(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-16
(45)【発行日】2025-06-24
(54)【発明の名称】仮接着剤の使用方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20250617BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20250617BHJP
C09J 179/08 20060101ALI20250617BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250617BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20250617BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
C09J5/00
C09J179/08 Z
B32B27/00 M
B32B27/34
H01L21/02 C
(21)【出願番号】P 2024024452
(22)【出願日】2024-02-21
(62)【分割の表示】P 2022530055の分割
【原出願日】2021-04-26
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2020102386
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】大和田 保
(72)【発明者】
【氏名】田上 昭平
(72)【発明者】
【氏名】武藤 光夫
(72)【発明者】
【氏名】田辺 正人
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/128342(WO,A1)
【文献】特表2019-504497(JP,A)
【文献】登録実用新案第3220830(JP,U)
【文献】国際公開第2019/129540(WO,A1)
【文献】特開2020-061529(JP,A)
【文献】国際公開第2008/076391(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2005/0271869(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110482481(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0368519(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0088524(US,A1)
【文献】特開2013-104054(JP,A)
【文献】特開2006-041160(JP,A)
【文献】特開2012-211254(JP,A)
【文献】特開2003-045912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/301- 21/304
H01L 21/67 - 21/687
C09J 5/00
C09J 7/38
C09J 179/08
C09J 183/04 -183/08
C09J 201/00 -201/08
B32B 27/00
B32B 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを薄化加工するために前記ウエハを支持体に仮接着層を介して仮接着するのに繰り返し使用する仮接着剤の使用方法であって、
前記仮接着剤として、
前記支持体と、
前記支持体上に形成された前記仮接着層と
を含み、
前記仮接着層が、先端が末広がりの形状を有する複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含み、
前記複数の柱状構造
として、前記支持体上に、規則正しく且つ密に配置されているものを用い
、
前記複数の柱状構造として、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、SBR及びNBRからなる群より選択される材料で形成されているものを用いることを特徴とする仮接着剤の使用方法。
【請求項2】
前記複数の柱状構造として、熱硬化性樹脂で形成されているものを用いることを特徴とする請求項1に記載の仮接着剤の使用方法。
【請求項3】
前記複数の柱状構造として、シリコーン変性ポリイミドで形成されているものを用いる請求項1又は2に記載の仮接着剤の使用方法。
【請求項4】
前記仮接着剤として、前記支持体上に形成された、前記乾式接着性繊維構造体を取り囲むガードリングを更に含むものを用いることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の仮接着剤の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮接着方法、デバイスウエハ加工方法、仮接着用積層体及びデバイスウエハ加工用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元の半導体実装は、より一層の高密度、大容量化を実現するために必須となってきている。3次元実装技術とは、1つの半導体チップを薄化し、更にこれをシリコン貫通電極(TSV;through silicon via)などによって結線しながら多層に積層していく半導体作製技術である。これを実現するためには、半導体回路を形成したウエハを非回路形成面(「裏面」ともいう)研削によって薄型化し、更に裏面にTSVを含む電極形成を行う工程が必要である。従来、シリコン基板の裏面研削工程では、研削面の反対側に保護テープを貼り、研削時のウエハ破損を防いでいる。しかし、このテープは有機樹脂フィルムを支持基材に用いており、柔軟性がある反面、強度や耐熱性が不十分であり、TSV形成工程や裏面での配線層形成工程を行うには適しない。
【0003】
そこで、半導体ウエハをシリコン、ガラス等の支持体を接着層を介して接合することによって、裏面研削、TSVや裏面電極形成の工程に十分耐えうるシステムが提案されている。この際に重要なのが、ウエハを支持体に接合する際の接着層である。これはウエハを支持体に強固に接合でき、後の工程に耐えるだけの十分な耐久性が必要で、更に最後に薄型ウエハを支持体から簡便に剥離できることが必要である。このように、最後に剥離することから、本明細書では、この接着層を仮接着層と呼ぶことにする。
【0004】
これまでに公知の仮接着層とその剥離方法としては、光吸収性物質を含む接着材に高強度の光を照射し、接着材層を分解することによって支持体から接着材層を剥離する技術(特許文献1)、及び、熱溶融性の炭化水素系化合物を接着材に用い、加熱溶融状態で接合・剥離を行う技術(特許文献2)が提案されている。前者の技術はレーザー発振器からの強い光によって、レーザー吸収層をアブレーションさせることに拠って薄型ウエハを支持体から簡便に剥離させる技術であり、剥離時には薄化ウエハに殆ど応力を作用させない技術である。また後者の技術は、基板の加熱によって接着材を熱分解させる技術であり、支持体を貼り合わせた後で行うTSV形成や配線形成にプロセス温度が、接着材が熱分解を起こさない範囲(200℃程度以下)においては、非常に優れた仮接着技術である。
【0005】
また、シリコーン粘着剤を仮接着材層に用いる技術が提案されている(特許文献3)。これはウエハを支持体に付加硬化型のシリコーン粘着剤を用いて接合し、剥離の際にはシリコーン樹脂を溶解、あるいは分解するような薬剤に浸漬してウエハを支持体から分離するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-64040号公報
【文献】特開2006-328104号公報
【文献】米国特許第7541264号公報
【文献】米国特許出願公開第2015/0368519号公報
【文献】米国特許第9,566,722号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】APPLIED MATERIAL & INTERFACES, Vol.1, No.4, pp.849-855, 2009
【文献】J.Adhesion Sci. Technol., Vol.17, No.8, pp.1055-1073
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既存の仮接着技術で使う材料は、基本的に薄化したいウエハと支持体とを貼り合わせる(接着する)機能は勿論、かつ、加工後の薄化ウエハと支持体を分離させる機能においてむしろその特徴を有するものである。参考とする特許文献では、レーザーアブレーションや熱分解、溶媒への溶解作用を利用している。しかしながら、これらの特許文献に記載された技術における仮接着層は、一度貼り合わせに使用し、その後剥離すると再び貼り合わせる機能を発揮するものではない。そのため、仮接着層だった材料は、一般的に剥離後洗浄除去で無くなるものである。従って、新たな貼り合わせには新たな仮接着層を形成する必要が有る。すなわち、従来の仮接着技術における仮接着層は、繰り返し使用することができなかった。
【0009】
更に、特許文献1におけるレーザーアブレーションを行う様な専用装置は非常に高価である。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ウエハと支持体との十分な強度の仮接着及び支持体からのウエハの容易な剥離を行うことができ、且つ仮接着及び剥離を繰り返し行うことが可能である仮接着方法、この仮接着方法でウエハと支持体とを仮接着してウエハの加工を行うデバイスウエハ加工方法、ウエハと支持体との十分な強度の仮接着及び支持体からのウエハの容易な剥離を行うことができ、且つ仮接着及び剥離を繰り返し行うことが可能である仮接着用積層体、並びにこの仮接着積層体を含むデバイスウエハ加工用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明では、回路を含む第1主面と前記第1主面とは反対側の加工すべき第2主面とを有するウエハを支持体に仮接着層を介して仮接着する方法であって、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含む仮接着層を介して、前記ウエハの前記第1主面と前記支持体との仮接着を行うことを特徴とする仮接着方法を提供する。
【0012】
本発明の仮接着方法であれば、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含む仮接着層を介して仮接着を行うので、薄化加工、電極形成、金属配線形成及び保護膜形成などの加工中にウエハが支持体から分離するのを防ぐことができる一方、上記加工後には高価な機械等を用いずともウエハを支持体から容易に剥離することができる。また、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体は、ウエハと支持体との仮接着を解放した後、更なる仮接着に再度使用することができる。すなわち、本発明の仮接着方法によると、ウエハと支持体との十分な強度の仮接着及び支持体からのウエハの容易な剥離を行うことができ、且つ仮接着及び剥離を繰り返し行うことできる。従って、本発明の仮接着方法によれば、例えば薄型デバイスウエハを高生産性且つ低コストで製造できる。
【0013】
前記乾式接着性繊維構造体として、前記複数の柱状構造が熱硬化性樹脂で形成されているものを用いることが好ましい。
【0014】
複数の柱状構造が熱硬化性樹脂で形成されている乾式接着性繊維構造体は、真空プロセス及び熱プロセスに対して優れた耐性を示すことができる。そのため、このような乾式接着性繊維構造体を用いることにより、薄型デバイスウエハの生産性及びコストパフォーマンスを更に向上させることができる。
【0015】
前記乾式接着性繊維構造体として、前記複数の柱状構造がシリコーン変性ポリイミドで形成されているものを用いることが好ましい。
【0016】
このような乾式接着性繊維構造体は、複数の柱状構造が優れた耐熱性及び優れた可撓性を示すことができる。そのため、このような乾式接着性繊維構造体を用いることにより、薄型デバイスウエハの生産性を更に向上させることができる。
【0017】
また、デバイスウエハ加工方法であって、本発明の仮接着方法によって、前記ウエハの前記第1主面と前記支持体との仮接着を行い、仮接着された前記ウエハの前記第2主面を加工することを特徴とするデバイスウエハ加工方法を提供する。
【0018】
本発明のデバイスウエハ加工方法は、本発明の仮接着方法によってウエハと支持体との仮接着を行い、このようにして仮接着されたウエハの第2主面を加工するので、薄型デバイスウエハを高い生産性及び低いコストで製造できる。
【0019】
前記ウエハの前記第2主面を加工したあと、前記仮接着層による仮接着を解放し、次いで、前記仮接着層を、他の仮接着において繰り返し使用することができる。
【0020】
本発明の仮接着方法、及び本発明のデバイスウエハの加工方法で用いる乾式接着性繊維構造体を含む仮接着層は、仮接着及び剥離において繰り返し使用できる。
【0021】
前記ウエハの前記第2主面を加工したあと、前記仮接着層による仮接着を解放し、次いで、前記ウエハとは別の基材を前記支持体に仮接着層を介して仮接着することができる。
【0022】
本発明のデバイスウエハの加工方法では、1つのウエハの加工後、仮接着層を繰り返し用いて、このウエハとは別の基材を支持体に仮接着することもできる。
【0023】
また、本発明では、ウエハを支持体に仮接着層を介して仮接着するのに使用する仮接着用積層体であって、前記支持体と、前記支持体上に形成された前記仮接着層とを含み、前記仮接着層は、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含むものであることを特徴とする仮接着用積層体を提供する。
【0024】
本発明の仮接着用積層体であれば、仮接着層が複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含むので、薄化加工、電極形成、金属配線形成及び保護膜形成などの加工中にウエハが支持体から分離するのを防ぐことができる一方、上記加工後には高価な機械等を用いずともウエハを支持体から容易に剥離することができる。また、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体は、ウエハと支持体との仮接着を解放した後、更なる仮接着に再度使用することができる。すなわち、本発明の仮接着用積層体を用いることにより、ウエハと支持体との十分な強度の仮接着及び支持体からのウエハの容易な剥離を行うことができ、且つ仮接着及び剥離を繰り返し行うことできる。従って、本発明の仮接着用積層体を用いれば、例えば薄型デバイスウエハを高生産性且つ低コストで製造することができる。
【0025】
前記複数の柱状構造が、熱硬化性樹脂で形成されているものであることが好ましい。
【0026】
熱硬化性樹脂で形成されている柱状構造は、真空プロセス及び熱プロセスに対して優れた耐性を示すことができる。そのため、このような柱状構造を含む仮接着用積層体を用いることにより、薄型デバイスウエハの生産性及びコストパフォーマンスを更に向上させることができる。
【0027】
前記複数の柱状構造は、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、SBR、NBR等のゴム等が挙げられる。耐熱性や可撓性を発現させるためには、シリコーン変性ポリイミドで形成されているものであることが好ましい。
【0028】
このような柱状構造は、優れた耐熱性及び優れた可撓性を示すことができる。そのため、このような柱状構造を含む仮接着用積層体を用いることにより、薄型デバイスウエハの生産性を更に向上させることができる。
【0029】
前記支持体上に形成された、前記乾式接着性繊維構造体を取り囲むガードリングを更に含むものであることが好ましい。
【0030】
このようなガードリングを含むものであれば、例えばウエハの第2主面がウェットプロセスに掛けられても、ウエハの第1主面側に加工用の液体が侵入することを防ぐことができる。
【0031】
また、本発明では、本発明の仮接着用積層体と、回路を含む第1主面と前記第1主面とは反対側の加工すべき第2主面とを有し、前記第1主面が前記支持体上の前記仮接着層を介して前記支持体に仮接着されたウエハとを含むものであることを特徴とするデバイスウエハ加工用積層体を提供する。
【0032】
本発明のデバイスウエハ加工用積層体であれば、仮接着層が複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含むので、ウエハの第2主面の加工中にウエハが支持体から分離することを防ぐことができると共に、加工後、高価な装置を用いずとも、ウエハを支持体から容易に剥離することができる。また、加工後、仮接着層を他の仮接着に繰り返し使用することができる。よって、本発明のデバイスウエハ加工用積層体を用いれば、例えば薄型デバイスウエハを高い生産性及び低いコストで製造することができる。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明の仮接着方法によれば、ウエハと支持体との十分な強度の仮接着及び支持体からのウエハの容易な剥離を行うことができ、且つ仮接着及び剥離を繰り返し行うことできる。従って、本発明の仮接着方法によれば、薄型デバイスウエハを高い生産性及び低いコストで製造できる。
【0034】
また、本発明のデバイスウエハ加工方法によれば、薄型デバイスウエハを高い生産性及び低いコストで製造できる。
【0035】
さらに、本発明の仮接着用積層体によれば、ウエハと支持体との十分な強度の仮接着及び支持体からのウエハの容易な剥離を行うことができ、且つ仮接着及び剥離を繰り返し行うことできる。従って、本発明の仮接着用積層体によれば、薄型デバイスウエハを高い生産性及び低いコストで製造することができる。
【0036】
そして、本発明のデバイスウエハ加工用積層体によれば、薄型デバイスウエハを高い生産性で製造することができ、その利用価値はすこぶる高い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の仮接着用積層体の一例を示す概略部分断面図である。
【
図2】本発明の仮接着用積層体をウエハに仮接着した例を示す概略部分断面図である。
【
図3】本発明の仮接着用積層体の他の一例を示す概略平面図である。
【
図4】本発明のデバイスウエハ加工用積層体の一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
上述のように、ウエハと支持体との十分な強度の仮接着及び支持体からのウエハの容易な剥離を行うことができ、且つ仮接着及び剥離を繰り返し行うことが可能である仮接着方法の開発が求められていた。
【0039】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含む仮接着層を介して、ウエハの加工すべき第2主面とは反対側の第1主面と支持体とを仮接着することにより、ウエハと支持体との十分な強度の仮接着及び支持体からのウエハの容易な剥離を行うことができると共に、このような仮接着及び剥離を繰り返し行うことが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0040】
即ち、本発明は、回路を含む第1主面と前記第1主面とは反対側の加工すべき第2主面とを有するウエハを支持体に仮接着層を介して仮接着する方法であって、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含む仮接着層を介して、前記ウエハの前記第1主面と前記支持体との仮接着を行うことを特徴とする仮接着方法である。
【0041】
また、本発明は、デバイスウエハ加工方法であって、上記本発明の仮接着方法によって、前記ウエハの前記第1主面と前記支持体との仮接着を行い、仮接着された前記ウエハの前記第2主面を加工することを特徴とするデバイスウエハ加工方法である。
【0042】
さらに、本発明は、ウエハを支持体に仮接着層を介して仮接着するのに使用する仮接着用積層体であって、前記支持体と、前記支持体上に形成された前記仮接着層とを含み、前記仮接着層は、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含むものであることを特徴とする仮接着用積層体である。
【0043】
そして、本発明は、上記本発明の仮接着用積層体と、回路を含む第1主面と前記第1主面とは反対側の加工すべき第2主面とを有し、前記第1主面が前記支持体上の前記仮接着層を介して前記支持体に仮接着されたウエハとを含むものであることを特徴とするデバイスウエハ加工用積層体である。
【0044】
なお、例えば、特許文献4及び非特許文献1には、乾式接着性繊維構造体が開示されている。また、例えば、特許文献5及び非特許文献2には、乾式接着性繊維構造体の製造方法が開示されている。しかしながら、これらの文献は、乾式接着性繊維構造体をデバイスウエハ製造プロセスにおける仮接着に適用することを何ら言及していない。
【0045】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
[仮接着用積層体]
本発明の仮接着用積層体は、ウエハを支持体に仮接着層を介して仮接着するのに使用する仮接着用積層体であって、前記支持体と、前記支持体上に形成された前記仮接着層とを含み、前記仮接着層は、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含むものであることを特徴とする。
【0047】
複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含むものである仮接着層は、柱状構造の先端がウエハの表面に接することで、ウエハと支持体との仮接着を行うことができる。理論により縛られることは望まないが、柱状構造の先端がウエハの表面に接することで、複数の柱状構造の先端とウエハの表面との間に分子間力が発現し、この分子間力により仮接着が行なわれると推測される。
【0048】
このような仮接着は、ウエハの例えば薄化加工、電極形成、金属配線形成及び保護膜形成などの加工中に、ウエハが支持体から分離するのを防ぐことができるのに十分な強度の仮接着をウエハと支持体との間に提供することができる。
【0049】
一方、この仮接着は、加工後には、高価な装置を用いずとも、ウエハを支持体から容易に剥離することができるものである。具体的な剥離方法としては、例えば、ウエハ又は支持体の一方を水平に固定しておき、他方を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げる方法、研削されたウエハの研削面に保護フィルムを貼り、ウエハと保護フィルムをピール方式でウエハ加工体から剥離する方法、及びピンセットでウエハの一部を持ち上げて剥離する方法等が挙げられる。本発明には、これらの剥離方法のいずれにも適用可能である。もちろん上記の方法には限定されない。
【0050】
また、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含むものである仮接着層は、一旦仮接着を解放しても、他の仮接着において再度使用することができる。これは、乾式接着性繊維構造体による仮接着が、分子間力を利用したものであり、たとえ一旦剥離しても、複数の柱状構造の先端を仮接着対象に接触させれば、再度分子間力が発現し、更なる仮接着を行うことができるからであると推測される。
【0051】
しかも、本発明の仮接着用積層体の仮接着層は、仮接着対象が必ずしも平坦でなくても強く接着できる。仮接着層が仮接着する第1主面は、回路を含んでいるので、通常平坦でない。本発明の仮接着用積層体の仮接着層は、回路を含んだ第1主面にも強く接着できる。
【0052】
また、本発明の仮接着用積層体の仮接着層による仮接着は、分子間力に基づく仮接着であるため、接着剤を用いる場合のように、追加の熱硬化処理を必要としない。
【0053】
そして、本発明の仮接着用積層体の仮接着層による仮接着は、分子間力に基づく仮接着であるため、繰り返しの使用の際の洗浄も必ずしも必要ない。つまり、本発明によれば従来法で必要であった洗浄の必要が無く、半導体装置製造工程の時間短縮、洗浄コストを削減することが可能な仮接着プロセスを提供することができる。
【0054】
このように、本発明の仮接着用積層体を用いることにより、ウエハと支持体との十分な強度の仮接着及び支持体からのウエハの容易な剥離を行うことができ、且つ仮接着及び剥離を繰り返し行うことできる。従って、本発明の仮接着用積層体を用いれば、例えば薄型デバイスウエハを高い生産性及び低いコストで製造することができる。
【0055】
次に、
図1~
図3を参照しながら、本発明の仮接着用積層体をより具体的に説明する。
【0056】
図1は、本発明の仮接着用積層体の一例を示す概略部分断面図である。
図1に示す仮接着用積層体20は、支持体3と、支持体3上に形成された仮接着層2とを含む。仮接着層2は、微細な複数の柱状構造22を有する乾式接着性繊維構造体21を含む。
【0057】
支持体3の材料は、特に限定されず、例えば、シリコンや、ガラス、石英などを用いることができる。すなわち、支持体3としては、例えば、シリコンウエハや、ガラス板、石英ウエハ等の基板を使用することができるが何ら制約はない。本発明においては、支持体3を通して仮接着層2に放射エネルギー線などを照射する必要がないため、支持体3は、光透過性を有さないものであっても良い。
【0058】
柱状構造22は、例えば、微細で可撓な繊維であり得る。複数の柱状構造22の各々は、支持体3とは反対に向いた、先端23を有している。
図1に示す柱状構造22の先端23は、上方に向かって末広がりの幅広形状を有している。
微細な繊維とは、例えば樹脂材料を延伸させて細い筒状に加工したものであり、延伸させる方法としては、射出成型、押出成型などを使う事ができる。また微細な繊維を得る他の方法としては、Si基板にドライエッチングによって円柱状の型を形成し、形成された円柱型に樹脂材料を流し込んで円柱状の樹脂すなわち微細な繊維を形成することもできる。
微細な繊維の形成方法は、上記の方法に限定するものではない。
また、微細繊維の素材は好ましくは樹脂材料が良いが、その他にもカーボン繊維、ガラス繊維またはその他複合コンポジット材料からなるもので、耐熱性、耐薬品性、可撓性等が発現すれば素材は問わない。
【0059】
柱状構造22は、例えば樹脂から形成することができる。好ましい樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、SBR、NBR等のゴム等があげられる。
【0060】
特に、柱状構造22が熱硬化性樹脂で形成されていることが好ましい。熱硬化性樹脂で形成されている柱状構造22は、TSV形成、ウエハ裏面配線工程といった工程に対する工程適合性が高く、具体的にはCVD(化学的気相成長)といった真空プロセスや、ウエハ熱プロセス耐性に優れ、薄型デバイスウエハの生産性を更に高めることができる。
【0061】
例えばシリコーン変性ポリイミドから形成された柱状構造22は、可撓性を示すことができるのに加え、材料中にポリイミド骨格を持ち、300℃程度以上の耐熱性を発現することができる。
【0062】
一方、特許文献2における200℃程度で熱分解する接着剤でウエハと支持体とを貼り合わせた場合では、TSV形成や再配線プロセスにおいて、熱分解温度以上のプロセス温度には耐性が無いことになってしまう。
【0063】
複数の柱状構造22は、支持体3上に直接形成されていても良いが、例えば
図1に示すように、ベース部24上に支持されていても良い。すなわち、
図1に示す態様に係る仮接着用積層体20では、乾式接着性繊維構造体2が、支持体3上に形成されたベース部24と、ベース部24上に支持された複数の柱状構造22とを含む。ベース部24は、複数の柱状構造22の材料と同様の材料で形成されていても良いし、異なる材料で形成されていても良い。
【0064】
複数の柱状構造22は、例えば
図1に示すように、支持体3表面に例えば規則正しく配列されることが好ましい。また、複数の柱状構造22を、例えば
図2に示すように、仮接着の対象であるウエハ10(デバイスウエハとなるウエハ)の第1主面11側に設けられた電極構造(回路)13を計画的に避けることができる一定のピッチで、支持基板3上に形成することで、より安定した仮接着を行うことができる。すなわち、複数の柱状構造22は、ウエハ10の第1主面11に形成されたデバイスパターンと逆パターンで配列されてもよい。
【0065】
複数の柱状構造22は、支持体3上に規則正しく、密に配置されていることが好ましい。このような配置により、より安定した仮接着を行うことができる。複数の柱状構造22は、100個/mm2以上5000個/mm2以下、好ましくは250個/mm2以上1500個/mm2の密度で形成されていることが好ましい。
【0066】
更に、複数の柱状構造22は、ウエハ10の第1主面11の表面に、この第1主面の表面形状に追従するように接することができる。そのため、例えば
図2に示すようにウエハ10の第1主面11が凹部11a及び凸部11bを有する場合、すなわちウエハ10が高段差基板である場合にも、複数の柱状構造22はウエハ10の第1主面11に対して安定した仮接着を行うことができる。
【0067】
複数の柱状構造22の各々の形状は、柱状であれば特に制限なく使用でき、例えば円柱及び角柱のいずれでもよい。
図1に示すように、柱状構造22の先端23が幅広形状(スパチュラ形状)であると、さらに吸着力が高まるので好ましい。柱状構造22の先端23と主部25との断面積の比は1:1~1:2であることが好ましい。すなわち、柱状構造は、ウエハに接する先端23を上部とした場合、上部が下部よりも幅広くなっていることが好ましい。柱状構造22の先端23は、吸盤のような構造を有していても良い。
【0068】
なお、柱状構造22の各々は、例えば高さを1μm~1mmとすることができ、好ましくは高さが10μm~500μmの柱状構造である。また、柱状構造22の各々は、例えば直径が10nm~100μmの底面を有するものとすることができ、好ましくは直径が1000nm~20μmの底面を有するものである。一方、柱状構造22の各々の先端23は、例えば、20nm~200μmの直径を有することができる。
【0069】
本発明の仮接着用積層体20は、仮接着対象であるウエハとの仮接着力をコントロールすることができる。具体的には、例えば、支持基板3とウエハとの仮接着力を、柱状構造22の先端23の直径の大小や、単位面積当たりの柱状構造22の個数、および柱状構造22の主部25の直径で規定することができる。
【0070】
支持基板3とウエハとが仮接着された後に、TSVや再配線を形成するプロセスにおいては、プロセス装置でのハンドリング、CMPプロセスでのシェア応力などが加わる為、この応力に抗する仮接着力が支持基板3とウエハとの間に必要となる。一方で、支持基板3は最終的に剥離されるものであるため、必要以上の仮接着力を与えることは避けなければならない。本発明の仮接着用積層体20は、仮接着対象であるウエハ10との仮接着力をコントロールすることができるので、加工中の応力に耐えるのに十分である一方、最終的に容易に剥離できる程度に抑えられた仮接着力を発現することができる。
【0071】
仮接着層2上での、例えば25mm幅のポリイミドテープ試験片との180°ピール剥離力が、2gf以上50gf以下であることが好ましい。なぜならば、このようなピール剥離力を有する仮接着用積層体20であれば、例えばウエハ研削時にウエハのズレが生じる恐れがなく、かつ剥離が容易なためである。
【0072】
仮接着用積層体20は、例えば
図3に示すように、支持体3上に形成された、乾式接着性繊維構造体21を取り囲むガードリング4を更に含むものであることが好ましい。
【0073】
仮接着層2を介して仮接着したウエハと支持体3との貼り合わせ面内には、仮接着層が乾式接着性繊維構造体であることから、隙間が発生することになる。支持体3とウエハとの貼り合わせ後には、ウエハがレジストの剥離金属のエッチング、デバイスウエハの洗浄などのウェットプロセスに掛けられることも多いが、前述のこの隙間に液体が侵入することが問題になることがある。上記ガードリング4を支持体3上に設置することで、上記隙間に加工用の液体が侵入することを防ぐことができる。
【0074】
支持体3の平面形状は特に限定されず、仮接着層2と同様の平面形状であっても良いし、仮接着層2よりも大きな平面形状であっても良い。円形のガードリング4を設ける場合、支持体3の平面形状は、仮接着層2の乾式接着性繊維構造体21を囲うガードリング4の外周形状と同様の平面形状であっても良いし、
図3に示すように、ガードリング4の外周形状よりも大きな平面形状であっても良い。
これまで仮接着用積層体20は、例えば直径200mmや300mmの円形を例にとってきたが、仮接着用積層体20は正方形や長方形のパネル形状であっても構わない。
【0075】
支持体3の面積に対する、柱状構造22が形成されている面積の割合は、0.02%~50%であることが好ましく、1%~25%であることがより好ましい。
【0076】
[デバイスウエハ加工用積層体]
本発明のデバイスウエハ加工用積層体は、本発明の仮接着用積層体と、回路を含む第1主面と前記第1主面とは反対側の加工すべき第2主面とを有し、前記第1主面が前記支持体上の前記仮接着層を介して前記支持体に仮接着されたウエハとを含むものであることを特徴とする。
【0077】
本発明のデバイスウエハ加工用積層体は、先に説明した本発明の仮接着用積層体を含む。よって、本発明のデバイスウエハ加工用積層体は、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含む仮接着層による仮接着により、ウエハの第2主面の加工中にウエハが支持体から分離することを防ぐことができると共に、加工後、高価な装置を用いずとも、ウエハを支持体から容易に剥離することができる。また、先に説明したように、加工後、仮接着層を他の仮接着に繰り返し使用することができる。よって、本発明のデバイスウエハ加工用積層体を用いれば、例えば薄型デバイスウエハを高い生産性及び低いコストで製造することができる。
【0078】
次に、
図4を参照しながら、本発明のデバイスウエハ加工用積層体を具体的に説明する。
【0079】
図4に示したデバイスウエハ加工用積層体1は、仮接着用積層体20と、ウエハ10とを含む。
【0080】
仮接着用積層体20は、
図1及び
図2を参照しながら説明した、支持体3と、支持体3上に形成された仮接着層2とを含む。また、仮接着層2は、
図1に示した、複数の柱状構造22を有する乾式接着性繊維構造体21を含む。
【0081】
ウエハ10は、
図2に示した構造を有する。すなわち、ウエハ10は、回路13を含む第1主面11と第1主面11とは反対側の加工すべき第2主面12とを有する。第1主面11は、凹部11aと、凸部11bとを含む。ウエハ10の第1主面11は、回路形成面と呼ぶことができる。ウエハ10の第2主面12は、回路非形成面と呼ぶことができる。
【0082】
本発明が適用できるウエハ10は、通常、半導体ウエハである。該半導体ウエハの例としては、シリコンウエハのみならず、ゲルマニウムウエハ、ガリウム-ヒ素ウエハ、ガリウム-リンウエハ、ガリウム-ヒ素-アルミニウムウエハ等が挙げられる。該ウエハの厚さは、特に制限はないが、典型的には600~800μm、より典型的には625~775μmである。
【0083】
図4に示したデバイスウエハ加工用積層体1では、
図2に示したように、ウエハ10の第1主面11が支持体3上の仮接着層2を介して支持体3に仮接着されている。本発明のデバイスウエハ加工用積層体1であれば、ウエハ10の第1主面11に
図2に示すように凹部11a及び/又は凸部11bを有する高段差基板であったとしても、複数の柱状構造22の先端23が第1主面11の表面に追随することができるので、
図4に示すように、ウエハ10の第2主面12を、支持体3と略平行な状態で、この支持体3と仮接着したものとすることができる。そのため、本発明のデバイスウエハ加工用積層体1は、TSV形成、ウエハ裏面配線工程に対する優れた工程適合性を示すことができる。
【0084】
[仮接着方法]
本発明の仮接着方法は、回路を含む第1主面と前記第1主面とは反対側の加工すべき第2主面とを有するウエハを支持体に仮接着層を介して仮接着する方法であって、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含む仮接着層を介して、前記ウエハの前記第1主面と前記支持体との仮接着を行うことを特徴とする。
【0085】
本発明の仮接着方法は、例えば、先に説明した本発明の仮接着積層体を用いて実施することができる。
【0086】
先に説明したように、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含む仮接着層を介してのウエハの第1主面と支持体との仮接着は、ウエハの第2主面の例えば薄化加工、電極形成、金属配線形成及び保護膜形成などの加工中に、ウエハが支持体から分離するのを防ぐことができるのに十分な強度の仮接着をウエハと支持体との間に提供することができる。一方、この仮接着は、加工後には、高価な装置を用いずとも、ウエハを支持体から容易に剥離することができるものである。
【0087】
また、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含むものである仮接着層は、一旦仮接着を解放しても、他の仮接着において再度使用することができる。
【0088】
このように、本発明の仮接着方法によれば、ウエハと支持体との十分な強度の仮接着及び支持体からのウエハの容易な剥離を行うことができ、且つ仮接着及び剥離を繰り返し行うことできる。従って、本発明の仮接着方法によれば、例えば薄型デバイスウエハを高い生産性及び低いコストで製造することができる。
【0089】
仮接着に際し、仮接着層とウエハとを、貼り合わせ装置を使って貼り合わせても良い。貼り合わせにおいては、好ましくは室温~100℃、より好ましくは室温~80℃の温度領域で、ウエハと仮接着層とを均一に圧着(好ましくは0より大~5MPa、さらに好ましくは1Pa~1MPa)することができる。例えばこの貼り合わせにより、ウエハが支持体に仮接着層を介して仮接着されたウエハ加工体(積層体基板)、すなわち先に説明したデバイスウエハ加工用積層体を形成することができる。この後に一切の加熱処理などは必要としない。
【0090】
ウエハ貼り合わせ装置としては、市販のウエハ接合装置、例えばEVG社のEVG520IS、850TB、SUSS社のXBC300等が挙げられる。
【0091】
[デバイスウエハ加工方法]
本発明のデバイスウエハ加工方法は、本発明の仮接着方法によって、前記ウエハの前記第1主面と前記支持体との仮接着を行い、仮接着された前記ウエハの前記第2主面を加工することを特徴とする。
【0092】
本発明のデバイスウエハ加工方法では、本発明の仮接着方法によって仮接着を行った上でウエハの第2主面の加工を行うので、先に説明したように、例えば薄型デバイスウエハを高い生産性及び低いコストで製造することができる。
【0093】
また、先に述べたが、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体を含むものである仮接着層は、一旦仮接着を解放しても、他の仮接着において再度使用することができる。すなわち、本発明では、1つのウエハの第2主面を加工したあと、仮接着層による仮接着を解放し、次いで、仮接着層を他の仮接着において繰り返し使用することができる。
【0094】
上記他の仮接着では、加工したウエハとは別のシリコンウエハを支持体として仮接着しても良いし、又はシリコンウエハ以外の基材を仮接着しても良い。すなわち、本発明では、ウエハの第2主面を加工したあと、仮接着層による仮接着を解放し、次いで、加工したウエハとは別の基材を支持体に仮接着層を介して前記と同様な貼り合わせ条件で仮接着することができる。シリコンウエハ以外の支持体としては、例えば、金属基板、ガラス基板や石英基板等を挙げることができる。
また、支持体は、正方形や長方形のパネル形状であっても構わない。支持体の上で仮接着される基板も、シリコン、ガラス、金属、樹脂等制限を付けるものではない。
【0095】
次に、本発明のデバイスウエハ加工方法の具体例を説明する。
本発明のデバイスウエハ加工方法の一例は、以下の(a)~(d)の工程を有する。
【0096】
[工程(a)]
工程(a)は、回路を含む第1主面(回路形成面;おもて面)とこの第1主面とは反対側の加工すべき第2主面(回路非形成面;裏面)とを有するウエハを支持体に仮接着層を介して仮接着する工程である。すなわち、工程(a)は、本発明の仮接着方法によって、ウエハの第1主面と支持体との仮接着を行う工程である。
【0097】
[工程(b)]
次に、支持体に仮接着されたウエハの第2主面(回路非形成面)を研削又は研磨する工程、即ち、貼り合わせて得られたデバイスウエハ加工用積層体のウエハ裏面側を研削して、該ウエハの厚みを薄くしていく工程(b)に掛けられる。ウエハの第2主面の研削加工の方式には特に制限はなく、公知の研削方式が採用される。研削は、ウエハと砥石(ダイヤモンド等)に水をかけて冷却しながら行うことが好ましい。ウエハの第2主面を研削加工する装置としては、例えば(株)ディスコ製DAG-810(商品名)等が挙げられる。また、ウエハの第2主面をCMP研磨してもよい。
【0098】
本発明の製造方法により得られる薄型ウエハの厚さは、典型的には5~300μm、より典型的には10~100μmである。
【0099】
[工程(c)]
次に、第2主面を研削したウエハ加工体、即ち、裏面研削によって薄型化されたウエハの第2主面に更なる加工を施す工程(c)である。この工程(c)にはウエハレベルで用いられる様々なプロセスが含まれる。例としては、電極形成、金属配線形成、保護膜形成等が挙げられる。より具体的には、電極等の形成のための金属スパッタリング、金属スパッタリング層をエッチングするウェットエッチング、金属配線形成のマスクとするためのレジストの塗布、露光、及び現像によるパターンの形成、レジストの剥離、ドライエッチング、金属めっきの形成、TSV形成のためのシリコンエッチング、シリコン表面の酸化膜形成など、従来公知のプロセスが挙げられる。
【0100】
[工程(d)]
次に、上記工程で加工を施したウエハを支持体から剥離する工程、即ち、薄型化したウエハに様々な加工を施した後、ダイシングする前にウエハを支持体から剥離する工程である。言い換えると、この工程(d)は、仮接着層による仮接着を解放する工程である。
【0101】
この剥離工程は、一般に室温から60℃程度の比較的低温の条件で実施される。具体的な方法としては、例えば、デバイスウエハ加工用積層体のウエハ又は支持体の一方を水平に固定しておき、他方を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げる方法、研削されたウエハの研削面に保護フィルムを貼り、ウエハと保護フィルムをピール方式で支持体から剥離する方法、及びピンセットでウエハの一部を持ち上げて剥離する方法等が挙げられる。本発明には、これらの剥離方法のいずれにも適用可能である。もちろん上記の方法には限定されない。
【0102】
仮接着層による仮接着を解放(剥離)することにより、回路を含む第1主面と、この第1主面とは反対側の加工が施された第2主面とを有する、デバイスウエハを得ることができる。
【0103】
また、本発明のデバイスウエハの加工方法では、支持体からのデバイスウェハの剥離後に、支持体表面、及びデバイスウェハ表面共に洗浄をしなくてもよい。
【0104】
[他の工程]
工程(d)のあと、仮接着層を他の仮接着において繰り返し使用することができる。他の仮接着の対象は、例えばウエハ以外の基材とすることができる。具体例を挙げると、加工したウエハにガラス基板や石英基板などの他の基板を積層するのに、仮接着層による仮接着を用いることができる。
【0105】
或いは、工程(d)のあと、加工したウエハとは別の更なるウエハを加工するために、更なるウエハの加工すべき第2主面とは反対側の第1主面を支持体に仮接着層を介して仮接着することができる。
【0106】
本発明で用いる仮接着層は、仮接着の解放後に洗浄が不要であるため、効率的に、更なる仮接着において繰り返し使用することができる。
【0107】
[乾式接着性繊維構造体の製造方法]
ここで、本発明で用いる仮接着層の乾式接着性繊維構造体の製造方法の例を説明する。しかしながら、本発明で用いる仮接着層の乾式接着性繊維構造体の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
【0108】
(第1の例)
第1の例は、複数の柱状構造を、シリコン、ガラスなどからなる支持体の表面に転写させる方法である。
【0109】
具体的には、例えばSi基板にドライエッチングによって円柱状の型を形成し、形成された円柱の型に樹脂材料を流し込んで円柱状の樹脂すなわち微細な繊維を形成することもできる。シリコン中の円形の型で成型された円柱状の樹脂を、PETなどのシート状基材に、乾式接着性繊維構造体の幅広の先端を接触させて転写を行う。PET上の転写された乾式接着性繊維構造体他方の先端を支持体に接合した後でPETなどのシート状基材を剥離することで提供することができる。
【0110】
その際、支持体への接合は例えば、高融点半田を使って他方の先端を接合する。あるいは、支持体の表面をシランカップリング処理、陽極酸化、化学的表面粗化などの処理後に、微細で可撓な柱状構造を熱、圧力を掛けながら支持体表面に転写させることで、支持体と強固な接合が可能となる。
【0111】
(第2の例)
シリコン、ガラスなどからなる支持体の表面に乾式接着性繊維構造体を形成する別な方法としては、例えば射出成形によって、薄いフィルムと微細な柱状構造を一括で成形することができる。
【0112】
その後に微細な柱状構造を含むフィルム材料を、支持体に貼り合わせることに拠って、支持体と、支持体上に形成された仮接着層との複合体を提供することができる。
【0113】
(第3の例)
多孔質を有する樹脂に所望の樹脂を流しいれ、整形加工することで、表面に柱状構造を有する構造体を得ることも可能である。
【0114】
(第4の例)
また、複数の柱状構造を有する乾式接着性繊維構造体は、例えば非特許文献2に記載されているように、マイクロスケール又はナノスケールの凹凸を有する型を用いたインプリント法で得ることもできる。
【0115】
また、これまで先示してきた、幅広の先端を有する微細で可撓な柱状構造としては、柱状構造の片方の先端のみが幅広の構造でなく、両端が幅広の構造を有する可撓な柱状構造でも構わない。その際は、貼り合わせ後デバイスウエハの薄化の後に、支持体を剥離させることになるが、当然のこと剥離させたい面と剥離させたくない面が生じ、この場合剥離させたい面の乾式接着性繊維構造体全体の吸着力を、剥離させたくない面の乾式接着性繊維構造体全体の吸着力より弱くすれば良い。吸着力の強弱は、先に説明したように制御することができる。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0117】
(実施例1)
一方の主面である第1主面に高さ10μm、直径40μmの銅ポスト(電極構造)が全面に形成された直径200mmシリコンウエハ(厚さ:725μm、デバイスウエハとなるウエハ)を、仮接着の対象とした。
【0118】
まず、上記ウエハの第1主面の電極構造以外の領域に乾式接着性繊維構造体の柱状構造を接触させて仮接着させるために、直径200mm(厚さ:500μm)のガラス基板支持体全面にシランカップリング材をスピンコート塗布したものを準備した。
【0119】
支持基板上に形成する乾式接着性繊維構造体の準備として、厚さ725μmの直径300mmシリコン基板面内にフォトレジスト膜を形成し、定法によりマスクを介してシリコン基板中に円柱状の型穴を形成するためのパターンを形成した。シリコンと選択比のあるレジストパターンを利用しボッシュ法によるドライエッチングによって、シリコン中に直径20ミクロン、深さ50ミクロンの円柱状の細孔を形成した。細孔形成用のレジストを剥離した後、乾式接着性繊維構造体の幅広部分を形成するために、再度レジストパターンを形成した。レジスト開口部の中心位置はシリコン中細孔の中心と一致し、開口径は30ミクロンとした。次にシリコン中の細孔と開口部のレジストパターンの中に、シリコーン変性ポリイミド樹脂をスクリーン印刷で流し込み、シリコン基板を100℃で60分加熱した。次にレジストパターンを剥離した後190℃4時間のハードベークを行いシリコーン変性ポリイミド樹脂を硬化させた。
【0120】
次に表面に粘着層のある厚さ100μmのPETフィルムを、シリコン基板上に形成された乾式接着性繊維構造体の幅広部分表面にラミネート後に圧着し、乾式接着性繊維構造体をPETフィルム上に転写した。転写された乾式接着性繊維構造体をSEMで確認した所、円柱部の直径が20μmであり、規則正しく備えられた幅広の先端部の直径が30μmであり、高さが20μmであり、設計通りであった。
【0121】
この時の乾式接着性繊維構造体の密度(平面SEMで倍率2000倍で観察)は約300個/mm2であった。
【0122】
複数の柱状構造を持つPETフィルムを、アライメントを取りながらシランカップリング剤が塗布されたガラス支持基板に80Paの陰圧、温度110℃の条件で真空ラミネートした。ラミネートされた支持基板は大気中に取り出され、表面のPETフィルムを剥離させて、最終的に乾式接着性繊維構造体を含む仮接着層付きのガラス支持基板(仮接着用積層体)を得た。
【0123】
前記仮接着用積層体の柱状構造が形成された面に、仮接着の対象である、一方の主面である第1主面に高さ10μm、直径40μmの銅ポストが全面に形成された直径200mmシリコンウエハ(厚さ:725μm)を、ウェハ貼り合わせ装置内で、チャンバー内圧力10Pa未満、ステージ温度70℃、荷重0.21MPaで60秒の条件で貼り合わせを行った。この際、仮接着層の複数の柱状構造の先端がウエハの第1主面に接触するようにした。これにより、デバイスウエハ加工用積層体を作製した。
【0124】
なお、ここで、基板接着後の異常を目視で判別するために支持体としてガラス板を使用したが、ウエハなどの光を透過しないシリコン基板も使用可能である。
【0125】
貼り合わせ装置として、EVG社のウエハ接合装置EVG520ISを用いて行った。なお、貼り合わせ後の目視確認では、貼り合わせの品質に問題は認められなかった。
【0126】
次に、グラインダー(DISCO製、DAG810)でダイヤモンド砥石を用いてシリコンウエハの裏面(第1主面とは反対側の第2主面)研削を行った。最終基板厚50μmまでグラインドした後、光学顕微鏡(100倍)にてクラック、剥離等の異常の有無を調べたが、異常は認められなかった。
【0127】
更に、シリコンウエハを裏面研削した後の加工体をCVD装置に導入し、2μmのSiO2膜の生成実験を行ない、その際の外観異常の有無を調べた。厚い酸化膜の成膜後でも外観異常が発生しなかった。ここで使用したプラズマCVD装置はPD270STL(サムコ社製)で、出力RF500W、内圧40Pa、ガス種はTEOS(テトラエチルオルソシリケート):O2=20sccm:680sccmであった。
【0128】
最後に、支持基板の剥離性を確認した。具体的には以下に従って試験をした。CVD耐性試験を終えたデバイスウエハ加工体の50μmまで薄型化したウエハ側にダイシングフレームを用いてダイシングテープを貼り、このダイシングテープ面を真空吸着によって、吸着板にセットした。その後、室温にて、ガラスの1点をピンセットにて持ち上げることで、ガラス基板を剥離した。結果として、厚さが50μmのウエハを割ることなく剥離できた。
【0129】
剥離後、すなわち仮接着解放後の仮接着用積層体を用いて、他のシリコンウエハの仮接着を(前記と同条件で)行い、もう1つのデバイスウエハ加工用積層体を作製した。再度の仮接着の前には、仮接着層の洗浄を行わなかった。次いで、このもう1つのデバイスウエハ加工用積層体に対し、上記と同様に裏面研削、CVD耐性試験、剥離試験を行ったが、異常や割れは観察されなかった。
【0130】
このように、実施例1では、裏面研削及びCVDといった加工に耐えるのに十分な仮接着強度を実現できた一方、加工後は支持体からウエハを容易に剥離することができた。また、実施例1では、仮接着層による仮接着解放後、洗浄をせずに、仮接着層を再度使用することができた。
【0131】
(実施例2)
次に、ファンアウトパネルレベルパッケージのチップファーストプロセスへの適用について検討を行った。
【0132】
樹脂基板(90mm×90mm、厚さ500ミクロン)であって、一方の主面である第1主面に直径15μm、高さ15μmの低融点金属からなるバンプ(電極構造)が全面に形成され、他方の面である第2主面には10ミクロン角のアルミパッドが全面に形成され、第1主面と第2主面は樹脂基板を貫通する電極で結線されているデバイス構造体を仮接着の対象とした。
【0133】
前記樹脂基板を仮接合する支持基板として、AGC製の大きさ300mm×100mm、厚さ700ミクロンのガラス基板を使用した。
【0134】
支持基板上に形成する乾式接着性繊維構造体の準備として、厚さ725μmの直径300mmシリコン基板面内にフォトレジスト膜を形成し、定法によりマスクを介してシリコン基板中に円柱状の型穴を形成するためのパターンを形成した。シリコンと選択比のあるレジストパターンを利用しボッシュ法によるドライエッチングによって、シリコン中に直径20ミクロン、深さ50ミクロンの円柱状の細孔を形成した。細孔形成用のレジストを剥離した後、乾式接着性繊維構造体の幅広部分を形成するために、再度レジストパターンを形成した。レジスト開口部の中心位置はシリコン中細孔の中心と一致し、開口径は30ミクロンレジスト厚を3ミクロンとした。次にシリコン中の細孔と開口部のレジストパターンの中に、フッ素樹脂をスクリーン印刷で流し込み、シリコン基板を100℃で60分加熱した。次にレジストパターンを剥離した後150℃1時間のハードベークを行いフッ素樹脂を硬化させた。
【0135】
次に表面に粘着層のある厚さ100μmのPETフィルムを、シリコン基板上に形成された乾式接着性繊維構造体の幅広部分表面にラミネート後に圧着し、乾式接着性繊維構造体をPETフィルム上に転写した。転写された乾式接着性繊維構造体をSEMで確認した所、円柱部、幅広部の直径および高さは設計通りであり、実施例1と同じであった。この作業を繰り返して行い、最終的に300mm×100mmのPETフィルム全面に乾式接着性繊維構造体を転写した。この時の乾式接着性繊維構造体の密度は約300個/mm2であった。
【0136】
次に、300mm×100mmのガラス支持基板全面にシランカップリング材をスロットコートして乾燥させ、更に全面の柱状構造を持つPETフィルムを、アライメントを取りながらシランカップリング剤が塗布されたガラス支持基板に80Paの陰圧、温度110℃の条件で真空ラミネートした。ラミネートされた支持基板は大気中に取り出され、表面のPETフィルムを剥離させて、最終的に乾式接着性繊維構造体を含む仮接着層付きのガラス支持基板(仮接着用積層体)を得た。
【0137】
前記仮接着用積層体の柱状構造が形成された面に、仮接着の対象である樹脂基板(90mm×90mm、厚さ500ミクロン)であって、一方の主面である第1主面に直径15μm、高さ15μmの低融点金属からなるバンプ(電極構造)が全面に形成され、他方の面である第2主面には30ミクロン角のアルミパッドが全面に形成され、第1主面と第2主面は樹脂基板を貫通する電極で結線されているデバイス構造体を基板貼り合わせ装置内で、ステージ温度70℃、荷重0.21MPaで60秒の条件で貼り合わせを行った。この際、仮接着層の複数の柱状構造の先端がウエハの第1主面にバンプ構造を避けながら接触するようにした。この仮接着層付きのガラス支持基板上には合計3枚の樹脂基板を搭載した(デバイスウエハ加工用積層体の完成)。
【0138】
次にこのガラスを支持体とするデバイス加工用積層体に対してコンプレッション装置を使って、モールド材料で封止を行った。封止には信越化学工業製フィルムモールド材料 SINR-DF5770を使い、デバイス上の膜厚を100ミクロンとした。
【0139】
次に、グラインダー(DISCO製、DFG8020)で砥石を用いてモールド材料の研削を行い、最終的に第2主面のアルミパッドを露出させるまで研削を行った。グラインドした後のアルミパッド表面を、光学顕微鏡(100倍)にてクラック、剥離等の異常の有無を調べたが、異常は認められなかった。
【0140】
更に、アルミパッドが露出した平面に、感光性フィルム材料50ミクロン厚のSINR-DF3170SP(信越化学製)をモールドフィルムと同様に真空ラミネータでラミネートした。ラミネート条件は100℃・80Paであった。第1主面上のアルミパッド部を開口するために、マスクを使った定法によりフォトリソグラフィーを行った。プロセス条件は、プリベーク100℃・300秒、i線露光で露光量1100mJ/cm2、露光後加熱130℃・300秒であった。PEGMEAでの現像によって、アルミパッド上に直径20ミクロンの開口パターンを得た。
【0141】
最後にガラス支持体上での一連のプロセス後、もとに3枚のデバイスに切り分けるために、ダイシング装置でモールド層をカットして個片化を行った。個片化したデバイスは乾式接着性繊維構造体を含む仮接着層から容易に引きはがすことが可能だった。
【0142】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。