IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ADEKAの特許一覧 ▶ ADEKAクリーンエイド株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-24
(45)【発行日】2025-07-02
(54)【発明の名称】酸性除菌剤組成物及び清掃用シート
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/00 20060101AFI20250625BHJP
   A01N 59/02 20060101ALI20250625BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20250625BHJP
   A47L 13/16 20060101ALI20250625BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20250625BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20250625BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20250625BHJP
   C11D 3/02 20060101ALI20250625BHJP
   C11D 3/34 20060101ALI20250625BHJP
   C11D 3/39 20060101ALI20250625BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20250625BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20250625BHJP
【FI】
A01N59/00 A
A01N59/02 Z
A01P3/00
A47L13/16 A
C11D1/14
C11D1/29
C11D1/75
C11D3/02
C11D3/34
C11D3/39
C11D17/06
A61L2/18 102
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2025012574
(22)【出願日】2025-01-29
(62)【分割の表示】P 2024138362の分割
【原出願日】2024-08-20
(65)【公開番号】P2025066150
(43)【公開日】2025-04-22
【審査請求日】2025-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2023134373
(32)【優先日】2023-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(73)【特許権者】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】野積 拓也
(72)【発明者】
【氏名】八戸 敬
(72)【発明者】
【氏名】岡本 翔太郎
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-154551(JP,A)
【文献】特開2011-032135(JP,A)
【文献】特開2020-152856(JP,A)
【文献】特開2017-095546(JP,A)
【文献】特開2005-036288(JP,A)
【文献】特開2017-110323(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116235863(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
C11D
A01P
A47L
A61L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、過硫酸又は過硫酸塩、
(B)成分として、無機酸、有機スルホン酸及び有機ホスホン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む酸剤、
(C)成分として界面活性剤、
(D)成分として水
を含有し、前記(A)成分と前記(C)成分の質量比(A)/(C)の値が、0.5以上、200以下である、酸性除菌剤組成物(ただし、前記(B)成分は硫酸を含まない)。
【請求項2】
(A)成分がペルオキソ一硫酸水素カリウムを含有する、請求項1に記載の酸性除菌剤組成物。
【請求項3】
(C)成分が両性界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の酸性除菌剤組成物。
【請求項4】
(C)成分がアルカンスルホン酸塩及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項3に記載の酸性除菌剤組成物。
【請求項5】
(C)成分がアルキルアミンオキシドである、請求項3に記載の酸性除菌剤組成物。
【請求項6】
前記酸性除菌剤組成物のpHが0.5以上、3以下である、請求項1に記載の酸性除菌剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の酸性除菌剤組成物が含浸された基材シートを備える清掃用シート。
【請求項8】
請求項7に記載の基材シートが、合成繊維を含み、基材シートを構成する繊維100質量部当たり、酸性除菌剤が100質量部以上、600質量部以下で含浸されている、清掃用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌やウイルスに対する除菌性、除ウイルス性、有効酸素安定性、洗浄性にも優れた除菌剤組成物及び清掃用シートに関する。具体的に、本発明は、食品工場、厨房、医療施設等の設備、器具の衛生管理に使用される除菌剤組成物及び清掃用シートに関し、更に詳しくは、細菌及び真菌に対して優れた除菌性を有する酸性除菌剤組成物及び清掃用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
食中毒のリスクや感染拡大の軽減、医療施設、食品工場、厨房施設等の衛生環境を良好に保つため、除菌剤が使用されている。医療施設、食品工場、厨房施設の除菌には、第四級アンモニウム塩を主成分とした除菌剤が一般的に使用されている。更に、除菌面に付着、残留した汚れから微生物が増殖することを防止するために、洗浄性付与を目的としてノニオン界面活性剤やアニオン界面活性剤、両性界面活性剤を組み合わせた除菌剤組成物が用いられる。
【0003】
しかしながら、第四級アンモニウム塩を主成分とした除菌剤組成物は、被除菌面の材質がプラスチックの場合に、腐食やひび割れを起こす問題がある。また、第四級アンモニウム塩は陽イオン界面活性剤抵抗性菌の出現が問題となる場合があり、残存した細菌が食品や器具に混入し、食品腐敗及び衛生環境の悪化を引き起こす問題がある。
【0004】
従来の除菌洗浄剤としては、特許文献1には第四級アンモニウム塩を含むウェットワイパーが記載されている。引用文献2には第四級アンモニウム塩、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、及びポリアミノプロピルビグアナイドを含有するウェットワイパーが記載されている。特許文献3には過硫酸塩、ハロゲン化物、スルファミン酸、非還元性有機酸、酸性リン酸塩を含む殺ウイルス組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-022272号公報
【文献】特開2018-188368号公報
【文献】特開昭61-165309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1から特許文献2に記載のウェットワイパーは、細菌やカビ等に除菌性を示すが、被除菌面の材質がプラスチックの場合に、腐食やひび割れの影響があり、さらに陽イオン界面活性剤抵抗性菌の出現の懸念がある。特許文献3に記載の殺ウイルス組成物は、一般的には粉末を想定しており、粉末を溶解してからウェットワイパーへ浸漬する手間が発生する。また、水溶液にした場合に過硫酸塩の有効成分が減少してしまう。
【0007】
従って、本発明の目的は、被除菌面の材質への影響が低く、有効成分の減少がない優れた除菌力を有する酸性除菌剤組成物及び清掃用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、(A)成分として過硫酸又は過硫酸塩、(B)成分として、無機酸、有機スルホン酸及び有機ホスホン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む酸剤、(C)成分として界面活性剤、(D)成分として水を含有し、前記(A)成分と前記(C)成分の質量比(A)/(C)の値が、0.5以上、200以下である、酸性除菌剤組成物(ただし、前記(B)成分は硫酸を含まない)、及びこれが含浸された基材シートを備える清掃用シートが従来有していた課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、
(1)(A)成分として、過硫酸又は過硫酸塩、(B)成分として、無機酸、有機スルホン酸及び有機ホスホン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む酸剤、(C)成分として界面活性剤、(D)成分として水を含有し、前記(A)成分と前記(C)成分の質量比(A)/(C)の値が、0.5以上、200以下である、酸性除菌剤組成物(ただし、前記(B)成分は硫酸を含まない)、
(2)(A)成分がペルオキソ一硫酸水素カリウムを含有する、(1)の酸性除菌剤組成物、
(3)(C)成分が両性界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、(1)の酸性除菌剤組成物、
(4)(C)成分がアルカンスルホン酸塩及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、(3)の酸性除菌剤組成物、
(5)(C)成分がアルキルアミンオキシドである、(3)の酸性除菌剤組成物、
(6)酸性除菌剤組成物のpHが0.5以上、3以下である、(1)の酸性除菌剤組成物、
(7)(1)~(6)のいずれかの酸性除菌剤組成物が含浸された基材シートを備える清掃用シート、
(8)(7)の基材シートが、合成繊維を含み、基材シートを構成する繊維100質量部当たり、酸性除菌剤が100質量部以上、600質量部以下で含浸されている、清掃用シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の酸性除菌剤組成物及び清掃用シートは、被除菌面の材質への影響が低く、有効成分の減少がない優れた除菌効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、上記(A)~(D)成分を必須成分として含有する、酸性除菌剤組成物及び清掃用シートである。
本発明の酸性除菌剤組成物及び清掃用シートは、(A)成分として過硫酸又は過硫酸塩を含有する。この(A)成分は主として除菌効果に寄与する。
【0012】
(A)成分として、除菌効果が認められる任意の過硫酸又は過硫酸塩を使用することができる。例えば、過硫酸塩としては、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸水素ナトリウム、ペルオキソ一硫酸水素カリウム、ペルオキソ一硫酸水素アンモニウム等が挙げられる。商業的理由及び除菌性の観点から、過硫酸塩としてはペルオキソ一硫酸水素カリウムが好ましい。これらの酸化剤は、単独で使用してもよく、また複数を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
なお、ペルオキソ一硫酸水素カリウムは、ペルオキソ一硫酸水素カリウムと硫酸水素カリウム、硫酸カリウムから成る三重複塩 (2KHSO・KHSO・K2SO)の一部として含有されており、「OxoneTM」という商標名で市販されている。(A)成分がペルオキソ一硫酸水素カリウムを含有する場合は、ペルオキソ一硫酸水素カリウムと硫酸水素カリウム、硫酸カリウムから成る三重複塩に由来するペルオキソ一硫酸水素カリウムであることが好ましい。
【0014】
過硫酸等の酸化性物質の濃度は、ヨウ素滴定法により測定することができる。
<試験方法>
適量の試験液を秤量し、20%硫酸10mL、25%ヨウ化カリウム溶液10mLを加え、0.01mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定を行い、30秒間無色になった点を終点として、終点までの0.01mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量から下記式(1)により有効酸素濃度を算出した。
[計算式]
有効酸素濃度(ppm)=(0.01mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量(mL)×80.00)/試験液量(g)・・・・・(1)
【0015】
本発明の酸性除菌組成物は、(B)成分として、無機酸、有機スルホン酸及び有機ホスホン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む酸剤を含有する。この(B)成分は主として(A)成分の安定性に寄与する。
【0016】
無機酸としては、硫酸、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硝酸、亜硝酸、チオシアン酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、メタリン酸、ペンタポリリン酸、ヘキサメタリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸が挙げられる。
【0017】
有機ホスホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、m-キシレンスルホン酸等のキシレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のトルエンスルホン酸、p-クメンスルホン酸等のクメンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸等のベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0018】
有機ホスホン酸である場合、例えば、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、メチレンジホスホン酸、1,2-エチレンジホスホン酸、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1-ジホスホン酸、1-ヒドロキシブチリデン-1,1-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸等が挙げられる。
【0019】
有効酸素安定性及び除菌性、薬剤使用後の拭き残り跡の観点から、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、ピロリン酸、メタリン酸、m-キシレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸が好ましく、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸がより好ましく、硫酸を用いることが更に好ましい。
【0020】
本発明の酸性除菌組成物は、(C)成分として界面活性剤を使用する。本発明の効果を奏する限り、任意の界面活性剤を使用することができ、例えば、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤が挙げられる。本発明の酸性除菌剤組成物では、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤が好ましく、両性界面活性剤及びアニオン界面活性剤がより好ましい。(C)成分は洗浄性、不織布の薬剤浸透性、薬剤使用後の拭き残り跡、材質影響等に影響する。
【0021】
(C)成分が両性界面活性剤である場合、例えば、アルキルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、スルホベタイン、アルキルアミノ(モノ又はジ)プロピオン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、アルキルアミンオキシド、アルキルアミノエチルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、グリシンn-(3-アミノプロピル)C10~16誘導体、アルキルポリアミノエチルグリシン、アルキルβアラニン、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ジアミンのオキシエチレン付加型界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、アルキルアミンオキシドが好ましく、炭素数6以上、18以下のアルキル基を有するアルキルジメチルアミンオキシドがより好ましく、炭素数8以上、14以下のアルキル基を有するアルキルジメチルアミンオキシドがより好ましく、炭素数10のアルキル基(特にデシル基)を有するアルキルジメチルアミンオキシドが更に好ましい。なお、前記アルキル基は分岐鎖であってもよく、直鎖であってもよい。
【0022】
(C)成分がアニオン界面活性剤の場合、例えば、脂肪酸、アルキル又はアルケニルコハク酸、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸、アルキロールサルコシン、アルキル又はアルケニル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル、アマイドエーテル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸、オレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホコハク酸半エステル、アシルタウリン酸、アルキルモノリン酸エステル、アルキルトリリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、ジポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、トリポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、トリポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸やこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、アルキル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩、アルカンスルホン酸又はその塩が好ましく、2級アルカンスルホン酸又はその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル又はその塩がより好ましい。例としては、2級アルカンスルホン酸ナトリウムが例示される。これらは単独で用いても、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記アニオン界面活性剤は、塩の形態の化合物であり、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム等のアルカノールアミン塩等であり得る。
【0024】
アルキル硫酸エステル塩のアルキル基は、炭素数8~18のアルキル基であることが好ましい。アルキル硫酸エステル塩として、具体的に、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等が挙げられる。アルキルエーテル硫酸エステル塩のアルキル基は炭素数10~18のアルキル基であることが好ましい。また、アルキルエーテル硫酸エステル塩はオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有し、オキシエチレン基の平均繰り返し数nは1~5であることが好ましく、オキシプロピオン基の平均繰り返し数mは0~1であることが好ましい。アルキルエーテル硫酸エステル塩として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられる。
【0025】
アルカンスルホン酸塩は、炭素数14~18を有するアルカンスルホン酸塩を使用することが好ましく、具体的に、2級アルカン(C14~17)スルホン酸ナトリウム、ヒドロキシアルカン(C14~18)スルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0026】
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩のアルキル基は、炭素数8~16を有するアルキル基であることが好ましい。直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩として、具体的に、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0027】
α-オレフィンスルホン酸塩のアルケニル基は、炭素数8~20を有するアルキル基であることが好ましい。α-オレフィンスルホン酸塩として、具体的に、ライオン株式会社製のリポランLB-440が挙げられる。
【0028】
アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩のアルキル基は、炭素数8~18を有するアルキル基であることが好ましい。アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩として、具体的に、花王株式会社製のペレックスSS-HやペレックスSS-L等が挙げられる。
【0029】
スルホコハク酸塩はスルホ基を有するコハク酸アルキルエステルであり、該アルキル基の炭素数が6~18であることが好ましい。スルホコハク酸塩として、具体的に、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ジデシルナトリウム、スルホコハク酸ジドデシルナトリウム、スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム等が挙げられる。
【0030】
アルキルエーテルカルボン酸塩のアルキル基は、炭素数8~18であるアルキル基が好ましい。また、アルキルエーテルカルボン酸塩は、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有し、オキシエチレン基の平均繰り返し数nは1~10であることが好ましく、オキシプロピレン基の平均繰り返し数mは0~1であることが好ましい。
【0031】
(C)成分がカチオン界面活性剤である場合、例えば、アルキル(アルケニル)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(アルケニル)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、エーテル基或いはエステル基或いはアミド基を含有するモノ或いはジアルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、アルキル(アルケニル)ピリジニウム塩、アルキル(アルケニル)ジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)イソキノリニウム塩、ジアルキル(アルケニル)モルホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキル(アルケニル)アミン、アルキル(アルケニル)アミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。これらの中でも、アルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましい。
【0032】
(C)成分がノニオン界面活性剤の場合、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形態は、ランダム状、ブロック状の何れでもよい。)、ポリエチレングリコールプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキサイド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸-N-メチルモノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド)又はそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレートなどが挙げられる。この中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形態は、ランダム状、ブロック状の何れでもよい。)が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましい。
【0033】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルのアルキル基またはアルケニル基は、炭素数8~14であることが好ましい。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルはオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有し、オキシエチレン基の平均繰り返し数nは1~30であることが好ましく、オキシプロピレン基の平均繰り返し数mは0~10であることが好ましい。
【0034】
上記(A)~(C)成分は、それぞれ単一の成分であってもよく、複数の成分を組み合わせてもよい。
【0035】
本発明の酸性除菌剤組成物は、(D)成分として水を含有する。水としては、水道水、軟水化処理水、純水、RO水、イオン交換水、蒸留水を用いることができる。水道水としては、例えば、東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度2.3°DH(そのうち、カルシウム硬度1.7°DH、マグネシウム硬度0.6°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物15mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.2mg/L、フッ素及びその化合物0.1mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.016mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.7mg/L)が挙げられる。
本発明の(D)の水は、上記(A)~(C)成分の合計量に対する残部、あるいは(A)成分~(C)成分、及び他の任意成分の合計量に対する残部となる。
【0036】
(A)成分の酸性除菌剤組成物中の濃度は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、酸性除菌剤組成物の除菌性、材質影響及び有効酸素安定性の観点から、酸性除菌剤組成物全量に対して0.1質量%以上、5質量%以下が好ましく、0.2質量%以上、2質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上、1質量%以下が更に好ましい。
なお、ペルオキソ一硫酸水素カリウムは、ペルオキソ一硫酸水素カリウムと硫酸水素カリウム、硫酸カリウムから成る三重複塩 (2KHSO・KHSO・K2SO)に42.8質量~約45質量%含まれている。
【0037】
(B)成分の酸性除菌剤組成物中の濃度は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、酸性除菌剤組成物の除菌性、材質影響の観点から、除菌剤組成物全量に対して0.01質量%以上、5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上、2質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上、1質量%以下が更に好ましい。
【0038】
(C)成分の酸性除菌剤組成物中の濃度は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、酸性除菌剤組成物の洗浄性及び不織布への薬剤浸透性の観点から、酸性除菌剤組成物全量に対して0.001質量%以上、2質量%以下が好ましく、0.01質量%以上、1質量%以下がより好ましく、0.02質量%以上、0.7質量%以下が更に好ましい。
【0039】
本発明の酸性除菌剤組成物の(A)成分と(C)成分の質量比は、(A)/(C)の値が0.1以上、5000以下が好ましく、0.2以上、1000以下がより好ましく。0.5以上、300以下が更に好ましく、1以上、100以下が最も好ましい。(A)/(C)の値が0.1未満であると、除菌性や安定性が十分ではない場合があり、5000より大きいと洗浄性や不織布への薬剤の浸透が悪くなる場合がある。
【0040】
本発明の酸性除菌剤組成物には、必要に応じて更に、pH調整剤、グリコール系溶剤及び/又はグリコールエーテル系溶剤、キレート剤、色素、他の除菌剤、消泡剤、香料、腐食抑制剤、天然抽出物、増粘剤、酵素、その他塩成分(食塩、芒硝等)等を配合することができる。
【0041】
pH調整剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸水素ナトリウム、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-t-ブチルエタノールアミン、N-t-ブチルジエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)イソプロパノールアミン、N,N-ジエチルイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、アミノメチルプロパノール、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン、2-メチルピペラジン、トランス2,5-ジメチルピペラジン、シス-2,6-ジメチルピペラジン等のアルカリ類、(B)成分以外の酸類(例えば、酢酸)が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
前記グリコール系溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
また、グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0044】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、メチルグリシン二酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、グルタミン酸二酢酸、アスパラギン酸二酢酸、β-アラニン二酢酸、セリン二酢酸や、これらのアルカリ金属塩等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0045】
色素としては、例えば、天然色素、合成色素、又はこれらの混合物が挙げられる。他の除菌剤としては、例えば次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、塩素化イソシアヌル酸ナトリウム、塩素化イソシアヌル酸カリウム、ε-ポリリジン、ポリ-γ-グルタミン酸、ナイシン等が挙げられる。消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、高級アルコール系消泡剤等が挙げられる。香料としては、例えば、天然香料、合成香料、又はこれらの調合香料等が挙げられる。腐食抑制剤としては、例えば、短鎖のジカルボン酸もしくはトリカルボン酸等のポリカルボン酸、リン酸エステル、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールもしくはメルカプトベンゾチアゾール等のトリアゾール類、アジピン酸、グルタル酸、又はコハク酸、珪酸塩等が挙げられる。天然抽出物としては、例えば、アサ科植物、アカネ科植物、アブラナ科植物、イネ科植物、カキノキ科植物、キク科植物、シソ科植物、ショウガ科植物、ツバキ科植物、ナス科植物、ヒノキ科植物、フトモモ科植物、ブドウ科植物、マメ科植物、ミカン科植物、ユリ科植物等の植物由来の天然抽出物や、リゾチーム、しらこ蛋白抽出物等の動物由来の天然抽出物等が挙げられる。増粘剤としては、例えばカラギーナン、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、ガッチガム、カラヤガム、ペクチン等が挙げられる。酵素としては、例えば、リパーゼ、アルカリアミラーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、プルラナーゼ等が挙げられる。
【0046】
本発明の酸性除菌剤組成物のpHは、(A)成分の安定性の観点から0.5以上、3以下であることが好ましく、1以上、2.5以下がより好ましい。
【0047】
本発明の酸性除菌剤組成物を用いる除菌方法において、上記の酸性除菌剤組成物をそのまま除菌液として、被除菌体の表面に塗布して用いてもよく、除菌液を被除菌体に発泡洗浄機(スプレーガンやフォームポンプ)などを用いて噴霧や吐出したり、除菌液に被除菌体を浸漬したりする方法を採用することができる。さらに、以下に説明する基材シートに含侵させて清掃用シートとして用いることができる。
【0048】
(基剤シート)
本発明の清掃用シートは、基材シートを備える。本発明の清掃用シートは、実質的に基材シートのみからなる単層シートであってもよいし、基材シートと任意のシートとが積層されてなる2層以上の積層シートであってもよい。また、異なる部材からなる基材シートが積層されていてもよい。
【0049】
上記基材シートは、含浸した酸性除菌剤組成物を適度に保持できるシートであればよい。具体的には、たとえば、基材シートとしては、再生繊維、合成系繊維、天然繊維やこれらの混合繊維よりなる不織布、織布、網布等が挙げられる。
【0050】
基材シートが親水性となり酸性除菌剤組成物の含浸量を増量可能であり、かつ良好な除ウイルス性を発揮するという観点からは、基材シートが合成繊維を含むシートであることが好ましく、基材シートを構成する繊維の全質量に対して合成繊維の割合が10質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、75質量%を超える割合であることがより好ましい。
酸性除菌剤組成物の基材シートへの含浸量は、当該基材シートを構成する繊維100質量部当たり、酸性除菌剤組成物の含浸量を100質量部以上、600質量部以下の範囲とすることが可能で、150質量部以上、500質量部以下が好ましく、200質量部以上、450質量部以下がより好ましい。
【0051】
再生繊維とは天然の高分子化合物を溶解して溶液とし、これを、紡糸口金を通して紡糸したものを指す。天然高分子化合物としては、例えば、木材、綿などのセルロース材料を用いるセルロース系材料、牛乳、トウモロコシ、落花生などのタンパク質材料を用いるタンパク質系材料が挙げられる。
セルロース系材料を用いて製造される再生繊維としては、例えば、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセルなどが挙げられる。
合成繊維としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、アクリル、天然繊維としては、例えば、綿(コットン)、羊毛等が挙げられる。
【0052】
本発明の清掃用シートは、優れた除菌性を示す上、被清拭物の腐食防止性にも優れる。そのため本発明は、家庭における様々な被掃拭物の清掃に用いられ衛生的な環境を提供するだけでなく、医療分野、食品分野、醸造分野、農業分野など広範な分野における除菌・に有用である。特に、本発明は、除菌性だけでなく、従来課題であった被掃拭物の腐食防止性効果の両立を実現するものであるため、プラスチックやステンレス面などを清掃する機会の多い医療分野や食品分野における衛生環境を維持するために好適である。
【0053】
本発明の清掃用シートは種々の用途で適用可能であり、例えば、ヒトの皮膚表面を除く表面消毒、機器消毒、又はトイレやベッド周り、排水口などの水周りにおける除菌用、除ウイルス用として好適である。本発明の清掃用シートは、複数枚のシートが積層された形態、長尺なシートをロール状に巻いた形態、あるいは適宜の寸法にシートを折り畳んだ形態等に形成することができる。
【実施例
【0054】
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明する。実施例、比較例において配合に用いた各成分を下記に示す。なお、以下の実施例等において「%」は特に記載がない限り質量%を表し、表中における実施例及び比較例の配合の数値は純分の質量%を表す。水の含有量を示す「残部」とは、最終調製物である水性除菌剤の総量が100質量%になるように調整した配合量を示す。実施例、比較例において使用した化合物を以下に記す。また、アルキル基の表記について、例えば、アルキル(C8~18)と表記されている場合、炭素数8以上、18以下のアルキル基を有する混合物を表す。
【0055】
実施例、比較例の清掃用シートにおいて配合に用いた酸性除菌剤組成物(以下、除菌剤組成物と略す)の各成分を下記表1~9に示す。また基材シートに関しても、基材シート100質量%に対する、各構成繊維の割合(質量%)を表1~9に示す。
表に示す割合で各種繊維を含む不織布の基材シート100質量部当たりに、除菌剤組成物が350質量部~450量部となるよう含浸させて24時間密閉容器に入れて保管したものを清掃用シートとした。また万力を用いて各清掃用シートを10N・cmの力で10分間締め込み、搾出された溶液を、搾出液とした。
清掃用シート及び/又は搾出液を用いて、後述する各測定及び評価を実施した。測定結果及び評価結果は、表1~9に示す。
【0056】
(A)成分
A-1:ペルオキシ硫酸(硫酸)カリウム(ランクセス社製、製品名「OXONE」(商標)(ペルオキシ一硫酸水素カリウム・硫酸水素カリウム・硫酸カリウムからなる複塩))
A-2:ペルオキソ二硫酸カリウム
A-3:ペルオキソ二硫酸ナトリウム
A-4:ペルオキソ二硫酸アンモニウム
【0057】
(B)成分
B-1:硫酸
B-2:塩酸
B-3:硝酸
B-4:燐酸
B-5:メタンスルホン酸
B-6:ピロリン酸
B-7:メタリン酸
B-8:m-キシレンスルホン酸
B-9:p-トルエンスルホン酸
B-10:1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸
B-11:2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸
【0058】
(C)成分
C-1:オクチルジメチルアミンオキシド(グローバル・アミンズ社製、製品名「GENAMINOX OC(商標)」)
C-2:デシルジメチルアミンオキシド(グローバル・アミンズ社製、製品名「GENAMINOX K-10(商標)」)
C-3:2級アルカン(C14~17)スルホン酸ナトリウム(クラリアント社製、製品名「HOSTAPUR SAS30SB(商標)」)
C-4:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(テイカ社製、製品名:テイカポールNE-7030(商標))
C-5:塩化アルキル(C14~C18)トリメチルアンモニウム(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、製品名:リポカード16-29(商標))
C-6:ポリオキシアルキレンアルキル(C9~C11)エーテル(オクサリス ケミカルズ社製、製品名:JCTエトキシレート91-6)
【0059】
(D)成分
D-1:イオン交換水
【0060】
各実施例の組成物は、(D)成分の水を組成物の合計が100質量%となるように混合槽に加え、次いで(A)成分、(B)成分、(C)成分を混合槽中に配合し、十分に混合撹拌して調製した。
【0061】
実施例1~59、比較例1~6
表1~表9に示す除菌剤組成物を調製した。各除菌剤組成物を用いて、除菌性、金属及びプラスチック腐食防止性、すすぎ性、貯蔵安定性を測定した。表1~5、7~8に実施例1~59の結果を、表6及び表9に比較例1~6の結果をそれぞれ示す。
なお、実施例1~14、19、21~31、35~45、52~54、56~59は参考例である。
【0062】
※1:pHの測定方法
pHメーター(HORIBA製;pH/イオンメーター F-23)にpH測定用複合電極(HORIBA製;ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、電源を入れる。pH電極内部液としては、飽和塩化カリウム水溶液(3.33mol/L)を使用した。
次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性燐酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬した。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行った。
各除菌剤組成物を100mLビーカーに充填し、恒温槽内にて25℃に調整した。恒温に調整された試料にpH測定用電極を3分間浸し、組成物のpHを測定した。
【0063】
※2:使用感に関する評価試験
試験方法:
表1から表9に示す各清掃用シート(200mm×250mm)を10枚用い、薬液が染み込んだ不織布を1枚取り出し、清浄なステンレス表面を約30センチメートル四方に渡って、上下5回左右5回ふき取りを行い、泡立ちやべたつき、水っぽさやごわごわ感・湿り気などの観点から官能試験によって使用感を確認した。また、パネラーは無作為に選定し、それぞれのサンプルにつきn=10とした。評価結果の解析には統計処理を行い、最も評価が多い項目を評価結果として採用した。
【0064】
評価基準:
○:泡立ち・べたつき・水っぽさ・ごわごわ感がなく、適度な湿り気があり使用感が良い。
△:やや泡立ち・べたつき・水っぽさ・ごわごわ感がある、もしくは適度な湿り気がない。
×:泡立ち・べたつき・水っぽさ・ごわごわ感が非常に強い、もしくはほとんど湿り気がなく使用感が悪い。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0065】
※3:除菌性試験
供試菌株として、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(NBRC13276)を用いた。
【0066】
3-1:菌株の培養
供試菌株はSCD寒天培地(日水製薬品)に塗抹し、37℃で24時間培養後、コロニーを掻き取り、それぞれ滅菌燐酸緩衝生理食塩水に希釈したものを菌懸濁液として用いた。
【0067】
3-2:滅菌中和液の調整
大豆レシチンを10g、Tween80を30g、L-ヒスチジンを1g、チオ硫酸ナトリウムを20g、1Lの蒸留水に加温溶解し、攪拌しながら冷却をおこなった。その後、スクリューキャップ付き試験管に各9mL分注し、高圧殺菌(121℃、20分間)をおこない、滅菌中和溶液とした。
【0068】
3-3:除菌性試験
試験方法:
各除菌剤組成物をイオン交換水で0.5質量%に希釈して調製した除菌洗浄液10mLに、終濃度1.5~5.0×10(CFU/mL)となるように各菌懸濁液0.1mLを添加し、20℃にて1分間接触させたものを試験液とした。各試験液1mLを、滅菌中和溶液に加え、よく攪拌した。混合液をSCD寒天培地にて混和固化後、37℃で2日間培養した。培養後、生菌数を測定し、初発菌数との差より、以下の基準で除菌性を評価した。△、○、◎の評価のものを実用性のあるものとして判定した。
【0069】
評価基準:
◎:供試菌のLog reductionが6以上
○:供試菌のLog reductionが4以上、6未満
△:供試菌のLog reductionが2以上、4未満
×:供試菌のLog reductionが2未満
【0070】
※4:除菌性試験(芽胞菌)
試験方法:
供試菌株をSCD寒天培地(日水製薬品)に塗抹し、37℃で培養し、培養後、顕微鏡観察にて芽胞が十分に形成されていることを確認した。平板培地上に滅菌済み純水を10mL入れ、コロニーを掻き取り懸濁液を収集した。収集した懸濁液に、10000rpmで、4℃、15分間の条件で遠心洗浄を3回実施し、遠心後、滅菌済み純水を適量加え、2.0×10~9.0×10CFU/mL程度になるように菌数を調製し、ウォーターバスにて80℃、15分間の加熱処理をして芽胞菌液とした。
【0071】
各搾出液10mLに、供試芽胞菌液0.1mLを添加し、20℃にて10分間接触させた後、滅菌中和溶液を加えよく攪拌した。
芽胞菌としてClostridioides difficile ATCC9689(10CFU/mLレベル)を用いた。
この1mLをSCD寒天培地で混釈培養し生菌数を確認し、下記の基準で評価した。
【0072】
評価基準:
1点:供試菌のlog reductionが3以上の菌数減少
2点:供試菌のlog reductionが2以上、3未満の菌数減少
3点:供試菌のlog reductionが2未満の菌数減少
として上記各菌種について菌数減少を点数で評価し、菌数減少の点数の平均値を求め、以下の基準で除菌性を評価した。
◎:平均値が1.0点以上、1.5点未満。
○:平均値が1.5点以上、2.0点未満。
△:平均値が2.0点以上、2.5点未満。
×:平均値が2.5点以上。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0073】
※5:ウイルス不活化試験(ネコカリシウイルス)
<試験方法>
試験管に0.9mLの各除菌剤組成物と、10TCID50/mLとなるように調整したネコカリシウイルス液(FCV F9株)0.1mLを加えてウイルス試験液(ウイルス試験液1)を調製し、ミキサーで混合し、25℃で1分間作用させた。
また、有機汚れを想定し、試験管に0.9mLの各除菌剤組成物と、10TCID50/mLとなるように調整した0.5%肉エキス(ナカライテスク社製)含有ネコカリシウイルス液(FCV F9株)0.1mLを加えて有機汚れ含有ウイルス試験液(ウイルス試験液2)を調製し、ミキサーで混合し、25℃で1分間作用させた。
【0074】
そして上述のとおり1分間反応させた後、ウイルス試験液1、2を、2%牛胎児血清(FBS)を添加したDulbecco‘s modified Eagle’s Medium(DMEM)で7倍希釈し、反応を停止させた。反応が停止した停止液をDMEM培地で7倍段階希釈し、各希釈液をネコ腎臓細胞(CRFK)に接種し、1%FBS加DMEM培地において、37℃、CO2インキュベーター内で4日間培養した。培養後、細胞変性効果を観察し、ウイルス感染価(TCID50/mL)を求めた。対照の初期感染価と試験品作用後の感染価から、ウイルス感染価対数減少値(ウイルス感染価Log reduction value)を算出し、以下の基準でウイルス不活化効果を評価した。
【0075】
<評価基準>
◎:ウイルス感染価の対数減少値が4以上の減少。
○:ウイルス感染価の対数減少値が3以上、4未満の減少。
△:ウイルス感染価の対数減少値が2以上、3未満の減少。
×:ウイルス感染価の対数減少値が2未満の減少。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0076】
※6:清掃用シートによる拭き取り痕の軽減性試験
15cm×15cmのガラス板を用意し、表1から表9に示す各清掃用シートにより、ガラス板表面を上下5回、左右5回清拭を行った。その後、室温にて2時間ガラス板を乾燥させ、ガラス板表面に発生した拭き残り痕について目視によって評価した。
【0077】
評価基準:
◎:拭き残り痕が全く気にならない。
〇:拭き残り痕がほとんど気にならない。
△:拭き残り痕がやや気になるが、問題ないレベル。
×:拭き残り痕が気になる。
とし、△、〇、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0078】
※7:被清拭物の腐食性に関する評価試験
試験方法:
各除菌剤組成物30mLに対して、1cm×2.5cm×7.5cmの大きさにカットされた9種類の樹脂及び金属パネル(塩化ビニル・ABS・ポリプロピレン・ポリエチレン・アクリル・ポリカーボネート・シリコン・テフロン(登録商標)・ステンレス)各2枚合計18枚を浸漬し、25℃で48時間保管後、各パネルをイオン交換水ですすぎ24時間室温で乾燥した後、腐食度合いを目視で評価した。
【0079】
評価基準:
◎:全てのパネルに変色・劣化・割れなどが見られない。
○:2割未満のパネルに変色・劣化・割れなどが見られる。
△:2割以上3割未満のパネルに変色・劣化・割れなどが見られる。
×:3割以上のパネルに変色・劣化・割れなどが見られる。
【0080】
※8:基材シートの薬剤偏在に関する評価試験
試験方法:
表1から表9に示す各種素材からなる不織布(200mm×250mm×300枚)を容量3Lのポリプロピレン製の袋に入れて、各除菌剤組成物2Lを含浸させ、室温にて24時間保存した後、縦半分に裁断し、中心部分まで薬液が染み込んでいるかを目視によって観察した。
【0081】
評価基準:
◎:全体にまんべんなく薬液が染み込んでいる。
○:ほとんど全体的に薬液が染み込んでいる。
△:一部染み込んでいない部分がある。
×:いたるところに染み込んでいない部分がある。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0082】
※9:不織布の変色に関する評価試験
試験方法:
表1から表9に示す各清掃用シート(200mm×250mm)を10枚用い、40℃で1週間保存した後、清掃用シートの外観変化を目視によって観察した。
評価基準:
◎:変色や劣化は発生していない。
○:薄い変色や軽微な劣化がほとんど発生していない。
△:濃い変色や強い劣化が若干発生しているが、問題ないレベル。
×:全体的に濃い変色や強い劣化が発生している。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した
【0083】
※10:有効酸素安定性試験
試験方法:
表1から表9に示すPET素材からなる不織布(200mm×250mm×300枚)を容量3LのPETとポリエチレンにアルミ蒸着した材質の袋に入れて、各除菌剤組成物2Lを含浸させ、室温にて24時間保存した後ヒートシールにより封をし、40℃で1ヶ月間放置後の有効酸素残存率を測定した。
<試験方法>
適量の試験液を秤量し、20%硫酸10mL、25%ヨウ化カリウム溶液10mLを加え、0.01mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定を行い、30秒間無色になった点を終点として、終点までの0.01mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量から下記式(1)により有効酸素濃度を算出した。
[計算式]
有効酸素濃度(ppm)=(0.01mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液の滴下量(mL)×80.00)/試験液量(g)・・・・・(1)
【0084】
評価基準:
○:有効酸素残存率が80%以上
△:有効酸素残存率が60%以上、80%未満
×:有効酸素残存率が60%未満
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0085】
※11:貯蔵安定性試験
試験方法:
各除菌剤組成物100gをポリプロピレン製容器に入れ、0℃、25℃、40℃で1ヶ月静置した後に外観を観察した。
【0086】
評価基準:
○:分離や濁りが見られず安定である
△:全体的な分離はなく、若干の濁りが見られるが、使用上問題はない
×:分離もしくは濁りが見られる
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
【0095】
【表9】