(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-18
(45)【発行日】2025-06-26
(54)【発明の名称】電気化学アッセイ装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/28 20060101AFI20250619BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20250619BHJP
【FI】
G01N27/28 321A
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2023559504
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2022038699
(87)【国際公開番号】W WO2023085006
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2024-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2021185655
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(72)【発明者】
【氏名】渕脇 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山村 昌平
(72)【発明者】
【氏名】民谷 栄一
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113460(JP,A)
【文献】特開2012-112724(JP,A)
【文献】特開2011-220808(JP,A)
【文献】国際公開第2020/045551(WO,A1)
【文献】特開2019-144133(JP,A)
【文献】特開2021-143909(JP,A)
【文献】国際公開第2021/125173(WO,A1)
【文献】特開2009-204339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26 - 27/49
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入口から注入された液体が流れる内部流路と、前記内部流路を通過した液体を吸収する液体吸収材とを有し、電気化学法によるアッセイが可能に構成された電気化学アッセイ装置であって、
前記内部流路は、前記注入口に連通するマイクロ流路と、前記マイクロ流路と前記液体吸収材の間に設けられ、液体の注入が停止されたときに前記内部流路内の液体を前記マイクロ流路に留置される分と前記液体吸収材に吸収される分に分離させるための分離流路とを含み、
前記内部流路は、前記内部流路の上壁を構成する上壁部を有する上側流路形成部材と、前記内部流路の下壁を構成する下壁部を有する下側流路形成部材と、前記上側流路形成部材と前記下側流路形成部材の間でスペーサとして機能する中間部材とが積み重ねられて形成され、
前記マイクロ流路の両側には前記マイクロ流路に連通する第1側方空間が設けられ、及び前記分離流路の両側には前記分離流路に連通する第2側方空間が設けられており、
電極部と、外部の測定装置に接続される接続部と、前記電極部と前記接続部を電気的に接続する導線部と
が前記下側流路形成部材に形成され、
前記電極部は前記下側流路形成部材の前記マイクロ流路の下壁を構成する部位に形成され、前記接続部は装置外方に突出する前記下側流路形成部材の突出部に形成され、前記導線部は前記電極部と前記接続部をつなぐように前記下側流路形成部材に形成されている、
電気化学アッセイ装置。
【請求項2】
注入口から注入された液体が流れる内部流路と、前記内部流路を通過した液体を吸収する液体吸収材とを有し、電気化学法によるアッセイが可能に構成された電気化学アッセイ装置であって、
前記内部流路は、前記注入口に連通するマイクロ流路と、前記マイクロ流路と前記液体吸収材の間に設けられ、液体の注入が停止されたときに前記内部流路内の液体を前記マイクロ流路に留置される分と前記液体吸収材に吸収される分に分離させるための分離流路とを含み、
前記内部流路は、前記内部流路の上壁を構成する上壁部を有する上側流路形成部材と、前記内部流路の下壁を構成する下壁部を有する下側流路形成部材と、前記上側流路形成部材と前記下側流路形成部材の間でスペーサとして機能する中間部材とが積み重ねられて形成され、
前記マイクロ流路の両側には前記マイクロ流路に連通する第1側方空間が設けられ、及び前記分離流路の両側には前記分離流路に連通する第2側方空間が設けられており、
電極部と、外部の測定装置に接続される接続部と、前記電極部と前記接続部を電気的に接続する導線部とが前記上側流路形成部材に形成され、
前記電極部は前記上側流路形成部材の前記マイクロ流路の上壁を構成する部位に形成され、前記接続部は装置外方に突出する前記上側流路形成部材の突出部に形成され、前記導線部は前記電極部と前記接続部をつなぐように前記上側流路形成部材に形成されている、
電気化学アッセイ装置。
【請求項3】
前記電極部、前記接続部、及び前記導線部は、前記
下側流路形成部材上に又は前記
上側流路形成部材上に導電材料が印刷されることによって形成されている、請求項
1又は2に記載の電気化学アッセイ装置。
【請求項4】
前記電極部は、作用極、対極、及び参照極を含み、
装置外面に開口し、外部から前記電極部の近傍を観察するための観察窓を有する、
請求項1又は2に記載の電気化学アッセイ装置。
【請求項5】
前記接続部は、液体の流れ方向において前記液体吸収材を挟んで前記電極部とは反対側に設けられ
ている、請求項1
又は2に記載の電気化学アッセイ装置。
【請求項6】
前記接続部は、液体の流れ方向において前記注入口を挟んで前記電極部とは反対側に設けられ
ている、請求項1
又は2に記載の電気化学アッセイ装置。
【請求項7】
前記接続部は、液体の流れ方向に直交する幅方向において前記電極部から離隔して設けられ
ている、請求項1
又は2に記載の電気化学アッセイ装置。
【請求項8】
注入口から注入された液体が流れる内部流路と、前記内部流路を通過した液体を吸収する液体吸収材とを有し、電気化学法によるアッセイが可能に構成された電気化学アッセイ装置であって、
前記内部流路は、前記注入口に連通するマイクロ流路と、前記マイクロ流路と前記液体吸収材の間に設けられ、液体の注入が停止されたときに前記内部流路内の液体を前記マイクロ流路に留置される分と前記液体吸収材に吸収される分に分離させるための分離流路とを含み、
前記内部流路は、前記内部流路の上壁を構成する上壁部を有する上側流路形成部材と、前記内部流路の下壁を構成する下壁部を有する下側流路形成部材と、前記上側流路形成部材と前記下側流路形成部材の間でスペーサとして機能する中間部材とが積み重ねられて形成され、
前記マイクロ流路の両側には前記マイクロ流路に連通する第1側方空間が設けられ、及び前記分離流路の両側には前記分離流路に連通する第2側方空間が設けられており、
前記液体の流れ方向に互いに離隔した複数の電極部と、それぞれが前記複数の電極部のいずれか対して前記液体の流れ方向に直交する幅方向に離隔して設けられ、外部の測定装置に接続される複数の接続部と、それぞれが対応する電極部と接続部を電気的に接続する複数の導線部と
が前記下側流路形成部材に形成され、
前記複数の電極部は前記下側流路形成部材の前記マイクロ流路の下壁を構成する部位に形成され、前記複数の接続部は装置外方に突出する前記下側流路形成部材の複数の突出部に形成され、前記複数の導線部はそれぞれ対応する電極部と接続部とをつなぐように前記下側流路形成部材に形成されている、
電気化学アッセイ装置。
【請求項9】
注入口から注入された液体が流れる内部流路と、前記内部流路を通過した液体を吸収する液体吸収材とを有し、電気化学法によるアッセイが可能に構成された電気化学アッセイ装置であって、
前記内部流路は、前記注入口に連通するマイクロ流路と、前記マイクロ流路と前記液体吸収材の間に設けられ、液体の注入が停止されたときに前記内部流路内の液体を前記マイクロ流路に留置される分と前記液体吸収材に吸収される分に分離させるための分離流路とを含み、
前記内部流路は、前記内部流路の上壁を構成する上壁部を有する上側流路形成部材と、前記内部流路の下壁を構成する下壁部を有する下側流路形成部材と、前記上側流路形成部材と前記下側流路形成部材の間でスペーサとして機能する中間部材とが積み重ねられて形成され、
前記マイクロ流路の両側には前記マイクロ流路に連通する第1側方空間が設けられ、及び前記分離流路の両側には前記分離流路に連通する第2側方空間が設けられており、
前記液体の流れ方向に互いに離隔した複数の電極部と、それぞれが前記複数の電極部のいずれか対して前記液体の流れ方向に直交する幅方向に離隔して設けられ、外部の測定装置に接続される複数の接続部と、それぞれが対応する電極部と接続部を電気的に接続する複数の導線部とが前記上側流路形成部材に形成され、
前記複数の電極部は前記上側流路形成部材の前記マイクロ流路の上壁を構成する部位に形成され、前記複数の接続部は装置外方に突出する前記上側流路形成部材の複数の突出部に形成され、前記複数の導線部はそれぞれ対応する電極部と接続部とをつなぐように前記上側流路形成部材に形成されている、
電気化学アッセイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッセイ装置に関し、特に、微量な液体を用いると共に電気化学法によるアッセイを行うことができる電気化学アッセイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、微量な液体を用いてアッセイを行う従来のアッセイ装置の一例が記載されている。特許文献1に記載されたアッセイ装置は、流体を流すことができるように構成されるマイクロ流路と、前記流体の流れ方向の一端側に位置する前記マイクロ流路の一端部と間隔を空けて配置される吸収用多孔質媒体と、前記マイクロ流路の一端部と前記吸収用多孔質媒体の間に配置される分離空間と、前記マイクロ流路と連通するように前記マイクロ流路に対して、前記流れ方向に直交する幅方向の両側にそれぞれ隣接し、かつ空気を流通可能とする2つの側方通気路とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたアッセイ装置は、前記マイクロ流路内における酵素反応などにより光学的シグナル(発色や化学発光など)を検出するものであり、電気化学法によるアッセイが可能な構成にはなっていない。
【0005】
一般に、電気化学法を利用するセンサ等は、迅速な計測が可能であること、ノイズの影響を比較的受けにくいこと、及びアナライザー装置の小型化が可能であることなどから、現場での計測作業に適している。実際、SMBG(血糖自己測定)のような指先から採血して血糖値を測る小型の血糖値センサをはじめとする半導体バイオセンサなど、バイオエレクトロニクス技術によるセンサデバイスの多くは、電気化学法を利用して実用化されている。このため、アッセイ装置においても電気化学法を利用できるようにすることが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、微量な液体を用いると共に電気化学法によるアッセイを行うことができる電気化学アッセイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、電気化学アッセイ装置は、注入口から注入された液体が流れる内部流路と、前記内部流路を通過した液体を吸収する液体吸収材とを有し、電気化学法によるアッセイが可能に構成されている。前記内部流路は、前記注入口に連通するマイクロ流路と、前記マイクロ流路と前記液体吸収材の間に設けられ、液体の注入が停止されたときに前記内部流路内の液体を前記マイクロ流路に留置される分と前記液体吸収材に吸収される分に分離するための分離流路とを含む。前記内部流路は、前記内部流路の上壁を構成する上壁部を有する上側流路形成部材と、前記内部流路の下壁を構成する下壁部を有する下側流路形成部材と、前記上側流路形成部材と前記下側流路形成部材の間でスペーサとして機能する中間部材とが積み重ねられて形成され、前記マイクロ流路の両側には前記マイクロ流路に連通する第1側方空間が設けられ、及び前記分離流路の両側には前記分離流路に連通する第2側方空間が設けられている。そして、電極部と、外部の測定装置に接続される接続部と、前記電極部と前記接続部を電気的に接続する導線部とが前記下側流路形成部材に形成され、前記電極部は前記下側流路形成部材の前記マイクロ流路の下壁を構成する部位に形成され、前記接続部は装置外方に突出する前記下側流路形成部材の突出部に形成され、前記導線部は前記電極部と前記接続部をつなぐように前記下側流路形成部材に形成されている。あるいは、電極部と、外部の測定装置に接続される接続部と、前記電極部と前記接続部を電気的に接続する導線部とが前記上側流路形成部材に形成され、前記電極部は前記上側流路形成部材の前記マイクロ流路の上壁を構成する部位に形成され、前記接続部は装置外方に突出する前記上側流路形成部材の突出部に形成され、前記導線部は前記電極部と前記接続部をつなぐように前記上側流路形成部材に形成されている。
【0008】
本発明の他の側面によると、電気化学アッセイ装置は、注入口から注入された液体が流れる内部流路と、前記内部流路を通過した液体を吸収する液体吸収材とを有し、電気化学法によるアッセイが可能に構成されている。前記内部流路は、前記注入口に連通するマイクロ流路と、前記マイクロ流路と前記液体吸収材の間に設けられ、液体の注入が停止されたときに前記内部流路内の液体を前記マイクロ流路に留置される分と前記液体吸収材に吸収される分に分離するための分離流路とを含む。前記内部流路は、前記内部流路の上壁を構成する上壁部を有する上側流路形成部材と、前記内部流路の下壁を構成する下壁部を有する下側流路形成部材と、前記上側流路形成部材と前記下側流路形成部材の間でスペーサとして機能する中間部材とが積み重ねられて形成され、前記マイクロ流路の両側には前記マイクロ流路に連通する第1側方空間が設けられ、及び前記分離流路の両側には前記分離流路に連通する第2側方空間が設けられている。そして、前記液体の流れ方向に互いに離隔した複数の電極部と、それぞれが前記複数の電極部のいずれか対して前記液体の流れ方向に直交する幅方向に離隔して設けられ、外部の測定装置に接続される複数の接続部と、それぞれが対応する電極部と接続部を電気的に接続する複数の導線部とが前記下側流路形成部材に形成され、前記複数の電極部は前記下側流路形成部材の前記マイクロ流路の下壁を構成する部位に形成され、前記複数の接続部は装置外方に突出する前記下側流路形成部材の複数の突出部に形成され、前記複数の導線部はそれぞれ対応する電極部と接続部とをつなぐように前記下側流路形成部材に形成されている。あるいは、前記液体の流れ方向に互いに離隔した複数の電極部と、それぞれが前記複数の電極部のいずれか対して前記液体の流れ方向に直交する幅方向に離隔して設けられ、外部の測定装置に接続される複数の接続部と、それぞれが対応する電極部と接続部を電気的に接続する複数の導線部とが前記上側流路形成部材に形成され、前記複数の電極部は前記上側流路形成部材の前記マイクロ流路の上壁を構成する部位に形成され、前記複数の接続部は装置外方に突出する前記上側流路形成部材の複数の突出部に形成され、前記複数の導線部はそれぞれ対応する電極部と接続部とをつなぐように前記上側流路形成部材に形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微量な液体を用いると共に電気化学法によるアッセイを行うことができる電気化学アッセイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る電気化学アッセイ装置の斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る電気化学アッセイ装置の概略断面図である。
【
図3】上側流路形成部材を示す図であり、(a)は上側流路形成部材の上面図、(b)は上側流路形成部材の側面図、(c)は上側流路形成部材の下面図である。
【
図4】下側流路形成部材を示す図であり、(a)は下側流路形成部材の上面図、(b)は下側流路形成部材の側面図、(c)は下側流路形成部材の下面図である。
【
図5】中間部材を示す図であり、(a)は中間部材の上面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図6】上側流路形成部材、下側流路形成部材及び中間部材が積み重ねられて一体化された構造体(液体吸収材を含む)を示す図であり、(a)は構造体の斜視図、(b)は(a)のB-B断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る電気化学アッセイ装置の分解斜視図である。
【
図8】電気化学アッセイ装置に注入された第1液体の動きを説明するための図であり、電気化学アッセイ装置を上方から見たときの内部流路などを模式的に示す図である。
【
図9】電気化学アッセイ装置に対する第1液体の注入が停止された後に第2液体が注入されたときの第1液体及び第2液体の動きを説明するための図であり、電気化学アッセイ装置を上方から見たときの内部流路などを模式的に示す図である。
【
図10】第1実施形態に係る電気化学アッセイ装置の一変形例を示す図である。
【
図11】第2実施形態に係る電気化学アッセイ装置の斜視図である。
【
図12】第2実施形態に係る電気化学アッセイ装置の概略断面図である。
【
図13】第2実施形態に係る電気化学アッセイ装置の分解斜視図である。
【
図14】第2実施形態に係る電気化学アッセイ装置の一変形例を示す図である。
【
図15】第3実施形態に係る電気化学アッセイ装置の斜視図である。
【
図16】第3実施形態に係る電気化学アッセイ装置の分解斜視図である。
【
図17】第3実施形態に係る電気化学アッセイ装置の下側流路形成部材を示す図であり、(a)は下側流路形成部材の上面図、(b)は下側流路形成部材の側面図、(c)は下側流路形成部材の下面図である。
【
図18】第3実施形態に係る電気化学アッセイ装置の一変形例を示す図である。
【
図19】第4実施形態に係る電気化学アッセイ装置の斜視図である。
【
図20】第4実施形態に係る電気化学アッセイ装置の概略断面図である。
【
図21】第4実施形態に係る電気化学アッセイ装置の分解斜視図である。
【
図22】第5実施形態に係る電気化学アッセイ装置の斜視図である。
【
図23】第5実施形態に係る電気化学アッセイ装置の概略断面図である。
【
図24】第5実施形態に係る電気化学アッセイ装置の分解斜視図である
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る電気化学アッセイ装置について説明する。
【0012】
実施形態に係る電気化学アッセイ装置は、微量な液体を用いると共に電気化学法によるアッセイを行うことができるように構成される。電気化学アッセイ装置は、電気化学法以外の方法によりアッセイを行うことが可能であってもよい。電気化学アッセイ装置で用いられる液体は、装置内の流路(内部流路)を流れることができる液体であればよく、特に限定されない。このような液体は、典型的には、水溶液である。
【0013】
電気化学アッセイ装置に用いられる液体は、例えば、食品、食品の懸濁液、食品の抽出液、飲用水、河川の水、土壌懸濁物、産業排水、又は生体から採取した成分を含む液体であり得る。生体から採取した成分を含む液体は、例えば、ヒト又は動物の全血、血清、血漿、尿、糞便希釈液、唾液、又は脳脊髄液等の生体由来の液体であり得るが、これらには限定されない。
【0014】
例えば、食品、食品の懸濁液、食品の抽出液、飲用水、河川の水、土壌懸濁物、又は産業排水が用いられた場合、電気化学アッセイ装置により、食品や飲用水の中の病原体が測定され、又は河川の水の中や土壌中や排水中の汚染物質が測定され得る。例えば、生体由来の液体が用いられた場合、電気化学アッセイ装置により、妊娠検査、尿検査、便検査、成人病検査、アレルギー検査、感染症検査、薬物検査及びがん検査などの用途で液体中の診断上有効な検体が測定され得る。
【0015】
本明細書において、「検体」とは、主に液体を用いて検出又は測定される化合物又は組成物のことをいう。「検体」には、糖類(例えば、グルコース)、細胞、タンパク質若しくはペプチド(例えば、血清タンパク質、ホルモン、酵素、免疫調節因子、リンホカイン、モノカイン、サイトカイン、糖タンパク質、ワクチン抗原、抗体、成長因子、増殖因子)、脂肪、アミノ酸、核酸、ステロイド、ビタミン、病原体若しくはその抗原、天然物質若しくは合成化学物質、汚染物質、治療目的の薬物若しくは違法な薬物、又はこれらの物質の代謝物若しくは抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
本明細書において、「マイクロ流路」とは、μl(マイクロリットル)オーダーの微量な液体、すなわち、1μl以上1000μl未満の微量な液体を用いて検体を検出又は測定することを可能とする、アッセイ装置内の流路のことをいう。
【0017】
本明細書において、「アッセイ試薬」とは、例えば、液体又はそこに含まれ得る検体と反応することによって検出可能な結果を生じさせる任意の物質のことをいう。検出可能な結果とは、電気化学的な信号、発光及び蛍光などのことである。ここで、特に電気化学発光法によるアッセイを行う場合のアッセイ試薬は、電気化学発光標識と還元剤を含むことが好ましい。電気化学発光標識としては、ルミノール、ルテニウム(Ru)金属錯体、金ナノ粒子、アダマンチルジオキセタン誘導体、及びアクリジニウムエステルなどがあるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書において、「多孔質体」とは、複数(多数)の微細孔を有し、液体を吸収可能な部材のことをいい、紙、セルロース膜、不織布、プラスチックなどが含まれ得る。ここで、特に限定されないが、「多孔質体」は、液体が親水性である場合には親水性を有するとよく、液体が疎水性である場合には疎水性を有するとよい。好ましくは、「多孔質体」は、親水性を有するとよく、かつ紙であるとよい。さらに、「多孔質体」は、セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、濾紙、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ペーパータオル、布地、又は水を透過する親水性多孔質ポリマーのうちの1つとすることができる。
【0019】
なお、以下の説明においては、電気化学アッセイ装置を単に「アッセイ装置」という。
【0020】
[第1実施形態]
まず、
図1及び
図2を参照して第1実施形態に係るアッセイ装置の基本構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係るアッセイ装置1の斜視図であり、
図2は、第1実施形態に係るアッセイ装置1の概略断面図である。
【0021】
図1に示されるように、アッセイ装置1は、全体として略直方体に形成され、上面に液体が注入(主に滴下注入)される注入口2を有している。注入口2は、上面視で円形に形成され、アッセイ装置1の上面における長手方向Lの一方側であって、且つ長手方向Lに直交する短手方向(以下「幅方向」という)Wの略中央部に開口している。
【0022】
図2に示されるように、アッセイ装置1は、注入口2から注入された液体が流れる内部流路3と、内部流路3を通過した液体を吸収する第1液体吸収材4とを有している。内部流路3は、アッセイ装置1の内部を長手方向Lの前記一方側(
図2における左側)から他方側(
図2における右側)に向かって延びている。第1液体吸収材4は、液体を吸収可能な柔軟な多孔質材などでブロック状に形成されており、アッセイ装置1内の長手方向Lの前記他方側に配置されている。つまり、本実施形態において、長手方向Lは、アッセイ装置1内における液体の流れ方向でもあり、注入口2がある長手方向Lの前記一方側を液体の流れ方向の上流側ということができ、第1液体吸収材4がある長手方向Lの前記他方側を液体の流れ方向の下流側ということができる。
【0023】
本実施形態において、内部流路3は、
図2からも明らかなように、上壁及び下壁を有している。さらに言えば、本実施形態において、内部流路3は、上壁及び下壁によって画定されており、側壁を有していない。また、内部流路3は、マイクロ流路31と、分離流路32とを含む。
【0024】
マイクロ流路31は、内部流路3のうちの注入口2に近い側の流路、すなわち、内部流路3の上流側流路を構成している。マイクロ流路31は、注入口2に連通しており、注入口2の近傍、好ましくは注入口2の真下からアッセイ装置1における長手方向Lの略中央部まで水平(厳密に水平である必要はなく、概ね水平であればよい。以下同じ。)に延びる流路として形成されている。
【0025】
分離流路32は、内部流路3のうちの第1液体吸収材4に近い側の流路、すなわち、内部流路3の下流側流路を構成している。分離流路32は、マイクロ流路31(の下流端)から第1液体吸収材4に至る流路として形成されている。
【0026】
つまり、本実施形態において、第1液体吸収材4は、マイクロ流路31(下流端)から長手方向Lに離隔して設けられており、分離流路32は、マイクロ流路31と第1液体吸収材4の間に設けられている。
【0027】
分離流路32は、注入口2への液体の注入が停止されたときに内部流路3内の液体を分離させるための流路である。具体的には、後述するように、注入口2への液体の注入が停止されたときに、内部流路3内の液体が分離流路32において分断され、内部流路3内の液体がマイクロ流路31に留置される分と第1液体吸収材4に吸収される分に分離されるようになっている。
【0028】
また、
図1、
図2には示されていないが、後述するように、アッセイ装置1において、マイクロ流路31の幅方向Wの両側には、マイクロ流路31に隣接して一対の第1側方空間5,5が設けられ、分離流路32の幅方向Wの両側には、分離流路32に隣接して一対の第2側方空間6,6が設けられている(
図6(a)参照)。上述のように、本実施形態において、内部流路3は、側壁を有していない。このため、マイクロ流路31は一対の第1側方空間5,5に連通し、分離流路32は一対の第2側方空間6,6に連通している。
【0029】
本実施形態において、マイクロ流路31の上壁及び下壁は水平に延びている。そして、マイクロ流路31の流路高さ、すなわち、高さ方向Hにおけるマイクロ流路31の上壁と下壁の間の距離は、一定(厳密に一定である必要はなく、概ね一定であればよい。以下同じ。)である。また、マイクロ流路31の流路高さは、液体がマイクロ流路31を流れるときに一対の第1側方空間5,5への液体の漏出を防止し得る液体の界面張力が発生され得るように、設定されている。
【0030】
特に限定されないが、マイクロ流路31の流路高さ(高さ方向Hの寸法)は、例えば1μm~1mmの範囲で設定され得る。また、マイクロ流路31の幅(幅方向Wの寸法)は、例えば100μm~1cmの範囲で設定され得、マイクロ流路31の長さ(長手方向Lの寸法)は、例えば10μm~10cmの範囲で設定され得る。
【0031】
分離流路32の下壁は、マイクロ流路31の下壁がそのまま延長されたもので構成されており、水平に延びている。他方、分離流路32の上壁は、マイクロ流路31(の下流端)から離れるほど、換言すれば、第1液体吸収材4に近づくほど高さ位置が高くなるように上向きに傾斜している。
【0032】
ここで、液体が生化学検査における検体液である場合、液体が接することになる内部流路3(マイクロ流路31及び分離流路32)の表面には、生体由来物質、抗原又は抗体などが非特異的に吸着するのを防ぐため、ブロッキング処理やプラズマ処理などが施されるのが好ましい。ブロッキング処理に用いられるブロッキング剤には、市販のブロッキング剤、ウシ血清アルブミン、カゼイン、スキムミルク、ゼラチン、界面活性剤、ポリビニルアルコール、グロブリン、血清(例えば、ウシ胎仔血清又は正常ウサギ血清)、エタノール、MPCポリマーなどが含まれる。また、市販のブロッキング剤としては、イムノブロック、ブロックエース、Pierce Blocking Buffer、StartingBlock、StabilGuard、StabilBrock、StabilCoat、ChonBlockなどがあるが、これらに限定されない。
【0033】
さらに、本実施形態において、アッセイ装置1は、マイクロ流路31内を観察するための観察窓7を有している。観察窓7は、上面視で矩形状に形成され、アッセイ装置1の上面に開口している。より具体的には、観察窓7は、アッセイ装置1の上面における、マイクロ流路31内に配置された電極部51(後述する)の上方の部位に開口している。
【0034】
内部流路3についてさらに詳しく説明する。
【0035】
本実施形態において、内部流路3は、上側流路形成部材11と、下側流路形成部材12と、これらの間でスペーサとして機能する中間部材13とが積み重ねられて形成されている。以下、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12及び中間部材13について順に説明する。
【0036】
図3は、上側流路形成部材11を示している。
図3(a)は上側流路形成部材11の上面図、
図3(b)は上側流路形成部材11の側面図、
図3(c)は上側流路形成部材11の下面図である。
【0037】
本実施形態において、上側流路形成部材11は、透明な合成樹脂で可撓性を有するように形成されている。好ましくは、上側流路形成部材11は、透明な合成樹脂の成型品で構成される。このような合成樹脂としては、PS(ポリスチレン)、PMMA(アクリル)、PC(ポリカーボネート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、AS(アクリロニトリル・スチレン)、及びシリコーン樹脂などがあるが、これらに限られない。また、上側流路形成部材11の表面の接触角は、水に対して90度以下であるのが好ましい。
【0038】
図3(a)~(c)を参照すると、上側流路形成部材11は、上面視における外形が矩形の平板状部材として形成されている。上側流路形成部材11には、上面視で円形の第1円形孔111と、上面視で矩形状の一対の第1スリット孔112,112と、上面視で横向き略U字状の第1U字状孔113とが形成されている。第1円形孔111、一対の第1スリット孔112,112、及び第1U字状孔113は、上側流路形成部材11を高さ方向Hに貫通している。
【0039】
第1円形孔111は、上側流路形成部材11の長手方向Lの前記一方側であって、且つ上側流路形成部材11の幅方向Wの略中央部に形成されている。第1円形孔111は、注入口2の一部を構成する。
【0040】
一対の第1スリット孔112,112は、互いに幅方向Wに互いに離隔している。一対の第1スリット孔112,112のそれぞれは、第1円形孔111の近傍から長手方向Lの前記他方側に向かって上側流路形成部材11の長手方向Lの略中央部まで延びている。
【0041】
第1U字状孔113は、U字の開放部分が上側流路形成部材11の長手方向Lの前記一方側を向いている。第1U字状孔113は、一対の第1スリット孔112,112よりも上側流路形成部材11の長手方向Lの前記他方側に形成されている。
【0042】
そして、本実施形態においては、一対の第1スリット孔112,112に挟まれた第1スリット間部位114と、第1U字状孔113の内側の内側部位115と、第1スリット間部位114と内側部位115との間をつなぐ第1接続部位116とにより、内部流路3の上壁を構成する上壁部117が形成されている。つまり、上側流路形成部材11は、内部流路3の上壁を構成する上壁部117を有している。また、第1スリット間部位114及び第1接続部位116によってマイクロ流路31の上壁が構成され、内側部位115によって分離流路32の上壁が構成されるようになっている。
【0043】
ここで、本実施形態において、第1スリット間部位114の幅は一定であるが、内側部位115の幅は第1接続部位116から離れるにしたがって徐々に小さくなっている。また、長手方向Lにおける一対の第1スリット孔112,112と第1U字状孔113の間の距離d1は、第1スリット間部位114の幅よりも小さく、具体的には、第1スリット間部位114の幅の2/3以下、好ましくは、第1スリット間部位114の幅の1/2以下に設定されている。
【0044】
図4は、下側流路形成部材12を示している。
図4(a)は下側流路形成部材12の上面図、
図4(b)は下側流路形成部材12の側面図、
図4(c)は下側流路形成部材12の下面図である。
【0045】
本実施形態において、下側流路形成部材12は、合成樹脂で可撓性を有して形成されている。下側流路形成部材12は、好ましくは、白色や黒色などに着色された合成樹脂の成型品で構成される。特に限定されないが、下側流路形成部材12は、例えばPEEK材(ポリエーテルケトン樹脂)、PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PMMA(アクリル)、PS(ポリスチレン)、PP(ポリプロピレン)、PC(ポリカーボネート)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PVC(塩化ビニール)、COC(シクロオレフィンコポリマー)、COP(シクロオレフィンポリマー)で形成され得る。また、下側流路形成部材12の表面の接触角は、水に対して90度以下であるのが好ましい。
【0046】
図4(a)~(c)を参照すると、下側流路形成部材12は、上面視において上側流路形成部材11の外形とほぼ同じ外形を有した平板状の本体部121を含む。下側流路形成部材12の本体部121には、上面視で矩形状の一対の第2スリット孔122,122と、上面視で矩形状の一対の第3スリット孔123,123とが形成されている。一対の第2スリット孔122,122及び一対の第3スリット孔123,123は、下側流路形成部材12を高さ方向Hに貫通している。
【0047】
一対の第2スリット孔122,122は、上側流路形成部材11の一対の第1スリット孔112,112に対応するように形成されている。すなわち、一対の第2スリット孔122,122は、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12及び中間部材13が積み重ねられたときに、上側流路形成部材11の一対の第1スリット孔112,112の下方に位置するように形成されている。
【0048】
一対の第3スリット孔123,123は、上側流路形成部材11の第1U字状孔113の一対の直線部分に対応するように形成されている。すなわち、一対の第3スリット孔123,123は、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12及び中間部材13が積み重ねられたときに、上側流路形成部材11の第1U字状孔113の一対の直線部分の下方に位置するように形成されている。
【0049】
そして、本実施形態においては、一対の第2スリット孔122,122に挟まれた第2スリット間部位124と、一対の第3スリット孔123,123に挟まれた第3スリット間部位125と、第2スリット間部位124と第3スリット間部位125との間をつなぐ第2接続部位126とにより、内部流路3の下壁を構成する下壁部127が形成されている。つまり、下側流路形成部材12は、内部流路3の下壁を構成する下壁部127を有している。また、第2スリット間部位124及び第2接続部位126によってマイクロ流路31の下壁が構成され、第3スリット間部位125によって分離流路32の下壁が構成されるようになっている。
【0050】
ここで、本実施形態において、第2スリット間部位124の幅及び第3スリット間部位125の幅は、上側流路形成部材11の第1スリット間部位114の幅と同じであり、長手方向Lにおける一対の第2スリット孔122,122と一対の第3スリット孔123,123の間の距離d2は、上側流路形成部材11の長手方向Lにおける一対の第1スリット孔112,112と第1U字状孔113の間の距離d1と同じである。
【0051】
また、下側流路形成部材12は、本体部121の長手方向Lの前記他方側の端部から外方に突出する突出部128を有している。突出部128は、上面視で矩形状に形成されている。本実施形態において、突出部128は、第3スリット間部位125の幅とほぼ同じ幅を有し、及び第3スリット間部位125の長手方向Lの前記他方側への延長上に位置している。
【0052】
さらに、下側流路形成部材12には、電極部51と、接続部52と、導線部53とが形成されている。具体的には、本実施形態において、電極部51、接続部52、及び導線部53は、導電材料が下側流路形成部材12の上面上に印刷されることによって下側流路形成部材12に一体に形成されている。導電材料としては、導電性カーボン、金、銀、塩化銀、白金、ニッケル、グラファイト、パラジウム、鉄、銅、亜鉛、カーボンペースト、メッシュ電極、ダイヤモンド、ITO(Indium-Tin Oxide)電極などがあるが、これらに限定されるものではない。また、電極部、接続部、及び導線部は、同一の材料で印刷されるのが好ましいが、それぞれ別の材料で印刷されてもよい。
【0053】
電極部51は、マイクロ流路31の下壁を構成する第2スリット間部位124の上面上に形成(印刷)されている。電極部51は、作用極51aと、対極51bと、参照極51cとを含む。
【0054】
接続部52は、突出部128の上面上に形成(印刷)されている。接続部52は、作用極51aに対応する第1端子部52aと、対極51bに対応する第2端子部52bと、参照極51cに対応する第3端子部52cを含む。接続部52には、外部の測定装置、具体的には、電気化学測定が行える電気化学アナライザーや電気化学発光測定が行える電気化学発光アナライザーなどが主に接続される。なお、ここでいう電気化学測定としては、サイクリックボルタンメトリー、リニアースイープボルタンメトリー、階段状ボルタンメトリー、ターフェルプロット、クロノアンペロメトリー、クロノクーロメトリー、微分パルスボルタンメトリー、ノーマルパルスボルタンメトリー、矩形波ボルタンメトリー、交流ボルタンメトリー、アンペロメトリー、第二高調波ボルタンメトリー、フーリエ変換交流ボルタンメトリー、微分パルスアンペロメトリー、ダブル微分パルスアンペロメトリー、トリプルパルスアンペロメトリー、積分パルスアンペロメトリー検出、バルク電気分解/クーロメトリー、ハイドロダイナミックモジュレーションボルタンメトリー、交流インピーダンス、インピーダンス/タイム、インピーダンス/ポテンシャル、クロノポテンショメトリー、クロノポテンショメトリー/タイムポテンショメトリックストリッピング分析、Electrochemical Noise Measurement、Open Circuit Potential-Time、スイープステップファンクション、マルチポテンシャルステップ、マルチ電流ステップなどがあるが、これらに限定されない。また、ここでいう電気化学発光測定とは、前述の電気化学測定法に基づいて電気化学発光するシグナルを測定する測定法を指し、電気化学発光を測定する装置としては冷却CCDや光電子倍増菅などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
導線部53は、電極部51と接続部52を電気的に接続する。導線部53は、電極部51と接続部52をつなぐように、下側流路形成部材12における電極部51と接続部52の間の部位の上面上に形成(印刷)されている。本実施形態において、導線部53は、電極部51から第2スリット間部位124の上面上、第2接続部位126の上面上、及び第3スリット間部位125の上面上を延びて接続部52に至るように形成されている。導線部53は、作用極51aと第1端子部52aを接続する第1導線部53aと、対極51bと第2端子部52bを接続する第2導線部53bと、参照極51cと第3端子部52cとを接続する第3導線部53cとを含む。ここで、
図4(a)、(b)中に一点鎖線で示されるように、導線部53(第1~第3導線部53a~53c)の大部分は、電気絶縁材54によって被覆されている。電気絶縁材54としては代表的にはポリイミドが用いられ得るが、これに限定されるものではない。電気絶縁材54の機能の1つは、電極部51で毎回安定した電気化学測定を行うために電極部51に直接触れる液の面積を確定させることである。本実施形態においては、下側流路形成部材12における電極部51と接続部52の間に位置する部位が電気絶縁材54によって被覆されている。被覆方法としては、例えば電気絶縁材54としてポリイミドが用いられる場合、ポリイミド液に下側流路形成部材12を浸漬させる方法がある。この場合、被覆させない部分は予めマスキングなどが施される。このほかに被覆が必要な部分だけにポリイミド液を印刷するか、或いは直接コンタクトスクリーン印刷する方法もあるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
図5は、中間部材13を示している。
図5(a)は中間部材13の上面図、
図5(b)は
図5(a)のA-A断面図である。
【0057】
図5(a)、(b)を参照すると、中間部材13は、上面視において上側流路形成部材11の外形とほぼ同じ外形を有すると共に、内側に開口部131を有した枠状に形成されている。中間部材13の高さ方向Hの寸法(すなわち、厚さ)は、要求されるマイクロ流路31の流路高さに応じて適宜設定される。開口部131は、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12及び中間部材13が積み重ねられたとき、上面視において、上側流路形成部材11の第1円形孔111、一対の第1スリット孔112,112、及び第1U字状孔113を内包し得る大きさを有して形成されている。
【0058】
また、本実施形態において、中間部材13の上面及び下面は、接着性を有する面として形成されている。一例として、中間部材13は、シート材の上面及び下面に両面接着シートを配置することで形成され得る。この場合、任意の厚さを有したシート材を適宜選択することにより、中間部材13の高さ方向Hの寸法、ひいては、マイクロ流路31の流路高さを自由に変更することができる。
【0059】
そして、上側流路形成部材11の下面が中間部材13の上面に接合され、及び下側流路形成部材12の上面が中間部材13の下面に接合されることで、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12及び中間部材13が積み重ねられて一体化される。その際、第1液体吸収材4が、中間部材13の開口部131内の長手方向Lの前記他方側に配置される。
【0060】
図6は、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12及び中間部材13が積み重ねられて一体化された構造体20(第1液体吸収材4を含む)を示している。
図6(a)は構造体20の斜視図、
図6(b)は
図6(a)のB-B断面図である。
【0061】
上述のように、本実施形態において、上側流路形成部材11の第1スリット間部位114及び第1接続部位116がマイクロ流路31の上壁を構成し、及び下側流路形成部材12の第2スリット間部位124及び第2接続部位126がマイクロ流路31の下壁を構成する。また、下側流路形成部材12の第2スリット間部位124の上面上には、電極部51が形成されている。このため、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12及び中間部材13が積み重ねられて一体化されることにより、
図2及び
図6(b)に示されるように、長手方向Lに水平に延び、流路高さが一定であり、且つ電極部51が配置されたマイクロ流路31が形成される。ここで、マイクロ流路31内に配置された電極部51は、導線部53を介して接続部52に電気的に接続されており、導線部53は、マイクロ流路31の底部及び分離流路32の底部(すなわち、内部流路3内の底部)を延びた後、第1液体吸収材4の下側をさらに延びている。
【0062】
また、本実施形態において、上側流路形成部材11の内側部位115が分離流路32の上壁を構成し、及び下側流路形成部材12の第3スリット間部位125が分離流路32の下壁を構成する。ここで、
図6(a)、(b)に示されるように、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12及び中間部材13が積み重ねられて一体化される際に第1液体吸収材4が中間部材13の開口部131内の長手方向Lの前記他端側に配置されることにより、上側流路形成部材11の内側部位115の先端側が第1液体吸収材4に当接する。これにより、第1液体吸収材4が潰れるように変形すると共に、上側流路形成部材11の内側部位115が上方に撓み変形する。このため、分離流路32は、マイクロ流路31から第1液体吸収材4に向かって延びると共に、上壁が第1液体吸収材4に近づくほど(マイクロ流路31から離れるほど)高くなるように上向きに傾斜した流路として形成される。
【0063】
さらに、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12及び中間部材13が積み重ねられて一体化されることにより、
図6(a)に示されるように、マイクロ流路31の幅方向Wの両側に位置する一対の第1側方空間5,5が形成されると共に、分離流路32の幅方向Wの両側に位置する一対の第2側方空間6,6が形成される。一対の第1側方空間5,5は、上側流路形成部材11の一対の第1スリット孔112,112と、下側流路形成部材12の一対の第2スリット孔122,122と、中間部材13の開口部131とによって形成され、一対の第2側方空間6,6は、上側流路形成部材11の第1U字状孔113の一対の直線部と、下側流路形成部材12の一対の第3スリット孔123,123と、中間部材13の開口部131とによって形成されている。
【0064】
次に、
図7を参照してアッセイ装置1の構成についてさらに説明する。
図7は、アッセイ装置1の分解斜視図である。
【0065】
アッセイ装置1は、上述の第1液体吸収材4、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12、中間部材13に加えて、上側ハウジング14、上部カバー15、一対の第2液体吸収材16,16、第3液体吸収材17、下側ハウジング18、及び下部カバー19をさらに有している。
【0066】
上側ハウジング14は、例えば、合成樹脂の成型品で構成される。上側ハウジング14は、上面視において上側流路形成部材11の外形とほぼ同じ外形を有しており、図示省略の両面接着シートなどを利用して上側流路形成部材11の上面に取り付けられる。上側ハウジング14には、上面視で円形状の第2円形孔141と、上面視で矩形状の第1窓用孔142と、上面視で矩形状の開口孔143とが形成されている。第2円形孔141、第1窓用孔142、及び開口孔143は、上側ハウジング14を高さ方向Hに貫通している。
【0067】
第2円形孔141は、上側流路形成部材11の第1円形孔111に対応する位置に形成されている。第2円形孔141は、第1円形孔111とほぼ同じ大きさを有し、第1円形孔111と同様、注入口2の一部を構成する。
【0068】
第1窓用孔142は、下側流路形成部材12の電極部51の上方に位置するように形成されている。第1窓用孔142は、観察窓7の一部を構成する。
【0069】
開口孔143は、上側流路形成部材11の第1U字状孔113に対応する位置に形成されている。開口孔143は、上面視において、上側流路形成部材11の第1U字状孔113を内側に包含し得る大きさを有している。
【0070】
上部カバー15は、例えば、合成樹脂の成型品で構成される。上部カバー15は、平板状に形成される。上部カバー15は、上面視において上側ハウジング14の外形とほぼ同じ外形を有しており、図示省略の両面接着シートなどを利用して上側ハウジング14の上面に取り付けられる。上部カバー15には、上面視で円形状の第3円形孔151及び上面視で矩形状の第2窓用孔152が形成されている。第3円形孔151及び第2窓用孔152は、上部カバー15を高さ方向Hに貫通している。
【0071】
第3円形孔151は、上側流路形成部材11の第1円形孔111及び上側ハウジング14の第2円形孔141に対応する位置に形成されている。第3円形孔151は、第1円形孔111及び第2円形孔141とほぼ同じ大きさを有し、第1円形孔111及び第2円形孔141と同様、注入口2の一部を構成する。つまり、本実施形態においては、上側流路形成部材11の第1円形孔111、上側ハウジング14の第2円形孔141及び上部カバー15の第3円形孔151によって注入口2が形成されている。
【0072】
第2窓用孔152は、上側ハウジング14の第1窓用孔142と同様、下側流路形成部材12の電極部51の上方に位置するように形成されている。第2窓用孔152は、第1窓用孔142とほぼ同じ大きさを有し、第1窓用孔142と同様、観察窓7の一部を構成する。つまり、本実施形態においては、上側ハウジング14の第1窓用孔142及び上部カバー15の第2窓用孔152によって観察窓7が形成されている。
【0073】
一対の第2液体吸収材16,16は、第1液体吸収材4と同様に、液体を吸収可能な多孔質材などで形成されている。一対の第2液体吸収材16,16は、第1液体吸収材4の下側に第1液体吸収材4に接触した状態で配置される。本実施形態において、一対の第2液体吸収材16,16は、それぞれ細長いブロック状に形成され、下側流路形成部材12の一対の第3スリット孔123,123内の長手方向Lの前記他方側に配置される。
【0074】
第3液体吸収材17は、第1液体吸収材4及び一対の第2液体吸収材16,16と同様に、液体を吸収可能な多孔質材などで形成されている。第3液体吸収材17は、第1液体吸収材4よりも大きなブロック状に形成され、一対の第2液体吸収材16,16に接触した状態で一対の第2液体吸収材16,16の下側に配置される。
【0075】
下側ハウジング18は、例えば、合成樹脂の成型品で構成される。下側ハウジング18は、上面視において上側流路形成部材11及び上側ハウジング14の外形とほぼ同じ外形を有し、図示省略の両面接着シートなどを利用して下側流路形成部材12の下面に取り付けられる。下側ハウジング18は、第3液体吸収材17を収容するための上面視で矩形状の第1収容孔181を有している。
【0076】
下部カバー19は、例えば、合成樹脂の成型品で構成される。下部カバー19は、平板状に形成される。下部カバー19は、上面視において下側ハウジング18の外形とほぼ同じ外形を有しており、図示省略の両面接着シートなどを利用して下側ハウジング18の下面に取り付けられる。
【0077】
そして、
図7に示された各部材(部品)が組み立てられることにより、
図1、
図2に示されるアッセイ装置1が得られる。得られたアッセイ装置1は、上述のように、液体が注入される注入口2を上面に有すると共に、注入口2から注入された液体が流れる内部流路3と、内部流路3を通過した液体を吸収する第1液体吸収材4とを有している。内部流路3は、注入口2に連通するマイクロ流路31と、マイクロ流路31と第1液体吸収材4の間に設けられ、液体の注入が停止されたときに内部流路3内の液体を分離させるための分離流路32とを含む。
【0078】
また、アッセイ装置1は、マイクロ流路31内に配置された電極部51と、外部の測定装置に接続される接続部52と、電極部51と接続部52を電気的に接続する導線部53とを有している。接続部52は、長手方向L(すなわち、液体の流れ方向)において第1液体吸収材4を挟んで電極部51と反対側に設けられ、且つ外部に突出している。また、導線部53は、電極部51から接続部52に向かって内部流路3内を長手方向Lに平行(厳密に平行である必要はなく、概ね平行であればよい。以下同じ。)に延びている。
【0079】
ここで、アッセイ装置1において、アッセイ試薬は、注入口2から適宜注入されてもよいし、マイクロ流路31内にあらかじめ配置されていてもよい。アッセイ試薬をマイクロ流路31内に配置する場合、アッセイ試薬は、例えば、マイクロ流路31の上壁上に、マイクロ流路31の下壁上に、電極部51上に、及び/又は電極部51の近傍に固相化され得る。固相化されるアッセイ試薬は、例えば、抗体や抗原、ペプチド、電気化学活性物質などであり得るが、これらに限定されない。
【0080】
次に、
図8及び
図9を参照してアッセイ装置1における液体の動きを説明する。
【0081】
図8は、アッセイ装置1に注入された液体(以下「第1液体LQ1」という)の動きを説明するための図であり、アッセイ装置1を上方から見たときの内部流路3などを模式的に示している。なお、
図8は、
図6(a)、(b)に示される構造体20から上側流路形成部材11が取り除かれた状態を上方から見た図に相当する。また、
図8において、第1液体LQ1は、ハッチングで示されている。
【0082】
図8(a)は、注入口2に第1液体LQ1が注入される前の状態を示している。第1液体LQ1が注入口2から注入されると、
図8(b)に示されるように、第1液体LQ1がマイクロ流路31に供給される(流入する)。第1液体LQ1の注入が継続されて、マイクロ流路31にその容量を超える量の第1液体LQ1が供給されると、第1液体LQ1は分離流路32に流入する。分離流路32に流入した第1液体LQ1は、分離流路32を第1液体吸収材4に向かって流れて第1液体吸収材4に接触する(吸収される)。すると、内部流路3内の第1液体LQ1には、界面張力によってマイクロ流路31内に留まろうとする力と、第1液体吸収材4の毛管力とが作用し、
図8(c)に矢印で示されるように、マイクロ流路31と第1液体吸収材4の間で第1液体LQ1を引っ張り合う状態となる。その後、第1液体LQ1の注入が停止されると、
図8(d)に示されるように、内部流路3内の第1液体LQ1が分離流路32において分断され、その一部が第1液体吸収材4に吸収され、残りはマイクロ流路31内に留置される。つまり、内部流路3内の第1液体LQ1が、マイクロ流路31内に留置される分と第1液体吸収材4に吸収される分に分離される。
【0083】
この結果、所定量の第1液体LQ1がマイクロ流路31内に、換言すれば、電極部51上に留まることになる。したがって、第1実施形態に係るアッセイ装置1では、接続部52に電気化学関連の測定装置、すなわち、前記電気化学アナライザーや前記電気化学発光アナライザーなどが接続されることにより、第1液体LQ1に対する電気化学法によるアッセイを安定して行うことが可能である。
【0084】
図9は、アッセイ装置1に対する第1液体LQ1の注入が停止された後に新たな液体(以下「第2液体LQ2」という)が注入されたときの第1液体LQ1及び第2液体LQ2の動きを説明するための図であり、アッセイ装置1を上方から見たときの内部流路3などを模式的に示している。なお、
図9も、
図8と同様に、
図6(a)、(b)に示される構造体20から上側流路形成部材11が取り除かれた状態を上方から見た図に相当する。また、
図9において、第1液体LQ1は、
図8と同じハッチングで示され、第2液体LQ2は、第1液体LQ1とは異なるハッチングで示されている。
【0085】
第1液体LQ1の注入が停止された後、第2液体LQ2が注入されると、
図9(a)に示されるように、第2液体LQ2がマイクロ流路31に供給される。ここで、上述のように、マイクロ流路31内には第1液体LQ1が留置されているが、マイクロ流路31内に留置されている第1液体LQ1は、新たに供給された第2液体LQ2によってマイクロ流路31から押し出され、分離流路32を流れて第1液体吸収材4に吸収される。
【0086】
第2液体LQ2の注入が継続され、マイクロ流路31にその容量を超える量の第2液体LQ2、換言すれば、マイクロ流路31内に留置されていた第1液体LQ1の量を超える量の第2液体LQ2が供給されると、
図9(b)に示されるように、マイクロ流路31内に留置されていた第1液体LQ1がマイクロ流路31から押し出される。そして、第2液体LQ2がさらに注入されると、第2液体LQ2がマイクロ流路31から分離流路32に流入する。分離流路32に流入した第2液体LQ2は、分離流路32を第1液体吸収材4に向かって流れて第1液体吸収材4に接触する(吸収される)。すると、内部流路3内の第2液体LQ2には、界面張力によってマイクロ流路31内に留まろうとする力と、第1液体吸収材4の毛管力とが作用し、
図9(c)に矢印で示されるように、マイクロ流路31と第1液体吸収材4との間で第2液体LQ2を引っ張り合う状態となる。その後、第2液体LQ2の注入が停止されると、
図9(d)に示されるように、内部流路3内の第2液体LQ2が分離流路32において分断され、その一部が第1液体吸収材4に吸収され、残りはマイクロ流路31内に留置される。つまり、内部流路3内の第2液体LQ2が、マイクロ流路31内に留置される分と第1液体吸収材4に吸収された分に分離される。
【0087】
この結果、マイクロ流路31内の第1液体LQ1が第2液体LQ2に入れ替えられ、及び所定量の第2液体LQ2がマイクロ流路31内に、換言すれば、電極部51上に留まることになる。したがって、第1実施形態に係るアッセイ装置1では、第2液体LQ2として例えば蒸留水を連続的に注入することにより、マイクロ流路31の洗浄を行うことが可能である。また、第1実施形態に係るアッセイ装置1では、マイクロ流路31内の液体の入れ替えを容易に行えると共に、入れ替え後の新たな液体に対する電気化学法によるアッセイを安定して行うことも可能である。
【0088】
なお、上述の第1実施形態に係るアッセイ装置1は、マイクロ流路31内の電極部51の近傍を観察するための観察窓7を有している。しかし、これに限られるものではない。例えばマイクロ流路31内の電極部51の近傍を観察する必要がないような場合には観察窓7が省略され得る。この場合、上側流路形成部材11は、必ずしも透明な合成樹脂で形成される必要はない。
【0089】
また、上述の第1実施形態に係るアッセイ装置1において、電極部51、接続部52、及び導線部53は、下側流路形成部材12に一体に形成されている。しかし、これに限られるものではない。電極部51、接続部52、及び導線部53は、下側流路形成部材12に代えて、上側流路形成部材11に一体に形成されてもよい。この場合、例えば、上側流路形成部材11が白色や黒色などに着色された合成樹脂で形成され、上側流路形成部材11に接続部52が形成される突出部が設けられ、下側流路形成部材12が透明な合成樹脂で形成され、及び、マイクロ流路31内の電極部51の近傍を観察するための観察窓7がアッセイ装置1の下面に開口するように形成され得る。
【0090】
さらに、
図10に示されるように、第1実施形態に係るアッセイ装置1を幅方向に複数(ここでは3つ)並べて一体化して一つのアッセイ装置1´として構成してもよい。このようにすると、複数の液体について同時に且つ並行してアッセイを行うことができるので便宜である。
【0091】
[第2実施形態]
図11~
図13は、第2実施形態に係るアッセイ装置10を示している。
図11は、第2実施形態に係るアッセイ装置10の斜視図であり、
図12は、第2実施形態に係るアッセイ装置10の断面図であり、
図13は、第2実施形態に係るアッセイ装置10の分解斜視図である。
図11~
図13において、第1実施形態に係るアッセイ装置1と共通する要素については同一の符号が用いられている。以下では、主に第1実施形態に係るアッセイ装置1と相違する構成について説明する。
【0092】
第1実施形態に係るアッセイ装置1と第2実施形態に係るアッセイ装置10との主な相違は、次のとおりである。
【0093】
第1実施形態に係るアッセイ装置1において、下側流路形成部材12は、本体部121の長手方向Lの前記他方側の端部から外方に突出する突出部128を有しており、この突出部128の上面上に接続部52が形成(印刷)されている。このため、第1実施形態に係るアッセイ装置1において、接続部52は、長手方向L(すなわち、液体の流れ方向)において第1液体吸収材4を挟んで電極部51とは反対側に配置され、且つ外部に突出している。また、導線部53は、電極部51から接続部52に向かって長手方向Lに平行に延びている。具体的には、導線部53は、電極部51から本体部121の第2スリット間部位124の上面上、第2接続部位126の上面上、及び第3スリット間部位125の上面上を延びて接続部52に至るように形成されている。
【0094】
これに対し、第2実施形態に係るアッセイ装置10において、下側流路形成部材12には、本体部121の長手方向Lの前記他方側の端部から外方に突出する突出部128ではなく、本体部121の長手方向Lの前記一方側の端部から外方に突出する突出部129が設けられており、この突出部129の上面上に接続部52が形成(印刷)されている。このため、第2実施形態に係るアッセイ装置10において、接続部52は、長手方向L(すなわち、液体の流れ方向)において注入口2を挟んで電極部51とは反対側に配置され、且つ外部に突出している。また、導線部53は、電極部51から接続部52に向かって長手方向Lに平行に延びている。具体的には、導線部53は、電極部51から、注入口2の下方の部位を含む本体部121の長手方向Lの前記一方側の部位の上面上を延びて接続部52に至るように形成されている。
【0095】
第2実施形態に係るアッセイ装置10の上記以外の構成については、基本的に第1実施形態に係るアッセイ装置1と同じである。
【0096】
第2実施形態に係るアッセイ装置10においても第1実施形態に係るアッセイ装置1と同様の効果が得られる。すなわち、注入された液体に対する電気化学法によるアッセイを安定して行うことができ、マイクロ流路31の洗浄を行うこともできる。また、マイクロ流路31内の液体の入れ替えを容易に行え、入れ替え後の新たな液体に対する電気化学法によるアッセイを安定して行うことも可能である。
【0097】
なお、第1実施形態に係るアッセイ装置1に適用可能な変形は、第2実施形態に係るアッセイ装置10にも適用可能である。また、
図14に示されるように、第2実施形態に係るアッセイ装置10を幅方向に複数(ここでは3つ)並べて一体化して一つのアッセイ装置10´として構成してもよい。
【0098】
[第3実施形態]
図15、
図16は、第3実施形態に係るアッセイ装置100を示している。
図15は、第3実施形態に係るアッセイ装置100の斜視図であり、
図16は、第3実施形態に係るアッセイ装置100の分解斜視図である。
図15、
図16において、第1実施形態に係るアッセイ装置1と共通する要素については同一の符号が用いられている。以下では、主に第1実施形態に係るアッセイ装置1と相違する構成について説明する。
【0099】
第1実施形態に係るアッセイ装置1と第3実施形態に係るアッセイ装置100との主な相違は、次のとおりである。第1実施形態に係るアッセイ装置1は、観察窓7、電極部51、接続部52、及び導線部53をそれぞれ1つずつ有している。これに対し、第3実施形態に係るアッセイ装置100は、観察窓7、電極部51、接続部52、及び導線部53をそれぞれ複数(ここでは3つずつ)有している。このため、第3実施形態に係るアッセイ装置100の下側流路形成部材12、上側ハウジング14及び上部カバー15は、第1実施形態に係るアッセイ装置1のそれらとは相違している。以下、具体的に説明する。
【0100】
図17は、第3実施形態に係るアッセイ装置100の下側流路形成部材12を示している。
図17(a)は下側流路形成部材12の上面図、
図17(b)は下側流路形成部材12の側面図、
図17(c)は下側流路形成部材12の下面図である。
【0101】
図17(a)~(c)を参照すると、第3実施形態に係るアッセイ装置100の下側流路形成部材12は、上面視において上側流路形成部材11の外形とほぼ同じ外形を有した本体部221を有している。また、下側流路形成部材12の本体部221には、上面視で矩形状の第4スリット孔222と、上面視で矩形状の第1~第3矩形孔223~225と、上面視で矩形状の第5スリット孔226とが形成されている。第4スリット孔222、第1~第3矩形孔223~225、及び第5スリット孔226は、下側流路形成部材12を高さ方向Hに貫通している。
【0102】
第4スリット孔222は、上側流路形成部材11の一対の第1スリット孔112,112の一方及び上側流路形成部材11の第1U字状孔113の一対の直線部分の一方に対応するように形成されている。すなわち、第4スリット孔222は、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12及び中間部材13が積み重ねられたときに、上側流路形成部材11の一対の第1スリット孔112,112の一方の下方、及び上側流路形成部材11の第1U字状孔113の一対の直線部分の一方の下方に位置するように形成されている。
【0103】
第1~第3矩形孔223~225及び第5スリット孔226は、長手方向Lの前記一方側から前記他方側に向かってこの順に互いに間隔をあけて配置されていると共に、上側流路形成部材11の一対の第1スリット孔112,112の他方及び上側流路形成部材11の第1U字状孔113の一対の直線部分の他方に対応するように形成されている。
【0104】
具体的には、第1~第3矩形孔223~225は、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12及び中間部材13が積み重ねられたときに、上側流路形成部材11の一対の第1スリット孔112,112の他方の下方に位置するように形成されている。第5スリット孔226は、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12及び中間部材13が積み重ねられたときに、長手方向Lの前記一方側の一部が上側流路形成部材11の一対の第1スリット孔112,112の他方の下方に位置し、残りの大部分が上側流路形成部材11の第1U字状孔113の一対の直線部分の他方の下方に位置するように形成されている。
【0105】
そして、本実施形態においては、第4スリット孔222と、第1~第3矩形孔223~225及び第5スリット孔226とに挟まれた部位によって内部流路3の下壁を構成する下壁部227が形成される。つまり、下側流路形成部材12は、内部流路3の下壁を構成する下壁部227を有している。
【0106】
また、第4スリット孔222の長手方向Lの前記一方側の部位と、第1~第3矩形孔223~225及び第5スリット孔226の長手方向Lの前記一方側の前記一部とに挟まれた部位、すなわち、下壁部227における長手方向Lの前記一方側の部位である一方側部位228によってマイクロ流路31の下壁が構成され、第4スリット孔222の長手方向Lの前記他方側の部位と、第5スリット孔226の前記残りの大部分とに挟まれた部位、すなわち、下壁部227における長手方向の前記他方側の部位である他方側部位229によって分離流路32の下壁が構成される。
【0107】
ここで、内部流路3の下壁を構成する下壁部227の幅は、上側流路形成部材11の第1スリット間部位114の幅と同じである。また、第1矩形孔223と第2矩形孔224の間の第1孔間部位230の長手方向Lの寸法、第2矩形孔224と第3矩形孔225の間の第2孔間部位231の長手方向Lの寸法、及び第3矩形孔225と第5スリット孔226の間の第3孔間部位232の長手方向Lの寸法は、下壁部227の幅よりも小さく、具体的には、下壁部227の幅の2/3以下、好ましくは、下壁部227の幅の1/2以下に設定されている。
【0108】
また、下側流路形成部材12は、本体部221の幅方向Wの一方側の端部から外方に突出する3つの突出部233を有している。突出部233は、上面視で矩形状に形成されており、マイクロ流路31の下壁を構成する一方側部位228の側方に位置している。
【0109】
さらに、下側流路形成部材12には、突出部233と同数(すなわち、3つ)の、電極部51、接続部52及び導線部53が形成されている。電極部51、接続部52、及び導線部53は、前記導電材料が下側流路形成部材12上に印刷されることによって下側流路形成部材12に一体に形成されている。
【0110】
3つの電極部51は、マイクロ流路31の下壁を構成する一方側部位228の上面上に長手方向Lに互いに間隔をあけて形成されている。各電極部51は、3つの突出部233のいずれかに対応した位置に形成されており、作用極51aと、対極51bと、参照極51cとを含む。
【0111】
3つの接続部52は、それぞれ3つの突出部233のうちのいずれかの上面上に形成されている。各接続部52は、3つの電極部51のいずれかに対して幅方向Wに離隔した位置に設けられ、作用極51aに対応する第1端子部52aと、対極51bに対応する第2端子部52bと、参照極51cに対応する第3端子部52cを含む。
【0112】
3つの導線部53は、3つの電極部51のそれぞれを対応する接続部52に電気的に接続するように形成されている。本実施形態において、3つの導線部53は、第1孔間部位230の上面上、第2孔間部位231の上面上、又は第3孔間部位232の上面上を延びて3つの電極部51のそれぞれと対応する接続部52を接続するように形成されている。各導線部53は、作用極51aと第1端子部52aを接続する第1導線部53aと、対極51bと第2端子部52bを接続する第2導線部53bと、参照極51cと第3端子部52cとを接続する第3導線部53cとを含む。ここで、
図17(a)、(b)中に一点鎖線で示されるように、各導線部53(第1~第3導線部53a~53c)の大部分は、電気絶縁材54によって被覆されている。
【0113】
また、
図16に示されるように、第3実施形態に係るアッセイ装置100において、上側ハウジング14には、下側流路形成部材12の3つの電極部51の上方に位置する共にそれぞれが観察窓7を構成する3つの第1窓用孔142が形成されており、上部カバー15には、下側流路形成部材12の3つの電極部51の上方に位置する共にそれぞれが観察窓7を構成する3つの第2窓用孔152が形成されている。
【0114】
第3実施形態に係るアッセイ装置100において、3つの電極部51は、マイクロ流路31の下壁を構成する一方側部位228の上面上に長手方向Lに互いに間隔をあけて形成されている。つまり、3つの電極部51は、マイクロ流路31内に配置されると共に、長手方向L(すなわち、液体の流れ方向)に互いに離隔して設けられている。また、3つの接続部52は、それぞれ3つの電極部51のいずれかに対して長手方向Lに直交する幅方向Wに離隔して設けられている。ここで、3つの接続部52は、下側流路形成部材12の本体部221の幅方向Wの前記一方側の端部から外方に突出する3つの突出部233の上面上に形成されており、外部に突出している。そして、3つの導線部53は、それぞれ幅方向Wに平行に延びて対応する電極部51と接続部52を電気的に接続している。
【0115】
第3実施形態に係るアッセイ装置100の上記以外の構成については、基本的に第1実施形態に係るアッセイ装置1と同じである。
【0116】
第3実施形態に係るアッセイ装置100においても第1実施形態に係るアッセイ装置1と同様の効果が得られる。また、第3実施形態に係るアッセイ装置100によれば、注入された液体に対して、最大3項目についての電気化学法によるアッセイを行うことが可能である。
【0117】
なお、上述の第3実施形態に係るアッセイ装置100は、電極部51、接続部52、及び導線部53をそれぞれ3つずつ有している。しかし、これに限られるものではない。第3実施形態に係るアッセイ装置100は、第1実施形態に係るアッセイ装置1及び第2実施形態に係るアッセイ装置10と同様、電極部51、接続部52、及び導線部53をそれぞれ1つずつ有してもよいし、2つずつ有してもよいし、4つ以上ずつ有してもよい。また、第1実施形態に係るアッセイ装置1に適用可能な変形は、第3実施形態に係るアッセイ装置100にも適用可能である。さらに、
図18に示されるように、接続部52の配置が互いに逆である2つの第3実施形態に係るアッセイ装置100を幅方向に並べて一体化して一つのアッセイ装置100´として構成してもよい。
【0118】
[第4実施形態]
図19~
図21は、第4実施形態に係るアッセイ装置200を示している。
図19は、第4実施形態に係るアッセイ装置200の斜視図であり、
図20は、第4実施形態に係るアッセイ装置200の断面図であり、
図21は、第4実施形態に係るアッセイ装置200の分解斜視図である。
図19~
図21において、第1実施形態に係るアッセイ装置1と共通する要素については同一の符号が用いられている。以下では、主に第1実施形態に係るアッセイ装置1と相違する構成について説明する。
【0119】
第1実施形態に係るアッセイ装置1と第4実施形態に係るアッセイ装置200との主な相違は、次のとおりである。第4実施形態に係るアッセイ装置200においては、第1実施形態に係るアッセイ装置1から一対の第2液体吸収材16,16及び下側ハウジング18が省略され、代わりに第2上側ハウジング201及びスペーサ部材202が設けられている(
図7、
図21参照)。また、第4実施形態に係るアッセイ装置200の上側流路形成部材11、下側流路形成部材12、第3液体吸収材17及び下部カバー19は、第1実施形態に係るアッセイ装置1のそれらとは形状が相違している。以下、第2上側ハウジング201、第3液体吸収材17、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12、スペーサ部材202、下部カバー19の順に説明する。
【0120】
第2上側ハウジング201は、上部カバー15と上側ハウジング14との間に配置されている。第2上側ハウジング201の上面視における外形は、上側ハウジング14のそれとほぼ同じである。但し、第2上側ハウジング201の高さ方向Hの寸法は、上側ハウジング14のそれよりも大きい。第2上側ハウジング201には、上側ハウジング14の第2円形孔141及び第1窓用孔142に対応する第4円形孔2011及び第3窓用孔2012が形成されている。第4円形孔2011及び第3窓用孔2012は、第2上側ハウジング201を高さ方向Hに貫通している。第4円形孔2011は、注入口2の一部を構成し、第3窓用孔2012は、観察窓7の一部を構成する。
【0121】
また、第2上側ハウジング201には、第2収容孔2013が形成されている。第2収容孔2013は、上側ハウジング14の開口孔143に対応する位置に設けられ、第2上側ハウジング201を高さ方向Hに貫通している。第2上側ハウジング201の第2収容孔2013は、第1実施形態に係るアッセイ装置1の下側ハウジング18に設けられた、第3液体吸収材17を収容するための第1収容孔181に相当する。第2上側ハウジング201は、例えば、合成樹脂の成型品で構成され、図示省略の両面接着シートなどを利用して、上側ハウジング14の上面に取り付けられると共に上部カバー15の下面に取り付けられる。
【0122】
第4実施形態に係るアッセイ装置200において、第3液体吸収材17は、長手方向Lの前記他方側に下方に突出する突出部17aを有している。第3液体吸収材17は、突出部17aが第1液体吸収材4(の上面)に接触した状態で第2上側ハウジング201の第2収容孔2013に収容される。つまり、第4実施形態に係るアッセイ装置200においては、第3液体吸収材17が第1液体吸収材4の上側に配置される。
【0123】
第4実施形態に係るアッセイ装置200において、上側流路形成部材11には、第1円形孔111と、上面視で横向き略U字状の第2U字状孔2014とが形成されている。第2U字状孔2014は、第1円形孔111よりも上側流路形成部材11の長手方向Lの前記他方側に形成され、U字の開放部分が上側流路形成部材11の長手方向Lの前記一方側を向いている。第2U字状孔2014は、第1実施形態に係るアッセイ装置1の上側流路形成部材11の一対の第1スリット孔112,112と第1U字状孔113とを合わせたような形状を有する。すなわち、第2U字状孔2014は、上側流路形成部材11を高さ方向Hに貫通している。そして、第4実施形態に係るアッセイ装置200においては、上側流路形成部材11における第2U字状孔2014の内側の部位によって、内部流路3の上壁を構成する上壁部117が形成されている。
【0124】
上壁部117は、長手方向Lの前記一方側、すなわち、第1円形孔111(注入口2)に近い側から順に、第1ストレート部117aと、幅狭部117bと、第2ストレート部117cと、を有する。
【0125】
第1ストレート部117aは、第1円形孔111(注入口2)から長手方向Lの前記他方側に向かって直線状に延びている。第1ストレート部117aの幅は、第1円形孔111(注入口2)の直径よりも小さく、且つ一定である。幅狭部117bは、上壁部117の幅が狭くなる部位のことである。幅狭部117bは、第1ストレート部117aと第2ストレート部117cの間に設けられて両者を接続している。本実施形態において、幅狭部117bは、長手方向Lの前記他方側に向かってその幅が第1ストレート部117aの幅から徐々に狭くなるテーパ形状に形成されている。第2ストレート部117cは、幅狭部117bから長手方向Lの前記他方側に向かって直線状に延びている。第2ストレート部117cの幅は、第1ストレート部117aの幅よりも小さく、且つ一定である。幅狭部117bは、上壁部117の幅が狭くなる部位であればよく、前記テーパ形状に限られない。例えば、幅狭部117bは、第1ストレート部117aの幅から第2ストレート部117cの幅に1段階又は複数段階で変化する段差形状に形成されてもよい。
【0126】
第4実施形態に係るアッセイ装置200において、下側流路形成部材12の本体部121には、一対の第6スリット孔2015,2015が形成されている。一対の第6スリット孔2015,2015は、上側流路形成部材11、下側流路形成部材12及び中間部材13が積み重ねられたときに、上側流路形成部材11の第2U字状孔2014の一対の直線部分の下方に位置するように形成されている。そして、第4実施形態に係るアッセイ装置200においては、下側流路形成部材12における一対の第6スリット孔2015,2015に挟まれた部位によって、内部流路3の下壁を構成する下壁部127が形成されている。また、電極部51及び導線部53は一対の第6スリット孔2015,2015に挟まれた部位の上面上に形成され、接続部52は突出部128の上面上に形成されている。
【0127】
スペーサ部材202は、下側流路形成部材12と下部カバー19との間に配置されている。スペーサ部材202の上面視における外形は、下側流路形成部材12の本体部121とそれとほぼ同じである。また、スペーサ部材202には、下側流路形成部材12の一対の第6スリット孔2015,2015に対応する一対の第7スリット孔2016、2016が形成されている。スペーサ部材202の高さ方向Hの寸法は、任意に設定され得る。すなわち、スペーサ部材202の高さ方向Hの寸法は、下側流路形成部材12の本体部121のそれと同じであってもよいし、異なっていてもよい。スペーサ部材202は、例えば、合成樹脂の成型品で構成され、図示省略の両面接着シートなどを利用して、下側流路形成部材12の下面に取り付けられる。なお、スペーサ部材202の高さ方向Hの寸法が下側流路形成部材12の本体部121のそれと同じ場合、下側流路形成部材12の本体部121となる部品がスペーサ部材202として用いられ得る。
【0128】
第4実施形態に係るアッセイ装置200において、下部カバー19には、下側流路形成部材12の一対の第6スリット孔2015,2015及びスペーサ部材202の一対の第7スリット孔2016,2016に対応する一対のスリット溝2017,2017が形成されている。第4実施形態に係るアッセイ装置200において、下部カバー19は、図示省略の両面接着シートなどを利用して、スペーサ部材202の下面に取り付けられる。なお、一対のスリット溝2017,2017は、一対のスリット孔であってもよい。
【0129】
第4実施形態に係るアッセイ装置200においては、上壁部117の第1ストレート部117a及び幅狭部117bによってマイクロ流路31の上壁が構成され、上壁部117の第2ストレート部117cによって分離流路32の上壁が構成される。また、下壁部127における上壁部117の第1ストレート部117a及び幅狭部117bに対応する部位によってマイクロ流路31の下壁が構成され、下壁部127における上壁部117の第2ストレート部117cに対応する部位によって分離流路32の下壁が構成される。さらに、上側流路形成部材11の第2U字状孔2014の一対の直線部分と、下側流路形成部材12の一対の第6スリット孔2015,2015と、スペーサ部材202の一対の第7スリット孔2016,2016と、下部カバー19の一対のスリット溝2017,2017とによって、一対の第1側方空間5,5及び一対の第2側方空間6,6が形成される。
【0130】
第4実施形態に係るアッセイ装置200の上記以外の構成については、基本的に第1実施形態に係るアッセイ装置1と同じである。
【0131】
第4実施形態に係るアッセイ装置200においても第1実施形態に係るアッセイ装置1と同様の効果が得られる。なお、第4実施形態に係るアッセイ装置200では、下側流路形成部材12の高さ方向Hの寸法及び/又は下部カバー19の高さ方向の寸法を適宜調整することにより、スペーサ部材202を省略することも可能である。また、第1実施形態に係るアッセイ装置1に適用可能な変形は、第4実施形態に係るアッセイ装置200にも適用可能である。さらに、図示は省略するが、第4実施形態に係るアッセイ装置200を幅方向に複数並べて一体化して一つのアッセイ装置として構成してもよい。
【0132】
[第5実施形態]
図22~
図24は、第5実施形態に係るアッセイ装置210を示している。
図22は、第5実施形態に係るアッセイ装置210の斜視図であり、
図23は、第5実施形態に係るアッセイ装置210の断面図であり、
図24は、第5実施形態に係るアッセイ装置210の分解斜視図である。以下では、主に第4実施形態に係るアッセイ装置200と相違する構成について説明する。
【0133】
第4実施形態に係るアッセイ装置200と第5実施形態に係るアッセイ装置210との主な相違は、第5実施形態に係るアッセイ装置210においては、第4実施形態に係るアッセイ装置200の第2上側ハウジング201及び上部カバー15に代えて、第3液体吸収材17を収容するための吸収材用ハウジング211及びそのカバー部材212が設けられていることである(
図21、
図24参照)。
【0134】
吸収材用ハウジング211は、上面視で矩形状に形成されている。吸収材用ハウジング211の長手方向Lの寸法は、特に限定されないが、上側ハウジング14のそれの約1/2であり得る。吸収材用ハウジング211の幅方向の寸法は、上側ハウジング14のそれとほぼ等しく、吸収材用ハウジング211の高さ方向の寸法は、上側ハウジング14のそれよりも大きい。吸収材用ハウジング211には、第4実施形態に係るアッセイ装置200の第2上側ハウジング201の第2収容孔2013に相当する第3収容孔2111が形成されている。つまり、第5実施形態に係るアッセイ装置210において、第3液体吸収材17は、突出部17aが第1液体吸収材4(の上面)に接触した状態で吸収材用ハウジング211の第3収容孔2111に収容される。吸収材用ハウジング211は、例えば、合成樹脂の成型品で構成され、図示省略の両面接着シートなどを利用して、第3収容孔2111が上側ハウジング14の開口孔143の上方に位置するように、上側ハウジング14に取り付けられる。
【0135】
カバー部材212は、例えば、合成樹脂の成型品で構成される。カバー部材212は、平板状に形成され、上面視において吸収材用ハウジング211の外形とほぼ同じ外形を有している。カバー部材212は、図示省略の両面接着シートなどを利用して、第3収容孔2111を覆うように吸収材用ハウジング211の上面に取り付けられる。
【0136】
第5実施形態に係るアッセイ装置210の上記以外の構成については、基本的に第4実施形態に係るアッセイ装置200と同じである。
【0137】
第5実施形態に係るアッセイ装置210においても第4実施形態に係るアッセイ装置200と同様の効果、さらに言えば、第1実施形態に係るアッセイ装置1と同様の効果が得られる。なお、第1実施形態に係るアッセイ装置1及び/又は第4実施形態に係るアッセイ装置200に適用可能な変形は、第5実施形態に係るアッセイ装置210にも適用可能である。また、図示は省略するが、第5実施形態に係るアッセイ装置210を幅方向に複数並べて一体化して一つのアッセイ装置として構成してもよい。
【0138】
以上、本発明の実施形態及びその変形例ついて説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【実施例】
【0139】
[実施例1]
実施例1では、実施形態に係るアッセイ装置にポテンシオスタットに接続し、サイクリックボルタンメトリー法によりK3[Fe(CN)6](フェリシアン化カリウム)溶液についての測定を行った。注入口2にK3[Fe(CN)6]溶液を滴下すると、酸化還元反応に伴う電流値が観察された。その後、K3[Fe(CN)6]溶液に代えてK3[Fe(CN)6]溶液を含まない溶媒を注入口2の滴下したところ、K3[Fe(CN)6]溶液の特徴的なピーク電流が観察されなくなった。これらのことから、実施形態に係るアッセイ装置では、サイクリックボルタンメトリー法によるアッセイが可能なこと、アッセイ装置内の液体の入れ替えと静置が可能であることが確認された。
【0140】
[実施例2]
実施例2では、実施形態に係るアッセイ装置を電気化学発光測定装置に組み込み、サイクリックボルタンメトリー法によるルミノールの電気化学発光の測定を行った。ルミノールは、0.2~0.3V付近にて電極表面で酸化されてラジカルやジアゾキノンになり、酸化されたルミノール(ラジカルやジアゾキノン)は、負の電荷(-0.5~-1.0V)を印加して溶存酸素から電気化学的な還元反応によって生成された活性酸素種(H2O2やO2-)と反応(酸化)して発光する。ここでは、活性酸素種がルミノールと抗酸化物質の間で競合的に反応することを利用して、アップルジュース、オレンジジュース、グレープジュース及びトマトジュースの抗酸化度(抗酸化作用)の測定を行った。いずれのジュースについても抗酸化度の測定を行うことができることが確認された。
【0141】
[実施例3]
実施例3では、実施形態に係るアッセイ装置を電気化学発光測定装置に組み込み、金ナノ粒子を用いたルミノールの電気化学発光の測定を行った。具体的には、実施例3においては、10mMのルミノール溶液をトリス塩酸緩衝液(pH8,200mM)で0.2mMのルミノール溶液に調整し、金ナノ粒子溶液とトリス塩酸緩衝液(pH8,200mM)を1:4で混合し、これらを1:1で混合したものを用いた。その結果、問題なくルミノールの電気化学発光の測定を行うことができることが確認された。なお、この場合、トリス塩酸緩衝液中の金ナノ粒子が溶存酸素と反応して活性酸素種を生成するため、実施例2とは異なり、電気化学反応による活性酸素種の生成は不要である。
【符号の説明】
【0142】
1,1´,10,10´,100,100´,200,210…アッセイ装置、2…注入口、3…内部流路、4…第1液体吸収材、11…上側流路形成部材、12…下側流路形成部材、13…中間部材、31…マイクロ流路、32…分離流路、51…電極部、52…接続部、53…導線部、54…電気絶縁材、117…上壁部、127,227…下壁部、LQ1…第1液体、LQ2…第2液体