(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】チキソ性シリコーンゲル組成物及びシリコーンゲル硬化物並びに電気・電子部品
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20250708BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20250708BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20250708BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20250708BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20250708BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08L83/06
C08K9/06
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2023574022
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2023000244
(87)【国際公開番号】W WO2023136227
(87)【国際公開日】2023-07-20
【審査請求日】2024-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2022003128
(32)【優先日】2022-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 剛
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-085467(JP,A)
【文献】特開2012-041496(JP,A)
【文献】特開平10-292102(JP,A)
【文献】特開平09-132718(JP,A)
【文献】特開2012-251116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 9/06
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)主鎖中のジオルガノシロキサン単位として、(C
6H
5)
2SiO
2/2単位を主鎖中の全ジオルガノシロキサン単位中に0.1~10モル%有し、ケイ素原子に結合したアルケニル基を
0.004~0.05モル/100g有する直鎖状又は分岐鎖状オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記平均組成式(1)
【化1】
(式中、R
1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含まない炭素原子数1~10の一価炭化水素基であり、aは0又は1であり、bは0.002~0.3の正数であり、cは0.1~0.6の正数である。)
で示され、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(A)成分中のアルケニル基1モルに対し(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が
0.3~1.2モルとなる量、
(C)白金系硬化触媒:触媒としての有効量、
(D)ケイ素原子に結合した一価炭化水素基としてメチル基のみを有するオルガノシラザン、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシランもしくはオルガノポリシロキサンにより表面が疎水化処理された比表面積(BET吸着法)が50~500m
2/gである微粉末シリカ:2~30質量部、及び
(E)下記一般式(2)
R
2
XR
3
YSi(OR
4)
4-X-Y (2)
(式中、R
2はエポキシ基を1個以上有する炭素原子数2~30の一価の有機基であり、R
3は炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、R
4は水素原子又は炭素原子数1~10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基である。Xは1又は2であり、Yは0又は1であり、かつX+Yは1又は2である。)
で表される1種又は2種以上のオルガノシラン化合物の部分(加水分解)縮合物及び/又は上記一般式(2)で表されるオルガノシラン化合物と下記一般式(3)
R
5
ZSi(OR
6)
4-Z (3)
(式中、R
5は炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、R
6は水素原子又は炭素原子数1~10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基である。Zは0~3の整数である。)
で表されるオルガノシラン化合物との部分共(加水分解)縮合物である、エポキシ基含有シロキサンオリゴマー:0.01~5質量部
を含有してなり、硬化してJIS K6249で規定される針入度が10~100のシリコーンゲル硬化物を与えるものであるチキソ性シリコーンゲル組成物。
【請求項2】
JIS K7117に準拠する方法により回転数比が1:10になる回転数で見掛け粘度(25℃)をそれぞれ測定し、以下の式から求められるSVI値が2.0~10.0である請求項1に記載のチキソ性シリコーンゲル組成物。
SVI値=(低い方の回転数における見掛け粘度)/(高い方の回転数における見掛け粘度)
【請求項3】
請求項1又は2に記載のチキソ性シリコーンゲル組成物を硬化してなるシリコーンゲル硬化物。
【請求項4】
請求項3に記載のシリコーンゲル硬化物で封止された電気・電子部品。
【請求項5】
フォトカプラである請求項4に記載の電気・電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温(23℃±15℃)で液状でありながら塗布時の広がり性が小さく、かつ硬化前後での形状変化が小さいため、フォトカプラなどの電気・電子部品の封止用として好適な、熱硬化型のチキソ性シリコーンゲル組成物及びその硬化物(シリコーンゲル)並びに該シリコーンゲル硬化物で封止されたフォトカプラ等の電気・電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゲルは、電気絶縁性、電気特性の安定性及び柔軟性等の特性に優れており、電気・電子部品のポッティング、封止用として、IC、コンデンサー等の制御回路素子を被覆し、熱的及び機械的障害から保護するための被覆材料として使用されている。
【0003】
このような目的で使用される液状のシリコーンゲル組成物は、ケース内に注入して使用することを想定しているため、流動性が大きいことが多く、特定の素子のみを被覆するスポットポッティングを行なうには不適当である。
【0004】
一方で、前記のスポットポッティングが可能なチキソトロピック性を有するシリコーンゲル組成物が検討されている。特許文献1(特許第3073888号公報)では、分子鎖側鎖が3,3,3-トリフルオロプロピル基を有するオルガノポリシロキサンと、疎水化シリカを含む付加硬化型シリコーンゲル組成物、特許文献2(特開平9-132718号公報)では、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、比表面積が50~500m2/gである無機質充填剤を含む二液型硬化性シリコーンゲル組成物が提案されている。
【0005】
しかし、これらのチキソ性を有するシリコーンゲル組成物であっても、組成物を塗布した直後はその形状が保持されるものの、加熱硬化させる工程にて広がりが生じ、結果目的とする封止部位以外の部分にも硬化物が塗布されてしまう問題があった。
【0006】
特許文献3(特許第3746394号公報)では、アルケニル基を有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサン・シリカ粉末・エポキシ化合物及び/又は多価アルコールを含む付加硬化型のシリコーンゲル組成物が提案されている。この組成物においては、その粘度が10Pa・s以下の低粘度のシリコーンゲル組成物が開示されており、加熱硬化させる工程中における形状保持性が不十分であり、また多価アルコールを使用した場合、経時での特性変化(硬化不良)を生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3073888号公報
【文献】特開平9-132718号公報
【文献】特許第3746394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、室温(23℃±15℃)で液状でありながら塗布時の広がり性が小さく、かつ硬化前後での形状変化が小さい、フォトカプラなどの電気・電子部品の封止用として好適なチキソ性シリコーンゲル組成物及び該組成物を硬化してなるシリコーンゲル硬化物並びに該シリコーンゲル硬化物で封止されたフォトカプラ等の電気・電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定の分子構造を有するベースポリマーと架橋剤を選択的に併用すると共に、表面が疎水化処理された微粉末シリカと特定のエポキシ基含有シロキサンオリゴマーとを含有し、かつ硬化してJIS K6249で規定される針入度が10~100であるシリコーンゲル硬化物を与えるシリコーンゲル組成物が、上記課題を解決し得ることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記のチキソ性シリコーンゲル組成物及びその硬化物(シリコーンゲル)並びに該シリコーンゲル硬化物で封止されたフォトカプラ等の電気・電子部品を提供するものである。
[1]
(A)主鎖中のジオルガノシロキサン単位として、(C
6H
5)
2SiO
2/2単位を主鎖中の全ジオルガノシロキサン単位中に0.1~10モル%有し、ケイ素原子に結合したアルケニル基を
0.004~0.05モル/100g有する直鎖状又は分岐鎖状オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記平均組成式(1)
【化1】
(式中、R
1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含まない炭素原子数1~10の一価炭化水素基であり、aは0又は1であり、bは0.002~0.3の正数であり、cは0.1~0.6の正数である。)
で示され、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(A)成分中のアルケニル基1モルに対し(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が
0.3~1.2モルとなる量、
(C)白金系硬化触媒:触媒としての有効量、
(D)ケイ素原子に結合した一価炭化水素基としてメチル基のみを有するオルガノシラザン、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシランもしくはオルガノポリシロキサンにより表面が疎水化処理された比表面積(BET吸着法)が50~500m
2/gである微粉末シリカ:2~30質量部、及び
(E)下記一般式(2)
R
2
XR
3
YSi(OR
4)
4-X-Y (2)
(式中、R
2はエポキシ基を1個以上有する炭素原子数2~30の一価の有機基であり、R
3は炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、R
4は水素原子又は炭素原子数1~10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基である。Xは1又は2であり、Yは0又は1であり、かつX+Yは1又は2である。)
で表される1種又は2種以上のオルガノシラン化合物の部分(加水分解)縮合物及び/又は上記一般式(2)で表されるオルガノシラン化合物と下記一般式(3)
R
5
ZSi(OR
6)
4-Z (3)
(式中、R
5は炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、R
6は水素原子又は炭素原子数1~10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基である。Zは0~3の整数である。)
で表されるオルガノシラン化合物との部分共(加水分解)縮合物である、エポキシ基含有シロキサンオリゴマー:0.01~5質量部
を含有してなり、硬化してJIS K6249で規定される針入度が10~100のシリコーンゲル硬化物を与えるものであるチキソ性シリコーンゲル組成物。
[2]
JIS K7117に準拠する方法により回転数比が1:10になる回転数で見掛け粘度(25℃)をそれぞれ測定し、以下の式から求められるSVI値が2.0~10.0である[1]に記載のチキソ性シリコーンゲル組成物。
SVI値=(低い方の回転数における見掛け粘度)/(高い方の回転数における見掛け粘度)
[3]
[1]又は[2]に記載のチキソ性シリコーンゲル組成物を硬化してなるシリコーンゲル硬化物。
[4]
[3]に記載のシリコーンゲル硬化物で封止された電気・電子部品。
[5]
フォトカプラである[4]に記載の電気・電子部品。
【発明の効果】
【0011】
本発明のチキソ性シリコーンゲル組成物は、室温(23℃±15℃)で液状でありながら塗布時の広がり性が小さく、かつ硬化前後での形状変化が小さいため、素子等に所望する形状で封止することができるため、フォトカプラなどの電気・電子部品の封止用シリコーンゲル組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のチキソ性シリコーンゲル組成物は、下記の(A)~(E)成分を必須成分として含有してなるものである。なお、本発明において、シリコーンゲル硬化物(又はシリコーンゲル)とは、オルガノポリシロキサンを主成分とする架橋密度の低い硬化物であって、JIS K2220のちょう度試験方法(1/4コーン)によるJIS K6249で規定される針入度(稠度(cone penetration)ともいう)が10~100のものを意味する。これは、JIS K6301によるゴム硬度測定では測定値(ゴム硬度値)が0となり、有効なゴム硬度値を示さない程低硬度(即ち、軟らか)かつ低弾性(低応力性)であるものに相当し、この点において、いわゆるシリコーンゴム硬化物(ゴム状弾性体)とは別異のものである。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
[(A)成分]
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、本発明のチキソ性シリコーンゲル組成物の主剤(ベースポリマー)であり、主鎖を構成する2官能性のジオルガノシロキサン単位(R2SiO2/2で示されるD単位、Rは非置換又は置換の1価炭化水素基)として、(C6H5)2SiO2/2単位(ジフェニルシロキサン単位)を主鎖中の全ジオルガノシロキサン単位中に0.1~10モル%有し、かつ、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基(以下、「ケイ素原子結合アルケニル基」という場合がある。)を少なくとも1個(通常、1~20個、好ましくは2~10個、より好ましくは2~5個程度)有する、直鎖状又は分岐鎖状の(主鎖を構成する2官能性のジオルガノシロキサン単位の繰り返し構造中に、分岐点である3官能性のオルガノシルセスキオキサン単位(RSiO3/2で示されるT単位、Rは非置換又は置換の1価炭化水素基)を少量、例えば1~5個、好ましくは1~3個程度有する)オルガノポリシロキサン(即ち、分子中に特定量のジフェニルシロキサン単位を必須に有する直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン)である。
なお、本発明において、直鎖状オルガノポリシロキサンとは、主鎖を構成する2官能性のジオルガノシロキサン単位(D単位)と分子鎖末端を構成する単官能性トリオルガノシロキシ単位(R3SiO1/2で示されるM単位、Rは非置換又は置換の1価炭化水素基)のみからなるオルガノポリシロキサンを意味し、分岐鎖状オルガノポリシロキサンとは、分岐点を構成する3官能性のオルガノシルセスキオキサン単位(T単位)、主鎖を構成する2官能性のジオルガノシロキサン単位(D単位)と分子鎖末端を構成する単官能性トリオルガノシロキシ単位(M単位)からなり、分子中に分岐を有するオルガノポリシロキサンを意味し、分子中に環状構造を有していてもよい。
ここでいうRとしては、フェニル基、後述するアルケニル基、及び後述する「ケイ素原子結合有機基」を例示することができる。
【0015】
アルケニル基としては、炭素原子数2~10のものが好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、特にビニル基であることが好ましい。このケイ素原子結合アルケニル基のオルガノポリシロキサン分子中における結合位置は、分子鎖末端であっても、分子鎖非末端(即ち、分子鎖側鎖)であっても、あるいはこれらの両方であってもよい。
(A)成分中、前記ケイ素原子結合アルケニル基の含有量は、好ましくは0.001~10モル/100g、より好ましくは0.002~1モル/100g、特に好ましくは0.003~0.11モル/100g、更に好ましくは0.004~0.05モル/100gである。
【0016】
(A)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、前記ケイ素原子結合アルケニル基及びジフェニルシロキサン単位を構成するフェニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(以下、「ケイ素原子結合有機基」ともいう)は、脂肪族不飽和結合を有しないものであれば特に限定されず、例えば、非置換又は置換の、炭素原子数が、通常、1~12、好ましくは1~10の、脂肪族不飽和結合を除く1価炭化水素基等が挙げられる。この非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基(フェニル基を除く);ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。合成の簡便さから、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基であり、より好ましくはメチル基、トリフロロプロピル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0017】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは分子中(特に、分子鎖主鎖を構成する2官能性のジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる全ジオルガノポリシロキサン単位中)に、(C6H5)2SiO2/2単位を、通常、0.1~10モル%、好ましくは0.5~8モル%、特に好ましくは1~6モル%含有する。(C6H5)2SiO2/2単位の含有量が上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の粘度が著しく高くなり、塗布作業性が低下する。
【0018】
(A)成分の25℃における粘度は、組成物の作業性や硬化物(シリコーンゲル硬化物)の力学特性がより優れたものとなるので、好ましくは100~100,000mPa・s、特に好ましくは300~10,000mPa・sである。なお、本発明において、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)により測定できる(以下、同じ。)。また、同様の理由から、(A)成分中のケイ素原子数(又は重合度)は、通常、30~1,200個、好ましくは50~1,000個、より好ましくは80~800個程度であればよい。なお、本発明において、重合度(又は分子量)は、例えば、トルエン等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる(以下、同じ。)。
【0019】
このような(A)成分として、具体的には、下記のものが例示される。
両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体などの分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンや、これらの直鎖状ジオルガノポリシロキサン中の主鎖を構成する2官能性ジオルガノシロキサン単位の1~5個、好ましくは1~3個、より好ましくは1個又は2個が分岐構造(3官能性オルガノシルセスキオキサン単位)で置換された分岐鎖状(一部分岐を有する直鎖状)オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0020】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、(A)成分全体として1分子中にケイ素原子結合アルケニル基を平均して1分子中に少なくとも0.5個有するという条件を満足する限りにおいて、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0021】
[(B)成分]
本発明に使用される(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分とのヒドロシリル化付加硬化反応において、架橋剤(硬化剤)として作用する成分である。(B)成分は、下記平均組成式(1)で示され、1分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子(以下、「ケイ素原子結合水素原子」(即ち、SiH基)ともいう)を少なくとも3個、好ましくは4~300個、より好ましくは5~100個含有する直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(より具体的には、分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖オルガノハイドロジェンシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体又は分子鎖両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖オルガノハイドロジェンシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体)であり、分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を分子中に必須に有するものであるが、更に、分子鎖末端のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を併せて有するものであってもよい。
【化2】
(式中、R
1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含まない炭素原子数1~10の一価炭化水素基であり、aは0又は1であり、bは0.002~0.3の正数であり、cは0.1~0.6の正数である。)
【0022】
上記平均組成式(1)において、R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含まない1価炭化水素基であり、炭素原子数が通常、1~10、好ましくは1~6の非置換又は置換の脂肪族不飽和結合を含まない1価炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基等である。
【0023】
上記式(1)において、aは0又は1である。更に、bは0.002~0.3、好ましくは0.006~0.2、より好ましくは0.013~0.1であり、cは0.1~0.6、好ましくは0.1~0.4の正数である。bが0.002未満では所望の針入度となるシリコーンゲル硬化物が得られず、またbが0.3を超える場合は、低弾性率かつ低応力のシリコーンゲル硬化物を得ることが困難なばかりでなく、硬化物表面に疎密が発生するため、硬化物の変位耐久性が低下する。
【0024】
上記平均組成式(1)より、(B)成分の分子構造は、分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖オルガノハイドロジェンシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体又は分子鎖両末端ジオルガノハイドロジェンシロキシ基封鎖オルガノハイドロジェンシロキサン・ジオルガノシロキサン共重合体であり、下記の平均分子式(1’)で表記することができる。
【化3】
(式中、R
1、aは上記平均組成式(1)と同様であり、c’は1~300の整数、好ましくは2~50の整数、より好ましくは3~30の整数であり、d’は4~700の整数、好ましくは6~280の整数、より好ましくは15~120の整数であり、c’+d’は5~998の整数、好ましくは8~328の整数、より好ましくは18~148の整数である。但し、1分子中にSiH基を3個以上有する。)
また、(B)成分は、従来公知の方法で合成されるものである。
【0025】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、組成物の作業性や硬化物の光学あるいは力学特性がより優れたものとなるので、好ましくは0.1~5,000mPa・s、より好ましくは0.5~1,000mPa・s、特に好ましくは2~500mPa・sの範囲を満たす、室温(25℃)で液状である範囲が望ましい。かかる粘度を満たす場合には、オルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中のケイ素原子数(又は重合度)は、通常、7~1,000個、好ましくは10~330個、より好ましくは20~150個程度である。
また、(B)成分中、前記ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)の含有量は、好ましくは0.0005~0.008モル/g、特に好ましくは0.001~0.006モル/gである。
【0026】
(B)成分の直鎖型オルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、例えば、下記の平均組成式で表されるものが挙げられる。
【化4】
(式中、Meはメチル基を示し、c’、d’は上記と同じであり、c”は3~300の整数、好ましくは3~50の整数、より好ましくは3~30の整数であり、c”+d’は7~998の整数、好ましくは9~328の整数、より好ましくは18~148の整数である。)
【0027】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
(B)成分の添加量は、上記(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)が0.01~3モル、好ましくは0.05~2モル、より好ましくは0.1~1.8モル、更に好ましくは0.2~1.5モル、特に好ましくは0.3~1.2モルとなる量である。この(B)成分からのケイ素原子結合水素原子が、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、0.01モルより少なくなると、所望の針入度となるシリコーンゲル硬化物が得られず、また3モルを超えると、硬化物はゲル状を呈しなくなったり、耐熱性が低下したりするおそれがある。
【0029】
[(C)成分]
本発明に使用される(C)成分は、前記(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基と前記(B)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)とのヒドロシリル化付加反応を促進させるための触媒として使用されるものである。該(C)成分は白金系硬化触媒(白金又は白金系化合物)であり、公知のものを使用することができる。その具体例としては、白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸等のアルコール変性物;塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコール類等との錯体などの白金族金属触媒が例示される。
【0030】
(C)成分の配合量は触媒としての有効量でよく、所望の硬化速度により適宜増減することができるが、通常、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して、白金族金属原子の質量で、0.1~1,000ppm、好ましくは1~300ppmの範囲である。この配合量が多すぎると得られる硬化物の耐熱性が低下する場合がある。また少なすぎると所定の硬化条件下においてヒドロシリル化付加反応が十分に進行せずゲル状硬化物が得られない場合がある。
【0031】
[(D)成分]
本発明に使用される(D)成分は、ケイ素原子に結合した一価炭化水素基としてメチル基のみを有するオルガノシラザン、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシランもしくはオルガノポリシロキサンにより表面が疎水化処理された比表面積(BET吸着法)が50~500m2/gである微粉末シリカであり、後述する(E)成分との併用により、硬化前の組成物にチキソ性を付与し、塗布時の広がり性を小さくするための成分である。かかる微粉末シリカは、後述する(E)成分との相互作用により本発明の組成物に十分なチキソ性を発現せしめるものであるが、このためには、50~500m2/g、好ましくは50~400m2/gの比表面積(BET法)を有していること、及びケイ素原子に結合した有機置換基(一価炭化水素基)としてメチル基のみを有するオルガノシラザン、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシランもしくはオルガノポリシロキサンによりその表面が疎水化処理されていることが必要である。
【0032】
上記のような表面処理剤として、具体的には、ヘキサメチルジシラザン;トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン;トリメチルアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン(ここで、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる);環状あるいは直鎖状のポリジメチルシロキサン等を例示することができ、これらは単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。ジメチルポリシロキサンとしては、環状でも直鎖状でもよい。
【0033】
微粉末シリカとしては、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)、破砕シリカ、溶融シリカ、結晶性シリカ(石英微粉末)、沈降性シリカ(湿式シリカ)、コロイダルシリカ等が例示でき、望ましい比表面積(又は平均粒径)の点から、ヒュームドシリカが好ましい。
【0034】
表面が疎水化処理された微粉末シリカの比表面積(BET吸着法)は、50~500m2/gであり、好ましくは50~400m2/gである。比表面積が50m2/g未満では組成物に十分なチキソ性を付与することが困難であり、500m2/gを超えると組成物の粘度が大きくなりすぎて、塗布作業性が著しく低下する。
【0035】
このような表面が疎水化処理された微粉末シリカとしては、市販品を使用することができ、DM-30S((株)トクヤマ製)、NSX-200(日本アエロジル(株)製)、CAB-O-SIL TS-610(米国キャボットコーポレーション製)等を例示することができる。
【0036】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、2~30質量部、好ましくは3~20質量部、より好ましくは5~15質量部の範囲である。(D)成分の配合量が少なすぎると、組成物に十分なチキソ性を付与できずに塗布時の広がり性をコントロールできなくなり、また配合量が多すぎると組成物の粘度が著しく大きくなり、塗布作業性が低下する。
【0037】
[(E)成分]
(E)成分は、本発明の組成物の流動性を損なうことなく、上述した(D)成分と共に、本発明の組成物にチキソ性を付与し、塗布時の広がり性を小さくするためのチキソ性付与剤として作用するものであり、以下に示すエポキシ基含有シロキサンオリゴマーが使用される。
即ち、本発明に使用される(E)成分は、下記一般式(2)で表されるオルガノシラン化合物(エポキシ基変性オルガノキシシラン又はヒドロキシシラン)の1種又は2種以上を部分的に(加水分解)縮合して得られる部分(加水分解)縮合物であるエポキシ基含有シロキサンオリゴマー、及び/又は下記一般式(2)で表されるオルガノシラン化合物の1種又は2種以上と下記一般式(3)で表されるオルガノシラン化合物(オルガノキシシラン又はヒドロキシシラン)の1種又は2種以上とを部分的に共(加水分解)縮合して得られる部分共(加水分解)縮合物であるエポキシ基含有シロキサンオリゴマーである。
本発明において、「部分(加水分解)縮合物」とは、下記一般式(2)で表されるオルガノシラン化合物(エポキシ基変性オルガノキシシラン又はヒドロキシシラン)の1種又は2種以上を部分的に(加水分解)縮合して生成する、分子中に残存加水分解性基(残存オルガノオキシ基)及び/又は残存ヒドロキシ基を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノシロキサンオリゴマーを意味し、「部分共(加水分解)縮合物」とは、下記一般式(2)で表されるオルガノシラン化合物(エポキシ基変性オルガノキシシラン又はヒドロキシシラン)の1種又は2種以上と下記一般式(3)で表されるオルガノシラン化合物(オルガノキシシラン又はヒドロキシシラン)の1種又は2種以上とを部分的に共(加水分解)縮合して生成する、分子中に残存加水分解性基(残存オルガノオキシ基)及び/又は残存ヒドロキシ基を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノシロキサンオリゴマーを意味する。
【0038】
R2
XR3
YSi(OR4)4-X-Y (2)
(式中、R2はエポキシ基を1個以上有する炭素原子数2~30の一価の有機基(エーテル結合酸素原子及び/又は窒素原子を含有してもよいエポキシ基含有一価炭化水素基)であり、R3は炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、R4は水素原子又は炭素原子数1~10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基である。Xは1又は2であり、Yは0又は1であり、かつX+Yは1又は2である。)
【0039】
上記式(2)中、R2は、エポキシ基を1個又は2個以上有する炭素原子数2~30、好ましくは炭素原子数3~20、より好ましくは炭素原子数6~12の一価の有機基であれば特に制限されるものではないが、エポキシ基を1個以上含有し、かつ、エーテル結合酸素原子及び/又はアミノ基を構成する窒素原子を含有してもよい一価炭化水素基などが挙げられ、具体的には、例えば、3-グリシドキシプロピル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、2-(2,3-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(N-アリル-N-グリシジル)アミノプロピル基、3-(N,N-グリシジル)アミノプロピル基等が挙げられる。
【0040】
R3は、炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、該一価炭化水素基として、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、α-エチルヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、スチリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。これらの中でも、アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基である。
【0041】
R4は、水素原子又は炭素原子数1~10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、一価炭化水素基としては、炭素原子数1~10のアルキル基が好ましく、また、メトキシ基やエトキシ基で置換されたアルコキシ置換アルキル基であってもよい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、オクチル基、α-エチルヘキシル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等が挙げられる。中でも好ましいのはメチル基、エチル基である。
【0042】
Xは1又は2であり、Yは0又は1であり、かつX+Yは1又は2である。
【0043】
上記一般式(2)で表されるオルガノシラン化合物の具体例としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(2,3-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(2,3-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(N-アリル-N-グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリル-N-グリシジル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-アリル-N-グリシジル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-(N,N-グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N,N-グリシジル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N,N-グリシジル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
R5
ZSi(OR6)4-Z (3)
(式中、R5は炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、R6は水素原子又は炭素原子数1~10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基である。Zは0~3の整数である。)
【0045】
上記式(3)中、R5は、炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~10の一価炭化水素基であり、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、スチリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。これらの中でも、アルキル基、アリール基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基である。
【0046】
R6は水素原子又は炭素原子数1~10の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、上記式(2)のR4で例示したものと同様のものを例示することができる。これらの中でもアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基である。
Zは0~3の整数であり、好ましくは0~2の整数である。
【0047】
上記一般式(3)で表されるオルガノシラン化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、また、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジブトキシシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン、また、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルプロポキシシラン、トリエチルブトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、トリプロピルプロポキシシラン、トリプロピルブトキシシラン、トリフェニルヒドロキシシラン、また、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
(E)成分のエポキシ基含有オルガノシロキサンオリゴマーの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、一般式(2)で表されるオルガノキシシラン又はヒドロキシシランの1種又は2種以上、又は一般式(2)で表されるオルガノキシシラン又はヒドロキシシランの1種又は2種以上と一般式(3)で表されるオルガノキシシラン又はヒドロキシシランの1種又は2種以上とを混合し、必要に応じて酸性触媒や溶媒を加え、弱酸性下もしくは弱アルカリ性条件下での部分(加水分解)縮重合あるいは部分共(加水分解)縮重合により得ることができる。
【0049】
ここで、一般式(2)で表されるオルガノキシシランの1種又は2種以上と一般式(3)で表されるオルガノキシシランの1種又は2種以上とを用いる場合、これらの使用割合としては、一般式(2)で表されるオルガノキシシランの1種又は2種以上と一般式(3)で表されるオルガノキシシランの1種又は2種以上とのモル比で1:10~10:1であり、好ましくは1:5~5:1である。
【0050】
加水分解は、通常、5~50℃で120分間以上行うことが好ましい。このようにして得られる加水分解物は、必要に応じて、次に縮重合に供される。縮重合反応は、50~100℃で60~240分間程度行うことが好ましい。
【0051】
このようにして得られたエポキシ基含有シロキサンオリゴマーは、エポキシ当量が、50~1,000g/mol、特に100~1,000g/molであることが好ましい。エポキシ当量が50g/mol未満では十分なチキソ性を付与できず、塗布時の広がり性が大きくなる場合があり、1,000g/molを超えるとチキソ性が大きくなりすぎて組成物が著しく高粘度化する場合がある。
【0052】
また、エポキシ基含有シロキサンオリゴマーは、アルコキシ基量が、20~70質量%、特に30~60質量%であることが好ましい。アルコキシ基量が20質量%未満では微粉末シリカとの相互作用が低下し、十分なチキソ性付与効果が得られない場合があり、70質量%を超えると硬化物の耐熱性が低下する場合がある。
なお、エポキシ当量、アルコキシ基量は、JIS K7236により規定される方法や1H-NMR、29Si-NMR等の手段により測定できる。
【0053】
更に、エポキシ基含有シロキサンオリゴマーは、25℃における粘度が、1~300mPa・s、特に5~200mPa・sであることが好ましい。25℃における粘度が1mPa・s未満では組成物との混合性が低下する場合があり、300mPa・sを超えると組成物の粘度が高くなりすぎる場合がある。
【0054】
なお、(E)成分は市販品を用いてもよく、このような市販品としては、例えば、KR-516、KR-517、X-41-1059A(いずれも信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0055】
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.01~5質量部であり、特に0.05~1質量部であることが好ましい。0.01質量部未満では組成物に十分なチキソ性を付与できず、5質量部を超えると粘度が大きくなり塗布作業性が著しく低下する。
【0056】
本発明のチキソ性シリコーンゲル組成物には、上記(A)~(E)成分以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を配合することができる。この任意成分としては、例えば、反応抑制剤、無機質充填剤、ケイ素原子結合水素原子及びケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、接着性ないしは粘着性の向上に寄与するアルコキシオルガノシラン等の接着性付与剤、耐熱添加剤、難燃付与剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0057】
反応抑制剤は、上記組成物の反応を抑制するための成分であって、具体的には、例えば、アセチレン系、アミン系、カルボン酸エステル系、亜リン酸エステル系等の反応抑制剤が挙げられる。
【0058】
無機質充填剤としては、例えば、上記(D)成分以外の結晶性シリカ、沈降性シリカ等の微粉末シリカ、無機中空フィラー(シリカ中空フィラー、酸化チタン中空フィラー等)、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機質充填剤;これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物で表面疎水化処理した充填剤等が挙げられる。また、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよい。
【0059】
本発明のチキソ性シリコーンゲル組成物は、上記(A)~(E)成分及びその他の任意的な成分を所定量、均一混合することによって得ることができる。その際に、混合される成分を必要に応じて2パート又はそれ以上のパートに分割して混合してもよく、例えば、(A)成分の一部及び(C)、(D)、(E)成分からなるパートと、(A)成分の残部及び(B)成分からなるパートとに分割して混合することも可能である。ここで、使用する混合手段としては、ホモミキサー、パドルミキサー、ホモディスパー、コロイドミル、真空混合攪拌ミキサー、及びプラネタリーミキサーが例示されるが、少なくとも上記(A)~(E)成分を均一に混合できるものであれば特に限定されるものではない。
【0060】
本発明のチキソ性シリコーンゲル組成物は、JIS K7117に準拠する方法により回転数比が1:10になる回転数で見掛け粘度(25℃)をそれぞれ測定し、以下の式から求められるSVI値が2.0~10.0、特に3.0~8.0であることが好ましい。
SVI値=(低い方の回転数における見掛け粘度)/(高い方の回転数における見掛け粘度)
見かけ粘度の比(SVI値)が2.0未満では十分なチキソ性が得られず、塗布時の広がり性が大きくなる場合があり、10.0を超えると所望の形状に塗布できない場合がある。
【0061】
ここで、見掛け粘度の比であるSVI値の具体的な算出方法としては、チキソ性シリコーンゲル組成物の粘度をJIS K7117に準拠する方法として、チキソ性シリコーンゲル組成物をレオメータ(TAインスツルメント社製ARES G2)により、25℃において回転数を1s-1、10s-1としてそれぞれ見掛け粘度を測定し、この見掛け粘度を用いて下式により求めることができる。
SVI値=(回転速度1s-1における見掛け粘度)/(回転速度10s-1における見掛け粘度)
【0062】
なお、本発明において、上記範囲のチキソ性シリコーンゲル組成物のSVI値(見掛け粘度の比)は、微粉末シリカ((D)成分)及び/又はエポキシ基含有オルガノシロキサンオリゴマー((E)成分)の配合量等を適宜調整することにより達成することができる。
【0063】
本発明のチキソ性シリコーンゲル組成物の硬化条件としては、23~150℃、特に50~130℃にて10分~8時間、特に30分~5時間とすることができる。
【0064】
本発明のチキソ性シリコーンゲル組成物を硬化して得られたシリコーンゲル硬化物は、JIS K6249で規定される針入度が10~100、好ましくは20~70である。針入度が10未満では封止した基板との密着性が不足する場合があり、100を超えると封止ゲル自体の強度が低く耐熱時にクラックを生成する場合がある。なお、本発明において、上記シリコーンゲル硬化物の針入度を上記範囲とする手段としては、(A)成分と(B)成分の配合比率(即ち、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基に対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)のモル比)等を適宜調整することにより達成することができる。
【0065】
本発明のチキソ性シリコーンゲル組成物であれば、液状でありながら塗布時の広がり性が小さく、かつ硬化前後での形状変化が小さいため、素子等に所望する形状で封止することができ、封止目的の素子のみを封止することが可能であり、フォトカプラ等のスポットポッティングを必要とする電気・電子部品の封止材として有用である。
【0066】
[電気・電子部品]
本発明の電気・電子部品は、上述した本発明のチキソ性シリコーンゲル組成物を硬化してなるシリコーンゲル硬化物で封止されてなるものである。
このような封止される対象の電気・電子部品としては、例えばフォトカプラ等のスポットポッティングを必要とする電気・電子部品、プリント配線基板などが挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は質量部を示し、例示した各成分の粘度は25℃での回転粘度計による測定値を示したものである。Meはメチル基を示す。また、重合度は、トルエンを展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度を示す。また、シリコーンゲル組成物のSVI値、広がり性、シリコーンゲル硬化物の耐熱性は、次のように評価した。
【0068】
[シリコーンゲル組成物のSVI値]
シリコーンゲル組成物の粘度をJIS K7117に準拠する方法により測定した。即ち、シリコーンゲル組成物をレオメータ(TAインスツルメント社製ARES G2)により、25℃で回転速度比が1:10になる回転速度(1s-1と10s-1)における見掛け粘度を各々測定し、下式によりSVI値を求めた。
SVI値=(回転速度1s-1における見掛け粘度)/(回転速度10s-1における見掛け粘度)
【0069】
[シリコーンゲル組成物の広がり性]
シリコーンゲル組成物を5mlのマイクロシリンジに約5g採取し、50mm×50mmのガラス板の中央部に、1g分をゆっくり吐出する。25℃雰囲気下で30分放置後に、円形に広がったシリコーンゲル組成物の直径を直交する2方向として縦方向・横方向それぞれ測定し、その平均値を求めた。この値を硬化前の広がり性の指標とした。
上記のシリコーンゲル組成物を塗布したガラス板を、130℃のオーブン中で30分間加熱することにより硬化させた。このとき得られたシリコーンゲル硬化物の直径を直交する2方向として縦方向・横方向それぞれ測定し、その平均値を求めた。この値を硬化時の広がり性の指標とした。
【0070】
[シリコーンゲル硬化物の耐熱性]
シリコーンゲル組成物を130℃で30分加熱して、サイズ:直径約40mm、厚さ約20mmの円筒状のシリコーンゲル硬化物を得た。このときの針入度を測定し、これを硬化初期の値とした。なお、針入度はJIS K6249で規定されるJIS K2220のちょう度試験方法(1/4コーン)にて、測定を行った。上記で得られたシリコーンゲル硬化物を、200℃雰囲気下で72時間暴露し、得られたサンプルの針入度を測定した。これを200℃耐熱後の針入度とした。
【0071】
(A)成分
(A-1)下記平均分子式(4)で示される、25℃における粘度が約1Pa・sである分岐鎖状の分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基・トリメチルシロキシ基封鎖ポリシロキサン((C
6H
5)
2SiO
2/2単位:全ジオルガノポリシロキサン単位中2モル%、アルケニル基含有量:0.011モル/100g)
【化5】
【0072】
(A-2)下記平均分子式(5)で示される、25℃における粘度が約0.7Pa・sの分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基・トリメチルシロキシ基封鎖直鎖状ポリシロキサン((C
6H
5)
2SiO
2/2単位:全ジオルガノポリシロキサン単位中5モル%、アルケニル基含有量:0.005モル/100g)
【化6】
[注釈]
上記平均分子式(5)で示される分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基・トリメチルシロキシ基封鎖直鎖状ポリシロキサンは、下記平均分子式(5a)で示される分子鎖片末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され他方の分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された直鎖状ポリシロキサン[5a]と、下記平均分子式(5b)で示される分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された直鎖状ポリシロキサン[5b]との、[5a]:[5b]=6:4(モル比≒質量比)の均一混合物である。
【化7】
【化8】
【0073】
(A-3)下記平均分子式(6)で示される、25℃における粘度が約0.8Pa・sである分岐鎖状の分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基・トリメチルシロキシ基封鎖ポリシロキサン((C
6H
5)
2SiO
2/2単位:全ジオルガノポリシロキサン単位中0モル%、アルケニル基含有量:0.012モル/100g)
【化9】
[注釈]
上記平均分子式(6)で示される分岐鎖状の分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基・トリメチルシロキシ基封鎖ポリシロキサンは、下記平均分子式(6a)で示される2個の分子鎖末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された分岐鎖状ポリシロキサン[6a]と、下記平均分子式(6b)で示される2個の分子鎖末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された分岐鎖状ポリシロキサン[6b]との、[6a]:[6b]=4:6(モル比≒質量比)の均一混合物である。
【化10】
【化11】
【0074】
(A-4)下記平均分子式(7)で示される、25℃における粘度が約1Pa・sである分岐鎖状の分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基・トリメチルシロキシ基封鎖ポリシロキサン((C
6H
5)
2SiO
2/2単位:全ジオルガノポリシロキサン単位中0モル%、アルケニル基含有量:0.011モル/100g)
【化12】
【0075】
(A-5)下記平均分子式(8)で示される、25℃における粘度が約0.8Pa・sである分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基・トリメチルシロキシ基封鎖直鎖状ポリシロキサン((C
6H
5)
2SiO
2/2単位:全ジオルガノポリシロキサン単位中0モル%、アルケニル基含有量:0.004モル/100g)
【化13】
[注釈]
上記平均分子式(8)で示される分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基・トリメチルシロキシ基封鎖直鎖状ポリシロキサンは、下記平均分子式(8a)で示される分子鎖片末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され他方の分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された直鎖状ポリシロキサン[8a]と、下記平均分子式(8b)で示される分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された直鎖状ポリシロキサン[8b]との、[8a]:[8b]=6:4(モル比≒質量比)の均一混合物である。
【化14】
【化15】
【0076】
(A-6)下記平均分子式(9)で示される、25℃における粘度が約0.8Pa・sである分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基・トリメチルシロキシ基封鎖直鎖状ポリシロキサン((C
6H
5)
2SiO
2/2単位:全ジオルガノポリシロキサン単位中0モル%、アルケニル基含有量:0.005モル/100g)
【化16】
[注釈]
上記平均分子式(9)で示される分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基・トリメチルシロキシ基封鎖直鎖状ポリシロキサンは、下記平均分子式(9a)で示される分子鎖片末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され他方の分子鎖片末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された直鎖状ポリシロキサン[9a]と、下記平均分子式(9b)で示される分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された直鎖状ポリシロキサン[9b]との、[9a]:[9b]=6:4(モル比≒質量比)の均一混合物である。
【化17】
【化18】
【0077】
(B)成分
(B-1)下記平均分子式(10)で示される、25℃における粘度が30mPa・sのメチルハイドロジェンポリシロキサン(SiH基含有量:0.004モル/g)
【化19】
【0078】
(B-2)下記平均分子式(11)で示される、25℃における粘度が110mPa・sのメチルハイドロジェンポリシロキサン(SiH基含有量:0.006モル/g)
【化20】
【0079】
(B-3)下記平均分子式(12)で示される、25℃における粘度が20mPa・sのメチルハイドロジェンポリシロキサン(SiH基含有量:0.001モル/g)
【化21】
【0080】
(C)成分
下記式(13)で示される分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンを溶媒とする塩化白金酸-ビニルシロキサン錯体の溶液(白金原子含有量:1質量%)
【化22】
【0081】
(D)成分
(D-1)BET比表面積が300m2/gで、ジメチルジクロロシランで表面処理されたヒュームドシリカ(商品名:DM-30S、(株)トクヤマ製)
(D-2)BET比表面積が140m2/gで、トリメチルクロロシランで表面処理されたヒュームドシリカ(商品名:NSX-200、日本アエロジル(株)製)
【0082】
(E)成分
(E-1)エポキシ当量830g/mol、アルコキシ基量50質量%、25℃における粘度が12mPa・sのエポキシ基・アルコキシ基含有シロキサンオリゴマー(商品名:KR-517、信越化学工業(株)製)
(E-2)エポキシ当量350g/mol、アルコキシ基量42質量%、25℃における粘度が30mPa・sのエポキシ基・アルコキシ基含有シロキサンオリゴマー(商品名:X-41-1059A、信越化学工業(株)製)
(E-3)3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-403、信越化学工業(株)製)
(E-4)8-グリシジルオキシオクチルトリメトキシシラン(商品名:KBM-4803、信越化学工業(株)製)
(E-5)メトキシ基量28質量%、25℃における粘度が25mPa・sのメトキシ基含有シロキサンオリゴマー(商品名:KR-500、信越化学工業(株)製)
【0083】
[実施例1~4、比較例1~7]
上記(A)~(E)成分を表1、2の通り配合混合し、シリコーンゲル組成物S1~S11を調製した。これらのシリコーンゲル組成物の粘度を、上記に記載のレオメータにて測定し、SVI値を算出した。また、これらのシリコーンゲル組成物について、上述した方法により硬化前後における広がり性の変化を確認した。更に、これらのシリコーンゲル組成物の硬化物について、上述した方法により、耐熱性を評価した。以上の結果を表1、2に示す。
【0084】
表1に示す実施例1~4のシリコーンゲル組成物は、本発明の要件を満たすものであり、チキソ性を有するシリコーンゲル組成物で、加熱硬化時における広がり性がほとんどないため、封止素子に対するスポットポッティングに有用である。また、200℃雰囲気下における針入度変化が小さく、良好な耐熱性を有しているため、高温動作時においても封止樹脂(シリコーンゲル硬化物)のクラックの生成が抑えられるため、封止素子に対する負荷が小さいという特徴を併せ持つ。
【0085】
【表1】
*:(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)のモル量
【0086】
【表2】
*:(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)のモル量