IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-基板処理方法及び基板処理システム 図1
  • 特許-基板処理方法及び基板処理システム 図2
  • 特許-基板処理方法及び基板処理システム 図3
  • 特許-基板処理方法及び基板処理システム 図4
  • 特許-基板処理方法及び基板処理システム 図5
  • 特許-基板処理方法及び基板処理システム 図6
  • 特許-基板処理方法及び基板処理システム 図7
  • 特許-基板処理方法及び基板処理システム 図8
  • 特許-基板処理方法及び基板処理システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-06-27
(45)【発行日】2025-07-07
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20250630BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20250630BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20250630BHJP
【FI】
H01L21/306 B
H01L21/306 R
H01L21/308 B
H01L21/304 631
H01L21/304 622Q
H01L21/304 622S
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023543791
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2022030135
(87)【国際公開番号】W WO2023026828
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2021138875
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】烏野 崇
(72)【発明者】
【氏名】岡村 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】松木 勝文
(72)【発明者】
【氏名】坂口 慶介
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-117032(JP,A)
【文献】特開2016-162922(JP,A)
【文献】特開2019-061988(JP,A)
【文献】特開2020-047857(JP,A)
【文献】特開2020-167308(JP,A)
【文献】特開2018-147908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/308
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理方法であって、
フッ酸及びリン酸を含むエッチング液を前記基板の表面に供給して、当該表面をエッチングすることと、
エッチング後の前記エッチング液を回収することと、
エッチング後の前記基板の厚み分布を測定することと、
測定された前記厚み分布に基づいて、エッチング後に回収した前記エッチング液に対し、少なくともフッ酸又はリン酸を選択して追加して、当該エッチング液の組成比率を調整することと、を有する、基板処理方法。
【請求項2】
前記厚み分布において、前記基板の厚みが全体的に大きい場合、前記エッチング液に対してフッ酸を追加する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記厚み分布において、前記基板の厚みが全体的に大きい場合、前記エッチング液に対して硝酸を更に追加する、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記厚み分布において、前記基板の中心部の厚みが外周部の厚みに比べて大きい場合、前記エッチング液に対してリン酸を追加する、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記基板の表面をエッチングする前に、当該表面を研削する、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記厚み分布から、基板面内におけるエッチング量の平均値を算出し、
算出された前記平均値が設定下限値に達した際、前記エッチング液に対してフッ酸及び硝酸を追加する、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記厚み分布から、基板面内におけるエッチング量の最大値と最小値の差分を算出し、
算出された前記差分が設定上限値に達した際、前記エッチング液に対してリン酸を追加する、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
基板を処理する基板処理システムであって、
前記基板の表面をエッチングするエッチング装置と、
前記基板の厚み分布を測定する厚み測定装置と、
制御装置と、を有し、
前記エッチング装置は、
前記基板の表面にエッチング液を供給するエッチング液供給部と、
前記エッチング液を回収して、当該エッチング液の組成比率を調整するエッチング液リサイクル部と、を有し、
前記エッチング液は、フッ酸及びリン酸を含み、
前記制御装置は、
前記エッチング液を基板の表面に供給して、当該表面をエッチングする制御を行うことと、
エッチング後の前記エッチング液を回収する制御を行うことと、
前記測定装置において、エッチング後の前記基板の厚み分布を測定させる制御を行うことと、
測定された前記厚み分布に基づいて、エッチング後に回収した前記エッチング液に対し、少なくともフッ酸又はリン酸を選択して追加して、当該エッチング液の組成比率を調整する制御を行うことと、を実行する、基板処理システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記厚み分布において、前記基板の厚みが全体的に大きい場合、前記エッチング液に対してフッ酸を追加する制御を行う、請求項8に記載の基板処理システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記厚み分布において、前記基板の厚みが全体的に大きい場合、前記エッチング液に対して硝酸を更に追加する制御を行う、請求項9に記載の基板処理システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記厚み分布において、前記基板の中心部の厚みが外周部の厚みに比べて大きい場合、前記エッチング液に対してリン酸を追加する制御を行う、請求項8~10のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【請求項12】
前記基板の表面を研削する加工装置を有し、
前記制御装置は、前記基板の表面をエッチングする前に、当該表面を研削する制御を行う、請求項8~10のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【請求項13】
前記制御装置は、
前記厚み分布から、基板面内におけるエッチング量の平均値を算出し、
算出された前記平均値が設定下限値に達した際、前記エッチング液に対してフッ酸及び硝酸を追加する、請求項8~10のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【請求項14】
前記制御装置は、
前記厚み分布から、基板面内におけるエッチング量の最大値と最小値の差分を算出し、
算出された前記差分が設定上限値に達した際、前記エッチング液に対してリン酸を追加する、請求項8~10のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体インゴットをスライスして得られたウェハの少なくともおもて面を平坦化する工程と、平坦化されたウェハのおもて面をスピンエッチングによりエッチングする工程と、を含む半導体ウェハの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-135464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、エッチング液を再利用しながら複数の基板をエッチングする場合において、エッチング後の基板表面形状を適切に制御する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板を処理する基板処理方法であって、フッ酸及びリン酸を含むエッチング液を前記基板の表面に供給して、当該表面をエッチングすることと、エッチング後の前記エッチング液を回収することと、エッチング後の前記基板の厚み分布を測定することと、測定された前記厚み分布に基づいて、エッチング後に回収した前記エッチング液に対し、少なくともフッ酸又はリン酸を選択して追加して、当該エッチング液の組成比率を調整することと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、エッチング液を再利用しながら複数の基板をエッチングする場合において、エッチング後の基板表面形状を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかるウェハ処理システムの構成の概略を示す平面図である。
図2】エッチング装置の構成の概略を示す側面図である。
図3】ウェハ処理の主な工程を示すフロー図である。
図4】エッチング処理の主な工程を示す説明図である。
図5】再利用するエッチング液に成分を追加しない場合のエッチング量の変化を説明するグラフである。
図6】再利用するエッチング液にフッ酸を追加した場合のエッチング量の変化を説明するグラフである。
図7】再利用するエッチング液にフッ酸と硝酸を追加した場合のエッチング量の変化を説明するグラフである。
図8】再利用するエッチング液にフッ酸、硝酸及びリン酸を追加した場合のエッチング量の変化を説明するグラフである。
図9】エッチング量平均値及びエッチング量レンジと、エッチング液に追加する成分との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程では、単結晶シリコンインゴットからワイヤーソー等により切り出して得られた円盤状のシリコンウェハ(以下、単に「ウェハ」という。)の切断面を平坦化し、更に平滑化してウェハの厚みを均一化することが行われている。切断面の平坦化は、例えば平面研削又はラッピングにより行われる。切断面の平滑化は、例えばウェハを回転させながら当該ウェハの切断面上方からエッチング液を供給するスピンエッチングにより行われる。
【0009】
上述した特許文献1には、半導体インゴットをスライスして得られたウェハの少なくともおもて面を平面研削又はラッピングにより平坦化した後、当該おもて面をスピンエッチングによりエッチングすることが開示されている。また、特許文献1に開示のスピンエッチング工程では、エッチング液として混酸が用いられる。
【0010】
ここで、エッチングではエッチング液の消費量を低減する観点から、一のウェハに使用したエッチング液を回収して、他のウェハに再利用することが望ましい。このように使用済みのエッチング液を回収して再利用する場合、ウェハ(シリコン)とエッチング液(混酸)の反応によって、エッチング液の組成比率が変わる。このため、エッチング量とエッチングプロファイルが変化し、その結果、エッチングのプロセス性能が不安定となる。
【0011】
しかしながら、例えば特許文献1に記載のエッチング方法では、このようにエッチング液を再利用することは想定されておらず、上述した課題が想定されていない。したがって、従来のエッチング処理には改善の余地がある。
【0012】
本開示にかかる技術は、エッチング液を再利用しながら複数の基板をエッチングする場合において、エッチング後の基板表面形状を適切に制御する。以下、本実施形態にかかる基板処理システムとしてのウェハ処理システム、及び基板処理方法としてのウェハ処理方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
本実施形態にかかるウェハ処理システム1では、インゴットから切り出して得られた基板としてのウェハWに対し、厚みの面内均一性を向上させるための処理を行う。以下、ウェハWの切り出し面を第1の面Waと第2の面Wbという。第1の面Waは第2の面Wbの反対側の面である。また、第1の面Waと第2の面Wbを総称してウェハWの表面という場合がある。
【0014】
図1に示すようにウェハ処理システム1は、搬入出ステーション10と処理ステーション11を一体に接続した構成を有している。搬入出ステーション10は、例えば外部との間で複数のウェハWを収容可能なカセットCが搬入出される。処理ステーション11は、ウェハWに対して所望の処理を施す各種処理装置を備えている。
【0015】
搬入出ステーション10には、カセット載置台20が設けられている。図示の例では、カセット載置台20は、複数、例えば2つのカセットCをY軸方向に一列に載置可能に構成されている。
【0016】
処理ステーション11には、例えば3つの処理ブロックG1~G3が設けられている。第1の処理ブロックG1、第2の処理ブロックG2及び第3の処理ブロックG3は、X軸負方向側(搬入出ステーション10側)から正方向側にこの順で並べて配置されている。
【0017】
第1の処理ブロックG1には、反転装置30、31、厚み測定装置40、液処理装置としてのエッチング装置50、51、及びウェハ搬送装置60が設けられている。反転装置30とエッチング装置50はX軸負方向側から正方向側にこの順に並べて配置されている。反転装置30、31及び厚み測定装置40は、例えば鉛直方向に下段からこの順で積層して設けられている。エッチング装置50、51は、例えば鉛直方向に下段からこの順で積層して設けられている。ウェハ搬送装置60は、エッチング装置50、51のY軸正方向側に配置されている。なお、反転装置30、31、厚み測定装置40、エッチング装置50、51及びウェハ搬送装置60の数や配置はこれに限定されない。
【0018】
反転装置30、31は、ウェハWの第1の面Waと第2の面Wbを上下方向に反転させる。反転装置30、31の構成は任意である。
【0019】
厚み測定装置40は、一例において測定部(図示せず)と算出部(図示せず)を備える。測定部は、エッチング後のウェハWの厚みを複数点で測定するセンサを備える。算出部は、測定部による測定結果(ウェハWの厚み)からウェハWの厚み分布を取得する。なお、算出部は、更にウェハWの平坦度(TTV:Total Thickness Variation)を算出してもよい。また、かかるウェハWの厚み分布及び平坦度の算出は、当該算出部に代えて、後述の制御装置150で行われてもよい。換言すれば、後述の制御装置150内に算出部(図示せず)が設けられてもよい。なお、厚み測定装置40の構成はこれに限定されず、任意に構成できる。
【0020】
エッチング装置50、51は、後述の加工装置110による研削後の第1の面Wa又は研削後の第2の面Wbのシリコン(Si)をエッチングする。また、エッチング装置50、51は、エッチング後の第1の面Wa又は第2の面Wbを洗浄して、当該第1の面Wa又は第2の面Wbに付着した金属を除去する。なお、エッチング装置50、51の詳細な構成は後述する。
【0021】
ウェハ搬送装置60は、ウェハWを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム61を有している。各搬送アーム61は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸回りに移動可能に構成されている。そして、ウェハ搬送装置60は、カセット載置台20のカセットC、反転装置30、31、厚み測定装置40、エッチング装置50、51、後述するバッファ装置70、後述する洗浄装置80、及び後述する反転装置90に対して、ウェハWを搬送可能に構成されている。
【0022】
第2の処理ブロックG2には、バッファ装置70、洗浄装置80、反転装置90、及びウェハ搬送装置100が設けられている。バッファ装置70、洗浄装置80及び反転装置90は、例えば鉛直方向に下段からこの順で積層して設けられている。ウェハ搬送装置100は、バッファ装置70、洗浄装置80及び反転装置90のY軸負方向側に配置されている。なお、バッファ装置70、洗浄装置80、反転装置90、及びウェハ搬送装置100の数や配置はこれに限定されない。
【0023】
バッファ装置70は、第1の処理ブロックG1から第2の処理ブロックG2に受け渡される処理前のウェハWを一時的に保持する。バッファ装置70の構成は任意である。
【0024】
洗浄装置80は、後述の加工装置110による研削後の第1の面Wa又は第2の面Wbを洗浄する。例えば第1の面Wa又は第2の面Wbにブラシを当接させて、当該第1の面Wa又は第2の面Wbをスクラブ洗浄する。なお、第1の面Wa又は第2の面Wbの洗浄には、加圧された洗浄液を用いてもよい。また、洗浄装置80は、ウェハWを洗浄する際、第1の面Waと第2の面Wbを同時に洗浄可能に構成されていてもよい。
【0025】
反転装置90は、反転装置30、31と同様に、ウェハWの第1の面Waと第2の面Wbを上下方向に反転させる。反転装置90の構成は任意である。
【0026】
ウェハ搬送装置100は、ウェハWを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム101を有している。各搬送アーム101は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸回りに移動可能に構成されている。そして、ウェハ搬送装置100は、エッチング装置50、51、バッファ装置70、洗浄装置80、反転装置90、及び後述する加工装置110に対して、ウェハWを搬送可能に構成されている。
【0027】
第3の処理ブロックG3には、加工装置110が設けられている。なお、加工装置110の数や配置はこれに限定されない。
【0028】
加工装置110は、回転テーブル111を有している。回転テーブル111は、回転機構(図示せず)によって、鉛直な回転中心線112を中心に回転可能に構成されている。回転テーブル111上には、ウェハWを吸着保持する、チャック113が4つ設けられている。4つのチャック113のうち、2つの第1のチャック113aは第1の面Waの研削に用いられるチャックであり、第2の面Wbを吸着保持する。これら2つの第1のチャック113aは、回転中心線112を挟んで点対称の位置に配置されている。残りの2つの第2のチャック113bは第2の面Wbの研削に用いられるチャックであり、第1の面Waを吸着保持する。これら2つの第2のチャック113bも、回転中心線112を挟んで点対称の位置に配置されている。すなわち、第1のチャック113aと第2のチャック113bは、周方向に交互に配置されている。なお、チャック113には、例えばポーラスチャックが用いられる。また、チャック113のポーラスチャックは、例えばアルミナ等の金属を含む。
【0029】
4つのチャック113は、回転テーブル111が回転することにより、受渡位置A1~A2及び加工位置B1~B2に移動可能になっている。また、4つのチャック113はそれぞれ、回転機構(図示せず)によって鉛直軸回りに回転可能に構成されている。
【0030】
第1の受渡位置A1は回転テーブル111のX軸負方向側且つY軸正方向側の位置であり、第1の面Waを研削する際に第1のチャック113aに対するウェハWの受け渡しが行われる。第2の受渡位置A2は回転テーブル111のX軸負方向側且つY軸負方向側の位置であり、第2の面Wbを研削する際に第2のチャック113bに対するウェハWの受け渡しが行われる。
【0031】
受渡位置A1、A2には、研削後のウェハWの厚みを測定する厚み測定部120が設けられている。厚み測定部120は、一例において測定部(図示せず)と算出部(図示せず)を備える。測定部は、ウェハWの厚みを複数点で測定する非接触式のセンサを備える。算出部122は、測定部121による測定結果(ウェハWの厚み)からウェハWの厚み分布を取得し、更にウェハWの平坦度を算出する。なお、かかるウェハWの厚み分布及び平坦度の算出は、当該算出部122に代えて、後述の制御装置150で行われてもよい。換言すれば、後述の制御装置150内に算出部(図示せず)が設けられてもよい。また、厚み測定部120は、加工位置B1~B2に設けられていてもよい。
【0032】
第1の加工位置B1は回転テーブル111のX軸正方向側且つY軸負方向側の位置であり、研削部としての第1の研削ユニット130が配置される。第2の加工位置B2は回転テーブル111のX軸正方向側且つY軸正方向側の位置であり、研削部としての第2の研削ユニット140が配置される。
【0033】
第1の研削ユニット130は、第1のチャック113aに保持されたウェハWの第1の面Waを研削する。第1の研削ユニット130は、環状形状で回転可能な研削砥石(図示せず)を備えた第1の研削部131を有している。また、第1の研削部131は、支柱132に沿って鉛直方向に移動可能に構成されている。
【0034】
第2の研削ユニット140は、第2のチャック113bに保持されたウェハWの第2の面Wbを研削する。第2の研削ユニット140は、第1の研削ユニット130と同様の構成を有している。すなわち、第2の研削ユニット140は、第2の研削部141及び支柱142を有している。
【0035】
以上のウェハ処理システム1には、制御装置150が設けられている。制御装置150は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1におけるウェハWの処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置150にインストールされたものであってもよい。また、上記記憶媒体Hは、一時的なものであっても非一時的なものであってもよい。
【0036】
次に、上述したエッチング装置50、51の詳細な構成について説明する。以下の説明においては、エッチング装置50の構成について説明するが、エッチング装置51の構成も同様である。
【0037】
図2に示すようにエッチング装置50は、ウェハWを保持する、基板保持部としてのウェハ保持部200を有している。ウェハ保持部200は、ウェハWの外縁部を複数点、本実施形態においては3点で保持する。なお、ウェハ保持部200の構成は図示の例には限定されず、例えばウェハ保持部200は、ウェハWを下方から吸着保持するチャック(図示せず)を備えていてもよい。ウェハ保持部200は、回転機構201によって鉛直軸周りに回転可能に構成され、これによりウェハ保持部200上に保持されたウェハWを回転可能に構成されている。
【0038】
ウェハ保持部200の周囲には、内側カップ210と外側カップ220が設けられている。内側カップ210は、ウェハ保持部200を取り囲むように設けられ、後述するようにエッチング液を回収する。内側カップ210には、回収したエッチング液を排出する排液ライン211が接続されている。また、内側カップ210は、昇降機構212によって昇降可能に構成されている。
【0039】
外側カップ220は、内側カップ210の外側においてウェハ保持部200を取り囲むように設けられ、後述するようにリンス液又は洗浄液を回収する。外側カップ220には、回収したリンス液又は洗浄液を排出する排液ライン221が接続されている。なお、本実施形態において外側カップ220は昇降しないが、昇降機構(図示せず)によって昇降可能に構成されていてもよい。
【0040】
ウェハ保持部200の上方にはエッチング液供給部としてのエッチング液ノズル230、リンス液ノズル231、及び洗浄液供給部としての洗浄液ノズル232が設けられている。エッチング液ノズル230とリンス液ノズル231は、一体に設けられ、移動機構233によって水平方向及び鉛直方向に移動可能に構成されている。また、洗浄液ノズル232は、移動機構234によって水平方向及び鉛直方向に移動可能に構成されている。なお、これら液ノズルを移動させる移動機構の数はこれに限定されない。例えば、エッチング液ノズル230、リンス液ノズル231、及び洗浄液ノズル232が一体に設けられ、移動機構は1つであってもよい。また、エッチング液ノズル230、リンス液ノズル231、及び洗浄液ノズル232がそれぞれ別体に設けられ、移動機構は3つであってもよい。
【0041】
エッチング液ノズル230は、ウェハ保持部200に保持されたウェハWの第1の面Wa又は第2の面Wbにエッチング液を供給し、当該の第1の面Wa又は第2の面Wbをエッチングする。エッチング液は、フッ酸(HF)、硝酸(HNO)、及びリン酸(HPO)を含む。一例においてエッチング液Eは、フッ酸、硝酸、リン酸、及び水を含有する水溶液である。
【0042】
本実施形態においてエッチング液は、複数のウェハWのエッチングに再利用される。すなわち、一のウェハWに使用されたエッチング液は回収され、次のウェハWのエッチングに再利用される。このため、エッチング装置50にはエッチング液リサイクル部240が設けられている。
【0043】
エッチング液リサイクル部240には、上記排液ライン211が接続されている。また、エッチング液リサイクル部240には給液ライン241が接続され、給液ライン241はエッチング液ノズル230に接続されている。給液ライン241には、エッチング液の供給を制御するバルブ242が設けられている。また、給液ライン241には、エッチング液の濃度(質量パーセント濃度)を測定する濃度計243が設けられている。濃度計243は、エッチング液に含まれる各成分、例えばフッ酸、硝酸、リン酸等の濃度を測定可能である。
【0044】
エッチング液リサイクル部240は、例えば内部にエッチング液を貯留するタンクを有している。エッチング液リサイクル部240には、フッ酸供給源244、硝酸供給源245、及びリン酸供給源246が接続されている。フッ酸供給源244、硝酸供給源245、及びリン酸供給源246はそれぞれ、内部にフッ酸、硝酸、及びリン酸を貯留し、エッチング液リサイクル部240の内部のエッチング液に当該フッ酸、硝酸、及びリン酸を供給する。フッ酸供給源244、硝酸供給源245、リン酸供給源246と、エッチング液リサイクル部240との間には、それぞれフッ酸、硝酸、リン酸の供給を制御するバルブ247、248、249が設けられている。
【0045】
かかる場合、内側カップ210で回収されたエッチング液は、排液ライン211を介してエッチング液リサイクル部240に排出される。エッチング液リサイクル部240では、フッ酸供給源244、硝酸供給源245、リン酸供給源246からフッ酸、硝酸、リン酸のいずれか又は複数をエッチング液に供給することにより、当該エッチング液の組成比率を調整する。そして、組成比率が調整されたエッチング液は、給液ライン241を介してエッチング液ノズル230に供給される。このようにエッチング液を再利用することで、エッチング液の使用量を低減してコストを低減することができる。
【0046】
リンス液ノズル231は、ウェハ保持部200に保持されたウェハWの第1の面Wa又は第2の面Wbにリンス液を供給し、当該第1の面Wa又は第2の面Wbをリンスする。リンス液ノズル231には給液ライン250が接続され、給液ライン250はリンス液供給源251に接続されている。リンス液供給源251は、内部にリンス液を貯留する。給液ライン250には、リンス液の供給を制御するバルブ252が設けられている。なお、リンス液には、例えば純水が用いられる。
【0047】
洗浄液ノズル232は、ウェハ保持部200に保持されたウェハWの第1の面Wa又は第2の面Wbに洗浄液を供給し、当該第1の面Wa又は第2の面Wbに付着した金属を除去する。洗浄液ノズル232には、2流体ノズルが用いられる。
【0048】
洗浄液ノズル232には給液ライン260が接続され、給液ライン260は洗浄液供給源261に接続されている。洗浄液供給源261は、内部に洗浄液を貯留する。給液ライン260には、洗浄液の供給を制御するバルブ262が設けられている。なお、洗浄液には、ウェハWの第1の面Wa又は第2の面Wbから金属を除去可能な液が用いられ、例えばフッ酸、フッ酸と過酸化水素が混合された液(FPM)等が用いられる。
【0049】
また、洗浄液ノズル232には給気ライン263が接続され、給気ライン263はガス供給源264に接続されている。ガス供給源264は、内部にガス、例えば不活性ガスである窒素ガスを貯留する。給気ライン263には、ガスの供給を制御するバルブ265が設けられている。
【0050】
洗浄液ノズル232では、給液ライン260からの洗浄液と給気ライン263からのガスが混合され、ウェハWの第1の面Wa又は第2の面Wbに噴射される。そして、このように洗浄液を噴射することにより、洗浄液による化学的な金属除去に加え、洗浄液の物理的な衝突力によっても金属が除去される。
【0051】
次に、以上のように構成されたウェハ処理システム1を用いて行われるウェハ処理について説明する。本実施形態では、インゴットからワイヤーソー等により切り出され、ラッピングされたウェハWに対し、厚みの面内均一性を向上させるための処理を行う。
【0052】
先ず、ウェハWを複数収納したカセットCが、搬入出ステーション10のカセット載置台20に載置される。カセットCにおいてウェハWは、第1の面Waが上側、第2の面Wbが下側を向いた状態で収納されている。次に、ウェハ搬送装置60によりカセットC内のウェハWが取り出され、バッファ装置70に搬送される。
【0053】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置100により加工装置110に搬送され、第1の受渡位置A1の第1のチャック113aに受け渡される。第1のチャック113aでは、ウェハWの第2の面Wbが吸着保持される。
【0054】
次に、回転テーブル111を回転させて、ウェハWを第1の加工位置B1に移動させる。そして、第1の研削ユニット130によって、ウェハWの第1の面Waが研削される(図3のステップS1)。
【0055】
次に、回転テーブル111を回転させて、ウェハWを第1の受渡位置A1に移動させる。第1の受渡位置A1では、洗浄部(図示せず)によって研削後のウェハWの第1の面Waを洗浄してもよい。
【0056】
また受渡位置A1においては、厚み測定部120により、第1の研削ユニット130による研削後のウェハWの厚みを測定する(図3のステップS2)。
【0057】
ここで、上述したように厚み測定部120では、研削後のウェハWの厚みを複数点で測定することで第1の面Waの研削後のウェハWの厚み分布を取得し、更にウェハWの平坦度を算出する。算出されたウェハWの厚み分布及び平坦度は例えば制御装置150に出力され、次に第1のチャック113aで保持(第1の研削ユニット130で研削)される他のウェハWの研削に用いられる。具体的には、取得されたウェハWの厚み分布及び平坦度に基づいて、第1の研削ユニット130による研削後の次のウェハWの厚み分布、平坦度を改善するように、次のウェハWの研削時の研削砥石の表面と第1のチャック113aの表面との相対的な傾きを調整する。
【0058】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置100により洗浄装置80に搬送される。洗浄装置80では、ウェハWの第1の面Waが洗浄される(図3のステップS3)。
【0059】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置100により反転装置90に搬送される。反転装置90では、ウェハWの第1の面Waと第2の面Wbを上下方向に反転させる(図3のステップS4)。すなわち、第1の面Waが下側、第2の面Wbが上側を向いた状態にウェハWが反転される。
【0060】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置100により加工装置110に搬送され、第2の受渡位置A2の第2のチャック113bに受け渡される。第2のチャック113bでは、ウェハWの第1の面Waが吸着保持される。
【0061】
次に、回転テーブル111を回転させて、ウェハWを第2の加工位置B2に移動させる。そして、第2の研削ユニット140によって、ウェハWの第2の面Wbが研削される(図3のステップS5)。
【0062】
次に、回転テーブル111を回転させて、ウェハWを第2の受渡位置A2に移動させる。第2の受渡位置A2では、洗浄部(図示せず)によって研削後のウェハWの第2の面Wbを洗浄してもよい。
【0063】
また受渡位置A2においては、厚み測定部120により、第2の研削ユニット140による研削後のウェハWの厚みを測定する(図3のステップS6)。ステップS6では、ステップS2と同様の処理が行われる。すなわち、厚み測定部120において、第2の面Wbの研削後のウェハWの厚み分布を取得し、更にウェハWの平坦度を算出する。そして、算出されたウェハWの厚み分布及び平坦度に基づいて、次のウェハWの研削時における第2の研削ユニット140の研削砥石の表面と第2のチャック113bの表面との相対的な傾きを調整する。
【0064】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置100により洗浄装置80に搬送される。洗浄装置80では、ウェハWの第2の面Wbが洗浄される(図3のステップS7)。
【0065】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置60によりエッチング装置50に搬送される。エッチング装置50では、図4(a)に示すようにウェハ保持部200にウェハWが第2の面Wbを上側に向けた状態で第1の面Waが保持される。この際、内側カップ210は上昇しており、ウェハ保持部200の周囲を囲うように配置される。続いて、エッチング液ノズル230をウェハWの中心部上方に移動させる。そして、ウェハWを回転させつつ、エッチング液ノズル230をウェハWの中心部上方と外周部上方の間で移動させながら、当該エッチング液ノズル230から第2の面Wbにエッチング液Eを供給する。そうすると、エッチング液Eは第2の面Wbの全面に供給され、当該第2の面Wbの全面がエッチングされる(図3のステップS8)。
【0066】
ステップS8における第2の面Wbのエッチング量は、例えば5μm以下である。このようにエッチング量が少ない場合、エッチングにかかる時間を短くでき、ウェハ処理のスループットを向上させることができる。また、エッチングに使用するエッチング液の使用量を低減することができる。
【0067】
また、ステップS8において使用されたエッチング液Eは、内側カップ210に回収され、排液ライン211を介してエッチング液リサイクル部240に排出される。そして、エッチング液Eは、エッチング液リサイクル部240から給液ライン241を介してエッチング液ノズル230に供給され、次のウェハWのエッチングに再利用される。
【0068】
次に、図4(b)に示すように洗浄液ノズル232をウェハWの中心部上方に移動させる。また、内側カップ210を下降させ、外側カップ220がウェハ保持部200の周囲を囲うように配置される。そして、ウェハWを回転させつつ、洗浄液ノズル232をウェハWの中心部上方と外周部上方の間で移動させながら、当該洗浄液ノズル232から第2の面Wbに洗浄液Cを供給する。そうすると、洗浄液Cは第2の面Wbの全面に供給され、当該第2の面Wbの全面が洗浄される(図3のステップS9)。なお、ステップS9において使用された洗浄液Cは、外側カップ220に回収され、排液ライン221から排出される。
【0069】
ここで、ステップS1においてウェハWの第1の面Waを研削する際、第2の面Wbが第1のチャック113aに吸着保持される。この際、ポーラスチャックである第1のチャック113aが金属を含むため、第2の面Wbには金属が付着する場合がある。また、ステップS8において第2の面Wbをエッチング液Eでエッチングする際、エッチング量が5μm以下と少量であるため、かかるエッチングでは第2の面Wbに付着した金属を除去しきれない場合がある。
【0070】
そこで、ステップS9では、第2の面Wbに洗浄液Cを供給して、当該第2の面Wbに付着した金属を除去する。具体的に金属は、洗浄液Cによって第2の面Wbからリフトオフされて除去される。加えて、洗浄液ノズル232は2流体ノズルであって洗浄液Cを第2の面Wbに噴射するため、この洗浄液Cの物理的な衝突力によっても金属は除去される。
【0071】
また、ステップS9では、洗浄液ノズル232をウェハWの中心部上方と外周部上方の間で移動させながら、当該洗浄液ノズル232から第2の面Wbに洗浄液Cを供給するため、洗浄液Cは第2の面Wbの全面に供給される。さらに、上述した洗浄液Cの物理的な衝突力も第2の面Wbの全面に及ぶ。したがって、第2の面Wbから金属を除去することができる。
【0072】
次に、図4(c)に示すようにリンス液ノズル231をウェハWの中心部上方に移動させる。この際、内側カップ210は下降しており、外側カップ220がウェハ保持部200の周囲を囲うように配置される。そして、ウェハWを回転させながら、リンス液ノズル231から第2の面Wbの中心部にリンス液Rを供給する。そうすると、遠心力によりリンス液Rが外周部まで拡散し、第2の面Wbの全面がリンスされる(図3のステップS10)。なお、ステップS10において使用されたリンス液Rは、外側カップ220に回収され、排液ライン221から排出される。また、リンス液Rの供給は、ステップS8とステップS9の間でも実施されるのが望ましい。
【0073】
次に、リンス液ノズル231からのリンス液Rの供給を停止した状態で、更にウェハWを回転させ続ける。そうすると、第2の面Wbが乾燥される。
【0074】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置60により反転装置31に搬送される。反転装置31では、ウェハWの第1の面Waと第2の面Wbを上下方向に反転させる(図3のステップS11)。すなわち、第1の面Waが上側、第2の面Wbが下側を向いた状態にウェハWが反転される。
【0075】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置60によりエッチング装置51に搬送される。エッチング装置51では、ウェハ保持部200にウェハWが第1の面Waを上側に向けた状態で第2の面Wbが保持される。そして、ウェハWを回転させつつ、エッチング液ノズル230をウェハWの中心部上方と外周部上方の間で移動させながら、当該エッチング液ノズル230から第1の面Waにエッチング液Eを供給する。そうすると、エッチング液Eは第1の面Waの全面に供給され、当該第1の面Waの全面がエッチングされる(図3のステップS12)。なお、この第1の面Waのエッチングは、上記ステップS8における第2の面Wbのエッチングと同様であり、そのエッチング量も例えば5μm以下である。
【0076】
次に、エッチング装置51では、ウェハWを回転させつつ、洗浄液ノズル232をウェハWの中心部上方と外周部上方の間で移動させながら、当該洗浄液ノズル232から第1の面Waに洗浄液Cを供給する。そうすると、第1の面Waが洗浄され、当該第1の面Waに付着した金属が除去される(図3のステップS13)。なお、この第1の面Waの洗浄は、上記ステップS9における第2の面Wbの洗浄と同様である。
【0077】
次に、エッチング装置51では、ウェハWを回転させながら、リンス液ノズル231から第1の面Waの中心部にリンス液Rを供給し、当該第1の面Waがリンスされる(図3のステップS14)。なお、この第1の面Waのリンスは、上記ステップS10における第2の面Wbのリンスと同様である。また、リンス液Rの供給は、ステップS12とステップS13の間でも実施されるのが望ましい。
【0078】
次に、ウェハWはウェハ搬送装置60により厚み測定装置40に搬送される。厚み測定装置40では、エッチング装置51によるエッチング後のウェハWの厚み分布を測定する(図3のステップS15)。
【0079】
ステップS15では、上述したようにウェハWの厚みを複数点で測定することで、エッチング後のウェハWの厚み分布を取得する。取得されたウェハWの厚み分布は例えば制御装置150に出力される。制御装置150では、ウェハWの厚み分布に基づいて、次にエッチングされるウェハWに対して用いられるエッチング液Eの組成比率を調整する(図3のステップS16)。なお、このエッチング液Eの組成比率の調整方法は後述する。
【0080】
一方、厚み測定装置40で厚み分布が測定されたウェハWは、ウェハ搬送装置60によりウェハWがカセット載置台20のカセットCに搬送される。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。なお、ウェハ処理システム1で所望の処理が施されたウェハWには、ウェハ処理システム1の外部においてポリッシングが行われてもよい。
【0081】
以上の実施形態によれば、ステップS9、S13において、洗浄液Cを用いてウェハWの表面を洗浄するので、当該ウェハWの表面に付着した金属を除去することができる。しかも、洗浄液Cは2流体ノズルである洗浄液ノズル232からウェハWの表面に噴射されるので、洗浄液Cによる化学的な金属除去能力に加え、洗浄液Cの衝突力による物理的な金属除去能力も発揮され、金属を効率よく除去することができる。その結果、ウェハWの製品性能を維持することが可能となる。
【0082】
なお、洗浄液Cによる化学的な金属除去能力が十分である場合、洗浄液ノズル232に2流体ノズルではなく、通常のノズルを用いてもよい。かかる場合、洗浄液ノズル232からウェハWの中心部に洗浄液Cを供給し、遠心力により洗浄液Cを外周部まで拡散させてもよい。本変形例においては、上記実施形態に比べて金属の除去能力は劣るが、洗浄液ノズル232が安価になり、コストを低減することができる。
【0083】
また、洗浄液Cによる物理的な金属除去能力が十分である場合、洗浄液Cにはフッ酸、FPM等ではなく、例えば純水を用いてもよい。本変形例においても、上記実施形態に比べて金属の除去能力は劣るが、洗浄液Cが安価になり、コストを低減することができる。
【0084】
次に、上記ステップS16におけるエッチング液Eの組成比率の調整方法について説明する。
【0085】
本実施形態では、ステップS8、S12におけるウェハWのエッチングを行う際、エッチング液Eは複数のウェハWに対して再利用される。かかる場合、本発明者らが調べたところ、エッチングではウェハW(シリコン)とエッチング液E(混酸)の反応によって、エッチング液Eの組成比率が変わる。そして、本発明者らがエッチング液Eの経時変化を調べたところ、図5に示す結果を得た。図5において、点線は、初期状態のエッチング液Eを用いた場合の、ウェハWのエッチング量の径方向分布を示す。実線は、予め定められた枚数のウェハWをエッチングした後のエッチング液Eを用いた場合の、ウェハWのエッチング量の径方向分布を示す。図5に示すように、エッチング液Eを繰り返し再利用すると、エッチング量が全体的に減少する。また、ウェハWの中心部のエッチング量が外周部のエッチング量より少なく、ウェハ径方向のエッチングプロファイルが変化する。その結果、エッチングのプロセス性能が不安定となる。
【0086】
エッチング液Eを繰り返し再利用すると、当該エッチング液E中のフッ酸が消費される。そして、フッ酸の濃度が減少することで、当該エッチング液Eの再利用によってエッチング量が減少する。そこで、本発明者らは、エッチング液Eにフッ酸を追加することを試みたところ、図6に示す結果を得た。図6において、点線は、再利用するエッチング液Eに対してフッ酸を追加せず、当該エッチング液Eを用いてウェハWをエッチングした場合の、ウェハWのエッチング量の径方向分布を示す。実線は、再利用するエッチング液Eに対してフッ酸を追加し、当該エッチング液Eを用いてウェハWをエッチングした場合の、ウェハWのエッチング量の径方向分布を示す。図6に示すように、エッチング液Eにフッ酸を追加すると、ウェハWの全体的なエッチング量は増加する。しかしながら、エッチングプロファイルは改善されず、ウェハWの中心部のエッチング量は外周部のエッチング量より少ないままである。
【0087】
また、本発明者らは、エッチング液Eにフッ酸と硝酸を追加することを試みたところ、図7に示す結果を得た。図7において、点線は、再利用するエッチング液Eに対してフッ酸と硝酸のいずれも追加せず、当該エッチング液Eを用いてウェハWをエッチングした場合の、ウェハWのエッチング量の径方向分布を示す。実線は、再利用するエッチング液Eに対してフッ酸と硝酸を追加し、当該エッチング液Eを用いてウェハWをエッチングした場合の、ウェハWのエッチング量の径方向分布を示す。図7に示すように、エッチング液Eにフッ酸と硝酸を追加すると、ウェハWの全体的なエッチング量は増加する。しかしながら、やはりエッチングプロファイルは改善されず、ウェハWの中心部のエッチング量は外周部のエッチング量より少ないままである。
【0088】
なお、エッチング量を全体的に増加させるには、フッ酸に加えて硝酸も追加するのが好ましい。ウェハWのエッチングではフッ酸と硝酸が化学的に寄与し、フッ酸でエッチングして硝酸で酸化するというプロセスを繰り返す。このため、エッチング液Eを繰り返し再利用すると、エッチング液E中のフッ酸と硝酸がともに消費される。しなしながら、フッ酸の濃度に比べて硝酸の濃度が大きいため、硝酸の濃度が減少したとしても、フッ酸の濃度の減少の方がエッチングに対する影響が大きい。このため、エッチング液Eにフッ酸を追加することが、エッチング量の増加に直接的に寄与する。しかしながら、長期的な観点では、エッチング液E中のフッ酸と硝酸の濃度バランスを維持するため、フッ酸に加えて硝酸を追加する方が好ましい。
【0089】
ここで、エッチング液E中のリン酸は、ウェハWのエッチングに化学的に寄与せず、当該エッチングによって消費されない。しかしながら、ウェハWがエッチングされると副生成物として水が生成される。このため、リン酸の濃度が相対的に下がっていく。そして、リン酸の濃度が下がるとエッチング液Eの粘度が下がるため、エッチングにおいて回転中のウェハWの中心部のエッチング液Eは外周部に拡散しやすくなる。より具体的には、エッチング液Eの粘度がウェハWの回転による遠心力より小さい場合、エッチング液Eは外周部に拡散しやすくなる。このため、ウェハWの中心部のエッチング量が外周部のエッチング量より少なくなる。
【0090】
そこで、本発明者らは、エッチング液Eにフッ酸、硝酸及びリン酸を追加することを試みたところ、図8に示す結果を得た。図8において、点線は、再利用するエッチング液Eに対してフッ酸、硝酸及びリン酸のいずれも追加せず、当該エッチング液Eを用いてウェハWをエッチングした場合の、ウェハWのエッチング量の径方向分布を示す。実線は、再利用するエッチング液Eに対してフッ酸、硝酸及びリン酸を追加し、当該エッチング液Eを用いてウェハWをエッチングした場合の、ウェハWのエッチング量の径方向分布を示す。図8に示すように、エッチング液Eにフッ酸、硝酸及びリン酸を追加すると、ウェハWの全体的なエッチング量は増加する。また、ウェハWの中心部のエッチング量が増加して、エッチングプロファイルも改善される。
【0091】
なお、エッチング液Eにリン酸のみを追加すると、フッ酸の濃度が相対的に下がるので、全体的なエッチング量が減少する。このため、エッチングプロファイルを改善するためにリン酸を追加する際には、フッ酸も追加するのが好ましい。
【0092】
また、エッチングプロファイルを改善するためにエッチング液Eに追加する成分は、リン酸に限定されない。ウェハWのエッチングに寄与せず、エッチング液Eの粘度を向上させるものであれば、エッチング液Eに追加することができる。
【0093】
以上のように本発明者らは鋭意検討した結果、下記の知見を得るに至った。
・エッチング量を全体的に増加させる場合は、エッチング液にフッ酸を追加する。
・エッチング量を全体的に増加させる場合は、更に硝酸を追加するのが好ましい。
・エッチングプロファイルを改善させる場合は、エッチング液にリン酸を追加する。
・エッチングプロファイルを改善させる場合は、更にフッ酸を追加するのが好ましい。
【0094】
上記知見に基づいて、ステップS16においてエッチング液Eの組成比率を調整する際には、下記(1)~(3)の制御を行う。
(1)ステップS15で測定したウェハWの厚み分布において、ウェハWの厚みが全体的に大きい場合(エッチング量が小さい場合)、エッチング液Eにフッ酸を追加する。この際、硝酸を更に追加するのが好ましい。なお、ウェハWの厚みが全体的に大きい場合とは、例えばエッチング後のウェハWの目標厚みに対して、ステップS15で測定したウェハWの厚みが全体的に大きい場合である。
(2)ステップS15で測定したウェハWの厚み分布において、ウェハWの中心部の厚みが外周部の厚みに比べて大きい場合(ウェハWの中心部のエッチング量が外周部のエッチング量より小さい場合)、エッチング液Eにリン酸を追加する。この際、フッ酸を更に追加するのが好ましい。
(3)ステップS15で測定したウェハWの厚み分布において、ウェハWの厚みが全体的に大きく、且つ、ウェハWの中心部の厚みが外周部の厚みに比べて大きい場合、エッチング液Eにフッ酸とリン酸を追加する。この際、硝酸を更に追加するのが好ましい。
【0095】
なお、上記(1)~(3)においてエッチング液Eに追加するフッ酸、硝酸、リン酸の追加量の決定方法は任意である。例えば、フッ酸、硝酸、リン酸を予め定められた量で追加し、そのエッチング液Eを使用した後のウェハWの厚み分布を測定して、当該フッ酸、硝酸、リン酸の追加量を決定してもよい。或いは例えば、濃度計243で測定した測定結果に基づいて、フッ酸、硝酸、リン酸の追加量を決定してもよい。
【0096】
そして、上記(1)~(3)を行って組成比率が調整されたエッチング液Eは、エッチング液リサイクル部240から給液ライン241を介してエッチング液ノズル230に供給され、次のエッチングに再利用される。
【0097】
なお、このような上記(1)~(3)によるエッチング液Eの組成比率の調整は、ウェハW毎に行ってもよいし、複数、例えば1ロット(25枚)毎に行ってもよい。
【0098】
以上の実施形態によれば、ステップS15で測定したエッチング後のウェハWの厚み分布に基づいて、ステップS16においてエッチング液Eに対して、フッ酸、硝酸、リン酸のいずれか又は複数を選択して追加して、当該エッチング液Eの組成比率を適切に調整することができる。したがって、複数のウェハWにエッチングを行う際、エッチング液Eを再利用する場合であっても、組成比率が調整されたエッチング液Eを用いてウェハWに対して面内均一なエッチングを行い、エッチング後のウェハWの表面形状を適切に制御することができる。
【0099】
次に、他の実施形態のステップS16におけるエッチング液Eの組成比率の調整方法について説明する。本実施形態では、ステップS15で測定したエッチング後のウェハWの厚み分布からエッチング量を算出し、さらにエッチング量平均値とエッチング量レンジを算出する。エッチング量平均値は、ウェハ面内におけるエッチング量の平均値である。エッチング量レンジは、ウェハ面内におけるエッチング量の最大値と最小値の差分である。そして、算出されたエッチング量平均値とエッチング量レンジに基づいて、エッチング液Eの組成比率を調整する。
【0100】
図9に示すようにエッチング液Eを繰り返し再利用すると、エッチング液E中のフッ酸と硝酸が消費され、ウェハWの全体的なエッチング量が減少し、エッチング量平均値が減少する。そして、エッチング量平均値が設定下限値に達すると(図9中の時間T1)、エッチング液Eにフッ酸と硝酸を追加(補充)する。時間T1におけるフッ酸の追加量と硝酸の追加量は、追加後のエッチング液Eによるエッチング量平均値が設定上限値になるように、予め定められた値に設定される。なお例えば、目標とするエッチング量平均値を設定し、その目標とするエッチング量平均値から許容される下振れ値と上振れ値を決定することで、エッチング量平均値の設定下限値と設定上限値をそれぞれ任意に設定する。
【0101】
時間T1でフッ酸と硝酸が追加されると、エッチング液E中のフッ酸の濃度と硝酸の濃度が大きくなり、当該エッチング液Eによるエッチング量平均値が設定上限値まで増加する。なお、フッ酸と硝酸の追加によりエッチング量が増加することは、上述したとおりである。
【0102】
続いてエッチング液Eを繰り返し再利用すると、再びエッチング量平均値が減少する。そして、エッチング量平均値が設定下限値に達すると(図9中の時間T2)、エッチング液Eにフッ酸と硝酸を追加する。
【0103】
時間T2におけるフッ酸の追加量は、下記式(1)及び(2)を用いて算出される。すなわち、先ず式(1)を用いて、時間T1におけるフッ酸の追加量に対する、エッチング量平均値の増加分の傾きaを算出する。次に式(2)を用いて、追加後のエッチング液Eによるエッチング量平均値が設定上限値になるように、時間T2におけるフッ酸の追加量を算出する。
a={(追加後のエッチング量平均値)-(追加前のエッチング量平均値)}/(時間T1におけるフッ酸追加量) ・・・(1)
(時間T2におけるフッ酸追加量)={(エッチング量平均値の設定上限値)-(追加後のエッチング量平均値)}/a ・・・(2)
【0104】
時間T2における硝酸の追加量も、上記式(1)及び(2)と同様の計算式を用いて算出される。
【0105】
時間T2でフッ酸と硝酸が追加されると、エッチング液E中のフッ酸の濃度と硝酸の濃度が大きくなり、当該エッチング液Eによるエッチング量平均値が設定上限値まで増加する。
【0106】
続いてエッチング液Eを繰り返し再利用すると、エッチングプロファイルが変化し、エッチング量レンジが増加する。そして、エッチング量レンジが設定上限値に達すると(図9中の時間T3)、エッチング液Eにリン酸を追加する。時間T3におけるリン酸の追加量は、追加後のエッチング液Eによるエッチング量レンジが設定下限値になるように、予め定められた値に設定される。なお例えば、目標とするエッチング量レンジを設定し、その目標とするエッチング量レンジから許容される上振れ値と下振れ値を決定することで、エッチング量レンジの設定上限値と設定下限値をそれぞれ任意に設定する。
【0107】
時間T3でリン酸が追加されると、当該エッチング液Eによるエッチング量レンジが設定下限値まで減少し、エッチングプロファイルが改善される。なお、リン酸の追加によりエッチングプロファイルが改善することは、上述したとおりである。
【0108】
なお、2回目以降のリン酸の追加量は、上記式(1)及び(2)と同様の計算式を用いて算出してもよい。
【0109】
以上のように本実施形態では、下記に示すように、フッ酸、硝酸、リン酸のいずれか又は複数を選択して追加するオン・オフ制御を行う。
・エッチング量平均値が設定下限値に達すると、エッチング液Eにフッ酸と硝酸を追加する。
・エッチング量レンジが設定上限値に達すると、エッチング液Eにリン酸を追加する。
【0110】
そして、これら制御を繰り返し行うことにより、エッチング液Eの組成比率を適切に調整することができる。しかも、2回目以降のフッ酸、硝酸、リン酸の追加量は、エッチング量に基づいて上記式(1)及び(2)で計算されるので、正確にフッ酸、硝酸、リン酸を追加することができる。その結果、複数のウェハWにエッチングを行う際、エッチング液Eを再利用する場合であっても、組成比率が調整されたエッチング液Eを用いてウェハWに対して面内均一なエッチングを行い、エッチング後のウェハWの表面形状を適切に制御することができる。
【0111】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 ウェハ処理システム
40 厚み測定装置
50 エッチング装置
51 エッチング装置
150 制御装置
230 エッチング液ノズル
240 エッチング液リサイクル部
W ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9