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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-20
(45)【発行日】2025-06-30
(54)【発明の名称】コンピュータシステムおよび解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2251 20180101AFI20250623BHJP
【FI】
G01N23/2251
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023543624
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2021031595
(87)【国際公開番号】W WO2023026489
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金野 杏彩
(72)【発明者】
【氏名】藤村 一郎
【審査官】西岡 貴央
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-237375(JP,A)
【文献】特開2007-294391(JP,A)
【文献】特開2021-107807(JP,A)
【文献】国際公開第2011/114644(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/024402(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/207668(WO,A1)
【文献】特開2016-081907(JP,A)
【文献】特開2018-159577(JP,A)
【文献】特表2016-507058(JP,A)
【文献】特表2016-508295(JP,A)
【文献】特表2016-524334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/2251
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビーム装置による試料の観察画像を解析するコンピュータシステムであって、
前記観察画像は、複数のセル領域を含み、各々のセル領域は、当該セル領域を構成する要素である複数の領域を含む場合があり、
前記コンピュータシステムは、
前記観察画像の中から、ユーザが指定した、または自動的に設定した、第1セル領域を基準画像として、前記基準画像と類似する他の1つ以上の第2セル領域を類似画像として抽出する抽出処理と、
前記基準画像と、抽出された前記類似画像とにおいて、前記基準画像に含まれている複数の関心領域の関係性が規定されたルールに基づいて、前記複数の関心領域を比較することで、前記類似画像のセル領域の異常の有無を判定する判定処理と、
判定結果として各セル領域の位置および異常の有無をユーザに対し出力させる出力処理と、
を行
前記ルールには、前記基準画像のセル領域に含まれている前記複数の関心領域について、関心領域間の輝度の関係性が設定されており、
前記基準画像の前記複数の関心領域を、ユーザの操作入力または自動的な処理に基づいて設定する設定処理を行い、
前記抽出処理は、前記基準画像の前記複数の関心領域の配置パターンについて、関心領域間の位置関係を計算することで、同じ配置パターンと、各種類の反転された配置パターンとを含めて類似として抽出する処理であり、
前記判定処理は、各種類の配置パターンを有する前記類似画像について、セル領域内の関心領域間の輝度関係を計算することで、異常の有無を判定する処理であり、
前記出力処理は、抽出された各種類の配置パターンごとに識別できる態様で前記判定結果を出力させる処理であり、
前記セル領域を構成する要素である前記複数の領域は、離間した複数のプラグの配置パターンであり、
前記第1セル領域の基準となる配置パターンに対し、各種類の反転された配置パターンとして、左右反転された配置パターン、上下反転された配置パターン、または斜め反転された配置パターンを有する場合があり、
前記セル領域内の関心領域間の輝度関係は、前記複数のプラグのプラグ間での輝度関係である、
コンピュータシステム。
【請求項2】
請求項1記載のコンピュータシステムにおいて、
前記ルールには、前記基準画像のセル領域に含まれている前記複数の関心領域について、関心領域間の形状またはサイズの関係性が設定されており
前記判定処理は、各種類の配置パターンを有する前記類似画像について、セル領域内の関心領域間の輝度関係に加え、形状またはサイズの関係を計算することで、異常の有無を判定する処理である、
コンピュータシステム。
【請求項3】
請求項1記載のコンピュータシステムにおいて、
記設定処理は、前記ルールとして、前記基準画像の第1セル領域内の複数の関心領域について、関心領域間の輝度の大小関係を規定するルールを設定する処理を含む、
コンピュータシステム。
【請求項4】
請求項1記載のコンピュータシステムにおいて、
記設定処理は、前記ルールとして、前記基準画像の第1セル領域内の複数の関心領域について、指定した第1関心領域に対する第2関心領域の輝度の差が閾値以上または閾値以下である場合に異常有りと規定するルールを設定する処理を含む、
コンピュータシステム。
【請求項5】
請求項1記載のコンピュータシステムにおいて、
記設定処理は、前記ルールとして、前記基準画像の第1セル領域内の複数の関心領域について、指定した関心領域についての輝度値が、指定した輝度閾値範囲外、もしくは輝度閾値範囲内である場合に異常有りと規定するルールを設定する処理を含む、
コンピュータシステム。
【請求項6】
荷電粒子ビーム装置による試料の観察画像を解析するコンピュータシステムにおける解析方法であって、
前記観察画像は、複数のセル領域を含み、各々のセル領域は、当該セル領域を構成する要素である複数の領域を含む場合があり、
前記コンピュータシステムにより実行されるステップとして、
前記観察画像の中から、ユーザが指定した、または自動的に設定した、第1セル領域を基準画像として、前記基準画像と類似する他の1つ以上の第2セル領域を類似画像として抽出する抽出処理ステップと、
前記基準画像と、抽出された前記類似画像とにおいて、前記基準画像に含まれている複数の関心領域の関係性が規定されたルールに基づいて、前記複数の関心領域を比較することで、前記類似画像のセル領域の異常の有無を判定する判定処理ステップと、
判定結果として各セル領域の位置および異常の有無をユーザに対し出力させる出力処理ステップと、
を有
前記ルールには、前記基準画像のセル領域に含まれている前記複数の関心領域について、関心領域間の輝度の関係性が設定されており、
前記基準画像の前記複数の関心領域を、ユーザの操作入力または自動的な処理に基づいて設定する設定処理ステップを有し、
前記抽出処理ステップは、前記基準画像の前記複数の関心領域の配置パターンについて、関心領域間の位置関係を計算することで、同じ配置パターンと、各種類の反転された配置パターンとを含めて類似として抽出する処理ステップであり、
前記判定処理ステップは、各種類の配置パターンを有する前記類似画像について、セル領域内の関心領域間の輝度関係を計算することで、異常の有無を判定する処理ステップであり、
前記出力処理ステップは、抽出された各種類の配置パターンごとに識別できる態様で前記判定結果を出力させる処理ステップであり、
前記セル領域を構成する要素である前記複数の領域は、離間した複数のプラグの配置パターンであり、
前記第1セル領域の基準となる配置パターンに対し、各種類の反転された配置パターンとして、左右反転された配置パターン、上下反転された配置パターン、または斜め反転された配置パターンを有する場合があり、
前記セル領域内の関心領域間の輝度関係は、前記複数のプラグのプラグ間での輝度関係である、
解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム装置などの技術に関し、特に、観察画像の解析処理に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡(SEM)等の荷電粒子ビーム装置は、試料に対するビーム・光などの走査に基づいて、VC(Voltage Contrast)画像などの画像を観察画像として得ることができる。荷電粒子ビーム装置に接続されるコンピュータシステムは、その観察画像に基づいて、例えば異常・不良など(以下では異常と総称する)を検出するための解析処理を行う。
【0003】
試料としてロジックデバイス等の半導体デバイスの不良解析には、例えばVC観察手法が用いられている。SEMによるVC観察画像においては、VCの違いが輝度として現れる。VCは、試料の帯電表面に発生する電位差によって二次電子の放出の効率が変化することによって生じる。この手法では、観察画像内の輝度を解析することで異常が判定される。
【0004】
先行技術例としては、特開2010-25836号公報(特許文献1)が挙げられる。特許文献1には、半導体デバイスの複雑な構造のばらつきを直感的かつ定量的に評価することができる外観検査装置を提供する旨が記載されている。特許文献1には、テンプレート画像との比較で輝度および形状を比較する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-25836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、ロジックデバイスなどの不良解析の際に、SEM等の荷電粒子ビーム装置によって得たVC観察画像について、人による目視観察で、セル構造間で輝度を比較することで、異常の有無を判定している。セル構造内には、トランジスタ等のデバイスを構成する要素であるプラグ領域などが含まれている。しかし、このような従来技術では、多数の同一または類似のセル構造が配列されている観察画像において、例えば同一の位置関係を有するプラグ領域間で輝度値を比較することは、困難であり、できるとしても非常に手間・時間がかかる。また、このような観察画像において、あるセル構造における複数のプラグ領域が、上下反転や左右反転などの反転した関係で像として分布している場合もある。その場合には、それらの像についても判別する必要があるが、目視観察では非常に困難で手間・時間がかかる。
【0007】
本開示の目的は、荷電粒子ビーム装置によって得た観察画像の解析等を行うコンピュータシステム等の技術に関して、観察画像内の同一または類似するセル構造間の比較による異常の判定・検出を、目視観察に依らずに、ある程度以上自動的にして、容易・効率的に実現できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のうち代表的な実施の形態は以下に示す構成を有する。実施の形態は、荷電粒子ビーム装置による試料の観察画像を解析するコンピュータシステムであって、前記観察画像は、複数のセル領域を含み、各々のセル領域は、当該セル領域を構成する要素である複数の領域を含む場合があり、前記コンピュータシステムは、前記観察画像の中から、ユーザが指定した、または自動的に設定した、第1セル領域を基準画像として、前記基準画像と類似する他の1つ以上の第2セル領域を類似画像として抽出する抽出処理と、前記基準画像と、抽出された前記類似画像とにおいて、前記基準画像に含まれている複数の関心領域の関係性が規定されたルールに基づいて、前記複数の関心領域を比較することで、前記類似画像のセル領域の異常の有無を判定する判定処理と、判定結果として各セル領域の位置および異常の有無をユーザに対し出力させる出力処理と、を行う。
【発明の効果】
【0009】
本開示のうち代表的な実施の形態によれば、荷電粒子ビーム装置によって得た観察画像の解析等を行うコンピュータシステム等の技術に関して、観察画像内の同一または類似するセル構造間の比較による異常の判定・検出を、目視観察に依らずに、ある程度以上自動的にして、容易・効率的に実現できる。上記した以外の課題、構成および効果等については、発明を実施するための形態において示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1のコンピュータシステムを含んで構成される荷電粒子ビーム装置の構成例を示す。
図2】実施の形態1のコンピュータシステムによる主な処理のフローを示す。
図3】試料(試料A)の観察画像の例を示す。
図4】試料(試料B)の観察画像の例を示す。
図5】試料(試料A)の観察画像の基準画像の例を示す。
図6】試料(試料B)の観察画像の基準画像の例を示す。
図7】実施の形態1で、抽出処理結果例(試料Aの場合)を示す。
図8】実施の形態1で、抽出処理結果例(試料Bの場合)を示す。
図9】実施の形態1で、画像入力の画面例を示す。
図10】実施の形態1で、基準画像設定の画面例を示す。
図11】実施の形態1で、類似画像抽出の画面例を示す。
図12】実施の形態1で、ROI設定の画面例を示す。
図13】実施の形態1で、データ保存の画面例を示す。
図14】実施の形態1で、判定ルール設定(第1種類)の画面例を示す。
図15】実施の形態1で、判定ルール設定(第2種類)の画面例を示す。
図16】実施の形態1で、判定ルール設定(第3種類)の画面例を示す。
図17】実施の形態1で、判定結果(試料Aの場合)の画面例を示す。
図18】実施の形態1で、判定結果(試料Bの場合)の画面例を示す。
図19】実施の形態1で、複数判定の画面例を示す。
図20】実施の形態1で、マップ表示の画面例を示す。
図21】実施の形態1で、基準セル領域を自動的に設定する方法の説明図を示す。
図22】実施の形態1の変形例における処理フローを示す。
図23】実施の形態1の変形例における判定ルールの設定例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明を省略する。図面において、各構成要素の表現は、発明の理解を容易にするために、実際の位置、大きさ、形状、および範囲等を表していない場合がある。
【0012】
説明上、プログラムによる処理について説明する場合に、プログラムや機能や処理部等を主体として説明する場合があるが、それらについてのハードウェアとしての主体は、プロセッサ、あるいはそのプロセッサ等で構成されるコントローラ、装置、計算機、システム等である。計算機は、プロセッサによって、適宜にメモリや通信インタフェース等の資源を用いながら、メモリ上に読み出されたプログラムに従った処理を実行する。これにより、所定の機能や処理部等が実現される。プロセッサは、例えばCPUやGPU等の半導体デバイス等で構成される。プロセッサは、所定の演算が可能な装置や回路で構成される。処理は、ソフトウェアプログラム処理に限らず、専用回路でも実装可能である。専用回路は、FPGA、ASIC、CPLD等が適用可能である。
【0013】
プログラムは、対象計算機に予めデータとしてインストールされていてもよいし、プログラムソースから対象計算機にデータとして配布されてインストールされてもよい。プログラムソースは、通信網上のプログラム配布サーバでもよいし、非一過性のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(例えばメモリカード)でもよい。プログラムは、複数のモジュールから構成されてもよい。コンピュータシステムは、複数台の装置によって構成されてもよい。コンピュータシステムは、クライアントサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等で構成されてもよい。また、各種のデータや情報は、例えばテーブルやリスト等の構造で表現・実装されるが、これに限定されない。また、識別情報、識別子、ID、名、番号等の表現は互いに置換可能である。
【0014】
<実施の形態1>
図1図21を用いて、実施の形態1のコンピュータシステムについて説明する。実施の形態1のコンピュータシステムは、荷電粒子ビーム装置によって試料(観察対象物)である半導体デバイスを撮像したVC画像である観察画像を取得・入力し、観察画像を解析する機能(解析機能と記載する)を有する。この解析機能(それに対応するソフトウェア)では、観察画像における比較のための基準画像(言い換えると基準領域)を、ユーザの操作入力、または自動的な処理によって設定する。ソフトウェアは、観察画像内において、基準画像に対し、同一または類似する領域(セル構造など)を、類似画像(言い換えると類似領域)として抽出する。ソフトウェアは、基準領域と、抽出された類似領域とを比較して、設定された判定ルールに基づいて、異常を判定する。判定ルールは、セル領域内に含まれている複数のプラグ領域を複数の関心領域(ROI:Region On Interest)として、ROI間の関係性(例えば位置関係やサイズ関係、輝度関係など)を規定したルールがある。ユーザは画面で複数のROIを含む基準セル領域や判定ルールを設定可能である。ソフトウェアは、判定結果として、各セル領域や異常有無等を含む判定結果(言い換えると異常検出結果)を、ユーザに対し出力する。
【0015】
[荷電粒子ビーム装置]
図1は、実施の形態1のコンピュータシステム1を含んで構成されるシステムである荷電粒子ビーム装置2の構成を示す。実施の形態1では、荷電粒子ビーム装置2はSEMであるが、これに限定されない。荷電粒子ビーム装置2の本体3は、観察画像を撮像する撮像装置として機能する。荷電粒子ビーム装置2の本体3には、信号線などの通信手段を介して、コンピュータシステム1が接続されている。コンピュータシステム1は、荷電粒子ビーム装置2を制御するコントローラに相当する。コンピュータシステム1は、荷電粒子ビーム装置2の本体3に対して外部接続されたコンピュータシステムとしてもよいし、荷電粒子ビーム装置2の本体3に内蔵されたコンピュータシステムとしてもよい。コンピュータシステム1は、例えばPCやサーバ等で構成されてもよい。
【0016】
コンピュータシステム1には、入出力インタフェース205を介して、液晶ディスプレイ等の表示装置206や、キーボード・マウス等の操作入力装置207等の、入出力デバイスが外部接続されている。入出力デバイスは、コンピュータシステム1に内蔵されたものとしてもよい。ユーザは、コンピュータシステム1を操作・利用するオペレータ、作業者などの人である。ユーザは、表示装置206の画面を見ながら、操作入力装置207を操作して指示や情報を入力する。ユーザは、コンピュータシステム1を通じて、荷電粒子ビーム装置2を操作する。
【0017】
本体3は、SEMを構成する鏡筒(言い換えると筐体)等を含んだ部分である。図1の構成例では、本体3は、電子銃101、コンデンサーレンズ102、偏向コイル103、対物レンズ104、検出器105、ステージ106、真空ポンプ107、試料室110等を備える。試料室110内には、試料台であるステージ106を有し、ステージ106上に試料5が載置・保持される。ステージ106は、コントローラからの駆動制御に基づいて、少なくとも水平方向(X,Y方向)に移動可能であり、これにより、撮像の視野を変更可能である。試料室110内は、真空ポンプ107によって真空状態にされる。試料室110には、真空度、温度、振動、電磁波等の状態を計測するセンサを備えてもよい。
【0018】
電子銃101に基づいて鉛直方向(Z方向)に発生された荷電粒子ビームb1は、コンデンサーレンズ102、偏向コイル103、対物レンズ104等の作用を通じて、X,Y方向に照射が制御される。コンデンサーレンズ102と対物レンズ104は、荷電粒子ビームb1を集光する。偏向コイル103は、荷電粒子ビームb1をX,Y方向に偏向させる。これにより、荷電粒子ビームb1は、試料5の表面においてX,Y方向に走査されながら照射される。荷電粒子ビームb1の照射により、試料5の表面からは、二次電子b2等が発生する。試料5の帯電表面には、電位差が生じ、電位差によって、二次電子b2の放出の効率が変わる。この電位差は、SEMの観察画像(VC画像)において輝度の差として表れる。
【0019】
試料5の表面から発生した二次電子b2等は、検出器105によって検出される。検出器105は、例えば撮像素子が配列されたデバイスであり、二次電子b2等を電気信号に変換して検出する。検出器105は、検出した電気信号を、増幅回路やアナログ/デジタル変換回路などを通じて、画像信号150にして出力する。画像信号150は、観察画像に相当する。画像信号150は、信号線などの通信手段および通信インタフェース204を通じて、コンピュータシステム1に入力され、例えば記憶装置203内に観察画像に係わるデータとして格納される。プロセッサ201は、その観察画像のデータを取得・参照して、メモリ202上で処理を行い、処理結果データを記憶装置203に保存する。
【0020】
コンピュータシステム1のプロセッサ201は、本体3の各部に対する駆動制御等を行い、観察画像を取得する。また、プロセッサ201は、記憶装置203に格納されているプログラムをメモリ203に読み出し、そのプログラムに基づいてプログラム処理を実行することにより、所定の機能(解析機能など)を実現する。
【0021】
コンピュータシステム1は、プロセッサ201、メモリ202、記憶装置203、通信インタフェース204、入出力インタフェース205等を備え、それらはバスを介して相互に接続されている。記憶装置203には、各種のプログラムやデータ・情報が格納されている。
【0022】
プロセッサ201は、解析機能に係わるグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)となる画面を生成し、表示装置206の表示画面に表示させる。プロセッサ201は、操作入力装置207および画面のGUIを通じて、ユーザからの入力を受け付ける。プロセッサ201は、図示しないスピーカ等を通じて、ユーザ・インタフェースとなる音声を出力してもよい。
【0023】
プロセッサ201は、本体3から転送された画像信号150に基づいて、記憶装置203またはメモリ202に、2次元画像である観察画像を作成する。観察画像は、日時、対象試料情報、視野に対応した試料面の位置座標情報、撮像条件、センサ値などの管理用の情報や関連情報を関連付けて保存されてもよい。プロセッサ201は、後述のように、GUIを有する画面内に、観察画像を表示する。なお、観察画像は、実施の形態1では、試料5の表面の観察によって表面の異常の箇所を検出するために使用される画像である。観察画像は、目的に応じて、検査画像などと呼ばれる場合もある。
【0024】
図1のコンピュータシステム1の構成に限らず、例えば、外部にストレージやサーバ等が通信で接続され、その外部の装置に必要なデータ等が格納されてもよい。コンピュータシステム1は、クライアントサーバシステムやクラウドコンピューティングシステムで構成されてもよい。例えば、ユーザは、クライアントPCからコンピュータシステム1のサーバにアクセスし、画面等のデータ(例えばWebページ)を取得する。
【0025】
[試料]
実施の形態1では、観察画像を取得する対象物である試料5は、例えば製品としてロジックデバイスに相当する半導体デバイスである。製品の製造中または製造後において、この半導体デバイスを試料5として、観察画像が取得される。作業者であるユーザは、観察画像を観察し、コンピュータシステム1による解析機能を利用して、半導体デバイスの表面における異常の有無を確認する。解析機能によれば、ユーザによる手動作業を最低限として、ほぼ自動的(言い換えると半自動的)に、異常の有無などの判定結果を生成・出力する。よって、ユーザは、その判定結果を確認する作業を行えばよく、目視観察を最低限として、作業の手間や時間が大幅に低減できる。
【0026】
実施の形態1では、試料5である半導体デバイスの表面において、後述するが(図3等)、同一または類似の複数の構造(言い換えるとパターン)が配列されており、解析機能では、および説明上では、各々の構造またはパターンを、セルまたはセル領域と記載する。具体例としては、このセルは、トランジスタ等のデバイス(回路素子)に相当する。また、1つのセル領域内には、複数のプラグ(コンタクトプラグ)が含まれている場合がある。解析機能は、各々のプラグを、画像処理のためのROI(関心領域)として設定することができる。具体例としては、このプラグは、トランジスタ等のデバイスを構成する要素であり、例えば、ソース、ドレイン、ゲート等に対応する領域である。このプラグ領域は、半導体の積層構造によって形成されており、材質などの違いによって、画像として見た場合の輝度に違いが表れる。
【0027】
[処理フロー]
図2は、実施の形態1のコンピュータシステム1(特に解析機能)による主な処理のフローを示し、ステップS1~S7を有する。ステップS1で、コンピュータシステム1のプロセッサ201は、本体3から観察画像を入力し取得する。プロセッサ201は、既に記憶装置203に格納されている観察画像データを取得してもよい。プロセッサ201は、ユーザが指定した観察画像を対象として、以下のような解析処理を行う。
【0028】
ステップS2で、プロセッサ201は、観察画像(全体画像とも記載する)において、基準画像(言い換えると基準セル領域)を設定する。基準画像の設定は、後述の設定画面(図10)で可能である。基準セル領域の設定では、設定済みの基準画像設定情報がある場合にはそれを選択・読み出して適用してもよい。
【0029】
ステップS3で、プロセッサ201は、観察画像から、基準画像に基づいて、類似画像(言い換えると類似セル領域)を抽出する。この抽出処理は、ソフトウェアにおけるコマンドの1つとして指定して実行可能である(後述の図11)。
【0030】
ステップS4で、プロセッサ201は、基準画像および抽出した複数の類似セル領域を用いて、基準画像内の複数のプラグに対し複数のROI(関心領域)を設定する。複数のROIの設定は、後述の設定画面で可能である(後述の図12)。ROIの設定では、設定済みのROI設定情報がある場合にはそれを選択・読み出して適用してもよい。
【0031】
実施の形態1では、具体的には、プロセッサ201は、抽出処理で抽出された複数の類似セル領域を用いて、統計処理として例えばプラグ(セル内の同じ配置位置のプラグ)毎の平均輝度値などを算出し、基準セル領域の複数のROIの各ROIにその平均輝度値を設定する。また、ROIの設定などにおいて、プロセッサ201は、デバイス表面で一番暗い背景領域の輝度に対し、所定の輝度閾値以上となる領域を、プラグ領域として抽出する。輝度値の範囲は、例えば0(黒)~255(白)である。
【0032】
ステップS5で、プロセッサ201は、後述の設定画面(図14等)でのユーザの操作や確認に基づいて、判定ルール(単にルールと記載する場合もある)を設定する。判定ルールは、判定処理の際に適用するルールである。判定ルールは、1つ以上設定され、1つ以上が適用可能である。適用する判定ルールは、既に設定済みの判定ルール設定情報がある場合にはそれを選択・参照するものとしてもよい。
【0033】
ステップS6で、プロセッサ201は、適用する判定ルールに基づいて、基準画像(基準セル領域)と類似画像(類似セル領域)との間の比較で、セル領域(特にROIであるプラグ)の異常を判定する。異常判定は、異常の有無および異常の箇所・位置の判定を含む。なお、実施の形態1では、単純に異常有無の二値の判定とするが、これに限らず、異常・不良などの度合いや可能性に関する多値の判定としてもよい。例えば、複数の閾値を用いて異常度合いを複数に区分することも可能である。
【0034】
ステップS7で、プロセッサ201は、判定結果の情報を、GUIを有する画面に表示する等して、ユーザに対し出力する。上記のような解析機能の処理で作成された各種のデータ・情報は、記憶装置203内に保存される。
【0035】
上記実施の形態1の処理フローは、基準セル領域の複数のROI(言い換えると複数のROIを含む基準セル領域)として好適なものをコンピュータシステム1が自動的に生成して提示するために、ステップS4の前にステップS3の抽出処理を行うフローとなっている。抽出された類似セルを利用して生成された好適な基準セル領域が提示され、ユーザがそれを確認し、基準セル領域として確定することができる。
【0036】
[観察画像]
図3は、実施の形態1で、ある試料5(試料Aとする)の観察画像301の例を示す。試料Aは、表面(X-Y平面)において、同一または類似のセル構造が並んでいる。セルは、1つ以上のプラグの配列から成る。X方向(X軸)は画像内の水平方向、Y方向(Y軸)は画像内の垂直方向とする。観察画像301は、所定のサイズ(X方向の画素数、Y方向の画素数)を有する矩形の画像である。各画素は、試料5面での位置座標情報を有する。セル302は、あるセル領域の例である。このセル302は、所定の位置関係で配置された例えば3つのプラグ311(プラグ領域)が含まれており、3つのプラグ311が所定の輝度関係を有しており、本例では各プラグ311の輝度が異なっている。観察画像301内には、セル302(それに対応する複数のプラグ)と同一または類似のセル(それに対応する複数のプラグ)が並んでいる。セル303やセル304は、セル302とは異なる構造のセルの例であり、2つのプラグが含まれている。観察画像301の背景領域は、最も輝度が低く黒に近い色となっており、各プラグは背景領域よりも輝度が高くなっている。ユーザは、所望のセル、例えばセル302を、基準画像(基準セル領域)として設定することができる。そして、そのセル302内の複数のプラグを、後述のROIとして設定することができる。
【0037】
図4は、実施の形態1で、別の試料5(試料Bとする)の観察画像401の例を示す。試料Bは、試料Aと同様に、表面(X-Y平面)において、同一または類似のセル構造が並んでおり、さらに、あるセル構造に関して各種の反転した配置(パターン)を含んでいる例である。セル402は、あるセル領域の例である。このセル402は、所定の位置関係で配置された例えば4つのプラグ411(プラグ領域)が含まれており、4つのプラグ411が所定の輝度関係を有しており、本例では各プラグ411の輝度が異なっている。観察画像401内には、セル402(それに対応する複数のプラグ)と同一または類似のセル(それに対応する複数のプラグ)が並んでいる。セル403やセル404は、セル402とは異なる構造のセルの例であり、プラグの数、位置、形状、または輝度などが異なっている。
【0038】
また、セル405は、セル402と同一の複数のプラグの配置のセルの例であり、セル406は、セル402に対して左右反転、セル407は、セル402に対して上下反転、セル408は、セル402に対して斜め反転した複数のプラグの配置のセルの例である。ユーザは、所望のセル、例えばセル402を、基準画像として設定することができる。そして、そのセル402内の複数のプラグをROIとして設定することができる。なお、プラグ421やプラグ422は、輝度が他のプラグの輝度よりも乖離している例を示し、このようなプラグ(それを含むセル)が、後述の異常判定で異常有りとして判定される。
【0039】
なお、観察画像のデータは、画素毎の輝度値のデータのみならず、SEMによって得られる位置座標情報を有するデータである。例えば、観察画像は、画素ごとに位置座標情報を有する。例えば、観察画像の左上点と、右下点の位置座標情報を有する。観察画像に位置座標情報を有することで、後述のマップ表示も可能となる。
【0040】
[基準画像(基準セル領域)]
図5は、図3の試料Aの観察画像301の例に対応した、基準セル領域(基準画像)および複数のROI(関心領域)の設定例を示す。このような基準画像501が、類似するセル領域を探して抽出するための基準、および異常判定のための基準として設定される。図3のセル302に対応して設定されたこの基準画像(基準セル領域)501は、プラグ511、プラグ512、およびプラグ513の3つのプラグ領域を含んでいる。プラグ領域は例えば楕円形状を有する。なお、ここでは、わかりやすいように、各プラグ領域には後述のプラグ番号(#)を付与して図示している。3つのプラグ領域は、図示のような所定の位置関係で配置されている。例えば、セル領域の重心または中心に対して、左上にプラグ511が、右上にプラグ512が、下にプラグ513が配置されている。基準セル領域501は、後述の画面では、所定の表現(例えば黄色の破線枠)で表示される。
【0041】
各プラグ領域は、輝度を有し、プラグ領域間で輝度が異なっている場合がある。本例の3つのプラグは、ROI番号(#)=3のプラグ513、#=1のプラグ511、#=2のプラグ512の順序で、輝度が高(白)から低(黒)となる輝度関係を有する。図5の下部には、基準セル領域501の3つのプラグの輝度関係を示す。なお、図面ではプラグ領域および輝度をドットパターンによって模式で図示している。なお、背景領域は最も暗く所定の輝度値を有するが、ここでは白で図示して除外して考えている。ROI番号(#)=3のプラグ513は第1輝度値を有し、#=1のプラグ511は第2輝度値を有し、#=2のプラグ512は第3輝度値を有し、第3輝度値から第1輝度値への方向で輝度が高くなる。なお、1つのプラグ領域内で輝度分布がある場合には、1つのプラグ領域内での輝度平均値などを算出してその輝度平均値などをプラグの輝度値としてもよい。また、プラグのエッジと中心部で輝度が異なる場合があり、この場合はエッジ部分の輝度のみを輝度平均値とすることもできる。ユーザは、ルール設定の際に、プラグ全体の輝度平均値を採用するか、プラグのエッジ部分の輝度平均値を採用するかを選択することも可能である。
【0042】
図6は、図4の試料Bの観察画像401の例に対応した、基準セル領域(基準画像)および複数のROIの設定例を示す。このような基準画像601が、類似するセル領域を探して抽出するための基準、および異常判定のための基準として設定される。図4のセル402に対応して設定されたこの基準画像(基準セル領域)601は、ROI番号(#)=1から4までで示す4つのプラグ領域を含んでいる。4つのプラグ領域は、図示のような所定の位置関係で配置されている。例えば、セル領域の重心または中心に対して、重心または中心の付近に#=1のプラグが配置され、左下に#=2のプラグ、右上に#=3のプラグ、左上に#=4のプラグがそれぞれ配置されている。
【0043】
図6の下部には、基準セル領域601の4つのプラグの輝度関係を示す。ROI番号(#)=1のプラグは第1輝度値を有し、#=2のプラグは第2輝度値を有し、#=3のプラグは第3輝度値を有し、#=4のプラグは第4輝度値を有し、第4輝度値から第1輝度値への方向で輝度が高くなる。
【0044】
また、前述の図4の通り、あるセル領域に対し、左右、上下、斜め等に反転した配置パターンのセル領域を有する。例えば基準セル領域601を、同一配置(反転なし)のパターンAとする。パターンAのセル(基準セル領域601)に対し、Y軸で左右反転した配置のセル領域602をパターンBとする。パターンAのセルに対し、X軸で上下反転した配置のセル領域603をパターンCとする。パターンAのセルに対し、斜め反転した配置、言い換えると、左右反転かつ上下反転した配置のセル領域604をパターンDとする。これらの各種類の配置パターンのセル領域が図4の観察画像401内には含まれている。試料や領域によっては、一部の配置パターンしか含まれていない場合もある。
【0045】
基準セル領域601を含む各種の配置パターンのセル領域は、後述の画面(図18)では、配置パターンに応じた所定の表現で区別して表示される。例えばパターンAの基準セル領域601は黄色の破線枠で表示され、パターンBのセル領域602は橙色の実線枠で表示され、パターンCのセル領域603は緑色の実線枠で表示され、パターンDのセル領域604は水色の実枠で表示される。また、あるセル領域が基準画像か否(類似画像)かによって、表現が区別されてもよいし、あるセル領域が異常有りか無しかによって、表現が区別されてもよい。なお、基準セル領域などの領域は、効率的な画像処理のために、通常、矩形の領域として設定される。
【0046】
[抽出処理]
図7は、図3の試料Aの観察画像301の場合に対応して、類似画像の抽出処理(図2のステップS3)によって抽出された類似セル領域の例を示す。左上付近の1つのセル領域が基準画像701として設定された場合に、観察画像301内から基準画像701に類似する類似セル領域702が抽出されている。各類似セル領域702が、矩形の実線枠で囲って表示されている。また、あらかじめ基準画像が設定されている場合は、図7にて基準画像701として表示されている領域も、類似画像702として抽出される。なお、ここでは、背景領域を白にして図示している。
【0047】
図8は、図4の試料Bの観察画像401の場合に対応して、類似画像の抽出処理(図2のステップS3)によって抽出された類似セル領域の例を示す。左上付近の1つのセル領域が基準画像801として設定された場合に、観察画像401内から基準画像801に類似する類似セル領域(811,812,813,814)が抽出されている。各類似セル領域が、矩形の実線枠で囲って表示されている。なお、ここでは、背景領域を白にして図示している。また、図6のような各種の配置パターンのセル領域が抽出されており、例えばパターンごとに色を変える、あるいはパターンを識別する文字やマークを付与する等して、区別して表示される。例えば、類似セル領域811は、同一配置・反転無しのパターンAのセルである。類似セル領域812は、左右反転のパターンBのセルである。類似セル領域813は、上下反転のパターンCのセルである。類似セル領域814は、斜め反転のパターンDのセルである。なお、プラグ421やプラグ422は、異常有りのプラグの例である。プラグ421は、基準セル領域801内の中心のプラグの輝度に対して低くなっている。プラグ422は、基準セル領域801内の右上のプラグの輝度に対して高くなっている。
【0048】
[GUI画面]
次に、コンピュータシステム1の解析機能に係わるGUIを有する画面例について説明する。各画面は、例えばWebページとして提供されてもよい。
【0049】
[画像入力(ステップS1)]
図9は、画像入力(図3ではステップS1)の画面例を示す。図9の画面は、上部の欄901に、作業に係わるフローの各ステップに対応したボタンが設けられており、ボタン等の表示状態によって、フローのステップの進捗状態が表される。本例では、フローのボタンとして、画像入力(“Open Image”)ボタン911、基準セル設定(“Set Reference Cell”)ボタン912、関心領域設定(“Set ROI”)ボタン913、データ(“Data”)ボタン914、判定ルール設定(“Set rule”)ボタン915、判定結果(“Result”)ボタン916、複数判定(“Multiply Result”)ボタン917が設けられている。ボタン間は矢印で接続されている。
【0050】
最初、ユーザの操作によって、画像入力ボタン911が押されると、画像入力ボタン911が目立つ表示となり、下部の欄902に、画像入力のための、観察画像ファイルを選択して開くためのGUIが表示される。このGUIで、ユーザは、解析対象とする観察画像ファイルを選択し、開く(Open)ボタンを押す。すると、次のステップの画面に遷移される。
【0051】
[基準画像設定(ステップS2)]
図10は、基準画像設定(図2でのステップS2)の画面例を示す。基準画像設定ボタン912が押されると、下部の欄に、基準画像(基準セル領域)の設定のためのGUIが表示される。この欄では、対象の観察画像1001が表示される。本例の観察画像1001は、図3の試料Aの観察画像301に相当する。ユーザは、観察画像1001を見て確認し、操作によって、所望のセル構造を基準画像1002として設定する。例えば、ユーザは、観察画像1001内からマウス等の操作によって所望の領域を矩形で囲むことや、矩形の始点と終点の指定によって、基準画像1002として設定する。ユーザは、次のステップに進む場合には次(Next)ボタンを押し、設定をやり直す場合にはクリア(Clear)ボタンを押してやり直す。また、ユーザは、抽出処理に進む場合には、抽出(Split)ボタン1003を押す。あらかじめ基準画像が用意されている場合は、その画像をメモリ202より呼び出すことによって、適用する基準画像として設定することができる。
【0052】
[類似セル領域の抽出(ステップS3)]
図11は、類似セル領域(類似画像)の抽出処理(図2でのステップS3)の画面例を示す。抽出ボタン1003が押されると、下部の欄に、観察画像1001上での類似画像の抽出結果(図7に相当)が表示される。例えば基準セル領域1002に対しての各類似セル領域1101が矩形の実線枠で表示される。
【0053】
[関心領域の設定(ステップS4)]
図12は、関心領域(ROI)の設定(図2でのステップS4)の画面例を示す。関心領域設定ボタン913が押されると、下部の欄1201および欄1202に、基準セル領域内の複数のROI(プラグ)を設定するためのGUIが表示される。左側の欄1201には、設定作業中の基準セル領域1203およびその中のROI1204が表示される。右側の欄1202には、基準セル領域内の抽出された複数のROIについての情報が、例えば表形式で整理して表示される。この表1205には、例えば、ROI番号、「適用」等の項目を有し、他には、輝度値等の項目を有してもよい。
【0054】
実施の形態1では、プロセッサ201は、図2のステップS3の抽出処理によって抽出された複数の類似セル領域を用いて、好適な基準セル領域(複数のROIの輝度値の設定を含む)を自動的に生成し、生成した基準セル領域を欄1201に表示する。ユーザは、欄1201でこの生成された基準セル領域1203およびROI1204を確認し、その内容でよければ、この基準セル領域1203およびROI1204を正式に設定する。即ち、欄1202の次(Next)ボタンで次のステップに進むことで、欄1201の基準セル領域1203およびROI1204が設定情報として設定される。
【0055】
本例では、最初、基準セル領域1203内に、抽出されている3つのプラグ(#=1~3)が表示される。ユーザは、左側の欄1201で所望のプラグ領域をクリックまたは囲む等して選択することで、ROIとしての適用/非適用を切り替えることもできる。また、右側の欄1202でも、所望のROI番号(#)の行の「適用(Use)」項目でチェック印を操作することで、ROIとしての適用/非適用を切り替えることができる。本例では、#=1~3の3つのプラグ領域が、円または楕円の破線枠(例えば赤色で表示)で囲んで表示されており、すべてをROIとして適用すると設定されている。他にも、ユーザは、追加(Add)ボタンおよび手動操作によって、基準セル画像1203に他のプラグをROIとして追加することができ、削除(Remove)ボタンによって、基準セル画像1203から不要なプラグ部分画像を削除することができる(例えば背景領域と同じ輝度に塗りつぶされる)。ユーザが手動でROIを設定する場合には、例えば、欄1201で、マウス操作等によって、所望の形状・サイズでの楕円枠を指定することで、その楕円枠をROIとして設定してもよい。
【0056】
[データ確認・保存]
図13は、データ確認・保存の画面例を示す。データボタン914が押されると、これまで(ステップS1~S4)に作成された各種のデータ(設定情報を含む)が画面に表示される。ユーザが画面でそのデータを確認し、その内容でよければ、保存(Save)ボタンを押すことで保存できる。設定情報や輝度に関する情報はプロセッサ201内部に保持しておき、必要に応じて表示させることも可能である。プロセッサ201は、それらのデータ・情報を関連付けて、記憶装置203に保存する。設定情報は、基準セル領域およびその中の複数のROIの設定情報である。ユーザは、各データに名前を付けて保存できる。画面には、各データのファイル名などがリストとして表示されてもよい。図13の画面例は、データ例として、ある観察画像における基準画像(基準セル領域)および複数のROIについての設定情報を確認し保存する例である。欄1301では、観察画像上に、設定された基準セル領域および抽出された類似セル領域が表示される。領域ごとに領域番号が表示されてもよい。表1302は、領域番号(#)で識別される基準画像(基準セル領域)ごとに、それを構成する複数のROIの各ROIの輝度値が表示されている。保存(Save)ボタンを押すことで、表1302のような設定情報のファイル(形式は例えばcsv)を保存できる。これに限らず、他のデータとして、基準画像の各ROIの相対位置座標情報や、各ROIのサイズの直径などの情報も同様に確認・保存が可能である。また、表1302は、基準画像(基準セル領域)の複数の関心領域の配置パターンについて、関心領域間の位置関係を規定したデータと言える。
【0057】
[判定ルールの設定(ステップS5)]
図14は、判定ルールの設定(図2でのステップS5)の画面例を示す。判定ルール設定ボタン915が押されると、下部の欄1401および欄1402に、判定ルールの設定のためのGUIが表示される。欄1401には、判定ルールと関連付けられる、設定された基準セル領域1403およびその中の複数のROI1404が表示される。欄1402には、最初、ルールの設定のためのテンプレート(条件式テンプレート)1405が表示される。テンプレート1405は、例えば5個の項目(ボタン)1406で構成されている。項目(ボタン)1406としては、ROI番号(#)項目や記号項目を有する。テンプレート1405の5個の項目1406は、例えば、左から順に、ROI番号、記号、ROI番号、記号、ROI番号と並んでいる。ユーザは、所望の項目1406で、ROI番号や記号を選択して設定できる。ROI番号(#)項目は、ユーザの操作によって、輝度値項目(言い換えると閾値項目)に変更することもできる。ROI番号(#)項目は、ROI番号を設定するための項目であり、輝度値項目は、輝度値を設定するための項目であり、記号項目は、記号(不等号記号やマイナス記号など。例:<,>,≦,≧,-)を設定するための項目である。
【0058】
ユーザがテンプレート1405の項目1406を操作することで、条件式を構成することができる。例えば、上側の行では、条件式1407として、#2<#1<#3が設定されている。この条件式は、基準セル領域1403内の各ROI番号のROI間の輝度値の大小関係を規定している。具体的に、この条件式1407は、ROI番号(#)が1のROIは、#=2のROIよりも輝度値が大きく、#=3のROIよりも輝度値が小さい、ということを規定している。この条件式が、判定ルールに相当する。同様に、各行で条件式を設定することができ、さらに、行間のAND/ORの論理を設定することで、複数の条件式をAND/ORの論理で組み合わせて成る条件式を、判定ルールとして構成することができる。
【0059】
この欄1402の1ページで1つの判定ルールを設定することができる。ページボタン1408の操作によって、ページを切り替えることができる。他のページでは、同様に、別の判定ルールを設定することができる。また、追加(Add)ボタンによって、判定ルールの追加が可能である。削除(Remove)ボタンによって、判定ルールの削除が可能である。次(Next)ボタンによって、次のステップに進むことができる。
【0060】
図14中の条件式1407の判定ルールは、第1種類の判定ルールの例である。第1種類の判定ルールは、ROI間の輝度の関係を規定するルールである。この判定ルールは、条件式1407を満たさない場合には異常有りと判定するものである。このような1個の判定ルールのみを設定し、判定ルール設定ステップを終了してもよい。以下では、2個目以降の判定ルールも設定する場合を説明する。
【0061】
図15は、別の種類として第2種類の判定ルールを設定する場合の画面例を示す。本例では、同様の画面の欄1402において、第2ページ(ページボタン1408の数値が2)で、第2種類の判定ルールを2個目の判定ルールとして設定する場合を示す。テンプレートの操作に基づいて、上側の行では、条件式1501として、#3-#1<50が設定されている。この条件式は、基準セル領域1403内における、基準ROI(第1ROI)の輝度値に対しての対象ROI(第2ROI)の輝度値の差(言い換えると乖離)に関する閾値(言い換えると輝度閾値)との関係を規定している。具体的に、この条件式1501は、ROI番号(#)が1のROIを基準ROIとし、#=3のROIを対象ROIとし、#=1の基準ROIに対する#=3の対象ROIの輝度の差が、閾値である50よりも小さい、ということを規定している。この条件式1501が、2番目の第2種類の判定ルールに相当する。この判定ルールは、条件式1501を満たさない場合には異常有りと判定するものである。
【0062】
本例の条件式1501の判定ルールは、ROI間の輝度の乖離が閾値よりも小さいというルールであるが、これに限らず、ROI間の輝度の差が閾値よりも大きいというルールも設定可能である。
【0063】
図16は、別の種類として第3種類の判定ルールを設定する場合の画面例を示す。本例では、同様の画面の欄1402において、第3ページ(ページボタン1408の数値が3)で、第3種類の判定ルールを3個目の判定ルールとして設定する場合を示す。テンプレートの操作に基づいて、上側の行では、条件式1601として、100<#1<150が設定されている。この条件式は、基準セル領域1403内における、対象ROIの輝度値と閾値(輝度閾値)の範囲との関係を規定している。具体的に、この条件式1601は、ROI番号(#)が1のROIについて、このROIの輝度が、下限閾値である100よりも大きく上限閾値である150よりも小さい範囲内にある、ということを規定している。この条件式1601が、3番目の第3種類の判定ルールに相当する。この判定ルールは、条件式1601を満たさない場合には異常有りと判定するものである。
【0064】
なお、各種類の判定ルールは、条件式を満たす場合に異常無し、条件式を満たさない場合に異常有りと判定するためのルールとしたが、これに限らず、逆に、条件式を満たす場合に異常有り、条件式を満たさない場合に異常無しと判定するためのルールを設定する形態も可能である。上記例の3個の判定ルールが設定された後、次ボタンが押されると、次のステップ(異常判定)に進む。なお、画面で複数の判定ルールが設定された場合には、自動的に、それらの複数の判定ルールが異常判定に適用される。異常判定処理は、判定ルール毎に行われ、判定結果は、判定ルールごとに生成される。
【0065】
上記のように、判定ルール設定画面では、各種の判定ルールをユーザが確認・設定できる。本例では、同じGUIに基づいて各種の判定ルールを設定できる場合を示した。これに限らず、判定ルールの種類毎に、別のGUIでユーザ設定できるようにしてもよい。本例では、3種類の判定ルールを用いて3種類の異常判定を行う場合を示したが、上記例の3個の判定ルールは同時に設定するだけでなく、第2種類あるいは第3種類のみを判定ルールとして設定することも可能であるし、後述するようにランダムな2個を組み合わせて設定することによっての異常判定も可能である。
【0066】
上述した図14から図16の判定ルールの設定例は、基準画像のセル領域に含まれている複数の関心領域について、関心領域間の輝度の関係性(条件式1407,条件式1501,条件式1601)が設定されているといえる。
【0067】
[異常判定および判定結果出力(ステップS6,S7)]
図17は、異常判定(図2でのステップS6)および判定結果の出力(図2でのステップS7)の画面例を示す。図17の例は、試料Aの観察画像に対する判定結果の例である。判定結果ボタン916が押されると、設定された判定ルールに基づいて異常判定が実行され、下部の欄1701に、判定結果が表示される。本例では、前のステップで設定された3個の判定ルールを用いて、判定ルールごとに異常判定が実行され、判定ルールごとの判定結果が生成される。図17の画面例では、欄1701の第1ページ(ページボタン1702の数値が1)において、1番目の判定ルール(図14)を用いた判定結果が表示されている。また、本画面では、これら3個の判定ルールを組み合わせた判定結果を表示することも可能である。
【0068】
欄1701では、対象の観察画像1703上に、類似セル領域1704が例えば黄色の実線枠で表示されている。さらに観察画像1703上に基準セル領域が区別して表示されてもよい。図示を省略したが別の欄に基準セル領域の内容が表示されてもよい。さらに、判定結果として異常有りのセル領域が検出されている場合に、観察画像1703上に、その異常有りのセル領域1705が、例えば赤色の実線枠(図面では白枠で図示)で区別して表示されている。これにより、ユーザは、観察画像中のどの位置のセルに異常が有るかを確認できる。なお、セル領域単位に限らず、プラグ領域単位で異常有無が表示されてもよい。ページボタン1702が操作されると、他のページに遷移し、他の判定結果を同様に確認できる。
【0069】
ユーザが、異常有りまたは異常無しの所望のセル領域を選択操作し、画像(Image)ボタンを押すことで、そのセル領域を拡大表示させて詳細を確認することもできる。また、その際には、画面内に、基準セル画像と選択セル画像とを並列表示して、比較確認を可能としてもよい。また、ユーザが、ルール(Rule)ボタンを押すことで、そのページの判定処理に対応した前述の判定ルールの内容を表示させて確認することもできる。また、ユーザが、全保存(All save)ボタンを押すことで、すべての基準画像、類似画像、設定ルール、判定結果などをデータとして保存することができる。また、ユーザは、画面で判定結果を確認した結果、選択した判定結果のみを保存することもできる。保存の操作がされた場合、プロセッサ201は、前述のデータ画面で保存した各データに、判定結果データを関連付けて、記憶装置203内に保存する。
【0070】
図18の画面例は、同様に、試料Bの観察画像の場合に対する判定結果の例である。なお、試料Aと試料Bとでは、別の同様のフローでの処理となる。欄1701において、対象の観察画像1801上に判定結果が表示される。設定された判定ルールに基づいて異常判定が実行され、判定ルールごとの判定結果が生成される。なお、図18では、見やすいように背景領域の輝度を明るめにして図示している。なお、ユーザの操作によって背景領域の輝度を所望の輝度に変更できるようにしてもよい。
【0071】
本例では、欄1701の第1ページにおいて、1番目の判定ルールを用いた判定結果が表示されている。この判定結果は、図8の抽出結果とも対応している。判定結果の表示例としては、基準セル領域および各種の配置パターンの類似セル領域に基づいて、異常無しのセル領域については、破線枠で、異常無しを示す文字(OK)を付与して表示され、異常有りのセル領域については、実線枠で、異常有りを示す文字(NG)を付与して表示されている。また、セル領域の配置パターンごとに色分けで表示されている。前述(図6図8)のように、例えばパターンAは黄色、パターンBは橙色、パターンCは緑色、パターンDは水色で表示されている。
【0072】
このような識別表示に限らず可能である。例えば、基準セル領域とそれ以外の類似セル領域とが区別して表示されてもよい。異常有りセル領域を赤色枠表示とし、異常無しセル領域を所定色枠表示とし、配置パターンの区別を文字のみとしてもよい。図示しないボタンにより、配置パターンの識別表示のオン/オフを切り替えられるようにしてもよい。また、図示しないボタンにより、ユーザが特定の配置パターンのみを選択し、特定の配置パターン(例えばパターンA)のセル領域のみを表示できるようにしてもよい。
【0073】
本例では、判定結果として、セル1811およびセル1812は、異常有りと判定されており、それらのセル内の一部のプラグ(図4図8でのプラグ421,422)は異常有りと判定されている。このように、この解析機能では、セルの複数のプラグの配置パターンを、反転の関係を含め、類似として自動的に判断・抽出して表示できる。ユーザは、従来では困難であった目視観察での反転パターンの判別および異常判定を、容易に行うことができる。
【0074】
なお、複数の種類の判定ルールを組み合わせた判定ルールを設定して異常判定に適用することも可能である。例えば、前述の判定ルール設定画面でのあるページにおいて、第1行で第1種類の判定ルールに対応した第1条件式を設定し、ANDやORの論理を介して、第2行に第2種類の判定ルールに対応した第2条件式を設定する。そうすれば、第1種類の判定ルールと第2種類の判定ルールとを組み合わせて構成された条件式による判定ルールを設定できる。
【0075】
[複数判定]
図19は、複数判定ボタン917が押された場合の複数判定の画面例を示す。ユーザは、図18の判定結果の確認までで作業を終えることもできるが、さらに、図19の画面で複数判定、即ち、複数の観察画像を対象として、同じ判定ルールを用いた、一括での異常判定を行わせることもできる。この画面では、欄1901内に、一括での処理対象とする観察画像ファイル群を選択するためのGUIの領域1902が表示される。ユーザは、このGUIの領域1902内に、一括での処理対象とする観察画像ファイル群を入力する。領域1902内には観察画像ファイル群のファイル名などの情報が整理して表示される。選択(Select)ボタンでは、観察画像ファイルを選択できる。フォルダー(Folder)ボタンでは、観察画像ファイル群のフォルダーを選択できる。実行(Execute)ボタンが押されると、プロセッサ201は、領域1902内の観察画像ファイル群を対象として、前のステップで設定済みの判定ルールを適用して、異常判定を実行し、観察画像ファイルごとに判定結果を生成し、判定結果データを保存する。観察画像ファイルごとの判定結果は、判定結果ボタン916の操作に応じて前の判定結果のステップに戻って同様の画面で確認することができる。
【0076】
[マップ表示]
図20は、判定結果画面あるいは複数判定結果画面で、マップ(Map)ボタンが押された場合に表示される、マップ表示の画面例を示す。本例のマップは、試料5である半導体デバイスについて、複数の観察画像(言い換えるとデバイス領域)の複数の判定結果を1つに統合することで生成されている。欄2001内に、試料5である対象物(デバイス)の情報とともに、マップ2002が表示される。マップ2002は、試料の表面に対応した、X軸、Y軸の位置座標を有する平面であり、予め座標原点(Origin of coordinate)が設定されている。このデバイスの座標原点は、言い換えると、デバイスの基準座標である。ここでいう座標は、デバイスの原点座標を中心としたデバイス上の相対座標またはSEMのステージの絶対座標を示している。
【0077】
マップ2002の平面上に、異常判定結果として検出されている異常有りのセル領域が、枠線、色、文字またはマーク等の態様で識別できるように表示される。特に、試料Bのように反転の配置パターンを含んでいる場合には、各種の配置パターンが区別されて表示される。また、異常有りのセル領域は、その中の異常有りのROI(プラグ)の箇所に所定のマーク等(本例では赤色の×印)を付与して表示される。また、異常有りのセル領域は、マップ2002(すなわちデバイス表面)の座標系における(X,Y)の位置座標情報も表示される。この位置座標情報は、デバイス座標原点からの相対的な位置、あるいはSEMのステージの絶対位置である。この位置座標情報は、本例では、詳しくは当該セル領域内の異常有りのROI(プラグ)の位置座標情報としているが、これに限らず、異常有りのROI(プラグ)を有するセル領域の中心点などの位置座標情報とすることもできる。
【0078】
ユーザは、このようなマップ表示を見ることで、デバイス全体における異常有りの箇所やその分布などをわかりやすく確認することができる。マップ中の所望の箇所を指定して詳細を表示することも可能である。また、ページボタンの操作によって、判定ルールごとのマップ表示を切り替えることができる。なお、マップは、拡大や縮小の表示、スクロール表示、ページ表示なども可能である。
【0079】
[基準セル領域を自動的に抽出・設定する方法]
実施の形態1では、前述(ステップS2~S4)のように、ユーザが指定したセル領域に対する類似セル領域の抽出(ステップS3)に基づいて、好適な基準セル領域の複数のROI(特に輝度など)を生成・提示し設定することができる。抽出された複数の類似セル領域から統計処理で平均輝度などを算出し、基準セル領域の複数のROIの輝度として設定することができる。自動的に生成・提示された基準セル領域をユーザが確認し、必要であればユーザが変更して設定することもできる。このような方法についての詳細な処理例を以下に説明する。
【0080】
図21は、実施の形態1の詳細処理例の説明図として、基準セル領域を設定する際の画面例の一部を示す。例えば、欄2101では、ユーザが基準セル領域を確認・設定するための情報が表示される。欄2102では、観察画像上における初期基準セル領域や類似セルの抽出結果などが表示される。
【0081】
まず、ユーザが、画面で、観察画像内に、初期の基準セル領域を指定する。なお、この初期基準セル領域の指定は、暫定的であって、後で基準セル領域が確定される。この指定は、例えば観察画像からの領域を囲む指定でもよいし、領域の位置座標(例えば矩形の左上点および右下点)の指定でもよい。
【0082】
欄2101では、ユーザが初期基準セル領域2103内における複数のROIを設定できる。例えばプラグ領域を楕円で囲むようにしてもよいし、矩形で囲むようにしてもよい。本例は楕円の破線枠で囲む場合を示す。プラグを囲む図形の左上点と右下点の位置座標を指定してもよいし、プラグを囲む図形の重心や中心点の位置座標を指定してもよい。
【0083】
また、このROIの指定は、ユーザの手動に限らず、プロセッサ201が自動的な処理を行って支援してもよい。例えば、プロセッサ201は、ユーザが指定した初期基準セル領域内から、二値化などの画像処理技術を用いて輝度分布を計算することで、プラグ領域を推定して抽出し、抽出したプラグ領域をROIとするかどうかをユーザに提示してもよい。
【0084】
プロセッサ201は、初期基準セル領域内に含まれている特定された複数のROIの位置関係を特定し、その複数のROIを含む初期基準セル領域を、基準セル領域として設定する。あるいは、その特定の際に、ユーザがROI間の位置関係を設定してもよい。
【0085】
また、プロセッサ201は、複数のROIを、背景領域(デバイスの最も暗い領域)と区別するために、輝度値の閾値を用いて、輝度値が閾値以上である領域を、ROIとする。例えば、欄2101の初期基準セル領域2104では、赤色の破線枠で囲まれた3つのプラグが指定されている。3つのプラグが、背景領域と切り離されて識別され、初期基準セル領域に含まれる3つのROIとして設定される。
【0086】
欄2101の初期基準セル領域2104は、複数のROIの位置関係を特定する例を示す。本例では、各ROIの位置座標として、プラグ領域の楕円の中心の位置座標が指定されている。右側の表には、ROI番号(#)ごとに位置座標が表示されている。このROI位置座標は、絶対位置座標としてもよいし、あるROIを基準ROIとした相対位置座標としてもよい。他の処理例としては、ROI位置座標間の距離(線分で図示している)を設定してもよい。他の処理例としては、各ROIのサイズ、例えば直径(矢印で図示している)を設定してもよい。
【0087】
プロセッサ201は、このように設定された初期基準セル領域およびそれに含まれる複数のROI(初期ROI)を用いて、予め設定された条件(抽出条件と記載する)に基づいて、全体画像である観察画像の中から、複数のROIを含む初期基準セル領域に類似する領域を類似画像として前述のように抽出する。
【0088】
この抽出処理の際には、抽出条件として以下を適用してもよい。例えば、初期基準セル領域内での各ROIの相対位置座標と、各ROIのサイズ(例えば直径)とを予め特定しておく。プロセッサ201は、この基準セル領域(複数のROI)と類似する領域を、全体画像の中で順に判定・特定して、類似画像として抽出する。この判定では、基準セル領域に含まれる複数のROIの関係性について判定するための抽出条件が用いられる。
【0089】
この抽出条件は、例えば、ROI相対位置座標に対応する距離、あるいはROI絶対位置座標間の差に対応する距離が、閾値範囲内であるかどうかが挙げられる。
【0090】
この抽出条件において、例えば範囲を狭くしておけば、厳密に異同の判定が可能であり、範囲を広くしておけば、緩く判定が可能である。
【0091】
なお、この抽出条件は、異常判定での判定ルールとは別のものである。この抽出条件を用いた判定では、検査対象(試料5)の母集団を形成する必要がある。検査対象の半導体デバイス自体に異常があっても母集団に含める必要がある。また、検査対象の半導体デバイスのうちで検査対象では無い部分を母集団に含めてはいけない。つまり、厳密な判定では、異常の部分を含む検査領域が漏れてはいけないし、緩い判定では、検査対象では無い部分を含めてもいけない。
【0092】
実施の形態1では、母集団の形成を先に確定させるため、後の異常判定の判定ルールの設定よりも前に、基準セル領域の設定および基準セル領域に含まれる複数のROIの設定のための抽出処理(ステップS3)を行い、画面で確認し、複数のROIを含む基準セル領域を確定する。これにより、検査対象(対象領域)を特定する確実性を高めて、その後の異常判定を高精度に実施することができる。
【0093】
抽出条件は、予めこのコンピュータシステム1のソフトウェアに設計・設定されている。あるいは、このソフトウェアのユーザ設定機能を用いて、画面に抽出条件を表示し、ユーザがアルゴリズムやパラメータ値を選択、変更する等してユーザ設定を可能としてもよい。顧客ごとや対象デバイスごとに、適用する抽出条件や設定情報(複数のROIを含む基準セル領域、判定ルール等)を容易に選択できるように、予め複数のテンプレートが設定・用意されていてもよい。
【0094】
なお、検査対象の特定を先に実施する必要性が低い場合には、変形例として、後の異常判定の判定ルールの設定よりも後に、基準セル領域および基準セル領域内の複数のROIの設定のための抽出処理を自動的に行う形態としてもよい。
【0095】
[効果等]
以上のように、実施の形態1によれば、荷電粒子ビーム装置(SEM)によって得たVC画像(観察画像)の解析を行うコンピュータシステム1において、観察画像内の同一または類似する構造間の輝度比較による異常の判定・検出を、目視観察に依らずに、ある程度以上自動的にして、容易・効率的に実現できる。実施の形態1のコンピュータシステム1の解析機能は、観察画像内のセル領域に含まれている複数のプラグ(ROI)の関係性に基づいて、類似セル領域を抽出し、セル領域の異常を判定する。関係性として、ROI間の位置関係や輝度関係が判定される。実施の形態1によれば、複雑な構造を有する試料(半導体デバイス)のVC画像においても、容易に、かつ半自動的に、言い換えると設定や指示などの一部の操作を除いて主な処理を自動として、異常の箇所などを特定・検出することができる。
【0096】
実施の形態1によれば、セル内のROI間の関係性を規定する判定ルールの設定に応じて、多様な判定が可能である。実施の形態1によれば、セル内のROI間の相対的な関係性を規定しておけば、上下反転等の配置パターンには依らずに類似とみなして抽出することができる。そして、その類似のパターンについて、判定ルールに応じた異常判定が可能である。変形例としては、反転の配置パターンを区別して、配置パターンごとに異常判定を行うことも可能である。例えば、前述のパターンAのみを対象として、異常判定を行うことも可能である。
【0097】
[変形例1:処理フロー]
図22は、実施の形態1の変形例(変形例1とする)のコンピュータシステム1(特に解析機能)による主な処理のフローを示し、ステップS21~S27を有する。図22の変形例のフローは、図2のフローとの違いとしては、最初にまとめて設定処理を行い、その後に抽出処理、判定処理、および出力処理を行うことである。つまり、図2のステップS3をステップS5の後ろに移動して処理を実施するものと同じである。
【0098】
ステップS21で、コンピュータシステム1のプロセッサ201は、本体3から観察画像を入力し取得する。ステップS22で、プロセッサ201は、観察画像において、基準画像(基準セル領域)を設定する。ステップS23で、プロセッサ201は、基準画像内の複数のROI(関心領域)を設定する。変形例では、具体的には、ユーザが手動で基準画像内の複数のROIを設定する。ステップS24で、プロセッサ201は、設定画面でのユーザの操作や確認に基づいて、判定ルールを設定する。
【0099】
ステップS25で、プロセッサ201は、観察画像から、基準画像に基づいて、類似画像(類似セル領域)を抽出する。ステップS26で、プロセッサ201は、適用する判定ルールに基づいて、基準画像(基準セル領域)と類似画像(類似セル領域)との間の比較で、セル領域(特にROIであるプラグ)の異常を判定する。ステップS27で、プロセッサ201は、判定結果を、GUIの画面に表示する等して、ユーザに対し出力する。このようなフローによる変形例でも、実施の形態1と同様・類似の効果が得られる。
【0100】
上述した図2の抽出処理のステップS3、図22の抽出処理のステップS25により、抽出処理(S3,S25)は、基準画像の複数の関心領域の配置パターンについて、関心領域間の位置関係を計算することで、同じ配置パターンと、各種類の反転された配置パターンとを含めて類似として抽出する処理であるといえる。
【0101】
[変形例2:ROIサイズ]
他の変形例(変形例2とする)では、基準画像内の複数のROIについて、サイズを判断する。判定ルールの1つとして、ROIのサイズに関する関係を設定可能とする。プロセッサ201は、その判定ルールを用いて異常判定を行う。
【0102】
図23は、この変形例における、判定ルール設定の画面例において、ROIサイズに関するルールを設定する例を示す。ユーザは、画面で、基準セル領域内の各ROIのサイズに関して比較するルール(各ROIやROI間のサイズの関係)を条件式として設定できる。例えば、ROIサイズが閾値で示す一定の範囲外(または範囲内)であるROIを異常として判定するためのルールを設定可能である。この変形例では、例えば3行目のテンプレート2303に示すように、テンプレートの項目において、ROIのサイズも選択・設定可能となっている。
【0103】
図23の判定ルールの設定例では、1行目の条件式2301は、基準セル領域内の各ROI(#1,#2,#3)のサイズの直径の比較による関係性を設定している。例えば、ROI番号(#)=1のROIの楕円領域の直径(長軸)が、#=2のROIの直径よりも大きく、#=3のROIの直径よりも小さいこと、が規定されている。本例では、ROI領域を楕円とし、サイズとして、楕円の長軸を用いているが(図21と同様)、これに限らず、短軸、楕円の面積などを用いてもよい。
【0104】
2行目の条件式2302は、#=1のROIのサイズについて、閾値(サイズ閾値)による範囲が設定されている。本例では、条件式2301と条件式2302とのAND条件としている。例えば、#=1のROIの直径(長軸)が、100(下限閾値)より大きく150(上限閾値)より小さいこと、が規定されている。各閾値は直径(長軸)である。閾値範囲を狭くすれば、厳密に異同の判定が可能である。閾値範囲を広くすれば、緩く判定が可能である。
【0105】
他の例として、直径を小さくして不等式の上限閾値を無くした場合(例えば10<#1)、#=1のROIについて、多様なサイズを許容して、判定が可能である。ただし、#=1のROIのサイズが大きくなると、1行目の条件式2301との関係(AND条件)で、#=3のROIと#=1のROIとの間のサイズの対比に影響する。このように、この変形例では、複数のROIのサイズに関する関係性を、判定ルールとして柔軟に設定可能である。また、このようなサイズの条件に前述の輝度などの条件を組み合わせた判定ルールも設定可能である。
【0106】
上述した図23の判定ルールの設定は、基準画像のセル領域に含まれている複数の関心領域について、関心領域間の形状またはサイズの関係性(条件式2301、条件式2302)が設定されているといえる。
【0107】
上述した図14図16図23の判定ルールの設定は、基準画像のセル領域に含まれている複数の関心領域について、関心領域間の関係性(輝度、形状、サイズ)が設定されているといえる。
【0108】
以上、本開示の実施の形態を具体的に説明したが、前述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。前述の実施の形態について、必須構成要素を除き、構成要素の追加・削除・置換等が可能である。各実施の形態や変形例を組み合わせた形態も可能である。
【0109】
尚、上記の実施例では、観察対象である試料5を半導体デバイスの観察として説明したが、これに限定されない。例えば、材料の組成観察や、生物の組織観察に適用することで、観察画像の中で類似する構造の中から、複数の関心領域を基準セル領域としてまとめて、複数の関心領域の関係性が規定されたルールに基づいて、複数の関心領域の関連性を比較することで、複雑な構造を有する試料の画像においても、容易に、かつ半自動的に、言い換えると設定や指示などの一部の操作を除いて主な処理を自動として、異常の箇所などを特定・検出することができる。
【符号の説明】
【0110】
1…コンピュータシステム、2…荷電粒子ビーム装置、3…本体、5…試料、150…画像信号(観察画像)、201…プロセッサ、202…メモリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図20
図21
図22
図23