(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-25
(45)【発行日】2025-07-03
(54)【発明の名称】レーダ物標検知装置及びレーダ物標検知プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20250626BHJP
【FI】
G01S7/40
(21)【出願番号】P 2021140040
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2024-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004613
【氏名又は名称】弁理士法人アイル知財事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 理志
(72)【発明者】
【氏名】菅 良太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雅明
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-180873(JP,A)
【文献】特開2019-070664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0215820(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ送信信号及び局部発振信号を生成する発振器と、
レーダ送信信号を照射する送信アンテナと、
レーダ反射信号を受信する受信アンテナと、
レーダ反射信号と局部発振信号とを乗算するミキサと、
前記ミキサの乗算結果に基づいて物標を検知する物標検知部と、
前記送信アンテナのОN/OFFを切り替える送信スイッチと、
前記送信アンテナのOFFへの切替時での前記ミキサの乗算結果の増大に基づいて、前記送信アンテナのONへの切替時での他装置からの干渉を検知する干渉検知部と、
を備えるレーダ物標検知装置であって、
前記送信アンテナのOFFへの切替時での局部発振信号の周波数を、前記送信アンテナのONへの切替時での局部発振信号の周波数と比べて、前記送信アンテナのОN/OFFの切替時での前記発振器から見た負荷インピーダンス変動による前記発振器での発振周波数変動幅より大きく上下にずらして設定する発振制御部をさらに備え、
前記干渉検知部は、前記送信アンテナのOFFへの切替時での局部発振信号の周波数が前記発振制御部の設定した周波数のいずれかである時での前記ミキサの乗算結果の増大に基づいて、前記送信アンテナのONへの切替時での他装置からの干渉
の前兆を検知する
ことを特徴とするレーダ物標検知装置。
【請求項2】
前記発振制御部は、前記送信アンテナのOFFへの切替時での局部発振信号の周波数を、前記送信アンテナのONへの切替時での局部発振信号の周波数と比べて、前記発振器での発振周波数変動幅より大きく上下にずらした2種類の周波数に交互に設定し、
前記干渉検知部は、前記送信アンテナのOFFへの切替時での局部発振信号の周波数が前記2種類の周波数のいずれかである時での前記ミキサの乗算結果の増大に基づいて、前記送信アンテナのONへの切替時での他装置からの干渉
の前兆を検知する
ことを特徴とする、請求項1に記載のレーダ物標検知装置。
【請求項3】
前記発振制御部は、前記送信アンテナのOFFへの切替時での局部発振信号の周波数を、前記送信アンテナのONへの切替時での局部発振信号の周波数と比べて、前記発振器での発振周波数変動幅より大きく上下にずらした2種類の周波数と、前記2種類の周波数の間の1種類以上の周波数と、を合わせた複数種類の周波数に順番に又はランダムに設定し、
前記干渉検知部は、前記送信アンテナのOFFへの切替時での局部発振信号の周波数が前記複数種類の周波数のいずれかである時での前記ミキサの乗算結果の増大に基づいて、前記送信アンテナのONへの切替時での他装置からの干渉
の前兆を検知する
ことを特徴とする、請求項1に記載のレーダ物標検知装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のレーダ物標検知装置が備える前記物標検知部、前記干渉検知部及び前記発振制御部が行なう物標検知手順、干渉検知手順及び発振制御手順を、コンピュータに実行させるためのレーダ物標検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、他装置からの干渉を検知するレーダ物標検知技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術(例えば、特許文献1等)のレーダ物標検知装置の構成を
図1に示す。レーダ物標検知装置Rは、発振器1、送信アンテナ2、受信アンテナ3、ミキサ4、物標検知部5、送信スイッチ6及び干渉検知部7を備え、他装置Iからの干渉を検知する。
【0003】
発振器1は、レーダ送信信号及び局部発振信号を生成する。送信アンテナ2は、レーダ送信信号を照射する。受信アンテナ3は、レーダ反射信号を受信する。ミキサ4は、レーダ反射信号と局部発振信号とを乗算する。物標検知部5は、ミキサ4の乗算結果に基づいて物標Tを検知する。送信スイッチ6は、送信アンテナ2のОN/OFFを切り替える。
【0004】
ここで、送信アンテナ2のОNへの切替時では、受信アンテナ3は、物標Tからのレーダ反射信号を受信するとともに、他装置Iからの干渉信号を受信することがある。一方で、送信アンテナ2のOFFへの切替時では、受信アンテナ3は、物標Tからのレーダ反射信号を受信することなく、他装置Iからの干渉信号を受信するのみである。そこで、干渉検知部7は、送信アンテナ2のOFFへの切替時でのミキサ4の乗算結果の増大に基づいて、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉を検知する。
【0005】
従来技術のキャリアセンスの処理を
図2に示す。
図2では、発振器1は、PLL又はAFCを適用する発振器である。よって、送信アンテナ2のOFFへの切替時での局部発振信号の周波数は、送信アンテナ2のONへの切替時での局部発振信号の周波数と等しい。そして、送信アンテナ2のОN/OFFの切り替えは、間欠的・周期的に実行される。
【0006】
図2の上段では、他装置Iからの干渉信号の周波数は、送信アンテナ2のON/ОFFへの切替時での局部発振信号の周波数と等しい。よって、干渉検知部7は、送信アンテナ2のOFFへの切替時でのミキサ4の乗算結果の増大に基づいて、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉が存在することを正しく検知することができる。
【0007】
図2の下段では、他装置Iからの干渉信号の周波数は、送信アンテナ2のON/ОFFへの切替時での局部発振信号の周波数と異なる。よって、干渉検知部7は、送信アンテナ2のOFFへの切替時でのミキサ4の乗算結果の減少に基づいて、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉が存在しないことを正しく検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決課題のキャリアセンスの処理を
図3に示す。
図3では、発振器1は、フリーランで動作する発振器である。よって、送信アンテナ2のOFFへの切替時での局部発振信号の周波数は、送信アンテナ2のONへの切替時での局部発振信号の周波数と比べて、送信アンテナ2のОN/OFFの切替時での発振器1から見た負荷インピーダンス変動による発振器1での発振周波数変動幅(プリング変動幅)だけ異なることがある。そして、送信アンテナ2のОN/OFFの切り替えは、間欠的・周期的に実行される。
【0010】
図3の上段では、他装置Iからの干渉信号の周波数は、送信アンテナ2のОFFへの切替時での局部発振信号の周波数と等しく、送信アンテナ2のONへの切替時での局部発振信号の周波数と異なる。よって、干渉検知部7は、送信アンテナ2のOFFへの切替時でのミキサ4の乗算結果の増大に基づいて、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉が存在することを誤って検知してしまう可能性がある。
【0011】
図3の下段では、他装置Iからの干渉信号の周波数は、送信アンテナ2のONへの切替時での局部発振信号の周波数と等しく、送信アンテナ2のOFFへの切替時での局部発振信号の周波数と異なる。よって、干渉検知部7は、送信アンテナ2のOFFへの切替時でのミキサ4の乗算結果の減少に基づいて、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉が存在しないことを誤って検知してしまう可能性がある。
【0012】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、送信アンテナのON/OFFへの切替時での局部発振信号の周波数が、発振器から見た負荷インピーダンス変動による発振器での発振周波数変動幅だけ異なるときでも、送信アンテナのONへの切替時での他装置からの干渉が存在する/しないことをキャリアセンスで正しく検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
送信アンテナのОN/OFFの切替時での発振器から見た負荷インピーダンス変動による発振器での発振周波数変動幅は、大きさ及び符号が不明であるが、想定される範囲が明確である。そこで、送信アンテナのOFFへの切替時での局部発振信号の周波数を、送信アンテナのONへの切替時での局部発振信号の周波数と比べて、発振器から見た負荷インピーダンス変動による発振器での発振周波数変動幅より大きく上下にずらして設定する。
【0014】
具体的には、本開示は、レーダ送信信号及び局部発振信号を生成する発振器と、レーダ送信信号を照射する送信アンテナと、レーダ反射信号を受信する受信アンテナと、レーダ反射信号と局部発振信号とを乗算するミキサと、前記ミキサの乗算結果に基づいて物標を検知する物標検知部と、前記送信アンテナのОN/OFFを切り替える送信スイッチと、前記送信アンテナのOFFへの切替時での前記ミキサの乗算結果の増大に基づいて、前記送信アンテナのONへの切替時での他装置からの干渉を検知する干渉検知部と、を備えるレーダ物標検知装置であって、前記送信アンテナのOFFへの切替時での局部発振信号の周波数を、前記送信アンテナのONへの切替時での局部発振信号の周波数と比べて、前記送信アンテナのОN/OFFの切替時での前記発振器から見た負荷インピーダンス変動による前記発振器での発振周波数変動幅より大きく上下にずらして設定する発振制御部をさらに備え、前記干渉検知部は、前記送信アンテナのOFFへの切替時での局部発振信号の周波数が前記発振制御部の設定した周波数のいずれかである時での前記ミキサの乗算結果の増大に基づいて、前記送信アンテナのONへの切替時での他装置からの干渉を検知することを特徴とするレーダ物標検知装置である。
【0015】
この構成によれば、送信アンテナのON/OFFへの切替時での局部発振信号の周波数が、発振器から見た負荷インピーダンス変動による発振器での発振周波数変動幅だけ異なるときでも、送信アンテナのONへの切替時での他装置からの干渉(前兆でもよい。)が存在する/しないことをキャリアセンスで正しく検知することができる。
【0016】
また、本開示は、前記発振制御部は、前記送信アンテナのOFFへの切替時での局部発振信号の周波数を、前記送信アンテナのONへの切替時での局部発振信号の周波数と比べて、前記発振器での発振周波数変動幅より大きく上下にずらした2種類の周波数に交互に設定し、前記干渉検知部は、前記送信アンテナのOFFへの切替時での局部発振信号の周波数が前記2種類の周波数のいずれかである時での前記ミキサの乗算結果の増大に基づいて、前記送信アンテナのONへの切替時での他装置からの干渉を検知することを特徴とするレーダ物標検知装置である。
【0017】
同種の他装置が近傍に存在するとともに、同種の他装置が同一の周期で動作するときに、同種の他装置の温度等の変化に応じて、同種の他装置からの干渉が徐々に発生する。この構成によれば、このような場合でも、上記2種類の周波数の設定周期を短くすることができ、送信アンテナのONへの切替時での他装置からの干渉(前兆でもよい。)が存在する/しないことをキャリアセンスで正しくかつ素早く検知することができる。
【0018】
また、本開示は、前記発振制御部は、前記送信アンテナのOFFへの切替時での局部発振信号の周波数を、前記送信アンテナのONへの切替時での局部発振信号の周波数と比べて、前記発振器での発振周波数変動幅より大きく上下にずらした2種類の周波数と、前記2種類の周波数の間の1種類以上の周波数と、を合わせた複数種類の周波数に順番に又はランダムに設定し、前記干渉検知部は、前記送信アンテナのOFFへの切替時での局部発振信号の周波数が前記複数種類の周波数のいずれかである時での前記ミキサの乗算結果の増大に基づいて、前記送信アンテナのONへの切替時での他装置からの干渉を検知することを特徴とするレーダ物標検知装置である。
【0019】
別種の他装置が近傍に存在するときや、同種の他装置が異なる周期で動作するときに、これらの他装置の動作の周期に応じて、これらの他装置からの干渉が突然に発生する。この構成によれば、このような場合でも、上記複数種類の周波数の設定間隔を細かくすることができ、送信アンテナのONへの切替時での他装置からの干渉(前兆でもよい。)が存在する/しないことをキャリアセンスで正しくかつ漏れなく検知することができる。
【0020】
また、本開示は、以上に記載のレーダ物標検知装置が備える前記物標検知部、前記干渉検知部及び前記発振制御部が行なう物標検知手順、干渉検知手順及び発振制御手順を、コンピュータに実行させるためのレーダ物標検知プログラムである。
【0021】
この構成によれば、上記の効果を有するプログラムを提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本開示は、送信アンテナのON/OFFへの切替時での局部発振信号の周波数が、発振器から見た負荷インピーダンス変動による発振器での発振周波数変動幅だけ異なるときでも、送信アンテナのONへの切替時での他装置からの干渉が存在する/しないことをキャリアセンスで正しく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来技術のレーダ物標検知装置の構成を示す図である。
【
図2】従来技術のキャリアセンスの処理を示す図である。
【
図3】解決課題のキャリアセンスの処理を示す図である。
【
図4】本開示のレーダ物標検知装置の構成を示す図である。
【
図5】本開示の干渉検知処理の手順を示す図である。
【
図6】第1実施形態の発振周波数の設定を示す図である。
【
図7】第1実施形態のキャリアセンスの処理を示す図である。
【
図8】第2実施形態の発振周波数の設定を示す図である。
【
図9】第2実施形態のキャリアセンスの処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0025】
(本開示のレーダ物標検知装置の構成)
本開示のレーダ物標検知装置の構成を
図4に示す。本開示の干渉検知処理の手順を
図5に示す。レーダ物標検知装置Rは、発振器1、送信アンテナ2、受信アンテナ3、ミキサ4、物標検知部5、送信スイッチ6、干渉検知部7及び発振制御部8を備え、他装置Iからの干渉を検知する。物標検知部5、干渉検知部7及び発振制御部8は、
図5に示したレーダ物標検知プログラムをコンピュータにインストールし実現可能である。
【0026】
発振器1は、レーダ送信信号及び局部発振信号を生成する。送信アンテナ2は、レーダ送信信号を照射する。受信アンテナ3は、レーダ反射信号を受信する。ミキサ4は、レーダ反射信号と局部発振信号とを乗算する。物標検知部5は、ミキサ4の乗算結果に基づいて物標Tを検知する。送信スイッチ6は、送信アンテナ2のОN/OFFを切り替える。
【0027】
ここで、送信アンテナ2のОNへの切替時では、受信アンテナ3は、物標Tからのレーダ反射信号を受信するとともに、他装置Iからの干渉信号を受信することがある。一方で、送信アンテナ2のOFFへの切替時では、受信アンテナ3は、物標Tからのレーダ反射信号を受信することなく、他装置Iからの干渉信号を受信するのみである。そこで、干渉検知部7は、送信アンテナ2のOFFへの切替時でのミキサ4の乗算結果の増大に基づいて、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉を検知する。
【0028】
そして、送信アンテナ2のОN/OFFの切替時での発振器1から見た負荷インピーダンス変動による発振器1での発振周波数変動幅(プリング変動幅)は、大きさ及び符号が不明であるが、想定される範囲が明確である。そこで、発振制御部8は、送信アンテナ2のOFFへの切替時での局部発振信号の周波数を、送信アンテナ2のONへの切替時での局部発振信号の周波数と比べて、送信アンテナ2のОN/OFFの切替時での発振器1から見た負荷インピーダンス変動による発振器1での想定される発振周波数変動幅(プリング変動幅)より大きく上下にずらして設定する(ステップS1)。
【0029】
干渉検知部7は、送信アンテナ2のOFFへの切替時での局部発振信号の周波数が発振制御部8の設定した周波数のいずれかである時でのミキサ4の乗算結果の増大に基づいて、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉を検知する(ステップS2)。発振制御部8は、送信アンテナ2のONへの切替時に他装置Iからの干渉を受けないように、送信アンテナ2のONへの切替時でのレーダ送信信号の周波数を変更するか、送信アンテナ2のONへの切替時でのレーダ送信のタイミングを変更する(ステップS3)。
【0030】
このように、送信アンテナ2のON/OFFへの切替時での局部発振信号の周波数が、発振器1から見た負荷インピーダンス変動による発振器1での発振周波数変動幅だけ異なるときでも、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉(前兆でもよい。)が存在する/しないことをキャリアセンスで正しく検知することができる。
【0031】
(第1実施形態のキャリアセンスの処理)
第1実施形態の発振周波数の設定を
図6に示す。第1実施形態のキャリアセンスの処理を
図7に示す。第1実施形態では、同種の他装置Iが近傍に存在するとともに、同種の他装置Iが同一の周期で動作するときに、同種の他装置Iの温度等の変化に応じて、同種の他装置Iからの干渉が「徐々に」発生する場合を想定している。そして、発振器1は、PLL又はAFCを適用する発振器ではなく、フリーランで動作する発振器である。さらに、送信アンテナ2のОN/OFFの切り替えは、間欠的・周期的に実行される。
【0032】
図6及び
図7では、発振制御部8は、送信アンテナ2のOFFへの切替時での局部発振信号の周波数(太い破線で表示)を、送信アンテナ2のONへの切替時での局部発振信号の周波数(太い実線で表示)と比べて、発振器1での発振周波数変動幅(プリング変動幅)より大きく上下にずらした2種類の周波数に交互に設定する(ステップS1)。
【0033】
図6及び
図7では、干渉検知部7は、送信アンテナ2のOFFへの切替時での局部発振信号の周波数(太い破線で表示)が上記2種類の周波数のいずれかである時でのミキサ4の乗算結果の増大に基づいて、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉(太い一点鎖線で表示、「徐々に」発生)を検知する(ステップS2)。
【0034】
図6の左欄及び
図7の上段では、発振制御部8は、送信アンテナ2のОFFへの切替時での局部発振信号の周波数を、送信アンテナ2のONへの切替時での局部発振信号の周波数と比べて、低い周波数→高い周波数→低い周波数→高い周波数に交互に設定する。そして、他装置Iからの干渉信号の周波数は、上記低い周波数に向かって「徐々に」接近する。よって、干渉検知部7は、他装置Iからの干渉信号の周波数が上記低い周波数に向かって最も接近した時に(
図7の上段の第3の切替周期)、送信アンテナ2のOFFへの切替時でのミキサ4の乗算結果の増大に基づいて、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉の前兆が存在することを正しく検知することができる。
【0035】
図6の右欄及び
図7の下段では、発振制御部8は、送信アンテナ2のОFFへの切替時での局部発振信号の周波数を、送信アンテナ2のONへの切替時での局部発振信号の周波数と比べて、高い周波数→低い周波数→高い周波数→低い周波数に交互に設定する。そして、他装置Iからの干渉信号の周波数は、上記高い周波数に向かって「徐々に」接近する。よって、干渉検知部7は、他装置Iからの干渉信号の周波数が上記高い周波数に向かって最も接近した時に(
図7の下段の第3の切替周期)、送信アンテナ2のOFFへの切替時でのミキサ4の乗算結果の増大に基づいて、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉の前兆が存在することを正しく検知することができる。
【0036】
このように、第1実施形態では、上記2種類の周波数の設定周期を短くすることができ、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉(前兆でもよい。)が存在する/しないことをキャリアセンスで正しくかつ素早く検知することができる。
【0037】
(第2実施形態のキャリアセンスの処理)
第2実施形態の発振周波数の設定を
図8に示す。第2実施形態のキャリアセンスの処理を
図9に示す。第2実施形態では、別種の他装置Iが近傍に存在するときや、同種の他装置Iが異なる周期で動作するときに、これらの他装置Iの動作の周期に応じて、これらの他装置Iからの干渉が「突然に」発生する場合を想定している。そして、発振器1は、PLL又はAFCを適用する発振器ではなく、フリーランで動作する発振器である。さらに、送信アンテナ2のОN/OFFの切り替えは、間欠的・周期的に実行される。
【0038】
図8及び
図9では、発振制御部8は、送信アンテナ2のOFFへの切替時での局部発振信号の周波数(太い破線で表示)を、送信アンテナ2のONへの切替時での局部発振信号の周波数(太い実線で表示)と比べて、発振器1での発振周波数変動幅(プリング変動幅)より大きく上下にずらした2種類の周波数と、上記2種類の周波数の間の1種類以上の周波数と、を合わせた複数種類の周波数に順番に設定する(ステップS1)。
【0039】
図8及び
図9では、干渉検知部7は、送信アンテナ2のOFFへの切替時での局部発振信号の周波数(太い破線で表示)が上記複数種類の周波数のいずれかである時でのミキサ4の乗算結果の増大に基づいて、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉(太い一点鎖線で表示、「突然に」発生)を検知する(ステップS2)。
【0040】
図8の左欄及び
図9の上段では、発振制御部8は、送信アンテナ2のОFFへの切替時での局部発振信号の周波数を、送信アンテナ2のONへの切替時での局部発振信号の周波数と比べて、最も低い周波数→次に低い周波数→次に高い周波数→最も高い周波数に順番に設定する。そして、他装置Iからの干渉信号の周波数は、上記最も高い周波数において「突然に」接近する。よって、干渉検知部7は、他装置Iからの干渉信号の周波数が上記最も高い周波数において接近した時に(
図9の上段の第4の切替周期)、送信アンテナ2のOFFへの切替時でのミキサ4の乗算結果の増大に基づいて、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉の前兆が存在することを正しく検知することができる。
【0041】
図8の右欄及び
図9の下段では、発振制御部8は、送信アンテナ2のОFFへの切替時での局部発振信号の周波数を、送信アンテナ2のONへの切替時での局部発振信号の周波数と比べて、最も低い周波数→次に低い周波数→次に高い周波数→最も高い周波数に順番に設定する。そして、他装置Iからの干渉信号の周波数は、上記次に高い周波数において「突然に」接近する。よって、干渉検知部7は、他装置Iからの干渉信号の周波数が上記次に高い周波数において接近した時に(
図9の下段の第3の切替周期)、送信アンテナ2のOFFへの切替時でのミキサ4の乗算結果の増大に基づいて、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉の前兆が存在することを正しく検知することができる。
【0042】
このように、第2実施形態では、上記複数種類の周波数の設定間隔を細かくすることができ、送信アンテナ2のONへの切替時での他装置Iからの干渉(前兆でもよい。)が存在する/しないことをキャリアセンスで正しくかつ漏れなく検知することができる。
【0043】
なお、発振制御部8は、上記複数種類の周波数を、順番に設定してもよく、ランダムに設定してもよい。また、発振制御部8は、上記複数種類の周波数の設定間隔を、レーダ物標検知装置Rと他装置Iとの間の干渉発生の周波数幅に設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示のレーダ物標検知装置及びレーダ物標検知プログラムは、FSK及びドップラー現象等を用いるマイクロ波センサ等に適用可能であり、特に多数の近接するセンサ(照明制御、家電制御、駐車場コントロール及びトイレ個室在室検知等)に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
R:レーダ物標検知装置
T:物標
I:他装置
1:発振器
2:送信アンテナ
3:受信アンテナ
4:ミキサ
5:物標検知部
6:送信スイッチ
7:干渉検知部
8:発振制御部