥させることにより、例えばシリコン含有材料を含む層を有する基板が得られる。このように、本発明の実施形態に係る研磨用組成物は、基板の研磨の用途に用いることができる。本発明の実施形態に係る研磨用組成物を用いて、半導体基板上に設けられたTEOS等の研磨対象物の表面を研磨することにより、半導体基板の表面を高研磨速度で研磨して、研磨済み半導体基板を製造することができる。半導体基板としては、例えば、単体シリコン、シリコン化合物、金属等を含む層を有するシリコンウェーハがあげられる。
【実施例】
【0045】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、以下の実施例には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0046】
<研磨用組成物の調整方法>
(実施例1~17)
下記の表1に示すように、砥粒と、アニオン性界面活性剤と、液状媒体である水とを攪拌、混合して、混合液を作成した。作成した混合液にpHが表1の値となるようにpH調整剤を加えて、実施例1~17の研磨用組成物を製造した。なお、表1中、「-」はその成分を用いなかったことを示す。
実施例1~17において、砥粒には、カップリング剤であるアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)の化学処理による表面修飾が行われたカチオン化コロイダルシリカを用いた。研磨用組成物におけるカップリング剤の濃度は、0.1mmol/Lとした。以下、mol/LをMと表記する。また、研磨用組成物における砥粒の濃度は、シリカとして1質量%とした。
【0047】
具体的には、コロイダルシリカの原液(20質量%)に2mMの濃度になるようにAPTESを加えて、表面修飾されたカチオン化コロイダルシリカを作成した。上記の原液に加えられたAPTESは、研磨用組成物を作成する際に濃度がさらに1/20となるように砥粒とともに希釈した。これにより、研磨用組成物におけるAPTESの濃度を、研磨時に0.1mMとした。なお、研磨用組成物中において、APTESは、コロイダルシリカ表面に結合した状態およびAPTESそのものの状態で含まれ得る。研磨用組成物における砥粒の粒子径(平均二次粒子径)は70nmである。研磨用組成物における砥粒のゼータ(ζ)電位は表1の通りである。
【0048】
実施例1~17において、アニオン性界面活性剤には表1に記載のものを用いた。アニオン性界面活性剤の官能基は、実施例1は硫酸基、実施例2~12はスルホン酸基、実施例13~17はリン酸基である。研磨用組成物における界面活性剤の濃度は、実施例1~6、8~19では50ppm、実施例7では100ppmとした。
実施例5では、水溶性高分子として、平均分子量が100以上150000以下であるPVAを添加した。研磨用組成物におけるPVAの添加量は50ppmとした。実施例6では、水溶性高分子として、平均分子量が200以上150000以下であるPEGを添加した。研磨用組成物におけるPEGの添加量は50ppmとした。
【0049】
実施例1~17では、pH調整剤として、硝酸(HNO3)又は水酸化カリウム(KOH)を用いた。実施例1、2、5~17では研磨用組成物のpHの値を3.5に調整し、実施例3では研磨用組成物のpHの値を4.0に調整し、実施例4では研磨用組成物のpHの値を5.0に調整した。研磨用組成物(液温:25℃)のpHは、pHメータ(株式会社堀場製作所製 製品名:LAQUA(登録商標))により測定した。また、pHが調整された各研磨用組成物の電気伝導率(EC)の値は、表1の通りであった。
【0050】
(比較例1~18)
表1に示す種類、濃度等の各成分を用い、各研磨用組成物のpHを表1に示す値に調整したこと以外は、実施例1~17と同様に操作して、各研磨用組成物を調製した。
実施例1~17との違いとして、比較例1、2では、研磨用組成物のpHの値を3.0、6.0にそれぞれ調整した。また、比較例3~11、13、15、17、18では、アニオン性界面活性剤を加えなかった。なお、比較例3~5のp-トルエンスルホン酸Na、p-スチレンスルホン酸Na、o-クレゾールスルホン酸は、いずれも、疎水基の炭素鎖が短く、界面活性剤として機能しない。また、比較例11~18では、コロイダルシリカに対して、アミノシランカップリング剤の化学処理による表面修飾を行わなかった。比較例13~16で用いたテトラエチルアンモニウム(TEAH)、比較例17、18で用いた水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)は、いずれも、コロイダルシリカ表面に物理吸着はするが、化学結合はしない。
【0051】
【0052】
<評価>
実施例1~17及び比較例1~18の研磨用組成物を用いて、下記の研磨条件で直径200mmのシリコンウェーハの研磨を行った。
・研磨装置:アプライド・マテリアルズ製200mm用CMP片面研磨装置 Mirra
・研磨パッド:ニッタ・ハース株式会社製 硬質ポリウレタンパッド IC1010
・研磨圧力:2psi(1psi=6894.76Pa)
・研磨定盤回転数:43rpm
・ヘッド回転数:47rpm
・研磨用組成物の供給:掛け流し
・研磨用組成物供給量:200mL/分
・研磨時間:60秒間
【0053】
研磨に供したシリコンウェーハは、二酸化ケイ素膜(TEOS膜)付シリコンウェーハ、窒化ケイ素膜(SiN膜)付きシリコンウェーハ、ポリシリコン膜(Poly-Si膜)付きシリコンウェーハである。各シリコンウェーハについては、光干渉式膜厚測定装置を用いて、研磨前と研磨後の膜厚をそれぞれ測定した。そして、膜厚差と研磨時間とから、各膜の研磨速度をそれぞれ算出した。結果を表2に示す。
【0054】
【0055】
表2に示すように、TEOS膜の研磨速度について、実施例1~16はいずれも260Å/min以上であり、比較例1~18はいずれも260Å/min未満であった。実施例1~16は、比較例1~18よりもTEOS膜の研磨速度が高いことが分かった。
上記のように、TEOS膜の研磨速度について、実施例は比較例よりも優れている。また、TEOS膜の研磨速度の向上率(以下、TEOS向上率)について、実施例1~16はいずれも1.05以上であった。TEOS向上率とは、各実施例及び各比較例において、同じpHで研磨用組成物に界面活性剤を加えない場合の研磨速度に対する、界面活性剤を加えた場合の研磨速度の比である。すなわち、pHが3.0、3.5、4.0、5.0、および6.0の場合、それぞれ比較例6、7、8、9、および10に対する研磨速度の比をTEOS向上率とした。TEOS向上率が1を超える場合は、研磨用組成物に界面活性剤を加えることによって研磨速度が向上することを意味する。実施例1~16では、TEOS向上率がいずれも1.05以上であり、アニオン性界面活性剤と、アミノシランカップリング剤で化学的表面修飾されたカチオン化コロイダルシリカと、を組み合あせて使用することにより、TEOS膜の研磨速度が高くなることがわかった。
【0056】
TEOS膜の研磨速度が高くなる理由は、以下の通りである。すなわち、アニオン性界面活性剤がTEOS膜の表面に吸着すると、TEOS膜の表面は、官能基によりアニオン化される。また、カチオン化コロイダルシリカのゼータ(ζ)電位は、酸性条件下において正の値である。このため、砥粒であるカチオン化コロイダルシリカは、酸性条件下において、TEOS膜に静電気力で引き寄せられる。これにより、TEOS膜の研磨速度が向上する。
【0057】
化学的表面修飾(化学結合)である実施例1~17と、物理吸着である比較例13~18とを比較してわかるように、同じpHの値であれば、本発明の化学的表面修飾(化学結合)の方が、比較例の物理吸着よりも、砥粒のゼータ電位が高くなる傾向がある。また、物理吸着の場合、アニオン性界面活性剤を添加しても、TEOS膜の研磨速度の向上効果は得られない。したがって、本発明の化学的表面修飾の方が、TEOS膜の研磨速度を向上させやすいことがわかる。さらに、物理吸着の場合、仮に希釈した場合に、吸着剤の濃度低下により砥粒のゼータ電位が低下する。それに対して本発明の化学的表面修飾のものは、砥粒表面にアミノ基が固定化されているので希釈によるゼータ電位の変動は生じ難い。すなわち、本発明の研磨用組成物は、希釈して使用された場合にも研磨速度が低下しにくい。
【0058】
また、実施例1~17(特に、実施例2~4)と、比較例1、2との比較から、研磨用組成物のpHの値が3より大きく6より小さいと、TEOS膜の研磨速度が高くなることがわかった。
また、pHの値が3.5の場合、スルホン酸系の界面活性剤を使用した実施例1、2、6~12は、リン酸系の界面活性剤を使用した実施例13~17よりも、TEOS膜の研磨速度が高いことがわかった。アニオン性界面活性剤として、スルホン酸系の界面活性剤を使用することで、TEOS膜の研磨速度がさらに高くなることがわかった。
【0059】
また、アニオン性界面活性剤として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を用いた実施例2~7は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸以外のアニオン性界面活性剤を用いた他の実施例1、8~17と比較して、SiN膜の研磨速度が高いことがわかった。アニオン性界面活性剤として、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を使用することで、TEOS膜だけでなく、SiN膜の研磨速度も高くなることがわかった。
【0060】
また、実施例2、5を比較すると、実施例2よりも実施例5の方がPoly-Si膜の研磨速度が高い。実施例2、5の違いは、研磨用組成物にPVAを含む点である。この結果から、本発明の実施形態に係る研磨用組成物にPVAを加えることによって、Poly-Si膜の研磨速度が高くなることがわかった。
また、実施例2、6を比較すると、実施例2よりも実施例6の方がPoly-Si膜の研磨速度が低い。実施例2、6の違いは、研磨用組成物にPEGを含む点である。この結果から、本発明の実施形態に係る研磨用組成物にPEGを加えることによって、Poly-Si膜の研磨速度が低くなることがわかった。
実施例2、5、6から、本発明の実施形態に係る研磨用組成物にPVA、PEGを選択的に加えることによって、TEOS膜の研磨速度を向上させつつ、Poly-Si膜についても研磨速度の制御性を向上できることがわかった。