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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】永久磁石付きカウンターポール
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/143 20060101AFI20250708BHJP
   H01J 37/141 20060101ALI20250708BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20250708BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
H01J37/143
H01J37/141
H01J37/28 B
H01J37/317 D
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021203006
(22)【出願日】2021-12-15
(65)【公開番号】P2022097429
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2024-10-24
(31)【優先権主張番号】17/127,749
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ルボミア トゥマ
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-086419(JP,A)
【文献】国際公開第2007/129376(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームシステムであって、
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内で試料を保持するための試料ホルダと、
光軸に沿って荷電粒子のビームを生成するための荷電粒子源と、前記荷電粒子のビームを集束させるための磁気浸漬レンズと、を含む荷電粒子カラムと、を含み、前記磁気浸漬レンズが、
前記試料の第1の表面に隣接して配置された第1のレンズポールと;
前記第1のレンズポールを囲む励起コイルと;
前記試料の第2の表面に隣接して配置されるように構成されたカウンターポールと、を含み、前記カウンターポールは、前記カウンターポールの表面上に配置された前記光軸に対して非対称の1つまたは複数の磁石を含み、
前記磁石、それら磁石が前記荷電粒子ビームシステムに非対称性をもたらすように配置されている、荷電粒子ビームシステム。
【請求項2】
前記カウンターポールの前記表面が第1の表面であり、1つまたは複数の追加の磁石が、前記第1の表面に対して前記カウンターポールの第2の表面に配置されている、請求項1に記載の荷電粒子ビームシステム。
【請求項3】
前記カウンターポールには1つまたは複数の凹部が含まれ、各磁石が、前記カウンターポールの前記表面上のそれぞれの凹部内に配置されている、請求項1に記載の荷電粒子ビームシステム。
【請求項4】
前記1つまたは複数の磁石が、接着剤を介して前記カウンターポールに結合されている、請求項1に記載の荷電粒子ビームシステム。
【請求項5】
前記カウンターポールが、前記真空チャンバ内の第1の位置と第2の位置との間の前記カウンターポールの移動を可能にするように構成された位置決めシステムに取り付けられ、前記カウンターポールが、前記第1の位置又は前記第2の位置で非アクティブである、請求項1に記載の荷電粒子ビームシステム。
【請求項6】
前記カウンターポールには、開口部及び検出器がさらに含まれ、前記検出器が、前記開口部内又は前記開口部の下に配置されている、請求項1に記載の荷電粒子ビームシステム。
【請求項7】
前記1つまたは複数の磁石は、前記カウンターポールの第1の表面上に配置された複数の磁石を含む、請求項1に記載の荷電粒子ビームシステム。
【請求項8】
荷電粒子ビームシステムであって、
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内で試料を保持するための試料ホルダと、
光軸に沿って荷電粒子のビームを生成するための荷電粒子源と、前記荷電粒子のビームを集束させるための磁気浸漬レンズとを含む荷電粒子カラムと、を含み、前記磁気浸漬レンズが、
前記試料の第1の表面に隣接して配置された第1のレンズポールと;
前記第1のレンズポールを囲む励起コイルと;
前記試料の第2の表面に隣接して配置されるように構成されたカウンターポールと、を含み、前記カウンターポールが、前記カウンターポールの前記表面上のそれぞれの凹部内に配置された1つまたは複数の磁石を含み、
前記凹部にはトラックが含まれ、前記1つまたは複数の磁石は前記トラック内で摺動可能であり、前記磁石は前記光軸に対して相対的に位置決めされ得る、荷電粒子ビームシステム。
【請求項9】
各トラックが、前記カウンターポールの外縁から前記光軸に向かって半径方向内側に延びる、請求項に記載の荷電粒子ビームシステム。
【請求項10】
各トラックが前記光軸を中心に円周方向に延びる、請求項に記載の荷電粒子ビームシステム。
【請求項11】
デュアルビームシステムであって、
試料を保持するための試料ホルダと、
イオンビームを前記試料に向けるように構成されたイオンビームカラムと、
光軸に沿って荷電粒子のビームを生成するための荷電粒子源と、前記荷電粒子のビームを集束させるための磁気浸漬レンズとを含む荷電粒子カラムと、を含み、前記磁気浸漬レンズが、
前記試料の第1の表面に隣接して配置された第1のレンズポールと;
前記試料の第2の表面に隣接して配置された第2のレンズポールと、を含み、前記第2のレンズポールが、前記光軸に対して非対称に配置される1つまたは複数の磁石を含み、
前記磁石は、前記デュアルビームシステム内に非対称性を作り出すために前記光軸を中心に配置される、
デュアルビームシステム。
【請求項12】
前記1つまたは複数の磁石が、前記第2のレンズポールの第1の表面に配置された複数の磁石からなり、1つまたは複数の追加の磁石が前記第2のレンズポールの第2の表面に配置されている、請求項11に記載のデュアルビームシステム。
【請求項13】
前記第2のレンズポールには1つまたは複数の凹部が含まれ、各磁石がそれぞれの凹部内に配置されている、請求項11に記載のデュアルビームシステム。
【請求項14】
前記デュアルビームシステムが真空チャンバをさらに含み、前記第2のレンズポールが、前記真空チャンバ内の第1の位置と第2の位置との間の前記第2のレンズポールの移動を可能にするように構成された位置決めシステムに取り付けられ、前記第2のレンズポールが、前記第1の位置又は前記第2の位置で非アクティブである、請求項11に記載のデュアルビームシステム。
【請求項15】
前記第2のレンズポールには、開口部及び検出器がさらに含まれ、前記検出器が、前記開口部内又は前記開口部の下に配置されている、請求項11に記載のデュアルビームシステム。
【請求項16】
前記磁気浸漬レンズが制御ユニットに結合されている、請求項11に記載のデュアルビームシステム。
【請求項17】
請求項11に記載のデュアルビームシステムを使用する方法であって、前記デュアルビームシステム内に非対称性を作り出すために前記光軸を中心に前記磁石を配置することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改良された磁気浸漬レンズのための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビームシステムは、集積回路、磁気記録ヘッド、フォトリソグラフィーマスクなどの小型デバイスの製造、修理、検査など、さまざまな用途で使用される。デュアルビームシステムには、ターゲットへの損傷を最小限に抑えて高解像度の画像を提供できる走査電子顕微鏡(SEM)と、基板の加工(ミリングなど)や画像形成に使用できる集束ビームシステムや整形ビームシステムなどのイオンビームシステムが含まれているのが一般的である。
【0003】
一般に、SEMの最終レンズは、磁場を生成する荷電粒子ビーム(CBP)レンズ(たとえば、磁気浸漬レンズ)である。このような浸漬レンズの強度は、磁気回路の飽和と磁束源(コイルなど)によって制限される。磁気飽和とは、印加された外部磁場を増加させ続けると、材料の磁化をそれ以上増加させることができないときに到達する状態であるため、総磁束密度が平準化する。したがって、浸漬レンズの改良が引き続き求められている。
【発明の概要】
【0004】
代表的な実施形態では、荷電粒子ビームシステムは、真空チャンバと、真空チャンバ内に試料を保持するための試料ホルダと、光軸に沿って荷電粒子のビームを生成するための荷電粒子源を含む荷電粒子カラムと、荷電粒子のビームを集束させるための磁気浸漬レンズとを含むことができる。磁気浸漬レンズは、試料の第1の表面に隣接して配置された第1のレンズポールと、
第1のレンズポールを囲む励起コイルと、試料の第2の表面に隣接して配置されるように構成されたカウンターポールとを含むことができ、カウンターポールは、カウンターポールの表面上に配置された1つまたは複数の磁石を含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、カウンターポールの表面は第1の表面であり、1つまたは複数の追加の磁石がカウンターポールの第2の表面に配置されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、カウンターポールは、1つまたは複数の凹部を含み、各磁石は、それぞれの凹部内に配置されている。いくつかの実施形態では、凹部がトラックを含み、1つまたは複数の磁石がトラック内で摺動可能であり、そのため、磁石が光軸に対して相対的に位置決めされ得る。トラックは、カウンターポールの外縁から光軸に向かって半径方向内側に延びることができ、および/または光軸を中心として円周方向に延びることができる。他の実施形態では、1つまたは複数の磁石は、接着剤を介してカウンターポールに結合することができる。
【0007】
カウンターポールは、真空チャンバ内の第1の位置と第2の位置との間のカウンターポールの移動を可能にするように構成された位置決めシステムに取り付けることができ、カウンターポールは、第1の位置または第2の位置で非アクティブである。カウンターポールが、開口部および検出器をさらに含み得、検出器が、開口部内または開口部の下に配置されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、磁石は、それら磁石がシステムの非対称性を補償するように配置され得る。他の実施形態では、磁石は、それら磁石がシステムに非対称性をもたらすように配置され得る。
【0009】
別の代表的な実施形態では、システムは、試料を保持するための試料ホルダと、イオンビームを試料に向けるように構成されたイオンビームカラムと、光軸に沿って荷電粒子のビームを生成するための荷電粒子源と、荷電粒子のビームを集束するための磁気浸漬レンズとを含む荷電粒子カラムと、を含むデュアルビームシステムであり得る。磁気浸漬レンズは、試料の第1の表面に隣接して配置された第1のレンズポールと、試料の第2の表面に隣接して配置された第2のレンズポールとを含むことができ、第2のレンズポールは、1つまたは複数の磁石を含む。いくつかの実施形態では、磁気浸漬レンズは、制御ユニットに結合することができる。
【0010】
デュアルビームシステムを使用する方法は、システム内に非対称性を作り出すために光軸を中心に磁石を配置することを含むことができる。
【0011】
本開示の前述および他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明、添付図面を参照してより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】代表的なデュアルビームシステムを示す図である。
図2】磁気浸漬対物レンズを含む代表的なSEMシステムを示す図である。
図3】SEMシステム用カウンターポールの実施形態の上面図である。
図4】SEMシステム用カウンターポールの別の実施形態の上面図である。
図5】複数の永久磁石を含む代表的なSEMシステムの一部の概略図である。
図6】例示的なSEMシステムの一部の磁場のグラフである。
図7】1つまたは複数の永久磁石を含む例示的なSEMシステムの一部の磁場のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
序論
荷電粒子顕微鏡法は、特に電子顕微鏡法の形態で微視的対象物を画像化するために、周知のますます重要とされる技術である。これまで、基本的な種類の電子顕微鏡は、透過電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、および走査透過電子顕微鏡(STEM)のような多くの周知の装置類に進化してきており、さらには、例えばイオンビームミリングまたはイオンビーム誘導蒸着(IBID)のような支援作用を可能にする「machining(機械加工)」集束イオンビーム(FIB)をさらに用いた、いわゆる「dual-beam(デュアルビーム)」装置(例えば、FIB-SEM)のような様々な補助装置類に進化してきている。
【0014】
SEMでは、走査電子ビームを基板に照射することで、二次電子、後方散乱電子、透過電子、X線およびカソード発光(赤外線、可視、および/または紫外線光子)の形態で、基板からの「補助」放射線を生成する。例えば、この補助放射線の1つまたは複数の成分を検出して、画像化に使用することができる。照射ビームとして電子を使用する代わりに、荷電粒子顕微鏡法は、荷電粒子の他の種を使用して実行することもできる。この点において、「荷電粒子」という語句は、例えば、電子、正イオン(例えば、GaまたはXeイオン)、負イオン、陽子および陽電子を含むものとして広く解釈されるべきである。なお、イメージングや局所的な表面改質(例えば、ミリング、エッチング、蒸着など)に加えて、荷電粒子顕微鏡はまた、分光法、回折図の検査を実行するなどの他の機能性をも有し得る。
【0015】
いくつかの例では、イオンビーム成分は、シリコン基板などの試験基板内の関連するスポットをミリングするために使用される。本明細書で使用される場合、「画像」は、視覚的画像、ならびに視覚的画像のデジタルまたは他の保存された表現を指す。
【0016】
一般に、SEMの最終レンズは、静電レンズ、磁気レンズ、または複合レンズなどの荷電粒子ビーム(CBP)レンズである。磁気式浸漬レンズの場合、そのような浸漬レンズの強度と、多くの場合画像品質とは、磁気回路の飽和および磁束源(例えば、コイル)によって制限される。永久磁石をCBPレンズのコイルと組み合わせて使用すると、磁気回路に磁束を追加したり、システムの非対称性を導入または補正したりして、レンズの解像度を向上させることができる。
【0017】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a、an)」、および「その(the)」は、別段文脈が明確に指示しない限り、複数形の参照対象を含む。さらに、用語「含む(includes)」は、「含む(comprises)」の意味である。さらに、用語「結合された(coupled)」は、結合されたアイテム間の中間要素の存在を必ずしも排除するものではない。
【0018】
本明細書に記載のシステム、装置、および方法は多少なりとも制限的なものとして解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、ならびに相互の様々な組み合わせおよび部分的な組み合わせにおいて、様々な開示された実施形態の全ての新規性および非自明性を有する特徴および態様を対象とする。開示されたシステム、方法、および装置は、任意の特定の態様もしくは特徴またはそれらの組み合わせに限定されるものではなく、開示されたシステム、方法、および装置は、任意の1つまたは複数の特定の利点が存在するはずである、または問題が解決されるべきであることも必要としない。いずれの動作理論も説明を容易にするためであるが、開示されたシステム、方法、および装置は、そのような動作理論に限定されない。
【0019】
開示された方法のいくつかの動作は、便宜上、特定の順番で記載されているが、以下に記載される具体的な言葉によって特定の順序が要求されない限り、この説明方法が並び替えを包含することを理解されるものとする。例えば、順次記載される動作は、場合によっては、並び替えられるかまたは同時に実行されることができる。さらに、単純化のために、添付の図は、開示されたシステム、方法、および装置を、他のシステム、方法、および装置とともに使用することができる様々な方式を示していない場合がある。追加的に、本説明は、時に、開示された方法を説明するために、「生成する」および「提供する」のような用語を使用する。これらの用語は、実施される実際の動作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実施に応じて、様々であり、当業者には容易に認識できる。いくつかの例では、値、手順、または装置は、「最低」、「最良」、「最小」などと呼ばれる。そのような表現は、多くの使用された機能的選択肢からの選択が可能であることを示すことを意図しており、そのような選択は、他の選択よりも優れている(better)、小さい(smaller)、またはその他の点で望ましい(otherwise preferable)必要はない。例は、「~より上に(above)」、「~より下に(below)」、「上の(upper)」、「下の(lower)」等として示される方向を参照して説明される。これらの用語は、説明の便宜上使用されているが、特定の空間的方向性を示唆するものではない。
【0020】
実施例1
図1は、走査電子顕微鏡(SEM)102と、イオンビームカラム104とを含むデュアルビームシステム100の代表的な実施形態を示している。SEM102は、集光レンズ116および対物レンズ106などの1つまたは複数の荷電粒子ビーム(CPB)レンズを備え得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のCPBレンズは、磁気レンズであり得、特に、対物レンズ106は、磁気対物レンズ(例えば、磁気浸漬対物レンズ)であり得る。イオンビームカラムは、集束イオンビーム(FIB)をサンプルSに提供するように配設され、SEM102は、サンプルSの画像を生成するために据えられる。SEM102およびイオンビームカラム104は、サンプルSを保持するための移動可能な基板ホルダ110を収容する真空チャンバ108に取り付けることができ、真空チャンバ108は、真空ポンプ(図示せず)を使用して排気することができる。基板ホルダ110は、Y軸が図面の平面に垂直である座標系150に対して、図示のようにX-Y平面内で移動可能である。また、基板ホルダは、サンプルSの高さのばらつきを補正するために、さらに垂直方向(Z軸に沿って)に移動することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、SEM102は、サンプルSの上に垂直に配設することができ、サンプルSを画像化するために使用することができ、イオンビームカラム104は、角度を付けて配設することができ、サンプルSを機械加工し、かつ/または処理するために使用することができる。図1は、SEM102およびイオンビームカラム104の例示的な向きを示している。
【0022】
SEM102は、電子源112を備えることができ、電子源112からの「生の」放射ビームを操作し、それに基づいて、集束、収差軽減、トリミング(開口を使用)、フィルタリングなどの操作を実行するように構成することができる。SEM102は、粒子光学軸115に沿って伝播する入力帯電粒子のビーム114(例えば、電子ビーム)を生成することができる。集光レンズ116および対物レンズ106などのSEMカラム102の1つまたは複数のCPBレンズは、ビーム114をサンプルSに集束させる。いくつかの実施形態では、SEM102は、ビーム114を操縦するように構成することができる偏向ユニット118を設けることができる。例えば、ビーム114は、調査されるべきサンプルを横切って走査動作(例えば、ラスター走査またはベクトル走査)で操縦され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、図1に示されるように、デュアルビームシステム100は、追加の磁場を提供して追加の浸漬磁気レンズを作り出すために配置された磁場発生コイル107をさらに含み、それによってSEM光学システムの解像度を改善することができる。
【0024】
デュアルビームシステム100は、とりわけ、偏向ユニット118、CPBレンズ106,116、および検出器(図示せず)を制御するための、また、検出器から収集した情報を表示ユニットに表示するための、コンピュータ処理装置ならびに/またはコントローラ128をさらに含むことができる。場合によっては、制御コンピュータ130が、様々な励起を確立し、画像データを記録し、そして一般に、SEMおよびFIBの両方の動作を制御するために提供される。
【0025】
イオンビームカラム104は、イオン源(例えば、プラズマ源120)およびイオンビーム光学系122を含むことができる。図示の実施形態では、イオンビームカラム104は、プラズマ集束イオンビーム(PFIB)であるが、他の実施形態では、イオンビームカラム104は、液体金属イオン源(LMIS)を有する標準的な集束イオンビーム(FIB)であるか、または集束イオンビームカラムと互換性のある他のイオン源であり得る。イオンビームカラム104は、イオン光軸125に沿ってイオンビーム124を生成し、かつ/または向ける(指向させる)ことができる。上記のように、イオンカラム104は、インサイジング、ミリング、エッチング、蒸着などの、基板の画像化、処理、および/または機械加工操作を実施するために使用することができる。
【0026】
イオンビームがPFIBである実施形態では、イオン源120は、それぞれの弁141A~141Dによってイオン源120に結合されたガス源142A~142Dを含むガスマニホルド126を介して複数のガスに流体結合することができる。バルブ140は、ガスマニホルド126からのガスをイオン源120に選択的に結合するように据え付けられている。例示的なガスには、図1に示されるように、キセノン、アルゴン、酸素、および窒素が含まれるが、これらに限定されない。イオン源120の動作中に、ガスを導入することができ、そこでガスは帯電またはイオン化され、それによってプラズマを形成する。次に、プラズマから抽出されたイオンは、イオンビームカラム104を通して加速され、イオンビームになることができる。
【0027】
実施例2
別の代表的な実施形態では、システム200は、真空チャンバ204に取り付けられた走査電子顕微鏡(SEM)202を含むことができる。真空チャンバ204は、サンプルSを保持するための第1の可動ステージ206を収容することができる。サンプルSは、ロードロック208を通して導入することができる。真空チャンバ202は、真空ポンプ(図示せず)を使用して排気することができる。
【0028】
SEM202は、集光レンズ210および対物レンズ212などの1つまたは複数のCPBレンズを含み得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のCPBレンズは、磁気レンズであり得、特に、対物レンズ212は、磁気対物レンズ(例えば、磁気浸漬対物レンズ)であり得る。いくつかの実施形態では、SEM202は、サンプルSの上に垂直に配設することができ、サンプルSを画像化するために使用することができる。SEM202は、電子源214を含むことができ、電子源214からの「生の」放射ビームを操作し、それに基づいて、集束、収差軽減、トリミング(開口を使用)、フィルタリングなどの動作を実行するように構成することができる。SEM202は、粒子光学軸218に沿って伝播する入力帯電粒子のビーム216(例えば、電子ビーム)を生成することができる。SEM202は、集光レンズ210および対物レンズ212などの1つまたは複数のCPBレンズを一般的に含んでおり、ビーム216をサンプルSに集束させる。いくつかの実施形態では、SEM202は、ビーム216を操縦する(manipulate:操る)ように構成することができる偏向ユニット220を設けることができる。例えば、ビーム216は、調査されるべきサンプルSを横切って走査動作(例えば、ラスター走査またはベクトル走査)で操縦され得る。対物レンズ212は、第1のレンズポール224とサンプルSとの間のギャップに集束磁場を発生させるために、レンズ212の第1のポール224を囲む励起コイル222を含むことができる。
【0029】
システム200は、とりわけ、偏向ユニット220、荷電粒子ビーム(CPB)レンズ210,212、および検出器を制御するための、また、検出器から収集した情報を表示ユニット252(例えば、コンピュータ、モバイルデバイスなどの)に表示するための、コンピュータ処理装置ならびに/またはコントローラ250をさらに含むことができる。
【0030】
上記のように、対物レンズ212は、励起コイル222を含む磁気浸漬対物レンズである。しかしながら、磁気浸漬レンズ212の強度は、コイル222が発生させる最大起磁力によって制限される。開示された実施形態は、第2のレンズポールおよび付加的な磁場を発生させる1つまたは複数の永久磁石を介してレンズ212に起磁力を加えることによって、この問題に対する解決策を提供する。このような実施形態は、STEM動作(例えば、高解像度、高電圧STEM)および/または二次電子または後方散乱電子を使用する場合の従来のSEMモードで使用することができる。
【0031】
システム200は、基板Sに隣接して(例えば、図2に示される向きで基板の下に)配置された第2のレンズポール228(カウンターポール228とも呼ばれる)を含む第2の可動ステージ226を含むことができる。第1のステージ206は、透過電子顕微鏡法(TEM)で使用されるようなステージであり得、第2のステージ226は、従来のSEMまたはデュアルビームステージであり得る(例えば、図5を参照のこと)。カウンターポール228は、中央開口部230と、開口部230の下に配置された検出器232とを含むことができる。サンプルSが十分に薄い場合(例えば、半導体材料の場合は50nm未満、生物学的材料の場合は100nm未満が好ましい)、電子はサンプルSを通って移動し、検出器232によって検出され得る。検出された電子の散乱角の角度分布は、サンプルSに関する情報を提供することができる。いくつかの実施形態では、検出器232は、例えば、高角度環状暗視野検出器(HAADF検出器)、環状暗視野検出器(ADF検出器)、および/または明視野検出器などである。
【0032】
1つまたは複数の磁石234をカウンターポールに結合して、磁気浸漬対物レンズ212の性能を向上させる(例えば、解像度を向上させる)ことができる。磁石234は、永久磁石(例えば、永久ネオジム磁石または永久サマリウムコバルト磁石)であり得る。永久磁石234は、所定の励起で自身の永続的な磁場を作り出す。いくつかの特定の実施形態では、カウンターポール228への永久磁石234の追加は、コイル222に約1500AT(アンペアターン)の励起を追加することに相当する。
【0033】
他の特定の実施形態では、永久磁石の追加は、磁場の強度を高めることにより、より高いビームエネルギーを実現することができる。磁石は磁気回路に磁束を加え、磁場の強さを高める。磁場が高くなれば、より高エネルギーの電子ビームの使用が可能になる。
【0034】
電子顕微鏡における永久磁石の利点のさらなる詳細は、例えば、HawkesらによるPrinciples of Electron Optics Volume Two:Applied Geometrical Optics,Academic Press(2ndEd)(2017)に見出すことができ、この文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
他の実施形態では、各磁石234は、それぞれの通電コイルを含む磁石であり得る。
【0036】
いくつかの特定の実施形態では、サンプルSは、カウンターポール228の表面上に載置され得る。磁石234は、試料に横方向に隣接して配置され得、浸漬レンズコイルのないシステムの磁気浸漬を可能にする。
【0037】
磁石234は、光軸218を中心として配置され得る。いくつかの実施形態では、磁石234は、軸218を中心に対称に配置され得る。他の実施形態では、例えば、所望の非対称性を導入したり、光学系の他の構成要素の望ましくない非対称性を補正したりするために、磁石234が軸218を中心に非対称に載置され得る。磁石234は、カウンターポール228の1つまたは複数の表面上に配置され得る。例えば、図示の実施形態では、磁石234は、サンプルSに隣接するカウンターポールの第1の表面236(例えば、図2に示される向きの上面)に配置されている。他の実施形態では、磁石234を第1の表面236に配置する代わりに、または配置することに加えて、1つまたは複数の磁石234を、カウンターポールの第2の表面237(例えば、図2に示される向きの下面)に配置され得る。図示の実施形態では、磁石234は、サンプルSの下に(図2に示される方向で)配置されているが、他の実施形態では、磁石234は、サンプルSに隣接して横方向に配置され得る。さらに他の実施形態では、磁石234は、図2に示す向きでサンプルの上に載置され得る。
【0038】
図示の実施形態では、光軸の周りの各円周位置に配置された単一の磁石234のみを示すが、他の実施形態では、1つまたは複数の磁石が選択された円周位置に配置され得るように、磁石234を互いに積み重ねることができる。いくつかのそのような実施形態では、磁石は、例えば、接着剤を使用して互いに結合することができる。他の実施形態では、磁石は、かみ合う形状を有することができる。
【0039】
カウンターポール228の上面図を示す図3を参照すると、サンプルSに隣接して配置されたカウンターポール228の表面236(例えば、図2に示される向きの上面)は、磁石234を配置することができる1つまたは複数の溝または凹部238を含むことができる。いくつかの実施形態では、各凹部238は、磁石234がカウンターポール228に対して(例えば、カウンターポール228の移動中に)不注意に移動するのを防ぐように構成(例えば、サイズおよび形状決め)され得るので、磁石234が光軸218に対して、所望の位置に留まり、かつ/または選択された構成を保持する。いくつかの実施形態では、各凹部は、それぞれの磁石の形状に対応する形状を有することができる。例えば、図示の実施形態では、各凹部238は、磁石234の円形形状に対応する断面の円形形状を有する。
【0040】
他の実施形態では、図5に示されるように、磁石234は、カウンターポール228の第1の表面236上に直接配置することができ、例えば、接着剤を使用して表面に結合することができる。
【0041】
再び図3を参照すると、いくつかの実施形態で図示されるように、凹部238は、それらが対称パターンを形成するように、光軸218の周りに等間隔に離間することができる。他の実施形態では、凹部238は、光軸218を中心として非対称に配置され得る。磁石234は、凹部238内に対称的または非対称的に配置され得る。例えば、光軸218の周りの凹部238内の磁石234の非対称配置を使用して、光学システムの他の構成要素の非対称性を補正することができる。例えば、図3に示される実施形態では、カウンターポール228は、12個の凹部238を含み、そのうちの3個は、それらの中に配置された磁石234を有して非対称パターンを形成する。
【0042】
いくつかの実施形態では、図4に示されるように、凹部は、光軸218に隣接する位置からカウンターポール228のエッジ242まで半径方向に延びるトラック240として構成することができる。各トラック240は、それぞれの磁石234が、トラック240内の光軸218に対して半径方向内側または外側に摺動できるように構成することができる。そのような構成は、有利なことに、磁石を軸218に対して容易に再配置かつ/または調整して、システム200内の既存の非対称性を補正することを可能にする。いくつかの実施形態では、2つ以上の磁石が各トラック240に配置され得る。図示の実施形態は、半径方向に延びる複数のトラック240を示しているが、他の実施形態では、トラックは、光軸218を中心に円周方向に延びることができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、前述のように、カウンターポール228は、サンプルSに対して移動可能であり得る。例えば、カウンターポール228は、サンプルチャンバから完全に取り外され得るように、かつ/またはサンプルチャンバに接続された「パーキングベイ(parking bay)」に保存することができるように、移動可能であり得る。いくつかの実施形態では、カウンターポール228は、カウンターポール228が浸漬レンズに追加の起磁力を加えるのに十分なほど磁気浸漬レンズ212の近く(例えば、「アクティブ」な場所)に配置される真空チャンバ内の第1の場所から、カウンターポール228がレンズ212に影響を与えない(例えば、「非アクティブ」な場所)真空チャンバ内の第2の場所に移動させることができる。カウンターポール228は、浸漬レンズ212によって通電することができる(例えば、カウンターポール228は、浸漬レンズの磁路の一部とすることができ、補助磁気コイルのような別個の磁界によって通電する必要はない)。
【0044】
他の実施形態では、永久磁石234は、格納式光学要素上に配置され得る。このような構成の詳細は、米国特許公開第2014/0110597号に記載されており、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0045】
システム200は、SEMカラムのみを含むように示されているが、いくつかの実施形態では、システム200は、前述のデュアルビームシステム100のイオンカラム104と同様に、イオンカラムをさらに含むことができる。そのような実施形態では、本明細書に記載の磁気浸漬レンズ(永久磁石234を備えたカウンターポール228を含む)を使用して、イオンカラムからのイオンビームを集束させることができる。
【0046】
実施例3
図6は、例示的なシステム300の磁束線の代表的なグラフを示している。領域302はコイル222に対応し、領域304に示される磁束線は第1のレンズポール224の磁束線に対応し、領域308に示される磁束線は第2のレンズポール228の磁束線に対応し、領域310に示される磁束線は真空チャンバ204の磁束線に対応している。図示されるように、領域302は、既存の浸漬レンズコイルの制限された電力を示している。レンズの第1のポール内の磁場の強さは、領域304に示されている。領域306は、浸漬レンズの磁気回路の飽和を示す。このような飽和とその結果として起こり得る磁気回路の非対称性は、レンズの性能に悪影響を与える可能性がある。本明細書に記載の実施形態は、これらの問題に対処し、有利なことに、磁気回路を部分的に開いた状態で、カラム自体の内部で磁石を使用することを可能にするように構成される。
【0047】
例えば、図7は、永久磁石を含む例示的なシステム400の磁束線の代表的なグラフを示している。領域402の磁束線は、永久磁石234の磁束線に対応し、領域404はコイル222に対応し、領域406に示される磁束線は、第1のレンズポール224の磁束線に対応し、領域408に示される磁束線は、第2のレンズポール228内の磁束線に対応し、領域410に示される磁束線は、真空チャンバ204内の磁束線に対応する。領域402は、永久磁石234によって追加される磁場強度を示し、これは、例えば、約1500ATのコイルに相当するものを追加することができる。
【0048】
本開示の原理が適用される多くの可能な実施形態の観点から、図示された実施形態は好ましい実施例のみであり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないと認識すべきである。むしろ、範囲は以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、添付の特許請求の範囲および趣旨に含まれるすべてのものを特許請求する。これらのセクションで具体的に取り扱われる代替案は単なる例示にすぎず、本明細書に記載された実施形態に対する全ての可能な代替案を構成するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7