(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-02
(45)【発行日】2025-07-10
(54)【発明の名称】受信装置
(51)【国際特許分類】
H03M 13/37 20060101AFI20250703BHJP
H03M 13/19 20060101ALN20250703BHJP
【FI】
H03M13/37
H03M13/19
(21)【出願番号】P 2021108147
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2024-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】川島 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 宏明
(72)【発明者】
【氏名】竹内 知明
(72)【発明者】
【氏名】岡野 正寛
【審査官】速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-186503(JP,A)
【文献】特開2010-098379(JP,A)
【文献】佐藤明彦, 他3名,階層伝送にLDMを適用した地上放送高度化方式の放送波中継手法に関する一検討,映像情報メディア学会技術報告,2021年03月,ITE Technical Report Vol.45, No.10,pp.21-24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 13/37
H03M 13/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誤り訂正ブロックを中継する中継装置における尤度情報を用いることなく、前記誤り訂正ブロックを対象として、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの尤度を算出する算出部と、
前記データシンボルの尤度に基づいて、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの誤り訂正復号を実行する復号部と、
前記誤り訂正ブロックの受信状態が特定状態でない場合に、前記データシンボルの尤度を縮退する特定制御を実行せず、前記誤り訂正ブロックの受信状態が
前記特定状態である場合に、
前記特定制御を実行する制御部と、を備え、
前記復号部は、
前記誤り訂正ブロックの受信状態が前記特定状態でない場合に、前記算出部によって算出された前記データシンボルの尤度に基づいて前記データシンボルの誤り訂正復号を実行し、前記誤り訂正ブロックの受信状態が前記特定状態である場合に、前記特定制御が適用された前記データシンボルの尤度に基づいて前記データシンボルの誤り訂正復号を実行し、
最大繰り返し回数を上限として、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの誤りが訂正されるまで、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの推定値の計算を繰り返し、
前記制御部は、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの推定値の計算の繰り返し回数によって少なくとも定義される特定条件が満たされているか否かに基づいて、前記誤り訂正ブロックの受信状態が特定状態であるか否かを判定
し、
前記特定条件は、前記繰り返し回数の少なくとも1以上が前記最大繰り返し回数に達する第1特定条件を含む、受信装置。
【請求項2】
誤り訂正ブロックを中継する中継装置における尤度情報を用いることなく、前記誤り訂正ブロックを対象として、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの尤度を算出する算出部と、
前記データシンボルの尤度に基づいて、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの誤り訂正復号を実行する復号部と、
前記誤り訂正ブロックの受信状態が特定状態でない場合に、前記データシンボルの尤度を縮退する特定制御を実行せず、前記誤り訂正ブロックの受信状態が前記特定状態である場合に、前記特定制御を実行する制御部と、を備え、
前記復号部は、
前記誤り訂正ブロックの受信状態が前記特定状態でない場合に、前記算出部によって算出された前記データシンボルの尤度に基づいて前記データシンボルの誤り訂正復号を実行し、前記誤り訂正ブロックの受信状態が前記特定状態である場合に、前記特定制御が適用された前記データシンボルの尤度に基づいて前記データシンボルの誤り訂正復号を実行し、
最大繰り返し回数を上限として、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの誤りが訂正されるまで、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの推定値の計算を繰り返し、
前記制御部は、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの推定値の計算の繰り返し回数によって少なくとも定義される特定条件が満たされているか否かに基づいて、前記誤り訂正ブロックの受信状態が特定状態であるか否かを判定し、
前記特定条件は、前記繰り返し回数の分散が所定閾値以上である第2特定条件を含む
、受信装置。
【請求項3】
前記特定条件は、
前記第1特定条件に加えて、既知シンボルに基づいて推定された雑音分散値が所定閾値以下である第3特定条件を含む、請求項
1に記載の受信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記特定制御として、受信信号の電力を低減する制御を実行する、請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記特定制御として、受信信号に雑音を付加する制御を実行する、請求項1乃至請求項
4のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記特定制御として、
前記データシンボルの尤度を縮退するように、既知シンボルに基づいて推定された雑音分散値を操作する制御を実行する、請求項1乃至請求項
4のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記特定制御として、
前記データシンボルの尤度を縮退するように、前記データシンボルの尤度を操作する制御を実行する、請求項1乃至請求項
4のいずれか1項に記載の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高性能な誤り訂正符号として、LDPC(Low-Density Parity-check Code)符号が知られている(非特許文献1)。
【0003】
LDPC符号を用いる放送方式としては、高度広帯域衛星デジタル放送方式、DVB-S2、DVB-T2、DVB-NGHなどが挙げられる。日本においても、地上放送高度化方式ではLDPC符号が採用されている。
【0004】
ところで、送信装置と受信装置との間に中継装置を設ける方式が知られている。送信装置は、上位局又は親局と称されてもよい。受信装置は、下位局又は子局と称されてもよい。中継装置は、送信装置から受信する電波に含まれるマルチパスの歪みを等化する処理(以下、等化処理)、送信装置から受信するシンボルを判定する処理(以下、シンボル判定処理)、シンボル判定後のシンボルを再変調する処理(以下、再変調処理)などを実行する。このような方式によれば、受信装置における受信信号の品質の劣化を軽減することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】R.G Gallager, "Low Density Parity Check Codes", Research Monograph series Cambridge, MIT Press, 1963
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、中継装置のシンボル判定処理が硬判定処理である場合には、送信装置と中継装置との間の尤度情報が受信装置に伝搬されない。従って、送信装置が送信するシンボルが中継装置のシンボル判定処理で誤ったシンボルと判定されると、中継装置と受信装置との間の伝搬環境(例えば、C/N比(Carrier to Noise Ratio))が良好である場合に、受信装置において誤ったシンボルの尤度が高いと判定され、受信装置においてBER(Bit Error Rate)が上昇する可能性がある。
【0007】
一方で、中継装置のシンボル判定処理が軟判定処理である場合には、送信装置と中継装置との間の尤度情報が受信装置に伝搬され得るが、中継装置から受信装置に対して尤度情報を送信する必要があり、中継装置の複雑化やシグナリング負荷の増大が生じてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、尤度情報を必要とせずに、受信装置のBERの上昇を抑制することを可能とする受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の一態様に係る受信装置は、誤り訂正ブロックを対象として、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの尤度を算出する算出部と、算出されたデータシンボルの尤度に基づいて、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの誤り訂正復号を実行する復号部と、前記誤り訂正ブロックの受信状態が特定状態である場合に、前記算出されたデータシンボルの尤度を縮退する特定制御を実行する制御部と、を備え、前記復号部は、最大繰り返し回数を上限として、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの誤りが訂正されるまで、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの推定値の計算を繰り返し、前記制御部は、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの推定値の計算の繰り返し回数によって少なくとも定義される特定条件が満たされているか否かに基づいて、前記誤り訂正ブロックの受信状態が特定状態であるか否かを判定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、尤度情報を必要とせずに、受信装置のBERの上昇を抑制することを可能とする受信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係るデジタル無線伝送システム10を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る受信装置300を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る制御部313を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る受信状態を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る動作例を示す図である。
【
図6】
図6は、変更例1に係る受信装置300を示す図である。
【
図7】
図7は、変更例2に係る受信装置300を示す図である。
【
図8】
図8は、変更例3に係る受信装置300を示す図である。
【
図9】
図9は、変更例4に係る受信状態を説明するための図である。
【
図11】
図11は、変更例5に係る受信装置300を示す図である。
【
図12】
図12は、変更例5に係る受信装置300を示す図である。
【
図13】
図13は、変更例5に係る受信装置300を示す図である。
【
図14】
図14は、変更例5に係る受信装置300を示す図である。
【
図15】
図15は、変更例5に係る受信状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0013】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
[開示の概要]
発明者等は、鋭意検討の結果、受信信号のC/N比(Carrier to Noise Ratio)が良好であるにも関わらず、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達するケース(特定状態)が存在し得ることを見出した。さらに、発明者等は、特定状態において、受信信号のC/N比を擬似的に悪化させた方が、誤り訂正ブロックのBER(Block Error Rate)が却って向上することを見出した。このような新たな知見を踏まえて、開示の概要に係る受信装置は、以下に示す構成を有する。
【0015】
開示の概要に係る受信装置は、誤り訂正ブロックを対象として、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの尤度を算出する算出部と、算出されたデータシンボルの尤度に基づいて、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの誤り訂正復号を実行する復号部と、前記誤り訂正ブロックの受信状態が特定状態である場合に、前記算出されたデータシンボルの尤度を縮退する特定制御を実行する制御部と、を備え、前記復号部は、最大繰り返し回数を上限として、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの誤りが訂正されるまで、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの推定値の計算を繰り返し、前記制御部は、前記誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの推定値の計算の繰り返し回数によって少なくとも定義される特定条件が満たされているか否かに基づいて、前記誤り訂正ブロックの受信状態が特定状態であるか否かを判定する。
【0016】
開示の概要では、受信装置は、誤り訂正ブロックに含まれるデータシンボルの推定値の計算の繰り返し回数によって少なくとも定義される特定条件が満たされているか否かに基づいて、誤り訂正ブロックの受信状態が特定状態であるか否かを判定する。このような構成によれば、誤り訂正ブロックの受信状態が特定状態であるか否かを適切に判定することができる。
【0017】
開示の概要では、受信装置は、誤り訂正ブロックの受信状態が特定状態である場合に、算出されたデータシンボルの尤度を縮退する特定制御を実行する。このような構成によれば、特定状態においてBERを向上することができる。
【0018】
[実施形態]
(デジタル無線伝送システム)
以下において、実施形態に係るデジタル無線伝送システムについて説明する。
図1は、実施形態に係るデジタル無線伝送システム10を示す図である。
図1に示すように、デジタル無線伝送システムは、送信装置100、中継装置200及び受信装置300を備える。
【0019】
送信装置100は、誤り訂正ブロックを生成する処理(ブロック生成処理)、誤り訂正ブロックを含むフレームに直交変調を適用する処理(直交変調処理)などを実行する。
【0020】
中継装置200は、送信装置100から受信する信号(フレーム)を受信装置300に中継する。中継装置200は、送信装置100から受信する電波に含まれるマルチパスの歪みを等化する処理(等化処理)、送信装置100から受信するシンボルを判定する処理(シンボル判定処理)、シンボル判定後のシンボルを再変調する処理(再変調処理)などを実行する。
【0021】
実施形態では、中継装置200のシンボル判定処理は硬判定処理である。すなわち、送信装置100と中継装置200との間の尤度情報が受信装置300に伝搬されない。
【0022】
受信装置200は、中継装置200から受信するフレームに直交復調を適用する処理(直交復調処理)、誤り訂正ブロックを復号する処理(復号処理)などを実行する。受信装置200の詳細については後述する。
【0023】
ここで、デジタル無線伝送システム10では、誤り訂正符号としてLDPC(Low-Density Parity-check Code)符号が用いられてもよい。以下において、誤り訂正ブロックをLDPCブロックと称する。デジタル無線伝送システム10では、MCS(Modulation and Coding Scheme)として、64QAM、256QAM、1024QAM、4096QAMなどが用いられてもよい。QAMのコンスタレーションとしては、IQ平面上において信号点が均一に配置される均一コンスタレーションが用いられてもよく、IQ平面上において信号点が不均一に配置される不均一コンスタレーション(NUC)が用いられてもよい。
【0024】
(受信装置)
以下において、実施形態に係る受信装置について説明する。
図2に示すように、受信装置300は、可変減衰器301と、FFT処理部303と、等化処理部305と、雑音推定部307と、LLR算出部309と、LDPC復号部311と、制御部313と、を有する。
【0025】
可変減衰器301は、受信信号の電力を低減(減衰)する。可変減衰器301は、制御部313の指令に従って動作する。
【0026】
FFT処理部303は、受信信号(時間領域の信号)にFFT(Fast Fourier Transform)処理を適用し、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する。
【0027】
等化処理部305は、周波数領域の信号を等化する等化処理を実行する。例えば、等化処理部305は、チャネル推定結果及び雑音(電力)に基づいて等化処理を実行してもよい。等化処理において、周波数領域の信号を等化するための等化ウェイトは、平均2乗誤差最小(MMSE; Minimum Mean Squared Error)方式を用いて算出されてもよい。等化処理は、最大比合成処理を含んでもよい。
【0028】
雑音推定部307は、受信信号の雑音を推定する。具体的には、雑音推定部307は、受信信号に含まれる既知シンボルに基づいて雑音を推定する。既知シンボルは、受信装置300にとって既知のシンボルであり、雑音の推定に用いられるシンボルであればよい。既知シンボルは、パイロットシンボルを含んでもよい。
【0029】
LLR算出部309は、LDPCブロックを対象として、LDPCブロックに含まれるデータシンボルの尤度を算出する算出部を構成する。尤度は、対数尤度比(以下、LLR(Log-Likelihood Ratio))であってもよい。LLR算出部309によって算出されるLLRは、初期LLR又は事前LLRと称されてもよい。LLRは、以下のオプションに基づいて算出されてもよい。
【0030】
【0031】
なお、オプション1は、LLRを厳密に算出するオプションであり、オプション2は、LLRを近似的に算出するオプションである。
【0032】
LDPC復号部311は、初期LLRに基づいて、LDPCブロックに含まれるデータシンボルの誤り訂正復号を実行する復号部を構成する。LDPC復号部311は、最大繰り返し回数を上限として、LDPCブロックに含まれるデータシンボル(に含まれるビット)の誤りが訂正さるまで、LDPCブロックに含まれるデータシンボル(に含まれるビット)の推定値の計算を繰り返す。
【0033】
具体的には、LDPC復号部311は、初期LLRに基づいて変数ノードからチェックノードへの対数尤度比を更新し、更新された対数尤度比に基づいてチェックノードから変数ノードへの対数尤度比を更新し、これらの確率値に基づいて一時推定語を計算する。続いて、LDPC復号部311は、一時推定語に対するパリティチェックを行い、LDPCブロックに含まれるデータシンボルの誤りが訂正されたかた否かを判定する。LDPC復号部311は、最大繰り返し回数を上限として、データシンボルの誤りが訂正されるまで、確率値に基づいた一時推定語の計算を繰り返す。
【0034】
制御部313は、LDPCブロックの受信状態が特定状態である場合に、初期LLRを縮退する特定制御を実行する制御部を構成する。制御部313は、LDPCブロックに含まれるデータシンボルの推定値の計算の繰り返し回数によって少なくとも定義される特定条件が満たされているか否かに基づいて、LDPCの受信状態が特定状態であるか否かを判定する。
【0035】
具体的には、制御部313は、
図3に示すように、格納部331と、判定部333と、生成部335と、を有する。格納部331は、LDPC復号部311で実行される計算の繰り返し回数をLDPCブロック毎に格納する。判定部333は、特定条件が満たされているか否かに基づいて、LDPCブロックの受信状態が特定状態であるか否かを判定する。生成部335は、初期LLRを縮退する特定制御を実行するための制御信号を生成する。
【0036】
実施形態では、特定制御は、受信信号の電力を低減する制御である。すなわち、生成部335は、受信信号の電力を低減する制御信号を生成し、生成された制御信号を可変減衰器301に入力する。特定状態及び特定条件の詳細について後述する。
【0037】
(特定状態)
以下において、実施形態に係る特定状態について説明する。ここでは、送信装置100と受信装置300との間に中継装置200が介在するケースについて説明する。中継装置200のシンボル判定処理は硬判定処理である。MCSとして256QAMが用いられ、コンスタレーションとしてNUCが用いられ、LDPC符号化率が12/16であるケースを例に挙げる。さらに、送信装置100から中継装置200が受信する信号のC/N比が26dBである。
【0038】
図4に示すように、発明者等は、鋭意検討の結果、受信装置300の受信状態を4つの状態(状態A~状態D)に分類し得ることに着目した。
【0039】
状態Aは、受信装置300のC/N比が所要C/N比(例えば、20dB)よりも低い状態であり、繰り返し回数が常に最大繰り返し回数に達するため、BERが高い状態である。
【0040】
状態Bは、受信装置300のC/N比が所要C/N比の近傍である状態であり、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達することもあるが、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達しないこともあるため、BERがバラツク状態である。
【0041】
状態Cは、受信装置300のC/N比が所要C/N比よりも高い状態であり、繰り返し回数が常に最大繰り返し回数に達することがないため、BERが0である状態である。
【0042】
状態Dは、受信装置300のC/N比が所要C/N比よりも高い状態であるにもかかわらず、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達することがあるため、BERが状態Cよりも高い状態である。
【0043】
状態Dは、中継装置200のシンボル判定処理(硬判定処理)において、送信装置が送信するシンボルが中継装置のシンボル判定処理で誤ったシンボルと判定される事象によって生じると考えられる。
【0044】
発明者等は、状態Dが生じるという新たな知見を踏まえて、状態Dを状態Cに擬似的に遷移させることが好ましいことを見出した。状態Dは特定状態の一例であると考えてもよい。
【0045】
実施形態では、特定条件は、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達することがある第1特定条件を含む。具体的には、第1特定条件は、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達しないこともあり、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達することもある条件である。言い換えると、第1特定条件は、繰り返し回数が常に最大繰り返し回数に達しない条件及び繰り返し回数が常に最大繰り返し回数に達する条件が満たされない条件である。
【0046】
このような前提下において、第1特定条件が満たされている場合には、受信装置300の受信状態は状態B又は状態Dであると想定され、状態Bと状態Dとを区別することができない。従って、実施形態では、第1特定条件が満たされる場合に、特定制御を実行した上で、BERが0になるか否か(すなわち、受信状態が状態Dから状態Cに遷移するか否か)を改めて判定することによって、状態Bと状態Dとを区別する。
【0047】
(動作例)
以下において、実施形態に係る動作例について説明する。
【0048】
図5に示すように、ステップS10において、受信装置300は、観測データをリセットする。観測データは、LDPCブロック毎の繰り返し回数に関するデータである。
【0049】
ステップS11において、受信装置300は、観測データの格納数が所定数に達するか否かを判定する。受信装置300は、格納数が所定数に達するまで、観測データの格納を継続する。
【0050】
ステップS12において、受信装置300は、第1特定条件が満たされるか否かを判定する。第1特定条件は、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達することがある条件である。受信装置300は、第1特定条件が満たされない場合には、すなわち、繰り返し回数が常に最大繰り返し回数に達しない条件及び繰り返し回数が常に最大繰り返し回数に達する条件が満たされた場合には、一連の処理を終了する。受信装置300は、第1特定条件が満たされる場合には、ステップS13の処理を実行する。ステップS12の段階では、状態Bと状態Dが区別されていないことに留意すべきである。
【0051】
ステップS13において、受信装置300は、初期LLRを縮退する特定制御を実行する。具体的には、受信装置300は、制御信号によって可変減衰器301を制御することによって、受信信号の電力を低減する制御を実行する。
【0052】
ステップS14において、受信装置300は、観測データの格納数が所定数に達するか否かを判定する。受信装置300は、格納数が所定数に達するまで、観測データの格納を継続する。
【0053】
ステップS15において、受信装置300は、第1特定条件が満たされるか否かを判定する。受信装置300は、第1特定条件が満たされない場合には、ステップS16の処理を実行する。受信装置300は、第1特定条件が満たされる場合には、ステップS13の処理を実行する。すなわち、初期LLRをさらに退縮することによって、状態Bから状態Aへの擬似的な遷移又は状態Dから状態Cへの擬似的な遷移を促す。
【0054】
ステップS16において、受信装置300は、BERが0であるか否かを判定する。受信装置300は、BERが0である場合には、状態Dから状態Cへの擬似的な遷移が生じたと判断して、一連の処理を終了する。受信装置300は、BERが0でない場合には、状態Bから状態Aへの擬似的な遷移が生じたと判断して、ステップS17の処理を実行する。
【0055】
ステップS17において、受信装置300は、特定制御を解除する。これによって、状態Bから状態Aへの擬似的な遷移が解除され、受信装置300の受信状態は状態Bに戻る(改善する)。
【0056】
(作用及び効果)
実施形態では、受信装置300は、LDPCブロックに含まれるデータシンボルの推定値の計算の繰り返し回数によって少なくとも定義される特定条件が満たされているか否かに基づいて、LDPCブロックの受信状態が特定状態であるか否かを判定する。具体的には、受信装置300は、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達することがある第1特定条件が満たされるか否かに基づいて、LDPCブロックの受信状態が特定状態であるか否かを判定する。このような構成によれば、LDPCブロックの受信状態が状態Dであるか否かを適切に判定することができる。
【0057】
実施形態では、受信装置300は、LDPCブロックの受信状態が特定状態である場合に、初期LLRを縮退する特定制御を実行する。具体的には、受信装置300は、制御信号によって可変減衰器301を制御することによって、受信信号の電力を低減する制御を実行する。このような構成によれば、状態Dから状態Cへの擬似的な遷移によってBERを向上することができる。
【0058】
実施形態では、中継装置200からの尤度情報がなくても、受信装置300の制御によってBERを向上することができるため、中継装置200の複雑化やシグナリング負荷の増大を抑制することができる。
【0059】
[変更例1]
以下において、実施形態の変更例1について説明する。以下においては、実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0060】
具体的には、実施形態では、特定制御は、受信信号の電力を低減する制御である。これに対して、変更例1では、特定制御は、受信信号に雑音を付加する制御である。
【0061】
図6に示すように、受信装置300は、可変減衰器301に代えて、雑音発生器351を有する。
【0062】
雑音発生器351は、雑音を発生する。雑音発生器351は、制御部313の指令に従って動作する。
【0063】
制御部313は、雑音を発生する制御信号を生成し、生成された制御信号を雑音発生器351に入力する。雑音発生器351によって発生された雑音は受信信号に付加される。
【0064】
(作用及び効果)
変更例1では、特定制御として、受信信号に雑音が付加される。このような構成によれば、初期LLRを縮退することができるため、実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
[変更例2]
以下において、実施形態の変更例2について説明する。以下においては、実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0066】
具体的には、実施形態では、特定制御は、受信信号の電力を低減する制御である。これに対して、変更例2では、特定制御は、雑音分散値を操作する制御である。
【0067】
図7に示すように、受信装置300は、可変減衰器301に代えて、雑音操作部353を有する。
【0068】
雑音操作部353は、雑音推定部307によって推定された雑音分散値を操作する。雑音操作部353は、制御部313の指令に従って動作する。
【0069】
制御部313は、雑音分散値を操作する制御信号を生成し、生成された制御信号を雑音操作部353に入力する。雑音操作部353は、初期LLRを退縮させるように、雑音分散値を操作する。
【0070】
(作用及び効果)
変更例2では、特定制御として、初期LLRの算出に用いる雑音分散値が操作される。このような構成によれば、初期LLRを縮退することができるため、実施形態と同様の効果が得られる。
【0071】
[変更例3]
以下において、実施形態の変更例3について説明する。以下においては、実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0072】
具体的には、実施形態では、特定制御は、受信信号の電力を低減する制御である。これに対して、変更例3では、特定制御は、初期LLRを操作する制御である。
【0073】
図7に示すように、受信装置300は、可変減衰器301に代えて、LLR操作部355を有する。
【0074】
LLR操作部355は、LLR算出部309によって算出された初期LLRを操作する。LLR操作部355は、制御部313の指令に従って動作する。
【0075】
制御部313は、初期LLRを操作する制御信号を生成し、生成された制御信号をLLR操作部355に入力する。LLR操作部355は、初期LLRを退縮させるように、初期LLRを操作する。
【0076】
(作用及び効果)
変更例3では、特定制御として、初期LLRが直接的に操作される。このような構成によれば、初期LLRを縮退することができるため、実施形態と同様の効果が得られる。
【0077】
[変更例4]
以下において、実施形態の変更例4について説明する。以下においては、実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0078】
具体的には、実施形態では、特定条件は、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達することがある第1特定条件を含む。これに対して、変更例4では、特定条件は、繰り返し回数の分散が所定閾値以上である第2特定条件を含む。
【0079】
図9に示すように、状態Aでは、繰り返し回数が常に最大繰り返し回数に達するため、繰り返し回数の分散は、閾値(例えば、20)よりも小さい。状態Bでは、繰り返し回数が徐々に変化するため、繰り返し回数の分散は、閾値(例えば、20)よりも小さい。状態Cでは、繰り返し回数が常に少ないため、繰り返し回数の分散は、閾値(例えば、20)よりも小さい。これに対して、状態Dでは、基本的には繰り返し回数が少ないが、繰り返し回数が散発的に最大繰り返し回数に達するため、繰り返し回数の分散は、閾値(例えば、20)以上である。
【0080】
このような前提下において、変更例4では、特定条件として、繰り返し回数の分散が所定閾値以上である第2特定条件を用いる。
【0081】
(動作例)
以下において、変更例4に係る動作例について説明する。
【0082】
図10に示すように、ステップS30において、受信装置300は、観測データをリセットする。観測データは、LDPCブロック毎の繰り返し回数に関するデータである。
【0083】
ステップS31において、受信装置300は、観測データの格納数が所定数に達するか否かを判定する。受信装置300は、格納数が所定数に達するまで、観測データの格納を継続する。
【0084】
ステップS32において、受信装置300は、第2特定条件が満たされるか否かを判定する。第2特定条件は、繰り返し回数の分散が所定閾値以上である条件である。受信装置300は、第2特定条件が満たされない場合には、すなわち、受信状態が状態A~状態Cのいずれかである場合には、一連の処理を終了する。受信装置300は、第1特定条件が満たされる場合には、ステップS33の処理を実行する。
【0085】
ステップS33において、受信装置300は、初期LLRを縮退する特定制御を実行する。例えば、受信装置300は、実施形態と同様に、制御信号によって可変減衰器301を制御することによって、受信信号の電力を低減する制御を実行する。
【0086】
但し、受信装置300は、変更例1と同様に、制御信号によって雑音発生器351を制御することによって、受信信号に雑音を付加してもよい。受信装置300は、変更例2と同様に、制御信号によって雑音操作部353を制御することによって、初期LLRの算出に用いる雑音分散値を操作してもよい。受信装置300は、変更例3と同様に、制御信号によってLLR操作部355を制御することによって、初期LLRを直接的に操作してもよい。
【0087】
(作用及び効果)
変更例4では、特定条件は、繰り返し回数の分散が所定閾値以上である第2特定条件を含む。このような構成によれば、実施形態よりも直接的に状態Dを判定することができる。
【0088】
[変更例5]
以下において、実施形態の変更例5について説明する。以下においては、実施形態、変更例1~3に対する相違点について主として説明する。
【0089】
具体的には、実施形態では、特定条件は、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達することがある第1特定条件を含む。これに対して、変更例5では、特定条件は、第1特定条件に加えて、雑音分散値が所定閾値以下である第3特定条件を含む。
【0090】
図11に示すように、受信装置300は、雑音推定部30によって推定された雑音(又は雑音分散値)を制御部313が取得する点を除いて、
図2に示す構成と同様の構成を有してもよい(実施形態を参照)。或いは、
図12に示すように、受信装置300は、雑音推定部30によって推定された雑音(又は雑音分散値)を制御部313が取得する点を除いて、
図6に示す構成と同様の構成を有してもよい(変更例1を参照)。或いは、
図13に示すように、受信装置300は、雑音推定部30によって推定された雑音(又は雑音分散値)を制御部313が取得する点を除いて、
図7に示す構成と同様の構成を有してもよい(変更例2を参照)。或いは、
図14に示すように、受信装置300は、雑音推定部30によって推定された雑音(又は雑音分散値)を制御部313が取得する点を除いて、
図8に示す構成と同様の構成を有してもよい(変更例3を参照)。
【0091】
図15に示すように、状態Aでは、受信装置300のC/N比が所要C/N比(例えば、20dB)よりも低い状態であるため、受信信号の雑音分散値が閾値(例えば、0.01)よりも大きい。状態Bは、受信装置300のC/N比が所要C/N比の近傍である状態であるため、受信信号の雑音分散値が閾値(例えば、0.01)よりも大きい。状態Cは、受信装置300のC/N比が所要C/N比よりも高い状態であるため、受信信号の雑音分散値が閾値(例えば、0.01)以下である。状態Dは、受信装置300のC/N比が所要C/N比よりも高い状態であるため、受信信号の雑音分散値が閾値(例えば、0.01)以下である。
【0092】
上述したように、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達することがある第1特定条件のみでは、状態Bと状態Dとを区別することができないが、雑音分散値が所定閾値以下である第3特定条件を用いれば、状態Bと状態Dとを区別することができる。
【0093】
このような前提下において、変更例5では、特定条件として、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達することがある第1特定条件及び雑音分散値が所定閾値以下である第3特定条件を用いる。
【0094】
(動作例)
以下において、変更例5に係る動作例について説明する。
【0095】
図16に示すように、ステップS50において、受信装置300は、観測データをリセットする。観測データは、LDPCブロック毎の繰り返し回数に関するデータである。
【0096】
ステップS51において、受信装置300は、観測データの格納数が所定数に達するか否かを判定する。受信装置300は、格納数が所定数に達するまで、観測データの格納を継続する。
【0097】
ステップS52において、受信装置300は、第1特定条件が満たされるか否かを判定する。第1特定条件は、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達することがある条件である。受信装置300は、第1特定条件が満たされない場合には、すなわち、繰り返し回数が常に最大繰り返し回数に達しない条件及び繰り返し回数が常に最大繰り返し回数に達する条件が満たされた場合には、一連の処理を終了する。受信装置300は、第1特定条件が満たされる場合には、ステップS53の処理を実行する。ステップS52の段階では、状態Bと状態Dが区別されていないことに留意すべきである。
【0098】
ステップS53において、受信装置300は、第3特定条件が満たされるか否かを判定する。第3特定条件は、雑音分散値が所定閾値以下である条件である。受信装置300は、第3特定条件が満たされる場合には、すなわち、受信状態が状態Dである場合には、ステップS54の処理を実行する。受信装置300は、第3特定条件が満たされない場合には、すなわち、受信状態が状態Bである場合には、一連の処理を終了する。
【0099】
ステップS54において、受信装置300は、初期LLRを縮退する特定制御を実行する。例えば、受信装置300は、実施形態と同様に、制御信号によって可変減衰器301を制御することによって、受信信号の電力を低減する制御を実行する。
【0100】
但し、受信装置300は、変更例1と同様に、制御信号によって雑音発生器351を制御することによって、受信信号に雑音を付加してもよい。受信装置300は、変更例2と同様に、制御信号によって雑音操作部353を制御することによって、初期LLRの算出に用いる雑音分散値を操作してもよい。受信装置300は、変更例3と同様に、制御信号によってLLR操作部355を制御することによって、初期LLRを直接的に操作してもよい。
【0101】
(作用及び効果)
変更例5では、特定条件は、繰り返し回数が最大繰り返し回数に達することがある第1特定条件に加えて、雑音分散値が所定閾値以下である第3特定条件を含む。このような構成によれば、実施形態よりも直接的に状態Dを判定することができる。
【0102】
[その他の実施形態]
本発明は上述した開示によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0103】
上述した開示では、誤り訂正符号としてLDPC符号を用いるケースについて説明したが、上述した開示はこれに限定されるものではない。誤り訂正符号としては、LDPC符号以外の符号が用いられてもよい。
【0104】
上述した開示では、送信装置100と受信装置300との間に中継装置200が介在するケースについて説明したが、上述した開示はこれに限定されるものではない。送信装置100と受信装置300との間に中継装置200が介在していなくてもよい。
【0105】
上述した開示では特に触れていないが、受信装置300が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0106】
或いは、受信装置300が行う各処理を実行するためのプログラムを記憶するメモリ及びメモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成されるチップが提供されてもよい。
【符号の説明】
【0107】
10…デジタル無線伝送システム、100…送信装置、200…中継装置、300…受信装置、301…可変減衰器、303…FFT処理部、305…等化処理部、307…雑音推定部、309…LLR算出部、311…LDPC復号部、313…制御部、331…格納部、333…判定部、335…生成部、351…雑音発生器、353…雑音操作部、355…LLR操作部