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特許7714445レジスト下層膜材料、パターン形成方法、及びレジスト下層膜形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-18
(45)【発行日】2025-07-29
(54)【発明の名称】レジスト下層膜材料、パターン形成方法、及びレジスト下層膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20250722BHJP
   C08F 38/00 20060101ALI20250722BHJP
   C08F 16/12 20060101ALI20250722BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20250722BHJP
【FI】
G03F7/11 503
C08F38/00
C08F16/12
H01L21/30 573
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021190440
(22)【出願日】2021-11-24
(65)【公開番号】P2023077221
(43)【公開日】2023-06-05
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】小林 直貴
(72)【発明者】
【氏名】郡 大佑
(72)【発明者】
【氏名】山本 靖之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕典
(72)【発明者】
【氏名】矢野 俊治
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206676(JP,A)
【文献】特開2016-167047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
C08F 38/00
C08F 16/12
H01L 21/027
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層レジスト法に用いられるレジスト下層膜材料であって、(A)下記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂、及び(B)有機溶剤を含有し、前記一般式(1A)で示される化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.25であり、前記一般式(1A)中、Xは下記一般式(1B)で示される基であり、前記一般式(1B)中、Rは水素原子、炭素数1~10の有機基、及び下記一般式(1C)で示される構造のいずれかであり、前記Rを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~10の有機基又は前記一般式(1C)で示される構造の割合をbとした場合、(A)成分全体でa+b=1、0.2≦b≦0.8の関係を満たすものであることを特徴とするレジスト下層膜材料。
【化1】
【化2】
(一般式(1B)中、nは0又は1であり、nは1又は2であり、Rは水素原子、炭素数1~10の有機基、及び下記一般式(1C)で示される構造のいずれかであり、前記Rを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~10の有機基又は前記一般式(1C)で示される構造の割合をbとした場合、(A)成分全体でa+b=1、0.2≦b≦0.8の関係を満たすものである。Xは下記一般式(1D)で示される基であり、nは0、1、又は2である。)
【化3】
(一般式(1C)中、*は酸素原子への結合部位を表し、Rは炭素数1~10の2価の有機基、Rは水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)
【化4】
(一般式(1D)中、Rは水素原子又は炭素数1~10の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、一般式(1D)中のベンゼン環上の水素原子はメチル基又はメトキシ基に置換されていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1B)中、Rの構成成分が、水素原子および下記一般式(1F)のいずれかで構成されるものであることを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜材料。
【化5】
(前記一般式(1F)中、*は酸素原子への結合部位を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1A)で示される化合物の重量平均分子量が、2,500以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項4】
前記レジスト下層膜材料が、更に(C)架橋剤を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項5】
前記(C)架橋剤の含有量は、前記(A)樹脂の質量部100に対して5~50質量部であることを特徴とする請求項4に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項6】
前記レジスト下層膜材料が、更に(D)界面活性剤、(E)酸発生剤、(F)可塑剤、及び(G)色素のうち1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項7】
前記(B)有機溶剤が、高沸点溶剤を含有するものであり、前記高沸点溶剤の沸点が180℃以上の有機溶剤1種以上であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項8】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I-1)被加工基板上に、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を塗布後、熱処理することによりレジスト下層膜を形成する工程、
(I-2)前記レジスト下層膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I-3)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(I-4)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(I-5)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II-1)被加工基板上に、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を塗布後、熱処理することによりレジスト下層膜を形成する工程、
(II-2)前記レジスト下層膜上に、レジスト中間膜を形成する工程、
(II-3)前記レジスト中間膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(II-4)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト中間膜にパターンを転写する工程、
(II-6)前記パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(II-7)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(III-1)被加工基板上に、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を塗布後、熱処理することによりレジスト下層膜を形成する工程、
(III-2)前記レジスト下層膜上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成する工程、
(III-3)前記無機ハードマスク中間膜上に、有機薄膜を形成する工程、
(III-4)前記有機薄膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(III-5)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(III-6)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記有機薄膜及び前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写する工程、
(III-7)前記パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(III-8)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項11】
前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
半導体装置の製造工程で使用される有機平坦膜として機能するレジスト下層膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を回転塗布し、該レジスト下層膜材料を塗布した基板を100℃以上600℃以下の温度で10~600秒間の範囲で熱処理することにより硬化膜を形成することを特徴とするレジスト下層膜形成方法。
【請求項13】
半導体装置の製造工程で使用される有機平坦膜として機能するレジスト下層膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を回転塗布し、該レジスト下層膜材料を塗布した基板を酸素濃度1%以上21%以下の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成することを特徴とするレジスト下層膜形成方法。
【請求項14】
半導体装置の製造工程で使用される有機平坦膜として機能するレジスト下層膜の形成方法であって、被加工基板上に請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を回転塗布し、該レジスト下層膜材料を塗布した基板を酸素濃度1%未満の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成することを特徴とするレジスト下層膜形成方法。
【請求項15】
前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造工程における多層レジスト法による微細パターニングに用いられるレジスト下層膜材料、該材料を用いたパターン形成方法、及びレジスト下層膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。その中心となったのは単層で使用するポジ型フォトレジスト組成物である。この単層ポジ型フォトレジスト組成物は、塩素系あるいはフッ素系のガスプラズマによるドライエッチングに対しエッチング耐性を持つ骨格をレジスト樹脂中に持たせ、かつ露光部が溶解するようなスイッチング機構を持たせることによって、露光部を溶解させてパターンを形成し、残存したレジストパターンをエッチングマスクとして被加工基板をドライエッチング加工するものである。
【0003】
ところが、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、フォトレジスト膜の解像性能が低下し、また現像液によりフォトレジスト膜をパターン現像しようとすると、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎ、結果としてパターン崩壊が起こってしまうという問題が発生した。このため、パターンの微細化に伴いフォトレジスト膜は薄膜化されてきた。
【0004】
一方、被加工基板の加工には、通常、パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより基板を加工する方法が用いられるが、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法が存在しない。そのため、基板の加工中にフォトレジスト膜もダメージを受けて崩壊し、レジストパターンを正確に被加工基板に転写できなくなるという問題があった。そこで、パターンの微細化に伴い、レジスト組成物により高いドライエッチング耐性が求められてきた。しかしながら、その一方で、解像性を高めるために、フォトレジスト組成物に使用する樹脂には、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められてきた。そのため、露光光がi線、KrF、ArFと短波長化するにつれて、樹脂もノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂と変化してきたが、現実的には基板加工時のドライエッチング条件におけるエッチング速度は速いものになってきてしまっており、解像性の高い最近のフォトレジスト組成物は、むしろエッチング耐性が弱くなる傾向にある。
【0005】
このことから、より薄くよりエッチング耐性の弱いフォトレジスト膜で被加工基板をドライエッチング加工しなければならないことになり、この加工工程における材料及びプロセスの確保は急務になってきている。
【0006】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜(即ち、レジスト上層膜)とエッチング選択性が異なるレジスト中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングによりレジスト中間膜にパターンを転写し、更にレジスト中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0007】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この3層レジスト法では、例えば、被加工基板上にノボラック樹脂等による有機膜をレジスト下層膜として成膜し、その上にケイ素含有レジスト中間膜をレジスト中間膜として成膜し、その上に通常の有機系フォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを行う際には、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジスト上層膜パターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングによりケイ素含有レジスト中間膜に転写することができる。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンを形成することが難しいレジスト組成物や、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持たないレジスト組成物を用いても、ケイ素含有レジスト中間膜(レジスト中間膜)にパターンを転写することができ、続いて酸素系又は水素系ガスプラズマによるドライエッチングによるパターン転写を行えば、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持つノボラック樹脂等による有機膜(レジスト下層膜)のパターンを得ることができる。上述のようなレジスト下層膜としては、例えば特許文献1に記載のものなど、すでに多くのものが公知となっている。
【0008】
一方、近年においては、DRAMメモリの微細化が加速しており、ドライエッチング耐性に加え、優れた埋め込み特性あるいは平坦化特性を有する下層膜の必要性が高まってきている。例えば、下地の被加工基板に高アスペクト比の微細パターン構造体がある場合、パターン内を空隙(ボイド)なく膜で埋め込む埋め込み特性が必要になる。また、上記のような微細パターン密集部分とパターンのない領域が同一ウエハー上に存在する場合、レジスト下層膜により表面を平坦化する必要がある。レジスト下層膜により表面を平坦化することによって、その上に成膜するレジスト中間膜やレジスト上層膜の膜厚変動を抑え、リソグラフィーのフォーカスマージンやその後の被加工基板の加工工程のマージンを拡大することができる。さらに、レジスト下層膜の上に形成する無機ハードマスク中間膜としては、反射防止膜としての効果が高いSiON膜が好ましく用いられるが、SiON膜を形成するときの基板温度は400~500℃となるために、レジスト下層膜には500℃以上の高温耐性が求められる。また、プロセスの複雑化により、レジスト下層膜材料上に400~500℃の高温処理を要するハードマスクを複数回形成する方法も利用されており、より優れた高温耐性を有するレジスト下層膜材料が必要とされている。
【0009】
レジスト下層膜材料の埋め込み/平坦化特性を向上させる手法として、ポリエーテルポリオール等の液状添加剤の添加が提案されている(特許文献2)。しかしながら、上記方法により形成したレジスト下層膜には、エッチング耐性に劣るポリエーテルポリオール単位が大量に含まれるため、エッチング耐性が大幅に低下してしまい、レジスト下層膜としては不適である。
【0010】
埋め込み/平坦化特性とエッチング耐性を高次元で並立したレジスト下層膜としては、三重結合を含む基で水酸基を保護した特許文献3、特許文献4及び特許文献5に記載される化合物が提案されている。しかしながら、これらの材料は被加工基板に対する密着性が不十分なため、微細化の進んだ先端世代における高アスペクト比の微細パターン構造の密集部ではプロセス中に剥がれ等の不良が発生する懸念がある。このため、高アスペクト比の微細パターン構造の密集部を、基板との剥がれなく、埋め込み/平坦化できる材料が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2004-205685号公報
【文献】特許6550760号公報
【文献】特許6641879号公報
【文献】特許6714493号公報
【文献】特許6462602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、良好なドライエッチング耐性を有するとともに、500℃以上の耐熱特性、及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つレジスト下層膜材料、この材料を用いたレジスト下層膜形成方法、及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明では、多層レジスト法に用いられるレジスト下層膜材料であって、(A)下記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂、及び(B)有機溶剤を含有し、前記一般式(1A)で示される化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.25であり、前記一般式(1A)中、Xは下記一般式(1B)で示される基であり、前記一般式(1B)中、Rは水素原子、炭素数1~10の有機基、及び下記一般式(1C)で示される構造のいずれかであり、前記Rを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~10の有機基又は前記一般式(1C)で示される構造をbとした場合、(A)成分全体でa+b=1、0.2≦b≦0.8の関係を満たすものであるレジスト下層膜材料を提供する。
【化1】
【化2】
(一般式(1B)中、nは0又は1であり、nは1又は2であり、Rは水素原子、炭素数1~10の有機基、及び下記一般式(1C)で示される構造のいずれかであり、前記Rを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~10の有機基又は前記一般式(1C)で示される構造をbとした場合、(A)成分全体でa+b=1、0.2≦b≦0.8の関係を満たすものである。Xは下記一般式(1D)で示される基であり、nは0、1、又は2である。)
【化3】
(一般式(1C)中、*は酸素原子への結合部位を表し、Rは炭素数1~10の2価の有機基、Rは水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)
【化4】
(一般式(1D)中、Rは水素原子又は炭素数1~10の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、一般式(1D)中のベンゼン環上の水素原子はメチル基又はメトキシ基に置換されていてもよい。)
【0014】
このようなレジスト下層膜材料であれば、良好なドライエッチング耐性を有するとともに、500℃以上の耐熱特性、及び高度な埋め込み/平坦化特性を併せ持つレジスト下層膜材料を提供できる。また、一般式(1B)のRを構成する上記有機構造の割合bをこのような範囲に制御することで、埋め込み/平坦化特性と剥がれ耐性を高度に並立することが可能である。
【0015】
また、本発明では、前記一般式(1B)中、Rの構成成分が、水素原子および下記一般式(1F)のいずれかで構成されるものであることが好ましい。
【化5】
(前記一般式(1F)中、*は酸素原子への結合部位を表す。)
【0016】
このようなレジスト下層膜材料であれば、流動性に優れるため、高度な埋め込み/平坦化特性を有するレジスト下層膜材料を提供できる。
【0017】
また、前記一般式(1A)で示される化合物の重量平均分子量が、2,500以下であることが好ましい。
【0018】
上記一般式(1A)で示される化合物の重量平均分子量が上記のようなものであれば、レジスト下層膜材料の熱流動性が更に良好なものとなるため、レジスト下層膜材料に配合した際に、基板上に形成されている微細構造を良好に埋め込むことが可能になるだけでなく、基板全体が平坦となるレジスト下層膜を形成することができる。
【0019】
また、本発明では、前記レジスト下層膜材料が、更に(C)架橋剤を含有するものであることが好ましい。
【0020】
また、前記(C)架橋剤の含有量は、前記(A)樹脂の質量部100に対して5~50質量部であることが好ましい。
【0021】
このような範囲で(C)架橋剤が含まれることで、上記(A)樹脂に含まれる水酸基との硬化反応が十分に進行し、緻密な膜を形成することができるため、500℃以上の耐熱特性に優れたレジスト下層膜を形成することができる。
【0022】
また、本発明では、前記レジスト下層膜材料が、更に(D)界面活性剤、(E)酸発生剤、(F)可塑剤、及び(G)色素のうち1種以上を含有するものであることが好ましい。
【0023】
本発明のレジスト下層膜材料では、必要に応じて、上記のような添加剤の有無/選択により、スピンコーティングによる塗布成膜性、硬化温度、埋め込み/平坦化特性、及び光学特性(吸光特性)など要求に応じた性能の微調整が可能となり、実用上好ましい。
【0024】
また、本発明では、前記(B)有機溶剤が、高沸点溶剤を含有するものであることが好ましい。
【0025】
また、この時、前記高沸点溶剤の沸点が180℃以上の有機溶剤1種以上であることが好ましい。
【0026】
このようなレジスト下層膜材料であれば、流動性が上昇するため、埋め込み/平坦化特性が更に良好なものとなる。
【0027】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I-1)被加工基板上に、上記に記載のレジスト下層膜材料を塗布後、熱処理することによりレジスト下層膜を形成する工程、
(I-2)前記レジスト下層膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I-3)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(I-4)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(I-5)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有するパターン形成方法を提供する。
【0028】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II-1)被加工基板上に、上記に記載のレジスト下層膜材料を塗布後、熱処理することによりレジスト下層膜を形成する工程、
(II-2)前記レジスト下層膜上に、レジスト中間膜を形成する工程、
(II-3)前記レジスト中間膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(II-4)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト中間膜にパターンを転写する工程、
(II-6)前記パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(II-7)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有するパターン形成方法を提供する。
【0029】
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(III-1)被加工基板上に、上記に記載のレジスト下層膜材料を塗布後、熱処理することによりレジスト下層膜を形成する工程、
(III-2)前記レジスト下層膜上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成する工程、
(III-3)前記無機ハードマスク中間膜上に、有機薄膜を形成する工程、
(III-4)前記有機薄膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(III-5)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(III-6)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記有機薄膜及び前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写する工程、
(III-7)前記パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(III-8)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有するパターン形成方法を提供する。
【0030】
このように、本発明のレジスト下層膜材料は、2層レジストプロセス、レジスト中間膜を用いた3層レジストプロセスや、これらに加えて有機薄膜を用いた4層レジストプロセスなどの種々のパターン形成方法に好適に用いることができ、これらのパターン形成方法であれば、レジスト下層膜形成により被加工基板の凹凸、段差を効果的に緩和でき、レジスト上層膜のフォトリソグラフィーに好適である。
【0031】
また、本発明のパターン形成方法において、前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることができる。
【0032】
本発明のパターン形成方法は、高度な埋め込み/平坦化特性を有するレジスト下層膜を形成することができる本発明のレジスト下層膜材料を用いるため、特にこのような構造体又は段差を有する基板の微細加工に有用である。
【0033】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される有機平坦膜として機能するレジスト下層膜の形成方法であって、被加工基板上に上記に記載のレジスト下層膜材料を回転塗布し、該レジスト下層膜材料を塗布した基板を100℃以上600℃以下の温度で10~600秒間の範囲で熱処理することにより硬化膜を形成するレジスト下層膜形成方法を提供する。
【0034】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される有機平坦膜として機能するレジスト下層膜の形成方法であって、被加工基板上に上記に記載のレジスト下層膜材料を回転塗布し、該レジスト下層膜材料を塗布した基板を酸素濃度1%以上21%以下の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成するレジスト下層膜形成方法を提供する。
【0035】
このような方法により、レジスト下層膜形成時の架橋反応を促進させ、レジスト上層膜とのミキシングをより高度に抑制することができる。また、熱処理温度、時間及び酸素濃度を上記範囲の中で適宜調整することにより、用途に適したレジスト下層膜の埋め込み/平坦化特性、硬化特性を得ることができる。
【0036】
また、本発明では、半導体装置の製造工程で使用される有機平坦膜として機能するレジスト下層膜の形成方法であって、被加工基板上に上記に記載のレジスト下層膜材料を回転塗布し、該レジスト下層膜材料を塗布した基板を酸素濃度1%未満の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成するレジスト下層膜形成方法を提供する。
【0037】
このような方法により、被加工基板が酸素雰囲気下での加熱に不安定な素材を含む場合であっても、被加工基板の劣化を起こすことなく、レジスト下層膜形成時の架橋反応を促進させ、レジスト上層膜とのミキシングをより高度に抑制することができ有用である。
【0038】
また、この時、前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることができる。
【0039】
本発明のレジスト下層膜形成方法は、高度な埋め込み/平坦化特性を有するレジスト下層膜を形成することができる本発明のレジスト下層膜材料を用いるため、特にこのような構造体又は段差を有する基板上にレジスト下層膜を形成するのに好適である。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように、本発明のレジスト下層膜材料、パターン形成方法、及びレジスト下層膜形成方法は、段差、凹凸のある被加工基板の埋め込み/平坦化を含む、多層レジストプロセスに特に好適に用いられ、半導体装置製造用の微細パターニングにおいて極めて有用である。特に、半導体装置製造工程における多層レジスト法を用いた微細パターニングプロセスにおいて、微細化の進むDRAMメモリに代表される高アスペクト比の微細パターン構造の密集部など、埋め込み/平坦化が困難な部分を有する被加工基板上であっても、ボイドや剥がれ等の不良を生じることなく埋め込むことが可能であり、平坦特性に優れたレジスト下層膜を形成することができる。
【0041】
埋め込み/平坦化特性を向上させる手法としては、先行技術特許6641879号公報や、特許6714493号公報で報告されている三重結合を含む化合物が知られているが、これらの材料は被加工基板に対する密着性が不十分なため、微細化の進んだ先端世代における高アスペクト比の微細パターン構造の密集部では、プロセス中に剥がれ等の不良が発生する懸念がある。高アスペクト比の微細パターン構造の密集部では、レジスト下層膜と基板の接触面積が大きくなるため、レジスト下層膜には基板との良好な密着性が必要となる。さらに、近年のデバイス製造プロセスでは、プロセスの複雑化により、レジスト下層膜材料上に400~500℃の高温処理を要するハードマスクを複数回形成する方法も利用されており、より優れた高温耐性を有するレジスト下層膜材料が必要とされている。これに対して、本発明のレジスト下層膜材料では、流動性向上に寄与するアリル基やプロパルギル基などの有機基と、基板密着性及び耐熱特性の向上に寄与する水酸基の割合を制御した(1A)で示される化合物を有する樹脂を用いることで、埋め込み/平坦化特性と基板密着性、及び耐熱特性を高度に兼ね備えた材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明のパターン形成方法の一例(3層レジストプロセス)の説明図である。
図2図2は、埋め込み特性評価方法の説明図である。
図3図3は、平坦化特性評価方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
上記のように、半導体装置製造工程における多層レジスト法を用いた微細パターニングプロセスにおいて、微細化の進むDRAMメモリに代表される高アスペクト比の微細パターン構造の密集部など、埋め込み/平坦化が困難な部分を有する被加工基板上であっても、ボイドや剥がれ等の不良を生じることなく埋め込み/平坦化が可能であり、レジスト下層膜上に高温処理を要するハードマスクの形成が可能な500℃以上の耐熱特性を有するレジスト下層膜材料が求められていた。
【0044】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、レジスト下層膜を用いた多層レジスト法において、レジスト下層膜形成による高度な埋め込み/平坦化の実現、及び優れた耐熱特性の並立を可能とするため、種々のレジスト下層膜材料、及びパターン形成方法の探索を行ってきた。その結果、特定構造を有する、水酸基と有機架橋基の割合を最適化した化合物を含むレジスト下層膜材料、及びこれを用いたパターン形成方法が非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0045】
即ち、本発明は、多層レジスト法に用いられるレジスト下層膜材料であって、(A)下記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂、及び(B)有機溶剤を含有し、前記一般式(1A)で示される化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.25であり、前記一般式(1A)中、Xは下記一般式(1B)で示される基であり、前記一般式(1B)中、Rは水素原子、炭素数1~10の有機基、及び下記一般式(1C)で示される構造のいずれかであり、前記Rを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~10の有機基又は前記一般式(1C)で示される構造をbとした場合、(A)成分全体でa+b=1、0.2≦b≦0.8の関係を満たすものであるレジスト下層膜材料である。
【化6】
【化7】
(一般式(1B)中、nは0又は1であり、nは1又は2であり、Rは水素原子、炭素数1~10の有機基、及び下記一般式(1C)で示される構造のいずれかであり、前記Rを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~10の有機基又は前記一般式(1C)で示される構造をbとした場合、(A)成分全体でa+b=1、0.2≦b≦0.8の関係を満たすものである。Xは下記一般式(1D)で示される基であり、nは0、1、又は2である。)
【化8】
(一般式(1C)中、*は酸素原子への結合部位を表し、Rは炭素数1~10の2価の有機基、Rは水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)
【化9】
(一般式(1D)中、Rは水素原子又は炭素数1~10の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、一般式(1D)中のベンゼン環上の水素原子はメチル基又はメトキシ基に置換されていてもよい。)
【0046】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
<レジスト下層膜材料>
本発明のレジスト下層膜材料は、多層レジスト法に用いられるレジスト下層膜材料であって、(A)下記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂、及び(B)有機溶剤を含有し、前記一般式(1A)で示される化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mnが、1.00≦Mw/Mn≦1.25であり、前記一般式(1A)中、Xは下記一般式(1B)で示される基であり、前記一般式(1B)中、Rは水素原子、炭素数1~10の有機基、及び下記一般式(1C)で示される構造のいずれかであり、前記Rを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~10の有機基又は前記一般式(1C)で示される構造をbとした場合、(A)成分全体でa+b=1、0.2≦b≦0.8の関係を満たすものであるレジスト下層膜材料である。
【化10】
【化11】
(一般式(1B)中、nは0又は1であり、nは1又は2であり、Rは水素原子、炭素数1~10の有機基、及び下記一般式(1C)で示される構造のいずれかであり、前記Rを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~10の有機基又は前記一般式(1C)で示される構造をbとした場合、(A)成分全体でa+b=1、0.2≦b≦0.8の関係を満たすものである。Xは下記一般式(1D)で示される基であり、nは0、1、又は2である。)
【化12】
(一般式(1C)中、*は酸素原子への結合部位を表し、Rは炭素数1~10の2価の有機基、Rは水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)
【化13】
(一般式(1D)中、Rは水素原子又は炭素数1~10の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、一般式(1D)中のベンゼン環上の水素原子はメチル基又はメトキシ基に置換されていてもよい。)
【0048】
[(A)一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂]
本発明のレジスト下層膜材料は、(A)下記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂を含有することにより、高アスペクト比の微細パターン構造の密集部など、埋め込み/平坦化が困難な部分を有する被加工基板上であっても、ボイドや剥がれ等の不良を生じることなく埋め込むことが可能であり、平坦特性に優れたレジスト下層膜を形成することができる。
【化14】
【化15】
(一般式(1B)中、nは0又は1であり、nは1又は2であり、Rは水素原子、炭素数1~10の有機基、及び下記一般式(1C)で示される構造のいずれかであり、前記Rを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~10の有機基又は前記一般式(1C)で示される構造をbとした場合、(A)成分全体でa+b=1、0.2≦b≦0.8の関係を満たすものである。Xは下記一般式(1D)で示される基であり、nは0、1、又は2である。)
【化16】
(一般式(1C)中、*は酸素原子への結合部位を表し、Rは炭素数1~10の2価の有機基、Rは水素原子又は炭素数1~10の1価の有機基である。)
【化17】
(一般式(1D)中、Rは水素原子又は炭素数1~10の飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、一般式(1D)中のベンゼン環上の水素原子はメチル基又はメトキシ基に置換されていてもよい。)
【0049】
上記一般式(1B)中、nは1が好ましく、nは1が好ましい。また、Rは水素原子、炭素1~10のアルキル基、及び一般式(1C)で示される構造のいずれかであり、水素原子及び一般式(1C)で示される構造の両方を含むことが好ましい。
【0050】
上記のように芳香環構造を多く有する構造を持つことで耐熱特性とドライエッチング耐性に優れたレジスト下層膜を形成でき、さらに親水性基である水酸基と、疎水性基である一般式(1C)の両方を持つことで、優れた熱流動性と基板密着性を併せ持つレジスト下層膜材料を提供できる。
【0051】
上記一般式(1C)中、Rで表される炭素数1~10の2価の有機基としては、例えば、メチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、オクタンジイル基、デカンジイル基等のアルカンジイル基、ベンゼンジイル基、メチルベンゼンジイル基、ナフタレンジイル基等のアレーンジイル基等が挙げられる。
【0052】
上記一般式(1C)中、Rで表される炭素数1~10の1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。
【0053】
上記アルカンジイル基、アレーンジイル基、アルキル基、アリール基等が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよく、置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、i-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0054】
特に好ましい例としては、前記一般式(1B)中、Rの構成成分が、水素原子および下記一般式(1F)のいずれかで構成されるものである構造を挙げることができる。このような構造を持つとき、熱流動性が良好となり、埋め込み/平坦化特性に優れたレジスト下層膜材料を提供することができる。また、耐熱特性および成膜性が良好となり、加熱硬化時の昇華物の発生を抑え、昇華物による装置の汚染を抑制し、塗布欠陥の発生を抑制することができる。
【化18】
(前記一般式(1F)中、*は酸素原子への結合部位を表す。)
【0055】
水素原子の割合をa、炭素数1~10の有機基又は上記一般式(1C)で示される構造をbとした場合、(A)成分全体でa+b=1、0.2≦b≦0.8の関係を満たすものであり、0.3≦b≦0.7の関係が好ましく、0.4≦b≦0.6の関係がより好ましい。
【0056】
ここで、(A)成分全体でa+b=1、0.2≦b≦0.8の関係を満たすものとは、上記一般式(1A)で示される化合物が1種単独で用いられている場合は、単独で上記関係を満たすものであり、上記一般式(1A)で示される化合物が2種以上用いられている場合は、各化合物がそれぞれ上記関係を満たすか、あるいは用いられている化合物全体で上記関係を満たすものである。
【0057】
水素原子と炭素数1~10の有機基又は上記一般式(1C)の割合を上記の様な範囲に制御することで、流動性と基板密着性を高度に発揮することが可能であり、埋め込み/平坦化特性の上昇したレジスト下層膜材料を提供することができる。bの範囲がb>0.8の場合は、水酸基の含有量が不十分であり基板との密着性が劣化するおそれがある。また、緻密な膜を形成するには水酸基同士の架橋反応が好ましく、耐熱特性の観点からも水酸基を一定の割合以上に含んでいる必要がある。一方、bの範囲がb<0.2の場合は、樹脂の熱流動性が不十分となり、埋め込み/平坦化特性が劣化するおそれがある。
【0058】
一般式(1D)中のRとしては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基等の直鎖もしくは分岐したアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基等の脂環式炭化水素基、ビニル基やプロペニル基等の直鎖もしくは分岐したアルケニル基、エチニル基、プロパルギル基等の直鎖もしくは分岐したアルキニル基、フェニル基、トルイル基等のアリール基等を例示できる。
【0059】
また、一般式(1A)で示される化合物として、特に好ましい構造には、以下のものを挙げることができる。この中でもカルド構造を2つ有するものがより好ましい。
【化19】
(式中、Rは上記と同様である。)
【0060】
このような(A)成分を含むレジスト下層膜材料であれば、芳香環を多く含む剛直な構造を有するため、より耐熱特性、エッチング耐性が良好なレジスト下層膜材料を形成することができる。さらに分子内に導入されたカルド構造の作用により、分子間の相互作用を緩和し有機溶剤への溶解性を付与するだけでなく、塗布膜形成時の成膜性を向上させる、また、高炭素密度な縮合炭素環を複数導入しているにも関わらず耐熱特性と埋め込み/平坦化特性という相反する性能を両立することを可能とする。
【0061】
また、上記一般式(1A)で示される化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mn(即ち、分散度)は、1.00≦Mw/Mn≦1.25である。分散度が上記範囲外であると、レジスト下層膜材料の熱流動性が低下するため、レジスト下層膜材料に配合した際に、基板上に形成されている微細構造を埋め込むことが不可能になるだけでなく、基板全体が平坦となるレジスト下層膜を形成することができない。定義上、単分子化合物であればMw/Mnは1.00となるが、GPCの分離性の都合で、測定値が1.00を超える場合がある。一般的に繰り返し単位を有する重合体は特殊な重合法を用いない限り、Mw/Mn=1.00に近づけることは極めて困難であり、Mwの分布を有しMw/Mnは1を超える値となる。本発明では単分子化合物と重合体を区別するため単分子性を示す指標として1.00≦Mw/Mn≦1.25を定義した。
【0062】
また、上記一般式(1A)で示される化合物の重量平均分子量は、2,500以下であることが好ましい。このような分子量であれば、レジスト下層膜材料の熱流動性が更に良好なものとなるため、レジスト下層膜材料に配合した際に、基板上に形成されている微細構造を良好に埋め込むことが可能になるだけでなく、基板全体が平坦となるレジスト下層膜を形成することができる。
【0063】
本発明において、上記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上の下記一般式(1A’)と下記一般式(1A’’)で示される化合物を所望の割合で混合することで同等の化合物を有する樹脂とすることも可能である。
【0064】
【化20】
(一般式(1A’)中、Xは下記一般式(3B)で示される基である。)
【化21】
(一般式(3B)中、nは0又は1であり、nは1又は2であり、Rは水素原子である。Xは上記一般式(1D)で示される基であり、nは0、1、又は2である。)
【0065】
【化22】
(一般式(1A’’)中、Xは下記一般式(4B)で示される基である。)
【化23】
(一般式(4B)中、nは0又は1であり、nは1又は2であり、Rは炭素1~10の有機基、又は上記一般式(1C)で示される構造のいずれかである。Xは上記一般式(1D)で示される基であり、nは0、1、又は2である。)
【0066】
上記一般式(1A’)と(1A’’)で示される化合物を有する樹脂の混合割合は、上記一般式(3B)で示される構造中のRをc、上記一般式(4B)で示される構造中のRをdとした場合、c+d=1、0.2≦d≦0.8の関係を満たすものが好ましく、0.3≦d≦0.7の関係がより好ましく、0.4≦d≦0.6の関係がさらに好ましい。
【0067】
上記一般式(1A’)と(1A’’)で示される化合物を有する樹脂の混合割合を上記の様な範囲に制御することで、流動性と基板密着性を高度に発揮することが可能であり、埋め込み/平坦化特性が上昇したレジスト下層膜材料を提供することができる。dの範囲がd≦0.8の場合は、水酸基の含有量が十分であり基板との密着性が劣化しない。また、緻密な膜を形成するには水酸基同士の架橋反応が好ましく、耐熱特性の観点からも水酸基を一定の割合以上に含んでいることが好ましい。一方、dの範囲がd≧0.2の場合は、樹脂の熱流動性が十分となり、埋め込み/平坦化特性が劣化しない。
【0068】
二種以上の上記一般式(1A’)と上記一般式(1A’’)で示される化合物を所望の割合で混合して用いる場合、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比率Mw/Mn(即ち、分散度)は、それぞれの化合物が1.00≦Mw/Mn≦1.25の範囲内であることが好ましい。
【0069】
本発明において、上記一般式(1A)で示される化合物を含まない樹脂を混合して用いてもよい。その場合に混合してもよい樹脂としては、特に限定されることなく、公知の樹脂を用いることができるが、具体的には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0070】
本発明のレジスト下層膜材料には、更に別の化合物やポリマーをブレンドすることもできる。ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーは、上記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂と混合し、スピンコーティングの成膜性や、段差を有する基板での埋め込み/平坦化特性を向上させる役割を持つ。また、ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーとしては、フェノール性水酸基を持つ化合物が好ましい。
【0071】
このような材料としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、3-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2-フェニルフェノール、3-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、3,5-ジフェニルフェノール、2-ナフチルフェノール、3-ナフチルフェノール、4-ナフチルフェノール、4-トリチルフェノール、レゾルシノール、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、カテコール、4-tert-ブチルカテコール、2-メトキシフェノール、3-メトキシフェノール、2-プロピルフェノール、3-プロピルフェノール、4-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、2-メトキシ-5-メチルフェノール、2-tert-ブチル-5-メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’-ジメチル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’-ジアリル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’-ジフルオロ-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’-ジフェニル-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,2’-ジメトキシ-4,4’-(9H-フルオレン-9-イリデン)ビスフェノール、2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、3,3,3’,3’-テトラメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、3,3,3’,3’,4,4’-ヘキサメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-5,5’-ジオール、5,5’-ジメチル-3,3,3’,3’-テトラメチル-2,3,2’,3’-テトラヒドロ-(1,1’)-スピロビインデン-6,6’-ジオール、1-ナフトール、2-ナフトール、2-メチル-1-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、7-メトキシ-2-ナフトール及び1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン、3-ヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸メチル、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、5-ビニルノルボルナ-2-エン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等のノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルカルバゾール、ポリインデン、ポリアセナフチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロデセン、ポリテトラシクロドデセン、ポリノルトリシクレン、ポリ(メタ)アクリレート及びこれらの共重合体が挙げられる。また、特開2004-205685号公報に記載のナフトールジシクロペンタジエン共重合体、特開2005-128509号公報に記載のフルオレンビスフェノールノボラック樹脂、特開2005-250434号公報に記載のアセナフチレン共重合体、特開2006-227391号公報に記載のフェノール基を有するフラーレン、特開2006-293298号公報に記載のビスフェノール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2006-285095号公報に記載のアダマンタンフェノール化合物のノボラック樹脂、特開2010-122656号公報に記載のビスナフトール化合物及びこのノボラック樹脂、特開2008-158002号公報に記載のフラーレン樹脂化合物等をブレンドすることもできる。
【0072】
上記ブレンド用化合物又はブレンド用ポリマーの配合量は、上記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂100質量部に対して5~100質量部が好ましく、より好ましくは5~50質量部である。
【0073】
[(B)有機溶剤]
本発明のレジスト下層膜材料において使用可能な(B)有機溶剤としては、上記(A)一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂を溶解できれば特に制限はなく、後述する(C)架橋剤、(D)界面活性剤、(E)酸発生剤、(F)可塑剤、及び(G)色素も溶解できるものが好ましい。
【0074】
具体的には、特開2007-199653号公報中の[0091]~[0092]段落に記載されている有機溶剤を添加することができる。さらに具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びγ-ブチロラクトン、またはこれらのうち1種以上を含む混合物が好ましく用いられる。
【0075】
有機溶剤の配合量は、レジスト下層膜の設定膜厚に応じて調整することが望ましいが、通常、上記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂100質量部に対して、100~50,000質量部の範囲である。
【0076】
また、前記(B)有機溶剤が、高沸点溶剤を含有するものであることが好ましい。即ち、本発明のレジスト下層膜材料においては、(B)有機溶剤を、沸点が180℃未満の有機溶剤1種以上と、沸点が180℃以上の有機溶剤(高沸点溶剤)1種以上との混合物として用いてもよい。
【0077】
沸点が180℃未満の有機溶剤として具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、2-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンを例示できる。
【0078】
高沸点溶剤としては、本発明のレジスト下層膜材料の各成分を溶解できるものであれば、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶剤等の制限は特にはないが、具体例として1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n-ノニル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4―ブタンジオールジアセテート、1,3―ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、γ-ブチロラクトン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、マロン酸ジヘキシル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジヘキシル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチルなどを例示することができ、これらを単独又は混合して用いてもよい。
【0079】
高沸点溶剤は、本発明のレジスト下層膜材料を熱処理する温度等に合わせて、例えば上記のものから適宜選択すればよい。高沸点溶剤の沸点は180℃~300℃であることが好ましく、200℃~300℃であることが更に好ましい。このような沸点であれば、ベーク(熱処理)した際の揮発が速くなりすぎる恐れがないため、成膜時に十分な熱流動性を得ることができ、埋め込み/平坦化特性に優れるレジスト下層膜を形成することができるものと考えられる。また、このような沸点であれば、ベーク後も揮発することなく膜中に残存してしまうことがないため、エッチング耐性等の膜物性に悪影響を及ぼす恐れがない。
【0080】
また、高沸点溶剤を使用する場合の配合量は、沸点180℃未満の有機溶剤100質量部に対して1~30質量部とすることが好ましい。このような配合量であればベーク時に十分な熱流動性を付与することができ、膜中に残存せずエッチング耐性等の膜物性の劣化につながらないため、好ましい。
【0081】
[(C)架橋剤]
また、本発明のレジスト下層膜材料には、硬化性を高め、レジスト上層膜とのインターミキシングを更に抑制するために、更に(C)架橋剤を含有するものであることもできる。架橋剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の架橋剤を広く用いることができる。一例として、メラミン系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、ベンゾグアナミン系架橋剤、ウレア系架橋剤、β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤、イソシアヌレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、フェノール系架橋剤(例えば多核フェノール類のメチロールまたはアルコキシメチル型架橋剤)を例示できる。前記(C)架橋剤の含有量は、前記(A)樹脂の質量部100に対して5~50質量部が好ましく、より好ましくは10~40質量部である。
【0082】
メラミン系架橋剤として、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。
グリコールウリル系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリル、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。
ベンゾグアナミン系架橋剤として、具体的には、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミン、これらのアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。
ウレア系架橋剤として、具体的には、ジメトキシメチル化ジメトキシエチレンウレア、このアルコキシ及び/又はヒドロキシ置換体、及びこれらの部分自己縮合体を例示できる。
β-ヒドロキシアルキルアミド系架橋剤として具体的には、N,N,N’,N’-テトラ(2-ヒドロキシエチル)アジピン酸アミドを例示できる。
イソシアヌレート系架橋剤として具体的には、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを例示できる。
アジリジン系架橋剤として具体的には、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオナート]を例示できる。
オキサゾリン系架橋剤として具体的には、2,2’-イソプロピリデンビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2’-イソプロピリデンビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2’-メチレンビス-4,5-ジフェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-フェニル-2-オキサゾリン、2,2’-メチレンビス-4-tertブチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、1,4-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2-イソプロペニルオキサゾリン共重合体を例示できる。
エポキシ系架橋剤として具体的には、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリ(メタクリル酸グリシジル)、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを例示できる。
【0083】
多核フェノール系架橋剤としては、具体的には下記一般式(2)で示される化合物を例示することができる。
【化24】
(一般式(2)中、Qは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。Rは水素原子又はメチル基である。qは1~5の整数である。)
【0084】
上記一般式(2)中のQは単結合、又は、炭素数1~20のq価の炭化水素基である。qは1~5の整数であり、2または3であることがより好ましい。Qが炭素数1~20のq価の炭化水素基である場合、Qは炭素数1~20の炭化水素からq個の水素原子を除いたq価の炭化水素基である。この場合の炭素数1~20の炭化水素としてより具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルペンタン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、エチルイソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、エイコサンを例示できる。
【0085】
上記一般式(2)中のRは水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0086】
上記一般式(2)で示される化合物を架橋剤として有することで、上記一般式(1A)で示される化合物に含まれる水酸基の架橋反応性が上昇し、膜の緻密性を向上させることが可能である。これにより、本発明のレジスト下層膜材料の耐熱特性をさらに向上させることが可能となる。
【0087】
上記一般式(2)で示される化合物の例として、具体的には下記の化合物を例示できるがこれらに限定されない。下式中、Rは上記と同様である。q=3かつRがメチル基を満たす場合が硬化性、膜厚均一性向上、および昇華物低減の観点から好ましく、特にトリフェノールメタン、トリフェノールエタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのヘキサメトキシメチル化体が好ましい。
【0088】
【化25】
【0089】
【化26】
【0090】
上記(C)架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(C)架橋剤の含有量は、前記(A)樹脂の質量部100に対して5~50質量部が好ましく、10~40質量部がより好ましい。含有量が5質量部以上であれば、(A)樹脂との架橋反応が促進され、硬化性に優れた緻密な膜が形成されるため、耐熱特性、ドライエッチング耐性、及び膜厚均一性が良好なレジスト下層膜を形成できる。一方、含有量が50質量部以下であれば、(A)樹脂と(C)架橋剤の架橋反応の鈍化に伴う昇華物発生を抑制でき、昇華物発生と膜厚均一性の劣化を低減できる。
【0091】
[(D)界面活性剤]
本発明のレジスト下層膜材料は、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(D)界面活性剤を含有することができる。(D)界面活性剤としては、例えば、特開2009-269953号公報中の[0142]~[0147]記載のものを用いることができる。(D)界面活性剤を含有する場合の含有量は、上記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂の質量部100に対して、好ましくは0.001~20質量部、より好ましくは0.01~10質量部である。
【0092】
[(E)酸発生剤]
本発明のレジスト下層膜材料においては、硬化反応を更に促進させるために(E)酸発生剤を含有することができる。(E)酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも含有することができる。具体的には、特開2007-199653号公報中の[0061]~[0085]段落に記載されている材料を添加することができるがこれらに限定されない。
【0093】
上記(E)酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(E)酸発生剤を含有する場合の含有量は、上記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂の質量部100に対して、好ましくは0.05~50質量部、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0094】
[(F)可塑剤]
また、本発明のレジスト下層膜材料は、平坦化/埋め込み特性を更に向上させるために、(F)可塑剤を含有することができる。(F)可塑剤としては、特に限定されることはなく、公知の種々の系統の可塑剤を広く用いることができる。一例として、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、クエン酸エステル類などの低分子化合物、ポリエーテル系、ポリエステル系、特開2013-253227記載のポリアセタール系重合体などのポリマーを例示できる。(F)可塑剤を含有する場合の含有量は、上記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂の質量部100に対して、好ましくは5~500質量部、より好ましくは10~200質量部である。
【0095】
[(G)色素]
また、本発明のレジスト下層膜材料は、多層リソグラフィーのパターニングの際の解像性を更に向上させるために、(G)色素を含有することができる。(G)色素としては、露光波長において適度な吸収を有する化合物であれば特に限定されることはなく、公知の種々の化合物を広く用いることができる。一例として、ベンゼン類、ナフタレン類、アントラセン類、フェナントレン類、ピレン類、イソシアヌル酸類、トリアジン類を例示できる。(G)色素を含有する場合の含有量は、上記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂の質量部100に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部である。
【0096】
更に、本発明のレジスト下層膜材料には、保存安定性を向上させるための塩基性化合物を添加することができる。塩基性化合物は、酸発生剤より微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐための、酸に対するクエンチャーの役割を果たす。このような塩基性化合物として、具体的には、特開2007-199653号公報の(0086)~(0090)段落に記載のものを挙げることができる。
【0097】
また、本発明のレジスト下層膜材料には、上記の他に、埋め込み/平坦化特性を更に向上させるための添加剤を加えてもよい。上記添加剤としては、埋め込み/平坦化特性を付与するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール構造を有する液状添加剤、又は30℃から250℃までの間の重量減少率が40質量%以上であり、かつ重量平均分子量が300~200,000である熱分解性重合体が好ましく用いられる。この熱分解性重合体は、下記一般式(DP1)、(DP1a)で示されるアセタール構造を有する繰り返し単位を含有するものであることが好ましい。
【0098】
【化27】
(式中、Rは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~30の飽和もしくは不飽和の一価有機基である。Yは炭素数2~30の飽和又は不飽和の二価有機基である。)
【0099】
【化28】
(式中、R6aは炭素数1~4のアルキル基である。Yは炭素数4~10の飽和又は不飽和の二価炭化水素基であり、エーテル結合を有していてもよい。nは平均繰り返し単位数を表し、3~500である。)
【0100】
以上のように、本発明のレジスト下層膜材料であれば、流動性向上に寄与するアリル基やプロパルギル基などの有機基と、基板密着性及び耐熱特性の向上に寄与する水酸基の割合を制御した上記一般式(1A)で示される化合物を有する樹脂を用いることで、埋め込み/平坦化特性と基板密着性、及び耐熱特性を高度に兼ね備えた材料を提供できる。従って、本発明のレジスト下層膜材料は、2層レジストプロセス、レジスト中間膜又は無機ハードマスク中間膜を用いた3層レジストプロセス、レジスト中間膜又は無機ハードマスク中間膜及び有機薄膜を用いた4層レジストプロセス等といった多層レジストプロセス用のレジスト下層膜材料として、極めて有用である。
【0101】
[パターン形成方法]
また、本発明では、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(I-1)被加工基板上に、上記に記載のレジスト下層膜材料を塗布後、熱処理することによりレジスト下層膜を形成する工程、
(I-2)前記レジスト下層膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(I-3)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(I-4)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(I-5)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有するパターン形成方法を提供する(2層レジストプロセス)。
【0102】
更に、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(II-1)被加工基板上に、上記に記載のレジスト下層膜材料を塗布後、熱処理することによりレジスト下層膜を形成する工程、
(II-2)前記レジスト下層膜上に、レジスト中間膜を形成する工程、
(II-3)前記レジスト中間膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(II-4)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(II-5)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト中間膜にパターンを転写する工程、
(II-6)前記パターンが転写されたレジスト中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(II-7)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有するパターン形成方法を提供する(3層レジストプロセス)。
【0103】
加えて、被加工基板にパターンを形成する方法であって、
(III-1)被加工基板上に、上記に記載のレジスト下層膜材料を塗布後、熱処理することによりレジスト下層膜を形成する工程、
(III-2)前記レジスト下層膜上に、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成する工程、
(III-3)前記無機ハードマスク中間膜上に、有機薄膜を形成する工程、
(III-4)前記有機薄膜上に、フォトレジスト材料を用いてレジスト上層膜を形成する工程、
(III-5)前記レジスト上層膜をパターン露光した後、現像液で現像して、前記レジスト上層膜にパターンを形成する工程、
(III-6)前記パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして、ドライエッチングで前記有機薄膜及び前記無機ハードマスク中間膜にパターンを転写する工程、
(III-7)前記パターンが転写された無機ハードマスク中間膜をマスクにして、ドライエッチングで前記レジスト下層膜にパターンを転写する工程、及び
(III-8)前記パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして前記被加工基板を加工して前記被加工基板にパターンを形成する工程
を有するパターン形成方法を提供する(4層レジストプロセス)。
【0104】
本発明に用いられるレジスト下層膜の厚さは適宜選定されるが、50~5,000nm、特に100~2,000nmとすることが好ましく、100~1,000nmとすることがより好ましい。3層プロセス用のレジスト下層膜の場合はその上にケイ素を含有するレジスト中間膜、ケイ素を含まないレジスト上層膜を形成することができる。2層プロセス用のレジスト下層膜の場合はその上に、ケイ素を含有するレジスト上層膜、又はケイ素を含まないレジスト上層膜を形成することができる。
【0105】
本発明のパターン形成方法は、ケイ素含有2層レジストプロセス、レジスト中間膜を用いた3層レジストプロセス、または無機ハードマスク中間膜および有機薄膜を用いた4層レジストプロセス、ケイ素を含まない2層レジストプロセス、といった多層レジストプロセスに好適に用いられる。
【0106】
[3層レジストプロセス]
本発明のパターン形成方法について、以下に3層レジストプロセスを例に挙げて説明するが該プロセスに限定されない。この場合、基板上に上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜上にケイ素原子を含有するレジスト中間膜材料を用いてレジスト中間膜を形成し、該レジスト中間膜より上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して多層レジスト膜とし、上記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像してレジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてレジスト中間膜をエッチングし、パターンが形成されたレジスト中間膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、パターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして基板を加工して基板にパターンを形成することができる。
【0107】
ケイ素原子を含むレジスト中間膜は、酸素ガス又は水素ガスによるエッチング耐性を示すため、上記のように、レジスト中間膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0108】
また、本発明のパターン形成方法においては、少なくとも、基板上に上記レジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜より上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、上記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して上記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして上記無機ハードマスク中間膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして上記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをマスクにして基板を加工して基板にパターンを形成することができる。
【0109】
上記のように、レジスト下層膜の上に無機ハードマスク中間膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、特開2002-334869号公報、WO2004/066377に記載されている。無機ハードマスク中間膜の膜厚は5~3,000nm、好ましくは10~2,000nmであり、中でも反射防止膜としての効果が高いSiON膜がArF露光用途では最も好ましく用いられる。
【0110】
3層レジストプロセスのレジスト中間膜としては、ポリシルセスキオキサンベースのレジスト中間膜を好適に用いることができる。ポリシルセスキオキサンベースのレジスト中間膜はエキシマ露光において反射防止効果を持たせることが容易であり、これによりレジスト上層膜のパターン露光時に反射光を抑制でき、解像性に優れる利点がある。特に193nm露光用としては、レジスト下層膜として芳香族基を多く含む材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなるが、レジスト中間膜で反射を抑えることによって基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるレジスト中間膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素-ケイ素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0111】
この場合、CVD法よりもスピンコート法によるレジスト中間膜の形成の方が簡便でコスト的なメリットがある。
【0112】
3層レジスト膜におけるレジスト上層膜は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。上記フォトレジスト組成物によりレジスト上層膜を形成する場合、上記レジスト下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法が好ましく用いられる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、60~180℃で10~300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、ポストエクスポージャーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、10~500nm、特に20~400nmが好ましい。
【0113】
また、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3~20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0114】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。3層プロセスにおけるレジスト中間膜のエッチングは、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行う。次いでレジスト中間膜パターンをマスクにして酸素ガス又は水素ガスを用いてレジスト下層膜のエッチング加工を行う。
【0115】
次の被加工基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば基板がSiO、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、3層プロセスのレジスト中間膜は基板加工と同時に剥離される。塩素系、臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、レジスト中間膜の剥離は基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離等を別途行う必要がある。
【0116】
なお、被加工基板としては、被加工層が基板上に成膜される。基板としては、特に限定されるものではなく、Si、α-Si、p-Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工層と異なる材質のものが用いられる。被加工層としては、Si、SiO、SiON、SiN、p-Si、α-Si、W、TiN、W-Si、Al、Cu、Al-Si等種々のLow-k膜及びそのストッパー膜などが用いられ、通常50~15,000nm、特に100~10,000nmの厚さに形成される。
【0117】
本発明のパターン形成方法は、前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する基板を用いることが好ましい。上述のように、本発明のレジスト下層膜材料は、埋め込み/平坦化特性に優れるため、被加工基板に高さ30nm以上の構造体又は段差(凹凸)があっても、平坦な硬化膜を形成することができる。上記被加工体基板の有する構造体又は段差の高さは30nm以上が好ましく、100nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることがさらに好ましく、300nm以上であることが特に好ましい。上記高さのパターンを有する段差基板を加工する方法において、本発明のレジスト下層膜材料を成膜して埋め込み/平坦化を行うことにより、その後成膜されるレジスト中間膜、レジスト上層膜の膜厚を均一にすることが可能となるため、フォトリソグラフィー時の露光深度マージン(DOF)確保が容易となり、非常に好ましい。また、本発明のレジスト下層膜材料は、基板との密着性に優れるため、アスペクト比の高いパターン構造の埋め込み/平坦化に対して、特に効果を発揮する。上記パターンのアスペクト比は3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。
【0118】
3層レジストプロセスの一例について図1を用いて具体的に示すと下記の通りである。3層レジストプロセスの場合、図1(A)に示したように、被加工基板1の上に積層された被加工層2上にレジスト下層膜3を形成した後、レジスト中間膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。
【0119】
次いで、図1(B)に示したように、レジスト上層膜の露光部分6を露光し、PEB(露光後ベーク)及び現像を行ってレジスト上層膜パターン5aを形成する(図1(C))。この得られたレジスト上層膜パターン5aをマスクとし、CF系ガスを用いてレジスト中間膜4をエッチング加工してレジスト中間膜パターン4aを形成する(図1(D))。レジスト上層膜パターン5aを除去後、この得られたレジスト中間膜パターン4aをマスクとしてレジスト下層膜3を酸素系又は水素系プラズマエッチングし、レジスト下層膜パターン3aを形成する(図1(E))。更にレジスト中間膜パターン4aを除去後、レジスト下層膜パターン3aをマスクに被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する(図1(F))。
【0120】
無機ハードマスク中間膜を用いる場合、レジスト中間膜4が無機ハードマスク中間膜であり、有機薄膜を敷く場合はレジスト中間膜4とレジスト上層膜5との間に有機薄膜を設ける。有機薄膜のエッチングはレジスト中間膜4のエッチングに先立って連続して行われる場合もあるし、有機薄膜だけのエッチングを行ってからエッチング装置を変えるなどしてレジスト中間膜4のエッチングを行うこともできる。
【0121】
[4層レジストプロセス]
また、本発明は、有機薄膜を用いた4層レジストプロセスにも好適に用いることができ、この場合、少なくとも、基板上に上記レジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上に有機薄膜を形成し、該有機薄膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、上記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して上記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして上記有機薄膜と上記無機ハードマスク中間膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして上記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをマスクにして基板を加工して基板にパターンを形成することができる。
【0122】
無機ハードマスク中間膜の上にレジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成しても良いが、上記のように、無機ハードマスク中間膜の上に有機薄膜をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成しても良い。無機ハードマスク中間膜としてSiON膜を用い、有機薄膜として露光波長における吸光基を有する有機反射防止膜(BARC)を用いた場合、エキシマ露光においてSiON膜と有機薄膜の2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光に於いても反射を抑えることが可能となる。有機薄膜を形成する他のメリットとしては、SiON膜直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることを挙げることができる。また、有機薄膜として、上層フォトレジストとの親和性に優れる密着膜(ADL)を用いた場合に、フォトレジストのパターン倒れを抑制できることも長所である。
【0123】
[レジスト下層膜形成方法]
本発明では、半導体装置の製造工程で使用される有機平坦膜として機能するレジスト下層膜の形成方法であって、被加工基板上に上記に記載のレジスト下層膜材料を回転塗布し、該レジスト下層膜材料を塗布した基板を100℃以上600℃以下の温度で10~600秒間の範囲で熱処理することにより硬化膜を形成するレジスト下層膜形成方法を提供する。
【0124】
また、半導体装置の製造工程で使用される有機平坦膜として機能するレジスト下層膜の形成方法であって、被加工基板上に上記に記載のレジスト下層膜材料を回転塗布し、該レジスト下層膜材料を塗布した基板を酸素濃度1%以上21%以下の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成するレジスト下層膜形成方法を提供する。
【0125】
あるいは、半導体装置の製造工程で使用される有機平坦膜として機能するレジスト下層膜の形成方法であって、被加工基板上に上記に記載のレジスト下層膜材料を回転塗布し、該レジスト下層膜材料を塗布した基板を酸素濃度1%未満の雰囲気で熱処理することにより硬化膜を形成するレジスト下層膜形成方法を提供する。
【0126】
本発明のレジスト下層膜形成方法においては、上記のレジスト下層膜材料を、スピンコート法などを用いて被加工基板上にコーティングする。スピンコート法などを用いることで、良好な埋込特性を得ることができる。スピンコート後、有機溶剤を蒸発し、レジスト上層膜やレジスト中間層膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークを行う。ベークは100℃以上600℃以下、好ましくは100℃以上450℃以下、より好ましくは150℃以上400℃以下の温度範囲内で行い、10秒~600秒間、好ましくは10~300秒の範囲内で行う。ベーク温度及び時間を上記範囲の中で適宜調整することにより、用途に適した平坦化・埋込特性、またドライエッチング耐性や耐熱特性などの硬化特性を得ることができる。ベーク温度100℃以上では、硬化が十分に進み、レジスト上層膜又はレジスト中間膜とのミキシングを生じることがない。ベーク温度600℃以下とすれば、ベース樹脂の熱分解を抑制でき、膜厚が減少せず、膜表面が均一になる。
【0127】
ベークの際の雰囲気としては、空気中などの含酸素雰囲気(酸素濃度1%~21%)、窒素中などの非酸素雰囲気のいずれをも、必要に応じて選択可能である。例えば、被加工基板が空気酸化を受け易い場合には、酸素濃度1%未満の雰囲気で熱処理して硬化膜を形成することにより、基板ダメージを抑制可能である。
【0128】
本発明のレジスト下層膜形成方法は、前記被加工基板として、高さ30nm以上の構造体又は段差を有する被加工基板を用いることが好ましい。上述のように、本発明のレジスト下層膜材料は、埋め込み/平坦化特性に優れるため、被加工基板に高さ30nm以上の構造体又は段差(凹凸)があっても、平坦な硬化膜を形成することができる。上記被加工体基板の有する構造体又は段差の高さは30nm以上が好ましく、100nm以上であることがより好ましく、200nm以上であることがさらに好ましく、300nm以上であることが特に好ましい。上記高さのパターンを有する段差基板を加工する方法において、本発明のレジスト下層膜材料を成膜して埋め込み/平坦化を行うことにより、その後成膜されるレジスト中間膜、レジスト上層膜の膜厚を均一にすることが可能となるため、フォトリソグラフィー時の露光深度マージン(DOF)確保が容易となり、非常に好ましい。また、本発明のレジスト下層膜材料は、基板との密着性に優れるため、アスペクト比の高いパターン構造の埋め込み/平坦化に対して、特に効果を発揮する。上記パターンのアスペクト比は3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。
【実施例
【0129】
以下、実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。なお、分子量、分散度の測定は下記の方法による。テトラヒドロフランを溶離液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0130】
[合成例]
以下の合成例には、下記に示す化合物群G:(G1)~(G7)と修飾化剤H:(H1)~(H3)を用いた。
化合物群G:(G1)~(G7)を以下に示す。
【0131】
【化29】
【0132】
修飾化剤H:(H1)~(H3)を以下に示す。
【化30】
【0133】
[合成例1]化合物(A―1)の合成
窒素雰囲気下、化合物(G1)44.7g、炭酸カリウム16.5g、DMF150gを加え、内温50℃で均一分散液とした。修飾化剤(H1)16.5gをゆっくりと加え、内温50℃で24時間反応を行った。反応液にメチルイソブチルケトン300mlと純水300gを加え析出した塩を溶解させた後、分離した水層を除去した。さらに有機層を3%硝酸水溶液100gおよび純水100gで6回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固することで化合物(A-1)を得た。
GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
(A-1):Mw=542、Mw/Mn=1.02
【0134】
[合成例2~14]化合物(A―2)~(A-14)の合成
表1~表3に示される仕込み量で化合物群G、修飾化剤群H、炭酸カリウムを使用した以外は、合成例1と同じ反応条件で表1~表3に示される化合物(A-2)~(A-14)を得た。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
[合成例15]化合物(A―15)の合成
【化31】
窒素雰囲気下、化合物(G1)90.1g、37%ホルマリン溶液9.7g、2-メトキシ-1-プロパノール270gを加え、液温80℃で均一溶液とした後、20%パラトルエンスルホン酸の2-メトキシ-1-プロパノール溶液18gをゆっくり加え、液温110℃で8時間撹拌した。室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン600gを加え、有機層を純水200gで5回洗浄後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF320gを加え、ヘキサン1350gでポリマーを再沈させた。沈降したポリマーをろ過で分別し減圧乾燥することで化合物(A-15)を得た。GPCにより重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めたところ、以下のような結果となった。
Mw=3460、Mw/Mn=4.60
【0139】
得られた化合物の構造と、重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)を表4~表6に示す、なお、化合物(A-16)は、合成例の原料として用いた化合物群Gの(G4)を用いた。
【0140】
【表4】
【0141】
【表5】
【0142】
【表6】
【0143】
[(C)架橋剤]
以下にレジスト下層膜材料に用いた各(C)架橋剤を以下に示す。
【化32】
【0144】
[レジスト下層膜材料UL-1]
上記化合物(A-1)を、界面活性剤FC-4430(住友スリーエム(株)製)0.5質量%を含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に表7に示す割合で溶解させ、0.02μmのメンブレンフィルターで濾過することによってレジスト下層膜材料(UL-1)を調製した。
【0145】
[レジスト下層膜材料UL-2~15及び、比較UL-1~7]
各成分の種類及び含有量を表7に示す通りとした以外は、UL-1と同様に操作し、各薬液を調製した。なお、表7中、「-」は該当する成分を使用しなかったことを示す。酸発生剤(TAG)には下記式(E-1)を使用、高沸点溶剤(B-2)には1,6-ジアセトキシヘキサン:沸点260℃を用いた。
【化33】
(熱酸発生剤)
【0146】
【表7】
【0147】
[耐熱特性評価]
上記レジスト下層膜材料(UL-1~15及び、比較UL-1~7)をそれぞれシリコン基板上に塗布し、400℃で60秒ベークすることにより、膜厚が約600nmとなるようにレジスト下層膜を形成し、400℃ベーク後の膜厚T1を測定した。この基板に、更に酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下550℃で60秒ベークの追加処理を行い、550℃ベーク後の膜厚T2を測定し、これらの測定結果から、T2/T1で示される減膜率を算出した。減膜率[T2/T1]の値が、95%以上である場合を「A」(極めて良好)、90%以上95%未満である場合を「B」(良好)、90%未満である場合を「C」(不良)と評価した。結果を表8に示す。
【0148】
【表8】
【0149】
表8に示されるように、本発明のレジスト下層膜材料(実施例1-1~1-15)では、550℃ベーク後の膜厚の減少が10%以下と小さく、550℃以上の耐熱特性を有していることが分かった。これらの中でも、カルド構造を2つ有する化合物を含む実施例1-3~実施例1-10の耐熱特性が良好である。さらに、架橋剤と組み合わせた実施例1-11及び実施例1-12では、より優れた耐熱特性を示す結果が得られている。これは、上記架橋剤を含むことで、高次元に樹脂の架橋反応が進行し、架橋密度の高い硬化膜を形成できるためと推察される。同一骨格構造を含み、上記Rの構成範囲を変化させた実施例1-5~6、実施例1-13~14、比較例1-2~1-4及び比較例1-6を比べると、水酸基の割合の多い方が耐熱特性に優れる膜を形成する結果となった。
【0150】
[埋め込み特性評価]
上記のレジスト下層膜材料(UL-1~15及び、比較UL-1~7)をそれぞれ、HMDS処理済みの密集ホールパターン(ホール直径0.2μm、ホール深さ1.0μm、隣り合う二つのホールの中心間の距離0.4μm)を有するSiOウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて400℃で60秒間加熱し、レジスト下層膜Aを形成した。また、上記レジスト下層膜Aとは別に、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下550℃で60秒ベークを行い、レジスト下層膜Bを形成した。使用した基板は図2(G)(俯瞰図)及び(H)(断面図)に示すような密集ホールパターンを有する下地基板7(SiOウエハー基板)である。得られた各ウエハー基板の断面形状を、(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)を用いて観察し、ホール内部にボイド(空隙)なくレジスト下層膜で充填されているか、またレジスト下層膜と基板の界面に剥がれが生じていないかどうかを確認した。結果を表9に示す。埋め込み特性に劣るレジスト下層膜材料を用いた場合は、本評価において、ホール内部にボイドが発生する。また、密着性に劣るレジスト下層膜材料を用いた場合は、本評価において、レジスト下層膜と基板の界面に剥がれが発生する。埋め込み特性が良好かつ、基板との密着性が良好なレジスト下層膜材料を用いた場合は、本評価において、図2(I)に示されるように密集ホールパターンを有する下地基板7のホール内部にボイドがなく、また基板からの剥がれもないレジスト下層膜8が充填される。
【0151】
【表9】
【0152】
表9に示されるように、本発明のレジスト下層膜材料(UL-1~15)を使用した実施例2-1~2-15では、上記一般式(1B)に含まれる上記Rを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~10のアルキル基又は上記一般式(1C)で示される構造の割合をbとした場合、(A)成分全体でa+b=1、0.2≦b≦0.8の関係を満たす上記一般式(1A)で示される化合物を用いているため、400℃及び550℃ベーク後の埋め込み特性が良好であることが分かった。
【0153】
また、単独では上記関係を満たさない化合物A-12とA-16を、上記関係を満たすように配合した実施例2-13、14では、400℃及び550℃ベーク後の埋め込み特性が良好であることが分かった。このように、本発明のレジスト下層膜材料に含まれる一般式(1A)で示される化合物は、単独で上記関係を満たしていなくても、(A)成分全体で上記関係を満たしていれば、400℃及び550℃ベーク後の埋め込み特性が良好なレジスト下層膜材料を提供できる。
【0154】
一方、比較例2-4及び比較例2-6においては、上記Rを構成する構造のうちbの割合が0.2未満であり、流動性が不十分なため、400℃及び550℃ベーク後のどちらにおいてもボイドが観察された。比較例2-1~2-3においては、上記bの割合が0.8を超えるため、基板との密着性が不十分となり、400℃及び550℃ベーク後のどちらにおいても、基板に対するレジスト下層膜の剥がれが観察された。また、重合体を含む比較例2-5及び比較例2-7では、樹脂の分子量が大きく流動性が不十分なため、400℃及び550℃ベーク後のどちらにおいてもボイドが観察された。
【0155】
上記結果より、本発明のレジスト下層膜材料では、流動性向上に寄与する有機基と、基板密着性向上に寄与する水酸基の割合を制御した化合物を有する樹脂を用いることで、埋め込み特性と基板の密着性を高度に兼ね備えたレジスト下層膜材料を提供できる。
【0156】
[平坦化特性評価]
上記のレジスト下層膜材料(UL-1~15及び、比較UL-1~7)をそれぞれ、HMDS処理済みの密集ホールパターン(ホール直径0.2μm、ホール深さ1.0μm、隣り合う二つのホールの中心間の距離0.4μm)を有するSiOウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて400℃で60秒ベークを行い、レジスト下層膜を形成した。使用した基板は図3(J)に示すような密集ホールパターンを有する下地基板9(SiOウエハー基板)である。得られた各ウエハー基板の断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、ホールパターン密集部分と非ホールパターン形成部分のレジスト下層膜10の段差(図3(K)中のDelta 10)を、(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)を用いて観察した。本評価において、段差が小さいほど、平坦化特性が良好であるといえる。なお、本評価では、深さ1.0μmのホールパターンを、通常膜厚約600nmのレジスト下層膜材料を用いて平坦化しており、平坦化特性の優劣を評価するために厳しい評価条件となっている。レジスト下層膜の段差が300nm未満の場合を「A」(極めて良好)、300nm以上350nm未満の場合を「B」(良好)、350nm以上の場合、又はレジスト下層膜の基板からの剥がれが見られる場合を「C」(不良)と評価した。結果を表10に示す。
【0157】
【表10】
【0158】
表10に示されるように、本発明のレジスト下層膜材料(UL-1~15)を使用した実施例3-1~3-15は、上記一般式(1B)に含まれる上記Rを構成する構造のうち、水素原子の割合をa、炭素数1~10のアルキル基又は上記一般式(1C)で示される構造の割合をbとした場合、(A)成分全体でa+b=1、0.2≦b≦0.8の関係を満たす上記一般式(1A)で示される化合物を用いているため、密集ホールパターンにおいて、400℃ベーク後の平坦化特性が良好であることが分かった。
【0159】
また、単独では上記関係を満たさない化合物A-12とA-16を、上記関係を満たすように配合した実施例3-13、14では、400℃ベーク後の平坦化特性が良好であることが分かった。このように、本発明のレジスト下層膜材料に含まれる一般式(1A)で示される化合物は、単独で上記関係を満たしていなくても、(A)成分全体で上記関係を満たしていれば、400℃ベーク後の平坦化特性が良好なレジスト下層膜材料を提供できる。
【0160】
一方、比較例3-4、及び比較例3-6においては、上記Rを構成する構造のうちbの割合が0.2未満であり、流動性が不十分なため、平坦化特性の劣化が観察された。比較例3-1~3-3においては、上記bの割合が0.8を超えるため、基板との密着性が不十分となり、基板に対するレジスト下層膜の剥がれが観察された。また、重合体を含む比較例3-5及び比較例3-7では、流動性が不十分なため、平坦化特性の劣化が観察された。
【0161】
同一骨格構造を含み、上記Rの構成範囲を変化させた実施例3-5、実施例3-6、実施例3-13、実施例3-14、比較例3-4、及び比較例3-6を比較すると、上記bの割合が0.4≦b≦0.6である実施例3-5及び実施例3-6が特に優れた平坦性を示すことがわかった。これは、流動性に寄与する有機基と、密着性及び耐熱特性に寄与する水酸基の均衡が最適であり、熱流動性と熱収縮耐性に優れた膜を形成できたためと推察される。架橋剤を用いた実施例3-11及び実施例3-12は、耐熱特性に優れた緻密な膜を形成できるため、樹脂単独組成よりもさらに優れた平坦化特性を示している。
【0162】
[パターンエッチング試験]
上記のレジスト下層膜材料(UL-1~15及び、比較UL―1~7)をそれぞれ、HMDS処理済みのトレンチパターン(トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.50μm)を有するSiOウエハー基板上に塗布し、ホットプレートを用いて400℃で60秒間加熱し、膜厚600nmのレジスト下層膜を形成した。このレジスト下層膜上に、レジスト中間膜材料(SOG-1)を塗布して220℃で60秒間ベークして膜厚35nmのレジスト中間膜(SOG-1膜)を形成し、レジスト上層膜材料(ArF用SLレジスト)を塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのレジスト上層膜を形成した。レジスト上層膜に液浸保護膜材料(TC-1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0163】
レジスト上層膜材料(ArF用SLレジスト)としては、ポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、塩基性化合物(Amine1)を、FC-430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む有機溶剤中に表11の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0164】
【表11】
【0165】
用いたポリマー(RP1)、酸発生剤(PAG1)、及び塩基性化合物(Amine1)の構造式を以下に示す。
【化34】
【0166】
液浸保護膜材料(TC-1)としては、保護膜ポリマー(PP1)を有機溶剤中に表12の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0167】
【表12】
【0168】
用いた保護膜ポリマー(PP1)の構造式を以下に示す。
【化35】
【0169】
レジスト中間膜材料(SOG-1)としてはArF珪素含有中間膜ポリマー(SiP1)で示されるポリマー、及び熱架橋触媒(CAT1)を、FC-4430(住友スリーエム社製)0.1質量%を含む有機溶剤中に表13に示す割合で溶解させ、孔径0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、レジスト中間膜材料(SOG-1)を調製した。
【0170】
【表13】
【0171】
用いたArF珪素含有中間膜ポリマー(SiP1)、熱架橋触媒(CAT1)の構造式を以下に示す。
【化36】
【0172】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR-S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、55nm1:1のポジ型のライン・アンド・スペースパターンを得た。
【0173】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによるレジスト上層膜パターンをエッチングマスクにしてSOG-1膜の加工、SOG-1膜パターンをエッチングマスクにしてレジスト下層膜の加工、レジスト下層膜パターンをエッチングマスクにしてSiO膜の加工を行った。エッチング条件は下記に示すとおりである。
【0174】
レジスト上層膜パターンのSOG-1膜への転写条件。
チャンバー圧力 10.0Pa
RFパワー 1,500W
CFガス流量 15sccm
ガス流量 75sccm
時間 15sec
【0175】
SOG-1膜パターンのレジスト下層膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75sccm
ガス流量 45sccm
時間 240sec
【0176】
レジスト下層膜パターンのSiO膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 2,200W
12ガス流量 20sccm
ガス流量 10sccm
Arガス流量 300sccm
ガス流量 60sccm
時間 180sec
【0177】
上記のレジスト下層膜材料(UL-1~15及び、比較UL―1~7)をそれぞれ、HMDS処理済みのトレンチパターン(トレンチ幅10μm、トレンチ深さ0.50μm)を有するSiOウエハー基板上に塗布し、酸素濃度が0.2%以下に管理された窒素気流下で550℃ベークした以外は、パターンエッチング試験と同じ方法で塗布膜を形成し、パターニング、ドライエッチングを行い、出来上がったパターン形状を観察した。
【0178】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4700)にて観察した結果を表14に示す。
【0179】
【表14】
【0180】
表14に示されるように、本発明のレジスト下層膜材料(UL-1~15)を使用した実施例4-1~4-15は、いずれの場合もレジスト上層膜パターンが最終的に基板まで良好に転写されており、本発明のレジスト下層膜材料は多層レジスト法による微細加工に好適に用いられることが確認された。一方で、400℃及び550℃の各ベーク温度後における耐熱特性評価、埋め込み特性評価、及び平坦化特性評価において性能の不足が確認された比較例4-1~4-7では、パターン加工時にパターン倒れが発生し、最終的に良好なパターンを得ることができなかった。
【0181】
以上のことから、本発明のレジスト下層膜材料であれば、良好なドライエッチング耐性を有するとともに、高度な埋め込み/平坦化特性/基板との密着力を併せ持ち、さらに500℃以上の耐熱特性を持つため、多層レジスト法に用いるレジスト下層膜材料として極めて有用であり、またこれを用いた本発明のパターン形成方法であれば、被加工体が段差を有する基板であっても、微細なパターンを高精度で形成できることが明らかとなった。
【0182】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0183】
1…被加工基板、 2…被加工層、
2a…パターン(被加工層に形成されるパターン)、
3…レジスト下層膜、 3a…レジスト下層膜パターン、 4…レジスト中間膜、
4a…レジスト中間膜パターン、 5…レジスト上層膜、
5a…レジスト上層膜パターン、 6…露光部分、
7…密集ホールパターンを有する下地基板、 8…レジスト下層膜、
9…密集ホールパターンを有する下地基板、 10…レジスト下層膜、
Delta 10…ホールパターン密集部分と非ホールパターン形成部分のレジスト下層膜10の段差。
図1
図2
図3