(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-09
(45)【発行日】2025-07-17
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/704 20060101AFI20250710BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20250710BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20250710BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20250710BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20250710BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20250710BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250710BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250710BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20250710BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250710BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20250710BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20250710BHJP
A61K 31/245 20060101ALI20250710BHJP
【FI】
A61K31/704
A61K31/135
A61K31/355
A61K31/05
A61K31/19
A61P29/00
A61P17/00
A61P43/00 121
A61K47/10
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/107
A61K31/245
(21)【出願番号】P 2020176857
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】大森 広太郎
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-197201(JP,A)
【文献】特開2019-156772(JP,A)
【文献】特開平09-157167(JP,A)
【文献】特開2018-197203(JP,A)
【文献】JEADV,2020年06月,34,e549-e552,https://doi.org/10.1111/jdv.16689
【文献】Acta Derm. Venereol.,2020年05月,100,adv00152, page 1-5,doi: 10.2340/00015555-3536
【文献】Contact Dermatitis,2020年05月,83,pp.166-167,https://doi.org/10.1111/cod.13599
【文献】薬理と治療,1996年,24(10),pp.2185-2189
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00-9/72
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウフェナマート、(B)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(C)トコフェロール、トコフェロールとカルボン酸とのエステル体、及びトコフェロールとリン酸とのジエステル体よりなる群から選択される少なくとも1種
、(D)イソプロピルメチルフェノール、
並びに(E)グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種のグリチルレチン酸類を含有する、マスク着用に起因する炎症の改善用の外用組成物(但し、スクワランを含む場合を除く)。
【請求項2】
更に、(F)多価アルコールを含む、請求項
1に記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク着用に起因する炎症を改善するための外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、感染症の発症頻度が増加しており、感染症に対する予防意識が高まっている。感染症の予防のためにマスクの着用が有効であると考えられており、感染症拡大防止のためにマスクの着用が義務づけられる場面も増えている。一方、マスクの着用によって、マスクで覆われている部位がマスクによる摩擦を受けるため、マスクの頻繁な着用は、皮膚炎等の皮膚トラブルをもたらすことが問題になっている。
【0003】
従来、マスク着用による皮膚トラブルを抑制する技術について報告されている。例えば、特許文献1には、膏体基剤中に加水分解シルク液、加水分解シルクエチル液、加水分解シルク末から選択される繭由来成分を配合した半固形製剤又は液剤を、マスク本体に塗布することによって、マスク着用後の肌の炎症の軽減と回復が促されることが報告されている。しかしながら、特許文献1の技術は、あくまで、特定組成の製剤をマスクに塗布することにより花粉やウイルスが侵入し難くして花粉やウイルスに起因する炎症を抑制しているに過ぎず、マスク着用に起因して生じる皮膚炎を改善するものではない。
【0004】
一方、マスク着用により生じる皮膚炎の改善には、抗炎症薬を含む外用組成物を塗布することが有効になるが、従来、マスク着用に起因する炎症の改善用途に使用される外用組成物については、十分な検討はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マスク着用時には、汗や息にとってマスク内でムレが生じ易いため、マスク着用に起因する炎症改善用の外用組成物には、マスクで覆われている顔面部位の衛生保持のために、抗炎症作用を示す成分と共に、殺菌剤を含有させることが望ましい。また、マスクを頻繁に着用すると、マスクで覆われている顔面部位が刺激に対して過敏になる傾向があり、マスク着用に起因する炎症改善用の外用組成物に殺菌剤を含有させる場合、皮膚への刺激性を低減させることも重要になる。
【0007】
本発明者は、マスク着用に起因する炎症改善用の外用組成物を開発すべく検討を行ったところ、ウフェナマートと、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩と、トコフェロール及び/又はその誘導体と共に、塩化ベンザルコニウムを含有させた外用組成物を、マスク着用により生じた皮膚炎部位に適用すると、皮膚への刺激性があり、皮膚炎の改善効果も満足できるものではなかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、マスク着用に起因する炎症改善用の外用組成物であって、殺菌剤を含みながらも、皮膚への刺激性が低く、マスク着用により生じた皮膚炎の改善効果に優れた外用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、マスク着用に起因する炎症改善用の外用組成物において、ウフェナマートと、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩と、トコフェロール及び/又はその誘導体と共にイソプロピルメチルフェノールを含有させると、皮膚への刺激性が低く、しかもマスク着用により生じた皮膚炎を効果的に改善できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ウフェナマート、(B)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(C)トコフェロール及び/又はその誘導体、並びに(D)イソプロピルメチルフェノールを含有する、マスク着用に起因する炎症の改善用の外用組成物。
項2. 更に、(E)グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、それらの誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種のグリチルレチン酸類を含有する、項1に記載の外用組成物。
項3. 更に、(F)多価アルコールを含む、項1又は2に記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の外用組成物は、皮膚への刺激性が低く、しかもマスク着用に起因する炎症を効果的に改善できるので、マスクを頻繁に着用したり、長時間着用したりしても、マスクによる摩擦等で生じる炎症を抑え、マスクで覆われている顔面部位を健常な皮膚状態に維持ないし回復させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の外用組成物は、マスク着用に起因する炎症の改善用途に使用されるものであって、(A)ウフェナマート、(B)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩、(C)トコフェロール及び/又はその誘導体、並びに(D)イソプロピルメチルフェノールを含有することを特徴とする。以下、本発明の外用組成物について説明する。
【0013】
[(A)ウフェナマート]
本発明の外用組成物は、ウフェナマート((A)成分と表記することもある)を含有する。ウフェナマートは、フルフェナム酸ブチルとも称され、水難溶性の非ステロイド性抗炎症薬として公知の成分である。
【0014】
本発明の外用組成物における(A)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば1~20重量%、好ましくは2~10重量%が挙げられる。マスク着用に起因する炎症の改善効果と皮膚への刺激低減効果とをより一層向上させるという観点から、(A)成分の含有量として、好ましくは3~10重量%、より好ましくは3~7重量%が挙げられる。
【0015】
[(B)ジフェンヒドラミン及び/又はその塩]
本発明の外用組成物は、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩((B)成分と表記することもある)を含有する。ジフェンヒドラミンは、抗ヒスタミン作用があることが知られている公知の成分である。
【0016】
ジフェンヒドラミンの塩としては、薬学的に許容されるものである限り特に制限されないが、具体的には、塩酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、サリチル酸塩、ジフェニルジスルホン酸塩、タンニン酸塩、ラウリル硫酸塩、硫酸塩等の酸付加塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
本発明の外用組成物において、(B)成分として、ジフェンヒドラミン及びその塩の中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
(B)成分の中でも、マスク着用に起因する炎症の改善効果と皮膚への刺激低減効果とをより一層向上させるという観点から、好ましくはジフェンヒドラミン及びジフェンヒドラミン塩酸塩が挙げられる。
【0019】
本発明の外用組成物において、(B)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、0.01~5重量%が挙げられる。マスク着用に起因する炎症の改善効果と皮膚への刺激低減効果とをより一層向上させるという観点から、(B)成分の含有量として、好ましくは0.1~3重量%、更に好ましくは0.1~2重量%が挙げられる。
【0020】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率は、(A)成分及び(B)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(B)成分が0.01~1.2重量部が挙げられる。マスク着用に起因する炎症の改善効果と皮膚への刺激低減効果とをより一層向上させるという観点から、(A)成分1重量部当たり、(B)成分が、好ましくは0.05~0.8重量部、更に好ましくは0.1~0.5重量部が挙げられる。
【0021】
[(C)トコフェロール及び/又はその誘導体]
本発明の外用組成物は、トコフェロール及び/又はその誘導体((C)成分と表記することもある)を含有する。トコフェロールは、ビタミンEとして知られる公知の成分である。
【0022】
トコフェロールの誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、酢酸、ニコチン酸、コハク酸等のカルボン酸とのエステル体、リン酸とのジエステル体等が挙げられる。また、トコフェロールの誘導体は、d体、l体、dl体のいずれであってもよいが、好ましくはdl体が挙げられる。更に、トコフェロールの誘導体は、α体、β体、γ体、δ体のいずれであってもよいが、好ましくはα体が挙げられる。
【0023】
本発明の外用組成物において、(C)成分として、トコフェロール及びその誘導体の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
(C)成分の中でも、マスク着用に起因する炎症の改善効果と皮膚への刺激低減効果とをより一層向上させるという観点から、好ましくはトコフェロールの誘導体、より好ましくはトコフェロールのカルボン酸とのエステル体、更に好ましくは酢酸トコフェロール、特に好ましくは酢酸d-α-トコフェロール、酢酸l-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロールが挙げられる。
【0025】
本発明の外用組成物において、(C)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、0.05~2重量%が挙げられる。マスク着用に起因する炎症の改善効果と皮膚への刺激低減効果とをより一層向上させるという観点から、(C)成分の含有量として、好ましくは0.1~2重量%、より好ましくは0.1~1.3重量%、更に好ましくは0.3~0.8重量%が挙げられる。
【0026】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率は、(A)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(C)成分が0.01~1重量部が挙げられる。マスク着用に起因する炎症の改善効果と皮膚への刺激低減効果とをより一層向上させるという観点から、(A)成分1重量部当たり、(C)成分が、好ましくは0.03~0.5重量部、更に好ましくは0.05~0.3重量部が挙げられる。
【0027】
[(D)イソプロピルメチルフェノール]
本発明の外用組成物は、イソプロピルメチルフェノール((D)成分と表記することもある)を含有する。イソプロピルメチルフェノールは殺菌剤として公知の成分である。本発明の外用組成物では、殺菌剤の中からイソプロピルメチルフェノールを選択して、前記(A)~(C)成分と組み合わせて含有させることにより、皮膚への刺激性が低く、しかもマスク着用により生じた皮膚炎を効果的に改善することが可能になる。
【0028】
本発明の外用組成物において、(D)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、0.001~5重量%が挙げられる。殺菌効果を奏させつつ、マスク着用に起因する炎症の改善効果と皮膚への刺激低減効果とをより一層向上させるという観点から、(D)成分の含有量として、好ましくは0.005~1重量%、更に好ましくは0.05~0.5重量%が挙げられる。
【0029】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する(D)成分の比率は、(A)成分及び(D)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(D)成分が0.0001~0.1重量部が挙げられる。マスク着用に起因する炎症の改善効果と皮膚への刺激低減効果とをより一層向上させるという観点から、(A)成分1重量部当たり、(D)成分が、好ましくは0.005~0.5重量部、更に好ましくは0.01~0.1重量部が挙げられる。
【0030】
[(E)グリチルレチン酸類]
本発明の外用組成物は、前述する成分に加えて、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、それらの誘導体、及びそれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種のグリチルレチン酸類((E)成分と表記することもある)を含んでいてもよい。本発明の外用組成物が更にグリチルレチン酸類を含むことにより、マスク着用に起因する炎症の改善効果と皮膚への刺激低減効果とをより一層向上させることが可能になる。
【0031】
グリチルレチン酸は、抗炎症作用や抗アレルギー作用等を有することが知られている公知の薬剤である。
【0032】
グリチルレチン酸の誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド等が挙げられる。これらのグリチルレチン酸の誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
グリチルリチン酸は、抗炎症作用や抗アレルギー作用等を有することが知られている公知の薬剤である。
【0034】
グリチルリチン酸の誘導体としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル等が挙げられる。これらのグリチルリチン酸の誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
グリチルリチン酸、グリチルレチン酸及び/又はその誘導体の塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩等が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本発明の外用組成物において、(E)成分として、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、これらの誘導体、及びそれらの塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
(E)成分の中でも、マスク着用に起因する炎症の改善効果と皮膚への刺激低減効果とをより一層向上させるという観点から、好ましくはグリチルレチン酸、グリチルリチン酸の塩、好ましくはグリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウムが挙げられる。
【0038】
本発明の外用組成物に(E)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.05~5重量%が挙げられる。マスク着用に起因する炎症の改善効果と皮膚への刺激低減効果とをより一層向上させるという観点から、(E)成分の含有量として、好ましくは0.1~1重量%、更に好ましくは0.2~0.5重量%が挙げられる。
【0039】
本発明の外用組成物に(E)成分を含有させる場合、(A)成分に対する(E)成分の比率は、(A)成分及び(E)成分の各含有量に応じて定まるが、例えば、(A)成分1重量部当たり、(E)成分が0.01~0.9重量部が挙げられる。マスク着用に起因する炎症の改善効果と皮膚への刺激低減効果とをより一層向上させるという観点から、(A)成分1重量部当たり、(E)成分が、好ましくは0.03~0.5重量部、更に好ましくは0.05~0.1重量部が挙げられる。
【0040】
[(F)多価アルコール]
本発明の外用組成物は、前述する成分に加えて、多価アルコール((F)成分と表記することがある)を含んでいてもよい。
【0041】
本発明で使用される多価アルコールについては、皮膚に適用可能であることを限度として、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0042】
本発明の外用組成物において、(F)成分としては、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
(F)成分の中でも、好ましくは1,3-ブチレングリコール、グリセリンが挙げられる。また、(F)成分の好適な一例として、1,3-ブチレングリコールとグリセリンとの組み合わせが挙げられる。(F)成分として、1,3-ブチレングリコールとグリセリンとを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、1,3-ブチレングリコール1重量部当たり、グリセリンが0.01~100重量部、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.2~5重量部が挙げられる。
【0044】
本発明の外用組成物に(F)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、(F)成分の総量で0.5~30重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは5~15重量%が挙げられる。
【0045】
[その他の成分]
本発明の外用組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでもよい。このような薬理成分としては、例えば、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、鎮痒剤、皮膚保護剤、血行促進成分、清涼化剤、ビタミン類、ムコ多糖類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の外用組成物において、これらの薬理成分を含有させる場合、その含有量については、使用する薬理成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0046】
また、本発明の外用組成物は、所望の製剤形態に調製するために、前述する成分の他に、必要に応じて、皮膚外用剤等に通常使用される他の基剤や添加剤を含んでもよい。このような基材や添加剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、水、低級アルコール等の水性基剤;油類、鉱物油、ワックス類・ロウ類、エステル油、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸、脂肪酸エステル、高級アルコール、コレステロール等の油性基剤;界面活性剤、清涼化剤、防腐剤、着香剤、着色剤、粘稠剤、pH調整剤、湿潤剤、安定化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、粘着剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。これらの基剤や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の外用組成物において、これらの基剤や添加剤を含有させる場合、その含有量については、使用する基剤や添加の種類、製剤形態等に応じて適宜設定すればよい。
【0047】
[剤型・製剤形態]
本発明の外用組成物の剤型については、マスクで覆われている顔面部位に対して経皮適用可能であることを限度として特に制限されず、液状、固形状、半固形状(クリーム状、ゲル状、軟膏状、ペースト状)等のいずれであってもよい。また、本発明の外用組成物は、水中油型乳化製剤、油中水型乳化製剤等の乳化製剤であってもよく、また可溶化型製剤、水性軟膏等の非乳化製剤であってもよい。
【0048】
また、本発明の外用組成物の製剤形態については、マスクで覆われている顔面部位に対して経皮適用可能されるものであることを限度として特に制限されないが、例えば、クリーム剤、軟膏剤、乳液剤、ゲル剤、油剤、ローション剤、リニメント剤、エアゾール剤等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、乳液剤、ローション剤が挙げられ、より好ましくは、ゲル剤、クリーム剤が挙げられる。
【0049】
[用途・使用方法]
本発明の外用組成物は、マスク着用に起因する皮膚炎の改善用途に使用される。本発明において、マスク着用に起因する皮膚炎の改善用途には、マスク着用に起因する炎症の予防、緩和又は治癒させる目的で使用される態様が含まれる。また、マスク着用に起因する炎症とは、マスクで覆われている顔面部位がマスクによる摩擦等を受けて生じる炎症(接触性皮膚炎)である。マスク着用に起因する炎症には、かぶれ、かゆみ、皮膚の赤み、肌荒れ、ぶつぶつ、かさつき、ニキビ等の症状が含まれる。本発明の外用組成物は、マスク着用に起因する、かぶれ、かゆみ、皮膚の赤み、肌荒れ、ぶつぶつ、又はかさつきの改善用途に特に好適に使用される。
【0050】
また、本発明の外用組成物は、マスクの着用前、着用中、又は着用後に、マスクで覆われる顔面部位に適量塗布又は噴霧することによって使用される。本発明の外用組成物の適用量については、剤型、製剤形態、皮膚炎の程度等に応じて適宜設定すればよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
試験例1
表1に示す組成の外用組成物(水中油型の乳化型クリーム剤)を調製した。マスクの頻繁な着用によって、マスクで覆われていた顔面部位に炎症が生じている被験者12名に、比較例1の外用組成物0.2gを顔面左側に、実施例1の外用組成物0.2gを顔面右側に、1日2回(起床後の洗顔後、就寝前)の頻度で1週間塗布させた。被験者は、いずれも、マスクで覆われていた顔面部位において、マスク着用に起因する「かぶれ」、「かゆみ」、「赤み」、「肌荒れ・ぶつぶつ」、及び「かさつき」を訴えていた。なお、被験者は各外用組成物を塗布している1週間の試験期間中も、1日9時間以上マスクを着用した。外用組成物の塗布開始から1週間後、マスク着用に起因する「かぶれ」、「かゆみ」、「赤み」、「肌荒れ・ぶつぶつ」、及び「かさつき」の各項目について、満足、やや満足、どちらでもない、やや不満、及び不満の5段階評価で、各被験者に改善度を評価させ、満足又はやや満足と評価した被験者の割合を算出し、小数点第一位を四捨五入した値を改善度(%)として求めた。
【0053】
また、実施例1及び比較例1の各外用組成物50μLをパッチテスト用絆創膏にセットして上腕内側に貼付し、24時間閉塞パッチテストを行った。24時間閉塞パッチテストでは、健常者30名を対象として行い、陽性者数(紅斑が認められた者の数)を求め、以下の基準で皮膚への刺激性を評価した。
・皮膚への刺激性の判定基準
◎:陽性者数が0~1名
〇:陽性者数が2~3名
△:陽性者数が4~6名
×:陽性者数が7~30名
【0054】
結果を表1に示す。ウフェナマート、ジフェンヒドラミン、及びトコフェロール酢酸エステルと共に塩化ベンザルコニウムを含む外用組成物(比較例1)では、マスク着用に起因する炎症の改善効果が低く、24時間閉塞パッチテストでの陽性者数も多く、皮膚への刺激性が認められた。これに対して、ウフェナマート、ジフェンヒドラミン、及びトコフェロール酢酸エステルと共にイソプロピルメチルフェノールを含む外用組成物(実施例1)では、マスク着用に起因する炎症の改善効果が格段に優れており、皮膚への刺激性も十分に低減できていた。
【0055】
【0056】
試験例2
表2に示す組成の外用組成物(水中油型の乳化型クリーム剤)を調製した。マスクの頻繁な着用によって、マスクで覆われていた顔面部位に炎症が生じている被験者12名を対象として、前記試験例1と同条件で、各外用組成物のマスク着用に起因する炎症の改善度を評価した。更に、健常者30名を対象として、前記試験例1と同条件で、各外用組成物の皮膚への刺激性を評価した。
【0057】
結果を表2に示す。試験例1の結果と同様に、ウフェナマート、ジフェンヒドラミン、及びトコフェロール酢酸エステルを含む外用組成物において、塩化ベンザルコニウムを配合した場合(比較例2)には、マスク着用に起因する炎症の改善効果が低く、皮膚への刺激性も認められたが、イソプロピルメチルフェノールを配合した場合(実施例2)には、マスク着用に起因する炎症の改善効果が顕著に高く、しかも皮膚への刺激性が低減されていた。
【0058】
【0059】
処方例
表3に示す組成の外用組成物(水中油型の乳化型クリーム剤)を調製した。また、比較のために、表3に示す組成の外用組成物において、イソプロピルメチルフェノールを同量の塩化ベンザルコニウムに置換した比較用外用組成物(水中油型の乳化型クリーム剤)も調製した。これらの外用組成物を使用して、試験例1と同条件で、各外用組成物のマスク着用に起因する炎症の改善度と各外用組成物の皮膚への刺激性を評価した。その結果、表3に示す各外用組成物は、それぞれ対応する比較用外用組成物と比較して、マスク着用に起因する炎症の改善効果が顕著に高く、皮膚への刺激性も十分に低減できていた。
【0060】