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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】剥離層形成用組成物及び剥離層
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/00 20060101AFI20250708BHJP
   C09D 5/20 20060101ALI20250708BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20250708BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20250708BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
C09D4/00
C09D5/20
C09D133/00
B32B27/00 L
B32B27/38
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021031381
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022132755
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 潤
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/080359(WO,A1)
【文献】特開2016-099389(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158521(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/150748(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 4/00
C09D 5/20
C09D 133/00
B32B 27/00
B32B 27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と樹脂基板との間に介在し、樹脂基板との界面で剥離する剥離層を形成するための剥離層形成用組成物であって、
(A)光照射により硬化する重合体を含有し、
前記重合体が、光二量化する構造部位を有するモノマーを用いて得られる重合体であり、
前記光二量化する構造部位を有するモノマーが、下記式[1]又は式[2]で表されるシンナモイル基又はシンナモイル構造を含む置換基を有するアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする剥離層形成用組成物。
【化1】
〔式[1]中、X1は、炭素原子数1~18のアルキル基、フェニル基又はビフェニル基を表し、
式[2]中、X2は、水素原子、シアノ基、炭素原子数1~18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基又はシクロヘキシル基を表し、
式[1]及び式[2]中、Aは、下記式[A1]、式[A2]、式[A3]、式[A4]、式[A5]及び式[A6]のいずれかを表す。
【化2】
(式[A1]~[A6]中、R1~R8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基を表す。)〕
【請求項2】
前記式[1]及び式[2]において、前記Aが、前記式[A1]を表す請求項1記載の剥離層形成用組成物。
【請求項3】
前記光二量化する構造部位を有するモノマーが、前記式[1]で表されるシンナモイル基又はシンナモイル構造を含む置換基を有するアクリル酸エステル化合物及びメタクリル酸エステル化合物から選ばれる1種または2種以上である請求項1または2記載の剥離層形成用組成物。
【請求項4】
前記(A)光照射により硬化する重合体が、光二量化する構造部位を有するモノマーとともに、光二量化する構造部位を有しないモノマーを用いて得られる重合体であり、
前記光二量化する構造部位を有するモノマーの含有量が、全モノマー単位100モル%に対して1~50モル%であり、かつ、前記光二量化する構造部位を有しないモノマーの含有量が、全モノマー単位100モル%に対して50~99モル%である請求項1~3のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物。
【請求項5】
前記光二量化する構造部位を有しないモノマーが、脂環式炭化水素基を有するモノマーである請求項4記載の剥離層形成用組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物を光硬化させてなる剥離層。
【請求項7】
請求項6記載の剥離層に、波長400nmの光透過率が80%以上である樹脂層が積層された積層体。
【請求項8】
前記樹脂層が、エポキシ化合物を含有する熱硬化膜である請求項7記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物を基体上に塗布した後、露光を行うことで剥離層を形成する積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項記載の剥離層形成用組成物を基体に塗布し、露光して剥離層を形成する工程、
前記剥離層上に、波長400nmの光透過率が80%以上である樹脂基板を形成する工程、及び
前記樹脂基板を、1.0N/25mm以下の剥離力で剥離する工程
を含む樹脂基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離層形成用組成物及び剥離層に関し、さらに詳述すると、光照射によって硬化させる剥離層形成用組成物及び当該組成物を光硬化させて得られる剥離層に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスには薄型化及び軽量化という特性に加え、曲げることができるという機能を付与することが求められている。このことから、従来の重く脆弱で曲げることができないガラス基板にかわって、軽量なフレキシブルプラスチック基板を用いることが求められる。
【0003】
特に、新世代ディスプレイでは、軽量なフレキシブルプラスチック基板(以下、樹脂基板ともいう。)を用いたアクティブマトリクス型フルカラーTFTディスプレイパネルの開発が求められている。また、タッチパネル式ディスプレイは、ディスプレイパネルに組み合わせて使用されるタッチパネルの透明電極や樹脂基板等、フレキシブル化に対応する材料が開発されている。透明電極としては、従来使用されていたITOから、PEDOT等曲げ加工が可能な透明導電性ポリマー、金属ナノワイヤ、及びその混合系等、別の透明電極材料が提案されている(特許文献1~4)。
【0004】
一方、タッチパネルフィルムの基材も、ガラスからポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、シクロオレフィン、アクリル等のプラスチックからなるシート等になり、フレキシブル性を持たせた透明フレキシブル性タッチスクリーンパネルが開発されている(特許文献5~7)。
【0005】
一般的に、フレキシブル性タッチスクリーンパネルは、生産性と剥離性を安定的に行うため、ガラス基板等の支持基板上に剥離(粘着)層を作製し、その上に樹脂基板等から構成されるデバイスを作製後剥離することで生産される(特許文献8)。
【0006】
剥離層としては、例えば、所定のポリマー及び架橋剤を含む硬化性樹脂化合物が記載されている(特許文献9~10)。これらの剥離層は、支持基板上から容易に剥離できる一方、支持基板と剥離層との界面で剥離するため、剥離層がデバイス側に残存し、デバイス作製工程や透過性に悪影響を及ぼす場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2012/147235号
【文献】特開2009-283410号公報
【文献】特表2010-507199号公報
【文献】特開2009-205924号公報
【文献】国際公開第2017/002664号
【文献】国際公開第2016/160338号
【文献】特開2015-166145号公報
【文献】特開2016-531358号公報
【文献】国際公開第2018/033995号
【文献】国際公開第2019/159248号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、剥離層上に樹脂基板等から構成されるデバイスを形成でき、剥離層と樹脂基板等から構成されるデバイスとの界面で容易に剥離する剥離層を与える光硬化型の剥離層形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(A)光照射により硬化する重合体を含有する剥離層形成用組成物が、光照射により、剥離層上に樹脂基板等から構成されるデバイスを形成でき、剥離層と樹脂基板等から構成されるデバイスとの界面で容易に剥離する剥離層を再現性よく与え得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
1. (A)光照射により硬化する重合体を含有することを特徴とする剥離層形成用組成物、
2. 前記(A)光照射により硬化する重合体が、光二量化する構造部位を有する重合体である1の剥離層形成用組成物、
3. 前記光二量化する構造部位が、シンナモイル基である1又は2の剥離層形成用組成物、
4. (A)光照射により硬化する重合体が、光二量化する構造部位を有するモノマーを用いて得られる重合体である1~3のいずれかの剥離層形成用組成物、
5. 前記(A)光照射により硬化する重合体が、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物からなる群から選ばれるモノマーを用いて得られる重合体である1~4のいずれか1の剥離層形成用組成物、
6. 前記(A)光照射により硬化する重合体が、光二量化する構造部位を有するモノマーとともに、光二量化する構造部位を有しないモノマーを用いて得られる重合体であり、
前記光二量化する構造部位を有するモノマーの含有量が、全モノマー単位100モル%に対して1~50モル%であり、かつ、前記光二量化する構造部位を有しないモノマーの含有量が、全モノマー単位100モル%に対して50~99モル%である4又は5の剥離層形成用組成物、
7. 前記光二量化する構造部位を有しないモノマーが、脂環式炭化水素基を有するモノマーである6の剥離層形成用組成物、
8. 1~7のいずれかの剥離層形成用組成物を光硬化させてなる剥離層剥離層、
9. 8の剥離層に、波長400nmの光透過率が80%以上である樹脂層が積層された積層体、
10. 前記樹脂層が、エポキシ化合物を含有する熱硬化膜である9の積層体、
11. 1~7のいずれかの剥離層形成用組成物を基体上に塗布した後、露光を行うことで剥離層を形成する積層体の製造方法、
12. 1~7のいずれかの剥離層形成用組成物を基体に塗布し、露光して剥離層を形成する工程、
前記剥離層上に、波長400nmの光透過率が80%以上である樹脂基板を形成する工程、及び
前記樹脂基板を、1.0N/25mm以下の剥離力で剥離する工程
を含む樹脂基板の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の剥離層形成用組成物を用いることで、剥離層上に樹脂基板等から構成されるデバイスを形成でき、剥離層と樹脂基板等から構成されるデバイスとの界面で容易に剥離する剥離層を光照射により再現性よく得ることできる。また、フレキシブル電子デバイスの製造プロセスにおいて、基体上に形成された樹脂基板や、更にその上に設けられる回路等に損傷を与えることなく、当該回路等とともに当該樹脂基板を当該基体から分離することが可能となる。したがって、本発明の剥離層形成用組成物は、樹脂基板を備えるフレキシブル電子デバイスの製造プロセスの高速化やその歩留り向上等に寄与し得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
[剥離層形成用組成物]
本発明の剥離層形成用組成物は、(A)光照射により硬化する重合体を含むことを特徴とする。
[1](A)成分
本発明の剥離層形成用組成物における(A)成分は、光照射により硬化する重合体である。
光照射により硬化する重合体としては、光二量化する構造部位を有する重合体であることが好ましい。
光二量化する構造部位としては、シンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基等が挙げられるが、光二量化反応性の高さからシンナモイル基が好ましい。
好適なシンナモイル基及びシンナモイル構造を含む置換基としては、下記式[1]又は式[2]で表される構造が挙げられる。なお本明細書において、シンナモイル基におけるベンゼン環がナフタレン環である基についても「シンナモイル基」及び「シンナモイル構造を含む置換基」に含めている。
【0013】
【化1】
【0014】
上記式[1]中、X1は、炭素原子数1~18のアルキル基、フェニル基又はビフェニル基を表す。
上記式[2]中、X2は、水素原子、シアノ基、炭素原子数1~18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基又はシクロヘキシル基を表し、
1およびX2において、フェニル基及びビフェニル基は、ハロゲン原子又はシアノ基で置換されていてもよく、X1およびX2は、炭素原子数1~18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基及びシクロヘキシル基が、共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合、ウレタン結合、アミノ結合、カルボニル及びそれらの組み合わせから選ばれる1種又は2種以上の結合を介して複数種が結合したものであってもよい。
上記式[1]及び式[2]中、Aは、下記式[A1]、式[A2]、式[A3]、式[A4]、式[A5]及び式[A6]のいずれかを表す。
【0015】
【化2】
【0016】
上記式[A1]~[A6]中、R1~R8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基又はシアノ基を表す。
炭素原子数1~4のアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチル基等が挙げられる。
炭素原子数1~4のアルコキシ基は、その中のアルキル基が直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。
【0017】
このような光二量化する構造部位を重合体に導入するには、光二量化する構造部位を有するモノマーを重合する方法等が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0018】
光二量化する構造部位を有するモノマーとしては、光二量化する構造部位を有するアクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物等が挙げられるが、光二量化する構造部位、好ましくは、上記式[1]又は式[2]で表される構造を有する、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物が好適である。
光二量化する構造部位を有するモノマーの好適例としては、下記式M1-1~M1-13で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、光二量化する構造部位を有するモノマーは、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0019】
【化3】
【0020】
【化4】
(式中、M1は、水素原子又はメチル基であり、s1は、メチレン基の数を表し、2~9の自然数であり、Rは、メトキシ又はエトキシである。)
【0021】
本発明の剥離層形成用組成物における(A)成分の光照射により硬化する重合体は、光二量化する構造部位を有するモノマー(構造単位(a))とともに、光二量化する構造部位を有さないモノマー(構造単位(b))を含んでいてもよい。
構造単位(b)のモノマーとしては、構造単位(a)と共重合可能なものであれば特に制限はなく、例えば、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
【0022】
アクリル酸エステル化合物の具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、グリシジルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、2-メチル-2-アダマンチルアクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルアクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルアクリレート、8-エチル-8-トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0023】
メタクリル酸エステル化合物の具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2-メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3-メトキシブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、2-メチル-2-アダマンチルメタクリレート、γ-ブチロラクトンメタクリレート、2-プロピル-2-アダマンチルメタクリレート、8-メチル-8-トリシクロデシルメタクリレート、8-エチル-8-トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0024】
ビニル化合物の具体例としては、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、アリルグリシジルエーテル、3-エテニル-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,7-オクタジエンモノエポキサイド等が挙げられる。
スチレン化合物の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
マレイミド化合物の具体例としては、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0025】
特に構造単位(b)のモノマーは、得られる剥離層の耐熱性と疎水性の観点から、脂環式炭化水素基を有するモノマーが好ましく、炭素数6~20の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、t-ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
脂環式炭化水素基を有するモノマーの具体例としては、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、アダマンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t-ブチルシクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
なお、構造単位(b)のモノマーは、同種のものを1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(A)光二量化する構造部位を有するモノマー(構造単位(a))を用いて得られる重合体において、構造単位(a)のモノマーの含有率は、全モノマー単位100モル%に対して、1~70モル%が好ましく、3~50モル%がより好ましく、5~30モル%がより一層に好ましい。架橋剤の構成単位(a)のモノマーの含有率が過小である場合には、剥離層の溶剤耐性及び耐熱性が低下し、剥離性が低下する虞がある。一方、含有率が過大である場合には、剥離層上の樹脂基板等と反応が進行し、剥離性が低下する虞がある。
【0027】
本発明の剥離層形成用組成物に用いる重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、構造単位(a)のモノマー、構造単位(b)のモノマー、及び重合開始剤等を共存させた溶剤中において、50~110℃の温度下で反応させる方法が挙げられる。
この重合反応には、構造単位(a)のモノマー、構造単位(b)のモノマー、及び重合開始剤等を溶解する溶剤を用いてもよく、その具体例としては、下記[溶剤]の項に列挙する溶剤が挙げられる。
【0028】
得られた重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態であり、本発明では溶剤から取り出した粉体状の重合体を(A)成分として用いても、得られた重合体の溶液をそのまま(A)成分として使用してもよい。また、溶剤から取り出した粉体状の重合体を溶剤に再溶解した溶液を(A)成分として用いてもよい。
また、上記のようにして得られた重合体の溶液から重合体を取り出す手法としては、例えば、重合体の溶液と、ヘキサン、ジエチルエーテル、水等との貧溶媒とを、いずれかの撹拌下で混合して重合体を再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後、常圧又は減圧下で、常温下又は加熱下で乾燥して粉体とする手法が挙げられる。このような操作により、溶剤だけでなく、重合体と共存する重合開始剤や未反応モノマー等をも除去でき、その結果、精製された重合体の粉体が得られる。なお、一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解して、上記の操作を繰り返し行えばよい。
【0029】
なお、本発明の剥離層形成用組成物では、(A)成分の重合体として、単一種類の重合体を用いても、複数種の重合体の混合物を用いてもよい。
【0030】
[2]その他の添加剤
本発明の剥離層形成用組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。
その他の添加剤としては、界面活性剤、シランカップリング剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤等が挙げられる。
特に、基板に対する塗布性を高めるという点から、本発明の剥離層形成用組成物は、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の公知の界面活性剤を用いることができる。
【0031】
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類などが挙げられる。
【0032】
フッ素系界面活性剤の具体例としては、エフトップ(登録商標)EF301、EF303、EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック(登録商標)F171、F173、F554、F559、F563、R-30、R-40、R-40-LM、DS-21(DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431(スリーエム社製)、アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0033】
これらの界面活性剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤を用いる場合、その使用量は、(A)重合体100質量部に対し、0.0001~1質量部が好ましく、0.001~0.5質量部がより好ましい。
【0034】
[3]溶剤
本発明の剥離層形成用組成物は、溶剤を含んでいてもよい。
溶剤としては、(A)成分、必要に応じて用いられる(B)成分及び/又はその他の添加剤の溶解能を有するものであれば、その種類及び構造等は特に限定されるものでないが、本発明では、炭素数3~20のグリコールエーテル系溶剤、炭素数3~20のエステル系溶剤、炭素数3~20のケトン系溶剤、炭素数3~20のアミド系溶剤が好ましい。
【0035】
グリコールエーテル系溶剤の具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
エステル系溶剤の具体例としては、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、2-ヒドロシキイソ酪酸メチル、2-ヒドロシキイソ酪酸エチル等が挙げられる。
ケトン系溶剤の具体例としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
アミド系溶剤の具体例としては、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。
なお、溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
溶剤の含有量は、本発明の剥離層形成用組成物中の固形分濃度が、0.1~40質量%となる量が好ましく、0.5~20質量%となる量がより好ましく、0.5~10質量%となる量がより一層好ましい。なお、固形分とは、剥離層形成用組成物の全成分のうち、溶剤以外のものの総称である。
【0037】
本発明の剥離層形成用組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、溶剤に溶解した(A)成分の溶液に、必要に応じてその他の添加剤を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法や、上記調製方法の適当な段階において、必要に応じてその他の添加剤を更に添加して混合する方法等が挙げられる。
なお、調製された剥離層形成用組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルター等を用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0038】
本発明の剥離層形成用組成物の粘度は、作製する剥離層の厚み等を勘案して適宜設定するものではあるが、特に0.01~5μm程度の厚さの膜を再現性よく得ることを目的とする場合、通常、25℃で1~5,000mPa・s程度が好ましく、1~2,000mPa・s程度がより好ましい。
【0039】
ここで、粘度は、市販の液体の粘度測定用粘度計を使用して、例えば、JIS K7117-2に記載の手順を参照して、組成物の温度25℃の条件にて測定することができる。好ましくは、粘度計としては、円錐平板型(コーンプレート型)回転粘度計を使用し、好ましくは同型の粘度計で標準コーンロータとして1°34’×R24を使用して、組成物の温度25℃の条件にて測定する。このような回転粘度計としては、例えば、東機産業(株)製TVE-25Lが挙げられる。
【0040】
[剥離層]
以上説明した本発明の剥離層形成用組成物を、基体上に塗布して塗膜を形成した後、加熱する加熱工程、及び加熱工程後に紫外線等の光を照射する露光工程を含む方法で剥離層を得ることができる。
この場合、加熱時間は、温度によって異なるため一概に規定できないが、通常1分~5時間である。加熱態様の好ましい一例としては、50~150℃で1分間~1時間加熱する手法が挙げられる。なお、加熱温度は、最高温度が上記範囲となる限り、それ以下の温度で加熱する工程を含んでもよい。
【0041】
紫外線等の光照射は、(A)成分が光硬化する限りその条件等は任意であり、例えば、500~2,000mJ/cm2程度で紫外線を照射する手法が挙げられる。
【0042】
本発明の剥離層を基体上に形成する場合、剥離層は基体の一部表面に形成されていてもよいし、全面に形成されていてもよい。基体の一部表面に剥離層を形成する態様としては、基体表面のうち所定の範囲にのみ剥離層を形成する態様、基体表面全面にドットパターン、ラインアンドスペースパターン等のパターン状に剥離層を形成する態様等がある。
なお、本発明において、基体とは、その表面に本発明の剥離層形成用組成物が塗られるものであって、フレキシブル電子デバイス等の製造に用いられるものを意味する。
【0043】
また、紫外線等の光を照射する際に、所定のパターンを有するマスクを装着して紫外線等の光を照射し、アルカリ現像液等で現像することで、未露光部が洗い出され、ラインアンドスペースパターン等のパターン状に剥離層を形成することができる。
【0044】
基体(基材)としては、例えば、ガラス、金属(シリコンウエハ等)、スレート等が挙げられるが、特に、本発明の剥離層形成用組成物から得られる剥離層がそれに対する十分な密着性を有することから、ガラスが好ましい。なお、基体表面は、単一の材料で構成されていてもよく、2以上の材料で構成されていてもよい。2以上の材料で基体表面が構成される態様としては、基体表面のうち、ある範囲はある材料で構成され、その余の表面はその他の材料で構成されている態様、基体表面全体にドットパターン、ラインアンドスペースパターン等のパターン状にある材料がその他の材料中に存在する態様等がある。
【0045】
塗布方法は、特に限定されないが、例えば、キャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等が挙げられる。
【0046】
加熱に用いる器具としては、例えば、ホットプレート、オーブン等が挙げられる。加熱雰囲気は、空気下であっても不活性ガス下であってもよく、また、常圧下であっても減圧下であってもよい。
光照射に用いる装置としては、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0047】
剥離層の厚さは、通常0.01~50μm程度、生産性の観点から、好ましくは0.01~20μm程度、より好ましくは0.01~5μm程度であり、加熱前の塗膜の厚さを調整して所望の厚さを実現する。
【0048】
本発明の剥離層は、その上に設けられた樹脂基板の良好な剥離性を有する。このため、本発明の剥離層は、フレキシブル電子デバイスの製造プロセスにおいて、当該デバイスの樹脂基板に損傷を与えることなく、当該樹脂基板を、その樹脂基板上に形成された回路等とともに、基体から剥離させるために好適に用いることができる。
【0049】
本発明の剥離層を用いたフレキシブル電子デバイスの製造方法の一例について説明する。まず、本発明の剥離層形成用組成物を用いて、前述の方法によって、ガラス基体上に剥離層を形成する。この剥離層の上に、樹脂基板を形成するための樹脂基板形成用溶液を塗布し、得られた塗膜を焼成することで、本発明の剥離層を介して、ガラス基体に固定された樹脂基板を形成する。
【0050】
塗膜の焼成温度は、樹脂の種類等に応じて適宜設定されるものであるが、本発明では、この焼成時の最高温度を200~250℃とすることが好ましく、210~250℃とすることがより好ましく、220~240℃とすることがより一層好ましい。樹脂基板作製の際の焼成時の最高温度をこの範囲とすることで、剥離層と樹脂基板との剥離性をより向上させることができる。この場合も、最高温度が上記範囲となる限り、それ以下の温度で焼成する工程を含んでもよい。
【0051】
樹脂基板は剥離層を全て覆うようにして、剥離層の面積と比較して大きい面積で形成することが好ましい。樹脂基板としては、アクリルポリマーからなる樹脂基板やシクロオレフィンポリマーからなる樹脂基板等が挙げられる。当該樹脂基板の形成方法は、常法に従えばよい。また、樹脂基板としては、波長400nmの光透過率が80%以上であるものが好ましい。
【0052】
次に、本発明の剥離層を介して基体に固定された当該樹脂基板の上に、必要に応じて所望の回路を形成し、その後、例えば剥離層に沿って樹脂基板をカットし、この回路とともに樹脂基板を剥離層から剥離して、樹脂基板と基体とを分離する。この際、基体の一部を剥離層とともにカットしてもよい。
本発明の剥離層を用いれば、樹脂基板を剥離層から1.0N/25mm以下の剥離力で剥離することができる。
【実施例
【0053】
以下、合成例、調製例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。
【0054】
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
〔ポリマー原料〕
ADMA:メタクリル酸2-アダマンチル
DCPMA:メタクリル酸ジシクロペンタニル
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
【0055】
Cin1:下記式で示される化合物
【化5】
【0056】
Cin2:下記式で示される化合物
【化6】
【0057】
〔溶媒〕
CHN:シクロヘキサノン
【0058】
〔重合体の分子量の測定〕
合成例におけるアクリル共重合体の分子量は、(株)Shodex社製常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)、Shodex社製カラム(KD-803、KD-805)を用い以下のようにして測定した。なお、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表した。
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
検量線作成用標準サンプル:昭和電工(株)製 標準ポリスチレン(分子量約197,000、55,100、12,800、3,950、1,260、580)
【0059】
(1)(A)成分の合成
[合成例1]
非架橋性モノマーとしてADMA 3.50g(15.89mmol)、架橋性モノマーとしてCin1 1.38g(3.97mmol)、重合触媒としてAIBN 0.10g(0.60mmol)をTHF 50.0gに溶解し、加熱還流下にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液を得た。アクリル共重合体溶液をヘキサン 500.0gに徐々に滴下して固体を析出させ、ろ過及び減圧乾燥することでアクリル重合体(PA-1)を得た。得られたアクリル共重合体のMwは15,000であった。
【0060】
[合成例2~6]
原料化合物の種類、配合量を下記表1のとおりとした以外は、合成例1と同様に操作し、重合体(PA-2)~(PA-6)を得た。得られた重合体のMwを表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
(2)樹脂基板形成用組成物の調製
[調製例1]樹脂基板形成用組成物F1の調製
溶媒として四塩化炭素100gを入れたナスフラスコに、ゼオノア(登録商標)1020R(日本ゼオン(株)製シクロオレフィンポリマー)10g及びエポリード(登録商標)GT401((株)ダイセル製)3gを添加した。この溶液を、窒素雰囲気下、24時間撹拌して溶解し、樹脂基板形成用組成物F1を調製した。
【0063】
(3)剥離層形成用組成物の調製
[実施例1-1]
(A)成分である上記合成例1で得た重合体(PA-1)100質量部にCHNを加え、固形分濃度5.0質量%の剥離層形成用組成物(A-1)を調製した。
【0064】
[実施例1-2~1-5、比較例1-1]
各成分の種類と量を、それぞれ表2に記載のとおりとした以外は、実施例1-1と同様にして、剥離層形成組成物A-2~A-12をそれぞれ調製した。
【0065】
【表2】
【0066】
(4)剥離層及び樹脂基板の作製
[実施例2-1]
実施例1-1で調製した剥離層形成用組成物A-1を、スピンコータ(条件:回転数2,000rpmで約30秒)を用いて基体としてのガラス基板(コーニング社製イーグルXG、100mm×100mm×0.7mm、以下同様)の上に塗布した。得られた塗膜を、ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱し、次いで高圧水銀ランプを用いて2,000mJ/cm2で紫外線照射することによって、ガラス基板上に厚さ約0.1μmの剥離層を形成し、剥離層付きガラス基板を得た。
その後、スピンコータ(条件:回転数200rpmで約15秒)を用いて、ガラス基板上の剥離層(樹脂薄膜)の上に樹脂基板形成用組成物F1を塗布した。得られた塗膜を、ホットプレートを用いて80℃で2分間加熱し、その後、ホットプレートを用いて230℃で30分間加熱し、剥離層上に厚さ約3μmの樹脂基板を形成し、樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0067】
[実施例2-2~2-5、比較例2-1]
剥離層形成組成物として(A-2)~(A-6)を用いた以外は、実施例2-1と同様に操作し、実施例2-2~2-5、比較例2-1の樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0068】
[比較例2-2]
高圧水銀ランプを用いて紫外線照射しない以外は、実施例2-1と同様に操作し、比較例2-2の樹脂基板・剥離層付きガラス基板を得た。
【0069】
〔剥離力の評価〕
上記で得られた樹脂基板・剥離層付きガラス基板を、カッターを用いて25mm×50mmの短冊状に切り込みを入れた。さらに、セロテープ(登録商標)(ニチバン(株)製CT-24)を貼った後、オートグラフAGS-X500N((株)島津製作所製)を用いて、剥離角度90°、剥離速度300mm/minで剥離し、剥離力を測定した。なお、剥離できないものは、剥離不可とした。評価結果は「剥離力」とし、結果を表3にまとめて示す。
【0070】
〔剥離界面の評価〕
剥離力の評価後のガラス基板上に残存する剥離層を、触針式膜厚計で膜厚を測定した。剥離層形成時の膜厚と比較を行い、剥離界面を判別した。評価結果は「剥離界面」とし、残膜率(残膜率(%)=剥離後の剥離層膜厚/剥離層形成時の剥離層膜厚×100)が90%以上の場合は剥離層/樹脂界面、10%以上90%未満の場合は剥離層の凝集破壊、10%未満の場合はガラス基板/剥離層界面とした。評価結果を表3にまとめて示す。
【0071】
【表3】
【0072】
表3に示されるように、各実施例の剥離層は低い剥離力を示し、剥離性に優れていることがわかる。また、実施例の剥離層は、剥離層と樹脂基板の界面で剥離することが確認された。一方、比較例2-1及び2-2の膜は、剥離層として機能しないことがわかる。