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特許7698519金属酸化物膜の製造方法、それを用いて製造された金属酸化物膜および電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-17
(45)【発行日】2025-06-25
(54)【発明の名称】金属酸化物膜の製造方法、それを用いて製造された金属酸化物膜および電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10D 30/67 20250101AFI20250618BHJP
   H10D 30/01 20250101ALI20250618BHJP
   H01L 21/368 20060101ALI20250618BHJP
   H10D 64/62 20250101ALI20250618BHJP
【FI】
H10D30/67 103B
H10D30/01 204
H10D30/67 103C
H01L21/368 Z
H10D64/62 B
H10D64/62 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021138317
(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公開番号】P2023032281
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】宮川 幹司
(72)【発明者】
【氏名】中田 充
(72)【発明者】
【氏名】辻 博史
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-091740(JP,A)
【文献】特開2020-096134(JP,A)
【文献】特開2012-257209(JP,A)
【文献】特開2015-111628(JP,A)
【文献】特開2015-111627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 30/67
H10D 30/01
H01L 21/368
H10D 64/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウムを金属成分の主成分とした金属塩からなる無機酸塩を、水溶媒が50%以上の重量を占める溶媒に溶解して、0.01M以上、0.20M以下のモル濃度の水溶性の金属酸化物の前駆体溶液を生成する前駆体溶液生成工程と、
前記前駆体溶液生成工程において生成された前記前駆体溶液を所定の被塗布体上に塗布する前駆体溶液塗布工程と、
前記前駆体溶液塗布工程で所定の被塗布体上に塗布された前記金属酸化物の前駆体溶液の所定領域にエネルギー線を照射し、該所定領域を酸化させて、膜厚が0.5nm以上、5.0nm以下、かつ膜密度が6.0g/cm3以上、7.1g/cm3以下の金属酸化物膜を生成する金属酸化物膜生成工程と、
前記金属酸化物膜生成工程において生成された前記金属酸化物膜をパターニングするエッチング工程と、
を有することを特徴とする金属酸化物膜の製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物膜生成工程において生成される金属酸化物膜の膜厚が0.5nm以上、4.7nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物膜の製造方法。
【請求項3】
前記金属酸化物膜生成工程において生成される金属酸化物膜の膜密度が6.27g/cm3以上、7.10g/cm3以下であることを特徴とする請求項2に記載の金属酸化物膜の製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物膜生成工程において生成される金属酸化物膜の膜厚が0.5nm以上、2.5nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物膜の製造方法。
【請求項5】
前記金属酸化物膜生成工程において生成される金属酸化物膜の膜密度が6.81g/cm3以上、7.10g/cm3以下であることを特徴とする請求項4に記載の金属酸化物膜の製造方法。
【請求項6】
前記金属酸化物膜生成工程におけるエネルギー線照射が、水溶性溶液において、活性酸素種を発生することができる波長が185nm以上、255nm以下の領域におけるエネルギー線照射であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の金属酸化物膜の製造方法。
【請求項7】
前記金属酸化物膜生成工程におけるエネルギー線照射が、窒素雰囲気中のエネルギー線照射であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の金属酸化物膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の金属酸化物膜の製造方法により製造されたことを特徴とする金属酸化物膜。
【請求項9】
請求項8に記載の金属酸化物膜を備えたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項10】
基板上に、少なくとも、ゲート電極、ゲート絶縁膜、前記金属酸化物膜からなる半導体層、およびソース・ドレイン電極を、この順に積層してなる薄膜トランジスタからなることを特徴とする請求項9に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機EL(Electro-Luminescence)素子((OLED(Organic Light Emitting Diode))やLCD(Liquid Crystal Display)等を駆動するために用いられる薄膜トランジスタを形成するための金属酸化物膜の製造方法、それを用いて製造された金属酸化物膜、およびこの金属酸化物膜を搭載した電子デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(以下、TFTとも称する)は、例えば、ディスプレイデバイス向け駆動用トランジスタとして用いられ、各画素における駆動等を行う電子デバイスとして知られている。金属酸化物を半導体材料として用いたTFTは、これまでスパッタリング法や蒸着法等の真空プロセスを用いて製造され、実用化されている。特に材料として、In-Ga-Znを金属種とするIGZO系の金属酸化物TFTにおいては、一般的に5-10 cm2/Vs程度以上の比較的高い移動度を示すことが知られ利用されている。
【0003】
しかし、真空製膜法を用いた場合、大がかりな真空装置が必要となり、生産効率の低下や環境に対する負荷の増大という問題があった。また大面積の基板上に均一な薄膜を形成することが困難であるという点も問題であった。
さらには、4Kや8K等の、ディスプレイの高精細化に伴い、ディスプレイの駆動に必要な半導体におけるキャリアの移動度として10cm2/Vs以上の高い値が要求されており、前述した移動度をさらに高める半導体材料の開発が望まれている。
【0004】
そのため、真空装置を必要とせず、大気下において簡便に製膜することができ、印刷作成が可能な塗布型製膜手法を用いて金属酸化物半導体の高性能化を達成し得る研究開発がなされるに到っている。
【0005】
一般的に、塗布型製膜手法を用いた金属酸化物半導体の製造工程は、基板上に金属酸化物の前駆体溶液を塗布して前駆体薄膜を形成し、その後、この前駆体薄膜を加熱焼成等の酸化処理を施すことにより形成する。
【0006】
ところで、酸化物半導体における膜の緻密さは、膜密度として解析が可能であり、緻密な膜であれば移動度等の電気的特性においても良好であることが報告されている(下記非特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Hong Woo, L. et al. Comprehensive Studies on the Carrier Transporting Property and Photo-Bias Instability of Sputtered Zinc Tin Oxide Thin Film Transistors. IEEE Transactions on Electron Devices 61, 3191-3198, doi:10.1109/ted.2014.2337307 (2014).
【文献】Jeong, J. H. et al. Origin of Subthreshold Swing Improvement in Amorphous Indium Gallium Zinc Oxide Transistors. Electrochemical and Solid-State Letters 11, doi:10.1149/1.2903209 (2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の各文献に記載された手法を用いた場合においても、十分に簡略化された膜形成プロセスとなっているとは言い難く、また、高精細なディスプレイの駆動にも対応し得る高いキャリア移動度を実現するには至っていなかった。
特に塗布法では、前駆体溶液を経由して作成されるため金属塩、溶媒、添加剤等に由来する残留不純物等を多数含み、緻密な膜を形成することが難しい。
【0009】
本発明は、真空成膜法や複雑なプロセスを必要とせず、高精細なディスプレイの駆動にも対応し得る高いキャリア移動度を得ることのできる、緻密な金属酸化物膜の製造方法、それを用いて製造された金属酸化物膜および電子デバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の金属酸化物膜の製造方法は、
インジウムを金属成分の主成分とした金属塩からなる無機酸塩を、水溶媒が50%以上の重量を占める溶媒に溶解して、0.01M以上、0.20M以下のモル濃度の水溶性の金属酸化物の前駆体溶液を生成する前駆体溶液生成工程と、
前記前駆体溶液生成工程において生成された前記前駆体溶液を所定の被塗布体上に塗布する前駆体溶液塗布工程と、
前記前駆体溶液塗布工程で所定の被塗布体上に塗布された前記金属酸化物の前駆体溶液の所定領域にエネルギー線を照射し、該所定領域を酸化させて、膜厚が0.5nm以上、5.0nm以下、かつ膜密度が6.0g/cm3以上、7.1g/cm3以下の金属酸化物膜を生成する金属酸化物膜生成工程と、
前記金属酸化物膜生成工程において生成された前記金属酸化物膜をパターニングするエッチング工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0011】
前記金属酸化物膜生成工程において生成される金属酸化物膜の膜厚が0.5nm以上、4.7nm以下であることが好ましい。
この場合において、前記金属酸化物膜生成工程において生成される金属酸化物膜の膜密度が6.27g/cm3以上、7.10g/cm3以下であることが好ましい。
【0012】
また、前記金属酸化物膜生成工程において生成される金属酸化物膜の膜厚が0.5nm以上、2.5nm以下であることがさらに好ましい。
この場合において、前記金属酸化物膜生成工程において生成される金属酸化物膜の膜密度が6.81g/cm3以上、7.10g/cm3以下であることがさらに好ましい。
【0013】
また、前記金属酸化物膜生成工程におけるエネルギー線照射が、水溶性溶液において、活性酸素種を発生することができる波長が185nm-255nmの領域におけるエネルギー線照射であることが好ましい。
また、前記金属酸化物膜生成工程におけるエネルギー線照射が、窒素雰囲気中のエネルギー線照射であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の金属酸化物膜は、
上述したいずれかの金属酸化物膜の製造方法により製造されたことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の電子デバイスは、
上述した金属酸化物膜を備えたことを特徴とするものである。
この電子デバイスは、基板上に、少なくとも、ゲート電極、ゲート絶縁膜、前記金属酸化物膜からなる半導体層、およびソース・ドレイン電極を、この順に積層してなる薄膜トランジスタとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の金属酸化物膜の製造方法、それを用いて製造された金属酸化物膜および電子デバイスによれば、真空法やフォトリソグラフィーの手法を用いないで行うことができることから、大掛かりな設備や複雑なプロセスを必要とせず金属酸化物膜の製造を簡易に行うことができる。
【0017】
また、従来、半導体層におけるキャリアの移動度を大きくするには、膜厚をある程度大きくする(例えば、10nm-20nm程度以上とする)ことが有効とされている。
しかし、本願発明者は、塗布型製膜法において金属酸化物膜を形成する場合にも、そのような定説を適用し得るのかについて疑問を持ち、詳細な実験を重ねた結果、少なくとも上記の場合には、膜厚を極限状態付近まで薄くすることにより、膜組織の結晶化度が大幅に向上するとの結果を得た。本願発明者は、この実験結果に基づき、上記膜厚を5nm以下まで薄くすることにより、高いキャリア移動度を得ることができるとの事実を見出し、本発明をなしたものである。
【0018】
具体的には、金属酸化物の前駆体溶液を0.01M以上、0.20M以下のモル濃度の溶液とし、生成した金属酸化物膜の膜厚を0.5nm以上、5.0nm以下に設定し、金属酸化物膜の膜密度を6.0g/cm3以上、7.10g/cm3以下に設定することにより、例えば、4Kや8K等の高精細なディスプレイの駆動にも対応し得る、27cm2/Vs以上のキャリア移動度を得ることのできる、緻密で高性能な金属酸化物膜を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る金属酸化物膜の製造方法の各工程(A)および従来技術に係る金属酸化物膜の製造方法の各工程(B)を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る薄膜トランジスタ(電子デバイス)の構造を示す積層断面図((A)はエッチングストップ層なし、(B)はエッチングストップ層あり)である。
図3図1に示す実施形態における前駆体溶液塗布工程(A)、エネルギー線照射工程(金属酸化物膜生成工程)(B)、およびエッチング工程(C)における作用を概念的に示す図である。
図4】実施例に係る評価用のTFT素子の構成を示す概略図である。
図5】実施例および比較例に係るTFT(サンプル1~5)の金属酸化物膜の膜厚(nm)と膜密度(g/cm3)の関係を示すグラフである。
図6】実施例2に係るTFT(サンプル2)の膜密度測定結果を示すグラフ(A)および比較例1に係るTFT(サンプル3)の膜密度測定結果を示すグラフ(B)である。
図7】実施例および比較例に係るTFT(サンプル1~3)の金属酸化物膜の膜厚(nm)と結晶化度(%)の関係を示すグラフである。
図8】実施例2(実線)および比較例1(破線)に係るTFTの金属酸化物膜の結晶化度を示す、XRDにより得られた回折スペクトル((B)は(A)の一部拡大図)である。
図9】実施例1に係るTFT(サンプル1)のゲート電圧‐ドレイン電流特性を示すグラフ(A)、および比較例1に係るTFT(サンプル3)のゲート電圧‐ドレイン電流特性を示すグラフ(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る金属酸化物膜の製造方法、それを用いて製造された金属酸化物膜および電子デバイスについて説明する。
【0021】
≪実施形態≫
まず、本実施形態に係る金属酸化物膜の製造方法について説明するが、その前提として、この金属酸化物膜が半導体層(チャネル層)として積層されるTFTの断面構造について簡単に説明する。
図2(A)は、一般に知られているTFTの断面構造(第1の例:エッチングストップ層なし)を示すものであり、基板101上に、ゲート電極102、ゲート絶縁膜103、金属酸化物膜からなる半導体層104、ソース・ドレイン電極106が積層して構成される。
図2(B)も、一般に知られているTFTの断面構造(第2の例:エッチングストップ層あり)を示すものであり、基板201上に、ゲート電極202、ゲート絶縁膜203、金属酸化物膜からなる半導体層204、半導体層204をエッチングから保護するためのエッチングストップ層205、およびソース・ドレイン電極206が積層して構成される。
【0022】
次に、本実施形態の金属酸化物膜の製造方法について詳しく説明する。また、この製造方法により製造された金属酸化物膜および薄膜トランジスタ(TFT)についても説明を加える。
TFTの層としては、図2(A)に示すように構成されたものを想定する。
すなわち、基板101上に、ゲート電極102、ゲート絶縁膜103、金属酸化物膜からなる半導体層104およびソース・ドレイン電極106を順次形成する。半導体層104は水溶性金属酸化物前駆体溶液を塗布され、この後の処理により金属酸化物膜が形成される。
【0023】
なお、本発明に係る金属酸化物膜の製造方法としては、TFTの金属酸化物膜の製造方法に限られるものではなく、その他の種々の電子デバイスの金属酸化物膜の製造方法に適用することができる。また、半導体特性を示す酸化物の製造のみならず、電極等に利用される導電性特性を示す酸化物や、絶縁性特性を示す酸化物の製造方法にも適用することができる。
【0024】
(1)まず、基板101の形成材料を洗浄し、表面にバリア層や平坦化層(無機薄膜や有機薄膜)をスパッタリング等により製膜形成し、ゲート電極(例えば金、チタン、クロム、アルミニウム、モリブデンもしくはそれらの合金や積層膜等)102を形成し、所望の形状となるようにパターニングを行う。微細なパターン形成には、フォトリソグラフィー(紫外線露光による微細加工技術)が用いられる。
【0025】
(2)次にゲート絶縁膜103を形成する。ゲート絶縁膜103としては、比誘電率の高い無機酸化物皮膜により構成することが好ましい。無機酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン等がある。窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も用いることができる。
【0026】
(3)次に水溶性金属酸化物前駆体を用いて半導体層104の形状を形成する。半導体層104の形成工程では、前工程として水溶性金属酸化物の前駆体溶液を生成する前駆体溶液生成工程を行う。
この金属酸化物の前駆体溶液生成工程においては、前駆体溶液として無機酸塩を用いる。具体的には、インジウムを主成分とする金属の硝酸塩を用い、モル濃度は0.01M以上、0.20M以下に規定することが必要とされるが、モル濃度を0.05M以上、0.20M以下に規定することがさらに好ましい。
【0027】
上記金属酸化物の金属としては、インジウム以外に、その他の金属を少量加えることも可能であり、その他の金属としては酸化物半導体への適用が可能な酸化物を形成する金属原子含有化合物が挙げられ、金属原子を含む、金属塩、ハロゲン化金属化合物、有機金属化合物等とすることができる。具体的な金属原子としては、ガリウム、亜鉛、アルミニウム、ストロンチウム、ジルコニウム、スズ等が挙げられる。
【0028】
また、溶液濃度を調整することで膜厚を変化させることができるが、溶液のモル濃度を0.20M以下とすることで、塗布工程後に作成される金属酸化物膜の膜厚を5.0nm以下とすることが可能となる。本願発明者等の研究によれば、金属酸化物膜の膜厚を5.0nm以下とすることで、良好な半導体特性を有するTFTを作成可能であることがつきとめられており、そのための条件として前駆体溶液のモル濃度を0.20M以下とすることが肝要である。
なお、膜として良好に機能させるためには、前駆体溶液のモル濃度を0.01M以上、好ましくは0.05M以上とし、金属酸化物膜の厚みとして0.5nm以上を確保する。さらに、膜の製造性を良好なものとするためには、金属酸化物膜の厚みを、2nm以上とすることが肝要である。
【0029】
溶媒比率において、水溶媒を100%とすることが好ましいが、塗布性を改善させるために、有機溶媒を混合させることができる。その場合に、水の溶媒比率を、50%の比率まで低下させた状態においても、パターニング性および電子デバイスとしての電気特性を所定の基準値まで到達させることができる。
水の他に少量含むことができる溶媒としては、塗布性を改善するために、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、2-メトキシエタノール、アセトニトリル等の溶媒を合わせて混入し、用いることができる。さらに溶解性を改善するために、Phを酸性または塩基性とすることも可能である。
【0030】
上述した(3)に示す前駆体溶液生成工程が終了すると、この生成された前駆体溶液により半導体層104が形成される。
すなわち、図1(A)に示すように、前駆体溶液塗布工程(a)、ソフトアニーリング工程(b)、エネルギー線照射工程(c)、およびエッチング工程(d)をこの順に行って、半導体層104を生成する。
これに対し、従来技術に係る半導体層104の形成工程においては、図1(B)に示すように、前駆体溶液塗布工程(a)、アニーリング工程(b)、フォトレジ塗布工程(c)、エネルギー線照射工程(d)、現像工程(e)、エッチング工程(f)、および膜除去工程(g)の順に行うフォトリソグラフィープロセスを採用しており、本実施形態の製造方法では、このような従来技術と比べると、工程数が少なく処理が簡易となっていることが明らかである。
【0031】
上記説明に戻ると、まず、図1(A)(a)に示すように、上述した前駆体溶液生成工程において生成された、インジウムを主成分とする金属の硝酸塩からなる前駆体溶液を、基板101の上面に塗布することにより前駆体溶液の薄膜を形成する。半導体層104の厚みは、溶液濃度によって、また、溶液を塗布する回数によって調整することができる。
【0032】
なお、半導体層104の厚みとしては0.5nmから5.0nmとする。塗布する手法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法等の印刷法等を用いることができる。
【0033】
次に、図1(A)(b)に示すように、ソフトアニーリング(低温乾燥等の乾燥処理を行う)工程を行う。
ソフトアニーリング工程は、いわば緩やかな乾燥工程とも称されるものであり、具体的には、半導体層104が水分を多く含む状態であるので、溶媒の主成分である水を残留させることを目的として行われるものであって、この後に行われるエネルギー線照射工程において形成するパターンの酸化処理の実効を担保するためになされる工程である。
ソフトアニーリング処理としては、低温乾燥、自然乾燥、減圧乾燥、熱風・冷風・室温風乾燥、赤外光乾燥等を用いることができる。マイクロ波による加熱装置による反応で乾燥させてもよい。
【0034】
次に、図1(A)(c)に示すように、エネルギー線照射工程を行う。
このエネルギー線照射工程においては、半導体層104内に残留する水分に対し紫外線等のエネルギー線を照射することで、金属酸化物膜のパターン化を容易に行うことができる。上記ソフトアニーリング工程およびこのエネルギー線照射工程を合わせた金属酸化物膜生成工程を実行することで、図3(A)に示す状態から図3(B)に示す状態へ変化する。
すなわち、このエネルギー線照射工程においては、膜内に残存する水分子に対しエネルギー線を照射して、下記の光化学反応(光酸化(不溶な酸化物の生成))を生じさせる。
H2O + hν → HO・+・H
このことにより、活性酸素種であるヒドロキシルラジカル(OH・)が生成される。
【0035】
ここで照射される紫外線の波長は180~400nmが好適に選択され、さらに好ましくは、185~255nmが選択される。例えばエキシマランプ、重水素ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ヘリウムランプ、カーボンアークランプ、カドミウムランプ、無電極放電ランプ等からの紫外線が挙げられる。なお、低圧水銀ランプを用いると容易に前駆体膜から酸化物膜への転化が行えることから、より好ましい。この際にパターンを有する遮光マスクを介して照射することにより、選択的な酸化処理が可能となり、容易にパターンを形成することができる。
【0036】
この時の紫外光によるエネルギー照射は、紫外線が空気中の酸素と反応する波長帯であるため、少なくとも酸素が減圧された、いわゆる窒素雰囲気下にて照射処理がなされることが望ましい。酸素が減圧されない場合は、マスク上に光を照射しても所望のパターンを得ることができない。
【0037】
この水溶性金属酸化物の前駆体を用いて作成する酸化物薄膜は、膜厚が0.5nm-5.0nmと薄い場合には、光による酸化プロセスを効率的に行うことができる。図3(B)に示すように、膜の厚みが薄い場合は、膜内部まで十分に光酸化を行うことができる。すなわち、照射面側から生じる光酸化処理を膜内部まで十分に及ぼすことができ、上下方向に緻密で略均一な膜形成が可能な厚みが5.0nm以下であり、本実施形態においては、膜厚をこの範囲に設定している。
【0038】
一方、従来のように、膜が厚い場合(例えば10nm-20nm)には、照射面側と基板面側の膜領域の間で光酸化時のグラデーションが生じてしまい、半導体層104としてTFTに適用した場合には、デバイス特性の信頼性等に問題が生じる。その結果、TFTにおいて良好なスイッチング特性を得ることが困難となる。
また、本実施形態においては、金属酸化物膜の厚みを0.5nm以上としている。これは、金属酸化物膜の厚みを0.5nm未満とした場合は、インジウムを主成分とする酸化物半導体層104としての機能を果たすことが困難となること、また生産性が悪くなることから、実現性が難しくなることを考慮したものである。
【0039】
以上のようにして、エネルギー線照射工程が終了した後、図1(A)(d)に示すように、酸化処理がなされていない領域(例えばマスクによりエネルギー線が照射されていない領域)に塗布されている前駆体膜を除去するエッチング工程を行う。
エッチング工程では、金属酸化物膜に対してダメージが少ないエッチング溶液を用いることが好ましく、具体的には適度に濃度を調整した酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、ギ酸、グリコール酸、マレイン酸等、一般に知られている有機酸を用いればよい。
【0040】
エッチング後に純水等によりリンス処理を十分行うことにより、エネルギー線照射工程で選択的に照射された領域のみ、酸化物薄膜をパターン化することができる。
【0041】
なお、この後、上記パターン化した金属酸化物膜について、さらに焼成処理を施すことによって、酸化処理を促進し、さらに優れた特性を有するTFTの半導体層104を得ることができる。この場合の焼成処理は、例えば、150℃から400℃にて30分間から6時間の範囲の時間とする。
このときの焼成処理においては、自然乾燥や熱風・冷風・室温風乾燥、赤外光乾燥、減圧乾燥等を用いることができる。マイクロ波による加熱装置による乾燥であってもよい。それぞれの焼成プロセスは大気中だけでなく、酸素、窒素、アルゴン等のガス雰囲気中において行うことも可能である。
【0042】
(4)以上のようにして、金属酸化物からなる半導体層104の形成が終了すると、この半導体層104上に、図2(A)に示すようなソース・ドレイン電極106を形成する工程がなされることになる。
【0043】
ソース・ドレイン電極106の材料としては、ITO、IZO等の透明電極や、Al、Ag、Cr、Mo、Ti等の金属電極やこれらの合金を用いることができる。2層以上の積層膜とすることによりコンタクト抵抗を低減させることができ、また密着性を向上させることができる。
【0044】
なお、エッチング溶液としてはリン酸・酢酸・硝酸の混酸(PANエッチャント)やシュウ酸等様々なエッチング液を用いることができる。ソース・ドレイン電極106をウェットエッチングでパターニングする際、半導体層104へのダメージを緩和するために、エッチングストップ層(図2(B)のエッチングストップ層205に相当する)を形成してもよく、このようにすることで半導体特性の劣化を抑制することができる。エッチングストップ層としては、ゲート絶縁膜103と同様の材料を適用可能である。
【0045】
また、ソース・ドレイン電極106および上述したゲート電極102においては、酸化物の組成を導電性の高い材料とすることにより、水溶性金属酸化物前駆体を用いて酸化物に係る導電膜を形成することも可能である。ここでの導電膜を形成する場合における前駆体溶液としては、無機酸塩とする。より具体的には硝酸塩、塩化物塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、フッ化物塩の少なくとも1種の金属塩より構成する。
【0046】
上記導電性の高い材料としては、酸化により導電体特性を示す酸化物(酸化物導体材料)を形成する金属原子含有化合物が挙げられ、金属原子を含む、金属塩、ハロゲン化金属化合物、有機金属化合物等を挙げることができる。具体的な金属元素としては、インジウム、ガリウム、亜鉛、スズ等を挙げることができる。
具体的な酸化物導体材料としては、In-Sn系酸化物、Ga-Zn系酸化物、In-Zn系酸化物、Zn系酸化物等が考えられるが、これに限定されるものではない。
半導体層104において作成した手法と同様の手法を用いて、膜内に残留する水分に対し紫外線等のエネルギー線を照射することで、金属酸化物膜のパターン化を容易に行うことができる。
【0047】
また同様な手法を用いて、酸化物における金属元素の構成を、例えばZr、Hf、Al等とすることにより、高誘電特性を有する絶縁膜への応用可能な機能性酸化物を形成することができる。
以上により、簡易な手法で、TFTを形成することができる。
【0048】
ところで、本実施形態においては、半導体層104の厚みを0.5nmから5.0nmの薄い膜とすることによって、特性に優れたTFTを作成することができる。
これは、特に、インジウム酸化物を主成分とする膜(以下、単にインジウム酸化物膜と称する)の場合には、上記のように薄い膜とすることで、緻密な膜を形成することが可能となるからである。
【0049】
インジウム酸化物膜を0.5nmから5.0nmの薄い膜とした場合に緻密な膜を形成することが可能であることは、インジウム酸化物膜の厚みに対する、インジウム酸化物膜の密度(X線反射率測定により得られる)の特性を得ることにより明らかとなる。
【0050】
X線反射率測定の結果、インジウム酸化物膜を5.0nm以下の薄い膜とした場合には、インジウム酸化物膜の密度を6.0g/cm3以上とすることができることが明らかとなった(後述する実施例の説明を参照)。インジウム酸化物の膜密度の理論値の最大値は7.1 g/cm3であるから、膜密度を6.0g/cm3以上とすることにより、膜の均一性(結晶化度)を良好なものとすることができることが明らかである。したがって、インジウム酸化物膜を5.0nm以下の薄い膜とすることにより膜の均一性(結晶化度)を良好なものとすることができ、TFT等に用いる場合には、半導体層104のキャリア移動度等の半導体特性を高めることができる。
【0051】
上述したX線回折による結晶性の評価は、膜質を評価する手法として知られている。
一般的にはX線回折におけるピーク強度が物質の量に比例することが知られており、結晶性の回折ピークと非晶性の回折ピークを加算した全散乱強度に対する結晶性の散乱強度の割合(下式(1)により表される)により、作成した薄膜の結晶化度を評価することができる。
【0052】
【数1】
本実施形態により作成したインジウム酸化物(In2O3)膜について、上式(1)を用いて算出すると、結晶化度が90%以上の良質な薄い膜が得られることが明らかである。すなわち、本実施形態により半導体の物性的な特性を向上することができ、薄膜トランジスタとして適用する際にはキャリアの高移動度化を実現できる。
【実施例
【0053】
本実施例に係る評価用TFTとして、厚みが100nmの熱酸化膜付の低抵抗シリコンウエハを用い、図4に示すようなTFT素子を作成した。
すなわち、本実施例においては、基板1、ゲート電極2およびゲート絶縁膜3として熱酸化膜付の低抵抗シリコンウエハを用いた。次に、半導体層4を形成するために、スピンコート法により金属酸化物前駆体溶液をシリコンウエハ上に塗布した。
【0054】
金属酸化物膜形成のための水溶性金属酸化物前駆体としては、硝酸インジウム水和物(In(NO3)3・xH2O Aldrich製)を秤量し、純水中に溶解させ、下表1に示す塗布型半導体前駆体溶液を作成した。このときサンプルの濃度を以下の表1のように可変させた。ここで、サンプル1、2は実施例1、2のためのものでありであり、サンプル3、4、5は、実施例1、2と比較するために作成された比較例1、2、3のためのものである。
【表1】
その後、室温にて、6時間撹拌することで完全に溶解した状態の前駆体溶液を作成した。
【0055】
続いて、このようにして作成された前駆体溶液をスピンコート法(スピン回転数は4000rpm)を用いてシリコンウエハ上に塗布し、溶媒の主成分である水が膜内に残留するよう低温(70度)のホットプレート上にて1分間乾燥させた。
【0056】
その後、熱酸化膜付の低抵抗シリコンウエハ(基板1、ゲート電極2、ゲート絶縁膜3を含む)上に形成された半導体層4のパターン形状を有するマスクを、この塗布された金属酸化物前駆体膜上にセットし、このマスクを介して金属酸化物前駆体膜上に、低圧水銀ランプによる紫外線照射を10分間に亘って行った。主な紫外線の波長は185nmおよび254nmであった。これにより、金属酸化物前駆体膜の酸化処理プロセスを行った。このとき、前駆体膜内に残存する水に紫外線が照射することにより、ラジカル化したヒドロキシラジカルによる部分的な酸化処理を行い、金属酸化物膜を作成した。
【0057】
その後、ヒドロキシカルボネート系の有機酸であるクエン酸の0.1%溶液にてエッチング処理を行い、酸化処理が施されていない、前記紫外線の非照射領域における金属酸化物前駆体膜が除去されることになる。
以上により、所望のパターンを有する金属酸化物膜よりなる半導体層4を形成した。
【0058】
その後、金属酸化物膜について、350℃の大気雰囲気オーブンにて1時間焼成処理を行い、半導体層4を形成した。
このときの半導体層4の膜厚は15 nmであった。
続いて、所定形状のメタルマスクによりマスキングし、モリブデンを用いた、DCスパッタリング法によりソース・ドレイン電極6a、6bを形成した。
これにより、評価用のTFTを作成した。
このときの膜厚はそれぞれ下表2に示す値であった。すなわち、実施例1では膜厚2.5nm、実施例2では膜厚4.7nm、比較例1では膜厚12.5nm、比較例2では膜厚15.0nm、比較例3では膜厚20.5nmであった。
【0059】
【表2】
【0060】
得られた実施例および比較例のTFTに対して、半導体特性を評価したものを下表3に示す。また、X線反射率測定およびX線回折法を用いて、各実施例および各比較例について、膜密度および結晶性の評価を行った。
【表3】
【0061】
溶液濃度が十分薄い場合(実施例1、2)には、5nm以下の薄膜を形成することができ、その後、続けて行う光酸化プロセスにより深さ方向に組成むらのない良好な薄膜を形成することができる。これに対して、溶液濃度が濃い場合(比較例1、2、3)には、深さ方向における光酸化が十分になされず、結果として膜質が悪化し、得られる半導体特性も所望の特性を得ることは難しい。
すなわち、実施例1、2のものでは、キャリア移動度(cm2/Vs)は各々、30.6および27.6となるが、比較例1、2、3のものでは、キャリア移動度(cm2/Vs)を検出することができない。
【0062】
また、実施例1、2のものでは、膜密度(g/cm3)は各々、6.81および6.27であり、いずれも6.0以上と良好であるが、比較例1、2、3のものでは、膜密度(g/cm3)は各々、5.81、5.51、5.32と6.00未満で、良好とは言えない。このことは図5のグラフによっても表されており、膜厚が5nm以下となると膜密度が6.00g/cm3を大きく上回り、半導体特性が向上することが明らかである。
【0063】
また、実施例2および比較例1における、X線入射角度(deg.)に対する反射率の関係を表すグラフを、図6(A)および図6(B)に示す。この図6(A)および図6(B)に示すグラフの形状から、実施例2の方が比較例1よりも膜密度が高いことが明らかである。
さらに、図7は膜厚(nm)に対する結晶化度(%)の関係を示すものであり、膜厚が5nm以下となると結晶化度が95%以上と高い値を示す。
【0064】
また、上記実施例および比較例の膜質を評価する手法として、X線回折法を用いて結晶性(結晶化度)の評価を行った。結晶化度の評価においては、前述した式(1)にて導出された結晶化度を用いて行った。XRD測定装置としてはリガク社製SmartLab(XRD)を用いた。
なお、図8に示すように、In2O3の結晶の回折強度は、回折角30度の222のピーク(結晶性の回折ピーク)の面積を用い、非晶質の散乱強度としては回折角30度付近の非晶性の回折ピークの面積を用いた。
【0065】
また、図9は、実施例に係るTFT(実施例1)のゲート電圧‐ドレイン電流特性を示すグラフ(A)、および比較例に係るTFT(比較例1)のゲート電圧‐ドレイン電流特性を示すグラフ(B)である。これらの図から、実施例1のものでは良好なスイッチング特性が得られ、比較例1のものでは良好なスイッチング特性を得ることができない、ことが明らかである。
【0066】
本発明の金属酸化物膜の製造方法、それを用いて製造された金属酸化物膜および電子デバイスとしては、上記実施形態に記載したものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。例えば、本発明の実施形態においては、金属酸化物膜は塗布型とされており、それ以外の各層は必ずしも塗布型とはされていないが、その他の層も塗布型とするようにしてもよく、全ての層を塗布型とした場合には、真空中で処理を行うためのシステムを全て不要とすることができる。
【0067】
また、本発明の電子デバイスがTFTを構成する場合にも、上記実施形態に記載したものに限られるものではなく、実施形態において示す各層間に他の層を介在させる構成とすることも可能である。
また、上記実施形態においては、電子デバイスであるTFTとして、ボトムゲート型の構成のものについて説明しているが、本発明の電子デバイスとしては、トップゲート型のTFTも同様に適応し得る。但し、トップゲート型のTFTの場合には、金属酸化物膜の前駆体溶液は、通常、ソース・ドレイン電極や基板上に塗布されて金属酸化物膜が形成されることになる。
【0068】
また、本発明の金属酸化物膜の製造方法は、TFTの半導体層(チャンネル層)の製造方法として用いられるものに限られず、液晶、プラズマ、EL等の表示素子、太陽電池、さらにはタッチパネルや各種電極等の製造方法にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0069】
1、101、201 基板
2、102、202 ゲート電極
3、103、203 ゲート絶縁膜
4、104、204 半導体層(金属酸化物膜)
205 エッチングストップ層
106、206 ソース・ドレイン電極
6a ソース電極
6b ドレイン電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9