(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-27
(45)【発行日】2025-07-07
(54)【発明の名称】ミラブル型シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴム硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/10 20060101AFI20250630BHJP
C08F 299/08 20060101ALI20250630BHJP
C08G 77/44 20060101ALI20250630BHJP
C08G 77/50 20060101ALI20250630BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20250630BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20250630BHJP
C08K 5/15 20060101ALI20250630BHJP
C08L 83/14 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
C08L83/10
C08F299/08
C08G77/44
C08G77/50
C08K3/36
C08K5/14
C08K5/15
C08L83/14
(21)【出願番号】P 2022180110
(22)【出願日】2022-11-10
【審査請求日】2024-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】林田 修
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-178802(JP,A)
【文献】特開2013-75989(JP,A)
【文献】特開2012-201794(JP,A)
【文献】特開2010-285363(JP,A)
【文献】特開2013-60377(JP,A)
【文献】特開2009-263321(JP,A)
【文献】特開昭61-098735(JP,A)
【文献】特開平07-196806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/10
C08F 299/08
C08G 77/44
C08G 77/50
C08K 3/36
C08K 5/14
C08K 5/15
C08L 83/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記(A-1)、(A-2)、(A-3)のヒドロシリル化反応物であって、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量が100,000~1,000,000であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)比表面積が50m
2/g以上である補強性シリカ:5~100質量部、
(C)有機過酸化物硬化剤:有効量
を含むものであることを特徴とするミラブル型シリコーンゴム組成物。
(A-1)下記式(1)で表される分子鎖両末端にヒドロシリル基を有し、かつ、重合度20以下の低分子シロキサンの含有量が5,000ppm未満であるノルボルネン含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン。
【化1】
(式(1)中、R
1は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基である。R
2は互いに独立に、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を示し、mは2~10の整数、nは0~10の整数を表す。)
(A-2)下記式(2)で表される分子鎖両末端にビニル基を有し、かつ、重合度20以下の低分子シロキサンの含有量が5,000ppm未満であるオルガノポリシロキサン。
【化2】
(式(2)中、R
3は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基であり、xは2~1,000の整数である。)
(A-3)下記式(3)で表される分子鎖両末端にヒドロシリル基を有し、かつ、重合度20以下の低分子シロキサンの含有量が5,000ppm未満であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン。
【化3】
(式(3)中、R
4は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基であり、yは0~100の整数である。)
【請求項2】
(A)成分の(A-1)、(A-2)、(A-3)のヒドロシリル化反応物中、反応物中の全ケイ素原子に対する(A-1)成分由来のケイ素原子に結合した側鎖不飽和基量(mol%)が0.01~0.5mol%のものであることを特徴とする請求項1に記載のミラブル型シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のミラブル型シリコーンゴム組成物を硬化させたものであることを特徴とするシリコーンゴム硬化物。
【請求項4】
内部に含まれる重合度20以下の低分子シロキサン成分の合計が、5,000ppm未満のものであることを特徴とする請求項3に記載のシリコーンゴム硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラブル型シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴム硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムの原料である直鎖状オルガノポリシロキサンの製造方法として、低分子量の環状又は直鎖状のオルガノポリシロキサンを、酸性又は塩基性の触媒を用い、平衡化反応で重合する方法が知られている。しかし、該重合法では、シロキサン結合の生成と開裂が同時に起こる結果、得られる高分子量の直鎖状オルガノポリシロキサンは、低分子量の環状シロキサン(以下、低分子シロキサン)を多く含有したものになる。
【0003】
現在の化学物質規制では、蓄積性をBCF(Bioconcentration Factor(生物濃縮係数))で評価することが一般的である。実際の環境下でのデータの方が、自然界での蓄積性を正確に評価できる。しかし、多くの化学物質を評価する必要性と、労力や費用の面から、BCFという実験室データを指標として用いている。
【0004】
BCFは、水中の魚に化学物質がどの程度蓄積するかを試験する方法であり、一定濃度の化学物質の存在下で試験する。そのため、難水溶性の物質や、揮発性が高い物質の蓄積性を評価することには不向きである。四量体、五量体及び六量体の低分子シロキサン(D4-D6)は、実際の環境下では蓄積性が低く、有害性がほとんどないことが明らかになっているものの、BCFは高い値を示し、規制される状況となっている。
【0005】
欧州では、D4-D6はSVHC(Substances of Very High Concern(高懸念物質))に指定されている。日本でも、十分なデータを有していたD5は監視化学物質ではないが、データが不十分なD4及びD6は監視化学物質に指定されている。その様な世界的な化学物質規制の潮流の中で、低分子シロキサンの低減が求められている。
【0006】
低分子シロキサンの含有量が少ないオルガノポリシロキサンの製造方法として、特許文献1では、分子鎖末端に少なくとも1つのシラノール基を有するオルガノポリシロキサンに、アルカリ土類金属の水酸化物を添加し、縮重合反応させ重合体を得る方法が開示されている。しかし、この方法では、得られる生成物の重合度が低く、生ゴム状物質を得ることは難しい。
【0007】
また、特許文献2では、分子鎖両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン及びトリオルガノシラノール等に2官能ジアルキルアミノシリル基を有するシランもしくはシロキサンを添加し、縮重合反応させ重合体を得る方法が開示されている。
【0008】
特許文献3では、ポリオルガノシロキサン-シルエチレン共重合体ポリマー、補強性充填用シリカ及び有機過酸化物からなる、揮発性の低分子量シロキサンの含有量が少ないシリコーンゴム組成物が開示されている。しかし、ここで使用するポリマーの側鎖には、反応点であるビニル基がないため、圧縮永久歪の特性は十分に良いとは言えなかった。
【0009】
特許文献4では、分子鎖両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンと分子中に2個の加水分解性基を有するシラン若しくはシロキサンとを加熱することによって得たオルガノポリシロキサンに、微粉末シリカを混合したシリコーンゴム組成物が開示されている。
【0010】
特許文献5では、分子両末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサン、トリオルガノシラノール等の末端封鎖剤、分子中に2個のジアルキルアミノシリル基を有するシラン若しくはシロキサン及び補強性充填材との混合物を加熱することにより得られる、低分子シロキサン含有量を低減したシリコーンゴム組成物が開示されている。
これら従来の低分子シロキサンの含有量が少ないオルガノポリシロキサンの硬化物は、圧縮永久歪が大きくなる場合があり、様々な問題が生じることがある。例えば、該硬化物をパッキンとして使用する場合、パッキンがつぶれたままになり、パッキンとしての効果が弱くなる。また、チューブとして使用する場合、チューブをつぶしたり、曲げたりした状態で使用していると、元の形状に戻らなくなる。さらに、ロールとして使用する場合、つぶれたままになってしまう。
揮発成分が少なく化学物質規制により適合し、電気接点での接点障害を起こしにくく、圧縮永久歪が小さい硬化物が得られるミラブル型シリコーンゴム組成物の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平02-235931号公報
【文献】特開平07-026020号公報
【文献】特開平06-136270号公報
【文献】特開平06-322273号公報
【文献】特開平07-070441号公報
【文献】特開2021-178802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、低分子シロキサン成分の含有量が少なく、シリコーンゴムコンパウンドの可塑度変化が小さく、かつ、圧縮永久歪が小さいシリコーンゴム硬化物及び前記シリコーンゴム硬化物を得ることができるミラブル型シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、
(A)下記(A-1)、(A-2)、(A-3)のヒドロシリル化反応物であって、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量が100,000~1,000,000であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)比表面積が50m2/g以上である補強性シリカ:5~100質量部、
(C)有機過酸化物硬化剤:有効量
を含むものであることを特徴とするミラブル型シリコーンゴム組成物を提供する。
(A-1)下記式(1)で表される分子鎖両末端にヒドロシリル基を有し、かつ、重合度20以下の低分子シロキサンの含有量が5,000ppm未満であるノルボルネン含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン。
【0014】
【化1】
(式(1)中、R
1は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基である。R
2は互いに独立に、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を示し、mは2~10の整数、nは0~10の整数を表す。)
(A-2)下記式(2)で表される分子鎖両末端にビニル基を有し、かつ、重合度20以下の低分子シロキサンの含有量が5,000ppm未満であるオルガノポリシロキサン。
【0015】
【化2】
(式(2)中、R
3は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基であり、xは2~1,000の整数である。)
(A-3)下記式(3)で表される分子鎖両末端にヒドロシリル基を有し、かつ、重合度20以下の低分子シロキサンの含有量が5,000ppm未満であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン。
【0016】
【化3】
(式(3)中、R
4は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基であり、yは0~100の整数である。)
【0017】
このようなミラブル型シリコーンゴム組成物によれば、低分子シロキサン成分の含有量が少なく、シリコーンゴムコンパウンドの可塑度変化が小さく、かつ、圧縮永久歪が小さいシリコーンゴム硬化物を得ることができるものとなる。
【0018】
このとき、(A)成分の(A-1)、(A-2)、(A-3)のヒドロシリル化反応物中、反応物中の全ケイ素原子に対する(A-1)成分由来のケイ素原子に結合した側鎖不飽和基量(mol%)が0.01~0.5mol%のものとすることができる。
【0019】
これにより、より確実に、圧縮永久歪が小さいシリコーンゴム硬化物を得ることができるものとなる。
【0020】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、先に記載のミラブル型シリコーンゴム組成物を硬化させたものであることを特徴とするシリコーンゴム硬化物を提供する。
【0021】
このようなシリコーンゴム硬化物によれば、圧縮永久歪を小さくすることができるものとなる。
【0022】
このとき、内部に含まれる重合度20以下の低分子シロキサン成分の合計が、5,000ppm未満のものとすることができる。
【0023】
これにより、より確実に、圧縮永久歪を小さくすることができるものとなる。
【0024】
なお、本発明において、上記(A)及び(B)成分を配合し、硬化剤を配合する前の混合物を、ベースコンパウンド(シリコーンゴムコンパウンド、ミラブル型シリコーンゴムコンパウンド)と称し、このベースコンパウンドに硬化剤を配合したものをシリコーンゴム組成物(ミラブル型シリコーンゴム組成物)と称する。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物によれば、低分子シロキサン成分の含有量が少なく、シリコーンゴムコンパウンドの可塑度変化が小さく、かつ、圧縮永久歪が小さいシリコーンゴム硬化物を得ることができるものとなる。詳しくは、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物によれば、重合度が20以下の低分子シロキサン成分の合計が5,000ppm未満であり、シリコーンゴムが本来有する耐候性、耐久性及び耐熱性等に優れ、更に圧縮永久歪が小さく、使用状態において変形を伴っても形状を維持でき、各種用途に使用可能であるシリコーンゴム硬化物を得ることができるものとなる。
本発明のシリコーンゴム硬化物によれば、圧縮永久歪を小さくすることができるものとなる。詳しくは、本発明のシリコーンゴム硬化物によれば、重合度が20以下の低分子シロキサン成分の合計が5,000ppm未満であり、シリコーンゴムが本来有する耐候性、耐久性及び耐熱性等に優れ、更に圧縮永久歪が小さく、使用状態において変形を伴っても形状を維持でき、各種用途に使用可能であるものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
上述のように、低分子シロキサン成分の含有量が少なく、シリコーンゴムコンパウンドの可塑度変化が小さく、かつ、圧縮永久歪が小さいシリコーンゴム硬化物及び前記シリコーンゴム硬化物を得ることができるミラブル型シリコーンゴム組成物が求められていた。
【0028】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、
「(A)下記(A-1)、(A-2)、(A-3)のヒドロシリル化反応物であって、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量が100,000~1,000,000であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)比表面積が50m2/g以上である補強性シリカ:5~100質量部、
(C)有機過酸化物硬化剤:有効量
を含むものであることを特徴とするミラブル型シリコーンゴム組成物。
(A-1)下記式(1)で表される分子鎖両末端にヒドロシリル基を有し、かつ、重合度20以下の低分子シロキサンの含有量が5,000ppm未満であるノルボルネン含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン。
【0029】
【化4】
(式(1)中、R
1は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基である。R
2は互いに独立に、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を示し、mは2~10の整数、nは0~10の整数を表す。)
(A-2)下記式(2)で表される分子鎖両末端にビニル基を有し、かつ、重合度20以下の低分子シロキサンの含有量が5,000ppm未満であるオルガノポリシロキサン。
【0030】
【化5】
(式(2)中、R
3は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基であり、xは2~1,000の整数である。)
(A-3)下記式(3)で表される分子鎖両末端にヒドロシリル基を有し、かつ、重合度20以下の低分子シロキサンの含有量が5,000ppm未満であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン。
【0031】
【化6】
(式(3)中、R
4は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基であり、yは0~100の整数である。)
」により、低分子シロキサン成分の含有量が少なく、シリコーンゴムコンパウンドの可塑度変化が小さく、かつ、圧縮永久歪が小さいシリコーンゴム硬化物を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0032】
以下、詳細に説明する。
【0033】
(ミラブル型シリコーンゴム組成物)
まず、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物について説明する。
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、
(A)下記(A-1)、(A-2)、(A-3)のヒドロシリル化反応物であって、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量が100,000~1,000,000であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)比表面積が50m2/g以上である補強性シリカ:5~100質量部、
(C)有機過酸化物硬化剤:有効量
を含むものである。
【0034】
[(A)成分]
本発明において、(A)成分は、ミラブル型シリコーンゴム組成物における主剤(ベースポリマー)であり、下記(A-1)~(A-3)のヒドロシリル化反応物であって、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量が100,000~1,000,000であるオルガノポリシロキサンである。
【0035】
[(A-1)ノルボルネン含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
(A-1)は、下記式(1)で表される分子鎖両末端にヒドロシリル基を有し、かつ、重合度20以下の低分子シロキサンの含有量が5,000ppm未満であるノルボルネン含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0036】
【化7】
(式(1)中、R
1は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基である。R
2は互いに独立に、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を示し、mは2~10の整数、nは0~10の整数を表す。)
【0037】
式(1)において、R1は、互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。
R1において、炭素数1~10のアルキル基としては、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基等が挙げられる。なお、水素原子の一部をフッ素原子などのハロゲン原子に置換したハロゲン化アルキル基、特にはフルオロアルキル基を用いてもよい。例としてはトリフルオロプロピル基、ノナフルオロヘキシル基などが挙げられる。
炭素数6~10のアリール基の具体例としては、フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R1としては、直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0038】
式(1)において、R2は互いに独立に、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を示す。
R2において、炭素数1~10のアルキル基としては、R1における炭素数1~10のアルキル基と同じく上記の通りのものを挙げられるが、好ましくは水素原子である。
【0039】
式(1)において、mは2~10の整数であり、好ましくは2である。nは0~10の整数であり、好ましくは0~5、更に好ましくは0~3である。
【0040】
式(1)で表されるノルボルネン構造含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンの好ましい例としては、上記R1のうち、末端のケイ素原子に結合するR1がメチル基であり、R2が水素原子である。例えば、下記式(a-1)~(a-4)で表されるものを挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
【化8】
なお、(A-1)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
式(1)で示されるノルボルネン構造含有オルガノハイドロジェンポリシロキサンの製造方法については、特許文献6に開示された合成法を用いることができる。
【0042】
[(A-2)分子鎖両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサン]
(A-2)は重合度20以下の低分子シロキサンの含有量が5,000ppm未満である下記式(2)で表される分子鎖両末端にビニル基を有するオルガノポリシロキサンである。
【0043】
【化9】
(式(2)中、R
3は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基であり、xは2~1,000の整数である。)
【0044】
R3で表される炭素数1~10のアルキル基としては、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基等が挙げられる。なお、水素原子の一部をフッ素原子などのハロゲン原子に置換したハロゲン化アルキル基、特にはフルオロアルキル基を用いてもよい。例としてはトリフルオロプロピル基、ノナフルオロヘキシル基などが挙げられる。
炭素数6~10のアリール基の具体例としては、フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R3としては、直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0045】
(A-2)成分の重合度xは2~1,000、好ましくは10~800である。重合度が1,000より大きいと、重合度20以下の低分子シロキサンを除去するのが困難である。
なお、(A-2)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0046】
[(A-3)分子鎖両末端にヒドロシリル基をもったオルガノハイドロジェポリンシロキサン]
(A-3)は、下記式(3)で表される分子鎖両末端にヒドロシリル基を有し、かつ、重合度20以下の低分子シロキサンの含有量が5,000ppm未満であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0047】
【化10】
(式(3)中、R
4は互いに独立に、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基であり、yは0~100の整数である。)
【0048】
R4で表される炭素数1~10のアルキル基としては、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基等が挙げられる。
炭素数6~10のアリール基の具体例としては、フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R4としては、直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0049】
なお、(A-3)成分は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0050】
(重量平均分子量)
本明細書中で、重量平均分子量は、下記に示す条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質として測定した重量平均分子量を指すものとする。
【0051】
[測定条件]
展開溶媒:トルエン
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-H
TSKgel SuperH5000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL(濃度0.5質量%のトルエン溶液)
【0052】
(低分子シロキサンの含有量)
上記(A-1)、(A-2)、(A-3)のオルガノポリシロキサンは、それぞれ重合度20以下の低分子シロキサンの含有量(2種以上の低分子シロキサンを含有する場合はそれらの総含有量)が5,000ppm未満である。
前記含有量は、好ましくは、3,000ppm以下であり、より好ましくは1,000ppm以下である(質量換算)。
前記低分子シロキサンの含有量が5,000ppm以上であると、これを含む硬化物において接点障害が起こりやすくなったり、環境問題を生じたりするため好ましくない。
なお、本発明において、重合度20以下の低分子シロキサンの含有量は、下記に示す条件でガスクロマトグラフィーによって、n-テトラデカンを内部標準として測定したものである。
【0053】
[測定条件]
装置:島津製作所製ガスクロマトグラフ Nexis GC-2030
キャリアガス:ヘリウム
流量:0.6mL/min
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
検出器温度:320℃
カラム:DB-5MS(内径0.53mmφ×長さ30m、充填材:シリカ)
(アジレント・テクノロジー社製)
カラム温度:50→280℃(昇温速度:10℃/min)
試料注入量:1.0μL
内部標準:n-テトラデカン
【0054】
式(1)で表される分子鎖両末端にヒドロシリル基を有するノルボルネン含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン、式(2)で表される分子鎖両末端にビニルシロキシ基を有するオルガノポリシロキサン、式(3)で表される分子鎖両末端にヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、それぞれ、重合度20以下の低分子シロキサン含有量が5,000ppm以上である場合、従来公知の方法により低分子シロキサンの含有量を5,000ppm未満に低減してから、本発明で(A-1)、(A-2)、(A-3)成分として用いる。
オルガノポリシロキサンから重合度20以下の低分子シロキサンを除去する方法は種々知られており、加熱蒸留法、減圧蒸留法、薄膜蒸留法などが挙げられる。
効率よく低分子シロキサンを除去するためには、減圧下で高温の方が好ましいが、温度が高すぎると、オルガノポリシロキサンがクラッキングを起こす恐れが発生するため、100~300℃で低分子シロキサンを除去することが好ましい。
【0055】
(A)成分の(A-1)と、(A-2)、(A-3)とのヒドロシリル化反応物は、(A-1)と、(A-2)、(A-3)成分とを混合し、ヒドロシリル化触媒の存在下で加熱することによって得られるものである。混合は、(A-1)と、(A-2)、(A-3)とが均一に混ざるように行えばよく、加熱は温度30~150℃、好ましくは40~100℃で行えばよい。
その際、ノルボルネンの内部オレフィン部はビニルシロキシ基比較で反応が遅いため、得られた(A)成分のオルガノポリシロキサンの側鎖に残存することになる。
ヒドロシリル化触媒としては、白金族金属系触媒が挙げられ、白金族金属の単体とその化合物があり、これには従来、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の触媒として公知のものが使用できる。
例えば、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体に吸着させた粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水塩のアルコール溶液等の白金触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられるが、白金又は白金化合物(白金触媒)が好ましい。
【0056】
(A-1)及び(A-3)成分の合計添加量は、(A-2)成分のビニルシロキシ基に対し、(A-1)及び(A-3)成分のヒドロシリル基が0.5~3.0のモル比となる量である。
(A-1)及び(A-3)成分のヒドロシリル基の合計量が(A-2)成分のビニルシロキシ基1モルに対して0.5モル以上であると、ヒドロシリル化が十分であり、得られたオルガノポリシロキサンの分子量が小さくならず、ミラブル型シリコーンゴムを得ることができる。
また、(A-1)及び(A-3)成分のヒドロシリル基の合計量が(A-2)成分のビニルシロキシ基1モルに対して3.0モル以下であれば、未反応の(A-1)、(A-3)成分を加熱して除去する必要もなく、経済的であり、得られたシロキサンポリマーの末端や系内にヒドロシリル基が残ることもない。
【0057】
(A)成分中のノルボルネン基は、(A)成分中のケイ素原子に対して0.02~3.0モル%である。
ノルボルネン基が0.02モル%以上であれば、本発明の目的である良好な圧縮永久歪が得られる。
また、ノルボルネン基が3.0モル%以下であれば、硬度が上昇し過ぎることもなく、引張強度、切断時伸びなどが低下することもない。
(A-1)成分と(A-2)、(A-3)成分をヒドロシリル化触媒下、加熱混合して得られた(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種を単独で用いても、分子量(重合度)や分子構造の異なる2種以上の混合物であってもよい。
【0058】
(A)成分の(A-1)、(A-2)、(A-3)のヒドロシリル化反応物中、反応物中の全ケイ素原子に対する(A-1)成分由来のケイ素原子に結合した側鎖不飽和基量(mol%)が0.01~0.5mol%のものであることが好ましい。
【0059】
[(B)成分]
(B)成分の補強性シリカは、得られるシリコーンゴム組成物に対して優れた機械的特性を付与する充填材として作用する。
該補強性シリカは、沈降シリカ(湿式シリカ)でもヒュームドシリカ(乾式シリカ)でもよく、表面に多数のシラノール基が存在しているものである。
本発明において(B)補強性シリカは、BET法による比表面積50m2/g以上を有することが必要であり、好ましくは100~400m2/gである。
比表面積が50m2/g未満であると、(B)成分により付与されるシリコーンゴムの補強効果が不十分となる。
(B)成分の補強性シリカは、表面が未処理のまま使用しても、必要に応じて、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の有機ケイ素化合物で表面処理されたものを用いてもよい。
補強性シリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(B)補強性シリカの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して5~100質量部であり、好ましくは10~80質量部、より好ましくは20~70質量部である。
(B)成分の配合量が上記上限値超又は上記下限値未満では、得られるシリコーンゴム組成物の加工性が低下するだけでなく、該シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴム硬化物の引張り強度や引き裂き強度等の機械的特性が不十分なものとなる。
【0061】
[(C)成分]
(C)成分としては有機過酸化物硬化剤を使用する。
有機過酸化物硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p-メチルベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、1,6-ヘキサンジオール-ビス-t-ブチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0062】
有機過酸化物硬化剤の添加量は、(A)成分100質量部に対して有効量であり、具体的には、0.1~10質量部が好ましく、特に0.2~5質量部がより好ましい。
配合量が0.1質量部以上であれば硬化が不十分となることがなく、10質量部以下であれば有機過酸化物硬化剤の分解残渣によりシリコーンゴム硬化物が黄変することがない。
【0063】
[その他の成分]
本発明のシリコーンゴム組成物には、上記成分に加え、必要に応じて、粉砕石英、結晶性シリカ、珪藻土、炭酸カルシウム等の充填材、着色剤、引き裂き強度向上剤、受酸剤、アルミナや窒化硼素等の熱伝導率向上剤、離型剤、充填材用分散剤として各種アルコキシシラン、特にフェニル基含有アルコキシシラン及びその加水分解物、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシランなどの熱硬化型のシリコーンゴム組成物における公知の充填材や添加剤を添加することは任意である。
【0064】
<硬化条件>
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、公知の硬化方法により公知の硬化条件下で硬化させることができる。
具体的には、通常、25~200℃、好ましくは80~160℃で加熱することにより、組成物を硬化させることができる。加熱時間は、0.5分間~5時間程度、特に1分間~3時間程度でよい。
以上に説明した本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物は、(A)成分のオルガノポリシロキサンと(B)成分の処理シリカを組み合わせて使用することで、低分子シロキサン成分が少なく、硬化物の圧縮永久歪が小さいミラブル型シリコーンゴム組成物が得られる。
【0065】
[シリコーンゴム硬化物]
本発明のシリコーンゴム硬化物は、本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物の硬化物である。
そのため、本発明のシリコーンゴム硬化物は、低分子シロキサン成分の量が少なく、圧縮永久歪が小さい硬化物である。
例えば、本発明のシリコーンゴム硬化物は、重合度20以下の低分子シロキサン成分の含有量の合計が5,000ppm未満であるものとすることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0067】
<ポリマーの合成>
以下のようにして、ポリマー1~5を合成した。
【0068】
[合成例1:ポリマー1]
下記式(A-1-1)で表されるノルボルネン含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン(低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20:100ppm)2.0gと下記式(A-3-1)で表される両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基のジメチルポリシロキサン(低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20:3,000ppm)17gと両末端ビニルシロキシ基のジメチルポリシロキサン(低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20:300ppm)(A-2-1)1,000gを、セパラブルフラスコに仕込み、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体のジメチルシロキサン溶液(Pt濃度0.5質量%)0.5gを添加し室温で1時間攪拌した後、温度を100℃に上昇させ、攪拌しながら1時間かけてヒドロシリル化を行った。
得られたポリマー1は、重量平均分子量が400,000であり、低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20は400ppmだった。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
[合成例2:ポリマー2]
合成例1において(A-3-1)で表される両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基に代えて、(A-3-2)で示される両末端ジメチルヒドロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサンを1.8g添加し、表1のような添加組成でヒドロシリル化を行った。
こうして得られたポリマー2の重量平均分子量が300,000であり、低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20は350ppmだった。
【0073】
【0074】
[合成例3:ポリマー3]
合成例1において式(A-1-1)で表されるノルボルネン含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン(低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20:100ppm)を4.0gにしたほかは同様にして表1のような添加組成でヒドロシリル化を行った。
こうして得られたポリマー3の重量平均分子量が400,000であり、低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20は420ppmだった。
【0075】
[合成例4:ポリマー4]
合成例1において式(A-1-1)で表されるノルボルネン含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン(低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20:100ppm)を0gとし、(A-3-1)で表される両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基のジメチルポリシロキサン(低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20:3,000ppm)を30gとして表1のような添加組成でヒドロシリル化を行った。
こうして得られたポリマー4の重量平均分子量が500,000であり、低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20は440ppmだった。
【0076】
[合成例5:ポリマー5]
合成例1において式(A-1-1)で表されるノルボルネン含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン(低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20:100ppm)を30.0gとし、(A-3-1)で表される両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基のジメチルポリシロキサン(低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20:3,000ppm)を0g、両末端ビニルシロキシ基のジメチルポリシロキサンとして下記式(A-2-2)で示される平均重合度オイル(平均重合度180、低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20:200ppm)を1,000gとしてセパラブルフラスコにてヒドロシリル化を行った。
得られたポリマー5は重量平均分子量が200,000であり、低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20は340ppmだった。
【0077】
【0078】
上記合成例1~5で使用した原材料である(A-1-1)、(A-2-1)、(A-2-2)、(A-3-1)、(A-3-2)、後出の(A-3-3)と、得られたポリマー1~5に含まれる重合度20以下の低分子シロキサン成分の含有量は、下記条件で求めた。
なお、重合度2以下の低分子シロキサンは検出されなかったため、以下、下記条件で求めた重合度20以下の低分子シロキサン成分の含有量をΣD3~20と表記する場合がある。
【0079】
[測定条件]
装置:島津製作所製ガスクロマトグラフ Nexis GC-2030
キャリアガス:ヘリウム
流量:0.6mL/min
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
検出器温度:320℃
カラム:DB-5MS(内径0.53mmφ×長さ30m、充填材:シリカ)
(アジレント・テクノロジー社製)
カラム温度:50→280℃(昇温速度:10℃/min)
試料注入量:1.0μL
内部標準:n-テトラデカン
【0080】
<ベースコンパウンドの合成>
以下のようにして、ベースコンパウンド1~5を調製した。
【0081】
合成例1~5で合成したポリマー1~5を100質量部にBET法比表面積が200m2/gのヒュームドシリカ(アエロジル200、日本アエロジル株式会社製)40質量部、下記式(A-3-3)で示される両末端シラノール基を有し、平均重合度4であり、25℃における粘度が13mm2/sであるジメチルポリシロキサン(低分子シロキサン成分含有量ΣD3~20:1,000ppm)10質量部を添加した後、ニーダーにて混合し、170℃/2時間熱処理した後、ベースコンパウンド1~5を調製した。
【0082】
【0083】
<シリコーンゴム組成物の製造>
以下のようにして、シリコーンゴム組成物1~5を製造した。
なお、シリコーンゴム組成物1~3は実施例1~3のシリコーンゴム組成物となり、シリコーンゴム組成物4~5は比較例1~2のシリコーンゴム組成物となる。
【0084】
ベースコンパウンド1~5それぞれ100質量部に対して、硬化剤として2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン0.6質量部を二本ロールにて添加し、均一に混合して生ゴム状のシリコーンゴム組成物1~5を製造した。
【0085】
<シリコーンゴム硬化物(試験用シート)の製造>
以下のようにして、シリコーンゴム硬化物(試験用シート)1~5を製造した。
なお、シリコーンゴム硬化物(試験用シート)1~3は実施例1~3のシリコーンゴム硬化物となり、シリコーンゴム硬化物(試験用シート)4~5は比較例1~2のシリコーンゴム硬化物となる。
【0086】
シリコーンゴム組成物1~5をそれぞれ、165℃、70kgf/cm2の条件で10分間プレスキュアし、2mm厚の試験用シート1~5を製造した。
【0087】
<物性測定>
シリコーンゴム硬化物(試験用シート)1~5のゴム物性及び圧縮永久歪を以下のようにして測定した。
【0088】
<ゴム物性測定>
得られたシリコーンゴム硬化物を、JIS K 6249:2003に準じて、各種物性(硬さ(デュロメーターA)、引張強さ、切断時伸び)を測定した。
【0089】
<圧縮永久歪の測定>
JIS K 6262:2013に準拠して作製した圧縮永久歪測定用試験片を用いて、JIS K 6262:2013に準じた方法で、圧縮永久歪を測定した。
【0090】
表1、2に実験条件と実験結果をまとめた。
【0091】
【0092】
【0093】
表1~2に示した結果から以下のことがわかった。
(A-1-1)、(A-2-1)及び(A-3-1)又は(A-3-2)を所定量含む実施例1~3のシリコーンゴム硬化物は、(A-1-1)を含まない比較例1、(A-3-1)を含まない比較例2のシリコーンゴム硬化物に比べて、圧縮永久歪、引張強さ、切断時伸びで優れた値を示した。
有機過酸化物硬化剤を配合した実施例1~3、比較例1のシリコーンゴム硬化物は、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基のジメチルポリシロキサンと両末端ビニルシロキシ基のジメチルポリシロキサンをヒドロシリル化したポリマー中のノルボルネン由来の不飽和基が多いほど圧縮永久歪が良好となった。しかしながら、比較例2のシリコーンゴム硬化物は、ケイ素原子に結合したノルボルネン基由来の不飽和基が0.5mol%を超えると引張強さや切断時伸びが悪化した。
【0094】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のミラブル型シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴム硬化物は、車載用部材など、低分子シロキサンがなるべく少なく、かつ良好な圧縮永久歪を求められる用途に最適である。