(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-02
(45)【発行日】2025-07-10
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20250703BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20250703BHJP
【FI】
H05H1/46 M
H01L21/302 101B
(21)【出願番号】P 2021192339
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2024-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】松土 龍夫
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-096299(JP,A)
【文献】特開2019-203155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
上部電極と、
前記上部電極の下方に設けられたシャワーヘッドであり、前記チャンバの内部空間が該上部電極及び該シャワーヘッドの間の第1の空間並びに該シャワーヘッドの下方の第2の空間に分割され、該第1の空間及び該第2の空間を互いに連通させるように該シャワーヘッドを貫通する複数の開口が提供される、該シャワーヘッドと、
前記第2の空間内で基板を支持するように構成された基板支持部と、
前記上部電極及び前記シャワーヘッドの間に設けられた遮蔽部であり、該シャワーヘッドに沿って互いに並行に配置された第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板を有し、該第2の遮蔽板が該シャワーヘッド上に設けられ、該第1の遮蔽板が該第2の遮蔽板上に設けられ、該第1の遮蔽板及び該第2の遮蔽板が該シャワーヘッドの前記複数の開口と整列するように配置された複数の貫通孔を提供する、該遮蔽部と、
前記上部電極及び前記遮蔽部の間の前記第1の空間内の領域にガスを供給するように構成されたガス供給部と、
前記ガスのプラズマを生成するために高周波電圧を出力するように構成された高周波電源と、
前記遮蔽部に制御電圧を印加することによって前記プラズマのうち前記複数の貫通孔を通過させる
化学種を、ラジカルのみの化学種、該ラジカルと正イオンのみの化学種、及び該ラジカルと負イオンのみの化学種の中から選別するように構成された電圧印加部と、
前記電圧印加部を制御するように構成された制御部と、
を備え、
前記電圧印加部は、前記制御部から受ける制御に応じて、前記第1の遮蔽板及び前記第2の遮蔽板のそれぞれに、互いに独立に制御電圧を印加するように構成されて
おり、
前記制御部は、前記第2の遮蔽板に印加する制御電圧の絶対値が前記第1の遮蔽板に印加する制御電圧の絶対値以上となるように、前記電圧印加部を制御する、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第1の遮蔽板及び前記第2の遮蔽板のそれぞれは、絶縁コーティングされた金属板を含み、
前記電圧印加部は、第1のパルス発生器、第2のパルス発生器、第1の可変直流電源、及び第2の可変直流電源を有し、
前記第1のパルス発生器及び前記第2のパルス発生器は、矩形波状の制御電圧を出力するように構成されており、
前記第1の遮蔽板、前記第1のパルス発生器、及び前記第1の可変直流電源は、この順に電気的に直列接続され、
前記第2の遮蔽板、前記第2のパルス発生器、及び前記第2の可変直流電源は、この順に電気的に直列接続され、
前記制御部は、前記第1の遮蔽板及び前記第2の遮蔽板のそれぞれに互いに逆位相の矩形波状の制御電圧を印加するように、前記電圧印加部を制御する、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第1の遮蔽板及び前記第2の遮蔽板のそれぞれは、絶縁コーティングされていない金属板を含み、
前記電圧印加部は、第1の可変直流電源及び第2の可変直流電源を有し、
前記第1の遮蔽板及び前記第1の可変直流電源は、この順に電気的に直列接続され、
前記第2の遮蔽板及び前記第2の可変直流電源は、この順に電気的に直列接続され、
前記制御部は、前記第1の遮蔽板及び前記第2の遮蔽板のそれぞれに直流の制御電圧を印加するよう、前記電圧印加部を制御する、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記高周波電源に電気的に接続された電気回路を更に備え、
前記高周波電源は、前記上部電極に電気的に接続され、該上部電極に高周波電圧を印加することによって前記ガスのプラズマを発生させ、
前記電気回路は、前記高周波電源及びグランドの間に電気的に接続されたダイオードを有しており、
前記ダイオードのアノードは前記高周波電源に電気的に接続され、該ダイオードのカソードはグランドに電気的に接続されている、
請求項1~
3の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
プラズマ処理装置を用いて基板を処理するプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
上部電極の下方に設けられたシャワーヘッドであり、チャンバの内部空間が該上部電極及び該シャワーヘッドの間の第1の空間並びに該シャワーヘッドの下方の第2の空間に分割され、該第1の空間及び該第2の空間を互いに連通させるように該シャワーヘッドを貫通する複数の開口が提供される、該シャワーヘッドと、
前記上部電極及び前記シャワーヘッドの間に設けられた遮蔽部であり、該シャワーヘッドに沿って互いに並行に配置された第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板を有し、該第2の遮蔽板が該シャワーヘッド上に設けられ、該第1の遮蔽板が該第2の遮蔽板上に設けられ、該第1の遮蔽板及び該第2の遮蔽板が該シャワーヘッドの前記複数の開口と整列するように配置された複数の貫通孔を提供する、該遮蔽部と、
ガス供給部から前記第1の空間内の領域に供給されるガスのプラズマを生成するために高周波電圧を出力するように構成された高周波電源と、
を有し、
当該方法は、
前記第2の空間内で基板を支持するように構成された基板支持部上に基板を準備する工程と、
高周波電圧を前記上部電極に印加する工程と、
前記高周波電圧によって前記上部電極及び前記遮蔽部の間の空間でプラズマを生成する工程と、
前記プラズマのうち前記複数の貫通孔を通過させる
化学種を、ラジカルのみの化学種、該ラジカルと正イオンのみの化学種、及び該ラジカルと負イオンのみの化学種の中から選別するために前記遮蔽部に制御電圧を印加する工程と、
を備え、
制御電圧を印加する前記工程は、
前記第2の遮蔽板に印加する制御電圧の絶対値が前記第1の遮蔽板に印加する制御電圧の絶対値以上となるように、前記第1の遮蔽板及び前記第2の遮蔽板のそれぞれに、互いに独立に制御電圧を印加する、
プラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理が、基板処理の一種として行われている。プラズマ処理において、基板は、チャンバ内で生成されたプラズマからの化学種により処理される。プラズマ中の化学種は、イオン及びラジカルを含む。イオンは基板に損傷を与え得るので、ラジカルを用いる基板処理が行われることがある。下記の特許文献1には、シャワープレートの直下に設けられたイオントラップによってリモートプラズマ中のイオンを除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、リモートプラズマのイオン、ラジカルを選択的用いるための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバと上部電極とシャワーヘッドと基板支持部と遮蔽部とガス供給部と高周波電源と電圧印加部と制御部とを備え得る。シャワーヘッドは、上部電極の下方に設けられ得る。チャンバの内部空間が上部電極及びシャワーヘッドの間の第1の空間並びにシャワーヘッドの下方の第2の空間とに分割され得る。第1の空間及び第2の空間を互いに連通させるようにシャワーヘッドを貫通する複数の開口が提供され得る。基板支持部は、第2の空間内で基板を支持するように構成され得る。遮蔽部は、上部電極とシャワーヘッドとの間に設けられ得る。シャワーヘッドに沿って互いに並行に配置された第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板を有し得る。第2の遮蔽板がシャワーヘッド上に設けられ得る。第1の遮蔽板が第2の遮蔽板上に設けられ得る。第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板がシャワーヘッドの複数の開口と整列するように配置された複数の貫通孔を提供し得る。ガス供給部は、上部電極及び遮蔽部の間の第1の空間内の領域にガスを供給するように構成され得る。高周波電源は、ガスのプラズマを生成するために高周波電圧を出力するように構成され得る。電圧印加部は、遮蔽部に制御電圧を印加することによってプラズマのうち複数の貫通孔を通過させるイオンまたはラジカルを選別するように構成され得る。制御部は、電圧印加部を制御するように構成され得る。電圧印加部は、制御部から受ける制御に応じて、第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板のそれぞれに、互いに独立に制御電圧を印加するように構成され得る。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、リモートプラズマのイオン、ラジカルを選択的用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の構成を示す図である。
【
図2】一例の電圧印加部及び遮蔽部の構成を示す図である。
【
図3】一例の電圧印加部及び遮蔽部の構成を示す図である。
【
図4】一例のパルス発生器の回路構成を示す図である。
【
図5】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理方法を示すフローチャートである。
【
図6】上部電極に印加される高周波電圧の波形の一例である。
【
図7】二枚の遮蔽板のそれぞれに印加する電圧波形の一例である。
【
図8】二枚の遮蔽板のそれぞれに印加する電圧波形の一例である。
【
図9】二枚の遮蔽板のそれぞれに印加する電圧波形の一例である。
【
図10】二枚の遮蔽板のそれぞれに印加する電圧波形の一例である。
【
図11】二枚の遮蔽板のそれぞれに印加する電圧波形の一例である。
【
図12】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の他の構成における一例の電圧印加部及び遮蔽部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバと上部電極とシャワーヘッドと基板支持部と遮蔽部とガス供給部と高周波電源と電圧印加部と制御部とを備え得る。シャワーヘッドは、上部電極の下方に設けられ得る。チャンバの内部空間が上部電極及びシャワーヘッドの間の第1の空間並びにシャワーヘッドの下方の第2の空間とに分割され得る。第1の空間及び第2の空間を互いに連通させるようにシャワーヘッドを貫通する複数の開口が提供され得る。基板支持部は、第2の空間内で基板を支持するように構成され得る。遮蔽部は、上部電極とシャワーヘッドとの間に設けられ得る。シャワーヘッドに沿って互いに並行に配置された第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板を有し得る。第2の遮蔽板がシャワーヘッド上に設けられ得る。第1の遮蔽板が第2の遮蔽板上に設けられ得る。第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板がシャワーヘッドの複数の開口と整列するように配置された複数の貫通孔を提供し得る。ガス供給部は、上部電極及び遮蔽部の間の第1の空間内の領域にガスを供給するように構成され得る。高周波電源は、ガスのプラズマを生成するために高周波電圧を出力するように構成され得る。電圧印加部は、遮蔽部に制御電圧を印加することによってプラズマのうち複数の貫通孔を通過させるイオンまたはラジカルを選別するように構成され得る。制御部は、電圧印加部を制御するように構成され得る。電圧印加部は、制御部から受ける制御に応じて、第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板のそれぞれに、互いに独立に制御電圧を印加するように構成され得る。
【0010】
このように、第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板のそれぞれに、互いに独立に制御電圧を印加できる。したがって、第1の領域のうち上部電極及び遮蔽部の間の空間のプラズマのうち、遮蔽部及びシャワーヘッドを通過させる粒子のタイプ(正イオンと、負イオン及び電子と、ラジカルとの何れか)を選別できる。
【0011】
一つの例示的実施形態において、第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板のそれぞれは、絶縁コーティングされた金属板を含み得る。電圧印加部は、第1のパルス発生器、第2のパルス発生器、第1の可変直流電源、及び第2の可変直流電源を有し得る。第1のパルス発生器及び第2のパルス発生器は、矩形波状の制御電圧を出力するように構成され得る。第1の遮蔽板、第1のパルス発生器、及び第1の可変直流電源は、この順に電気的に直列接続され得る。第2の遮蔽板、第2のパルス発生器、及び第2の可変直流電源は、この順に電気的に直列接続され得る。制御部は、第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板のそれぞれに互いに逆位相の矩形波状の制御電圧を印加するように、電圧印加部を制御し得る。
【0012】
一つの例示的実施形態において、第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板のそれぞれは、絶縁コーティングされていない金属板を含み得る。電圧印加部は、第1の可変直流電源及び第2の可変直流電源を有し得る。第1の遮蔽板及び第1の可変直流電源は、この順に電気的に直列接続され得る。第2の遮蔽板及び第2の可変直流電源は、この順に電気的に直列接続され得る。制御部は、第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板のそれぞれに直流の制御電圧を印加するよう、電圧印加部を制御し得る。
【0013】
一つの例示的実施形態において、制御部は、第2の遮蔽板に印加する制御電圧の絶対値が第1の遮蔽板に印加する制御電圧の絶対値以上となるように、電圧印加部を制御し得る。
【0014】
一つの例示的実施形態において、高周波電源に電気的に接続された電気回路を更に備え得る。高周波電源は、上部電極に電気的に接続され、上部電極に高周波電圧を印加することによってガスのプラズマを発生させ得る。電気回路は、高周波電源及びグランドの間に電気的に接続されたダイオードを有し得る。ダイオードのアノードは高周波電源に電気的に接続され、ダイオードのカソードはグランドに電気的に接続され得る。
【0015】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、コイルと電気回路とを更に備え得る。コイルは、高周波電源に電気的に接続されており、上部電極上において上部電極に沿って延在し得る。電気回路は、コイルを介して高周波電源に電気的に接続され得る。高周波電源は、コイルに高周波電圧を印加することによってガスのプラズマを発生させ得る。電気回路は、高周波電源及びグランドの間に電気的に接続されたキャパシタを有し得る。
【0016】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理方法が提供される。プラズマ処理方法は、プラズマ処理装置を用いて基板を処理する方法である。プラズマ処理装置は、シャワーヘッドと遮蔽部と高周波電源とを有する。シャワーヘッドは、上部電極の下方に設けられ得る。チャンバの内部空間が上部電極及びシャワーヘッドの間の第1の空間並びにシャワーヘッドの下方の第2の空間に分割され得る。第1の空間及び第2の空間を互いに連通させるようにシャワーヘッドを貫通する複数の開口が提供され得る。遮蔽部は、上部電極及びシャワーヘッドの間に設けられ得る。遮蔽部は、シャワーヘッドに沿って互いに並行に配置された第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板を有し得る。第2の遮蔽板がシャワーヘッド上に設けられ得る。第1の遮蔽板が第2の遮蔽板上に設けられ得る。第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板がシャワーヘッドの複数の開口と整列するように配置された複数の貫通孔を提供し得る。高周波電源は、ガス供給部から第1の空間内の領域に供給されるガスのプラズマを生成するために高周波電圧を出力するように構成され得る。このプラズマ処理方法は、工程a、b、c、dを備える。工程aは、第2の空間内で基板を支持するように構成された基板支持部上に基板を準備し得る。工程bは、高周波電圧を上部電極に印加し得る。工程cは、高周波電圧によって上部電極及び遮蔽部の間の空間でプラズマを生成し得る。工程dは、プラズマのうち複数の貫通孔を通過させるイオンまたはラジカルを選別するために遮蔽部に制御電圧を印加し得る。工程dは、第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板のそれぞれに、互いに独立に制御電圧を印加し得る。
【0017】
このように、第1の遮蔽板及び第2の遮蔽板のそれぞれに、互いに独立に制御電圧を印加できる。したがって、第1の領域のうち上部電極及び遮蔽部の間の空間のプラズマのうち、遮蔽部及びシャワーヘッドを通過させる粒子のタイプ(正イオンと、負イオン及び電子と、ラジカルとの何れか)を選別できる。
【0018】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0019】
図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図1に示すプラズマ処理装置1は、容量結合型(Capacitively Coupled Plasma:CCP)のプラズマ処理装置であり、チャンバ10を備えている。チャンバ10は、略円筒形状を有している。チャンバ10は、アルミニウムといった導電性材料から形成されている。チャンバ10は、接地されている。チャンバ10は、その中に内部空間10sを提供している。
【0020】
プラズマ処理装置1は、上部電極12を更に備えている。上部電極12は、後述する基板支持部16の上方で延在している。一実施形態では、上部電極12は、部材13と共にチャンバ10の上端開口を閉じている。上部電極12は、略円盤形状を有しており、アルミニウムといった導電性材料から形成されている。部材13は、絶縁材料から形成されている。部材13は、チャンバ10の上端と上部電極12との間に介在している。
【0021】
プラズマ処理装置1は、シャワーヘッド14を更に備えている。シャワーヘッド14は、上部電極12の下方に設けられている。シャワーヘッド14は、略円盤形状を有している。シャワーヘッド14は、アルミニウムといった導電性材料から形成されている。シャワーヘッド14は、内部空間10sを空間S1と空間S2に分割する。空間S1は、上部電極12とシャワーヘッド14との間の空間である。空間S2は、シャワーヘッド14の下方の空間である。
【0022】
一実施形態では、部材15が、上部電極12とシャワーヘッド14との間に設けられていてもよい。部材15は、筒形状を有しており、酸化アルミニウムといった絶縁材料から形成されている。空間S1は、上部電極12とシャワーヘッド14との間、且つ、部材15の内側に提供されている。
【0023】
シャワーヘッド14は、複数の導入口14i及び複数の開口14hを提供している。複数の導入口14iは、空間S2にガスを導入するために、シャワーヘッド14に形成されている。複数の開口14hは、空間S1と空間S2を互いに連通させるために、シャワーヘッド14に形成されている。
【0024】
チャンバ10は、側壁を有している。チャンバ10の側壁は、通路10pを提供している。基板Wは、空間S2とチャンバ10の外部との間で搬送されるときに、通路10pを通過する。プラズマ処理装置1は、ゲートバルブ10gを更に備えていてもよい。ゲートバルブ10gは、通路10pを開閉するために、チャンバ10の側壁に沿って設けられる。
【0025】
プラズマ処理装置1は、基板支持部16を更に備えている。基板支持部16は、空間S2内で基板Wを支持するように構成されている。基板Wは、略円盤形状を有し得る。基板Wは、空間S2内で基板支持部16上に載置された状態で、処理される。基板支持部16は、窒化アルミニウムといった絶縁性セラミックスから形成されていてもよい。或いは、基板支持部16は、導電性材料から形成されていてもよい。
【0026】
一実施形態において、基板支持部16は、支持部材17によって支持されていてもよい。支持部材17は、チャンバ10の底部から上方に延在していてもよい。基板支持部16は、ヒータ16hを有していてもよい。ヒータ16hは、基板支持部16の中に設けられている。ヒータ16hは、ヒータ電源から供給される電力を受けるように構成されている。ヒータ16hは、基板支持部16上の基板Wを、指定された温度に加熱するように構成されている。
【0027】
一実施形態において、基板支持部16は、下部電極16eを更に備えていてもよい。下部電極16eは、基板支持部16の中に設けられている。なお、基板支持部16が導電性材料から形成されている場合には、基板支持部16は、下部電極16eとして機能する。
【0028】
プラズマ処理装置1は、ガス供給部20を更に備えている。ガス供給部20は、上部電極12及び遮蔽部18の間の空間S1内の領域、特に領域R1にガスを供給するように構成されている。一実施形態では、ガス供給部20は、上部電極12のガス導入ポートに接続されており、このガス導入ポートを介して領域R1にガスを供給する。
【0029】
プラズマ処理装置1は、ガス供給部22を更に備えている。ガス供給部22は、シャワーヘッド14にガスを供給するように構成されている。一実施形態では、ガス供給部22は、配管23を介してシャワーヘッド14に接続されており、配管23を介して、シャワーヘッド14にガスを供給する。ガス供給部22からシャワーヘッド14に供給されたガスは、シャワーヘッド14内において互いに連通する複数の導入口14iから空間S2に導入される。
【0030】
プラズマ処理装置1は、チャンバ10の中でガスからプラズマを生成するために、一つ以上の電源を備えている。一つ以上の電源は、上部電極12に接続されている。一実施形態において、プラズマ処理装置1は、一つ以上の電源として、高周波電源24及び直流パルス電源26を備えていてもよい。
【0031】
高周波電源24は、ガス供給部20から領域R1に供給されるガスのプラズマを生成するために高周波電圧(以下、「第1の高周波電圧」ということがある)を出力するように構成されている。高周波電源24は、上部電極12に接続されている。第1の高周波電圧は、上部電極12に供給される。第1の高周波電圧の周波数は、300kHz以上、100MHz以下であり得る。一例では、第1の高周波電圧の周波数は、40MHzであってもよい。
【0032】
高周波電源24は、整合器24mを介して上部電極12に接続されていてもよい。整合器24mは、高周波電源24の負荷側のインピーダンスを高周波電源24の出力インピーダンスに整合させるための整合回路を含んでいる。以下、「高周波電源」は、高周波電源24だけでなく整合器24mを有するものの総称である場合がある。
【0033】
直流パルス電源26は、パルス状の直流電圧を間欠的又は周期的に発生する。直流パルス電源26は、上部電極12に接続されている。直流パルス電源26によって発生されるパルス状の直流電圧は、上部電極12に印加される。パルス状の直流電圧は、正極性を有していてもよく、或いは、負極性を有していてもよい。上部電極12に印加されるパルス状の直流電圧の周期を定める周波数は、10Hz以上、1MHz以下である。この周波数は、上部電極12に印加されるパルス状の直流電圧の周期の逆数である。一例では、この周波数は、500kHzであってもよい。
【0034】
一実施形態において、直流パルス電源26は、直流電源26a及びパルスユニット26bを含んでいてもよい。直流電源26aは、直流電圧を発生する電源である。直流電源26aは、可変直流電源であってもよい。パルスユニット26bは、直流電源26aと上部電極12との間で接続されている。パルスユニット26bは、直流電源26aからの直流電圧を、パルス状の直流電圧に変調するように構成されている。パルスユニット26bは、一つ以上のスイッチングトランジスタから構成され得る。
【0035】
一実施形態において、直流パルス電源26は、フィルタ26fを介して上部電極12に接続されていてもよい。フィルタ26fは、高周波電圧を遮断するか、或いは、減衰させる電気フィルタである。
【0036】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、高周波電源30を更に備えていてもよい。高周波電源30は、高周波電圧(以下、「第2の高周波電圧」ということがある)を発生する電源である。高周波電源30は、下部電極16eに接続されている。第2の高周波電圧は、下部電極16eに供給される。第2の高周波電圧の周波数は、300kHz以上、100MHz以下である。一例では、第2の高周波電圧の周波数は、400kHzであってもよい。
【0037】
高周波電源30は、整合器30mを介して下部電極16eに接続されていてもよい。整合器30mは、高周波電源30の負荷側のインピーダンスを高周波電源30の出力インピーダンスに整合させるための整合回路を含んでいる。
【0038】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、排気装置32を更に備えていてもよい。排気装置32は、排気管33を介してチャンバ10の内部空間10sに接続されている。排気装置32は、ドライポンプ、ターボ分子ポンプといった一つ以上のポンプ及び自動圧力制御弁といった圧力制御器を含み得る。一実施形態において、排気装置32は、排気管33及び排気口10eを介して空間S2に接続されていてもよい。排気口10eは、チャンバ10の底部に設けられていてもよい。
【0039】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、制御部40を更に備えていてもよい。制御部40は、電圧印加部4等のプラズマ処理装置1の各部を制御するように構成されている。制御部40は、プロセッサ、入力装置、出力装置、表示装置、及び記憶装置等を有するコンピュータであってもよい。記憶装置には、制御プログラム及びレシピデータが格納されている。プロセッサは、制御プログラムを実行し、レシピデータに従って、プラズマ処理装置1の各部を制御する。その結果、プラズマ処理装置1では、レシピデータに従ったプラズマ処理が実行される。後述する種々の例示的実施形態に係るプラズマ処理方法は、制御部40によるプラズマ処理装置1の各部の制御により、プラズマ処理装置1において実行され得る。
【0040】
プラズマ処理装置1は、遮蔽部18を更に備えている。遮蔽部18は、上部電極12及びシャワーヘッド14の間に設けられている。遮蔽部18は、空間S1を、領域R1と領域R2に分割する。領域R1は、上部電極12及び遮蔽部18の間の領域である。領域R2は、遮蔽部18とシャワーヘッド14との間の領域である。
【0041】
遮蔽部18は、複数の貫通孔18hを提供している。複数の貫通孔18hの各々は、複数の開口14hと整列するように配置されている。即ち、複数の貫通孔18hの各々は、その下端が複数の開口14hの上端と対面するように、配置されている。換言すると、複数の貫通孔18h及び複数の開口14hは、それらを基板Wに平行な面に投影した図形が互いに重なるように、配置されている。
【0042】
遮蔽部18は、シャワーヘッド14に沿って互いに並行に配置された遮蔽板18a及び遮蔽板18bを有する。遮蔽板18bがシャワーヘッド14の上方に設けられ、遮蔽板18aが遮蔽板18bの上方に設けられている。遮蔽板18a及び遮蔽板18bがシャワーヘッド14の複数の開口14hと整列するように配置された複数の貫通孔18hを提供する。
【0043】
遮蔽板18a及び遮蔽板18bの何れもが、絶縁コーティングされていない金属板(例えば、無垢のアルミニウム、ニッケル等の金属板)を含み得る。遮蔽板18a及び遮蔽板18bのそれぞれは、絶縁コーティングされた(例えばアルマイトや溶射でそれらの表面が不導体化された)金属板(例えば、無垢のアルミニウム、ニッケル等の金属板)を含み得る。遮蔽部18は、略円盤形状を有している。一実施形態において、チャンバ10の内壁面、上部電極12の表面、シャワーヘッド14の表面、及び遮蔽部18の表面は、耐腐食性を有する膜で覆われていてもよい。この膜は、アルマイト膜又は酸化イットリウム膜で有り得る。
【0044】
プラズマ処理装置1は、更に電圧印加部4を備えてもよい。電圧印加部4は、遮蔽部18に制御電圧を印加することによって空間S1の領域R1内で発生したプラズマのうち複数の貫通孔18hを通過させるイオンまたはラジカルを選別するように構成されている。電圧印加部4は、制御部40から受ける制御に応じて、遮蔽板18a及び遮蔽板18bのそれぞれに、互いに独立に制御電圧を印加するように構成されている。
【0045】
図2は、遮蔽板18a及び遮蔽板18bの何れもが、絶縁コーティングされた金属板を含む場合におけるプラズマ処理装置1の一部の構成の一例を示す。
図2は、説明のために、簡略的に記載されている。一実施形態において、電圧印加部4は、パルス発生器Pa、パルス発生器Pb、可変直流電源Da、及び可変直流電源Dbを有する。遮蔽板18a、パルス発生器Pa、及び可変直流電源Daは、この順に電気的に直列接続されている。遮蔽板18b、パルス発生器Pb、及び可変直流電源Dbは、この順に電気的に直列接続されている。制御部40は、遮蔽板18a及び遮蔽板18bのそれぞれに互いに逆位相の矩形波状の制御電圧を印加するように、電圧印加部4を制御する。
【0046】
一実施形態において、
図2に示す電圧印加部4のパルス発生器Pa及びパルス発生器Pbは何れも、矩形波状の制御電圧を出力するように構成されている。制御部40は、遮蔽板18a及び遮蔽板18bのそれぞれに同一周波数であって互いに逆位相の矩形波状(パルス状)の制御電圧を印加するように、電圧印加部4を制御する。パルス発生器Pa及びパルス発生器Pbは何れも、0~1MHzの範囲内にある同一周波数であって互いに逆位相の矩形波状(パルス状)の制御電圧を出力し得る。
【0047】
遮蔽板18a及び遮蔽板18bのそれぞれに、互いに逆位相の矩形波状の制御電圧が印加される。これにより、
図7に示すように、遮蔽板18aの電位V1及び遮蔽板18bの電位V2は、制御電圧と同様に、同一周波数であって互いに逆位相の矩形波状の電位となる。
【0048】
図7に示すように、遮蔽板18aの電位V1が正であり遮蔽板18bの電位V2が負の場合、正イオンは遮蔽板18aにおける貫通孔18hを通過せずに
図3の方向K1に沿って領域R1に留まる。この場合、負イオン及び電子は
図3の方向K2に沿って遮蔽板18aにおける貫通孔18hを通過するが遮蔽板18bにおける貫通孔18hを通過せずに
図3の方向K1に沿って領域R1に留まる。遮蔽板18aの電位V1が負であり遮蔽板18bの電位V2が正の場合、負イオン及び電子は遮蔽板18aにおける貫通孔18hを通過せずに
図3の方向K1に沿って領域R1に留まる。この場合、正イオンは
図3の方向K2に沿って遮蔽板18aにおける貫通孔18hを通過するが遮蔽板18bにおける貫通孔18hを通過せずに
図3の方向K1に沿って領域R1に留まる。したがって、
図7に示すように遮蔽板18aの電位V1及び遮蔽板18bの電位V2が互いに逆位相の矩形波状の電位の場合、領域R1内で生じたプラズマのうちラジカルが選択的に貫通孔18hを通過し得る。
【0049】
一実施形態において、パルス発生器Pa及びパルス発生器Pbは、何れも
図4に示す回路構成を有し得る。パルス発生器Pa及びパルス発生器Pbは、入力端Vin、抵抗器RS1、抵抗器RS2、増幅器OP、抵抗器RS3、抵抗器RS4、キャパシタC1、直流電源DV、及び出力端Voutを有する。入力端Vin、抵抗器RS1、及び抵抗器RS2は、この順に電気的に直列接続されており、抵抗器RS2はグランドに電気的に接続されている。抵抗器RS1及び抵抗器RS2の接続点は、増幅器OPの正入力端子に電気的に接続されているとともに、抵抗器RS4を介して増幅器OPの出力端子に電気的に接続されている。増幅器OPの負入力端子は、抵抗器RS3を介して増幅器OPの入力端子に電気的に接続されているとともに、キャパシタC1を介してグランドに電気的に接続されている。
【0050】
制御部40は、遮蔽板18bに印加する制御電圧の絶対値が遮蔽板18aに印加する制御電圧の絶対値以上となるように、電圧印加部4を制御する。この結果、意図せず遮蔽板18aにおける貫通孔18hを通過した荷電粒子が、さらに遮蔽板18bにおける貫通孔18hを通過することを抑制できる。
図8、
図9、
図10、及び
図11のそれぞれに示す電位V1及び電位V2においても、電位V2の絶対値が電位V1の絶対値以上となっている。
【0051】
図3は、遮蔽板18a及び遮蔽板18bの何れもが、絶縁コーティングされていない金属板(無垢の金属板)を含む場合におけるプラズマ処理装置1の一部の構成の一例を示す。
図3は、説明のために、簡略的に記載されている。一実施形態において、電圧印加部4は、可変直流電源Da及び可変直流電源Dbを有している。遮蔽板18a及び可変直流電源Daは、この順に電気的に直列接続されている。遮蔽板18b及び可変直流電源Dbは、この順に電気的に直列接続されている。制御部40は、遮蔽板18a及び遮蔽板18bのそれぞれに直流の制御電圧を印加するよう、電圧印加部4を制御する。
【0052】
一実施形態において、
図3に示す電圧印加部4の可変直流電源Da及び可変直流電源Dbは、何れも直流の制御電圧を印加するように構成されている。制御部40は、遮蔽板18a及び遮蔽板18bのそれぞれに、直流の制御電圧を印加するように、電圧印加部4を制御する。
【0053】
遮蔽板18a及び遮蔽板18bのそれぞれに直流の制御電圧が印加されることによって、
図8、
図9、
図10、及び
図11のそれぞれに示すように、遮蔽板18aの電位V1及び遮蔽板18bの電位V2は、制御電圧と同様にそれぞれ一定の電位となる。
【0054】
図8に示すように遮蔽板18aの電位V1が正であり遮蔽板18bの電位V2が負の場合、正イオンは遮蔽板18aの貫通孔18hを通過せずに
図3の方向K1に沿って領域R1に留まる。この場合、負イオン及び電子は
図3の方向K2に沿って遮蔽板18aにおける貫通孔18hを通過するが遮蔽板18bにおける貫通孔18hを通過せずに
図3の方向K1に沿って領域R1に留まる。したがって、
図8に示すように遮蔽板18aの電位V1が正であり遮蔽板18bの電位V2が負の場合、領域R1内で生じたプラズマのうちラジカルが選択的に貫通孔18hを通過し得る。
【0055】
図9に示すように遮蔽板18aの電位V1が負であり遮蔽板18bの電位V2が正の場合、負イオン及び電子は遮蔽板18aの貫通孔18hを通過せずに
図3の方向K1に沿って領域R1に留まる。この場合、正イオンは
図3の方向K2に沿って遮蔽板18aにおける貫通孔18hを通過するが遮蔽板18bにおける貫通孔18hを通過せずに
図3の方向K1に沿って領域R1に留まる。したがって、
図9に示すように遮蔽板18aの電位V1が負であり遮蔽板18bの電位V2が正の場合、領域R1内で生じたプラズマのうちラジカルが選択的に貫通孔18hを通過し得る。
【0056】
図10に示すように遮蔽板18aの電位V1及び遮蔽板18bの電位V2が負の場合、正イオンは
図3の方向K2に沿って遮蔽板18a及び遮蔽板18b(遮蔽部18)における貫通孔18hを通過する。この場合、負イオン及び電子は遮蔽板18a及び遮蔽板18b(遮蔽部18)における貫通孔18hを通過せずに
図3の方向K1に沿って領域R1に留まる。したがって、
図10に示すように遮蔽板18aの電位V1及び遮蔽板18bの電位V2が負の場合、領域R1内で生じたプラズマのうち正イオン及びラジカルが選択的に貫通孔18hを通過し得る。
【0057】
図11に示すように遮蔽板18aの電位V1及び遮蔽板18bの電位V2が正の場合、負イオン及び電子は
図3の方向K2に沿って遮蔽板18a及び遮蔽板18b(遮蔽部18)における貫通孔18hを通過する。この場合、正イオンは遮蔽板18a及び遮蔽板18b(遮蔽部18)における貫通孔18hを通過せずに
図3の方向K1に沿って領域R1に留まる。したがって、
図11に示すように遮蔽板18aの電位V1及び遮蔽板18bの電位V2が正の場合、領域R1内で生じたプラズマのうち負イオン及びラジカルが選択的に貫通孔18hを通過し得る。
【0058】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、電気回路5を更に備えてもよい。
図1~
図3に示すように、プラズマ処理装置1が容量結合型のプラズマ処理装置の場合、電気回路5は、高周波電源24及びグランドの間に電気的に接続されたダイオード5aを有する。ダイオード5aのアノードは高周波電源24に電気的に接続され、ダイオード5aのカソードはグランドに電気的に接続されている。電気回路5は、高周波電源24に整合器24mを介して電気的に接続されている。高周波電源24は、上部電極12に電気的に接続され、上部電極12に高周波電圧を印加することによってガス供給部20から空間S1の領域R1に供給されるガスのプラズマを発生させるように構成されている。ダイオード5aを有する電気回路5によって、上部電極12には、
図6に示すように、正の成分が除かれ負の成分のみの電圧が高周波電源24から印加される。これにより、遮蔽部18に向かう正イオンのエネルギーはほぼゼロeVとなり、イオン等の正の荷電粒子をトラップするための遮蔽板18a及び遮蔽板18bのそれぞれの電位は+10V程度でよい。なお、電気回路5を設けない場合、イオン等の荷電粒子をトラップするための遮蔽板18a及び遮蔽板18bのそれぞれの電位は±5V~±500Vの範囲内にある。
【0059】
図5は、一つの例示的実施形態におけるプラズマ処理方法(方法MT)のフローチャートを示す。方法MTは、工程ST1~ST4を備える。工程ST1は、空間S2内で基板を支持するように構成された基板支持部16上に基板Wを準備する工程である。工程ST2は、工程ST1の後に実行され、高周波電源24から上部電極12に高周波電圧を印加する工程である。工程ST3は、工程ST2の後に実行され、高周波電源24から上部電極12に印加される高周波電圧によって上部電極12及び遮蔽部18の間の空間でガス供給部20から供給されるガスのプラズマを生成する。工程ST4は、工程ST3の後に実行され、このプラズマのうち複数の貫通孔18hを通過させるイオンまたはラジカルを選別するために遮蔽部18に制御電圧を印加する。この工程ST4では、遮蔽板18a及び遮蔽板18bのそれぞれに、互いに独立に制御電圧が印加される。これにより、空間S1の領域R1で生じたプラズマのうち遮蔽部18の複数の貫通孔18hを通過させるイオンまたはラジカルを選別することができる。
【0060】
以上説明したように、遮蔽板18a及び遮蔽板18bの電位を制御することによって、領域R1で発生させたプラズマのうち遮蔽部18の貫通孔18hを通過させて基板Wに導く粒子のタイプ(正、負の荷電粒子の何れか)を好適に選別できる。
【0061】
例えば、遮蔽板18a及び遮蔽板18bを正負同一の極性の電位に設定することによって、遮蔽部18の貫通孔18hを通過させ基板Wに導く粒子をラジカルに選別できる。これによりラジカルによるプロセスが可能となる。
【0062】
例えば、遮蔽板18a及び遮蔽板18bを正負が互いに異なる極性の電位に設定することによって、遮蔽部18の貫通孔18hを通過させ基板Wに導く粒子を正イオン、並びに負イオン及び電子の何れかに選別できる。これによりイオンによる異方的なプロセスが可能となる。
【0063】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0064】
例えば、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置1は、
図1~
図3のぞれぞれに示す容量結合型(CCP)のプラズマ処理装置に限られない。例えば、
図12に示す誘導結合型(Inductively Coupled Plasma:ICP)のプラズマ処理装置であり得る。
図12は、説明のために、簡略的に記載されている。
図12に示すように、誘導結合型のプラズマ処理装置1は、コイルCLと電気回路5とを備える。コイルCLは、整合器24mを介して高周波電源24に電気的に接続されており、上部電極12上において上部電極12に沿って延在する。電気回路5は、コイルCL及び整合器24mを介して高周波電源24に電気的に接続されている。高周波電源24は、コイルCLに高周波電圧を印加することによって、ガス供給部20から空間S1の領域R1に供給されるガスのプラズマを発生させるように構成される。電気回路5は、高周波電源24(整合器24mを含む)及びグランドの間に電気的に接続されたキャパシタ5bを有している。
図12に示す誘導結合型のプラズマ処理装置1は、上記した容量結合型のプラズマ処理装置1と同様の機能を発揮し、同様の効果を奏し得る。また、プラズマ源は、CCP、ICP以外にも、マイクロ波にも適用され得る。
【0065】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0066】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、10s…内部空間、12…上部電極、14…シャワーヘッド、16…基板支持部、16e…下部電極、18…遮蔽部、18a…遮蔽板、18b…遮蔽板、18h…貫通孔、20…ガス供給部、24…高周波電源、24m…整合器、26…直流パルス電源、4…電圧印加部、40…制御部、5…電気回路、5a…ダイオード、5b…キャパシタ、CL…コイル、Da…可変直流電源、Db…可変直流電源、DV…直流電源、MT…方法、OP…増幅器、Pa…パルス発生器、Pb…パルス発生器、R1…領域、R2…領域、S1…空間、S2…空間、Vin…入力端、Vout…出力端、W…基板。