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特許7708775画像処理装置、内視鏡システム、画像処理装置の作動方法、及び画像処理装置用プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】画像処理装置、内視鏡システム、画像処理装置の作動方法、及び画像処理装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20250708BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20250708BHJP
   A61B 1/06 20060101ALI20250708BHJP
【FI】
A61B1/045 615
A61B1/00 513
A61B1/045 622
A61B1/06 611
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022554050
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2021035912
(87)【国際公開番号】W WO2022071413
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2024-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2020167816
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】弁理士法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 広樹
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-065685(JP,A)
【文献】国際公開第2019/078204(WO,A1)
【文献】特開2019-042157(JP,A)
【文献】特開2018-175762(JP,A)
【文献】特開2010-172673(JP,A)
【文献】特開2007-244518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 -23/26
G06T 1/00 , 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像用プロセッサを備える画像処理装置であって、
前記画像用プロセッサは、
内視鏡を用いて観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像に基づく複数種類の候補画像を取得し、
複数種類の前記候補画像のうち少なくとも1種類の前記候補画像に基づく表示画像をディスプレイに表示する制御を行い、
複数種類の前記候補画像のうち予め設定した1または複数種類の前記候補画像に対し第1解析処理を行い、
前記第1解析処理により得られる第1解析処理結果に基づいて、複数種類の前記候補画像から少なくとも1種類の前記候補画像を最適画像として選択し、
前記最適画像に対し第2解析処理を行うことにより第2解析処理結果を得
前記第2解析処理は、互いに異なる複数の処理の中から前記最適画像とされた前記候補画像の種類に応じて定められる処理である画像処理装置。
【請求項2】
前記画像用プロセッサは、前記第2解析処理結果を前記ディスプレイに表示する制御を行う請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像用プロセッサは、前記第2解析処理結果を前記表示画像に重畳して表示する制御を行う請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1解析処理と前記第2解析処理とは、互いに異なる内容の解析処理である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記内視鏡画像に対し強調処理を行うことにより前記候補画像を生成し、
前記画像用プロセッサは、前記強調処理の有無又は種類により前記候補画像の種類を区別して、複数種類の前記候補画像を取得する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記強調処理は、色彩強調処理及び/又は構造強調処理である請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
前記観察対象に照射する照明光を発する光源部とを備える内視鏡システム。
【請求項8】
前記画像用プロセッサは、前記光源部が発する互いに分光スペクトルが異なる複数種類の照明光のそれぞれにより照明した前記観察対象を撮影することにより得られる前記内視鏡画像を、互いに異なる種類の前記候補画像として取得する請求項7に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記光源部は、互いに分光スペクトルが異なる複数種類の照明光のそれぞれを、予め設定した順序からなる発光周期により繰り返して発する請求項7又は8に記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記画像用プロセッサは、1回の前記発光周期において得られる複数種類の前記候補画像から、少なくとも1つの前記最適画像を選択する請求項9に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
第1照明期間中に第1照明光を第1発光パターンにより発し、第2照明期間中に第2照明光を第2発光パターンにより発し、かつ、前記第1照明光と前記第2照明光とを切り替える光源用プロセッサと、
前記第1照明光によって照明された観察対象を撮影して得られる第1内視鏡画像と、前記第2照明光によって照明された前記観察対象を撮影して得られる第2内視鏡画像とを出力する撮像センサとを備え、
前記画像用プロセッサは、前記第1内視鏡画像と前記第2内視鏡画像とを前記候補画像として取得する請求項7ないし10のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記画像用プロセッサは、前記光源部が発する白色の照明光により照明した前記観察対象を撮影することにより得られる前記内視鏡画像を、前記候補画像の1種として取得する請求項7ないし11のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項13】
前記画像用プロセッサは、前記光源部が発する予め設定した波長帯域の狭帯域光を含む照明光により照明した前記観察対象を撮影することにより得られる前記内視鏡画像を、前記候補画像の1種として取得する請求項7ないし12のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項14】
前記最適画像が、色差強調処理がされた前記候補画像である場合には、前記第2解析処理は、Mayoスコアの算出処理を行う請求項1ないし6いずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記最適画像が、表層血管又は構造が強調がされた前記候補画像である場合には、前記第2解析処理は、Geboesスコアの算出処理を行う請求項1ないし6いずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項16】
内視鏡を用いて観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像に基づく複数種類の候補画像を取得する候補画像取得ステップと、
複数種類の前記候補画像のうち少なくとも1種類の前記候補画像に基づく表示画像をディスプレイに表示する制御を行う表示画像制御ステップと、
複数種類の前記候補画像のうち予め設定した1または複数種類の前記候補画像に対し第1解析処理を行う第1解析処理ステップと、
前記第1解析処理により得られる第1解析処理結果に基づいて、複数種類の前記候補画像から少なくとも1種類の候補画像を最適画像として選択する最適画像選択ステップと、
前記最適画像に対し第2解析処理を行うことにより第2解析処理結果を得る第2解析処理ステップとを備え、
前記第2解析処理は、互いに異なる複数の処理の中から前記最適画像とされた前記候補画像の種類に応じて定められる処理である画像処理装置の作動方法。
【請求項17】
コンピュータに、
内視鏡を用いて観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像に基づく複数種類の候補画像を取得する候補画像取得機能と、
複数種類の前記候補画像のうち少なくとも1種類の前記候補画像に基づく表示画像をディスプレイに表示する制御を行う表示制御機能と、
複数種類の前記候補画像のうち予め設定した1または複数種類の前記候補画像に対し第1解析処理を行う第1解析処理機能と、
前記第1解析処理により得られる第1解析処理結果に基づいて、複数種類の前記候補画像から少なくとも1種類の候補画像を最適画像として選択する最適画像選択機能と、
前記最適画像に対し第2解析処理を行うことにより診断支援情報を得る第2解析処理機能とを実現させるためのものであって、
前記第2解析処理は、互いに異なる複数の処理の中から前記最適画像とされた前記候補画像の種類に応じて定められる処理である画像処理装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断支援情報を得る画像処理装置、内視鏡システム、画像処理装置の作動方法、及び画像処理装置用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、光源装置、内視鏡、及びプロセッサ装置を備える内視鏡システムを用いた診断が広く行われている。医師は、観察対象を内視鏡で撮影して得た画像(以下、内視鏡画像という)を自然な色によりディスプレイ等に表示して診断に用いるほか、場合により、画像強調内視鏡又は画像強調観察(IEE、image enhanced endoscopy)と称される方法により、色彩又は血管等の構造等を強調表示した各種の内視鏡画像を用いて観察対象を診断する。
【0003】
また、IEE等による各種の内視鏡画像を解析することにより、観察対象における病変の可能性がある領域の範囲、及び/又は炎症度等から、疾患のステージ等の判定結果等を含む診断支援情報を生成するCAD(Computer-Aided Diagnosis)技術が開発されている。例えば、IEEによる各種の内視鏡画像を用いて、潰瘍性大腸炎のステージ等の疾患の重症度又は進行度を高い精度で判定する内視鏡システムが知られている(特許文献1)。また、CADに適した明るさの画像を選択した上で診断支援情報を得る内視鏡装置が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-65685号公報
【文献】国際公開第2020/012564号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IEE等による各種の内視鏡画像は、医師等が診断のために用いるため、人が見た際に違和感のない色付けをした画像である場合が多い。IEEにより得られる人間にとって視認性が良い内視鏡画像は、CAD等による画像解析によって良好に診断支援情報が得られる内視鏡画像であるとは限らない場合がある。すなわち、人間にとっての視認性は悪いが、CAD等による画像解析に適した内視鏡画像が存在しうる。したがって、CAD等による画像解析に適切な種類の内視鏡画像を用いてCAD等を行うことにより、より精度が高い診断支援情報が得られる可能性がある。
【0006】
また、CAD等を用いて、内視鏡検査中にリアルタイムで詳細な診断支援情報を得ることにより、例えば、医師が病変の可能性が高い領域を発見し、一回の内視鏡検査においてこの領域を詳細に調べることができる。この場合は、再度の内視鏡検査を行う必要がないため好ましいが、検査中に診断支援情報を迅速に得る必要がある。また、内視鏡検査の被検者への負担軽減及び内視鏡検査の効率化からも、CAD等を行いながらも診断支援情報を迅速に得ることが好ましい。
【0007】
本発明は、迅速に、かつ高い精度により診断支援情報を得ることができる画像処理装置、内視鏡システム、画像処理装置の作動方法、及び画像処理装置用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像処理装置は、画像用プロセッサを備える。画像用プロセッサは、内視鏡を用いて観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像に基づく複数種類の候補画像を取得し、複数種類の候補画像のうち少なくとも1種類の候補画像に基づく表示画像をディスプレイに表示する制御を行い、複数種類の候補画像のうち予め設定した1または複数種類の候補画像に対し第1解析処理を行い、第1解析処理により得られる第1解析処理結果に基づいて、複数種類の候補画像から少なくとも1種類の候補画像を最適画像として選択し、最適画像に対し第2解析処理を行うことにより第2解析処理結果を得る。
【0009】
画像用プロセッサは、第2解析処理結果をディスプレイに表示する制御を行うことが好ましい。
【0010】
画像用プロセッサは、第2解析処理結果を表示画像に重畳して表示する制御を行うことが好ましい。
【0011】
第1解析処理と第2解析処理とは、互いに異なる内容の解析処理であることが好ましい。
【0012】
内視鏡画像に対し強調処理を行うことにより候補画像を生成し、画像用プロセッサは、強調処理の有無又は種類により候補画像の種類を区別して、複数種類の候補画像を取得することが好ましい。
【0013】
強調処理は、色彩強調処理及び/又は構造強調処理であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の内視鏡システムは、画像処理装置と、観察対象に照射する照明光を発する光源部とを備える。
【0015】
画像用プロセッサは、光源部が発する互いに分光スペクトルが異なる複数種類の照明光のそれぞれにより照明した観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像を、互いに異なる種類の候補画像として取得することが好ましい。
【0016】
光源部は、互いに分光スペクトルが異なる複数種類の照明光のそれぞれを、予め設定した順序からなる発光周期により繰り返して発することが好ましい。
【0017】
画像用プロセッサは、1回の発光周期において得られる複数種類の候補画像から、少なくとも1つの最適画像を選択することが好ましい。
【0018】
第1照明期間中に第1照明光を第1発光パターンにより発し、第2照明期間中に第2照明光を第2発光パターンにより発し、かつ、第1照明光と第2照明光とを切り替える光源用プロセッサと、第1照明光によって照明された観察対象を撮影して得られる第1内視鏡画像と、第2照明光によって照明された観察対象を撮影して得られる第2内視鏡画像とを出力する撮像センサとを備え、画像用プロセッサは、第1内視鏡画像と第2内視鏡画像とを候補画像として取得することが好ましい。
【0019】
画像用プロセッサは、光源部が発する白色の照明光により照明した観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像を、候補画像の1種として取得することが好ましい。
【0020】
画像用プロセッサは、光源部が発する予め設定した波長帯域の狭帯域光を含む照明光により照明した観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像を、候補画像の1種として取得することが好ましい。
【0021】
また、本発明の画像処理装置の作動方法は、内視鏡を用いて観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像に基づく複数種類の候補画像を取得する候補画像取得ステップと、複数種類の候補画像のうち少なくとも1種類の候補画像に基づく表示画像をディスプレイに表示する制御を行う表示画像制御ステップと、複数種類の候補画像のうち予め設定した1または複数種類の候補画像に対し第1解析処理を行う第1解析処理ステップと、第1解析処理により得られる第1解析処理結果に基づいて、複数種類の候補画像から少なくとも1種類の候補画像を最適画像として選択する最適画像選択ステップと、最適画像に対し第2解析処理を行うことにより第2解析処理結果を得る第2解析処理ステップとを備える。
【0022】
また、本発明の画像処理装置用プログラムは、コンピュータに、内視鏡を用いて観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像に基づく複数種類の候補画像を取得する候補画像取得機能と、複数種類の候補画像のうち少なくとも1種類の候補画像に基づく表示画像をディスプレイに表示する制御を行う表示制御機能と、複数種類の候補画像のうち予め設定した1または複数種類の候補画像に対し第1解析処理を行う第1解析処理機能と、第1解析処理により得られる第1解析処理結果に基づいて、複数種類の候補画像から少なくとも1種類の候補画像を最適画像として選択する最適画像選択機能と、最適画像に対し第2解析処理を行うことにより診断支援情報を得る第2解析処理機能とを実現させるための画像処理装置用プログラムである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、迅速に、かつ高い精度により診断支援情報を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】内視鏡システムの構成を説明する説明図である。
図2】内視鏡システムの機能を示すブロック図である。
図3】紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光Rの分光スペクトルを示すグラフである。
図4】第1A発光パターン及び第2A発光パターンを説明する説明図である。
図5】第1B発光パターンを説明する説明図である。
図6】第2B発光パターンを説明する説明図である。
図7】第2C発光パターンを説明する説明図である。
図8】第2D発光パターンを説明する説明図である。
図9】画像処理部の機能を示すブロック図である。
図10】診断支援画像処理部の機能を示すブロック図である。
図11】候補画像取得部の機能を示すブロック図である。
図12】第2照明光用分光スペクトルSP1を示すグラフである。
図13】第2照明光用分光スペクトルSP2を示すグラフである。
図14】第2照明光用分光スペクトルSP3を示すグラフである。
図15】第4候補画像生成部の機能を示すブロック図である。
図16】酸素飽和度算出用テーブルを示すグラフである。
図17】第2照明光用分光スペクトルSP4を示すグラフである。
図18】第5候補画像生成部の機能を示すブロック図である。
図19】色差拡張処理を説明する説明図である。
図20】候補画像取得を説明する説明図である。
図21】画像認識部の機能を示すブロック図である。
図22】第1解析処理部の機能を示すブロック図である。
図23】対応情報取得部の機能を説明する説明図である。
図24】候補画像取得と第1解析処理とについて説明する説明図である。
図25】第2解析処理部の機能を示すブロック図である。
図26】候補画像取得と第1解析処理と最適画像選択とについて説明する説明図である。
図27】候補画像取得と第1解析処理と表示画像生成と最適画像選択と第2解析処理とについて説明する説明図である
図28】第2診断支援情報をテキスト表示により表示したディスプレイを示す画像図である。
図29】第2診断支援情報を枠表示とテキスト表示とにより表示したディスプレイを示す画像図である。
図30】第5候補画像を最適画像として選択する説明図である。
図31】MAYOスコアを表示したディスプレイを示す画像図である。
図32】第2候補画像を最適画像として選択する説明図である。
図33】Geboesスコアを表示したディスプレイを示す画像図である。
図34】診断支援モードの一連の流れを示すフローチャートである。
図35】診断支援装置を示す説明図である。
図36】医療業務支援装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示すように、内視鏡システム10は、内視鏡12と、光源装置14と、プロセッサ装置16と、ディスプレイ18と、キーボード19とを備える。内視鏡12は、観察対象を撮影する。光源装置14は、観察対象に照射する照明光を発する。プロセッサ装置16は、内視鏡システム10のシステム制御を行う。ディスプレイ18は、内視鏡画像に基づく表示画像、及び診断支援情報等を表示する表示部である。キーボード19は、プロセッサ装置16等への設定入力等を行う入力デバイスである。
【0026】
内視鏡システム10は、本実施形態において、観察モードとして、通常観察モード、特殊観察モード、及び診断支援モードの3つのモードを備える。通常観察モードでは、白色光等の通常光を観察対象に照射して撮影することによって、自然な色合いの通常観察画像を表示画像としてディスプレイ18に表示する。特殊観察モードでは、通常光と波長帯域又は分光スペクトルが異なる特殊光を観察対象に照明して撮影することによって、特定の構造等を強調した特殊画像を表示画像としてディスプレイ18に表示する。診断支援モードでは、表示画像をディスプレイ18に表示することに加え、診断支援情報を得て内視鏡システム10のユーザである医師等に通知する。診断支援情報の通知は、ディスプレイ18に表示することにより、又は、それ以外の方法により行われる。ディスプレイ18に表示する場合は、例えば、表示画像に重畳する、又は、表示画像とは別にディスプレイ18に表示することによって行ってもよい。
【0027】
内視鏡12は、観察対象を有する被検体内に挿入する挿入部12aと、挿入部12aの基端部分に設けた操作部12bと、挿入部12aの先端側に設けた湾曲部12cと、先端部12dとを有している。操作部12bのアングルノブ12eを操作することにより、湾曲部12cが湾曲する。その結果、先端部12dが所望の方向に向く。また、操作部12bには、アングルノブ12eの他、処置具挿入口(図示せず)、スコープボタン1番12f、スコープボタン2番12g、及びズーム操作部12hが設けられている。処置具挿入口は、生検鉗子、スネア、又は電気メス等の処置具を挿入する入り口である。処置具挿入口に挿入した処置具は、先端部12dから突出する。スコープボタンには、各種の操作を割り当てることができる。例えば、スコープボタン1番12fは、フリーズボタンであり、静止画を取得する操作に使用する。スコープボタン2番12gは、観察モードを切り替える操作に使用する。ズーム操作部12hを操作することによって、観察対象を拡大または縮小して撮影できる。
【0028】
図2に示すように、光源装置14は、照明光を発する光源を備える光源部20と、光源部20の動作を制御する光源用プロセッサ22とを備える。光源部20は、観察対象を照明する照明光を発する。照明光には、照明光を発するために使用する励起光等の発光を含む。光源部20は、例えば、レーザーダイオード、LED(Light Emitting Diode)、キセノンランプ、又はハロゲンランプの光源を含み、少なくとも、白色の照明光(以下、白色光という)、又は白色光を発するために使用する励起光を発する。白色には、内視鏡12を用いた観察対象の撮影において実質的に白色と同等な、いわゆる擬似白色を含む。
【0029】
光源部20は、必要に応じて、励起光の照射を受けて発光する蛍光体、又は、照明光又は励起光の波長帯域、分光スペクトル、もしくは光量等を調節する光学フィルタ等を含む。この他、光源部20は、少なくとも狭帯域な光(以下、狭帯域光という)からなる照明光を発することができる。「狭帯域」とは、観察対象の特性及び/またはイメージセンサ(撮像センサ)45が有するカラーフィルタの分光特性との関係において、実質的にほぼ単一の波長帯域であることをいう。例えば、波長帯域が約±20nm以下(好ましくは約±10nm以下)である場合、この光は狭帯域である。
【0030】
また、光源部20は、互いに分光スペクトルが異なる複数種類の照明光を発することができる。複数種類の照明光は、狭帯域光を含んでもよい。また、光源部20は、例えば、観察対象が含むヘモグロビンの酸素飽和度等の生体情報を算出するために使用する画像の撮影に必要な、特定の波長帯域又は分光スペクトルを有する光を発することができる。
【0031】
本実施形態では、光源部20は、V-LED20a、B-LED20b、G-LED20c、及びR-LED20dの4色のLEDを有する。図3に示すように、V-LED20aは、中心波長405nm、波長帯域380~420nmの紫色光Vを発光する。B-LED20bは、中心波長460nm、波長帯域420~500nmの青色光Bを発光する。G-LED20cは、波長帯域が480~600nmに及ぶ緑色光Gを発光する。R-LED20dは、中心波長620~630nmで、波長帯域が600~650nmに及ぶ赤色光Rを発光する。なお、V-LED20aとB-LED20bの中心波長は約±20nm、好ましくは約±5nmから約±10nm程度の幅を有する。なお、紫色光Vは、特殊観察モード又は診断支援モードにて用いる表層血管、表層血管の密集部、粘膜内出血、及び粘膜外出血等を強調して表示するために用いられる短波長の光であり、中心波長又はピーク波長に410nmを含めることが好ましい。また、紫色光V及び/又は青色光Bは、狭帯域光であることが好ましい。
【0032】
光源用プロセッサ22は、光源部20を構成する各光源の点灯又は消灯もしくは遮蔽のタイミング、及び、光強度又は発光量等を制御する。その結果、光源部20は、分光スペクトルが異なる複数種類の照明光を、予め設定した期間及び発光量で発することができる。本実施形態においては、光源用プロセッサ22は、V-LED20a、B-LED20b、G-LED20c、及びR-LED20dの点灯や消灯、点灯時の光強度もしくは発光量、又は光学フィルタの挿抜等を、各々に独立した制御信号を入力することにより制御する。光源用プロセッサ22は、各LED20a~20dをそれぞれ独立に制御することで、紫色光V、青色光B、緑色光G、又は赤色光Rをそれぞれ独立に光強度又は単位時間あたりの光量を変えて発光可能である。したがって、光源用プロセッサ22は、互いに分光スペクトルが異なる複数種類の照明光を発することができ、例えば、白色の照明光、分光スペクトルが異なる複数種類の照明光、又は、少なくとも狭帯域光からなる照明光等を発する。
【0033】
光源用プロセッサ22は、通常観察モード時には、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光R間の光強度比がVc:Bc:Gc:Rcとなる白色光を発光するように、各LED20a~20dを制御する。なお、Vc、Bc、Gc、又はRcのそれぞれは、0(ゼロ)より大きく、0ではない。
【0034】
また、光源用プロセッサ22は、特殊観察モード時には、短波長の狭帯域光としての紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光Rとの光強度比がVs:Bs:Gs:Rsとなる特殊光を発光するように、各LED20a~20dを制御する。光強度比Vs:Bs:Gs:Rsは、通常観察モード時に使用する光強度比Vc:Bc:Gc:Rcと異なっており、観察目的に応じて適宜定められる。したがって、光源部20は、光源用プロセッサ22の制御により、互いに分光スペクトルが異なる複数種類の特殊光を発することができる。例えば、表層血管を強調する場合には、Vsを、他のBs、Gs、及びRsよりも大きくすることが好ましく、中深層血管を強調する場合には、Gsを、他のVs、Bs、及びRsよりも大きくすることが好ましい。
【0035】
なお、本明細書において、Vc、Bc、Gc、又はRcを除く光強度比は、少なくとも1つの半導体光源の比率が0(ゼロ)の場合を含む。したがって、各半導体光源のいずれか1つまたは2つ以上が点灯しない場合を含む。例えば、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光R間の光強度比が1:0:0:0の場合のように、半導体光源の1つのみを点灯し、他の3つは点灯しない場合も、光強度比を有するものとする。
【0036】
また、光源用プロセッサ22は、本実施形態では、診断支援モード時に、複数種類の候補画像を取得するために、分光スペクトルが互いに異なる複数種類の照明光を自動的に切り替えて発することが好ましい。複数種類の照明光のそれぞれは、予め設定した順序により繰り返し発することが好ましい。そのため、複数種類の照明光のそれぞれは、予め設定した順序からなる特定のパターンを形成し、照明光は、特定のパターンを繰り返して発するものであることが好ましい。
【0037】
例えば、具体的には、光源用プロセッサ22は、第1照明期間において第1照明光を第1発光パターンで発し、第2照明期間において第2照明光を第2発光パターンで発する。第1照明期間に発する照明光が第1照明光であり、第2照明期間に発する照明光が第2照明光である。第1照明光は、表示画像に用いる内視鏡画像を得るため、白色光であることが好ましい。一方、第2照明光は、認識処理に用いるため、観察対象に照明することによってコンピュータが特定の解析処理を行うのに適した画像が得られる特殊光であることが好ましい。例えば、表層血管に関して解析処理を行う場合には、第2照明光を紫色光Vとすることが好ましい。なお、第1照明光と第2照明光とは、それぞれ分光スペクトルが互いに異なる複数種類の照明光を含んでもよい。
【0038】
第1発光パターンは、第1照明光の発光順序であり、第2発光パターンは、第2照明光の発光順序であり、それぞれの発光パターンを構成する要素は、撮影の単位であるフレームである。フレームとは、イメージセンサ45における特定タイミングから信号読み出し完了までの間の期間を少なくとも含む期間をいう。1フレームにおいて1回の撮影及び画像の取得を行う。第1照明光と第2照明光とは、いずれか一方を発し、同時に発することはない。1つの発光周期は、それぞれ少なくとも1つの第1発光パターンと第2発光パターンとからなり、第1発光パターンと第2発光パターンとを組み合わせて発光周期を構成する。発光周期を繰り返すことにより照明を行う。したがって、光源部20は、互いに分光スペクトルが異なる複数種類の照明光のそれぞれを、予め設定した順序からなる発光周期により繰り返して発する。第1発光パターン又は第2発光パターンのそれぞれを構成するフレーム数、又は照明光の種類等の詳細は、予め設定する。
【0039】
例えば、第1発光パターンは、第1A発光パターン又は第1B発光パターンであることが好ましい。図4に示すように、第1A発光パターンは、第1照明期間P1での第1照明光L1のフレームFL数が、それぞれの第1照明期間P1において同じである。したがって、発光周期Q1において、第1照明期間P1での第1照明光L1のフレームFL数は、全て2つに設定されている。図5に示すように、第1B発光パターンは、第1照明期間P1のフレームFL数がそれぞれの第1照明期間P1において異なる。したがって、発光周期Q2において、第1照明期間P1での第1照明光L1のフレームFL数は、2つの場合と3つの場合とを含む。なお、第1A発光パターン及び第1B発光パターンにおいて、第1照明光L1は同一の分光スペクトルであり、白色光である。
【0040】
第2発光パターンは、第2A発光パターン、第2B発光パターン、第2C発光パターン、又は第2D発光パターンであることが好ましい。図4に示すように、第2A発光パターンは、第2照明期間P2での第2照明光L2aのフレームFL数が、それぞれの第2照明期間P2において同じである。したがって、発光周期Q1において、第2照明期間P2での第2照明光L2aのフレームFL数は、全て1つに設定されている。なお、第2照明光L2は、分光スペクトルが異なる照明光を含む場合があり、これらを、第2照明光L2aと第2照明光L2bと記載して区別し、第2照明光L2と記載する場合はこれらを総称する。したがって、第2A発光パターンにおいて、第2照明光L2が第2照明光L2bの場合は、第2照明期間P2において、第2照明光L2bをフレームFL数1つで発する。図5に示すように、発光周期Q2においても、発光周期Q1と同様、第2照明光L2は第2A発光パターンで発する。
【0041】
図6に示すように、第2B発光パターンは、発光周期Q3において、第2照明期間P2のフレームFL数がそれぞれの第2照明期間P2において同じであり、且つ、第2照明光L2の分光スペクトルが、それぞれの第2照明期間P2において第2照明光L2a又は第2照明光L2bであり、異なる。図7に示すように、第2C発光パターンは、発光周期Q4において、第2照明期間P2のフレームFL数がそれぞれの第2照明期間P2において異なり、且つ、第2照明光L2の分光スペクトルがそれぞれの第2照明期間P2において第2照明光L2aであり、同じである。
【0042】
図8に示すように、第2D発光パターンは、発光周期Q5において、第2照明期間P2のフレームFL数がそれぞれの第2照明期間P2において異なり、且つ、第2照明光L2の分光スペクトルがそれぞれの第2照明期間P2において第2照明光L2a又は第2照明光L2bであり、異なる。
【0043】
以上のとおり、診断支援モード時は、光源用プロセッサ22が、第1発光パターンと第2発光パターンを組み合わせて構成した発光周期を繰り返す。図4に示すように、発光周期Q1は、第1A発光パターンと第2A発光パターンとからなる。図5に示すように、発光周期Q2は、第1B発光パターンと第2A発光パターンとからなる。図6に示すように、発光周期Q3は、第1A発光パターンと第2B発光パターンとからなる。図7に示すように、発光周期Q4は、第1A発光パターンと第2C発光パターンとからなる。図8に示すように、発光周期Q5は、第1A発光パターンと第2D発光パターンとからなる。なお、第1発光パターンにおいて、第1照明光L1の分光スペクトルは、それぞれの第1照明期間P1において、異なってもよい。
【0044】
また、診断支援モード時は、光源用プロセッサ22は、後に説明する各解析処理による解析処理結果に基づいて、第1発光パターン又は第2発光パターンを変更してもよい。発光パターンの変更には、照明光の種類の変更を含む。具体的には、例えば、解析処理結果に基づいて、第2発光パターンを、第2A発光パターンから第2B発光パターンに変更する、又は、第2照明光L2aを用いた第2A発光パターンから、第2照明光L2bを用いた第2A発光パターンに変更する、等の切り替えを行ってもよい。
【0045】
ここで、第1照明期間P1は第2照明期間P2よりも長くすることが好ましく、第1照明期間P1は2フレーム以上とすることが好ましい。例えば、図4では、第1発光パターンを第1A発光パターンとし、第2発光パターンを第2A発光パターンとする発光周期Q1において、第1照明期間P1を2フレームとし、第2照明期間P2を1フレームとしている。第1照明光L1は、ディスプレイ18に表示する表示画像の生成に用いられることから、第1照明光L1を観察対象に照明することによって、明るい表示画像が得られることが好ましい。
【0046】
図2に示すように、各LED20a~20dが発する光は、ミラーやレンズ等で構成される光路結合部(図示せず)を介して、ライトガイド41に入射する。ライトガイド41は、内視鏡12及びユニバーサルコード(図示せず)に内蔵されている。ユニバーサルコードは、内視鏡12と、光源装置14及びプロセッサ装置16を接続するコードである。ライトガイド41は、光路結合部からの光を、内視鏡12の先端部12dまで伝搬する。
【0047】
内視鏡12の先端部12dには、照明光学系30aと撮影光学系30bとが設けられる。照明光学系30aは、照明レンズ42を有しており、ライトガイド41によって伝搬した照明光が、照明レンズ42を介して観察対象に向けて出射する。
【0048】
撮影光学系30bは、対物レンズ43、ズームレンズ44、及びイメージセンサ45を有する。イメージセンサ45は、対物レンズ43及びズームレンズ44を介して、観察対象から戻る照明光の反射光等(反射光の他、散乱光、観察対象が発光する蛍光、または、観察対象に投与等した薬剤に起因した蛍光等を含む)を用いて観察対象を撮影する。ズームレンズ44は、ズーム操作部12hの操作をすることで移動し、観察対象像を拡大または縮小する。
【0049】
イメージセンサ45は、画素ごとに、複数色のカラーフィルタのうち1色のカラーフィルタを有する。本実施形態においては、イメージセンサ45は原色系のカラーフィルタを有するカラーセンサである。具体的には、イメージセンサ45は、赤色カラーフィルタ(Rフィルタ)を有するR画素と、緑色カラーフィルタ(Gフィルタ)を有するG画素と、青色カラーフィルタ(Bフィルタ)を有するB画素とを有する。
【0050】
なお、イメージセンサ45としては、CCD(Charge Coupled Device)センサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを利用可能である。また、本実施形態のイメージセンサ45は、原色系のカラーセンサであるが、補色系のカラーセンサを用いることもできる。補色系のカラーセンサは、例えば、シアンカラーフィルタが設けられたシアン画素、マゼンタカラーフィルタが設けられたマゼンタ画素、イエローカラーフィルタが設けられたイエロー画素、及び、グリーンカラーフィルタが設けられたグリーン画素を有する。補色系カラーセンサを用いる場合に上記各色の画素から得る画像は、補色-原色色変換をすれば、原色系のカラーセンサで得る画像と同様の画像に変換できる。原色系または補色系のセンサにおいて、W画素(ほぼ全波長帯域の光を受光するホワイト画素)等、上記以外の特性を有する画素を1または複数種類有する場合も同様である。また、本実施形態のイメージセンサ45はカラーセンサであるが、カラーフィルタを有しないモノクロのセンサを使用してもよい。
【0051】
内視鏡12は、イメージセンサ45を制御する撮影用プロセッサ46を備える。撮影用プロセッサ46の制御は、観察モード毎に異なる。通常観察モードでは、撮影用プロセッサ46は、通常光で照明された観察対象を撮影するように、イメージセンサ45を制御する。これにより、イメージセンサ45のB画素からBc画像信号が出力され、G画素からGc画像信号が出力され、R画素からRc画像信号が出力される。
【0052】
特殊観察モードでは、撮影用プロセッサ46は、特殊光で照明された観察対象を撮影するように、イメージセンサ45を制御する。これにより、イメージセンサ45のB画素からBs画像信号が出力され、G画素からGs画像信号が出力され、R画素からRs画像信号が出力される。
【0053】
診断支援モードでは、撮影用プロセッサ46は、第1照明光L1又は第2照明光L2で照明された観察対象を撮影するように、イメージセンサ45を制御する。これにより、例えば、第1照明光L1の照明時には、イメージセンサ45のB画素からB1画像信号が出力され、G画素からG1画像信号が出力され、R画素からR1画像信号が出力される。また、第2照明光L2の照明時には、例えば、イメージセンサ45のB画素からB2画像信号が出力され、G画素からG2画像信号が出力され、R画素からR2画像信号が出力される。
【0054】
プロセッサ装置16には、後述するような中央制御部51、画像取得部52、画像処理部56、及び表示制御部57等が行う処理等に関するプログラムがメモリ(図示せず)に組み込まれている。画像処理装置として機能するプロセッサ装置16が備える画像用プロセッサにより構成される中央制御部51によってそのプログラムが動作することで、中央制御部51、画像取得部52、画像処理部56、及び表示制御部57の機能が実現する。
【0055】
中央制御部51は、照明光の照射タイミングと撮影のタイミングの同期制御等の内視鏡システム10の統括的な制御を行う。キーボード19等を用いて、各種設定の入力等をした場合には、中央制御部51は、その設定を、光源用プロセッサ22、撮影用プロセッサ46、又は画像処理部56等の内視鏡システム10の各部に入力する。
【0056】
画像取得部52は、イメージセンサ45から、各色の画素を用いて観察対象を撮影した画像、すなわちRAW画像を取得する。また、RAW画像は、デモザイク処理を実施する前の画像(内視鏡画像)である。デモザイク処理を実施する前の画像であれば、イメージセンサ45から取得した画像に対してノイズ低減処理等の任意の処理を実施した画像もRAW画像に含む。
【0057】
画像取得部52は、取得したRAW画像に必要に応じて各種処理を施すために、DSP(Digital Signal Processor)53と、ノイズ低減部54と、変換部55と、を備える。
【0058】
DSP53は、例えば、オフセット処理部、欠陥補正処理部、デモザイク処理部、リニアマトリクス処理部、及び、YC変換処理部、等(いずれも図示せず)を備える。DSP53は、これらを用いてRAW画像またはRAW画像を用いて生成した画像に対して各種処理を施す。
【0059】
オフセット処理部は、RAW画像に対してオフセット処理を施す。オフセット処理は、RAW画像から暗電流成分を低減し、正確な零レベルを設定する処理である。オフセット処理は、クランプ処理と称する場合がある。欠陥補正処理部は、RAW画像に対して欠陥補正処理を施す。欠陥補正処理は、イメージセンサ45が製造工程または経時変化に起因する欠陥を有する画素(欠陥画素)を含む場合に、イメージセンサ45の欠陥画素に対応するRAW画素の画素値を補正または生成する処理である。
【0060】
デモザイク処理部は、各色のカラーフィルタに対応する各色のRAW画像に対してデモザイク処理を施す。デモザイク処理は、RAW画像においてカラーフィルタの配列に起因して欠落する画素値を補間によって生成する処理である。リニアマトリクス処理部は、1または複数のRAW画像をRGB各色のチャンネルに割り当てることにより生成する内視鏡画像に対してリニアマトリクス処理を行う。リニアマトリクス処理は、内視鏡画像の色再現性を高める処理である。YC変換処理部が行うYC変換処理は、1または複数のRAW画像をRGB各色のチャンネルに割り当てることにより生成する内視鏡画像を、輝度チャンネルYと色差チャンネルCb及び色差チャンネルCrを有する内視鏡画像に変換する処理である。
【0061】
ノイズ低減部54は、輝度チャンネルY、色差チャンネルCb及び色差チャンネルCrを有する内視鏡画像に対して、例えば、移動平均法またはメディアンフィルタ法等を用いてノイズ低減処理を施す。変換部55は、ノイズ低減処理後の輝度チャンネルY、色差チャンネルCb及び色差チャンネルCrを再びBGRの各色のチャンネルを有する内視鏡画像に再変換する。
【0062】
画像処理部56は、画像取得部52が出力する内視鏡画像に、必要な画像処理、又は演算を行う。図9に示すように、画像処理部56は、通常観察画像処理部61、特殊観察画像処理部62、及び診断支援画像処理部63を備える。通常観察画像処理部61は、入力した1フレーム分のRc画像信号、Gc画像信号、及びBc画像信号に対して、通常観察画像用画像処理を施す。通常観察画像用画像処理には、3×3のマトリクス処理、階調変換処理、3次元LUT(Look Up Table)処理等の色変換処理、色彩強調処理、又は空間周波数強調等の構造強調処理が含まれる。通常観察画像用画像処理が施されたRc画像信号、Gc画像信号、及びBc画像信号は、通常観察画像であり、通常観察モードにおいて、表示画像として表示制御部57に入力する。
【0063】
特殊観察画像処理部62は、入力した1フレーム分のRs画像信号、Gs画像信号、及びBs画像信号に対して、特殊観察画像用画像処理を施す。特殊観察画像用画像処理には、3×3のマトリクス処理、階調変換処理、3次元LUT(Look Up Table)処理等の色変換処理、色彩強調処理、又は空間周波数強調等の構造強調処理が含まれる。特殊観察画像用画像処理が施されたRs画像信号、Gs画像信号、及びBs画像信号は、特殊観察画像であり、特殊観察モードにおいて表示画像として表示制御部57に入力する。
【0064】
診断支援画像処理部63は、診断支援モードにおける画像解析処理等を行い、診断支援情報を生成する。診断支援情報は、医師等のユーザに示される。図10に示すように、診断支援画像処理部63は、候補画像取得部71、第1解析処理部72、最適画像選択部73、第2解析処理部74、及び表示画像生成部75を備える。
【0065】
候補画像取得部71は、画像取得部52が出力する内視鏡画像に基づいて、複数種類の候補画像を生成及び取得する。候補画像の種類は、次の2点のいずれか一方又は両方により区別する。1点目は、観察対象を撮影する際の照明光の分光スペクトルにより区別する。したがって、候補画像取得部71は、光源部が発する互いに分光スペクトルが異なる複数種類の照明光のそれぞれにより照明した観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像を、それぞれ1種の候補画像として取得する。2点目は、内視鏡画像に対する候補画像生成のための画像処理(以下、候補画像生成用画像処理という)の方法により区別する。
【0066】
候補画像生成用画像処理の方法としては、例えば、強調処理等の画像処理の方法を含み、具体的には、色差拡張処理及び/又は構造強調処理等を含む。なお、候補画像生成用画像処理の方法により候補画像を区別する際には、候補画像生成用画像処理を行わないことを含む。したがって、画像取得部52が出力する内視鏡画像に対して候補画像生成用画像処理を行わない場合の内視鏡画像も、候補画像の1種類である。したがって、照明光の分光スペクトルと候補画像生成用画像処理との組み合わせが異なる場合も、候補画像の1種類とする。照明光の分光スペクトル又は画像処理のいずれか一方が異なる候補画像は、異なる種類の候補画像である。
【0067】
図11に示すように、候補画像取得部71は、複数種類の候補画像のそれぞれを生成する各候補画像生成部を備える。例えば、第1候補画像生成部81、第2候補画像生成部82、第3候補画像生成部83、第4候補画像生成部84、第5候補画像生成部85、及び第n候補画像生成部86を備える。nは6以上の整数である。nは、複数種類の候補画像の種類の数に応じて設定できる。各候補画像取得部は、それぞれ以下の照明光及び/又は候補画像生成用画像処理を行う。
【0068】
第1候補画像生成部81は、第1候補画像を生成するための第1候補画像用画像処理(以下、第1画像処理という)を行う。第1画像処理は、第1照明光用分光スペクトルにより白色光の第1照明光を発して得られたB1画像信号、G1画像信号、及びR1画像信号に対して施す処理である。第1画像処理は、通常観察画像処理部61における通常表示画像処理と同様であり、通常表示画像と同様の第1候補画像を得る。第1候補画像は、候補画像の1種である。したがって、候補画像取得部71は、白色の照明光により照明した観察対象を撮影することにより得られる画像を、候補画像の1種として取得する。
【0069】
第2候補画像生成部82は、第2候補画像を生成するための第2候補画像用画像処理(以下、第2画像処理という)を行う。第2画像処理は、第2照明光用分光スペクトルSP1で第2照明光L2を発して得られたB2画像信号、G2画像信号、及びR2画像信号に対して施す処理である。第2照明光用分光スペクトルSP1で発する第2照明光L2は、図12に示すように、紫色光Vが他の色の青色光B、緑色光G、及び赤色光Rよりもピークの強度が大きい光であることが好ましい。第2画像処理は、B2画像信号を表示用のBチャンネルとGチャンネルとに割り当て、G2画像信号を表示用のRチャンネルに割り当てる疑似カラー処理である。この疑似カラー処理により、表層血管など特定深さの血管又は構造が強調された第2候補画像が得られる。第2候補画像は、候補画像の1種である。
【0070】
第3候補画像生成部83は、第3候補画像を生成するための第3候補画像用画像処理(以下、第3画像処理という)を行う。第3画像処理は、第2照明光用分光スペクトルSP2で第2照明光を発して得られたB2画像信号、G2画像信号、及びR2画像信号に対して施す処理である。第2照明光用分光スペクトルSP2で発する第2照明光は、図13に示すように、紫色光V(ピーク波長は例えば400~420nm)のみを発する光であることが好ましい。第3画像処理は、B2画像信号を表示用のBチャンネル、Gチャンネル、及びRチャンネルに割り当てて、且つ、色調及び階調バランスの調整を行う処理である。第3画像処理によって、表層血管よりも浅い極表層血管などが強調された第3候補画像が得られる。第3候補画像は、候補画像の1種である。
【0071】
第4候補画像生成部84は、第4候補画像を生成するための第4候補画像用画像処理(以下、第4画像処理という)を行う。第4画像処理は、第1照明光を発して得られたB1画像信号、G1画像信号、及びR1画像信号に加えて、第2照明光用分光スペクトルSP3で第2照明光を発して得られたB2画像信号、G2画像信号、及びR2画像信号に対して施す処理である。第2照明光用分光スペクトルSP3は、図14に示すように、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光係数に差がある波長帯域の光である青色光B(ピーク波長は例えば470~480nm)であることが好ましい。
【0072】
第4候補画像生成部84は、図15に示すように、B2画像信号とG1画像信号との比を表す第1信号比(B2/G1)、及び、R1画像信号とG1画像信号との比を表す第2信号比(R1/G1)を算出する信号比算出処理を行う酸素飽和度用信号比算出部84aと、酸素飽和度算出用テーブル84bを参照して、第1信号比及び第2信号比に対応する酸素飽和度を算出する酸素飽和度算出部84cと、酸素飽和度に基づいて酸素飽和度画像を生成する酸素飽和度画像生成部84dとを備える。酸素飽和度画像が、第4画像処理により得られる第4候補画像となる。第4候補画像は、候補画像の1種である。
【0073】
なお、酸素飽和度算出用テーブル84bは、酸素飽和度と第1信号比及び第2信号比との相関関係が記憶されている。具体的には、酸素飽和度算出用テーブル84bは、図16に示すように、第1信号比(B2/G1)と第2信号比(R1/G1)を軸とする2次元空間に、酸素飽和度の等値線ELx、EL1、EL2、EL3、ELyなどを定義した2次元テーブルで構成される。例えば、等値線ELxは酸素飽和度が0%、等値線EL1は酸素飽和度が30%、等値線EL2は酸素飽和度が50%、等値線EL3は酸素飽和度が80%であることを表している。なお、第1信号比(B2/G1)と第2信号比(R1/G1)に対する等値線の位置及び形状は、光散乱の物理的なシミュレーションによって予め得られる。なお、第1信号比(B2/G1)と第2信号比(R1/G1)はlogスケールであることが好ましい。
【0074】
第5候補画像生成部85は、第5候補画像を生成するための第5候補画像用画像処理(以下、第5画像処理という)を行う。第5画像処理は、色差拡張処理であり、具体的には、第2照明光用分光スペクトルSP4で第2照明光を発して得られたB2画像信号、G2画像信号、及びR2画像信号に対して施す処理である。第2照明光用スペクトルSP4は、図17に示すように、紫色光V及び青色光Bのピーク強度が、緑色光G及び赤色光Rのピーク強度よりも大きい光であることが好ましい。また、第2照明光用分光スペクトルSP2と比べると、赤色光Rの強度が大きいことが好ましい。
【0075】
第5候補画像生成部85には、図18に示すように、B2画像信号とG2画像信号との比を表す第1信号比(B2/G2)、及び、R2画像信号とG2画像信号との比を表す第2信号比(G2/R2)を算出する信号比算出処理を行う色差拡張用信号比算出部85aと、第1信号比及び第2信号比に基づいて、複数の観察対象範囲の間の色差を拡張する色差拡張処理を行う色差拡張処理部85bと、色差拡張処理後の第1信号比及び第2信号比に基づいて、色差拡張画像を生成する色差拡張画像生成部85cが設けられている。色差拡張画像が、第5画像処理により得られる第5候補画像となる。第5候補画像は、候補画像の1種である。
【0076】
色差拡張処理については、図19に示すように、第1信号比(B2/G2)及び第2信号比(G2/R2)からなる二次元空間で複数の観察対象範囲の間の距離を拡張することが好ましい。具体的には、二次元空間において、複数の観察対象範囲のうち第1範囲(円で囲んだ1により示す)の位置は色差拡張処理前を維持した状態で、第1範囲と第2範囲(円で囲んだ2により示す)との距離、第1範囲と第3範囲(円で囲んだ3により示す)との距離、及び、第1範囲と第4範囲(円で囲んだ4により示す)との距離を拡張することが好ましい。色差拡張処理は、第1信号比及び第2信号比を極座標変換した上で、動径と角度を調整する方法により行うことが好ましい。なお、第1範囲は病変などが存在しない正常部で、第2~第4範囲は、病変等が存在する可能性がある異常部であることが好ましい。色差拡張処理により、色差拡張処理前の二次元空間での範囲A1から、色差拡張処理後では範囲A2へと広げられるため、色差が強調され、例えば、異常部と正常部との色の差が強調された画像となる。
【0077】
以上のように、内視鏡画像に対し各種の方法の画像処理を行うことにより、複数種類の候補画像を生成する。第n候補画像生成部86は、n種類目の候補画像を生成する。画像処理の方法又は内容は、上記に限らない。例えば、色差拡張処理の他、構造強調処理等の強調処理を行っても良い。内視鏡画像に対する強調処理の有無又は強調処理の種類により、候補画像の種類を区別し、区別した候補画像をそれぞれ1種の候補画像として取得する。なお、強調処理を実施する内視鏡画像は、第1画像処理から第n画像処理のうちいずれか1つの画像処理を行った後のものでも、行わないものでもよい。
【0078】
構造強調処理は、観察対象における血管が強調されて表された内視鏡画像となるように、取得した内視鏡画像に対して行う処理である。具体的には、内視鏡画像としては、第1照明光を発して得られたB1画像信号、G1画像信号、及びR1画像信号、又は、第2照明光を発して得られたB2画像信号、G2画像信号、及びR2画像信号のいずれかを用いる。構造強調処理では、取得した内視鏡画像において、横軸に画素値(輝度値)を、縦軸に頻度を取ったグラフである濃度ヒストグラムを求め、画像処理部56のメモリ(図示せず)等に予め記憶しておいた階調補正テーブルにより、階調補正を行う。階調補正テーブルは、横軸が入力値を、縦軸が出力値を表し、入力値と出力値の対応関係を示す階調補正カーブを有しており、例えば、略S字形状の階調補正カーブに基づいて階調補正を行って、取得した内視鏡画像のダイナミックレンジを広げる。これにより、構造強調の強調処理前の原画像において濃度が低い部分は、濃度がより低く、濃度が高い部分はより高くなるため、例えば、血管領域と血管が存在しない領域の濃度差が広がって、血管のコントラストが向上する。したがって、構造強調処理により処理された内視鏡画像は、血管のコントラストが向上され、血管の構造の視認性が高められており、より容易に、また、精度良く、例えば、血管の密集度が高い領域を特定領域として判定等に好ましく用いることができる。
【0079】
また、候補画像取得部71は、光源部20が発する予め設定した波長帯域の狭帯域光を含む照明光により照明し観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像を、候補画像の1種として取得することが好ましい。したがって、複数種類の候補画像は、狭帯域光からなる照明光による内視鏡画像を少なくとも1種含むことが好ましい。狭帯域光であることが好ましい紫色光V及び/又は青色光Bを含む照明光により照明した観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像を候補画像の1種として生成してもよい。
【0080】
また、狭帯域光の狭帯域としては、480nm以下の短波であることが好ましい。さらに、狭帯域光の中心波長又はピーク波長には、410nmの波長を含むことが好ましい。さらに、狭帯域光は、1つの狭帯域のみをもつ単色光であることが好ましい。さらに、狭帯域光を主成分とした内視鏡画像に対し色付けを行った内視鏡画像を、候補画像の1種として取得することが好ましい。
【0081】
狭帯域光を主成分とした内視鏡画像に対し色付けを行った内視鏡画像は、例えば、特定の単色光で観察対象を撮影した特定色画像を、複数の色チャンネルに割り当て、かつ、各々の色チャンネルのバランスを調節することにより、特定色画像からカラー画像を生成する方法により得られる。なお、この場合、色付けは、L色空間において、観察対象を写す観察対象像のうち相対的に低周波数の成分の色と、観察対象像のうち相対的に高周波数の成分の色と、の距離を拡大することが好ましい。このような内視鏡画像に基づく候補画像は、観察対象像に対応して色付けを調整することにより、例えば、ズーム画像等において、血管等の微細な特定の構造がより把握しやすい内視鏡画像とすることができる。また、人間にとって視認しやすい内視鏡画像とすることに加え、色付けを調整することにより、コンピュータによる解析処理にとって良好な解析結果が得られる内視鏡画像とすることができるため、好ましい。
【0082】
特定の狭帯域光を含む照明光により、例えば、特定の粘膜の深さに存在する血管、特定の太さ等の血管、又は、腺管等、特定の構造等が強調された候補画像が得られる。なお、候補画像における強調とは、人の視覚に対する強調のみならず、コンピュータがCAD等を行う場合に対する強調も含む。したがって、CAD等を用いた場合に良好な解析処理結果が得られるように強調した候補画像であることが好ましい。生成した複数種類の候補画像は、第1解析処理部72に送られる。図20に示すように、例えば、第1候補画像と、第2候補画像と、第5候補画像との、3種類の候補画像を取得する。図20等では、「候補画像取得:」等により、右欄に記載の各処理について、左欄において説明する記載を行っている。
【0083】
第1解析処理部72は、複数種類の候補画像のうち予め設定した1または複数種類の候補画像に対し、第1解析処理を行う。第1解析処理を行う候補画像の種類の数は、任意に設定する。候補画像をk種類取得した場合、第1解析処理を行う候補画像の種類は1からkまでのいずれかである。ここで、kは、2以上の整数である。第1解析処理を行う候補画像の種類も、予め設定することができる。
【0084】
第1解析処理により得られる第1解析処理結果は、複数種類の候補画像から少なくとも1種類の候補画像を選択するために用いられる。選択した候補画像に対し第2解析処理部74が第2解析処理を行う。第2解析処理部74が第2解析処理を行う対象として選択した少なくとも1種の候補画像を、最適画像とする。最適画像に対して、第2解析処理部74が第2解析処理を行うことにより第2解析結果が得られる。第2解析処理結果は、最終的な診断支援情報としてユーザに通知等されるため、第1解析処理結果は、第2解析処理によって良好な結果が得られる最適画像を選択できるものであることが好ましい。第1解析処理結果は、診断支援情報であることが好ましい。第1解析処理結果による診断支援情報を、第1診断支援情報とする。第1解析処理を行った候補画像の数に対応して、第1診断支援情報が1つ又は複数得られる。
【0085】
第1解析処理結果は、候補画像に基づく情報であり、例えば、先端部12dと観察対象との距離、又は、候補画像の全体もしくは特定領域の明るさ等の候補画像から得られる情報のほか、観察対象が含む、粘膜等の被写体名、部位名、疾患名、特定の構造名、又は、処置具等の生体由来でない物体名である。また、病変又は疾患に関して、有無、指標値、位置もしくは領域、正常領域との境界線、確率、進行度、又は重症度とすることができる。また、候補画像に写る観察対象における病理状態等の特定の状態、出血、又は治療痕とすることができる。部位名としては、候補画像に写る特徴的な部位であることが好ましく、例えば、上部消化管であれば、食道部、噴門部、胃穹窿部、胃体部、幽門部、胃角部、又は十二指腸球部等であり、大腸であれば、盲腸、回盲部、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、又は直腸等である。特定の構造としては、血管、腺管、ポリープもしくはがん等の隆起部、又は陥没部等であり、生体由来でない物体としては、内視鏡に付属可能な生検鉗子、スネア、もしくは異物摘出デバイス等の処置具、又は腹腔鏡手術に用いる腹腔用処置具等である。病変又は疾患名としては、上部消化管又は大腸の内視鏡検査において見られる病変又は疾患が挙げられ、例えば、炎症、発赤、出血、潰瘍、もしくはポリープ、又は、胃炎、バレット食道、がんもしくは潰瘍性大腸炎等である。生体情報の値とは、観察対象の生体情報の値であり、例えば、酸素飽和度、血管密集度、又は、色素による蛍光の値等である。
【0086】
また、第1診断支援情報は、判定又は鑑別結果であってもよい。判定又は鑑別としては、腫瘍と非腫瘍等の鑑別、各種疾患のステージ又は重症度、メイヨースコア(Mayo Score)、又はゲボススコア(Geboes Score)等の、各種スコアであってもよい。
【0087】
Mayoスコアは潰瘍性大腸炎の内視鏡的重症度を示すスコアであり、内視鏡を用いた大腸における患部の所見により、疾患の特徴の有無及び程度等から、グレード0及び1の軽症、グレード2の中等症またはグレード3の重症のいずれかに判定する。例えば、グレード0をMayo0と表記する。したがって、診断支援情報は、Mayo0からMayo3のいずれかである。
【0088】
また、Geboesスコアは潰瘍性大腸炎の病理学的重症度を示すスコアであり、顕微鏡を用いた生検組織の所見により、疾患の特徴の有無及び程度等から、Geboes0の軽症ステージから、Geboes0からGeboes2Aの病理的寛解、Geboes2BからGeboes5の病理的非寛解のいずれかに判定する。したがって、診断支援情報は、Geboes0からGeboes5、又は、Geboes2AもしくはGeboes2Bのいずれかである。
【0089】
また、例えば、胃がんにおけるステージは、病変の観察及び生検等により、腫瘍の深さ及び転移の状態を総合的に判定し、ステージIからIVまでに分類する。したがって、診断支援情報は、ステージIからステージIVのいずれかである。
【0090】
また、第1解析処理結果は、候補画像から得られる電子ズーム率等の撮影条件を含む。また、場合によっては、通信によるHIS(Hospital Information System:病院情報システム)、RIS(Radiology Information System:放射線情報システム)等の情報管理サーバ、又は、PACS(Picture Archiving and Communication System for medical application:医療画像保管通信システム)等の画像サーバからの情報であってもよい。また、画像解析処理により得られる第1解析処理結果自体の確度等も含む。
【0091】
第1解析処理部72は、複数種類の候補画像に対して同じ方法により第1解析処理を行ってもよいが、複数種類の候補画像の種類毎に互いに異なる方法により第1解析処理を行ってもよい。候補画像の種類によって、画像解析処理により良好な結果を得ることができる第1解析処理結果の種類が異なる場合があるためである。第1解析処理を候補画像の種類毎に行うことにより、候補画像に適した画像解析処理を行うことができ、最終的により高い精度で診断支援情報が得られる最適画像を選択できるため好ましい。候補画像の種類毎に行う第1解析処理は、それぞれ独立に、並列して実施することが好ましい。
【0092】
この場合、図21に示すように、第1解析処理部72は、候補画像の種類毎に設けた、第1画像第1解析処理部91、第2画像第1解析処理部92、第3画像第1解析処理部93、第4画像第1解析処理部94、第5画像第1解析処理部95、及び第n画像第1解析処理部96の各第1解析処理部を備える。nは6以上の整数であり、候補画像の種類の数に応じた数の各画像用の第1解析処理部を備える。第1画像第1解析処理部91は、第1候補画像に対して第1解析処理を行う。同様に、第2画像第1解析処理部92は、第2候補画像に対して第1解析処理を行い、第3画像第1解析処理部93は、第3候補画像に対して第1解析処理を行い、第4画像第1解析処理部94は、第4候補画像に対して第1解析処理を行い、第5画像第1解析処理部95は、第5候補画像に対して第1解析処理を行い、また、第n画像第1解析処理部96は、第n候補画像に対して第1解析処理を行う。例えば、予め第1解析処理を行う対象を、第1候補画像、第2候補画像及び第5候補画像の3種類であると設定した場合、第1候補画像と、第2候補画像と、第5候補画像との3種類の候補画像を取得した場合では、それぞれ第1画像第1解析処理部91、第2画像第1解析処理部92、及び第5画像第1解析処理部95の3個の第1解析処理部において、第1解析処理を行う。
【0093】
なお、複数種類の候補画像に対して同じ方法により第1解析処理を行う場合は、各第1解析処理部が、互いに異なる種類の候補画像の解析処理を行ってもよい。すなわち、各第1解析処理部は、互いに異なる種類の候補画像に対して共通して用いられても良い。
【0094】
第1解析処理の方法としては、第1解析処理結果として第1診断支援情報が得られる方法を用いることができ、例えば、候補画像の画素値及び/又は輝度値等の画像に基づく値を用いる方法、画像から算出した酸素飽和度、もしくは血管密集度等の生体情報の値を用いる方法、候補画像が備える撮影条件等の情報を用いる方法、又は、観察対象における特定状態と、特定状態を含む観察対象を撮影することにより得た候補画像とを、予め対応付けた対応情報を用いる方法等が挙げられる。
【0095】
なお、観察対象における特定状態とは、第1診断支援情報の例と同様とすることができる。第1解析処理部72は、観察対象の特定状態と、特定状態である観察対象を撮影することにより得た候補画像とを、予め対応付けた対応情報を取得する対応情報取得部(図示せず)を備えることが好ましい。対応情報は、予め観察対象の特定状態が判明している場合に、この観察対象を撮影することにより得た候補画像と、観察対象の特定状態又は特定状態の領域等の情報等を対応させた情報である。第1解析処理部72又は各第1解析処理部は、対応情報に基づき、新たに取得した候補画像に対する第1解析処理を行うことが好ましい。
【0096】
図22に示すように、特定状態について未知である新たに取得した候補画像を対応情報取得部に入力することにより、対応情報取得部が備える候補画像と観察対象の特定状態とが対応付けられた対応情報を用いて、新たに取得した候補画像における特定状態を推定して第1解析処理結果として出力することができる。また、対応情報取得部は、それぞれ新たに取得した候補画像と、推定により出力した第1解析処理結果が含む特定状態とを、対応情報としてさらに取得する学習を行ってもよい。
【0097】
対応情報は、第1画像第1解析処理部91から第n画像第1解析処理部96までのそれぞれの第1解析処理部において、それぞれ備えることが好ましい。候補画像の種類毎に、特定の種類の特定状態が対応付けられた対応情報取得部を備えることにより、各種類の候補画像が画像認識処理により良好な結果を得ることができる。
【0098】
例えば、候補画像の種類が血管を強調した候補画像である第2候補画像である場合、第2候補画像に対応する第1解析処理は、第2画像第1解析処理部92において実施する。第2画像第1解析処理部92は、観察対象の血管に関する特定状態に関する対応情報を含む対応情報取得部を備える。対応情報取得部は、対応情報に基づき第2候補画像の第1解析処理を行い、この第2候補画像が含む観察対象の特定状態に関する領域等の詳細を出力する。なお、特定状態に関する詳細等の出力には、「特定状態を含まない」といった内容も含む。
【0099】
各対応情報取得部は、例えば、機械学習における学習済みモデルである。より迅速にかつ高い精度で、新たに取得した候補画像における観察対象の特定状態が第1解析処理結果として得られることから、機械学習による学習済みモデルを対応情報取得部として用いた第1解析処理を行うことが好ましい。本実施形態においては、各対応情報取得部として、機械学習における学習済みモデルを用いて観察対象の特定状態を出力するための第1解析処理を行う。なお、この場合、学習済みモデルは、それぞれの種類の候補画像について学習したものを用いることが、良好な解析処理結果を得るために好ましい。したがって、例えば、第1画像第1解析処理部91が備える対応情報と、第2画像第1解析処理部92が備える対応情報とは、互いに異なる学習済みモデルであることが好ましい。
【0100】
図23に示すように、例えば、第1画像第1解析処理部91、第2画像第1解析処理部92、及び第5画像第1解析処理部95の3個の第1解析処理部において、それぞれ第1候補画像、第2候補画像、及び第5候補画像の第1解析処理を学習済みモデルを用いて行い、それぞれの第1解析処理部より第1診断支援情報が得られ、計3個の第1診断支援情報が得られる。
【0101】
最適画像選択部73は、第1解析処理により得られる第1解析結果に基づいて、候補画像取得部71が取得した複数種類の候補画像から少なくとも1種類の候補画像を最適画像として選択する。第1解析処理は、1又は複数種類の候補画像に対して行うため、第1解析処理を行った候補画像の数に対応して、第1解析処理結果である第1診断支援情報が1又は複数個得られる。第1診断支援情報が複数個得られる場合は、これらを総合したものを第1診断支援情報とする。
【0102】
最適画像を選択する方法としては、各種の方法を用いることができる。例えば、第1診断支援情報と、複数種類の候補画像のうち第2解析処理に最も好ましい候補画像の種類とを対応付けた対応テーブルを、予め用意して用いることができる。
【0103】
なお、光源部20が、発光周期を繰り返す場合、最適画像選択部73は、1回の発光周期において得られる複数種類の候補画像から、少なくとも1つの最適画像を選択することが好ましい。これにより、発光周期が切り替わる度に、常に最新の最適画像が選択され、最新の診断支援情報が得られるため好ましい。
【0104】
図24に示すように、例えば、候補画像を3種類取得して、第1診断支援情報が3個得られた場合、第1診断支援情報は、観察対象の被写体名及び先端部12dと観察対象との距離であり、具体的には、3個の第1診断支援情報のすべてが、被写体名が「粘膜」であり、先端部12dと観察対象との距離が「遠景」であったとする。最適画像選択部73は、3個の第1診断支援情報を総合して、被写体名が「粘膜」であり、先端部12dと観察対象との距離が「遠景」であるとして、最適画像選択部73が備える対応テーブル(図示せず)を用いて、最適画像として、例えば、1種類の候補画像の第1候補画像を選択する。
【0105】
第2解析処理部74は、最適画像に対し第2解析処理を行うことにより第2解析処理結果を得る。第2解析処理結果は、最終的な診断支援情報としてユーザに通知等される。第2解析処理結果は、診断支援情報であることが好ましい。第2解析処理結果による診断支援情報を、第2診断支援情報とする。第2解析処理は、通常、1つ選択した候補画像である最適画像に対して行うため、第2診断支援情報は1つ得られる。
【0106】
第2診断支援情報の詳細は、第1診断支援情報と同様とすることができる。また、第2解析処理部74は、最適画像とされた候補画像の種類毎に互いに異なる方法により第2解析処理を行ってもよい。第1解析処理と同様、候補画像の種類によって、画像解析処理により良好な結果を得ることができる第2診断支援情報の種類が異なる場合があるためである。第2解析処理を候補画像の種類毎に行うことにより、より高い精度で第2診断支援情報が得られるため好ましい。
【0107】
この場合、図25に示すように、第2解析処理部74は、候補画像の種類毎に設けた、第1画像第2解析処理部101、第2画像第2解析処理部102、第3画像第2解析処理部103、第4画像第2解析処理部104、第5画像第2解析処理部105、及び第n画像第2解析処理部106を備える。nは6以上の整数であり、候補画像の種類の数に応じた数の各画像用の第2解析処理部を備える。第1画像第2解析処理部101は、最適画像が第1候補画像である場合に第2解析処理を行う。第2画像第2解析処理部102以降も同様である。
【0108】
第2解析処理の方法としては、第2解析処理結果として第2診断支援情報が得られる方法を用いることができ、第1解析処理の方法と同様とすることができる。なお、場合によっては、第1解析処理部72が第2解析処理部74を兼ねてもよいが、迅速に第2診断支援情報を得るためには、第1解析処理と第2解析処理とは独立して実施することが好ましい。また、第1解析処理と第2解析処理とは、互いに異なる内容の解析処理であることが好ましい。同じ内容の解析処理を採用することにより同じ内容の診断支援情報を得る場合は、同様の解析処理を2度行うことになり無駄な時間を要するおそれがあるためである。
【0109】
また、第2診断支援結果は、疾患に関する判定又は鑑別結果であることが好ましい。第2診断支援結果は、最終的な診断支援結果として、医師等のユーザに通知され、医師等は、この第2診断支援結果を参考として、観察対象について診断をしながら内視鏡検査を行うためである。第2診断支援結果は、例えば、疾患に関する指標値、疾患のステージに関する指標値、疾患のステージ、疾患の重症度、観察対象の病理状態、又は、疾患位置であることが好ましい。
【0110】
第2診断支援情報は、例えば、潰瘍性大腸炎の内視鏡的重症度の指標であるMayoスコアである。この場合、第2診断支援情報は、Mayoスコアの0から3のいずれかである。また、例えば、第2診断支援情報は、潰瘍性大腸炎の病理ステージの指標であるGeboesスコアである。この場合、第2診断支援情報は、Geboes0からGeboes5、又は、Geboes2AもしくはGeboes2Bのいずれかである。また、例えば、第2診断支援情報は、胃がんにおけるステージである。したがって、この場合、第2診断支援情報は、ステージIからIVまでのいずれかである。
【0111】
疾患の重症度または進行度は、治療方針の決定等において重要な判断材料となる。特に、重症度に応じた内科的治療が中心となる潰瘍性大腸炎等は、発症早期の的確な診断が重要であるため、内視鏡システム10等により、内視鏡検査により重症度を高い精度で決定することは有益である。
【0112】
また、第1解析処理と第2解析処理とは、予め設定された内容により組み合わせて行うことが好ましい。第1解析処理結果が選択する候補画像は、第2解析処理において、より高い精度の第2診断支援情報を第2解析処理結果として得ることが好ましい。したがって、好ましい第1解析処理の内容と第2解析処理の内容とが予め設定できる場合がある。例えば、第1解析処理による第1解析処理結果が、観察対象の被写体名及び先端部12dと観察対象との距離である場合、近距離の場合は、注目領域等の詳細な観察を行っている可能性があり、粘膜表層の微細な構造等が写る内視鏡画像である可能性があることから、第2解析処理は、疾患の生体情報、ステージもしくは重症度の判定、又は正常部と境界線を含む病変部の領域を第2解析処理結果として得る種類の解析処理の方法を採用することが好ましい。一方、遠距離の場合は、全体の性状を観察するスクリーニングを行っている可能性があり、部位の全体的な状態が写る内視鏡画像である可能性があることから、部位名又は病変又は疾患の領域等を第2解析処理結果として得る種類の解析処理の方法を採用することが好ましい。
【0113】
なお、先端部12dと観察対象との距離が近距離という場合、候補画像は、ズームを用いた拡大観察により得られる内視鏡画像である場合がある。図26に示すように、例えば、最適画像として第1候補画像が選択された場合、第1画像第2解析処理部101が第2解析処理を行う。第2解析処理の結果、第2解析処理結果である第2診断支援情報を得る。
【0114】
表示画像生成部75は、ディスプレイ18に表示する表示画像を生成する。表示画像は、複数種類の候補画像のうち少なくとも1種類の候補画像に基づく内視鏡画像であり、表示画像はディスプレイ18に表示する。表示画像をどの種類の候補画像とするかは、予め設定できる。ディスプレイに表示する表示画像は、医師等のユーザが見て診断又は検査の方針の決定等を行うものであるため、人間にとって視認性が良い内視鏡画像であることが好ましい。例えば、図27に示すように、表示画像を、白色光を用いた通常観察画像と同種の第1候補画像とする場合は、表示画像生成部75は、通常観察画像処理部61と同様に、必要な画像処理を行って、表示画像を生成する。生成した表示画像は、表示制御部57に送る。
【0115】
表示制御部57は、通常観察モードの場合には、通常観察画像をディスプレイ18に表示し、特殊観察モードの場合には、特殊観察画像をディスプレイ18に表示する。また、診断支援モードの場合には、表示画像をディスプレイ18に表示する制御を行う。表示画像は、継続してディスプレイ18に表示することが好ましい。なお、診断支援モードにおいて、表示画像として表示はされないが、取得されているその他の候補画像を、指示により切り替えて、表示画像としてディスプレイ18に表示するようにしてもよい。図28に示すように、例えば、表示画像111は、ディスプレイ18に、現在のモード名であるモード名表示112、又は、表示画像の元となる候補画像の種類を示す内視鏡画像種類名表示113とともに表示する。
【0116】
以上のように構成することにより、画像処理装置として機能するプロセッサ装置16、又は画像処理装置を備える内視鏡システム10は、複数種類の候補画像から予め設定した種類の候補画像から第1診断支援情報を得た上で、第1診断支援情報を用いて第2解析処理を行う最適画像を決定するため、撮影により得た内視鏡画像を選択せずに、これらから得られる情報により解析処理を行う画像を選択する場合と比較して、解析処理を行う画像を選択する時間を省くことができる。また、第1解析処理による第1診断支援情報の個数が少ない場合であっても、第2解析処理において好ましい処理結果を得るための第1診断支援情報の内容を設定できるため、最終的に得られる診断支援情報である第2診断支援情報の精度が高い。したがって、画像処理装置として機能するプロセッサ装置16、又は画像処理装置を備える内視鏡システム10は、CADによる診断支援情報を迅速にかつ高い精度で得ることができる。特に、重症度に応じた内科的治療が中心となる潰瘍性大腸炎等に対しては、発症早期の的確な診断が重要であるため、重症度を高い精度で決定することが有益であり、内視鏡システム10等を好ましく用いることができる。
【0117】
なお、第2解析処理結果は、ユーザに通知できればよいため、ディスプレイ18に表示する他、音声等で通知してもよいが、表示制御部57は、第2解析処理結果をディスプレイ18に表示する制御を行うことが好ましい。ディスプレイ18への表示形態は、ユーザに、表示画像の視認性の妨げにならず、かつ、ひと目で把握できる形態であることが好ましい。したがって、第2解析処理結果である第2診断支援情報を、ディスプレイ18の表示画像111以外の領域に表示してもよいし、表示画像111に対し画像処理を行うことにより、第2診断支援情報を表示画像111に重畳することにより表示してもよい。図29に示すように、例えば、第2解析処理結果が、第2診断支援情報であって、Mayoスコアである場合、病変の領域とスコアの数値とを、表示画像111に重畳して、色付けした枠表示114と短いテキスト表示115とにより示してもよい。
【0118】
第2解析処理結果がディスプレイ18に表示されることにより、ユーザは、信頼性の高い診断支援情報を、迅速にひと目で把握することができる。また、表示画像が通常観察画像による診断では判別がつきにくい病変であっても、解析処理に適した最適画像に対し解析処理が行われているため、病変の見逃しを防止することができる。なお、第2解析処理結果が表示画像111に表示された後、ユーザは、表示画像の種類を、第2解析処理結果に示された病変の詳細観察を行いやすい種類の内視鏡画像に迅速に切り替えて、詳細に観察することができる。
【0119】
特に、表示画像111としていない種類の候補画像に表示画像111を切り替える場合は、表示はされていないがすでにその種類の候補画像は得られているため、迅速に切り替えて表示画像とすることができる。
【0120】
また、候補画像取得部71は、光源部20が発する白色の照明光により照明した観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像を、候補画像の1種として取得することが好ましい。白色の照明光による内視鏡画像は、人間にとって自然な色として認識できる画像であるため、表示画像とすることにより、医師等のユーザが内視鏡検査をスムーズに行うことができる。
【0121】
なお、光源部20が、第1照明期間中に第1照明光を第1発光パターンにより発し、第2照明期間中に第2照明光を第2発光パターンにより発し、かつ、第1照明光と第2照明光とを切り替える光源用プロセッサと、第1照明光によって照明された観察対象を撮影して得られる第1内視鏡画像と、第2照明光によって照明された観察対象を撮影して得られる第2内視鏡画像とを出力する撮像センサとを備える場合、候補画像取得部71は、第1内視鏡画像と第2内視鏡画像とを候補画像として取得することが好ましい。これにより、第1発光パターンと第2発光パターンとを組み合わせて、種々の照明光による複数種類の候補画像を得ることができるため、好ましい。
【0122】
なお、第1解析処理部72は、複数種類の候補画像のうち予め設定した1種類の候補画像に対し、第1解析処理を行ってもよい。この場合の実施形態を以下に説明する。図30に示すように、第1候補画像と、第2候補画像と、第5候補画像との、3種類の候補画像を取得した。第1候補画像は、白色光により得られる通常表示画像と同じ内視鏡画像であり、第2候補画像は、疑似カラー処理により、表層血管など特定深さの血管又は構造が強調された内視鏡画像であり、第5候補画像は、色差強調画像であり、異常部と正常部との色の差が強調された内視鏡画像である。これらの候補画像は、潰瘍性大腸炎罹患患者の大腸内視鏡診断において撮影された内視鏡画像に基づくものである。
【0123】
図31に示すように、これらの候補画像のうち、表示画像生成部75は、第1候補画像に基づいて、表示画像111を生成する。したがって、ディスプレイ18には、第1候補画像に基づく表示画像111が表示される。また、第1解析処理部72は、予め設定した1種類の候補画像である第1候補画像に対し、学習済みモデルによる第1解析処理を第1画像第1解析処理部91により行い、第1診断支援情報として、観察対象の被写体名及び先端部12dと観察対象との距離を得る。具体的には、第1診断支援情報として、観察対象の被写体名として「粘膜」、及び、先端部12dと観察対象との距離として「遠景」の情報を得る。
【0124】
第1診断支援情報は、最適画像選択部73に送る。最適画像選択部73は、第1解析処理により得られる第1解析結果に基づいて、候補画像取得部71が取得した第1候補画像と、第2候補画像と、第5候補画像との、3種類の候補画像から、第5候補画像を最適画像として選択する。最適画像選択部73は、第5候補画像が色差強調処理がなされた内視鏡画像であり、観察条件が遠景である場合の診断に有効であるとの情報を予め有する。最適画像選択部73が選択した第5候補画像は、第2解析処理部74に送る。第2解析処理部74は、選択された第5候補画像に基づいて、第2解析処理を行い、第2解析処理結果として、第2診断支援情報を得た。具体的には、第2解析処理部74は、第5候補画像に対し、機械学習による学習済みモデルを用いて、粘膜の状態から、潰瘍性大腸炎用の内視鏡的重症度の指標であるMayoスコアを「3」と算出し、これを第2診断支援情報とする。
【0125】
表示制御部57は、ディスプレイ18に第1候補画像に基づく表示画像111を継続して表示する制御を行うが、第2解析処理部74により第2解析処理結果が得られ次第、表示画像111に第2解析処理結果である第2診断支援情報を重畳するように、表示画像111の画像処理を行う。具体的には、第2診断支援情報は、「Mayoスコア:3」であるので、表示画像111の右下部分に、「Mayo:3」との診断支援情報表示116により表示する。
【0126】
また、別の場合の実施形態を以下に説明する。図32に示すように、第1候補画像と、第2候補画像と、第5候補画像との、3種類の候補画像を取得した。第1候補画像、第2候補画像、又は第5候補画像は、上記にて説明したのと同様である。これらの候補画像は、潰瘍性大腸炎罹患患者の大腸内視鏡診断において撮影された内視鏡画像に基づくものである。
【0127】
図33に示すように、これらの候補画像のうち、表示画像生成部75は、第1候補画像に基づいて、表示画像111を生成する。したがって、ディスプレイ18には、第1候補画像に基づく表示画像111が表示される。また、第1解析処理部72は、予め設定した1種類の候補画像である第1候補画像に対し、学習済みモデルによる第1解析処理を第1画像第1解析処理部91により行い、第1診断支援情報として、観察対象の被写体名及び先端部12dと観察対象との距離を得た。具体的には、第1診断支援情報として、観察対象の被写体名として「粘膜」、及び、先端部12dと観察対象との距離として「近景」の情報を得る。
【0128】
第1診断支援情報は、最適画像選択部73に送る。最適画像選択部73は、第1解析処理により得られる第1解析結果に基づいて、候補画像取得部71が取得した第1候補画像と、第2候補画像と、第5候補画像との、3種類の候補画像から、第2候補画像を最適画像として選択した。最適画像選択部73は、第2候補画像が疑似カラー処理がなされ、表層血管の血管又は構造が強調された内視鏡画像であり、観察条件が近景である場合の診断に有効であるとの情報を予め有する。最適画像選択部73が選択した第2候補画像は、第2解析処理部74に送る。第2解析処理部74は、選択された第2候補画像に基づいて、第2解析処理を行い、第2解析処理結果として、第2診断支援情報を得る。具体的には、第2解析処理部74は、第2候補画像に対し、機械学習による学習済みモデルを用いて、粘膜の状態から、潰瘍性大腸炎用の病理ステージの指標であるGeboesスコアを「3」と算出し、これを第2診断支援情報とする。
【0129】
表示制御部57は、ディスプレイ18に第1候補画像に基づく表示画像111を継続して表示する制御を行うが、第2解析処理部74により第2解析処理結果が得られ次第、表示画像111に第2解析処理結果である第2診断支援情報を重畳するように、表示画像111の画像処理を行う。具体的には、第2診断支援情報は、「Geboesスコア:3」であるので、表示画像111の右下部分に、「Geboes:3」との診断支援情報表示116により表示する。
【0130】
以上のように、内視鏡システム10等によれば、内視鏡検査において、特に、重症度に応じた内科的治療が中心となる潰瘍性大腸炎等に対し、発症早期の的確な診断が重要であることから、これらの重症度を、自動的に、迅速に、かつ、高い精度で決定することができる。
【0131】
次に、画像解析処理装置であるプロセッサ装置16又は内視鏡システム10が行う診断支援情報の表示のための処理の一連の流れについて、図34に示すフローチャートに沿って説明を行う。候補画像取得部71が、複数種類の候補画像を取得する(ステップST110)。表示画像生成部75が、複数種類の候補画像のうち少なくとも1種類の候補画像に基づいて表示画像を生成する(ステップST120)。表示制御部57が、表示画像をディスプレイ18に表示する制御を行う(ステップST130)。
【0132】
第1解析処理部72により第1解析処理を行うために、予め設定した種類の候補画像を選択する(ステップST140)。選択した候補画像に対し、第1解析処理を行う(ステップST150)。第1解析処理により第1解析処理結果を得る(ステップST160)。最適画像選択部73が、第1解析処理結果に基づいて、複数種類の候補画像から少なくとも1種類の最適画像を選択する(ステップST170)。選択された最適画像に対し、第2解析処理部74が、第2解析処理を行う(ステップST180)。第2解析処理により第2解析処理結果を得る(ステップST190)。表示制御部57が、第2解析処理結果を表示画像に重畳してディスプレイ18に表示する制御を行う(ステップST200)。
【0133】
なお、表示画像生成部75が表示画像を生成するステップST120と表示制御部57がディスプレイに表示画像を表示する制御を行うステップST130とは、第1解析処理を行うために予め設定した種類の候補画像を選択するステップST140と、並行して行っても良い。
【0134】
上記実施形態及び変形例等においては、プロセッサ装置16が画像処理装置として機能するが、プロセッサ装置16とは別に、画像処理部56を含む画像処理装置を設けてもよい。この他、図35に示すように、画像処理部56は、例えば内視鏡システム10から直接的に、または、PACS(Picture Archiving and Communication Systems)910から間接的に、内視鏡12で撮影したRAW画像を取得する診断支援装置911に設けることができる。また、図36に示すように、内視鏡システム10を含む、第1検査装置921、第2検査装置922、…、第K検査装置923等の各種検査装置と、ネットワーク926を介して接続する医療業務支援装置930に、画像処理部56を設けることができる。
【0135】
上記各実施形態及び変形例は、その一部または全部を任意に組み合わせて実施することができる。また、上記各実施形態及び変形例においては、内視鏡12は可撓性の挿入部12aを有するいわゆる軟性内視鏡を用いているが、観察対象が嚥下して使用するカプセル型の内視鏡、外科手術等に使用する硬性内視鏡(腹腔鏡)を用いる場合も本発明は好適である。
【0136】
上記実施形態及び変形例等は、コンピュータに、内視鏡を用いて観察対象を撮影することにより得られる内視鏡画像に基づく複数種類の候補画像を取得する候補画像取得機能と、複数種類の候補画像のうち少なくとも1種類の候補画像に基づく表示画像をディスプレイに表示する制御を行う表示制御機能と、複数種類の候補画像のうち予め設定した1または複数種類の候補画像に対し第1解析処理を行う第1解析処理機能と、第1解析処理により得られる第1解析処理結果に基づいて、複数種類の候補画像から少なくとも1種類の候補画像を最適画像として選択する最適画像選択機能と、最適画像に対し第2解析処理を行うことにより診断支援情報を得る第2解析処理機能とを実現させるための画像処理装置用プログラムを含む。
【0137】
上記実施形態において、画像処理装置であるプロセッサ装置16に含まれる中央制御部51、画像取得部52、画像処理部56、及び表示制御部57といった各種の処理を実行する画像用プロセッサ又は光源用プロセッサ22等の処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA (Field Programmable Gate Array) などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、各種の処理を実行するために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0138】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGAや、CPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0139】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた形態の電気回路(circuitry)である。
【0140】
なお、本発明は、内視鏡画像を取得等する内視鏡システム、プロセッサ装置、その他関連する装置等の他に、内視鏡画像以外の医療画像(動画を含む)を取得するシステムまたは装置等においても利用できる。例えば、本発明は、超音波検査装置、X線画像撮影装置(CT(Computed Tomography)検査装置及びマンモグラフィ装置等を含む)、MRI(magnetic resonance imaging)装置、等に適用できる。
【符号の説明】
【0141】
10 内視鏡システム
12 内視鏡
12a 挿入部
12b 操作部
12c 湾曲部
12d 先端部
12e アングルノブ
12f スコープボタン1番
12g スコープボタン2番
12h ズーム操作部
14 光源装置
16 プロセッサ装置
18 ディスプレイ
19 キーボード
20 光源部
20a V-LED
20b B-LED
20c G-LED
20d R-LED
22 光源用プロセッサ
30a 照明光学系
30b 撮影光学系
41 ライトガイド
42 照明レンズ
43 対物レンズ
44 ズームレンズ
45 イメージセンサ
46 撮影用プロセッサ
51 中央制御部
52 画像取得部
53 DSP
54 ノイズ低減部
55 変換部
56 画像処理部
57 表示制御部
61 通常観察画像処理部
62 特殊観察画像処理部
63 診断支援画像処理部
71 候補画像取得部
72 第1解析処理部
73 最適画像選択部
74 第2解析処理部
75 表示画像生成部
81 第1候補画像生成部
82 第2候補画像生成部
83 第3候補画像生成部
84 第4候補画像生成部
84a 酸素飽和度用信号比算出部
84b 酸素飽和度算出用テーブル
84c 酸素飽和度算出部
84d 酸素飽和度画像生成部
85 第5候補画像生成部
85a 色差拡張用信号比算出部
85b 色差拡張処理部
85c 色差拡張画像生成部
86 第n候補画像生成部
91 第1画像第1解析処理部
92 第2画像第1解析処理部
93 第3画像第1解析処理部
94 第4画像第1解析処理部
95 第5画像第1解析処理部
96 第n画像第1解析処理部
101 第1画像第2解析処理部
102 第2画像第2解析処理部
103 第3画像第2解析処理部
104 第4画像第2解析処理部
105 第5画像第2解析処理部
106 第n画像第2解析処理部
111 表示画像
112 モード名表示
113 内視鏡画像種類名表示
114 枠表示
115 テキスト表示
116 診断支援情報表示
910 PACS
911 診断支援装置
921 第1検査装置
922 第2検査装置
923 第K検査装置
926 ネットワーク
930 医療業務支援装置
P1 第1照明期間
P2 第2照明期間
FL フレーム
L1 第1照明光
L2a、L2b 第2照明光
Q1、Q2、Q3、Q4、Q5 発光周期
SP1、SP2、SP3、SP4 第2照明光用分光スペクトル
A1、A2 範囲
ELx、EL1、EL2、EL3、EL4、ELy 酸素飽和度の等値線
ST110~ST200 ステップ
図1
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図36