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特許7701669送信指向性制御装置及び送信指向性制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-24
(45)【発行日】2025-07-02
(54)【発明の名称】送信指向性制御装置及び送信指向性制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2575 20130101AFI20250625BHJP
【FI】
H04B10/2575
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024527933
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2022023695
(87)【国際公開番号】W WO2023242931
(87)【国際公開日】2023-12-21
【審査請求日】2024-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平賀 健
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 穂乃花
(72)【発明者】
【氏名】李 斗煥
(72)【発明者】
【氏名】芝 宏礼
(72)【発明者】
【氏名】増野 淳
(72)【発明者】
【氏名】笹木 裕文
(72)【発明者】
【氏名】八木 康徳
(72)【発明者】
【氏名】景山 知哉
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-233615(JP,A)
【文献】国際公開第2020/121919(WO,A1)
【文献】特開2010-28236(JP,A)
【文献】ZHANG, Meiling et al.,Two-Dimensional Fiber Beamforming System Based on Mode Diversity,IEEE Access,2021年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/2575
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される光信号に対して、空間上のある軸である第一軸における位相傾斜であって、制御内容により異なる位相傾斜を付与し出力する第一軸位相傾斜付与部と、
前記第一軸位相傾斜付与部から入力された光信号に対して、前記第一軸と直交する第二軸における位相傾斜であって、前記第一軸位相傾斜付与部から入力された光信号の波長により異なる位相傾斜を付与する第二軸位相傾斜付与部と、
を備える送信指向性制御装置。
【請求項2】
前記第一軸位相傾斜付与部は、第一切替回路及び第一軸重みづけ回路を備え、
前記第一切替回路は、制御により入力される光信号を出力する端子を変更し、
前記第一軸重みづけ回路は、前記第一切替回路から入力される端子ごとに光信号に付与する位相傾斜を変更する、
請求項1に記載の送信指向性制御装置。
【請求項3】
前記第一軸位相傾斜付与部は、入力される光信号に対して、入力される光信号の波長により異なる位相傾斜を付与する、
請求項1に記載の送信指向性制御装置。
【請求項4】
入力される光信号に対して、空間上のある軸である第一軸における位相傾斜であって、制御内容に基づいて異なる位相傾斜を付与し出力する第一軸位相傾斜付与ステップと、
前記第一軸における位相傾斜が付与された光信号に対して、前記第一軸と直交する第二軸における位相傾斜であって、前記光信号の波長により異なる位相傾斜を付与する第二軸位相傾斜付与ステップと、
を有する送信指向性制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信指向性制御装置及び送信指向性制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の高速化と大容量化を実現する手段として、ミリ波帯以上の高周波帯の活用が進展している。電波の空間伝搬損は周波数が高くなるに従い増大するため(例えば自由空間伝搬損は周波数の2乗に比例して増大する)、こうした高周波帯では多くの場合高い利得を持つアンテナが使用される。高利得のアンテナは必ず高い指向性を持つため、そのビームの方向を無線通信の相手局に合わせることが必要であり、相手局の方向が動的な場合は、ビームの方向を動的に制御する手段、すなわちビームステアリングの適用が必須となる。また、無線通信に限らず、例えばレーダ、イメージングや無線電力伝送といった用途においても、アンテナにおけるビームステアリングの実施が必要とされている。
【0003】
ビームステアリングの手段として、アンテナの方角を機械的に制御する方法、アンテナから放射された電波を可動式のレンズや反射鏡で屈折または反射させて制御する方法などが考案され使用されている。また、機械的な可動部分を使用しないため耐久性や移動の追従性が高く、アンテナの小型・軽量化に適したフェーズドアレーアンテナが多く用いられている。
【0004】
フェーズドアレーアンテナは、線上または面上に複数配置されたアンテナ素子に接続された可変遅延回路や可変減衰器回路、ディジタル信号処理等の手段を用いて、各アンテナ素子に給電されるRF(Radio Frequency;無線周波数)信号の位相と振幅を制御(以下、位相と振幅の制御を重みづけと呼ぶ)することにより電子的にビームステアリングを行う。
【0005】
ミリ波帯を使用する第5世代移動通信システムやミリ波帯無線LAN(Local Area Network)システム等では、アナログ回路で重みづけを行うタイプのフェーズドアレーアンテナが多く使用されている。
【0006】
多くの無線通信システムにおいて無線通信の相手局が存在する範囲は、2次元平面内ではなく、3次元空間内で変化するため、例えば方位角と仰角のように2軸でのビームステアリングが必要である。そのため、フェーズドアレーアンテナには、面的にアンテナ素子を配置した二次元アレーアンテナを用いて2次元のビームステアリングを行うための重みづけが必要である。
【0007】
例えば、非特許文献1は28GHz帯での第5世代移動通信用基地局に使用する256素子のフェーズドアレーアンテナを開示する。例えば、300GHzなど無線周波数が約10倍になると、自由空間の伝播損は100倍となり、数万個のアンテナ素子が必要になると考えられる。
【0008】
無線周波数が300GHzの場合、自由空間波長は1mmであるため、アンテナ素子の間隔は波長の半分、つまり0.5mmとすることが一般的である。このとき、アンテナ素子の間隔と同等の間隔で、アンテナ素子の近傍に移相器回路を設置することは難しい。また、複数のビームを形成する回路(マルチビーム形成回路)を構成するには、ビーム数と同数の移相器を並列して配置しなければならず、さらに困難となることが想定される。
【0009】
アンテナ素子の数に応じた移相器回路を実装するのではなく、固定移相量を持つ受動回路を使用してその入力端子を切り替えて使用する方式がある。例えば、非特許文献2は受動回路を使用して2次元のビームステアリングを行う方式を開示する。しかし、回路を立体的に組み上げる必要があり、高周波数帯での実装は導波管で構成する必要があるため量産が難しく、また、多素子化への対応が難しい。
【0010】
非特許文献3は、信号を光に変換し、光回路により重みづけを行う方法を提案する。光回路により重みづけを行う方法としては、特許文献1は、波長分散線路を利用して2次元のビームステアリングを行う立体的な光回路を開示する。非特許文献4は、光波長を変換しながら移相器を反復再利用するループ構成を用いる方法を開示する。非特許文献5は、平面構成の移相回路と、光波長に依存して遅延時間が異なるFBG(fiber bragg gratings)反射線路を組み合わせて、平面構成の移相回路によって行う1次元(1平面内)のビームステアリングに加えて、FBG反射線路により行う前記平面と直交する平面の方向でのビームステアリングを可能にして、2次元ビームステアリングを実施する手段を開示する。特許文献2は、波長多重を用いたマルチビーム形成手段を開示する。
【0011】
しかしながら、上記開示された装置や方法においては、周波数の増大に伴い立体構造の製造が難しいことや部品点数が莫大な数になるといった欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2004-023400号公報
【文献】特開2007-165956号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】渡辺 光, 宇賀 晋介, 中溝 英之, 堤 恒次, 新庄 真太郎, 栗山 侑, 第5世代移動通信基地局向けミリ波アンテナ・RFフロントエンド技術, 電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン, 2020, 14 巻, 3 号, p. 222-231.
【文献】Dong-Hun KIM Jiro HIROKAWA Makoto ANDO, “One-Body 2-D Beam-Switching Butler Matrix with Waveguide Short-Slot 2-Plane Couplers,” IEICE TRANSACTIONS on Electronics, Vol.E100-C, No.10, pp.884-892
【文献】C. Tsokos et al., “Analysis of a Multibeam Optical Beamforming Network Based on Blass Matrix Architecture,” in Journal of Lightwave Technology, vol. 36, no. 16, pp. 3354-3372, 15 Aug.15, 2018.
【文献】Y. Liu and J. Klamkin, "Scalable Integrated Photonics Beamforming Circuits," 2020 Asia Communications and Photonics Conference (ACP) and International Conference on Information Photonics and Optical Communications (IPOC), 2020, pp. 1-3.
【文献】B. Ortega, J. Mora and R. Chulia, "Optical Beamformer for 2-D Phased Array Antenna With Subarray Partitioning Capability," in IEEE Photonics Journal, vol. 8, no. 3, pp. 1-9, June 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、より簡易に作成することができる送信指向性制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、入力される光信号に対して、空間上のある軸である第一軸における位相傾斜であって、制御内容により異なる位相傾斜を付与し出力する第一軸位相傾斜付与部と、前記第一軸位相傾斜付与部から入力された光信号に対して、前記第一軸と直交する第二軸における位相傾斜であって、前記第一軸位相傾斜付与部から入力された光信号の波長により異なる位相傾斜を付与する第二軸位相傾斜付与部と、を備える送信指向性制御装置である。
【0016】
本発明の一態様は、入力される光信号に対して、空間上のある軸である第一軸における位相傾斜であって、制御内容に基づいて異なる位相傾斜を付与し出力する第一軸位相傾斜付与ステップと、前記第一軸における位相傾斜が付与された光信号に対して、前記第一軸と直交する第二軸における位相傾斜であって、前記光信号の波長により異なる位相傾斜を付与する第二軸位相傾斜付与ステップと、を有する送信指向性制御方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より簡易に送信指向性制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】送信指向性制御装置1の構成例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る送信指向性制御装置1の構成例を示す図である。
図3】第1の実施形態に係る送信指向性制御装置1の動作を示すフローチャートである。
図4】第1の実施形態に係る送信指向性制御装置1の変形例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る送信指向性制御装置1の変形例を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る送信指向性制御装置1の変形例を示す図である。
図7】第2の実施形態に係る送信指向性制御装置1の構成例を示す図である。
図8】第2の実施形態に係る送信指向性制御装置1の動作を示すフローチャートである。
図9】第2の実施形態に係る送信指向性制御装置1の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0020】
図1は、送信指向性制御装置1の構成例を示す図である。
【0021】
送信指向性制御装置1は、光源11、光変調器12、制御部13、第一軸位相傾斜付与部14、第二軸位相傾斜付与部15、二次元アレーアンテナ16を備える。
【0022】
光源11は光変調器12に光を出力する。光源11は波長可変光源である。光変調器12は、入力される光を変調することで光信号を生成する。光変調器12は、例えば光源から出力される光を送信信号で変調することで光信号を生成する。
【0023】
制御部13は、光源11及び第一軸位相傾斜付与部14を制御する。制御部13は、光源11から出力される光の波長を制御することで、第一軸位相傾斜付与部14に入力される光信号の波長を制御する。
【0024】
第一軸位相傾斜付与部14は、入力される光信号に空間上のある軸である第一軸における位相傾斜を付与する。第一軸位相傾斜付与部14は、位相傾斜を付与した光信号を複数の出力端子のうちいずれかの端子から第二軸位相傾斜付与部15に出力する。第一軸位相傾斜付与部14は、条件により異なる位相を光信号に付与する。第一軸位相傾斜付与部14は、例えば、光信号の波長により異なる位相を光信号に付与する。第一軸位相傾斜付与部14は、例えば、制御部13により制御に基づく位相を光信号に付与する。
【0025】
第二軸位相傾斜付与部15は、入力される光信号に第一軸と直交する第二軸における位相傾斜を付与する。第一軸と第二軸は例えば、水平方向と垂直方向である。第二軸位相傾斜付与部15には、第一軸位相傾斜付与部14の複数の出力端子にそれぞれ対応する複数の入力端子から光信号が入力される。第二軸位相傾斜付与部15は、光信号が入力される入力端子により異なる位相傾斜を光信号に付与する。第二軸位相傾斜付与部15は、位相傾斜を付与した光信号を二次元アレーアンテナ16に出力する。
【0026】
二次元アレーアンテナ16は、入力される光信号を送信する。二次元アレーアンテナ16は、例えば入力される光信号と光源11と異なる光源から出力される光信号を合波し、2つの光信号の周波数差の周波数を有する電磁波を発生させる。例えば、2つの光信号はフォトダイオードによりフォトミキシングされ、電磁波が発生する。第一軸が水平方向であり、第二軸が垂直方向であるとき、二次元アレーアンテナ16により、第一軸における位相傾斜に基づいて水平方向のビーム走査が行われビームの方位角が決定され、第二軸における位相傾斜に基づいて垂直方向のビーム走査が行われビームの仰角が決定される。
【0027】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態に係る送信指向性制御装置1の構成例を示す図である。第1の実施形態に係る第一軸位相傾斜付与部は、第一切替回路141及び第一軸重みづけ回路142を備える。第二軸位相傾斜付与部15は、複数の分波器151及び第二軸重みづけ回路152を備える。二次元アレーアンテナ16は、複数のアンテナ素子161を備える。以下、分波器151及び第二軸重みづけ回路152の数がそれぞれ3つであり、アンテナ素子161が9つの場合を説明するが、実施形態を限定するものではない。
【0028】
第1の実施形態に係る光変調器12は、制御部13により制御され、3つの波長λ1、λ2、λ3のうち、いずれかの波長の光信号を出力する。
【0029】
第一切替回路141は、1つの入力端子と3つの出力端子を備える。第一切替回路141は、光変調器12から1つの入力端子に入力される光信号を3つの出力端子のいずれかの出力端子から出力する。第一切替回路141が光信号を出力する出力端子は制御部13により制御される。第一切替回路141は、例えば光スイッチである。
【0030】
第一軸重みづけ回路142は、3つの入力端子と3つの出力端子を備える。第一軸重みづけ回路142の3つの入力端子は、第一切替回路141の3つの出力端子とそれぞれ接続される。第一軸重みづけ回路142は、第一軸における位相傾斜であって、光信号が入力される入力端子により異なる位相傾斜を付与する。第一軸重みづけ回路142は、位相を付与した光信号を3つの出力端子から出力する。例えば、第一軸重みづけ回路142は、第1入力端子に光信号が入力された場合は、位相を付与しない光信号を第1出力端子から出力し、位相φH1を付与した光信号を第2出力端子から出力し、位相2φH1を付与した光信号を第3出力端子から出力する。例えば、第一軸重みづけ回路142は、第2入力端子に光信号が入力された場合は、位相を付与しない光信号を第1出力端子から出力し、位相φH2を付与した光信号を第2出力端子から出力し、位相2φH2を付与した光信号を第3出力端子から出力する。例えば、第一軸重みづけ回路142は、第3入力端子に光信号が入力された場合は、位相を付与しない光信号を第1出力端子から出力し、位相φH3を付与した光信号を第2出力端子から出力し、位相2φH3を付与した光信号を第3出力端子から出力する。つまり、第1入力端子に入力された光信号には0、φH1、2φH1という位相傾斜が付与され、第2入力端子に入力された光信号には0、φH2、2φH2という位相傾斜が付与され、第3入力端子に入力された光信号には0、φH3、2φH3という位相傾斜が付与される。より具体的には、位相傾斜は0度、45度、90度や0度、90度、180度などである。
第一軸重みづけ回路142は、位相を付与しない光信号を出力する必要はなく、例えば、付与する位相傾斜はφ、2φ、3φであってもよい。
【0031】
分波器151は、第一軸位相傾斜付与部14から入力される光信号を分波する。分波器151は、波長λ1、λ2、λ3の光信号を分波するように設計される。分波器151は、3つの出力端子を有し、波長により異なる出力端子から分波した光信号を出力する。つまり、分波器151は、波長λ1の光信号は第1出力端子から出力し、波長λ2の光信号は第2出力端子から出力し、波長λ3の光信号は第3出力端子から出力する。分波器151は、例えばAWG(Arrayed waveguide gratings)である。
【0032】
第二軸重みづけ回路152は、3つの入力端子と3つの出力端子を備える。第二軸重みづけ回路152の3つの入力端子は、分波器151の3つの出力端子とそれぞれ接続される。第二軸重みづけ回路152は、第二軸における位相傾斜であって、光信号が入力される入力端子により異なる位相傾斜を付与する。第二軸重みづけ回路152は、位相を付与した光信号を3つの出力端子から出力する。例えば、第二軸重みづけ回路152は、第1入力端子に光信号が入力された場合は、位相を付与しない光信号を第1出力端子から出力し、位相φV1を付与した光信号を第2出力端子から出力し、位相2φV1を付与した光信号を第3出力端子から出力する。例えば、第二軸重みづけ回路152は、第2入力端子に光信号が入力された場合は、位相を付与しない光信号を第1出力端子から出力し、位相φV2を付与した光信号を第2出力端子から出力し、位相2φV2を付与した光信号を第3出力端子から出力する。例えば、第二軸重みづけ回路152は、第3入力端子に光信号が入力された場合は、位相を付与しない光信号を第1出力端子から出力し、位相φV3を付与した光信号を第2出力端子から出力し、位相2φV3を付与した光信号を第3出力端子から出力する。つまり、第1入力端子に入力された光信号には0、φV1、2φV1という位相傾斜が付与され、第2入力端子に入力された光信号には0、φV2、2φV2という位相傾斜が付与され、第3入力端子に入力された光信号には0、φV3、2φV3という位相傾斜が付与される。より具体的には、位相傾斜は0度、45度、90度や0度、90度、180度などである。
第二軸重みづけ回路152は、位相を付与しない光信号を出力する必要はなく、例えば、付与する位相傾斜はφ、2φ、3φであってもよい。
【0033】
第一軸重みづけ回路142及び第二軸重みづけ回路152は、遅延線路、高分散線路、共振リング、行列回路などにより光信号に位相傾斜を付与する。行列回路は、例えばバトラー行列(Butler Matrix)やブラス回路(Blass Matrix)である。
【0034】
以上より、波長及び分波器151-1~151-3に入力される光信号の位相傾斜により異なる位相傾斜の組合せが付与された9つの光信号が、第二軸位相傾斜付与部15から出力される。
【0035】
二次元アレーアンテナ16は、9つのアンテナ素子161を備える。9つのアンテナ素子161には、第二軸位相傾斜付与部15から出力される9つの光信号がそれぞれ入力される。アンテナ素子161は、入力された光信号をRF信号に変換し送信する。
【0036】
図3は、第1の実施形態に係る送信指向性制御装置1の動作を示すフローチャートである。光変調器12は、光信号を生成する(ステップS10)。第一切替回路141は、入力された光信号を複数の端子のいずれかより出力する(ステップS11)。第一軸重みづけ回路142が、第一切替回路141より入力される光信号に位相傾斜を付与する(ステップS12)。分波器151は、第一軸重みづけ回路142より入力される光信号を分波する(ステップS13)。その後、分波された光信号に対して、第二軸重みづけ回路152が位相傾斜を付与する(ステップS14)。アンテナ素子161は、光信号をRF信号に変換する(ステップS15)。
【0037】
以上により、送信指向性制御装置1は、光回路により2つの軸により重みづけを行い、電子的にビームステアリングを行うことができる。また、アンテナ素子の数が増大しても、第一軸位相傾斜付与部14及び第二軸位相傾斜付与部15の内部構成を変化させアンテナ素子161と第一軸位相傾斜付与部14及び第二軸位相傾斜付与部15との接続数を増やすだけでよく、複雑化を抑制することができる。
【0038】
(第1実施形態の変形例1)
図4は、第1の実施形態に係る送信指向性制御装置1の変形例を示す図である。図3に示す送信指向性制御装置1は、図2に示す送信指向性制御装置1と異なり、光源11及び光変調器12を2つ備え、第一切替回路141は2つの入力端子を備える。
【0039】
第一切替回路141は、2つの入力端子に入力される光信号をそれぞれ独立に、制御部13による制御に基づいて3つの出力端子のいずれかの出力端子から出力する。第一切替回路141は、例えばマトリックススイッチである。
【0040】
2つの光変調器12から出力される光信号の波長が等しくない場合、2つの光信号は第一切替回路141の同じ出力端子から出力されてもよい。
【0041】
これにより、図3に示す送信指向性制御装置1は、2つのビームを二次元アレーアンテナ16から送信することができる。同様に、第一切替回路141の入力端子を3つ以上にすることで、3つ以上のマルチビームを送信することができる。
【0042】
(第1実施形態の変形例2)
以上の説明では、アレーアンテナが正方である場合、つまり、分波器151の数と分波器151が分波して出力する光信号の数が等しい場合を説明したがこれに限られず、分波器151の数と分波器151が分波して出力する光信号の数は等しくなくてもよい。図5は、第1の実施形態に係る送信指向性制御装置1の変形例を示す図である。図5に示す送信指向性制御装置1において、分波器151は8つの光信号に分波する。このとき、光変調器12は、8つの波長の光信号を出力し、第二軸重みづけ回路152は、8つの入力端子と8つの出力端子を備える。このとき、二次元アレーアンテナ16は、8×3の二次元アレーアンテナとなる。図5に示す送信指向性制御装置1の変形例においては、二次元アレーアンテナ16のアンテナ素子161が増えた場合でも、重みづけ回路の個数が増えるのを防ぐことができる。
【0043】
(第1実施形態の変形例3)
図6は、第1の実施形態に係る送信指向性制御装置1の変形例を示す図である。図6に示す送信指向性制御装置1において、第一切替回路141は、8つの出力端子を備える。このとき、第一軸重みづけ回路142は、8つの入力端子と8つの出力端子を備え、光信号が入力される入力端子により異なる位相傾斜を付与した光信号を8つの出力端子から出力する。このとき、第二軸位相傾斜付与部15は、8つの分波器151及び第二軸重みづけ回路152を備える。このとき、二次元アレーアンテナ16は、3×8の二次元アレーアンテナとなる。図6に示す送信指向性制御装置1の変形例においては、二次元アレーアンテナ16のアンテナ素子161が増えた場合でも、必要となる光の周波数帯域幅を小さく抑えることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る送信指向性制御装置1の構成例を示す図である。第2の実施形態に係る第一軸位相傾斜付与部14は、第1の実施形態に係る第一軸位相傾斜付与部14と異なり分波器143を備える。第2の実施形態において、制御部13は光源11を制御し、光変調器12が異なる9つの波長λ1、λ2、λ3、λ4、λ5、λ6、λ7、λ8、λ9から1つの波長の光信号を出力するようにする。
【0045】
分波器143は、1つの入力端子と3つの出力端子を備える。分波器143は、光変調器12から入力端子に入力された光信号を分波し、3つの出力端子のうちいずれかの出力端子から光信号を出力する。分波器143は、波長λ1、λ2、λ3の光信号を第1出力端子から出力し、波長λ4、λ5、λ6の光信号を第2出力端子から出力し、波長λ7、λ8、λ9の光信号を第3出力端子から出力する。分波器143は、例えばAWGである。
【0046】
第2の実施形態に係る分波器151-1~151-3には、第1の実施形態に係る分波器151-1~151-3と異なり、分波器143により分波された異なる波長の光信号がそれぞれ入力される。第2の実施形態に係る分波器151-1~151-3は、入力されるそれぞれ異なる波長の光信号を分波する。分波器151-1は、波長λ1、λ2、λ3の光信号を分波し、分波器151-2は、波長λ4、λ5、λ6の光信号を分波し、分波器151-3は、波長λ7、λ8、λ9の光信号を分波する。第2の実施形態に係る分波器151は、周期的な通過特性を持つフィルタであり、例えば、光リング共振器又は光コムを用いて作成される。
【0047】
図8は、第2の実施形態に係る送信指向性制御装置1の動作を示すフローチャートである。光変調器12は、光信号を生成する(ステップS20)。分波器143は、入力された光信号を分波し、複数の端子のいずれかより出力する(ステップS21)。第一軸重みづけ回路142が、分波器143より入力される光信号に位相傾斜を付与する(ステップS22)。分波器151は、第一軸重みづけ回路142より入力される光信号を分波する(ステップS23)。その後、分波された光信号に対して、第二軸重みづけ回路152が位相傾斜を付与する(ステップS24)。アンテナ素子161は、光信号からRF信号を取り出す(ステップS25)。
【0048】
以上により、第2の実施形態に係る送信指向性制御装置1は、第1の実施形態に係る送信指向性制御装置1と異なり、第一軸位相傾斜付与部14が分波器143を備え、光変調器12が出力できる光信号の波長の数を多くし、複数の分波器151が分波する光信号の波長を異ならせる。これにより、第2の実施形態に係る送信指向性制御装置1は、光源11から出力される光の波長を制御するだけで、電子的にビームステアリングを行うことができる。
【0049】
(第2の実施形態の変形例)
図9は、第2の実施形態に係る送信指向性制御装置1の変形例を示す図である。図9に示す送信指向性制御装置1は、図7に示す送信指向性制御装置1と異なり、光源11及び光変調器12を2つ備え、合波器17を備える。合波器17は、2つの光変調器12から入力された光信号を合波し、第一軸位相傾斜付与部14に出力する。合波器17は、例えばAWGである。合波された光信号は、その波長に基づき分波器143及び分波器151により分波される。これにより、図9に示す送信指向性制御装置1は、2つのビームを二次元アレーアンテナ16から送信することができる。同様に、合波器17が3つ以上の光信号を合波することで、3つ以上のマルチビームを送信することができる。
【0050】
また、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様の手法により、分波器151の数と分波器151が分波して出力する光信号の数は等しくなくてもよく、2次元アンテナアレーが正方でなくてもよい。
【0051】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 送信指向性制御装置、11 光源、12 光変調器、13 制御部、14 第一軸位相傾斜付与部、141 第一切替回路、142 第一軸重みづけ回路、143 分波器、15 第二軸位相傾斜付与部、151 分波器、152 第二軸重みづけ回路、16 二次元アレーアンテナ、161 アンテナ素子、17 合波器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9