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特許7700418荷電粒子顕微鏡で使用されるサンプルの特性を判定するためのデバイスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-23
(45)【発行日】2025-07-01
(54)【発明の名称】荷電粒子顕微鏡で使用されるサンプルの特性を判定するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20250624BHJP
   G01N 1/42 20060101ALN20250624BHJP
【FI】
G01N1/28 F
G01N1/42
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021024034
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2021131388
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】20158152.7
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】マールテン クイユペール
(72)【発明者】
【氏名】マティユン ロベルト-ヤン フォス
(72)【発明者】
【氏名】オンドレーユ ルドミル シャネール
(72)【発明者】
【氏名】ペート ゴーデンドープ
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-537709(JP,A)
【文献】特開昭58-024835(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0360286(US,A1)
【文献】特開2013-246001(JP,A)
【文献】特開2018-155768(JP,A)
【文献】国際公開第2019/010436(WO,A1)
【文献】特開2005-010296(JP,A)
【文献】特開2017-173305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - 1/44
G01N 21/17 - 21/61
G02B 21/06 - 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子顕微鏡内で使用されるサンプルの特性を判定するためのデバイスであって、前記サンプルが、マトリクス層内に埋め込まれた標本を含み、前記デバイスが、
-前記サンプルに向かって光ビームを方向付けるように配置された光源であって、前記光ビームは第1色の第1ビーム、第2色の第2ビーム及び第3色の第3ビームを含む、光源と、
-前記サンプル上に入射する前記光ビームに応答して、前記サンプルから放出される光を検出するように配置された検出器と、
-前記検出器に接続され、かつ前記検出器によって受信した信号において示される前記第1ビーム、前記第2ビーム及び前記第2ビームの間の多重ビーム干渉に基づいて前記マトリクス層の特性を判定するように配置されたコントローラと、を備える、デバイス。
【請求項2】
前記デバイスが、空間的に分解されたデータを収集するように配置されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記コントローラが、前記判定された特性に基づいて、前記サンプルを評価するように配置されている、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記コントローラが、
-前記マトリクス層の厚さの基準、
-前記マトリクス層の汚染の基準、および
-前記マトリクス層の技巧の基準、のうちの少なくとも1つを判定するように配置されている、請求項1~3いずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記検出器が、前記サンプルを透過した光を受信するように配置されている、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記検出器が、前記サンプルから反射された光を受信するように配置されている、請求項1~5のうちのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記デバイスが、前記サンプル上に前記光ビームの相対的な走査運動を適用するための走査ユニットを備える、請求項1~6のうちのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記光源が、レーザ光源を備え、記検出器が、CMOSラインセンサを備える、請求項1~7のうちのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記光源が、前記第1色の前記第1ビーム、前記第2色の前記第2ビーム及び前記第3色の前記第3ビームを放射するように構成されたLEDを備え、記検出器が、カラーカメラを備える、請求項1~7のうちのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記光が、偏光解析器ビームを生成するように配置されている、請求項1~7のうちのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1色の前記第1ビーム、前記第2色の前記第2ビーム及び前記第3色の前記第3ビームのみを含むように、前記光ビームをフィルタするための構成された、1つ以上のカラーフィルタ要素をさらに備える、
請求項1~7のうちのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
請求項1~11のうちのいずれか1項に記載のデバイスを備える、サンプル調製ツール。
【請求項13】
請求項1~11のうちのいずれか1項に記載のデバイスを備える、荷電粒子顕微鏡。
【請求項14】
荷電粒子顕微鏡で使用されるサンプルの特性を判定するための方法であって、前記方法が、
-マトリクス層内に埋め込まれた標本を含むサンプルを提供するステップと、
-前記サンプルに向かって光ビームを方向付けるステップであって、前記光ビームは第1色の第1ビーム、第2色の第2ビーム及び第3色の第3ビームを含む、ステップと、
-前記サンプル上に入射する前記光ビームに応答して、前記サンプルから放出される光を検出するステップと、
-コントローラを使用して、前記検出された光において示される前記第1ビーム、前記第2ビーム及び前記第2ビームの間の多重ビーム干渉に基づいて記マトリクス層の特性を判定するステップと、を含む、方法。
【請求項15】
-前記マトリクス層の厚さの基準、
-前記マトリクス層の汚染の基準、および
-前記マトリクス層の技巧の基準、のうちの少なくとも1つを判定するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
以下の段階:
-前記サンプルを調製する調製ステップ、
-前記サンプルにマトリクス層を適用する適用ステップ、
-前記サンプルからマトリクス層の過剰な量を除去する除去ステップ、
-前記サンプルをガラス化するガラス化ステップ、および
-前記サンプルを画像化する画像化ステップ、のうちの1つ以上の前、間、または後に、前記サンプルを拒絶および/または承認するステップを含む、請求項14または15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概要
本発明は、荷電粒子顕微鏡で使用されるサンプルの特性を判定するためのデバイスおよび方法に関し、当該サンプルは、水層または氷層などのマトリクス層内に埋め込まれた標本を含む。
【背景技術】
【0002】
生物学は、物理的構造、化学的プロセス、分子相互作用、生理学的メカニズム、発現、および進化を含む、生命および生体を研究する自然科学である。
【0003】
細胞生物学は、細胞の構造および機能、すなわち生命の基本単位を研究する生物学の分野である。細胞生物学は、生理学的な特性、代謝プロセス、信号伝達経路、ライフサイクル、化学組成、および細胞とそれらの環境との相互作用を主題としている。細胞生物学では、巨大分子間の分子認識が、細胞の中で最も洗練されたプロセスの全てを支配する。最も一般的な巨大分子には、生体高分子(核酸、タンパク質、炭水化物、および脂質)、ならびに大型非高分子(脂質および大環状分子など)が含まれる。
【0004】
多くの研究者が、巨大分子複合体の構造的な力学および相互作用を明らかにするために、巨大分子複合体をそれらの自然環境の中で高解像度で研究することに関心を持っている。この目的のために、荷電粒子顕微鏡を使用することができる。荷電粒子顕微鏡法は、特に電子顕微鏡法(EM)の形態において、微視的な物体を画像化するための、周知の、かつ益々重要となる技術である。歴史的に、電子顕微鏡の基本的な種類は、透過電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、および走査透過電子顕微鏡(STEM)などの数多くの周知の装置類に進化し、ならびにまた、例えば、「機械加工する」集束イオンビーム(FIB)を追加的に使用して、イオンビームミリングまたはイオンビーム誘起蒸着(IBID)を可能にする、いわゆる「デュアルビーム」ツール(例えば、FIB-SEM)などの様々な補助デバイスに進化してきている。
【0005】
EMは、生体標本を研究するための多くの方法を提供し、従来のTEMは、生体標本の全体的な形態学を研究するために使用され、電子結晶学および単一粒子分析は、タンパク質および巨大分子複合体を研究するために駆使され、ならびにガラス質切片(CEMOVIS)の(低温)電子断層撮影および低温EMは、細胞小器官および分子構造をねらいとしている。低温EMおよびCEMOVISでは、標本が、ガラス化技術を使用した急速凍結によって保存され、低温TEMによって観察される。CEMOVISは、さらに、標本を低温で切片化するステップを含み、このステップは、低温FIB技術を使用して行うことができる。
【0006】
標本を研究するために、当該標本を含むサンプルを調製する必要がある。このサンプルは、キャリア、およびマトリクス層内に埋め込まれた標本を含むことができ、そのマトリクス層は、水または氷などの液体または固体であってもよく、そのキャリア上に提供される。
【0007】
荷電粒子顕微鏡で研究するためのサンプルの調製は、多くの場合、時間および労力がかかる。これらの研究に関連する欠点の1つは、サンプルが調製され、そして荷電粒子顕微鏡で調べられた後にのみ、ユーザは、サンプルの調製がうまくいったか否かを知るという点である。これは、特に、低温EMサンプルなどの生体サンプルを調製する場合に当てはまる。
【0008】
低温EMサンプルを調製することは、例えば、生体材料の水性サンプル(すなわち「標本」、通常、精製タンパク質複合体)を採取するステップと、それを支持構造体(グリッド)に適用するステップと、例えば、フィルタ紙によりその寸法を可能な限り薄い層(生体分子のサイズに応じて、約100~800Å)に縮小するステップと、次いで、この層を、水性液体が結晶化するのを防ぐのに十分な速さで凍結するステップと、を含む。
【0009】
低温EMサンプルを調製するためのデバイスは、WO02/077612A1から、出願人の氏名で、既知である。このデバイスは、商品名「Vitrobot」で市販されている。WO02/077612A1に記載されているデバイスは、環境チャンバと、サンプルまたはキャリア用ホルダと、少なくとも1つの吸い取り要素であって、液体を吸収するための媒体であるか、またはそれを取り付けることができ、両方とも環境チャンバ内に配設されている、吸い取り要素と、当該サンプルを冷却するための冷却媒体と、を備える。この吸い取り要素は、制御された方法で、サンプルまたはキャリアに向かって移動することができる。
【0010】
生体サンプルを調製するこのプロセスの多くの態様は、難易度が高い。この文脈において、過剰な液体を除去することによって層の寸法を縮小するステップ-例えば、「吸い取り」と呼ばれる技術によって行われ得る-は、液膜の品質および再現性にとって決定的であると考えられる。
【0011】
吸い取りステップは、再現性のある方法で確立するには困難であるため、US2017/350798A1は、サンプルの体積をマイクロリットル程度からピコリットル程度に削減することによって、過剰な流体の吸い取りの必要性が最小化または排除され得る方法およびデバイスを提案している。
【0012】
US2010/181495A1には、低温電子顕微鏡のためのサンプルを調製するための方法およびデバイスが記載されている。ここでは、キャリアが、ホルダに固定され、標本を含む液体が、キャリアに適用され、吸い取りデバイスを使用して、キャリアから過剰な液体を除去する。この吸い取りデバイスは、キャリアと接触させる濾紙を備える。濾紙の対向する両側面には、光源および光センサデバイスが設けられている。濾紙は、光に照明され、濾紙が過剰な液体を吸収することに起因する、濾紙の光学特性の変化が、当該光センサデバイスによって検出される。制御ユニットが、検出された光学特性のその変化に応じて、吸い取り紙をキャリアから離れるように移動させる。
【0013】
吸い取りステップが難題をもたらす場合であっても、生体サンプルを調製する上記のプロセスの多くの他の態様は、同じくらい難度が高く、かつ予測不可能である。精製された複合体は、その精製された複合体を変化させる微視的な表面、材料、および動力学に直面する可能性があり、またはサンプルは、プロセスの最中に汚染される可能性がある。ガラス化技術に関しては、結果として得られた氷の厚さ、およびその氷の技巧を制御することも、同様に重要であることが観察される。
【0014】
現在の調製技術を用いて低温EMサンプルを調製すると、極めて様々な品質が、依然としてもたらされ、したがって、EMグリッドの重要な領域を使用することができない。多くの場合、これらの変化は、グリッド上のサンプルが一度低温EMで試験された後にのみ、認めることができる。したがって、科学者の調製時間および高価なEMの使用時間などの貴重な資源が無駄になる可能性がある。これは、他のサンプルの調製についても当てはまり、生体サンプルに限定されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許公開第2010/181495号公報
【発明の概要】
【0016】
この観点から、本発明の目的は、荷電粒子顕微鏡で使用されるサンプルの特性を判定するためのデバイスおよび方法を提供することであり、これらを用いて、上述したような貴重な資源の浪費を防止することができる。
【0017】
この目的のために、本発明は、荷電粒子顕微鏡で使用されるサンプルの特性を判定するためのデバイスを提供し、このサンプルは、マトリクス層内に埋め込まれた標本を含み、このデバイスは、請求項1に従って定義される。本明細書に定義されるように、このデバイスは、
-サンプルに向かって光ビームを方向付けるように配置された光源と、
-サンプル上に入射する光ビームに応答して、サンプルから放出される光を検出するように配置された検出器と、
-検出器に接続され、かつ検出器によって受信した信号に基づいてマトリクス層の特性を判定するように配置されたコントローラと、を備える。
【0018】
光源を使用して、それをサンプルに向かって直接方向付け、サンプルから放出された光を直接検出することによって、そのマトリクス層の特性を直接的な方法で判定することが可能である。そのマトリクス層は、サンプルを調製するために使用される液体などの液体であってもよいことに留意されたい。そのマトリクス層はまた、サンプルを調製するために使用されるガラス化された液体などの固体、または例えば、樹脂などの任意の他の(半)透明な固体であってもよい。光源は、それがマトリクス層によって影響されるような方法で選択することができる。マトリクス層は、例えば、光源からの光を反射、回折、透過、および/または吸収することができる。反射、回折、透過、および/または吸収された光を検出するための検出器を使用することによって、そのマトリクス層の異なる特性に基づいて、サンプルを区別することが可能である。その特性を区別すること、または確立することは、定性的、かつ/または定量的であり得る。
【0019】
本デバイスでは、光源は、サンプルに直接方向付けられ、検出器は、サンプルによって直接反射されるか、またはサンプルを透過する光を測定するために使用されることに留意されたい。したがって、本デバイスは、直接的な方法でマトリクス層の特性を判定するための方法を提供する。これにより、本デバイスが様々なサンプル段階で使用されることを可能にする。例えば、マトリクス層が水層である、前述の吸い取りステップ中などの、サンプルの調製中に本デバイスを使用することが可能である。別の実施形態では、本デバイスは、サンプルのガラス化後に使用することができ、マトリクス層は、氷層である。マトリクス層は、原則として、反射、回折、透過、および/または吸収によって、放出される光に影響を与える任意のタイプのマトリクス層とすることができる。好ましい実施形態では、マトリクス層は、水層または氷(ガラス質)層である。
【0020】
光源は、サンプルの表面に方向付けることができ、その光源は、光を第1の方向に放出するように配置される。検出器は、サンプルからの反射光および/または透過光を受信するように配置することができ、検出器の法線は、第1の方向とは異なる第2の方向に方向付けられる。
【0021】
一実施形態では、第1の方向は、サンプルの法線に対して垂直ではない。
【0022】
一実施形態では、第2の方向は、サンプルの法線に対して垂直ではない。
【0023】
ここで、本発明の好ましい実施形態、およびそれらの利点が、以下に説明される。
【0024】
一実施形態では、このデバイスは、空間的に分解されたデータを収集するように配置される。これを用いて、そのマトリクス層の特性を局所的に判定することが可能である。例えば、2D(x,y)座標系をサンプル表面にマッピングし、マトリクス層の判定された特性を、その2D座標系内の1つ以上の座標に割り当てることが可能である。一実施形態では、これを使用して、マトリクス層の対応する特性を有するサンプル表面のマップを確立することができる。このマップは、どの部位を使用してサンプルをさらに調べることができるのか、およびどの部位が最も良好に回避することができるのかという貴重な見識をユーザに提供する。現在、低温EMサンプルの場合、低温TEMが、氷品質を評価するために、低倍率概観モードで使用されることに留意されたい。この活動は、かなりの時間の間、TEMを閉鎖する。本明細書に開示される本デバイスを使用することによって、グリッドの概観/マップ/格子線は、迅速および効率的な方法で取得することができ、これにより、データ収集に潜在的に良好である領域を識別することが可能になる。
【0025】
一実施形態では、コントローラは、判定された特性に基づいてサンプルを評価するように配置される。これは、このコントローラが、サンプルの各部が、マトリクス層の判定された特性に基づいて、承認または拒否されたかどうかを識別することができることを意味する。例えば、マトリクス層(の一部)が汚染を含んでいること、またはマトリクス層の厚さが所望の厚さではないことが判断された場合、コントローラは、そのサンプルが研究に適切ではないことを示すことができる。コントローラは、評価をサンプルのそれぞれの2D座標に割り当てることができるか、またはサンプル全体の評価を割り当てることができる。
【0026】
一実施形態では、そのコントローラは、マトリクス層の厚さの基準、マトリクス層の汚染の基準、マトリクス層の技巧の基準のうちの少なくとも1つを判定するように配置される。したがって、その特性は、厚さ、および/または汚染の基準とすることができる。マトリクス層がガラス化(凍結)されている場合、その特性は、ガラス化されたマトリクス層の技巧(または状態)であり得る。
【0027】
一実施形態では、本デバイスは、レンズなどの少なくとも1つの光学要素を備える。この光学要素は、光源と検出器との間の光路内に位置決めすることができる。この光学要素は、光ビームを集束および/または調整するように配置することができる。一実施形態では、その光学要素は、光ビームをサンプル上に集束させるように配置される。一実施形態では、その光学要素は、光ビームを検出器上に集束させるように配置される。複数の光学要素が設けられ、上述したように、各々が、1つ以上の特性を有することが想定される。
【0028】
少なくとも1つの光学要素は、色選択性フィルタであり得る。この色選択性フィルタは、光源と検出器との間の光路内に位置決めすることができる。この色選択性フィルタは、検出器に向かって光の波長の制限された帯域を通過させるように配置される。色選択性フィルタは、複数の色選択性フィルタ要素を備えることができ、各々は、検出器に向かって光の波長の異なる制限された帯域を通過させるように配置されることに留意されたい。複数の色選択性フィルタ要素は、検出器上に空間的に編成することができるか、または検出器の一体部分とすることができる。一例として、検出器は、例えば、異なる画素が異なる色に感応性であるRGB画素カメラが使用される場合など、設計により、異なる波長帯域に対して選択的に感知可能であり得る。追加的に、または代替的に、複数の色選択性フィルタ要素は、光路内に逐次的に、すなわち1つずつ順番に位置決めすることができる。
【0029】
一実施形態では、検出器は、サンプルを通って透過した光を受信するように配置される。一実施形態では、検出器は、サンプルから反射された光を受信するように配置される。この検出器は、複数の検出器ユニットを備えることができ、それらの検出器ユニットのうちの1つは、サンプルを通って透過した光を受信するように配置され、それらの検出器ユニットのうちの別の1つは、サンプルから反射された光を受信するように配置されることに留意されたい。これにより、追加のサンプル情報が提供される。
【0030】
一実施形態では、デバイスは、光ビームの相対的な走査運動をサンプル上に適用するための走査ユニットを備える。相対的な走査運動を使用することによって、比較的高い解像度でサンプルを走査し、例えば、前述のサンプルの2D特性マップを確立することが可能である。
【0031】
この相対的な走査運動は、例えば、サンプルステージを使用して、光源を通り越してサンプルを移動させ、かつ/または検出器を通り越してサンプルを移動させることによって確立されることが想定される。
【0032】
光源および検出器を使用してマトリクス層の特性を判定することは、多数の方法で実現することができる。以下に、様々な実施形態が説明されるであろう。これらの実施形態は、限定されることを意図されていないこと、およびこれらの実施形態の組み合わせも、さらに想定されることに留意されたい。
【0033】
一実施形態では、その光源には、レーザ光源が含まれる。レーザ光源は、比較的安価である。このレーザ光源は、サンプル表面、特にマトリクス層の表面に向かって方向付けられる。このレーザ光源は、サンプル上にラインを投影するように配置することができる。このラインは、レーザラインとサンプルとの間の相対的な移動を使用することによって、サンプルを横切って走査することができる。ライン光源を、好ましくは、ラインセンサと組み合わせて使用することによって、依然としてサンプルの空間的情報を保持しながら、サンプルの比較的大部分を一度に照明することが可能である。ライン走査を使用することによって、サンプルの表面全体は、迅速かつ容易な方法で選別することができる。これは、マトリクス層の特性に関する空間的に分解されたデータを確立するのに役立つ。追加の利点としては、この装備が、比較的高価な2Dセンサを使用する必要がない点である。
【0034】
特にレーザ光源との組み合わせにおいて、検出器がCMOSセンサを備えることが想定される。このCMOSセンサは、CMOSラインセンサとすることができ、このCMOSラインセンサは、上述したレーザライン光源と一緒に使用することができる。前述の光学要素を使用して、サンプルからの透過光をCMOS検出器に集束させることができる。一実施形態では、CMOSラインセンサは、CMOS16kラインセンサを備え、サンプルと、光源および/または検出器との間の相対的な移動に適合されるフレームレートで動作する。このフレームレートは、250fpsよりも高く、好ましくは、500fpsよりも高く、より好ましくは、1000fpsよりも高くすることができる。この設定を使用して、15秒以内に、3mmグリッドの完全なマトリクス層特性マップを取得することが可能である。
【0035】
一実施形態では、光源は、LEDを備える。LEDは比較的安価である。この光源は、サンプルに向かって多色光ビームを方向付けるように配置することができる。これにより、本デバイスが多色LEDを備える場合に達成することができる。代替的な実施形態では、本デバイスは、1つ以上のフィルタ要素と組み合わせて、白色LED照明を生成するように配置されるLEDを備える。一実施形態では、1つ以上のフィルタ要素を設けることができる。特に、全部で3色のカラーフィルタ要素を設けることができる。これらの色は、原色の赤、緑、青とすることができ、その結果、サンプルは、少なくとも3つの異なる色を使って照明することができる。
【0036】
サンプルが少なくとも3つの異なる色を使って照明される場合、平行膜からの多重ビーム干渉の理論を用いて、マトリクス層の厚さを取得することができる。この膜干渉は、異なる層において反射された光線が、位相差に起因する干渉を有することから生じる。薄膜の法線に対して角度θで薄膜に当たる光ビームは、光路差(OPD、または位相シフト)を有し、その光路さは、OPD=2ndcos(θ)に等しい。現在、2つの非常に区別可能な場合、すなわち、建設的干渉および相殺的干渉がある。相殺的干渉は、位相差が180°の場合に生じ、建設的干渉は、位相差が0°または360°の場合に生じる。180°位相差は、波長λに依存するため、OPDの関数としての相殺的干渉は、2ndcos(θ)=mλ、ただし、mは整数、として定義される。少なくとも3つの異なる色(異なる波長)を導入することによって、連立方程式が得られ、それを用いて、薄膜の厚さを判定することができる。同様に、多層システム(すなわち、最上部にマトリクス層を含むグリッド)の厚さを判定することができる。この方法は、ガラス化された層の厚さを判定するために、特に有用であることが見出された。さらに、3色を使用すると、汚染がサンプル内で発生したかどうかを判断するのに有利である。
【0037】
一実施形態では、検出器は、カラーカメラを備える。このカラーカメラは、特にLEDと組み合わせて、反射光を受信するように配置することができる。この組み合わせは、比較的安価である。
【0038】
一実施形態では、その光源は、偏光解析器ビームを生成するように配置することができる。この実施形態では、本デバイスは、偏光解析法に基づいて、マトリクス層の特性を測定するように配置される。これを用いると、サンプル上の光源の反射または透過時の偏光の変化を測定し、モデルと比較することができる。(ガラス化された)生体サンプルの観点から、これは、マトリクス層の厚さおよび/または結晶性を測定するために、特に有用である。この実施形態では、光源とサンプルとの間に設けられている偏光要素を使用することができる。さらに、第2の偏光要素が、サンプルと検出器との間に設けることができる。任意選択的に、1つ以上の補償器要素が、光源とサンプルとの間、およびサンプルと検出器との間に設けることができる。適切な偏光解析設定は、当業者にとって既知である。
【0039】
光源が3色LEDを備えることが想定される。上記の偏光解析器ビームと組み合わせて、マトリクス層の厚さ(特に、氷層の厚さ)、ならびに散乱および/または透過(汚染および/または結晶性の基準である)を測定することが可能である。偏光解析装備は、反射に基づくことができ、その結果、光源および検出器は、標本の同じ側面上に配置される。組み合わされた走査運動も、さらに想定される。空間解像度は、デコンヴォルーションによって取得することができる。
【0040】
一実施形態では、光源は、UVスペクトル内の光を生成するように配置される。追加的に、または代替的に、光源は、IRスペクトル内の光を生成するように配置することができる。この実施形態は、氷の技巧を測定するには、特に有利である。IRおよびUVにおいて、アモルファス氷(通常、低温EMでの生体サンプルの場合、望ましいタイプの氷であると見なされる)は、結晶氷の形態(通常、望ましくないタイプの氷であると見なされる)と比較して異なる光学特性を有する。特に、IR吸収係数および屈折率は、2つのタイプの氷の間で異なる。さらに、UV吸収は、アモルファス氷の場合、立方晶氷と比較して異なる。したがって、UVおよび/またはIR光の使用は、マトリクス層の特性、および本実施形態では、ガラス化後のマトリクス層の品質を判定するのに、有利に用いることができる。
【0041】
一態様によれば、本明細書に定義されているデバイスを備えるサンプル調製ツールが提供される。そのサンプル調製ツールは、WO02/077612A1に記載されているように、低温EMサンプル調製ツールとすることができ、これは、参照により本明細書に組み込まれる。このデバイスは、吸い取り要素の近くに配置されて、サンプル調製中の吸い取りステップをモニタリングすることができる。このデバイスは、追加的に、または代替的に、冷却媒体の近くに配置されて、そのサンプルの冷却(ガラス化)をモニタリングすることができる。
【0042】
一態様によれば、本明細書に定義されたデバイスを備える荷電粒子顕微鏡が提供される。このデバイスは、荷電粒子顕微鏡のサンプルホルダの近くに設けることができる。特に、サンプルホルダは、装填位置と検査位置との間で移動可能とすることができる。このデバイスは、サンプルが、装填位置と検査位置との間での移動中にそのデバイスを通過し、サンプルの特性を点検することができように配置することができる。例えば、これにより、サンプルが、マトリクス層の対応する特性を有するサンプルの2Dマップを確立することができる方法で、このデバイスにより装填および検査されることを可能にする。それらの結果は、ユーザに示され、ないし格納され、サンプルのさらなる処理を支援することができる。
【0043】
一実施形態では、サンプルは、本明細書に定義されるデバイスによって検出可能であるように配置される1つ以上のパターン要素を含む。さらに、1つ以上のパターン要素は、それらが荷電粒子顕微鏡によっても検出可能であるように配置することができる。1つ以上のパターン要素を使用するときに、サンプルの位置を正確に登録することが可能であり、荷電粒子顕微鏡での調芯は、低倍率に戻す必要がなくても、同様に可能である。
【0044】
一態様によれば、請求項12に定義されているように、荷電粒子顕微鏡で使用されるサンプルの特性を判定する方法が提供される。本明細書に定義されるように、この方法は、
-マトリクス層内に埋め込まれた標本を含むサンプルを提供するステップと、
-そのサンプルに向かって光ビームを方向付けるステップと、
-そのサンプル上に入射する光ビームに応答して、サンプルから放出される光を検出するステップと、
-コントローラを使用して、検出された光に基づいて、マトリクス層の特性を判定するステップと、を含む。
【0045】
この方法の利点、およびこの方法のさらなる実施形態は、すでに上記で明らかにされている。要約すると、光ビームを用いてサンプルを直接照明し、サンプルから放出された光を検出するための検出器を使用することによって、マトリクス層の厚さまたは汚染などの、マトリクス層の特性を判定することが可能である。特性の判定は、定性的または定量的に行うことができ、サンプルの評価は、追加的に行うことができる。
【0046】
判定された特性は、マトリクス層の厚さの基準、および/またはマトリクス層の汚染の基準とすることができる。
【0047】
本明細書に開示される方法およびデバイスは、以下の段階:
-サンプルを調製する調製ステップと、
-サンプルにマトリクス層を適用する適用ステップと、
-サンプルからマトリクス層の過剰な量を除去する除去ステップと、
-マトリクス層を有するサンプルをガラス化するガラス化ステップと、
-サンプルを画像化する画像化ステップと、のうちの1つ以上の最中または後に、有利な方法で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本発明は、ここで、例示的な実施形態および添付の概略図に基づいてより詳細に説明される。
図1】第1の使用例中の、サンプルの特性を判定するためのデバイスを示す。
図2】第2の使用例中の、サンプルの特性を判定するためのデバイスを示す。
図3a】第3の使用例中の、サンプルの特性を判定するためのデバイスを示す。
図3b】第3の使用例中の、サンプルの特性を判定するためのデバイスを示す。
図4】第4の使用例中の、サンプルの特性を判定するためのデバイスを示す。
図5】サンプルの特性を判定するためのデバイスの第1の実施形態を示す。
図6】サンプルの特性を判定するためのデバイスの第2の実施形態を示す。
図7】サンプルの特性を判定するためのデバイスの第3の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1図4は、荷電粒子顕微鏡で使用するための、生体サンプル3を調製するための方法の異なる段階を示し、調製されるサンプル3の特性を判定するためのデバイス1が使用される。一般に、生体サンプル3を調製するための方法は、
-サンプルキャリア9を提供し、サンプル3を調製するために、液体マトリクス層7内に埋め込まれた対象の標本5をサンプルキャリア9上に提供するステップ(図1)と、
-吸い取り紙などの吸い取り材料21を使用して、マトリクス層7から過剰な液体を除去するための吸い取りステップ(図2)と、
-対象の標本5を含む液体マトリクス層をガラス化するためのガラス化ステップであって、低温バス(図3a)または低温ジェット(図3b)が使用される、ガラス化ステップと、
ガラス化が生じると、ガラス化されたサンプル3を保管するための保管ステップ(図4)と、を含む。
【0050】
低温EMサンプルを調製するこれらの一般的なステップは、当業者には既知であり、さらに詳しくは説明しない。本明細書に開示されるようなデバイスは、サンプル調製、特に上述したような低温EMサンプル調製において有利に使用することができる。本明細書に開示されるようなデバイスは、前述のサンプル調製ステップの各々において有利に使用することができる。これらの図1~4では、デバイスは、概略的に示されていることに留意されたい。これらの理由から、デバイスのいくつかの実施形態は、最初に図5図7を参照して説明され、その後に、図1図4のデバイスの使用が、より詳細に説明されるであろう。
【0051】
ここで、図5に転じると、荷電粒子顕微鏡で使用されるサンプル3の特性を判定するためのデバイス1の第1の実施形態が示されている。各図において、同様の、または対応する特徴は、同じ参照番号を使用して示されている。図示されたデバイスは、光ビームをサンプル3に向かって方向付けるように配置された光源11と、サンプル3に入射する光ビームに応答して、そのサンプルから放出された光を検出するように配置された検出器12と、その検出器12に接続され、かつその検出器12により受信した信号に基づいてマトリクス層7の特性を判定するように配置されたコントローラ13と、を備える。図示された実施形態では、光源11によって放出された光は、サンプル3に向かって方向付けられ、検出器12は、サンプル3の反対側に配置されている。言い替えると、デバイス1は、サンプルが光源11と検出器12との間に設置することができるように配置されている。サンプル3上に当たる光は、例えば、散乱および/または吸収され、検出器12は、散乱および/または吸収の量に応じて、特定の量の光を検出する。したがって、検出器12は、サンプル3を透過した光を受信するように配置されている。これによって、例えば、マトリクス層の存在、および/またはマトリクス層の厚さなどの、サンプル3のマトリクス層の特性を判定することが可能である。
【0052】
図5に示された実施形態では、光源11は、レーザまたはLEDとすることができる。検出器は、光源11から放出された光を検出するように配置され、したがって、それに応じて、レーザ光および/またはLED光を受信するように配置されている。検出器は、以前説明したように、CMOSセンサ(特に、レーザと組み合わせて)またはカラーカメラ(特に、LEDと組み合わせて)とすることができる。他の光源も、さらに想定される。
【0053】
図5に示された実施形態では、光源11は、サンプル3に向かって方向付けられている。光ビームは、サンプル3の単一の、比較的小さいスポットに方向付けることができる。光ビームは、サンプル3上の複数のスポットに方向付けることができる。代替的に、光ビームは、サンプル3の単一の、比較的大きなスポットに方向付けることができる。光ビームが、サンプル3をラインパターンで照明するように配置されることが想定される。これにより、サンプル3の大部分が照明され、同時に適切な検出器によって検出されることが可能になる。サンプル3と光源11との間に相対的な移動を確立するように配置されている走査ユニット(20、図5には図示せず)が提供されることが想定される。このように、すなわち、スポットまたはラインとすることができる光ビームは、サンプル3にわたって走査することができ、その結果、空間的に分解されたデータを収集することができる。これは、サンプルのさらなる評価に有用である、サンプルの2Dマップ、およびマトリクス層のそれぞれの特性を取得することができることを意味する。
【0054】
コントローラ13は、判定された特性に基づいて、サンプル3を評価するように配置することができることに留意されたい。この評価は、前述の空間的に分解されたデータに基づいて、実施することができる。評価はまた、複数の特性についても同様に実施することができる。
【0055】
一例として、マトリクス層の判定された特性は、マトリクス層の厚さの基準、およびマトリクス層の汚染の基準のうちの1つ以上とすることができる。例えば、マトリクス層の厚さの基準は、マトリクス層7およびサンプルキャリア9を含む、サンプル3の全体的な厚さの判定を含む。厚さの基準は、定性的(例えば、通過または非通過)または定量的(例えば、150nm)であってもよい。言い替えると、デバイスは、所定の値の範囲にわたって、かつ所定の精度で、マトリクス層の厚さを判定するように配置されている(サンプルキャリア9の有無にかかわらず)ことが想定される。一実施形態では、デバイスは、0~1000nmの範囲、より具体的には、0~400nmの範囲の厚さを検出および判定するように配置されている。
【0056】
図6は、本明細書に開示されたデバイス1の第2の実施形態を示す。このデバイス1は、ハウジング10を備え、その中には、光源11および検出器12が設けられている。半透明ミラー19が、光源11と検出器12との間に位置決めされ、光源11からの透過光が光軸Oに沿って放出され、かつサンプルにより反射された光が検出器12に向かって光軸Oに沿って放出されて戻るように、光軸Oと調芯されている。光学要素15が、光源11の下流に設けられている。図示された実施形態では、光源は、白色LEDであり、光学要素15は、レンズ素子である。さらに、最終レンズ18が、設けられている。光学要素15および最終レンズ18は、実質的に平行ではない(ただし、ほとんど平行である)ビームを使って標本上に白色LED光を集束させるように配置されている。言い替えると、最終レンズ18から放出された光ビームは、サンプル上にわずかに収束する。わずかに平行化されていないビームを使用することにより、デバイス1への反射光の量を増加させ、特にサンプル表面が光学軸Oに対して垂直ではない場合、検出器により受信する信号が増加する。光学要素15は、例えば、60mmの焦点距離を有する平凸レンズとすることができる。
【0057】
図6に示すデバイス1は、検出器12と半透明ミラー19との間に位置決めされているさらなる光学要素16を備える。このさらなる光学要素16は、無彩色レンズ素子である。
【0058】
したがって、図6に示すようなデバイス1は、偏光解析器ビームが生成されるように配置されている。偏光解析法は、薄膜の誘電性(複屈折率または誘電関数)を検査するための光学技術である。偏光解析法は、反射または透過の偏光の変化を測定し、それをモデルと比較する。偏光解析法を使用して、組成、粗さ、厚さ(深さ)、結晶性、ドーピング濃度(半導体サンプルにおける)、電気伝導率、および他の材料特性を特徴付けることができる。それは、検査される材料と相互作用する入射放射線の光学的応答の変化に対して非常に感応性である。したがって、偏光解析器ビームは、サンプルが通常小さい場合、荷電粒子顕微鏡で研究することができる標本のマトリクス層の特性を検査する際に使用するための利点をもたらす。
【0059】
特に、空間的に分解されたデータの作成と、無彩色偏光解析法との組み合わせにより、以前では検出が不可能であった、サンプルの特殊な状態が識別されるのを可能にする。この特殊な状態は、サンプルの、いわゆる、裏面の濡れである。干渉に基づく単純な光学モデルを使用し、かつ3色を使用すると、サンプル(すなわち、サンプルホルダ9およびマトリクス層7)の絶対的な厚さを判定することができることが見出された。ただし、干渉の原因となる、いくつかの層の正確な位置を確認することは不可能である。この目的のために、一実施形態では、干渉および回折に基づく光学モデルを使用することが可能であり、その光学モデルでは、回折次数は、規則正しいアレイ状の孔のような繰り返しパターンの特徴を有する支持構造体を通る光伝播によって引き起こされるものであり、これによって、サンプル全体の絶対的な厚さ、ならびにマトリクス層の場所(すなわち、表側、裏側、および/またはそれらの組み合わせ)を判定することが可能である。1次または高次の回折ビームを検出するときに、回折次数がサンプル面から垂直の検出器に伝播するような角度をもってサンプルを照明することが有利であることに留意されたい。検出された光の特定の組み合わせの場合、サンプルの厚さについては、複数の解決策があることに注意されたい。その場合、マトリクス層の厚さは、原則として、サンプルホルダ9の表面の少なくとも一部にわたって連続的であるため、空間的に分解されたデータを使用して厚さの結論を出すことが可能である。
【0060】
図7には、デバイス1の別の実施形態が示されている。この実施形態では、光源11は、サンプル3の一方の側面上に設けられ、検出器12は、サンプル3の反対側の側面上に位置決めされている。したがって、サンプルは、光源11と検出器12との間に設置されている。光源11および検出器12は、実質的に、光軸Oのラインに沿って設置されている。レンズ素子および/またはフィルタ素子などの1つ以上の光学要素15、16は、光源11とサンプル3との間、および/またはサンプル3と検出器12との間に設けることができる。検出器12は、いくつかの異なる画素12a~12cを含み、画素12aは、光波長の第1の帯域に感応性であり、画素12bは、光波長の第2の帯域に感応性であり、画素12cは、光波長の第3の帯域に感応性である。図に示すように、検出器12は、多数の異なる画素12a~12cを含み、簡潔にするために、3つの画素のみが、参照記号12a~12cを使って示されている。検出器12は、RGB画素カメラであってもよく、画素12aは、赤に感応性であり、画素12bは、緑に感応性であり、画素12cは、青に感応性である。複数の検出器を使用して、同じまたは類似の技術的効果を得ることが想定可能である。検出器12(または複数の検出器)は、制御ユニット13に接続することができ、検出器12により受信した信号に基づいて、制御ユニットは、サンプル3のマトリクス層の特性を判定することができる。この実施形態では、光源11は、光ビームがサンプル3に対して相対的に移動することができるように、走査手段20が設けられている。これにより、サンプル3の2Dマトリクス層特性マップが生成されるのを可能にする。
【0061】
ここで、図1~4に戻ると、デバイス1のいくつかの使用例が説明される。原則として、図5図7に示されているようなデバイスの実施形態のうちのいずれか1つを使用することができることに留意されたい。特に、図6に示された実施形態の使用は、サンプルの一方の側面へのアクセスのみを必要とするため、有利である。
【0062】
図1において、デバイス1は、サンプルを調製する調製ステップ中に使用される。図に示した場合では、デバイス1は、マトリクス層をサンプル3に適用する適用ステップ中に使用される。ここで、研究対象の標本5を含む液体マトリクス層7が、サンプルホルダ9に適用される。サンプルホルダ9は、サンプルグリッドであってもよく、これは、当業者には既知であり、上部に炭素箔を有する微細メッシュを備える小さな(数ミリメートル)銅円板を備え得る。液体マトリクス層7は、サンプルグリッド9の一方の側面に適用され、デバイス1を使用して、すなわち、研究対象の物体の厚さの増加、または光学特性の変化を感知することによって、液体マトリクス層の正常な適用を点検することができる。
【0063】
図2において、デバイス1は、サンプルからマトリクス層7の過剰な量を除去する除去ステップで使用される。ここでは、吸い取りフィルタ21が使用され、サンプル3に軽く押し付けられて、マトリクス層7からの過剰な流体を吸い取り紙21に吸収させることができる。これにより、研究対象である標本5を含む比較的薄い層7をサンプルホルダ9上に留めることができる。デバイス1は、吸い取りステップ中、および/または吸い取りステップ後に使用されて、吸い取りがうまく適用されたことを確認することができる。吸い取りが成功しなかった場合、さらなる試みを実行することができる。吸い取りが多くの材料を除去し過ぎた場合、現在のグリッドを破棄するか、または同じグリッドに新鮮な液体を再適用するかのどちらかを判定することができる。
【0064】
図3aにおいて、デバイス1は、液体窒素バス31のわずかに上方に位置決めされている。サンプル3は、このバス31内でガラス化することができ、そのバスから取り出されるとすぐに、デバイス1を使用して、得られたサンプル3の品質を点検することができる。例えば、ガラス化されたマトリクス層の氷の厚さ、汚染、および/または結晶性を調査することができる。図3bにおいて、デバイスは、同様の方法で使用されているが、2つの対向するエタンジェットがガラス化プロセスで使用される点が異なる。この意味で、サンプルをガラス化する方法の本質は、本明細書に開示されたようなデバイス1の使用に限定されないことに留意されたい。デバイス1は、ガラス化ステップ後のマトリクス層の1つ以上の特性を調査するために、有利に使用することができる。
【0065】
図4において、サンプル3が、ガラス化されるとすぐに保管され得ることが、概略的に示されている。保管するためのオプションには、保管ボックス41もしくはカセット、または液体窒素などで満たされたバス保管庫42が挙げられる。デバイス1を使用して、保管の前後に、サンプル3の品質を点検することができる。ただし、一般には、ガラス化後に品質が適切であることを点検し、得られた結果に基づいてサンプルを評価することは、十分に事足りる。
【0066】
したがって、上記から、当然の結果として、デバイス1は、WO02/077612A1に開示されたものなどのサンプル調製ツール内の異なる位置で有利に使用することができ、その文献は、参照により本明細書に含まれる。
【0067】
さらに、本明細書に開示されたようなデバイスは、低温EMなどの荷電粒子顕微鏡で有利に使用することができる。特に、本デバイスは、低温EMのサンプルホルダおよび/またはサンプル装填デバイスの近くに位置決めすることができる。研究対象のサンプルを荷電粒子顕微鏡の中に挿入するとき、本明細書に開示されたようなデバイスは、サンプルが荷電粒子顕微鏡での使用に適切であるかどうかを-定量的または定性的に-点検することができる。さらに、サンプルの該当部分の2Dマップを生成することが可能である。これにより、サンプルをより迅速に、かつより効率的に研究することができる。
【0068】
所望の保護は、添付の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7