IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

特許7707908塩化合物、レジスト組成物及びパターン形成方法
<>
  • 特許-塩化合物、レジスト組成物及びパターン形成方法 図1
  • 特許-塩化合物、レジスト組成物及びパターン形成方法 図2
  • 特許-塩化合物、レジスト組成物及びパターン形成方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】塩化合物、レジスト組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 65/21 20060101AFI20250708BHJP
   C07C 381/12 20060101ALI20250708BHJP
   C07C 69/753 20060101ALI20250708BHJP
   C07C 59/135 20060101ALI20250708BHJP
   C07C 69/92 20060101ALI20250708BHJP
   C07C 311/51 20060101ALI20250708BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20250708BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
C07C65/21 D
C07C381/12 CSP
C07C69/753 Z
C07C59/135
C07C69/92
C07C311/51
G03F7/004 501
G03F7/004 503A
G03F7/20 502
G03F7/20 521
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021212355
(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公開番号】P2023096529
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 敬之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 朝美
(72)【発明者】
【氏名】提箸 正義
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/032794(WO,A1)
【文献】特開2016-161790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 65/21
C07C 381/12
C07C 69/753
C07C 59/135
C07C 69/92
C07C 311/51
G03F 7/004
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される塩化合物。
【化1】
[式中、nは、1~5の整数である。mは、0~4の整数である。
Lは、単結合、エーテル結合又はエステル結合である。nが2以上のとき、各Lは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
1は、炭素数6~18のアルキル基、又は該アルキル基中の-CH2-がエーテル結合に置換された直鎖状のグライム鎖である。ただし、R1は、少なくとも1つの炭素数6以上の直鎖状構造を有する。nが2以上のとき、各R1は、同一であってもよく、異なっていてもよい
2は、ハロゲン原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基に置換されていてもよい。
+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
-は、下記式(A1)~(A4)のいずれかで表されるアニオンである。ただし、A-が下記式(A2)で表されるアニオンである場合、式(1)中のR1-L-で表される部分構造とベンゼン環とは、-CH2-又は-O-を介して結合している。
【化2】
(式中、Rf1は、水素原子又はフッ素原子である。Rf2及びRf3は、それぞれ独立に、メチル基、フェニル基、トリル基又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。破線は、結合手である。)]
【請求項2】
-が、式(A1)又は(A2)で表されるアニオンである請求項1記載の塩化合物。
【請求項3】
mが1以上であり、R2の少なくとも1つがヨウ素原子である請求項1又は2記載の塩化合物。
【請求項4】
+が、下記式(M-1)~(M-3)のいずれかで表されるカチオンである請求項1~3のいずれか1項記載の塩化合物。
【化3】
(式中、RM1、RM2、RM3、RM4及びRM5は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、又は炭素数1~15のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、ヘテロ原子を含む基に置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-又は-N(H)-に置換されていてもよい。
1、k2、k3、k4及びk5は、それぞれ独立に、0~5の整数である。k1が2以上のとき、各RM1は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM1が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。k2が2以上のとき、各RM2は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM2が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。k3が2以上のとき、各RM3は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM3が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。k4が2以上のとき、各RM4は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM4が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。k5が2以上のとき、各RM5は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM5が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。
Xは、単結合、-CH2-、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-又は-N(H)-である。)
【請求項5】
下記式(1-I)で表されるアニオンと、式(M-1)又は(M-2)で表されるカチオンとからなる請求項4記載の塩化合物。
【化4】
(式中、L、R 1 びnは、前記と同じ。
2Aは、ヨウ素原子以外のハロゲン原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基に置換されていてもよい。
1は、1~4の整数である。m2は、0~3の整数である。ただし、2≦n+m1+m2≦5である。)
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載の塩化合物からなる酸拡散抑制剤。
【請求項7】
(A)酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するベースポリマー、(B)光酸発生剤、(C)請求項6記載の酸拡散抑制剤、及び(D)有機溶剤を含むレジスト組成物。
【請求項8】
(A')酸の作用により現像液に対する溶解性が変化し、露光により酸を発生する機能を有する光酸発生部位を構成単位として含むベースポリマー、(C)請求項6記載の酸拡散抑制剤、及び(D)有機溶剤を含むレジスト組成物。
【請求項9】
前記ベースポリマーが、下記式(a)で表される繰り返し単位又は下記式(b)で表される繰り返し単位を含むポリマーである請求項7又は8記載のレジスト組成物。
【化5】
(式中、RAは、水素原子又はメチル基である。
Aは、単結合、フェニレン基、ナフチレン基又は*-C(=O)-O-XA1-である。XA1は、炭素数1~15のヒドロカルビレン基であり、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合及びラクトン環から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。
Bは、単結合又はエステル結合である。
AL1及びAL2は、それぞれ独立に、酸不安定基である。)
【請求項10】
前記酸不安定基が、下記式(L1)で表される基である請求項9記載のレジスト組成物。
【化6】
(式中、R11は、炭素数1~7のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-に置換されていてもよい。aは、1又は2である。破線は、結合手である。)
【請求項11】
前記ベースポリマーが、下記式(c)で表される繰り返し単位を含むポリマーである請求項7~10のいずれか1項記載のレジスト組成物。
【化7】
(式中、RAは、水素原子又はメチル基である。
Aは、単結合又はエステル結合である。
21は、フッ素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよい。
b及びcは、1≦b≦5、0≦c≦4及び1≦b+c≦5を満たす整数である。)
【請求項12】
前記ベースポリマーが、下記式(d1)~(d4)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む請求項8記載のレジスト組成物。
【化8】
(式中、RBは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Aは、単結合、フェニレン基、-O-ZA1-、-C(=O)-O-ZA1-又は-C(=O)-N(H)-ZA1-である。ZA1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
B及びZCは、それぞれ独立に、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
Dは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、-O-ZD1-、-C(=O)-O-ZD1-又は-C(=O)-N(H)-ZD1-である。ZD1は、置換されていてもよいフェニレン基である。
31~R41は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、ZA、R31及びR32のうちのいずれか2つ以上が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33、R34及びR35のうちのいずれか2つ以上、R36、R37及びR38のうちのいずれか2つ以上又はR39、R40及びR41のうちのいずれか2つ以上が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
1は、0又は1であるが、ZBが単結合のときは0である。n2は、0又は1であるが、ZCが単結合のときは0である。
Xa-は、非求核性対向イオンである。)
【請求項13】
請求項7~12のいずれか1項記載のレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜をKrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線又は極端紫外線で露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
【請求項14】
現像液としてアルカリ水溶液を用いて、露光部を溶解させ、未露光部が溶解しないポジ型パターンを得る請求項13記載のパターン形成方法。
【請求項15】
現像液として有機溶剤を用いて、未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得る請求項13記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記現像液が、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル及び酢酸2-フェニルエチルから選ばれる少なくとも1種である請求項15記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化合物、レジスト組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められ、高解像性のレジストパターンが要求されるようになるにつれ、パターン形状やコントラスト、マスクエラーファクター(Mask Error Factor(MEF))、焦点深度(Depth of Focus(DOF))、寸法均一性(Critical Dimension Uniformity(CDU))、ラインウィドゥスラフネス(Line Width Roughness(LWR))等に代表されるリソグラフィー特性に加えて、現像後のレジストパターンのディフェクト(欠陥)の改善が一層必要とされている。
【0003】
特に、パターンの微細化と共にLWRが問題視されている。ベースポリマーや酸発生剤の偏在や凝集の影響や、酸拡散の影響が指摘されている。更に、レジスト膜の薄膜化にしたがってLWRが大きくなる傾向があり、微細化の進行に伴う薄膜化によるLWRの劣化は深刻な問題になっている。
【0004】
極端紫外線(EUV)リソグラフィー用レジスト組成物においては、高感度化、高解像度化及び低LWR化を同時に達成する必要がある。酸拡散距離を短くするとLWRは小さくなるが、低感度化する。例えば、ポストエクスポージャーベーク(PEB)温度を低くすることによってLWRは小さくなるが、低感度化する。酸拡散抑制剤(クエンチャー)の添加量を増やしてもLWRが小さくなるが、低感度化する。感度及びLWRのトレードオフの関係を打ち破ることが必要である。
【0005】
感度及びLWRのトレードオフの関係を打ち破るべく、種々の添加剤が検討されてきた。光酸発生剤や、アミンや弱酸オニウム塩等の酸拡散抑制剤の構造最適化を始め、酸増殖剤の添加による高感度化、また特許文献1~3では以下に示す表面偏在型の酸やアミン、弱酸オニウム塩型の酸拡散抑制剤による形状補正効果を組み込んだ添加剤の検討等が行われているが、依然として感度、LWR、CDUが共に満足できるようなレジスト組成物の開発には至っていない。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-218340号公報
【文献】特開2019-026637号公報
【文献】特開2019-034931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の高解像性のレジストパターンの要求に対して、従来の酸拡散抑制剤を用いたレジスト組成物では、CDU、LWR等のリソグラフィー性能が必ずしも満足できない場合があった。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線(EB)、EUV等の高エネルギー線を用いるフォトリソグラフィーにおいて、感度を損なうことなく、CDU、LWR等のリソグラフィー性能に優れるレジスト組成物、これに使用される酸拡散抑制剤、及び前記レジスト組成物を用いるパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、所定の構造のオニウム塩を酸拡散抑制剤として用いたレジスト組成物が、CDU、LWR等のリソグラフィー性能に優れ、精密な微細加工に極めて有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記塩化合物、レジスト組成物及びパターン形成方法を提供する。
1.下記式(1)又は(2)で表される塩化合物。
【化2】
[式中、nは、1~5の整数である。mは、0~4の整数である。
Lは、単結合、エーテル結合又はエステル結合である。nが2以上のとき、各Lは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
1は、炭素数6~18のアルキル基であり、該アルキル基中の-CH2-がエーテル結合又はカルボニル基に置換されていてもよい。ただし、R1は、少なくとも1つの炭素数6以上の直鎖状構造を有する。nが2以上のとき、各R1は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、前記アルキル基は、部分構造として末端又は炭素-炭素結合間にシクロペンタン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルニル環又はベンゼン環から選ばれる環構造を含んでいてもよい。
1Fは、炭素数4~18のフッ素化アルキル基であり、該アルキル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基に置換されていてもよい。ただし、R1Fは、-CF2-及び-CF3から選ばれる基を少なくとも2つ有する。また、前記フッ素化アルキル基は、部分構造として末端又は炭素-炭素結合間にシクロペンタン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルニル環又はベンゼン環から選ばれる環構造を含んでいてもよい。
2は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基に置換されていてもよい。
+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
-は、下記式(A1)~(A4)のいずれかで表されるアニオンである。ただし、A-が下記式(A2)で表されるアニオンである場合、式(1)又は(2)中のR1-L-又はR1F-L-で表される部分構造とベンゼン環とは、-CH2-又は-O-を介して結合している。
【化3】
(式中、Rf1は、水素原子又はフッ素原子である。Rf2及びRf3は、それぞれ独立に、メチル基、フェニル基、トリル基又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。破線は、結合手である。)]
2.A-が、式(A1)又は(A2)で表されるアニオンである1の塩化合物。
3.mが1以上であり、R2の少なくとも1つがヨウ素原子である1又は2の塩化合物。
4.M+が、下記式(M-1)~(M-3)のいずれかで表されるカチオンである1~3のいずれかの塩化合物。
【化4】
(式中、RM1、RM2、RM3、RM4及びRM5は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、又は炭素数1~15のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、ヘテロ原子を含む基に置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-又は-N(H)-に置換されていてもよい。
1、k2、k3、k4及びk5は、それぞれ独立に、0~5の整数である。k1が2以上のとき、各RM1は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM1が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。k2が2以上のとき、各RM2は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM2が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。k3が2以上のとき、各RM3は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM3が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。k4が2以上のとき、各RM4は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM4が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。k5が2以上のとき、各RM5は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM5が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。
Xは、単結合、-CH2-、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-又は-N(H)-である。)
5.下記式(1-I)又は(2-I)で表されるアニオンと、式(M-1)又は(M-2)で表されるカチオンとからなる4の塩化合物。
【化5】
(式中、L、R1、R1F及びnは、前記と同じ。
2Aは、ヨウ素原子以外のハロゲン原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基に置換されていてもよい。
1は、1~4の整数である。m2は、0~3の整数である。ただし、2≦n+m1+m2≦5である。)
6.1~5のいずれかの塩化合物からなる酸拡散抑制剤。
7.(A)酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するベースポリマー、(B)光酸発生剤、(C)6の酸拡散抑制剤、及び(D)有機溶剤を含むレジスト組成物。
8.(A')酸の作用により現像液に対する溶解性が変化し、露光により酸を発生する機能を有する光酸発生部位を構成単位として含むベースポリマー、(C)6の酸拡散抑制剤、及び(D)有機溶剤を含むレジスト組成物。
9.前記ベースポリマーが、下記式(a)で表される繰り返し単位又は下記式(b)で表される繰り返し単位を含むポリマーである7又は8のレジスト組成物。
【化6】
(式中、RAは、水素原子又はメチル基である。
Aは、単結合、フェニレン基、ナフチレン基又は*-C(=O)-O-XA1-である。XA1は、炭素数1~15のヒドロカルビレン基であり、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合及びラクトン環から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。
Bは、単結合又はエステル結合である。
AL1及びAL2は、それぞれ独立に、酸不安定基である。)
10.前記酸不安定基が、下記式(L1)で表される基である9のレジスト組成物。
【化7】
(式中、R11は、炭素数1~7のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-に置換されていてもよい。aは、1又は2である。破線は、結合手である。)
11.前記ベースポリマーが、下記式(c)で表される繰り返し単位を含むポリマーである7~10のいずれかのレジスト組成物。
【化8】
(式中、RAは、水素原子又はメチル基である。
Aは、単結合又はエステル結合である。
21は、フッ素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよい。
b及びcは、1≦b≦5、0≦c≦4及び1≦b+c≦5を満たす整数である。)
12.前記ベースポリマーが、下記式(d1)~(d4)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含む8のレジスト組成物。
【化9】
(式中、RBは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
Aは、単結合、フェニレン基、-O-ZA1-、-C(=O)-O-ZA1-又は-C(=O)-N(H)-ZA1-である。ZA1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
B及びZCは、それぞれ独立に、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。
Dは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、-O-ZD1-、-C(=O)-O-ZD1-又は-C(=O)-N(H)-ZD1-である。ZD1は、置換されていてもよいフェニレン基である。
31~R41は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、ZA、R31及びR32のうちのいずれか2つ以上が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33、R34及びR35のうちのいずれか2つ以上、R36、R37及びR38のうちのいずれか2つ以上又はR39、R40及びR41のうちのいずれか2つ以上が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
HFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
1は、0又は1であるが、ZBが単結合のときは0である。n2は、0又は1であるが、ZCが単結合のときは0である。
Xa-は、非求核性対向イオンである。)
13.7~12のいずれかのレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜をKrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、EB又はEUVで露光する工程と、前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程とを含むパターン形成方法。
14.現像液としてアルカリ水溶液を用いて、露光部を溶解させ、未露光部が溶解しないポジ型パターンを得る13のパターン形成方法。
15.現像液として有機溶剤を用いて、未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得る13のパターン形成方法。
16.前記現像液が、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル及び酢酸2-フェニルエチルから選ばれる少なくとも1種である15のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塩化合物を酸拡散抑制剤として含むレジスト組成物を用いてパターン形成を行った場合、CDU、LWR、DOF等のリソグラフィー性能に優れるパターンを形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1-1で得られたスルホニウム塩(Q-1)の1H-NMRスペクトルである。
図2】実施例1-2で得られたスルホニウム塩(Q-2)の1H-NMRスペクトルである。
図3】実施例1-3で得られたスルホニウム塩(Q-3)の1H-NMRスペクトルである。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明中、化学式で表される構造によっては不斉炭素が存在し、エナンチオマーやジアステレオマーが存在し得るものがあるが、その場合は1つの式でそれらの異性体を代表して表す。これらの異性体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
[塩化合物]
本発明の塩化合物は、下記式(1)又は(2)で表される。
【化10】
【0015】
式(1)及び(2)中、nは、1~5の整数であり、好ましくは1又は2である。mは、0~4の整数であり、好ましくは0~2である。
【0016】
式(1)及び(2)中、Lは、単結合、エーテル結合又はエステル結合である。nが2以上のとき、各Lは、同一であってもよく、異なっていてもよい。Lとしては、エーテル結合が好ましい。
【0017】
式(1)中、R1は、炭素数6~18のアルキル基であり、該アルキル基中の-CH2-がエーテル結合又はカルボニル基に置換されていてもよい。ただし、R1は、少なくとも1つの炭素数6以上の直鎖状構造を有する。nが2以上のとき、各R1は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0018】
1で表される炭素数6~18のアルキル基としては、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デシル基、1-ウンデシル基、1-ドデシル基、1-トリデシル基、1-テトラデシル基、1-ヘキサデシル基、1-オクタデシル基、オクタン-2-イル基、デカン-2-イル基、デカン-4-イル基、オクタデカン-8-イル基、7,7-ジメチルオクチル基、7,7-ジエチルノニル基、4-ブチルドデシル基等が挙げられる。また、前記アルキル基は、部分構造として、末端又は鎖状構造の間に、環式基、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルナン環又はベンゼン環を有していてもよい。また、前記基中の-CH2-がエーテル結合又はカルボニル基に置換されていてもよく、その結果としてエステル結合又はラクトン環を形成してもよい。R1としては、直鎖状アルキル基又は直鎖状のグライム鎖が好ましい。
【0019】
式(2)中、R1Fは、炭素数4~18のフッ素化アルキル基であり、該アルキル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基に置換されていてもよい。ただし、R1Fは、-CF2-及び-CF3から選ばれる基を少なくとも2つ有する。
【0020】
1Fで表される炭素数4~18のフッ素化アルキル基としては、例えば、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-ヘプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デシル基、1-ウンデシル基、1-ドデシル基、1-トリデシル基、1-テトラデシル基、1-ヘキサデシル基、1-オクタデシル基、オクタン-2-イル基、デカン-2-イル基、デカン-4-イル基、オクタデカン-8-イル基、7,7-ジメチルオクチル基、7,7-ジエチルノニル基、4-ブチルドデシル基等の水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された基が挙げられる。また、前記フッ素化アルキル基は、部分構造として、末端又は鎖状構造の間に、環式基、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ノルボルニル環又はベンゼン環を有していてもよい。また、前記基中の-CH2-がエーテル結合又はカルボニル基に置換されていてもよく、その結果としてエステル結合又はラクトン環を形成してもよい。
【0021】
1Fとしては、以下に示すものが好ましい。なお、下記式中、破線は、結合手である。
【化11】
【0022】
式(1)及び(2)中、R2は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基に置換されていてもよい。R2としては、例えば、フッ素原子、ヨウ素原子、ヒドロキシ基、メチル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、アダマンチル基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-ヒドロキシ-2-トリフルオロメチル-3,3,3-トリフルオロプロポキシ基、アセチル基、アセトキシ基等が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシ基、フッ素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、tert-ブチル基等が好ましい。
【0023】
式(1)及び(2)中、A-は、下記式(A1)~(A4)のいずれかで表されるアニオンである。ただし、A-が下記式(A2)で表されるアニオンである場合、式(1)又は(2)中のR1-L-又はR1F-L-で表される部分構造とベンゼン環とは、-CH2-又は-O-を介して結合している。
【化12】
(式中、破線は、結合手である。)
【0024】
式(A1)~(A4)中、Rf1は、水素原子又はフッ素原子であるが、好ましくはフッ素原子である。Rf2及びRf3は、それぞれ独立に、メチル基、フェニル基、トリル基又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基であるが、好ましくはパーフルオロメチル基である。。
【0025】
-としては、式(A1)又は(A2)で表されるアニオンが好ましく、式(A1)で表されるアニオンがより好ましい。
【0026】
式(1)で表される塩化合物のアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化13】
【0027】
【化14】
【0028】
【化15】
【0029】
【化16】
【0030】
式(2)で表される塩化合物のアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化17】
【0031】
【化18】
【0032】
【化19】
【0033】
式(1)及び(2)中、M+は、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。M+としては、カチオン中心と結合するベンゼン環を1つ以上有するカチオンが好ましく、下記式(M-1)~(M-3)のいずれかで表されるカチオンがより好ましい。
【化20】
【0034】
式(M-1)~(M-3)中、RM1、RM2、RM3、RM4及びRM5は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、又は炭素数1~15のヒドロカルビル基である。
【0035】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。前記炭素数1~15のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基等の芳香族ヒドロカルビル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基に置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-又は-N(H)-に置換されていてもよい。すなわち、前記ヒドロカルビル基は、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、チオエーテル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(M-1)~(M-3)中のベンゼン環の炭素原子に結合するものであってもよい。このとき、RM1~RM5は、ヒドロカルビルオキシ基、ヒドロカルビルカルボニルオキシ基、ヒドロカルビルチオ基、ヒドロカルビルカルボニル基、ヒドロカルビルスルホニル基、ヒドロカルビルアミノ基等となってもよい。
【0036】
式(M-1)~(M-3)中、k1、k2、k3、k4及びk5は、それぞれ独立に、0~5の整数である。k1が2以上のとき、各RM1は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM1が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。k2が2以上のとき、各RM2は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM2が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。k3が2以上のとき、各RM3は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM3が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。k4が2以上のとき、各RM4は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM4が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。k5が2以上のとき、各RM5は同一であっても異なっていてもよく、2つのRM5が互いに結合してこれらが結合するベンゼン環上の炭素原子と共に環を形成してもよい。
【0037】
式(M-2)中、Xは、単結合、-CH2-、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)2-又は-N(H)-である。
【0038】
+で表されるスルホニウムカチオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化21】
【0039】
【化22】
【0040】
【化23】
【0041】
【化24】
【0042】
+で表されるヨードニウムカチオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。

【化25】
【0043】
式(1)又は(2)で表される塩化合物としては、下記式(1-I)又は(2-I)で表されるアニオンと、式(M-1)又は(M-2)で表されるカチオンの組み合わせからなる塩が好ましい。
【化26】
(式中、L、R1、R1F及びnは、前記と同じ。R2Aは、ヨウ素原子以外のハロゲン原子、ヒドロキシ基又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の水素原子がハロゲン原子に置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、エーテル結合又はカルボニル基に置換されていてもよい。m1は、1~4の整数である。m2は、0~3の整数である。ただし、2≦n+m1+m2≦5である。)
【0044】
式(1)又は(2)で表される塩化合物としては、以下に示すアニオンとカチオンとの組み合わせからなる塩が、特に好ましい。
【化27】
【0045】
【化28】
【0046】
本発明の塩化合物は、例えば、以下に示す方法に従って合成することができる。
【化29】
(式中、R1、R2、M+、m及びnは、前記と同じ。Rは、水素原子、メチル基又は2,2,2-トリフルオロエチル基である。Laは、エーテル結合又はエステル結合である。XAは、Laがエーテル結合の場合は塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、Laがエステル結合の場合は、-C(=O)-Clである。MB +は、1価金属イオン又はテトラメチルアンモニウムカチオンである。XB -は、アニオンである。)
【0047】
第一工程では、フェノール誘導体(A)を、塩基性条件下でハロゲン化物(R1-XA)と反応させてエーテル化を行うことで中間体(B)が合成される。また、ハロゲン化物(R1-XA)として酸クロリドを使用する場合は、同様に塩基性条件下でフェノール誘導体(A)と反応させることでエステル化を行い、中間体(B)を合成することができる。エーテル化は、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等の極性溶剤中、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム等の塩基を使用して反応を行うことができる。エステル化は、塩化メチレン、アセトニトリル等の溶剤中で、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン等の塩基を作用させることで反応を行うことができる。
【0048】
第二工程では、中間体(B)を水酸化物塩(MB +OH-)で加水分解することで中間体(C)とする工程である。水酸化物塩(MB +OH-)としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。反応溶剤としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、水又はこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0049】
第三工程は、目的のアニオン構造を有する中間体(C)と、目的のカチオン構造を有する塩(M+B -)とを使用するイオン交換によって、目的の化合物(D)を得る工程である。このイオン交換反応は、公知の方法で容易に達成され、例えば、特開2007-145797号公報を参考にすることができる。
【0050】
なお、前述した合成方法はあくまでも一例であり、本発明はこれらに限定されない。
【0051】
式(1)又は(2)で表される塩化合物を酸拡散抑制剤として用いるレジスト組成物は、LWR及びCDUに優れる。この理由としては、詳細は不明だが以下のように推察される。
【0052】
本発明の塩化合物は、アニオンが炭素数6以上の直鎖状構造又は炭素数4以上のフッ素原子含有鎖状構造を有する。これらの基を有することで、本発明の塩化合物からなる酸拡散抑制剤がレジスト膜の表層に偏在化すると考えられ、表層ほど酸拡散抑制剤の濃度が高くなり、下層ほど酸拡散抑制剤の濃度が低くなる。また、露光による光吸収は上層ほど強くなるので、光分解によって生じる発生酸の濃度も上層(表層)ほど高濃度となる。結果として、酸濃度の多い上層に多くの酸拡散抑制剤が存在し、酸濃度の低い下層に少ない酸拡散抑制剤が存在することになるため、効率よく発生酸の酸拡散が抑制され、パターン形状が改善され、LWRやCDUといったリソグラフィー性能が改善されると考えられる。
【0053】
特許文献2には、フルオロアルキル鎖を含むカルボン酸塩型の酸拡散抑制剤として、下記式で表される化合物が示されている。
【化30】
【0054】
この化合物に関しても、表層への偏在化効果が示唆されるものの、リソグラフィー性能において本発明の酸拡散抑制剤に劣る。
【0055】
これは、詳細は不明だが以下のように考察される。前記式で表される化合物は、アニオン部位とアニオンの主骨格とがエステル結合を介して結合した構造を有している。さらに、そのエステル構造は含フッ素アルキルカルボン酸エステルであるため、アルカリ現像液に対して弱いことが予想され、現像中に分解している可能性が考えられる。アルカリ現像による分解物が溶解コントラストに悪影響を与えることや、アルカリ現像による極性変化により未露光部のレジスト膜表層が溶解することで、リソグラフィー性能が劣化すると考えられる。一方で、本発明の酸拡散抑制剤のアニオン部位は、アニオン主骨格であるベンゼン環と直結し、エーテル結合又はアミド結合を介して結合しており、これらの結合はアルカリ現像液により分解することがないため、現像時に溶解コントラストを低下させることなく、結果として、良好なリソグラフィー性能を得ることが可能となる。
【0056】
特許文献3には、フルオロアルキル鎖を含むアミン型の酸拡散抑制剤として下記式で表される化合物が示されている。
【化31】
【0057】
前記式で表される化合物に関しても、表層への偏在化効果が示唆されるものの、本発明の光分解性の塩化合物と比較して、露光部と未露光部との溶解コントラストが低くなる。すなわち、本発明の塩化合物は、露光部では自身のカチオンが分解して発生した酸によりクエンチ能が失活し、未露光部でのみ酸拡散抑制剤として働くことに対して、前記アミン型クエンチャーは、露光部、未露光部を問わずに酸拡散を抑制してしまうため、感度を低下させ、溶解コントラストも低下させる。結果として、本発明の酸拡散抑制剤を使用する方が、良好なリソグラフィー性能が得られると考えられる。
【0058】
また、アニオンにヨウ素原子が導入された式(1-I)又は(2-I)で表されるアニオンを有する塩化合物を酸拡散抑制剤として使用した場合、ヨウ素原子がEUV光を効率よく吸収することで高い感度を有することが期待できる。
【0059】
[レジスト組成物]
本発明のレジスト組成物は、
(A)酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するベースポリマー、
(B)光酸発生剤、
(C-1)本発明の塩化合物からなる酸拡散抑制剤、及び
(D)有機溶剤
を必須成分として含み、必要に応じて、
(C-2)本発明の塩化合物以外の酸拡散抑制剤、
(E)界面活性剤、及び
(F)その他の成分
を含んでもよい。
【0060】
または、(A')酸の作用により現像液に対する溶解性が変化し、露光により酸を発生する機能を有する光酸発生部位を構成単位として含むベースポリマー、
(C-1)本発明の塩化合物からなる酸拡散抑制剤、及び
(D)有機溶剤
を必須成分として含み、必要に応じて、
(B)光酸発生剤、
(C-2)本発明の塩化合物以外の酸拡散抑制剤、
(E)界面活性剤、及び
(F)その他の成分
を含んでもよい。
【0061】
[(A)ベースポリマー]
(A)成分のベースポリマーとしては、下記式(a)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位aともいう。)又は下記式(b)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位bともいう。)を含むポリマーが好ましい。
【化32】
【0062】
式(a)及び(b)中、RAは、水素原子又はメチル基である。XAは、単結合、フェニレン基、ナフチレン基又は*-C(=O)-O-XA1-である。*は、主鎖の炭素原子との結合手である。XA1は、炭素数1~15のヒドロカルビレン基であり、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合及びラクトン環から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。XBは、単結合又はエステル結合である。AL1及びAL2は、それぞれ独立に、酸不安定基である。前記ヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。
【0063】
酸不安定基AL1及びAL2としては特に限定されないが、例えば、炭素数4~20の3級ヒドロカルビル基、各ヒドロカルビル基がそれぞれ炭素数1~6のヒドロカルビル基であるトリヒドロカルビルシリル基、炭素数4~20のオキソアルキル基等である。これら酸不安定基の具体的構造に関する詳細な説明は、特開2014-225005号公報の段落[0016]~[0035]が詳しい。
【0064】
酸不安定基AL1及びAL2としては、下記式(L1)で表される基が好ましい。
【化33】
【0065】
式(L1)中、R11は、炭素数1~7のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-に置換されていてもよい。aは、1又は2である。破線は、結合手である。
【0066】
酸不安定基AL1及びAL2としては、以下に示す基が特に好ましい。
【化34】
(式中、破線は結合手である。)
【0067】
式(a)中のXAを変えた構造の具体例としては、特開2014-225005号公報の段落[0015]に記載のものが挙げられるが、以下に示すものが好ましい。なお、下記式中、RA及びAL1は、前記と同じである。
【化35】
【0068】
繰り返し単位aとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化36】
【0069】
【化37】
【0070】
【化38】
【0071】
【化39】
【0072】
【化40】
【0073】
繰り返し単位bとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じである。
【化41】
【0074】
【化42】
【0075】
【化43】
【0076】
なお、前記具体例はXA及びXBが単結合の場合であるが、単結合以外の場合においても同様の酸不安定基と組み合わせることができる。XAが単結合以外のものである場合の具体例は、前述したとおりである。XBがエステル結合であるものの具体例としては、前記具体例において、主鎖とベンゼン環との間の単結合をエステル結合に置き換えたものが挙げられる。
【0077】
前記ベースポリマーは、下記式(c)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位cともいう。)を含むことが好ましい。
【化44】
【0078】
式(c)中、RAは、水素原子又はメチル基である。YAは、単結合又はエステル結合である。
【0079】
式(c)中、R21は、フッ素原子、ヨウ素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;フェニル基等のアリール基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。
【0080】
また、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-が、-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(c)中のベンゼン環の炭素原子に結合するものであってもよい。置換されたヒドロカルビル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、2-メトキシエトキシ基、アセチル基、エチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、アセトキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、ペンチルカルボニルオキシ基、ヘキシルカルボニルオキシ基、ヘプチルカルボニルオキシ基、メトキシメチルカルボニルオキシ基、(2-メトキシエトキシ)メチルカルボニルオキシ基、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、アセトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されない。R21としては、フッ素原子、ヨウ素原子、メチル基、アセチル基又はメトキシ基が好ましい。
【0081】
式(c)中、b及びcは、1≦b≦5、0≦c≦4及び1≦b+c≦5を満たす整数である。bは1、2又は3が好ましく、cは0、1又は2が好ましい。
【0082】
繰り返し単位cは、基板や下層膜との密着性を向上させる働きを有する。また、酸性度の高いフェノール性ヒドロキシ基を有することから、露光により発生する酸の働きを促進し、高感度化に寄与するとともに、EUV露光においては露光により生じる酸のプロトン供給源となるため、感度の改善が期待できる。
【0083】
繰り返し単位cとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは前記と同じであり、Meはメチル基である。
【化45】
【0084】
【化46】
【0085】
【化47】
【0086】
これらのうち、繰り返し単位cとしては、以下に示すものが好ましい。なお、下記式中、RAは前記と同じであり、Meはメチル基である。
【化48】
【0087】
前記ベースポリマーは、下記式(d1)~(d4)のいずれかで表される繰り返し単位を含んでもよい。
【化49】
【0088】
式(d1)~(d4)中、RBは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。ZAは、単結合、フェニレン基、-O-ZA1-、-C(=O)-O-ZA1-又は-C(=O)-N(H)-ZA1-である。ZA1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。ZB及びZCは、それぞれ独立に、単結合又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。ZDは、単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、-O-ZD1-、-C(=O)-O-ZD1-又は-C(=O)-N(H)-ZD1-である。ZD1は、置換されていてもよいフェニレン基である。
【0089】
A1で表されるヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチレン基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル基等のアルカンジイル基;シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の環式飽和ヒドロカルビレン基;エテン-1,2-ジイル基、1-プロペン-1,3-ジイル基、2-ブテン-1,4-ジイル基、1-メチル-1-ブテン-1,4-ジイル基等のアルケンジイル基;2-シクロヘキセン-1,4-ジイル基等の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビレン基;フェニレン基、ナフチレン基等の芳香族ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビレン基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基に置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基に置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0090】
B及びZCで表されるヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、ZA1で表されるヒドロカルビレン基として例示したものと同様のものが挙げられる。ZB及びZCとして好ましくは、単結合、アダマンタンジイル基又はフェニレン基である。
【0091】
式(d1)~(d4)中、R31~R41は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;シクロヘキセニル基等の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基、チエニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-tert-ブトキシフェニル基、3-tert-ブトキシフェニル、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリイソプロピルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、n-プロポキシナフチル基、n-ブトキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のアリール基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基に置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基に置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0092】
A及びR31~R41は、フェニル基を含み、かつ該フェニル基が式中のS+と結合している構造が好ましい。
【0093】
また、ZA、R31及びR32のうちのいずれか2つ以上が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R33、R34及びR35のうちのいずれか2つ以上、R36、R37及びR38のうちのいずれか2つ以上又はR39、R40及びR41のうちのいずれか2つ以上が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0094】
式(d2)中、RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
【0095】
式(d2)中、n1は、0又は1であるが、ZBが単結合のときは0である。式(d3)中、n2は、0又は1であるが、ZCが単結合のときは0である。
【0096】
式(d1)中、Xa-は、非求核性対向イオンである。前記非求核性対向イオンとしては、特に限定されないが、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;トリフレートイオン、1,1,1-トリフルオロエタンスルホネートイオン、ノナフルオロブタンスルホネートイオン等のフルオロアルキルスルホネートイオン;トシレートイオン、ベンゼンスルホネートイオン、4-フルオロベンゼンスルホネートイオン、1,2,3,4,5-ペンタフルオロベンゼンスルホネートイオン等のアリールスルホネートイオン;メシレートイオン、ブタンスルホネートイオン等のアルキルスルホネートイオン;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミドイオン、ビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミドイオン等のイミドイオン;トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドイオン、トリス(パーフルオロエチルスルホニル)メチドイオン等のメチドイオン等が挙げられ、好ましくは、下記式(d1-1)又は(d1-2)で表されるアニオンである。
【化50】
【0097】
式(d1-1)及び(d1-2)中、R51及びR52は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
【0098】
式(d1-1)で表されるアニオンとしては、特開2014-177407号公報の段落[0100]~[0101]に記載されたものや、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RHFは、前記と同じである。
【化51】
【0099】
【化52】
【0100】
【化53】
【0101】
式(d1-2)で表されるアニオンとしては、特開2010-215608号公報の段落[0080]~[0081]に記載されたものや、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Acはアセチル基である。
【化54】
【0102】
【化55】
【0103】
繰り返し単位d2中のアニオンとしては、特開2014-177407号公報の段落[0021]~[0026]に記載されたものが挙げられる。また、RHFが水素原子であるアニオンの具体的な構造としては、特開2010-116550号公報の段落[0021]~[0028]に記載されたもの、RHFがトリフルオロメチル基の場合のアニオンの具体的な構造としては、特開2010-77404号公報の段落[0021]~[0027]に記載されたものが挙げられる。
【0104】
繰り返し単位d3中のアニオンとしては、繰り返し単位d2中のアニオンの具体例において、-CH(RHF)CF2SO3 -の部分を-C(CF3)2CH2SO3 -に置き換えたものが挙げられる。
【0105】
繰り返し単位d2~d4のアニオンの好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RBは、前記と同じである。
【化56】
【0106】
式(d2)~(d4)中のスルホニウムカチオンの具体例としては、特開2008-158339号公報の段落[0223]に記載のカチオンや、式(1)又は(2)で表される塩化合物のスルホニウムカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。これらのうち、以下に示すものが好ましいが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化57】
【0107】
繰り返し単位d1~d4は、光酸発生剤の機能を有する。繰り返し単位d1~d4を含むベースポリマーを用いる場合、後述する添加型光酸発生剤の配合を省略し得る。
【0108】
前記ベースポリマーは、更に、他の密着性基として、フェノール性ヒドロキシ基以外のヒドロキシ基、ラクトン環、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、シアノ基又はカルボキシ基を含む繰り返し単位(以下、繰り返し単位eともいう。)を含んでいてもよい。
【0109】
繰り返し単位eとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RAは、前記と同じであり、Meはメチル基である。
【化58】
【0110】
【化59】
【0111】
【化60】
【0112】
【化61】
【0113】
繰り返し単位eとしては、これら以外にも、特開2014-225005号公報の段落[0045]~[0053]に記載されたものを挙げることができる。
【0114】
これらのうち、繰り返し単位eとしてはヒドロキシ基又はラクトン環を有するものが好ましく、例えば、以下に示すものが好ましい。なお、下記式中、RAは前記と同じであり、Meはメチル基である。
【化62】
【0115】
前記ベースポリマーは、更に前述したもの以外の他の繰り返し単位を含んでもよい。他の繰り返し単位としては、オキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位が挙げられる。オキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位を含むことによって、露光部が架橋するため、露光部分の残膜特性とエッチング耐性が向上する。
【0116】
前記ベースポリマーは、更に他の繰り返し単位として、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル等の置換アクリル酸エステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸;ノルボルネン、ノルボルネン誘導体、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデセン誘導体等の環状オレフィン類;無水イタコン酸等の不飽和酸無水物;スチレン、tert-ブトキシスチレン、ビニルナフタレン、アセトキシスチレン、アセナフチレン等のビニル芳香族類;その他の単量体から得られる繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0117】
前記ベースポリマーの重量平均分子量(Mw)は、1,000~500,000が好ましく、3,000~100,000がより好ましく、4,000~20,000が更に好ましい。Mwが前記範囲であれば、エッチング耐性が極端に低下することがなく、露光前後の溶解速度差が確保できるため解像性が良好である。なお、本発明においてMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。また、分散度(Mw/Mn)は、1.20~2.50が好ましく、1.30~2.00がより好ましい。
【0118】
前記ベースポリマーの合成方法としては、例えば、各種繰り返し単位を与えるモノマーのうち、所望のモノマー1種あるいは複数種を、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加えて加熱して重合を行う方法が挙げられる。このような重合方法は、特開2015-214634号公報の段落[0134]~[0137]に詳しい。また、酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、重合後保護化あるいは部分保護化してもよい。
【0119】
前記ベースポリマーにおいて、各繰り返し単位の好ましい含有割合は、例えば以下に示す範囲(モル%)とすることができるが、これに限定されない。
(I)繰り返し単位a及びbから選ばれる1種又は2種以上を好ましくは10~70モル%、より好ましくは20~65モル%、更に好ましくは30~60モル%含み、必要に応じ、
(II)繰り返し単位cの1種又は2種以上を好ましくは0~90モル%、より好ましくは15~80モル%、更に好ましくは30~60モル%含み、必要に応じ、
(III)繰り返し単位d1~d4から選ばれる1種又は2種以上を好ましくは0~30モル%、より好ましくは0~20モル%、更に好ましくは0~15モル%含み、必要に応じ、
(IV)繰り返し単位e及び他の繰り返し単位から選ばれる1種又は2種以上を好ましくは0~80モル%、より好ましくは0~70モル%、更に好ましくは0~50モル%含むことができる。
【0120】
(A)成分のベースポリマーは、1種単独で使用してもよく、組成比率、Mw及び/又はMw/Mnが異なる2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、(A)成分のベースポリマーとして、前記ポリマーに加えて、開環メタセシス重合体の水素添加物を含んでいてもよい。開環メタセシス重合体の水素添加物としては、特開2003-66612号公報に記載のものを用いることができる。
【0121】
[(B)光酸発生剤]
本発明のレジスト組成物は、前記ベースポリマーが繰り返し単位d1~d4から選ばれる少なくとも1つを含まない場合、必須成分として(B)光酸発生剤(以下、添加型光酸発生剤ともいう。)を含む。なお、前記ベースポリマーが繰り返し単位d1~d4から選ばれる少なくとも1つを含む場合であっても、添加型光酸発生剤は含まれていてもよい。
【0122】
前記添加型光酸発生剤としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であれば特に限定されない。好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N-スルホニルオキシジカルボキシイミド、O-アリールスルホニルオキシム、O-アルキルスルホニルオキシム等の光酸発生剤等が挙げられる。具体的には、例えば、特開2007-145797号公報の段落[0102]~[0113]に記載された化合物、特開2008-111103号公報の段落[0122]~[0142]に記載された化合物、特開2014-001259号公報の段落[0081]~[0092]に記載された化合物、特開2012-41320号公報に記載された化合物、特開2012-153644号公報に記載された化合物、特開2012-106986号公報に記載された化合物、特開2016-018007号公報に記載された化合物等が挙げられる。これらの公報に記載の部分フッ素化スルホン酸発生型の光酸発生剤は、特にArFリソグラフィーにおいて、発生酸の強度や拡散長が適度であり、好ましく使用される。
【0123】
(B)成分の光酸発生剤の好ましい例として、下記式(3)で表されるスルホニウム塩又は下記式(4)で表されるヨードニウム塩が挙げられる。
【化63】
【0124】
式(3)及び(4)中、R101、R102、R103、R104及びR105は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基としては、式(d1)~(d4)中のR31~R41の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。また、R101、R102及びR103のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよく、R104及びR105が、互いに結合してこれらが結合するヨウ素原子と共に環を形成してもよい。R101~R105は、フェニル基を含み、かつ該フェニル基が式中のS+又はI+に結合している構造が好ましい。
【0125】
式(3)で表されるスルホニウム塩のスルホニウムカチオンに関しては、特開2014-001259号公報の段落[0082]~[0085]に詳しい。また、その具体例としては、特開2007-145797号公報の段落[0027]~[0033]に記載されたもの、特開2010-113209号公報の段落[0059]に記載されたもの、特開2012-41320号公報に記載されたもの、特開2012-153644号公報に記載されたもの、特開2012-106986号公報に記載されたものや、式(1)又は(2)で表される塩化合物のスルホニウムカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0126】
式(3)で表されるスルホニウム塩のカチオンとしては、以下に示すものが好ましいが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化64】
【0127】
式(3)で表されるスルホニウム塩のカチオンとしては、特に、トリフェニルスルホニウムカチオン、S-フェニルジベンゾチオフェニウムカチオン、(4-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムカチオン、(4-フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムカチオン、(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホニウムカチオン、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウムカチオン等が好ましい。
【0128】
式(4)で表されるヨードニウム塩のカチオンとしては、式(1)又は(2)中のM+で表されるヨードニウムカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられ、ジフェニルヨードニウムカチオン又はジ-tert-ブチルフェニルヨードニウムカチオンが特に好ましい。
【0129】
式(3)及び(4)中、Xb-は、下記式(5)又は(6)で表されるアニオンである。
【化65】
【0130】
式(5)及び(6)中、Rfaは、フッ素原子、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。Rfbは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。Rfa及びRfbで表されるヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、後述する式(5')中のR112で表されるヒドロカルビル基として例示するものと同様のものが挙げられる。
【0131】
式(5)で表されるアニオンとしては、トリフルオロメタンスルホネートアニオン、ノナフルオロブタンスルホネートアニオン又は下記式(5')で表されるアニオンが好ましい。
【化66】
【0132】
式(5')中、R111は、水素原子又はトリフルオロメチル基であるが、好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0133】
式(5')中、R112は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~35のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;シクロヘキセニル基等の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基、チエニル基、4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-tert-ブトキシフェニル基、3-tert-ブトキシフェニル、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリイソプロピルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、n-プロポキシナフチル基、n-ブトキシナフチル基、ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基、ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のアリール基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基;これらを組み合わせて得られる基が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基に置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基に置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0134】
式(5')で表されるアニオンに関しては、特開2007-145797号公報、特開2008-106045号公報、特開2009-007327号公報、特開2009-258695号公報、特開2012-181306号公報に詳しい。式(5)で表されるアニオンの具体例としては、これらの公報に記載されたアニオンや、式(d1-1)で表されるアニオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。
【0135】
式(6)で表されるアニオンに関しては、特開2010-215608号公報や、特開2014-133723号公報に詳しい。また、式(6)で表されるアニオンの具体例としては、これらの公報に記載のアニオンや、式(d1-2)で表されるアニオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。なお、式(6)で表されるアニオンを有する光酸発生剤は、スルホ基のα位にフッ素原子を有していないが、β位に2つのトリフルオロメチル基を有していることに起因して、ベースポリマー中の酸不安定基を切断するのに十分な酸性度を有している。そのため、光酸発生剤として使用することができる。
【0136】
Xb-で表されるアニオンとしては、以下に示すものが好ましいが、これらに限定されない。なお、下記式中、RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
【化67】
【0137】
【化68】
【0138】
式(3)又は(4)で表される光酸発生剤の具体的な構造としては、前述したアニオンの具体例とカチオンの具体例との任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
(B)成分の光酸発生剤の他の好ましい例として、下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
【化69】
【0140】
式(7)中、R201及びR202は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビル基である。R203は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~30のヒドロカルビレン基である。また、R201、R202及びR203のうちのいずれか2つが、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0141】
201及びR202で表されるヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、式(5')中のR112で表されるヒドロカルビル基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0142】
203で表されるヒドロカルビレン基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基、トリデカン-1,13-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基等のアルカンジイル基;シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等の環式飽和ヒドロカルビレン基;フェニレン基、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、n-プロピルフェニレン基、イソプロピルフェニレン基、n-ブチルフェニレン基、イソブチルフェニレン基、sec-ブチルフェニレン基、tert-ブチルフェニレン基、ナフチレン基、メチルナフチレン基、エチルナフチレン基、n-プロピルナフチレン基、イソプロピルナフチレン基、n-ブチルナフチレン基、イソブチルナフチレン基、sec-ブチルナフチレン基、tert-ブチルナフチレン基等のアリーレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビレン基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基に置換されていてもよく、前記ヒドロカルビレン基中の-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基に置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0143】
式(7)中、LAは、単結合、エーテル結合、エステル結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビレン基である。なお、前記ヒドロカルビレン基中の-CH2-は、式(7)中の炭素原子及び/又はR203に結合するものであってもよい。前記ヒドロカルビレン基としては、R203で表されるヒドロカルビレン基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0144】
式(7)中、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
【0145】
式(7)で表される化合物としては、特に、下記式(7')で表されるものが好ましい。
【化70】
【0146】
式(7')中、RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基であるが、好ましくはトリフルオロメチル基である。R301、R302及びR303は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、式(5')中のR112で表されるヒドロカルビル基として例示したものと同様のものが挙げられる。x及びyは、それぞれ独立に、0~5の整数であり、zは、0~4の整数である。
【0147】
式(7)又は(7')で表される光酸発生剤に関しては、特開2011-16746号公報に詳しい。また、これらの具体例としては、前記公報に記載された化合物や、特開2015-214634号公報の段落[0149]~[0150]に記載された化合物が挙げられる。
【0148】
式(7)で表される光酸発生剤としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RHFは、前記と同じであり、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化71】
【0149】
【化72】
【0150】
本発明のレジスト組成物中、(B)成分の含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、1~30質量部が好ましく、2~25質量部がより好ましく、4~20質量部が更に好ましい。含有量が前記範囲であれば、解像性の劣化や、レジスト現像後又は剥離時において異物の問題が生じるおそれがない。(B)成分の光酸発生剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0151】
[(C)酸拡散抑制剤]
本発明のレジスト組成物は、(C)成分として酸拡散抑制剤を含む。(C)成分は、式(1)で表される塩化合物を必須成分(C-1)として含むが、式(1)又は(2)で表される塩化合物以外の酸拡散抑制剤(C-2)を含んでいてもよい。なお、本発明において酸拡散抑制剤とは、光酸発生剤より発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制することができる化合物を意味する。
【0152】
酸拡散抑制剤(C-2)としては、アミン化合物や、α位がフッ素化されていないスルホン酸又はカルボン酸等の弱酸オニウム塩が挙げられる。
【0153】
前記アミン化合物としては、第1級、第2級又は第3級アミン化合物、特に、ヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基及びスルホン酸エステル結合のいずれかを有するアミン化合物が挙げられる。また、酸拡散抑制剤としてカーバメート基で保護された第1級又は第2級アミン化合物も挙げることができる。このような保護されたアミン化合物は、レジスト組成物中、塩基に対して不安定な成分があるときに有効である。このような酸拡散抑制剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0146]~[0164]に記載された化合物、特許第3790649号公報に記載された化合物や、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化73】
【0154】
【化74】
【0155】
α位がフッ素化されていないスルホン酸又はカルボン酸のオニウム塩としては、下記式(8)又は(9)で表されるオニウム塩化合物が挙げられる。
【化75】
【0156】
式(8)中、Rq1は、水素原子、メトキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。ただし、スルホ基のα位の炭素原子上の水素原子が、フッ素原子又はフルオロアルキル基に置換されたものを除く。
【0157】
式(9)中、Rq2は、水素原子、ヒドロキシ基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。
【0158】
式(8)及び(9)中、Mq+は、オニウムカチオンである。前記オニウムカチオンとしては、下記式(10)、(11)又は(12)で表されるものが好ましい。
【0159】
【化76】
【0160】
式(10)~(12)中、R401~R409は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基である。また、R401及びR402、R404及びR405又はR406及びR407は、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子、ヨウ素原子又は窒素原子と共に環を形成してもよい。
【0161】
q1で表されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、tert-ペンチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;シクロヘキセニル基等の環式不飽和ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;チエニル基等のヘテロアリール基;4-ヒドロキシフェニル基等のヒドロキシフェニル基;4-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-tert-ブトキシフェニル基、3-tert-ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリイソプロピルフェニル基等のアルキルフェニル基;メチルナフチル基、エチルナフチル基等のアルキルナフチル基;メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、n-プロポキシナフチル基、n-ブトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基;ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等のジアルキルナフチル基;ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基;2-フェニル-2-オキソエチル基、2-(1-ナフチル)-2-オキソエチル基、2-(2-ナフチル)-2-オキソエチル基等の2-アリール-2-オキソエチル基等のアリールオキソアルキル基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基に置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-の一部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含む基に置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物(-C(=O)-O-C(=O)-)、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0162】
q2で表されるヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、Rq1の具体例として例示した置換基のほか、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-メチル-1-ヒドロキシエチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)-1-ヒドロキシエチル基等の含フッ素アルキル基、ペンタフルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基等の含フッ素アリール基が挙げられる。
【0163】
式(8)で表されるスルホン酸オニウム塩及び式(9)で表されるカルボン酸オニウム塩に関しては、特開2008-158339号公報、特開2010-155824号公報に詳しい。また、これらの化合物の具体例としては、これらの公報に記載されたものが挙げられる。
【0164】
式(8)で表されるスルホン酸オニウム塩のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化77】
【0165】
式(9)で表されるカルボン酸オニウム塩のアニオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化78】
【0166】
式(10)で表されるカチオン及び式(11)で表されるカチオンとしては、それぞれ式(1)又は(2)中のM+で表されるスルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられ、、また、式(12)で表されるカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、トリメチルベンジルカチオン、トリメチルフェニルカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましいカチオンとしては、以下に示すものが挙げられる。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化79】
【0167】
式(8)で表されるスルホン酸オニウム塩及び式(9)で表されるカルボン酸オニウム塩の具体例としては、前述したアニオン及びカチオンの任意の組み合わせが挙げられる。なお、これらのオニウム塩は、既知の有機化学的方法を用いたイオン交換反応によって容易に調製される。イオン交換反応ついては、例えば特開2007-145797号公報を参考にすることができる。
【0168】
式(8)又は(9)で表されるオニウム塩化合物は、本発明において酸拡散抑制剤として作用する。これは、前記オニウム塩化合物の各カウンターアニオンが、弱酸の共役塩基であることに起因する。ここでいう弱酸とは、ベースポリマーに含まれる酸不安定基含有単位の酸不安定基を脱保護させることができない酸性度のものを意味する。式(8)又は(9)で表されるオニウム塩化合物は、α位がフッ素化されているスルホン酸のような強酸の共役塩基をカウンターアニオンとして有するオニウム塩型光酸発生剤と併用させたときに、酸拡散抑制剤として機能する。すなわち、α位がフッ素化されているスルホン酸のような強酸を発生するオニウム塩と、フッ素置換されていないスルホン酸や、カルボン酸のような弱酸を発生するオニウム塩を混合して用いた場合、高エネルギー線照射により光酸発生剤から生じた強酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見掛け上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0169】
式(8)又は(9)で表されるオニウム塩化合物において、Mq+がスルホニウムカチオン(10)又はヨードニウムカチオン(11)であるオニウム塩は、特に光分解性があるため、光強度が強い部分のクエンチ能が低下するとともに、光酸発生剤由来の強酸の濃度が増加する。これにより露光部分のコントラストが向上し、LWRやCDUに優れたパターンを形成することが可能となる。
【0170】
また、酸不安定基が酸に対して特に敏感なアセタール基である場合は、保護基を脱離させるための酸は必ずしもα位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸でなくてもよく、α位がフッ素化されていないスルホン酸でも脱保護反応が進行する場合がある。この場合の酸拡散抑制剤としては、アミン化合物や、式(9)で表されるカルボン酸オニウム塩を用いることが好ましい。
【0171】
また、酸拡散抑制剤として、前記オニウム塩のほかに、弱酸のベタイン型化合物を使用することもできる。その具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化80】
【0172】
また、酸拡散抑制剤として、前述した化合物のほかに、アニオンとしてCl-、Br-、NO3 -を有するスルホニウム塩又はヨードニウム塩を使用することもできる。その具体例としては、トリフェニルスルホニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリフェニルスルホニウムナイトレート等が挙げられる。これらのアニオンは共役酸の沸点が低いため、強酸のクエンチ後に生じる酸がPEB等で容易にレジスト膜から除去される。レジスト膜から酸が系外に除去されるため、高度に酸拡散が抑制され、コントラストが改善できる。
【0173】
前記酸拡散抑制剤として、含窒素置換基を有する光分解性オニウム塩を使用することもできる。前記光分解性オニウム塩は、未露光部では酸拡散抑制剤として機能し、露光部は自身からの発生酸との中和によって酸拡散抑制能を失う、いわゆる光崩壊性塩基として機能する。光崩壊性塩基を用いることによって、露光部と未露光部のコントラストをより強めることができる。光崩壊性塩基としては、例えば特開2009-109595号公報、特開2012-46501号公報、特開2013-209360号公報等を参考にすることができる。
【0174】
前記光分解性オニウム塩のアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、RHFは、水素原子又はトリフルオロメチル基である。
【化81】
【0175】
前記光分解性オニウム塩のカチオンの具体例としては、式(1)又は(2)中のM+で表されるカチオンとして例示したものと同様のものが挙げられる。これらのうち、以下に示すものが好ましいが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、tBuはtert-ブチル基である。
【化82】
【0176】
前記光分解性オニウム塩の具体例としては、前記アニオンとカチオンとを組み合わせたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
本発明のレジスト組成物中、(C)成分の含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、2~30質量部が好ましく、2.5~20質量部がより好ましく、4~15質量部が更に好ましい。前記範囲で酸拡散抑制剤を配合することで、レジスト感度の調整が容易となることに加え、レジスト膜中での酸の拡散速度が抑制されて解像度が向上し、露光後の感度変化を抑制したり、基板や環境依存性を少なくし、露光余裕度やパターンプロファイル等を向上させたりすることができる。また、酸拡散抑制剤を添加することで、基板密着性を向上させることもできる。なお、(C)成分の含有量とは、式(1)又は(2)で表される塩化合物からなる酸拡散抑制剤に加えて、式(1)又は(2)で表される塩化合物以外の酸拡散抑制剤の含有量も合わせた合計の含有量のことである。(C)酸拡散抑制剤中、式(1)又は(2)で表される塩化合物は、50~100質量%含まれることが好ましい。(C)成分の酸拡散抑制剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0178】
[(D)有機溶剤]
本発明のレジスト組成物は、(D)成分として有機溶剤を含んでもよい。前記有機溶剤としては、前述した各成分や後述する各成分が溶解可能な有機溶剤であれば特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載のシクロヘキサノン、メチル-2-n-ペンチルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類及びこれらの混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるために高沸点のアルコール系溶剤、具体的にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等を加えることもできる。
【0179】
これらの有機溶剤の中でも、光酸発生剤の溶解性が特に優れている1-エトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル及びその混合溶剤が好ましい。特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(X成分)を含み、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン及びγ-ブチロラクトンの4種の溶剤(Y成分)のうち、1種又は2種を混合した溶剤系であり、X成分とY成分との比が90:10~60:40の範囲にある混合溶剤が好ましい。
【0180】
本発明のレジスト組成物中、(D)成分の含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、100~8,000質量部が好ましく、400~6,000質量部がより好ましい。
【0181】
[(E)界面活性剤]
本発明のレジスト組成物は、前記成分以外に、(E)成分として、塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を含んでもよい。
【0182】
(E)成分の界面活性剤は、好ましくは、水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤、あるいは水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤である。このような界面活性剤としては、特開2010-215608号公報や特開2011-16746号公報に記載のものを参照することができる。
【0183】
前記水及びアルカリ現像液に不溶又は難溶な界面活性剤としては、前記公報に記載の界面活性剤の中でも、FC-4430(スリーエム社製)、サーフロン(登録商標)S-381(AGCセイミケミカル(株)製)、オルフィン(登録商標)E1004(日信化学工業(株)製)、KH-20、KH-30(AGCセイミケミカル(株)製)、PolyFox PF-636(オムノバ社製)、下記式(surf-1)で表されるオキセタン開環重合物等が好ましい。
【化83】
【0184】
ここで、R、Rf、A、B、C、m、nは、前述の記載にかかわらず、式(surf-1)のみに適用される。Rは、2~4価の炭素数2~5の脂肪族基である。前記脂肪族基としては、2価のものとしてはエチレン基、1,4-ブチレン基、1,2-プロピレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基、1,5-ペンチレン基等が挙げられ、3価又は4価のものとしては下記のものが挙げられる。
【化84】
(式中、破線は、結合手であり、それぞれグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールから派生した部分構造である。)
【0185】
これらの中でも、1,4-ブチレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基等が好ましい。
【0186】
Rfは、トリフルオロメチル基又はペンタフルオロエチル基であり、好ましくはトリフルオロメチル基である。mは、0~3の整数であり、nは、1~4の整数であり、nとmの和はRの価数であり、2~4の整数である。Aは、1である。Bは、2~25の整数であり、好ましくは4~20の整数である。Cは、0~10の整数であり、好ましくは0又は1である。また、式(surf-1)中の各構成単位は、その並びを規定したものではなく、ブロック的に結合してもランダム的に結合してもよい。部分フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤の製造に関しては、米国特許第5650483号明細書等に詳しい。
【0187】
水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、ArF液浸露光においてレジスト保護膜を用いない場合、レジスト膜の表面に配向することによって水のしみ込みやリーチングを低減させる機能を有する。そのため、レジスト膜からの水溶性成分の溶出を抑えて露光装置へのダメージを下げるために有用であり、また、露光後、PEB後のアルカリ水溶液現像時には可溶化し、ディフェクトの原因となる異物にもなり難いため有用である。このような界面活性剤は、水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な性質であり、ポリマー型の界面活性剤であって、疎水性樹脂とも呼ばれ、特に撥水性が高く滑水性を向上させるものが好ましい。
【0188】
このようなポリマー型界面活性剤としては、下記式(13)~(17)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【化85】
【0189】
式(13)~(17)中、RCは、水素原子又はメチル基である。W1は、-CH2-、-CH2CH2-若しくは-O-、又は互いに分離した2個の-Hである。Rs1は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基である。Rs2は、単結合又は炭素数1~5のアルカンジイル基である。Rs3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のヒドロカルビル基、炭素数1~15のフッ素化ヒドロカルビル基又は酸不安定基である。Rs3がヒドロカルビル基又はフッ素化ヒドロカルビル基の場合、その炭素-炭素結合間に、エーテル結合又はカルボニル基が介在していてもよい。Rs4は、炭素数1~20の(u+1)価の炭化水素基又はフッ素化炭化水素基である。uは1~3の整数である。Rs5は、それぞれ独立に、水素原子又は下記式
-C(=O)-O-Rs5A
(式中、Rs5Aは、炭素数1~20のフッ素化ヒドロカルビル基である。)
で表される基である。Rs6は、炭素数1~15のヒドロカルビル基又は炭素数1~15のフッ素化ヒドロカルビル基であり、炭素-炭素結合間に、エーテル結合又はカルボニル基が介在していてもよい。
【0190】
前記ポリマー型界面活性剤は、更に、式(13)~(17)で表される繰り返し単位以外のその他の繰り返し単位を含んでいてもよい。その他の繰り返し単位としては、メタクリル酸やα-トリフルオロメチルアクリル酸誘導体等から得られる繰り返し単位が挙げられる。ポリマー型界面活性剤中、式(13)~(17)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位中、20モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、100モル%が更に好ましい。
【0191】
前記水に不溶又は難溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤は、特開2008-122932号公報、特開2010-134012号公報、特開2010-107695号公報、特開2009-276363号公報、特開2009-192784号公報、特開2009-191151号公報、特開2009-98638号公報、特開2010-250105号公報、特開2011-42789号公報も参照できる。
【0192】
本発明のレジスト組成物中、(E)成分の含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、0~20質量部が好ましい。(E)成分を含む場合は、好ましくは0.001~15質量部、より好ましくは0.01~10質量部である。(E)成分の界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0193】
[(F)その他の成分]
本発明のレジスト組成物は、(F)その他成分として、酸により分解して酸を発生する化合物(酸増殖化合物)、有機酸誘導体、フッ素置換アルコール、架橋剤、酸の作用により現像液への溶解性が変化するMwが3,000以下の化合物(溶解阻止剤)、アセチレンアルコール類等を含んでいてもよい。具体的には、前記酸増殖化合物に関しては、特開2009-269953号公報、特開2010-215608号公報に詳しく、その含有量は、(A)ベースポリマー100質量部に対し、0~5質量部が好ましく、0~3質量部がより好ましい。含有量が多すぎると、酸拡散制御が難しく、解像性の劣化やパターン形状の劣化を招く可能性がある。その他の添加剤に関しては、特開2008-122932号公報の段落[0155]~[0182]、特開2009-269953号公報、特開2010-215608号公報に詳しい。
【0194】
式(1)又は(2)で表される塩化合物を酸拡散抑制剤として含む本発明のレジスト組成物であれば、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、EB、EUV等の高エネルギー線を用いるフォトリソグラフィーにおいて、高い酸拡散抑制能を示し、かつ高コントラストなパターン形成が可能となり、CDU、LWR、感度等のリソグラフィー性能に優れた化学増幅レジスト組成物となる。
【0195】
[パターン形成方法]
本発明のパターン形成方法は、前述したレジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜をKrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、EB又はEUVで露光する工程、及び前記露光したレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程を含む。
【0196】
前記基板としては、例えば、集積回路製造用の基板(Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi2、SiO2等)を用いることができる。
【0197】
レジスト膜は、例えば、スピンコーティング等の方法で膜厚が好ましくは10~2,000nmとなるようにレジスト組成物を基板上に塗布し、これをホットプレート上で好ましくは60~180℃、10~600秒間、より好ましくは70~150℃、15~300秒間プリベークすることで形成することができる。
【0198】
レジスト膜の露光は、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光又はEUVを用いる場合は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1~200mJ/cm2、より好ましくは10~100mJ/cm2となるように照射することで行うことができる。EBを用いる場合は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて又は直接、露光量が好ましくは1~300μC/cm2、より好ましくは10~200μC/cm2となるように照射する。
【0199】
なお、露光は、通常の露光法のほか、屈折率1.0以上の液体をレジスト膜と投影レンズとの間に介在させて行う液浸法を用いることも可能である。その場合には、水に不溶な保護膜を用いることも可能である。
【0200】
前記水に不溶な保護膜は、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために用いられ、大きく分けて2種類ある。1つはレジスト膜を溶解しない有機溶剤によってアルカリ水溶液現像前に剥離が必要な有機溶剤剥離型と、もう1つはアルカリ現像液に可溶でレジスト膜可溶部の除去とともに保護膜を除去するアルカリ水溶液可溶型である。後者は特に水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール残基を有するポリマーをベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8~12のエーテル系溶剤、及びこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。前述した水に不溶でアルカリ現像液に可溶な界面活性剤を炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8~12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料とすることもできる。
【0201】
露光後、必要に応じて加熱処理(PEB)を行ってもよい。PEBは、例えば、ホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~5分間、より好ましくは80~140℃、1~3分間加熱することで行うことができる。
【0202】
現像は、例えば、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは2~3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液、又は有機溶剤現像液を用い、好ましくは0.1~3分間、より好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により行うことができる。
【0203】
アルカリ水溶液を現像液として用いてポジ型パターンを形成する方法に関しては、特開2011-231312号公報の段落[0138]~[0146]に詳しく、有機溶剤を現像液として用いてネガ型パターンを形成する方法に関しては、特開2015-214634号公報の段落[0173]~[0183]に詳しい。
【0204】
また、パターン形成方法の手段として、レジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【0205】
更に、ダブルパターニング法でパターンを形成することもできる。ダブルパターニング法としては、1回目の露光とエッチングで1:3トレンチパターンの下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3トレンチパターンを形成して1:1のパターンを形成するトレンチ法、1回目の露光とエッチングで1:3孤立残しパターンの第1の下地を加工し、位置をずらして2回目の露光によって1:3孤立残しパターンを第1の下地の下に形成された第2の下地を加工してピッチが半分の1:1のパターンを形成するライン法が挙げられる。
【0206】
また、有機溶剤含有現像液を用いたネガティブトーン現像によってホールパターンを形成する場合、X軸及びY軸方向の2回のラインパターンのダイポール照明を用いて露光を行うことで、最もコントラストが高い光を用いることができる。また、X軸及びY軸方向の2回のラインパターンのダイポール照明にs偏光照明を加えると、更にコントラストを上げることができる。これらのパターン形成方法は、特開2011-221513号公報に詳しい。
【0207】
本発明のパターン形成方法の現像液に関して、アルカリ水溶液の現像液としては、例えば、前述したTMAH水溶液や、特開2015-180748号公報の段落[0148]~[0149]に記載のアルカリ水溶液が挙げられ、好ましくは2~3質量%TMAH水溶液である。
【0208】
有機溶剤現像の現像液としては、例えば、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ブテニル、酢酸イソペンチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸ペンチル、乳酸イソペンチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2-フェニルエチル等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0209】
現像後のホールパターンやトレンチパターンを、サーマルフロー、RELACS(Resolution Enhancement Lithography Assisted by Chemical Shrink)技術、DSA(Directed Self-Assembly)技術等でシュリンクすることもできる。ホールパターン上にシュリンク剤を塗布し、ベーク中のレジスト膜からの酸触媒の拡散によってレジスト膜の表面でシュリンク剤の架橋が起こり、シュリンク剤がホールパターンの側壁に付着する。ベーク温度は、好ましくは70~180℃、より好ましくは80~170℃で、ベーク時間は10~300秒である。最後に、余分なシュリンク剤を除去し、ホールパターンを縮小させる。
【0210】
本発明の式(1)又は(2)で表される塩化合物を酸拡散抑制剤として含むレジスト組成物を用いることで、CDUや、LWR、感度等のリソグラフィー性能に優れた微細なパターンを容易に形成することができる。
【実施例
【0211】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、下記例において、MwはTHFを溶剤として用いたGPCによるポリスチレン換算測定値である。
【0212】
[実施例1-1]スルホニウム塩(Q-1)の合成
【化86】
【0213】
2,5-ジヨード安息香酸メチル98.2g、n-オクチルブロミド49.3g、炭酸カリウム40.3g及びN,N-ジメチルホルムアミド392.7gを混合し、80℃で27時間撹拌した。氷冷後、純水800gを加えて反応を停止させ、酢酸エチル850gを加えて撹拌した後、有機層を分取した。得られた有機層を、純水500gで4回洗浄した。有機層を40℃で減圧濃縮することで、油状物として中間体(I-1)を128.4g得た(収率:98%)。
【0214】
中間体(I-1)128.2g、THF390g及び純水390gを混合した後、25質量%水酸化ナトリウム水溶液43.8gを室温にて滴下し、40℃で24時間撹拌した。反応液を減圧濃縮してTHFを除去した後、ヘキサン360mL、メタノール95g及び純水50gを加えて撹拌した。撹拌後、水層を分取し、得られた水層に、ヘキサン360mL及びメタノール50gを添加し、撹拌した後、水層を分取した。得られた水層をヘキサン300mLで2回洗浄し、目的の中間体(I-2)を水溶液として得た。本工程では、これ以上の精製は行わずに次工程に用いた。
【0215】
中間体(I-2)の水溶液に対して、トリフェニルスルホニウムメチルサルフェート108.6g、メチルイソブチルケトン584g及び1-ペンタノール11.6gを加えて30分間撹拌した後、有機層を分取した。得られた有機層を純水100gで6回洗浄した。得られた有機層に対してメタノール20gを添加し、更に活性炭素7.5gを加えて終夜撹拌した。その後、0.7質量%シュウ酸水200gで1回、純水200gで2回、1質量%アンモニア水200gで1回、純水200gで8回洗浄した。有機層を50℃で減圧濃縮することで、目的のスルホニウム塩(Q-1)165.4gを油状物として得た(二工程収率:84%)。
【0216】
スルホニウム塩(Q-1)の1H-NMR(500MHz, DMSO-d6)スペクトルを図1に示す。また、IRスペクトルデータ及び飛行時間型質量分析の結果を以下に示す。
IR (D-ATR): ν= 3388, 3057, 2952, 2925, 2853, 1708, 1602, 1531, 1476, 1446, 1426, 1378, 1346, 1233, 1102, 1089, 1065, 1022, 996, 861, 749, 696, 685, 503 cm-1
飛行時間型質量分析 (TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+263.1 (C18H15S+相当)
NEGATIVE M-500.9 (C15H19I2O3 -相当)
【0217】
[実施例1-2]スルホニウム塩(Q-2)の合成
【化87】
【0218】
3,5-ジヨードサリチル酸メチル8.1g、1-ブロモドデカン6.5g、炭酸カリウム4.4g及びN,N-ジメチルホルムアミド60gを混合し、80℃で16時間撹拌した。氷冷後、塩酸120gを加えて反応を停止させ、塩化メチレン100gを加えて撹拌した後、有機層を分取した。得られた有機層を、純水60gで4回洗浄した。有機層を50℃で減圧濃縮することで、油状物として中間体(I-3)を12.5g得た(収率:97%)。
【0219】
中間体(I-3)12.5g、ジオキサン50g及び純水5gを混合した後、25質量%水酸化ナトリウム水溶液3.8gを室温にて滴下し、40℃で17.5時間撹拌した。反応液を減圧濃縮してジオキサン及び純水を除去した後、ジイソプロピルエーテル60gを加えて20分間撹拌し、析出した固体を濾別することで、目的の中間体(I-4)7.2gを湿結晶として得た。本工程では減圧乾燥は行わずに次工程に用いた。
【0220】
中間体(I-4)の湿結晶7.2g、トリフェニルスルホニウムメチルサルフェート7.5g、メチルイソブチルケトン60g、メタノール5g、1-ペンタノール20g及び純水20gを混合して50分間撹拌した後、有機層を分取した。得られた有機層を純水20gで7回洗浄した。有機層を50℃で減圧濃縮することで、目的のスルホニウム塩(Q-2)15.7gを油状物として得た(二工程収率:76%)。
【0221】
スルホニウム塩(Q-2)の1H-NMR(500MHz, DMSO-d6)スペクトルを図2に示す。また、IRスペクトルデータ及び飛行時間型質量分析の結果を以下に示す。
IR (D-ATR): ν= 3367, 3056, 2923, 2852, 1603, 1531, 1476, 1446, 1427, 1378, 1345, 1233, 1102, 1088, 1065, 966, 860, 749, 696, 685, 503 cm-1
飛行時間型質量分析 (TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+263.1 (C18H15S+相当)
NEGATIVE M-557.0 (C19H27I2O3 -相当)
【0222】
[実施例1-3]スルホニウム塩(Q-3)の合成
【化88】
【0223】
4-ヨードサリチル酸メチル5.0g、1-ブロモドデカン5.8g、炭酸カリウム4.0g及びN,N-ジメチルホルムアミド50gを混合し、80℃で16時間撹拌した。氷冷後、塩酸100gを加えて反応を停止させ、塩化メチレン80gを加えて撹拌した後、有機層を分取した。得られた有機層を純水50gで4回洗浄した。有機層を50℃で減圧濃縮することで、油状物として中間体(I-5)9.0gを得た(収率:98%)。
【0224】
中間体(I-5)8.9g、ジオキサン36g及び純水4.5gを混合した後、25質量%水酸化ナトリウム水溶液3.4gを室温にて滴下し、40℃で17時間撹拌した。反応液を減圧濃縮してジオキサン及び純水を除去した後、ジイソプロピルエーテル50gを加えて20分間撹拌し、析出した固体を濾別することで、目的の中間体(I-6)7.3gを湿結晶として得た。本工程では減圧乾燥は行わずに次工程に用いた。
【0225】
中間体(I-6)の湿結晶7.3g、トリフェニルスルホニウムメチルサルフェート6.7g、メチルイソブチルケトン50g、メタノール5g、1-ペンタノール15g及び純水20gを混合して70分間撹拌後、有機層を分取した。得られた有機層を純水20gで4回洗浄した。有機層を50℃で減圧濃縮することで、目的のスルホニウム塩(Q-3)12.3gを油状物として得た(二工程収率:81%)。
【0226】
スルホニウム塩(Q-3)の1H-NMR(500MHz, DMSO-d6)スペクトルを図3に示す。また、飛行時間型質量分析の結果を以下に示す。
飛行時間型質量分析 (TOFMS; MALDI)
POSITIVE M+263.1 (C18H15S+相当)
NEGATIVE M-431.1 (C19H28IO3 -相当)
【0227】
[実施例1-4~1-18]
更に、前述した実施例を参考に、以下に示すスルホニウム塩(Q-4)~(Q-18)を合成した。
【化89】
【0228】
[合成例1]ポリマー(P-1)の合成
窒素雰囲気下、トリフェニルスルホニウム1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-メタクリロイルオキシプロパン-1-スルホネート2.8g、メタクリル酸3-エチル-3-exo-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル12.3g、メタクリル酸4,8-ジオキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン-5-オン-2-イル9.0g、メタクリル酸3-ヒドロキシ-1-アダマンチル2.4g及び2,2'-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル0.9gをメチルエチルケトン72.8gに溶解させ、溶液を調製した。その溶液を、窒素雰囲気下80℃で撹拌したメチルエチルケトン20.7gに4時間かけて滴下した。滴下終了後、80℃を保ったまま2時間撹拌し、室温まで冷却した後重合液を400gのヘキサンに滴下した。析出した固形物を濾別し、メチルエチルケトン45g及びヘキサン195gの混合溶剤で2回洗浄した後、50℃で20時間真空乾燥して、白色粉末状のポリマー(P-1)を得た。収量は25.2g、収率は95%であった。GPCにて分析したところ、ポリマー(P-1)のMwは8,200、Mw/Mnは1.63であった。
【化90】
【0229】
[合成例2~]ポリマー(P-2)~(P-4)の合成
各単量体の種類、配合比を変えた以外は、合成例1と同様の方法により、下記ポリマー(P-2)~(P-4)を製造した。
【化91】
【0230】
[実施例2-1~2-46、比較例1-1~1-23]レジスト組成物の調製
酸拡散抑制剤(スルホニウム塩(Q-1)~(Q-18))、ベースポリマー(ポリマー(P-1)~(P-4))、更に必要に応じて、光酸発生剤(PAG-1、PAG-2)、式(1)又は(2)で表される塩化合物以外の酸拡散抑制剤、及びアルカリ可溶型界面活性剤(SF-1)を、界面活性剤PolyFox PF-636(オムノバ社製)0.01質量%を含む溶剤中に溶解させて溶液を調製し、得られた溶液を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過することにより、レジスト組成物を調製した。また、比較用に酸拡散抑制剤(Q-A~Q-I)を用いて同様にレジスト組成物を調製した。調製された各レジスト溶液の組成を下記表1~3に示す。
【0231】
なお表1~3において光酸発生剤(PAG-1、PAG-2)、溶剤、比較用の酸拡散抑制剤(Q-A~Q-I)、アルカリ可溶型界面活性剤(SF-1)は、以下のとおりである。
・光酸発生剤(PAG-1、PAG-2)
【化92】
【0232】
・溶剤
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
GBL:γ-ブチロラクトン
DAA:ジアセトンアルコール
【0233】
・酸拡散抑制剤(Q-A~Q-I)
【化93】
【0234】
・アルカリ可溶型界面活性剤(SF-1):ポリ(メタクリル酸2,2,3,3,4,4,4-へプタフルオロ-1-イソブチル-1-ブチル・メタクリル酸9-(2,2,2-トリフルオロ-1-トリフルオロメチルエチルオキシカルボニル)-4-オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン-5-オン-2-イル)
Mw=7,700
Mw/Mn=1.82
【化94】
【0235】
【表1】
【0236】
【表2】
【0237】
【表3】
【0238】
[実施例3-1~3-6、比較例2-1~2-6]ArF液浸リソグラフィー評価
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学(株)製ARC-29A)を塗布し、180℃で60秒間ベークして反射防止膜(膜厚100nm)を形成した。前記反射防止膜上に各レジスト組成物(R-1~R-6、CR-1~CR-6)をスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。ArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製NSR-S610C、NA=1.30、σ0.94/0.74、Dipole-35deg照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いて液浸露光を行った。なお、液浸液としては水を用いた。その後、90℃で60秒間PEBを行い、2.38質量%TMAH水溶液で60秒間現像を行い、ラインアンドスペース(LS)パターンを形成した。
【0239】
現像後のLSパターンを、(株)日立ハイテク製測長SEM(CG5000)で観察し、感度及びLWRを下記方法に従って評価した。結果を表4に示す。
【0240】
[感度評価]
感度として、ライン幅40nm、ピッチ80nmのLSパターンが得られる最適露光量Eop(mJ/cm2)を求めた。この値が小さいほど感度が高い。
【0241】
[LWR評価]
opで照射して得たLSパターンを、ラインの長手方向に10箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をLWRとして求めた。この値が小さいほど、ラフネスが小さく均一なライン幅のパターンが得られる。
本評価においては、良(○):2.5nm以下、不良(×):2.5nmより大きい、とした。
【0242】
【表4】
【0243】
表4に示した結果より、本発明のレジスト組成物は、LWRに優れ、ArF液浸リソグラフィーの材料として好適であることが示された。
【0244】
[実施例4-1~4-40、比較例3-1~3-17]EUVリソグラフィー評価
各レジスト組成物(R-7~R-46、CR-7~CR-23)を、信越化学工業(株)製ケイ素含有スピンオンハードマスクSHB-A940(ケイ素の含有量が43質量%)を膜厚20nmで形成したシリコン基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間プリベークして膜厚50nmのレジスト膜を作製した。ASML社製EUVスキャナーNXE3400(NA0.33、σ0.9/0.6、クアドルポール照明、ウエハー上寸法がピッチ46nm、+20%バイアスのホールパターンのマスク)を用いて前記レジスト膜を露光し、ホットプレート上で85℃で60秒間PEBを行い、2.38質量%TMAH水溶液で30秒間現像を行い、寸法23nmのホールパターンを形成した。
【0245】
現像後のホールパターンを、(株)日立ハイテク製測長SEM(CG6300)で観察し、感度及びCDUを下記方法に従って評価した。結果を表5~7に示す。
【0246】
[感度評価]
感度として、ホール寸法が23nmで形成されるときの最適露光量Eop(mJ/cm2)を求めた。この値が小さいほど感度が高い。
【0247】
[CDU評価]
opで照射して得たホールパターンを、同一露光量ショット内50箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をCDUとして求めた。この値が小さいほど、ホールパターンの寸法均一性が優れる。
本評価においては、良(○):3.0nm以下、不良(×):3.0nmより大きい、とした。
【0248】
【表5】
【0249】
【表6】
【0250】
【表7】
【0251】
表5~7に示した結果より、本発明のレジスト組成物は、CDUに優れ、EUVリソグラフィーの材料として好適であることが示された。
図1
図2
図3