(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-18
(45)【発行日】2025-06-26
(54)【発明の名称】デバイスチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20250619BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20250619BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/78 L
B23K26/364
(21)【出願番号】P 2021082733
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2024-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 章紘
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-129394(JP,A)
【文献】特開2020-136378(JP,A)
【文献】特開2016-115867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/364
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に格子状に設定された分割予定ラインによって区画された領域に複数のデバイスが形成されたウェーハを個々のデバイスに分割してデバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法であって、
該ウェーハの表面側に樹脂層を形成する樹脂層形成ステップと、
該樹脂層形成ステップの後、該樹脂層が形成された側から該分割予定ラインに沿って第一の出力でレーザービームを照射し、該樹脂層に対してレーザー加工溝を形成する樹脂層加工ステップと、
該樹脂層加工ステップの後、該第一の出力より大きい第二の出力で該レーザー加工溝に沿ってレーザービームを照射し、該ウェーハを切断するウェーハ切断ステップと、
を含
み、
該ウェーハ切断ステップでは、該レーザービームが該レーザー加工溝の側壁に照射されないように調整されることを特徴とする、
デバイスチップの製造方法。
【請求項2】
該樹脂層形成ステップの後かつ該樹脂層加工ステップの前に、該樹脂層が形成された側に保護膜を形成する保護膜形成ステップと、
該ウェーハ切断ステップの後に、該保護膜を除去する保護膜除去ステップと、
を更に含むことを特徴とする、
請求項
1に記載のデバイスチップの製造方法。
【請求項3】
該樹脂層は絶縁性のフィルムであることを特徴とする、
請求項1
または2に記載のデバイスチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半田等からなる接続端子(バンプ)を有する半導体チップを実装する方法として、半導体チップに予め設けられた封止用のペースト状またはフィルム状の樹脂層を介して半導体チップ同士を接合する方法が知られている(特許文献1参照)。上記の半導体チップの製造工程では、デバイスチップの薄型化や多段積層に対応するため、裏面が研削され薄化されたウェーハの表面に樹脂層を形成し、樹脂層側からダイシングすることで、樹脂層が形成された半導体チップを簡便に得ることができるとして注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、薄化されたウェーハを切削ブレードにより切削すると、裏面チッピングが多発するという問題があった。そこで、レーザービームの照射によるアブレーションでダイシングする方法を検討したが、樹脂層が熱に弱いため、レーザービームの熱影響を受けて樹脂が硬化してしまい、実装段階で実施される熱圧着で樹脂が伸び広がらず、チップ不良の原因となるという新たな課題が明らかになった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザービームによる分割加工時に生じる樹脂層への熱影響を抑制することができるデバイスチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のデバイスチップの製造方法は、表面に格子状に設定された分割予定ラインによって区画された領域に複数のデバイスが形成されたウェーハを個々のデバイスに分割してデバイスチップを製造するデバイスチップの製造方法であって、該ウェーハの表面側に樹脂層を形成する樹脂層形成ステップと、該樹脂層形成ステップの後、該樹脂層が形成された側から該分割予定ラインに沿って第一の出力でレーザービームを照射し、該樹脂層に対してレーザー加工溝を形成する樹脂層加工ステップと、該樹脂層加工ステップの後、該第一の出力より大きい第二の出力で該レーザー加工溝に沿ってレーザービームを照射し、該ウェーハを切断するウェーハ切断ステップと、を含み、
該ウェーハ切断ステップでは、該レーザービームが該レーザー加工溝の側壁に照射されないように調整されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のデバイスチップの製造方法は、該樹脂層形成ステップの後かつ該樹脂層加工ステップの前に、該樹脂層が形成された側に保護膜を形成する保護膜形成ステップと、該ウェーハ切断ステップの後に、該保護膜を除去する保護膜除去ステップと、を更に含んでもよい。
【0009】
また、本発明のデバイスチップの製造方法において、該樹脂層は絶縁性のフィルムであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本願発明は、レーザービームによる分割加工時に生じる樹脂層への熱影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態のデバイスチップの製造方法の加工対象のウェーハの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態のデバイスチップの製造方法の流れを示すフローチャート図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す樹脂層形成ステップの一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す保護膜形成ステップの一例を一部断面で示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示す保護膜形成ステップの
図4の後の一状態のウェーハの要部を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図2に示す樹脂層加工ステップの一例を一部断面で示す側面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示す樹脂層加工ステップの
図6の後の一状態のウェーハの要部を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図2に示すウェーハ切断ステップの一例を一部断面で示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図2に示すウェーハ切断ステップの
図8の後の一状態のウェーハの要部を示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図2に示す保護膜除去ステップの一例を一部断面で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るデバイスチップ18の製造方法について、図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態のデバイスチップ18の製造方法の加工対象のウェーハ10の斜視図である。ウェーハ10は、シリコン(Si)、サファイア(Al
2O
3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板11とする円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。基板11は、実施形態において、30μm以上50μm以下の厚みであるシリコン基板である。
【0014】
ウェーハ10は、基板11の表面12に格子状に設定される複数の分割予定ライン13と、分割予定ライン13によって区画された領域に形成される複数のデバイス14と、を有する。デバイス14は、例えば、IC(Integrated Circuit)、あるいはLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ等である。デバイス14が形成された表面12と反対側に位置するウェーハ10の面を裏面15とする。
【0015】
実施形態において、ウェーハ10は、デバイス14に対応する領域で基板11を貫通する貫通電極16(
図4等参照)と、基板11の表面12側で貫通電極16に接続される電極バンプ17と、を備えるTSV(Through-Silicon Via)ウェーハである。電極バンプ17は、200μm程度の高さを有し、デバイス14の表面から突出している。なお、ウェーハ10は、例えば、デバイス14に対応する領域で基板11を貫通する貫通電極16と、基板11の表面12側で貫通電極16に接続される再配線層(配線層)とを備えたインターポーザーウェーハであってもよい。
【0016】
ウェーハ10は、分割予定ライン13に沿って個々のデバイス14毎に分割されて、デバイスチップ18に個片化される。なお、デバイスチップ18は、
図1において、正方形状であるが、長方形状であってもよい。
【0017】
次に、実施形態に係るデバイスチップ18の製造方法を説明する。
図2は、実施形態のデバイスチップ18の製造方法の流れを示すフローチャート図である。実施形態のデバイスチップ18の製造方法は、樹脂層形成ステップ1と、保護膜形成ステップ2と、樹脂層加工ステップ3と、ウェーハ切断ステップ4と、保護膜除去ステップ5と、を含む。
【0018】
(樹脂層形成ステップ1)
図3は、
図2に示す樹脂層形成ステップ1の一例を示す斜視図である。樹脂層形成ステップ1は、ウェーハ10の表面12側に樹脂層22を形成するステップである。実施形態では、ウェーハ10の表面12側に樹脂層22を形成する前に、ウェーハ10を環状のフレーム20およびテープ21に固定する。
【0019】
フレーム20は、ウェーハ10の外径より大きな開口を有し、金属や樹脂等の材質で構成される。テープ21は、ウェーハ10をフレーム20に固定するための粘着テープである。テープ21は、例えば、合成樹脂で構成された基材層と、基材層に積層されかつ粘着性を有する合成樹脂で構成された糊層と、を含む。ウェーハ10を環状のフレーム20およびテープ21に固定する際は、まず、テープ21を、フレーム20の裏面側に貼着し、次に、ウェーハ10をフレーム20の開口の所定の位置に位置決めして、裏面15側をテープ21に貼着させる。
【0020】
実施形態において、樹脂層22は、粘着性を有する樹脂で構成された絶縁性のフィルムであり、例えば、NCF(Non Conductive Film)である。フィルムである樹脂層22の外径は、ウェーハ10の外径とほぼ同等である。また、樹脂層22の厚みは、実施形態において、15μmである。樹脂層形成ステップ1では、
図3に示すように、フレーム20およびテープ21に固定されたウェーハ10の表面12側から、ウェーハ10の表面12全体を覆うように樹脂層22を貼着する。樹脂層22は、分割予定ライン13とデバイス14との凹凸を吸収するようにウェーハ10の表面12全体を覆った状態で密着される。
【0021】
(保護膜形成ステップ2)
図4は、
図2に示す保護膜形成ステップ2の一例を一部断面で示す側面図である。
図5は、
図2に示す保護膜形成ステップ2の
図4の後の一状態のウェーハ10の要部を示す断面図である。保護膜形成ステップ2は、ウェーハ10の樹脂層22が形成された側に保護膜23を形成するステップである。保護膜形成ステップ2は、樹脂層形成ステップ1の後かつ樹脂層加工ステップ3の前に実施される。
【0022】
図4に示すように、実施形態の保護膜形成ステップ2では、保護膜形成装置30を用いて保護膜23を形成する。保護膜形成装置30は、実施形態において、スピンコータを含む。保護膜形成装置30は、保持面32を有するチャックテーブル31と、クランプ部材33と、回転軸部材34と、樹脂供給ノズル35と、を備える。なお、保護膜形成装置30は、後述のレーザー加工装置40に搭載される保護膜形成ユニットであってもよい。
【0023】
保護膜形成ステップ2では、まず、テープ21を介してウェーハ10の裏面15側をチャックテーブル31の保持面32に吸引保持し、フレーム20の外周部をクランプ部材33で固定する。次に、回転軸部材34によってチャックテーブル31を軸心回りに回転させた状態で、樹脂供給ノズル35から液状の樹脂36をウェーハ10の表面12に形成された樹脂層22上に滴下させる。この際、樹脂供給ノズル35は、ウェーハ10の半径方向に往復移動させてもよい。滴下された液状の樹脂36は、チャックテーブル31の回転により発生する遠心力によって、ウェーハ10の表面12に形成された樹脂層22上を中心側から外周側に向けて流れていき、樹脂層22の全面に塗布される。
【0024】
樹脂36は、例えば、ポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol:PVA)またはポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone:PVP)等の水溶性樹脂である。なお、本発明では、樹脂36として、例えば、株式会社ディスコ社製のHogomax(登録商標)を用いることができる。保護膜形成ステップ2では、ウェーハ10の表面12側の樹脂層22の全面に塗布された液状の樹脂36を乾燥させて、
図5に示すように、水溶性の樹脂36で構成される保護膜23を、ウェーハ10の表面12側に形成された樹脂層22の更に上層に形成する。保護膜23の厚みは、実施形態において、5μm以上15μm以下程度である。
【0025】
(樹脂層加工ステップ3)
図6は、
図2に示す樹脂層加工ステップ3の一例を一部断面で示す側面図である。
図7は、
図2に示す樹脂層加工ステップ3の
図6の後の一状態のウェーハ10の要部を示す断面図である。樹脂層加工ステップ3は、樹脂層22が形成された側から分割予定ライン13に沿って第一の出力でレーザービーム45を照射し、樹脂層22に対してレーザー加工溝24を形成するステップである。樹脂層加工ステップ3は、樹脂層形成ステップ1の後に実施される。実施形態の樹脂層加工ステップ3は、更に、保護膜形成ステップ2の後に実施される。
【0026】
図6に示すように、実施形態の樹脂層加工ステップ3では、レーザー加工装置40を用いてレーザー加工溝24を形成する。レーザー加工装置40は、保持面42を有するチャックテーブル41と、クランプ部材43と、レーザービーム照射ユニット44と、チャックテーブル41とレーザービーム照射ユニット44から出射されるレーザービームの集光点とを相対的に移動させる不図示の移動ユニットとを備える。
【0027】
樹脂層加工ステップ3では、まず、テープ21を介してウェーハ10の裏面15側をチャックテーブル41の保持面42に吸引保持し、フレーム20の外周部をクランプ部材43で固定する。次に、分割予定ライン13に沿ってチャックテーブル41とレーザービーム照射ユニット44から出射されるレーザービームの集光点とを相対的に移動させながら、レーザービーム45を、ウェーハ10の樹脂層22が形成された側に照射させる。
【0028】
樹脂層加工ステップ3で照射されるレーザービーム45は、樹脂層22および保護膜23に対して吸収性を有する波長のレーザービームであり、第一の出力で照射される。第一の出力のレーザービーム45は、実施形態において、出力が5W、パス数が5パス、繰り返し周波数が300kHz、送り速度が1000mm/sである。レーザービーム45は、実施形態のように樹脂層22の表面に集光点位置が固定されてもよいし、変更されてもよい。また、レーザービーム45は、加工送り方向に分岐して照射されてもよい。
【0029】
図7に示すように、樹脂層加工ステップ3では、樹脂層22の表面に集光点を位置付けたレーザービーム45を、分割予定ライン13に沿って照射することによって、分割予定ライン13に沿ったレーザー加工溝24が形成される。すなわち、レーザービーム45によって、ウェーハ10の表面12を覆う樹脂層22および保護膜23のうち、分割予定ライン13に相当する領域の樹脂層22および保護膜23が除去されてレーザー加工溝24が形成される。レーザー加工溝24は、分割予定ライン13に相当する領域の樹脂層22および保護膜23の一部を除去して基板11を露出させる。
【0030】
この際、レーザー加工溝24の側壁には、レーザービーム45の照射によって熱影響を受けて樹脂が硬化した熱影響層25(Heat-Affected Zone:HAZ)が形成される。樹脂層加工ステップ3で樹脂を除去するための第一の出力のレーザービーム45は、後述のウェーハ切断ステップ4でウェーハ10の基板11を切断するための第二の出力のレーザービーム46より出力が小さい。このため、熱に弱い樹脂層22および保護膜23の樹脂に対しての熱影響を抑制することができる。
【0031】
更に、実施形態では、ウェーハ10の表面12側に形成された樹脂層22を、更に保護膜23で覆っている。レーザービーム45の熱影響を最も受け、熱影響層25が大きくなる表面側を保護膜23で覆っているため、樹脂層22における熱影響層25の幅26を小さくすることができる。
【0032】
(ウェーハ切断ステップ4)
図8は、
図2に示すウェーハ切断ステップ4の一例を一部断面で示す側面図である。
図9は、
図2に示すウェーハ切断ステップ4の
図8の後の一状態のウェーハ10の要部を示す断面図である。ウェーハ切断ステップ4は、第一の出力より大きい第二の出力でレーザー加工溝24に沿ってレーザービーム46を照射し、ウェーハ10を切断するステップである。ウェーハ切断ステップ4は、樹脂層加工ステップ3の後、実施される。
【0033】
図8に示すように、実施形態のウェーハ切断ステップ4では、樹脂層加工ステップ3で用いたレーザー加工装置40を用いてウェーハ10を切断するが、樹脂層加工ステップ3で用いたレーザー加工装置40とは異なるレーザー加工装置を用いてもよい。
【0034】
ウェーハ切断ステップ4では、ウェーハ10の表面12側の樹脂層22および保護膜23に形成したレーザー加工溝24に沿って、チャックテーブル41とレーザービーム照射ユニット44から出射されるレーザービームの集光点とを相対的に移動させながら、レーザービーム46を、ウェーハ10の樹脂層22から露出した基板11の表面12側に照射させる。
【0035】
ウェーハ切断ステップ4で照射されるレーザービーム46は、基板11に対して吸収性を有する波長のレーザービームであり、第一の出力より大きい第二の出力で照射される。第二の出力のレーザービーム46は、実施形態において、出力が7W、パス数が15パス、繰り返し周波数が300kHz、送り速度が1000mm/sである。
【0036】
レーザービーム46は、実施形態のように樹脂層22の表面の高さに集光点位置が固定されてもよいし、例えば、基板11の表面12に変更されてもよい。また、レーザービーム46は、加工送り方向に分岐して照射されてもよい。ウェーハ切断ステップ4では、レーザービーム46がレーザー加工溝24の側壁に照射されないように調整される。レーザービーム46は、例えば、ビーム形状を成形されることによってレーザー加工溝24の側壁に照射されないように調整される。また、レーザービーム46は、例えば、出力や集光点の位置等が調整されることによってレーザー加工溝24の側壁に照射されないように調整されてもよい。
【0037】
図9に示すように、ウェーハ切断ステップ4では、樹脂層22の表面の高さに集光点を位置付けたレーザービーム46を、レーザー加工溝24に沿って照射することによって、分割予定ライン13に沿ってウェーハ10が分割されて、デバイスチップ18に個片化される。この際、レーザー加工溝24によって、樹脂層22および保護膜23の分割予定ライン13に沿った領域は除去されて基板11が露出している。このため、レーザービーム46は、分割予定ライン13に沿って基板11の表面12に直接照射され、レーザー加工溝24の側壁である樹脂層22および保護膜23には照射されない。これにより、熱影響層25の拡大を抑制することができる。
【0038】
(保護膜除去ステップ5)
図10は、
図2に示す保護膜除去ステップ5の一例を一部断面で示す側面図である。
図11は、
図2に示す保護膜除去ステップ5の
図10の後の一状態のウェーハ10の要部を示す断面図である。保護膜除去ステップ5は、保護膜23を除去するステップである。保護膜除去ステップ5は、ウェーハ切断ステップ4の後に、実施される。
【0039】
図10に示すように、実施形態の保護膜除去ステップ5では、洗浄装置50によって、ウェーハ10の表面12側に形成された樹脂層22の表面を覆う水溶性の樹脂で構成される保護膜23を、洗浄液56で洗浄して除去する。洗浄装置50は、保持面52を有するチャックテーブル51と、クランプ部材53と、回転軸部材54と、洗浄液供給ノズル55と、を備える。
【0040】
なお、洗浄装置50は、保護膜形成装置30と兼用の装置であってもよい。より詳しくは、洗浄装置50のチャックテーブル51、クランプ部材53および回転軸部材54は、保護膜形成装置30のチャックテーブル31、クランプ部材33および回転軸部材34と兼用であってもよい。また、洗浄装置50は、レーザー加工装置40に搭載される洗浄ユニットであってもよい。
【0041】
保護膜除去ステップ5では、まず、テープ21を介してウェーハ10の裏面15側をチャックテーブル51の保持面52に吸引保持し、フレーム20の外周部をクランプ部材53で固定する。次に、回転軸部材54によってチャックテーブル51を軸心回りに回転させた状態で、洗浄液供給ノズル55から洗浄液56をウェーハ10の表面12に形成された樹脂層22に向けて供給させる。この際、洗浄液供給ノズル55は、ウェーハ10の半径方向に往復移動させてもよい。
【0042】
洗浄液56は、例えば、洗浄液供給ノズル55より上流の水路で10MPa以上12MPa以下程度に水圧が調整された加圧水である。洗浄液56は、例えば、純水である。洗浄液56は、エアーを混入させたバブル水であってもよい。また、水とエアーとを合流させた所謂2流体で洗浄してもよい。
【0043】
供給された洗浄液56は、チャックテーブル31の回転により発生する遠心力によって、ウェーハ10の表面12に形成された樹脂層22上を中心側から外周側に向けて流れていき、樹脂層22の表面を覆った保護膜23を洗浄する。樹脂層22の表面を覆った保護膜23を洗浄することによって、
図11に示すように、樹脂層22の表面が露出する。これにより、基板11の表面12に樹脂層22が形成されたデバイスチップ18を得ることができる。
【0044】
以上説明したように、実施形態のデバイスチップ18の製造方法では、低出力(第一の出力)で樹脂層22を加工した後に、高出力(第二の出力)で基板11を加工することにより、レーザー加工時に生じる樹脂層22への熱影響を抑制しつつ、確実に基板11を分割することができる。
【0045】
また、低出力での加工により形成されたレーザー加工溝24によって、基板11を切断する際の高出力の加工時の高温のデブリやプラズマの飛散方向を制限することができるため、デブリの付着やプラズマの拡散による熱影響の抑制にも貢献できる。
【0046】
更に、樹脂層22の表面を覆う保護膜23を形成することにより、熱影響層25を抑制することができる。実施形態のように保護膜23を形成し、樹脂層22を第一の出力で加工し、基板11を第二の出力で加工した場合、熱影響層25の幅26は、45μm程度である。これに対し、例えば、保護膜23を形成し、樹脂層22と基板11とを同出力のレーザービームで加工した場合、熱影響層25の幅26は、60μm程度である。更に、例えば、保護膜23を形成せず、樹脂層22と基板11とを同出力のレーザービームで加工した場合、熱影響層25の幅26は、80μm程度である。
【0047】
また、実施形態においては、樹脂層加工ステップ3とウェーハ切断ステップ4とが続けて実施され、ウェーハ切断ステップ4を実施した直後に保護膜除去ステップ5が実施されることが好ましい。なお、ウェーハ切断ステップ4を実施した直後とは、ウェーハ切断ステップ4後で、かつレーザー加工装置40によってウェーハ切断ステップ4が実施されたウェーハ10が洗浄装置50まで搬送されてくるまでの所要時間経過した後をいう。樹脂層加工ステップ3およびウェーハ切断ステップ4を実施した直後に保護膜除去ステップ5を実施することにより、レーザー加工時に保護膜23に付着したデブリが徐々に変質して除去しづらくなる前に除去させることができる。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、例えば、実施形態の
図6および
図7に示す樹脂層加工ステップ3では、分割予定ライン13に相当する領域の樹脂層22および保護膜23の一部を除去して基板11を露出させたが、本発明では、必ずしも基板11を露出させる必要はない。すなわち、樹脂層加工ステップ3の後に分割予定ライン13に沿った領域の樹脂層22が所定量除去されている状態であれば、ウェーハ切断ステップ4において熱影響層25の拡大を抑制する効果を同様に得られる。
【符号の説明】
【0049】
10 ウェーハ
11 基板
12 表面
13 分割予定ライン
14 デバイス
15 裏面
18 デバイスチップ
22 樹脂層
23 保護膜
24 レーザー加工溝
25 熱影響層
26 幅
45、46 レーザービーム