(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-22
(45)【発行日】2025-07-30
(54)【発明の名称】組成物の製造方法、及び混合方法
(51)【国際特許分類】
B01F 21/00 20220101AFI20250723BHJP
B01F 23/47 20220101ALI20250723BHJP
B01F 27/92 20220101ALI20250723BHJP
【FI】
B01F21/00 101
B01F23/47
B01F27/92
(21)【出願番号】P 2020194063
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】垣内 暢之
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-231563(JP,A)
【文献】特開2015-008070(JP,A)
【文献】特開2014-169199(JP,A)
【文献】特開2009-137917(JP,A)
【文献】特開2013-151621(JP,A)
【文献】実公昭51-029578(JP,Y1)
【文献】特開2018-076424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00
B01F 23/47
B01F 27/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボン翼が配された撹拌槽内において、
下記粘度測定方法で求められる粘度が10,000mPa・s以上の高粘性液体と粗粉が除かれた粉末とを、前記リボン翼によって撹拌し、前記
高粘性液体に前記粉末を溶解させる撹拌及び溶解工程と、
前記撹拌及び溶解工程を経て得られた第1組成物を冷却する工程と、
下記粘度測定方法で求められる粘度が1,000mPa・s以下の低粘性液体を前記第1組成物が入った前記撹拌槽に追加し、前記リボン翼によって撹拌する撹拌工程と、
前記撹拌工程を経て得られた組成物を濾材でろ過する工程と、
を含むことを特徴とする組成物の製造方法。
(粘度測定方法)
・装置:E型粘度計
・コーンローター種類:1°34×R24
・温度:25℃
・回転数:1rpm
・待機時間:2分
【請求項2】
更に、前記ろ過する工程の後に、目視で前記濾材を観察し、前記粉末が溶解していることを確認する工程を含む請求項1に記載の組成物の製造方法。
【請求項3】
前記粉末が、光重合開始剤を含む、請求項1
又は2に記載の組成物の製造方法。
【請求項4】
前記粗粉が除かれた粉末が、分級によって粗粉が取り除かれた粉末である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【請求項5】
前記低粘性液体が、反応性モノマーを含有する、請求項1~4のいずれかに記載の組成物の製造方法。
【請求項6】
リボン翼が配された撹拌槽内において、
下記粘度測定方法で求められる粘度が10,000mPa・s以上の高粘性液体と粗粉が除かれた粉末とを、前記リボン翼によって撹拌し、前記
高粘性液体に前記粉末を溶解させる撹拌及び溶解工程と、
前記撹拌及び溶解工程を経て得られた第1組成物を冷却する工程と、
下記粘度測定方法で求められる粘度が1,000mPa・s以下の低粘性液体を前記第1組成物が入った前記撹拌槽に追加し、前記リボン翼によって撹拌する撹拌工程と、を含み、
前記粉末が、光重合開始剤を含む、ことを特徴とする混合方法。
(粘度測定方法)
・装置:E型粘度計
・コーンローター種類:1°34×R24
・温度:25℃
・回転数:1rpm
・待機時間:2分
【請求項7】
前記粗粉が除かれた粉末が、分級によって粗粉が取り除かれた粉末である、請求項
6に記載の混合方法。
【請求項8】
前記低粘性液体が、反応性モノマーを含有する、請求項6又は7に記載の混合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体及び粉末を効率的に均一化する新しい混合方法、及び当該混合方法を用いた組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撹拌による異種成分の溶解・均一化はあらゆる分野で不可欠な技術である。製造業においては、本来は均一状態にすべき成分が不均一な状態では、製品品質の保証が不可能であり、工業製品として成立しない。
例えば医薬品においては人体に悪影響を及ぼす不純物の閾値が設定されているが、成分が不均一な場合にはその値が変動するため、製品品質の合否判定が不可能となる。
また、最先端のディスプレイや半導体向けの材料では、材料に成分の溶け残りが存在する場合、それが異物となって成型時に欠陥を生じ、後工程での歩留まりを大きく低下させる。
【0003】
特に半導体向け材料では、シリコーン樹脂の様な高粘性液体が主成分(ベースポリマー)として使用され、硬化後の製品成型時の寸法を安定させることが可能となる。通常、このベースポリマーに反応性モノマーの様な異粘性液体や、重合開始剤や酸化防止剤の様な粉末の添加剤を加え、均一溶解させることで、製品ワニスとしている。
その為、高粘性液体と低粘性液体、もしくは低粘性液体と粉末に関しては、撹拌による溶解・均一化を効率よく可能とする技術の研究開発が現在も熱心にされ続けており、多数の先行技術が報告されている。
【0004】
例えば、粉末を低粘性液体中で撹拌して溶解させるには、剪断力が高いタービン翼が適しており広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、タービン翼での流体のフローパターンは翼の中心部から外側(ラジアル方向)となり、上下方向の吐出力が限定される。その為、低粘性液体中では高い撹拌効果を発揮するが、高粘性液体中では局所的な撹拌となり、吐出力が不足して全体的な均一化は不可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、液体及び粉末を効率的に均一化する新しい混合方法、及び当該混合方法を用いた組成物の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、高粘性液体、低粘性液体、及び粉末を単一の撹拌翼及び撹拌槽で均一化することを可能にする混合方法、及び組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、前記の課題を解決出来ることを見出し、以下の要旨を有する本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] リボン翼が配された撹拌槽内において、液体と粗粉が除かれた粉末とを、前記リボン翼によって撹拌し、前記液体に前記粉末を溶解させる撹拌及び溶解工程を含むことを特徴とする組成物の製造方法。
[2] 前記液体が、高粘性液体である、[1]に記載の組成物の製造方法。
[3] 更に、前記撹拌及び溶解工程の後に、前記液体である第1液体よりも低粘性の第2液体を前記撹拌槽に追加し、前記リボン翼によって撹拌する撹拌工程を含む[1]に記載の組成物の製造方法。
[4] 前記第1液体が、高粘性液体であり、前記第2液体が、低粘性液体である、[3]に記載の組成物の製造方法。
[5] 前記液体が、低粘性液体である、[1]に記載の組成物の製造方法。
[6] 更に、前記撹拌及び溶解工程の後に、前記液体である第1液体よりも高粘性の第2液体を前記撹拌槽に追加し、前記リボン翼によって撹拌する撹拌工程を含む[1]に記載の組成物の製造方法。
[7] 前記第1液体が、低粘性液体であり、前記第2液体が、高粘性液体である、[6]に記載の組成物の製造方法。
[8] 前記粉末が、光重合開始剤を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物の製造方法。
[9] 前記粗粉が除かれた粉末が、分級によって粗粉が取り除かれた粉末である、[1]~[8]のいずれかに記載の組成物の製造方法。
[10] リボン翼が配された撹拌槽内において、液体と粗粉が除かれた粉末とを、前記リボン翼によって撹拌し、前記液体に前記粉末を溶解させる撹拌及び溶解工程を含むことを特徴とする混合方法。
[11] 前記液体が、高粘性液体である、[10]に記載の混合方法。
[12] 更に、前記撹拌及び溶解工程の後に、前記液体である第1液体よりも低粘性の第2液体を前記撹拌槽に追加し、前記リボン翼によって撹拌する撹拌工程を含む[10]に記載の混合方法。
[13] 前記第1液体が、高粘性液体であり、前記第2液体が、低粘性液体である、[12]に記載の混合方法。
[14] 前記液体が、低粘性液体である、[10]に記載の混合方法。
[15] 更に、前記撹拌及び溶解工程の後に、前記液体である第1液体よりも高粘性の第2液体を前記撹拌槽に追加し、前記リボン翼によって撹拌する撹拌工程を含む[10]に記載の混合方法。
[16] 前記第1液体が、低粘性液体であり、前記第2液体が、高粘性液体である、[15]に記載の混合方法。
[17] 前記粉末が、光重合開始剤を含む、[10]~[16]のいずれかに記載の混合方法。
[18] 前記粗粉が除かれた粉末が、分級によって粗粉が取り除かれた粉末である、[10]~[17]のいずれかに記載の混合方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液体及び粉末を効率的に均一化する新しい混合方法、及び当該混合方法を用いた組成物の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、高粘性液体、低粘性液体、及び粉末を単一の撹拌翼及び撹拌槽で均一化することを可能にする混合方法、及び組成物の製造方法を提供することができる。
このような本発明によれば、半導体向け材料、ディスプレイ向け材料、基礎化学品材料、医農薬製剤、化粧品、食品における既存の組成物の製造を効率化可能である。加えて、これまでの方法では均一化が困難であった組成物(特に高粘性液体と粉末からなる組成物)が効率的に製造可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、液体及び粉末を効率的に均一化する新しい混合方法、及び当該混合方法を用いた組成物の製造方法を提供するために、更には、高粘性液体、低粘性液体、及び粉末を単一の撹拌翼及び撹拌槽で均一化することを可能にする混合方法、及び組成物の製造方法を提供するために、鋭意検討を行った。
【0012】
一般的に撹拌の作用は物質を剪断する力(H)と液を循環させる吐出力(Q)の二つに分けられる。
撹拌動力をPとすると、P∝H・Qとなり、剪断力(H)と吐出力(Q)は相反する作用となる。その為、効率的な溶解・均一化には、溶解させる対象の組み合わせに適した複数の撹拌翼の選定が必要となる。
【0013】
前述のとおり、タービン翼での流体のフローパターンは翼の中心部から外側(ラジアル方向)となり、上下方向の吐出力が限定される。その為、低粘性液体中では効果を発揮するが、高粘性液体中では局所的な撹拌となり、吐出力が不足して全体的な均一化は不可能となる。
【0014】
一方で高粘性液体と低粘性液体の混合及び均一溶解には、吐出力が大きく、液を上下に流動させやすいリボン翼が適している事が公知である(例えば特開平6-154573号公報参照)。ダブルヘリカルリボン翼では幅広い粘度域で液-液の混合・均一溶解が可能である。
しかし、高粘性液体中で粉末を溶解させる場合には、撹拌翼に粉末が付着して共回り現象を起こすので、溶解が十分に促進されない。また、剪断力の行き届かないリボン翼の内側では滞留が起こる為に、固(粉末)-液間での均一溶解を達成できない。
【0015】
更に、タービン翼やリボン翼に変えてパドル翼・ゲート翼等の複数の撹拌翼を一体化させた撹拌翼や(例えば、特開平9-108557号公報参照)、撹拌軸を複数設置して撹拌動力を増大させると共に、異なる撹拌翼を組み合わせた装置が考案されている(例えば、特開平4-215829号公報参照)。しかし、前者は適用可能な高粘度領域がリボン翼より低く、シリコーンポリマーの様な数十~数百万mPa・sの高粘度域には適用できない。後者は電力使用量が増加し、かつ撹拌翼と装置が複雑化する為に、運転コスト、導入コスト及び保全コストの増加、そして槽内の洗浄性の悪化を招き交差コンタミネーション防止の観点からキャンペーン毎に多量の洗浄溶媒が必要となり装置洗浄コストが増加する。
【0016】
即ち、高粘性液体、低粘性液体、及び粉末を単一の撹拌翼及び撹拌槽にて均一溶解する方法はこれまで知られていなかった。撹拌動力を無駄に消費しない為には、特開平11-140179号公報に示される様式として低粘性向けの撹拌槽と高粘性向けの撹拌槽を使用する必要が有る。第一工程として剪断力に優れたタービン翼を備えた撹拌槽で低粘性液体中に粉末を溶解させて均一溶液とする。その後工程として吐出力に優れたリボン翼を備えた別の撹拌槽で高粘性液体中に先の均一溶液を投入して撹拌する事により、最終的な均一溶液とする工程が必要となる。しかしこの場合、複数の撹拌翼及び撹拌槽を用いる必要があり、洗浄工程などが増える結果、生産効率が著しく低下する。
【0017】
前記を踏まえ、本発明者は鋭意検討を行ったところ、リボン翼を用いて液体及び粉末を撹拌する際に、粗粉を除いた粉末を用いることで、撹拌翼に粉末が付着して共回り現象を起こすことを避けることができ、かつリボン翼の内側での滞留による粉末の溶解不良を防ぐことができるなどして、リボン翼を用いた場合でも粉末を効率的に液体に溶解できることを見出した。
即ち、リボン翼が配された撹拌槽内において、液体と粗粉が除かれた粉末とを、リボン翼によって撹拌し、液体に粉末を溶解させる撹拌及び溶解工程を行うことで、液体及び粉末を効率的に均一化できることを見出した。
リボン翼は、高粘性液体と低粘性液体との混合及び撹拌に適している。そのため、前記撹拌及び溶解工程において、まず、粗粉が除かれた粉末とともに液体として高粘性液体を用い、液体及び粉末を効率的に均一化した後に、高粘性液体よりも低粘性の液体を撹拌槽に追加し、リボン翼によって撹拌する撹拌工程を行えば、高粘性液体、低粘性液体、及び粉末を単一の撹拌翼及び撹拌槽で均一化することが可能であることを見出した。
また、前記撹拌及び溶解工程において、まず、粗粉が除かれた粉末とともに液体として低粘性液体を用い、液体及び粉末を効率的に均一化した後に、低粘性液体よりも高粘性の液体を撹拌槽に追加し、リボン翼によって撹拌する撹拌工程を行えば、高粘性液体、低粘性液体、及び粉末を単一の撹拌翼及び撹拌槽で均一化することが可能であることを見出した。
【0018】
なお、特開2011-42746号公報の一実施形態では、単一の撹拌槽で低粘性モノマー中に粒度が規定されたポリマー固体を投入して撹拌し溶解している。しかし、当該公報において、ポリマー固体の粒度を規定する目的はポリマー粒子の終端沈降速度の低減による槽内の閉塞抑制であり、ポリマー固体の粒度が溶解現象そのものに与える影響には言及されていない。
【0019】
<混合方法、組成物の製造方法>
本発明の混合方法は、撹拌及び溶解工程を含み、好ましくは撹拌工程を含む。
本発明の組成物の製造方法は、撹拌及び溶解工程を含み、好ましくは撹拌工程を含む。
【0020】
<<撹拌及び溶解工程>>
撹拌及び溶解工程としては、リボン翼が配された撹拌槽内において、液体と粗粉が除かれた粉末とを、リボン翼によって撹拌し、液体に粉末を溶解させる工程であれば、特に限定されない。
【0021】
<<<リボン翼及び撹拌槽>>>
リボン翼は、螺旋状にねじられたリボン状のブレードを有する撹拌翼であり、ヘリカルリボン翼とも呼ばれる。
本発明の説明において、リボン翼及び撹拌翼とは、ブレードのみを指すのではなく、撹拌軸も含む、撹拌時に回転する部位全体(ただし、撹拌モーターを除く)を指す。
【0022】
リボン翼における螺旋状にねじられたリボン状のブレード(以下、「リボン状のブレード」と称することがある)の数としては、特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上であってもよいが、より好適な撹拌を実現しつつ、適切な数で使用後の洗浄を容易にする観点から、好ましくは1~2である。
リボン状のブレードの幅、及び厚みとしては、特に限定されない。
リボン状のブレードの材質としては、この種の用途に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、ステンレス鋼が挙げられる。
リボン状のブレードには、例えば、特開2000-233122号公報の
図1に記載されているように、外側端部より突出する突出部が設けられていてもよい。
【0023】
リボン翼は、リボン状のブレードの他に、撹拌軸を有する。
撹拌軸は、特開平11-181086号公報の
図1(B)に記載の縦型反応装置の撹拌軸1のように、ヘリカルリボン翼3の回転中心軸を上部から下部に貫通していてもよい。この態様では、リボン状のブレード(特開平11-181086号公報のヘリカルリボン翼3)は、例えば、撹拌軸から垂直に延設された支持棒によって撹拌軸に固定されている。
撹拌軸は、特開平11-181086号公報の
図1(A)に記載の縦型反応装置の撹拌軸1のように、ヘリカルリボン翼3が回転してできる円柱空間内の回転中心軸には存在しない態様であってもよい。この態様では、リボン状のブレード(特開平11-181086号公報のヘリカルリボン翼3)は、例えば、撹拌軸と接続されかつリボン状のブレードに接するフレームに固定されている。
【0024】
また、リボン翼は、リボン状のブレードの他に、他のブレードなどを有していてもよい。
リボン翼は、例えば、他のブレードとして、特開平06-154573号公報の請求項1及び
図1に記載されているように、ヘリカルリボン翼(6)(本発明におけるリボン状のブレード)に基端部(a)が連設され且つ先端部(c)が底板(3)に対して略垂直で且つその中心近傍に配設される帯状のボトムリボン翼(7)を有していてもよい。
また、リボン翼は、他のブレードとして、再表2017/002905号公報の請求項1及び
図1に記載されているように、流動翼(リボン状のブレード)の回転中心と同心の回転中心を有するせん断翼を有していてもよい。
【0025】
リボン翼としては、例えば、V型ヘリカルリボン翼、シングルヘリカルリボン翼、ダブルヘリカルリボン翼などが挙げられる。
リボン翼は市販品であってもよいし、非市販品であってもよい。リボン翼を備えた撹拌装置の市販品としては、例えば、住友重機械プロセス機器(株)製のSUPERBLEND(登録商標)、NANOVisK(登録商標)などが挙げられる。
【0026】
ここで、リボン翼の一例を
図1に示す。なお、本発明で用いられるリボン翼は、前記のとおり様々な態様をとりうるため、
図1のリボン翼に限定されない。
図1のリボン翼は、1本の撹拌軸1と、4本の支持棒2と、2枚のリボン状のブレード3と、2枚のボトムリボン翼4とを有する。撹拌軸1は、2枚のリボン状のブレード3の回転中心軸に存在し、2枚のリボン状のブレード3が回転してできる円柱空間を上下に貫通している。2枚のリボン状のブレード3は、撹拌軸1から垂直に延設された4本の支持棒2によって撹拌軸1に固定されている。2枚のボトムリボン翼4のそれぞれの一方の端部は、リボン状のブレード3の下端部に接続され、他方の端部は、撹拌軸1の下端部付近に接続されている。
【0027】
撹拌槽としては、その材質、大きさ、形状、構造などについては、特に限定されない。
撹拌槽の大きさとしては、リボン翼を格納可能であれば、特に限定されない。
撹拌槽の材質としては、例えば、ステンレス鋼であってもよいし、ガラスであってもよい。
撹拌槽の内周壁の横断面形状は、通常、円形である。
撹拌槽の槽容積としては、特に限定されるものではないが、通常0.5L~1000Lであり、その上限値は、より均一な混合を再現性よく実現する観点、撹拌槽のスペースを抑制する観点等から、好ましくは500L、より好ましくは150L、より一層好ましくは100L、更に好ましくは50L、更に一層好ましくは30Lであり、その下限値は、より大スケールの混合によって効率よく混合物を製造する観点等から、好ましくは1L、より好ましくは10L、より一層好ましくは20Lである。
撹拌槽は、通常、上部に開口部を有する縦型撹拌槽である。
【0028】
撹拌槽内にリボン翼が配された状態における、リボン翼の回転時の最外周部と撹拌槽の内周壁との間隔としては、特に限定されるものではないが、ある態様においては、撹拌槽の内径の1%~20%であり、その他のある態様においては、1%~10%である。
【0029】
撹拌及び溶解工程においてリボン翼を回転させる際の撹拌動力としては、特に限定されず、液体及び粉末それぞれの量、液体と粉末との割合、液体の粘度等に応じて、適宜選択することができる。
【0030】
撹拌及び溶解工程の時間としては、特に限定されないが、例えば、0.5時間~10時間であってもよいし、1時間~5時間であってもよい。
撹拌及び溶解工程における撹拌及び溶解の際、混合する成分の変質等が生じない範囲内で、必要に応じて適宜加熱してもよい。撹拌及び溶解工程における撹拌及び溶解の際の温度としては、例えば、20℃~60℃であってもよいし、20℃~50℃であってもよいし、25℃~45℃であってもよい。
【0031】
混合方法、及び組成物の製造方法に使用され、リボン翼、及び撹拌槽を有する撹拌装置は、バッフル、邪魔板などのその他の部材を有していてもよい。ただし、使用後の撹拌装置を洗浄する際の容易性を高める観点から、撹拌装置は、バッフル、及び邪魔板を有していないことが好ましい。
【0032】
<<<液体>>>
使用する液体としては、特に限定されず、例えば、専ら有機溶媒として用いられる液体の1種又は2種以上の混合物であってもよく、専ら有機材料として用いられる液体の1種又は2種以上の混合物であってもよく、それらの混合物であってもよい。
【0033】
液体は、その粘度の大きさによって、高粘性液体、低粘性液体に分けることができる。
撹拌状態と粘度に関する指標として撹拌レイノルズ数Reがあり、Re=慣性力/粘性力=d2・n・ρ/μで表される(d=翼径、n=回転数、ρ=液密度、μ=粘度)。一般的にRe<50で層流域、50≦Re≦1000で遷移域、1000<Reで乱流域になるとされる。粘性力が支配的な層流域と遷移域との境界付近になる粘度を有する液体を撹拌における高粘性液体とした場合、高粘性液体とは、例えば、粘度が10,000mPa・s以上である粘性液体を指し、本発明においても、高粘性液体とは、その粘度が10,000mPa・s以上の液体を意味する。
この点、本発明で用いる高粘性液体の粘度は、10,000mPa・s以上であれば特に限定されず、例えば、50,000mPa・s以上であってもよいし、100,000mPa・s以上であってもよいし、1,000,000mPa・s以上であってもよい。
一方、低粘性液体とは、慣性力が支配的な乱流域と遷移域との境界付近になる粘度を有する液体を撹拌における低粘性液体とした場合、例えば、粘度が1,000mPa・s以下である粘性液体を指し、本発明においても、低粘性液体とは、その粘度が1,000mPa・s以下の液体を意味する。
この点、本発明で用いる低粘性液体の粘度は、1,000mPa・s以下であれば特に限定されず、例えば、500mPa・s以下であってもよいし、100mPa・s以下であってもよいし、10mPa・s以下であってもよい。
なお、本発明においては、高粘性液体と低粘性液体との間の粘性液体として中粘性液体を設定してもよい。例えば、粘度が1,000mPa・sより大きく10,000mPa・s未満の液体を中粘性液体として設定してもよい。中粘性液体は、組成物を製造するにあたり、必要に応じて用いることができる。
【0034】
本発明において規定する粘度は、以下の条件によって測定することができる。
・装置:東機産業(株)製 E型粘度計TV-35H
・コーンローター種類:1°34×R24
・温度:25℃
・回転数:1rpm
・待機時間:2分
【0035】
液体又は高粘性液体は、例えば、ポリマーを含有する。
液体又は低粘性液体は、例えば、反応性モノマー、反応性添加剤、添加剤を含有する。
ポリマー、反応性モノマー、及び反応性添加剤は、例えば、重合性基を有する。重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、アニオン重合性基が挙げられる。ラジカル重合基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。
【0036】
<<<粉末>>>
撹拌及び溶解工程において用いられる粉末は、予め粗粉が除かれている。
粉末から粗粉を除く方法としては、特に限定されず、例えば、分級により粗粉を取り除く方法であってもよいし、粗粉を含む粉末を粉砕することによって粉末から粗粉を無くす方法であってもよい。
分級により粗粉を取り除く方法としては、例えば、篩分けが挙げられる。
例えば、本発明の組成物の製造方法、及び混合方法においては、粗粉を含む粉末から粗粉を除く工程を含んでいてもよい。そして、粗粉を除く工程としては、例えば、分級により粗粉を取り除く工程であってもよいし、粗粉を含む粉末を粉砕することによって粉末から粗粉を無くす工程であってもよい。
【0037】
粉末の大きさとしては、特に限定されないが、好適な撹拌及び均一化を再現性よく実現する観点から、目開き3mmの篩を通過する大きさであることが好ましく、目開き2mmの篩を通過する大きさであることがより好ましく、目開き1mmの篩を通過する大きさであることがより一層好ましい。
【0038】
粉末としては、用いる液体に溶解可能な限り、特に限定されないが、例えば、有機成分を含む材料の粉末である。有機成分を含む材料の粉末としては、例えば、各種添加剤、重合開始剤などが挙げられる。重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤などが挙げられる。重合開始剤は、熱重合開始剤であってもよいし、光重合開始剤であってもよい。
【0039】
本発明において、その効果が発揮される一例としては、粉末の光重合開始剤の撹拌溶解が挙げられる。何故ならば、光重合開始剤は、その特性上、光を吸収する部位として芳香環や複素環を含むことが多い為に、大きな分子間相互作用により分子同士がスタックしやすくなり、常温では大粒子の粉体となって液体に溶解しにくいことが多いからである。このような事情の下、側鎖にアルキル構造を追加して溶解性を向上させた光重合開始剤や、予め液体の化合物に溶解させた光重合開始剤が開発されているが、いずれの場合にも、重合を開始する為の活性種の発生の実効成分(例えば、ラジカル発生の実効成分)の濃度の低下を招くので、トータルコストの増加や、重合速度の低下による硬化不良といった問題が引き起こされ得る。
この点、本発明では、スタックしやすく、常温では大粒子の粉体となりやすい光重合開始剤であっても、好適に液体に溶解させ、好適な均一化を実現できる。
【0040】
粉体の光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルフェノン類、ベンゾフェノン類、アシルホスフィンオキシド類、ミヒラー(Michler)のケトン類、ベンゾイルベンゾエート類、オキシムエステル類、テトラメチルチウラムモノスルフィド類、チオキサントン類等が挙げられる。
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤の場合に均一化の効果が発揮される。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(159頁、発行人:高薄一弘、発行所:(株)技術情報協会、1991年発行)に記載されているものが挙げられる。
市販されている光ラジカル重合開始剤としては、例えば、OMNIRAD(登録商標)127、同184、同369、同369E、同379EG、同410、同500、同651、同819、同907、同2959、同4MBZ FLAKES、同4PBZ、同BMS、同BP FLAKES、同DETX、同EMK、同ITX、同OMBB、同TPO-H、ESACURE(登録商標)KIP100F、同KIP150(低温で固化)、同KIP160、同1001M、同A1980、同ONE、同3644[以上、iGM Resins B.V.(株)製]、IRGACURE(登録商標)379、同784、同1800、同1870、OXE01、同OXE02、同OXE03、同OXE04、Darocur(登録商標)EDB[以上、BASFジャパン(株)製]、等を挙げることができる。
【0041】
液体と粉末との組み合わせとしては、例えば、ポリマーを含有する高粘性液体と、反応性モノマーを含有する低粘性液体と、有機成分を含む材料の粉末(例えば、重合開始剤)との組み合わせが挙げられる。
【0042】
液体と粉末との組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば、特表2014-510159号公報に記載の重合性組成物における、以下の各組成が挙げられる。
高粘性液体:式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物と式[2]及び式[2b]で表される化合物から選択されるケイ素化合物とを、酸又は塩基存在下重縮合して得られる反応性シリコーン化合物
低粘性液体:アルケニル基及び(メタ)アクリル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの重合性基を有する化合物
粉末:重合開始剤(例えば、光重合開始剤)
【化1】
(式中、
Ar
1及びAr
2は、それぞれ独立して、炭素原子数1ないし6のアルキル基で任意に置換されたフェニル基を表し、
Xは、加水分解性の縮合反応を受け得る基を表し、
ここで、Ar
3は、重合性二重結合を有する少なくとも1つの基で置換されたナフチル基又はアントラシル基を表すか、又は
Ar
3は、ビニル基以外の重合性二重結合を有する少なくとも1つの基で置換されたフェニル基若しくは重合性二重結合を有する少なくとも2つの基で置換されたフェニル基を表す。)
【0043】
また、液体と粉末との他の組み合わせとしては、例えば、特許6156673号公報に記載の光導波路形成用組成物における、以下の各組成が挙げられる。
高粘性液体:式[1]で表されるジアリールケイ酸化合物Aと、式[2]で表されるアルコキシケイ素化合物Bとの重縮合物又は該ジアリールケイ酸化合物Aと該アルコキシケイ素化合物Bとその他の重縮合性化合物との重縮合物からなる反応性シリコーン化合物
低粘性液体:式[3]で表されるジ(メタ)アクリレート化合物
粉末:重合開始剤(例えば、光重合開始剤)
【化2】
(式[1]中、Ar
1及びAr
2はそれぞれ独立して、炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいナフチル基、又は炭素原子数1乃至6のアルキル基で置換されていてもよいビフェニル基を表す。
式[2]中、Ar
3は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するフェニル基、重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するナフチル基、又は重合性二重結合を有する基を少なくとも1つ有するビフェニル基を表し、R
1はそれぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、R
2はメチル基、エチル基又はビニルフェニル基を表し、aは2又は3を表す。
式[3]中、R
3及びR
4はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、R
5は水素原子、メチル基又はエチル基を表し、L
1及びL
2はそれぞれ独立して、炭素原子数2乃至6のアルキレン基を表し、m及びnはm+nが0乃至20となる0又は正の整数を表す。)
【0044】
また、液体と粉末との他の組み合わせとしては、例えば、ウエハレベルレンズに用いられる光硬化性樹脂組成物が挙げられる。具体的には、例えば、特開2013-043982号公報に記載の光硬化性樹脂組成物における、以下の各組成が挙げられる。
高粘性液体:脂肪族環状炭化水素基を有する、重量平均分子量40,000以下の樹脂
低粘性液体:脂肪族環状炭化水素基と重合性基を有する化合物
粉末:活性光線もしくは放射線の照射により、ラジカルもしくは酸を発生する化合物
【0045】
また、液体と粉末との他の組み合わせとしては、WO2020/003863号パンフレットに記載の、ウエハレベルレンズに用いられるインプリント用光硬化性組成物における液体と粉末との組み合わせであってもよい。
WO2020/003863号パンフレットに記載の液体のうち、低粘性液体としては、例えば、化合物1分子中に(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2つ有し、芳香環を含まない化合物が挙げられる。ここで芳香環とは、ヒュッケル則を満たす炭素環又は複素環、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フェナントレン、ピレン、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン及びトリアジンが挙げられる。したがって、芳香環を含まないとは、ヒュッケル則を満たす炭素環又は複素環を含まないことを意味する。該芳香環を含まない多官能(メタ)アクリレート化合物として、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンモノエチレンオキサイドポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸トリス(2-アクリロイルオキシエチル)が挙げられる。
【0046】
芳香環を含まない多官能(メタ)アクリレート化合物として市販品を用いてもよく、例えば、NKエステル A-200、同A-400、同A-600、同A-1000、同A-9300、同A-9300-1CL、同1G、同2G、同3G、同4G、同9G、同14G、同23G、同A-GLY-3E、同A-GLY-9E、同A-GLY-20E、同A-TMPT-3EO、同A-TMPT-9EO、同ATM-4E、同ATM-35E、同A-DPH、同A-TMPT、同A-DCP、同A-HD-N、同A-NOD-N、同AD-TMP、同A-DOG、同TMPT、同DCP、同NPG、同HD-N、同NOD-N、同D-TMP(以上、新中村化学工業(株)製)、KAYARAD(登録商標)DPHA、同NPGDA、同PET30、同DPEA-12、同PEG400DA、同RP-1040(以上、日本化薬(株)製)、M-210、M-350(以上、東亞合成(株)製)が挙げられる。
【0047】
<<撹拌工程>>
混合方法、及び組成物の製造方法においては、更に撹拌工程を含むことが好ましい。
撹拌工程の一態様は、撹拌及び溶解工程の後に、液体である第1液体よりも低粘性の第2液体を撹拌槽に追加し、リボン翼によって撹拌する工程である。ここで、例えば、第1液体は、高粘性液体であり、第2液体は、低粘性液体である。
撹拌工程の他の態様の一例は、例えば、撹拌及び溶解工程の後に、液体である第1液体よりも高粘性の第2液体を撹拌槽に追加し、リボン翼によって撹拌する工程である。ここで、例えば、第1液体は、低粘性液体であり、第2液体は、高粘性液体である。
【0048】
撹拌工程においてリボン翼を回転させる際の撹拌動力としては、特に限定されず、第1液体及び第2液体それぞれの量、第1液体及び第2液体の粘度等に応じて、適宜選択することができる。好ましくは減速機とインバータを使用して電動機に過負荷を与えない範囲で、撹拌による溶解、均一化に好ましい撹拌回転数を調整して設定すればよい。リボン翼における所用撹拌動力に関する検討結果(非特許文献J.Chem.Eng.Japan,15,77-79(1982))が参考となる。
【0049】
撹拌工程の時間としては、特に限定されないが、例えば、0.05時間~5時間であってもよいし、0.1時間~3時間であってもよい。
撹拌工程における撹拌の際の温度としては、特に限定されないが、例えば、20℃~60℃であってもよいし、20℃~50℃であってもよいし、25℃~45℃であってもよい。
【0050】
撹拌する液体と粉体の割合は、粉体の液体に対する溶解度によって適時調整すればよい。例えば、液体の量は撹拌温度で飽和溶解度となる量以上であり、好ましくはその2倍以上、より好ましくはその5倍以上である。
【0051】
高粘性液体、低粘性液体、及び粉末を用いた混合方法、及び組成物の製造方法において、粉末として光重合開始剤などの重合開始剤を用い、低粘性液体として反応性モノマーを用いる場合を考える。
そのような場合においては、低粘性液体に粉末を溶解させようとすると、撹拌エネルギーや溶解熱等により系内温度が上昇し(例えば、45℃程度になり)、それが引き金になり反応性モノマーによる重合反応の暴走が起こる可能性がある。他方、高粘性液体ではそのような可能性は少ない。
そこで、前記のような場合には、まず、撹拌及び溶解工程において高粘性液体に粉末を溶解させた後に、冷却する事で安全化してから撹拌工程において低粘性液体を撹拌槽に追加し、混合、及び組成物の製造を行うことが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0053】
本実施例において用いた、リボン翼Aを用いた撹拌混合条件(1)及び(2)を以下に示す。
(1):撹拌混合条件(1)
・装置:リボン翼撹拌混合装置
・槽容積:10L
・槽内全長:450mm
・槽内径:200mm
・撹拌翼:リボン翼A-1
・撹拌翼全高:390mm
・撹拌翼外径:190mm
・撹拌翼幅:20mm
・バッフル、邪魔板:無し
・材質:SUS304(ステンレス鋼)
・撹拌機:防爆型インバータモータ付サイクロ減速機、減速比1/21、出力0.4kW、極数4P、周波数60Hz、電源200V
【0054】
(2):撹拌混合条件(2)
・装置:リボン翼撹拌混合装置 槽容積:5L
・槽内全長:360mm
・槽内径:150mm
・撹拌翼:リボン翼A-2
・撹拌翼全高:220mm
・撹拌翼外径:140mm
・バッフル、邪魔板:無し
・材質:槽はガラス、撹拌翼はSUS304
・撹拌機:IKA社製 電子制御撹拌機 EUROSTAR200、出力0.135kW、周波数60Hz、電源100V
【0055】
(3)撹拌翼と撹拌槽
本実施例で用いた撹拌翼と撹拌槽との組み合わせを以下の表1にまとめた。
【0056】
【0057】
<<<リボン翼の説明>>
パドル付きアンカー翼とは、https://www.shi-pe.shi.co.jp/technology/mixing-lecture/basic001/index.htmlに記載のアンカー翼において、回転軸から垂直に延設しアンカー状のブレードの下部でブレードを支持する支持棒がパドルに置き換わった形状の翼と同様の形状の翼である。
交差パネル翼Aとは、http://www.hakko-sangyo.co.jp/?page_id=542に記載の撹拌翼(BENDLEAF翼)と同様の形状の翼である。
交差パネル翼Bとは、「加藤禎人ら、種々の大型2枚パドル翼の撹拌所要動力、化学工学論文集、38巻、3号、139-143ページ(2012)、https://nitech.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=5651&item_no=1&page_id=13&block_id=21」のFig.2に記載のFULLZONE(左から2番目)と同様の形状の翼である。
大型パネル翼とは、「加藤禎人ら、種々の大型2枚パドル翼の撹拌所要動力、化学工学論文集、38巻、3号、139-143ページ(2012)、https://nitech.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=5651&item_no=1&page_id=13&block_id=21」のFig.2に記載のSupermix MR203と同様の形状の翼である。
パドル付きゲート翼とは、「加藤禎人ら、種々の大型2枚パドル翼の撹拌所要動力、化学工学論文集、38巻、3号、139-143ページ(2012)、https://nitech.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=5651&item_no=1&page_id=13&block_id=21」のFig.2に記載のMAXBLENDと同様の形状の翼である。
リボン翼A-1、A-2、B、及びCは、2枚のリボン状のブレードを持つヘリボン翼である。
リボン翼A-1、A-2、及びCの撹拌軸は、特開平11-181086号公報の
図1(A)に記載の縦型反応装置の撹拌軸1のように、ヘリカルリボン翼3が回転してできる円柱空間内の回転中心軸には存在しない。リボン状のブレード(特開平11-181086号公報のヘリカルリボン翼3)は、撹拌軸と接続されかつリボン状のブレードに接するフレームに固定されている。
リボン翼Bの撹拌軸は、特開平11-181086号公報の
図1(B)に記載の縦型反応装置の撹拌軸1のように、ヘリカルリボン翼3の回転中心軸を上部から下部に貫通している。
リボン翼B、及びCは、特開平06-154573号公報の請求項1及び
図1に記載のような、ボトムリボン翼を有する。
【0058】
(4)粘度測定
粘度測定は、以下の条件で行った。ただし、以下において記載された粘度において、測定温度が併記されている場合は、その粘度は、併記された測定温度における粘度を指す。
・装置:東機産業社製 E型粘度計TV-35H
・コーンローター種類:1°34×R24
・温度:25℃
・回転数:1rpm
・待機時間:2分
【0059】
また、化合物の略記号は以下の意味を表す。
・STMS:トリメトキシ(4-ビニルフェニル)シラン[信越化学工業(株)製] 粘度2mPa・s(25℃)
・DDT:N-ドデシルメルカプタン[日油(株)製] 粘度2mPa・s(25℃)
・DOG:ジオキサングリコールジアクリレート[新中村化学工業(株)製 NKエステルA-DOG] 粘度300mPa・s(25℃)
・DVB:ジビニルベンゼン[新日鉄住金化学(株)製 DVB-810、純度81%] 粘度1mPa・s(25℃)
・TPO:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド[iGM Resin(株)製 Omnirad(登録商標)TPO-H]
([BASFジャパン(株)製IRGACURE(登録商標)TPO]と同等品)
・184:ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[iGM Resin(株)製 Omnirad(登録商標)184]([BASFジャパン(株)製IRGACURE(登録商標)184]と同等品)
【0060】
〔高粘性液体と低粘性液体との均一溶解〕
リボン翼が高粘性液体と低粘性液体との均一溶解性に優れていることの確認として、以下の参考例1~16を行った。以下において撹拌の際の液温を記載しない場合、常温(25℃)で撹拌を行った。
【0061】
[参考例1] 高粘性液体と低粘性液体の均一溶解の効率確認(リボン翼A-2)
5L丸底セパラブルガラス製反応容器(内径150mm、高さ360mm)に、SUS304製で翼径140mm、翼全高220mmのリボン翼A-2をセットし、前述の撹拌混合条件(2)にて撹拌を行った。具体的には以下の通りである。
予めイオン交換水を添加して粘度を292000mPa・sに調整した水飴(無色透明)4299gをこの容器に静かに入れた。続いて混合状態を目視確認するための着色液として、ヨウ素水溶液(褐色)96g(粘度:1mPa・s)を静かに加えた。二層に分離した液の合計の高さは215mmとなった。
容器の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機としてIKA社製 電子制御撹拌機 EUROSTAR200を使用し、単位体積当たりの撹拌動力が4.2kW/m3になる様に回転数を調整して撹拌を開始した。
目視で全体が完全に均一の褐色に着色するまでを二液が溶解するまでにかかる時間として計測した所、10分であった。均一溶解後の褐色液の粘度は81370mPa・sであった。結果を表2に示す。
【0062】
[参考例2] 高粘性液体と低粘性液体の均一溶解の効率確認(リボン翼B)
3L丸底セパラブルガラス製反応容器(内径130mm、高さ310mm)に、SUS304製で翼径125mm、翼全高140mmのリボン翼Bをセットした。
予めイオン交換水を添加して粘度を239400mPa・sに調整した水飴(無色透明)3005gをこの容器に静かに入れた。続いて混合状態を目視確認するための着色液として、ヨウ素水溶液(褐色)69g(粘度:1mPa・s)を静かに加えた。二層に分離した液の合計の高さは210mmとなった。
容器の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機としてIKA社製 電子制御撹拌機 EUROSTAR200を使用し、単位体積当たりの撹拌動力が4.2kW/m3になる様に回転数を調整して撹拌を開始した。
目視で全体が完全に均一の褐色に着色するまでを二液が溶解するまでにかかる時間として計測した所、10分であった。均一溶解後の褐色液の粘度は80100mPa・sであった。結果を表2に示す。
【0063】
[参考例3] 高粘性液体と低粘性液体の均一溶解の効率確認(リボン翼C)
2L丸底セパラブルガラス製反応容器(内径130mm、高さ220mm)に、SUS304製で翼径120mm、翼全高180mmのリボン翼Cをセットした。
予めイオン交換水を添加して粘度を292000mPa・sに調整した水飴(無色透明)2634gをこの容器に静かに入れた。続いて混合状態を目視確認するための着色液として、ヨウ素水溶液(褐色)61g(粘度:1mPa・s)を静かに加えた。二層に分離した液の合計の高さは180mmとなった。
容器の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機としてIKA社製 電子制御撹拌機 EUROSTAR200を使用し、単位体積当たりの撹拌動力が4.2kW/m3になる様に回転数を調整して撹拌を開始した。
目視で全体が完全に均一の褐色に着色するまでを二液が溶解するまでにかかる時間として計測した所、20分であった。均一溶解後の褐色液の粘度60300mPa・sであった。結果を表2に示す。
【0064】
【0065】
[参考例4~8] 高粘性液体と低粘性液体の均一溶解の効率確認(リボン翼以外)
撹拌翼を参考例1~3のリボン翼から、表1に示すそれ以外のものに変更した。混合槽として、2L丸底セパラブルガラス製反応容器(内径120mm、高さ170mm)に変更した。それ以外は参考例1と同様にして単位体積当たりの撹拌動力を同等として高粘性液体と低粘性液体の均一溶解の効率を確認した。結果、表3に示す様にリボン翼より長時間の撹拌を要し、高粘性液体と低粘性液体の均一溶解の効率が悪い事が確認できた。
【0066】
【0067】
[参考例9] 高粘性液体と低粘性液体の均一溶解の効率確認(リボン翼A-2)
参考例1を行った後、使用した混合撹拌装置を用いて、以下の実験を行った。
参考例1で得た粘度81370mPa・sの褐色液に、混合状態を目視確認するための脱色液として、チオ硫酸ナトリウム水溶液266g(粘度:1mPa・s)を静かに加えた。二層に分離した液の合計の高さは230mmとなった。
容器の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機としてIKA社製 電子制御撹拌機 EUROSTAR200を使用し、単位体積当たりの撹拌動力が3.4kW/m3になる様に回転数を調整して撹拌を開始した。
目視で全体が完全に均一の無色に脱色するまでを二液が溶解するまでにかかる時間として計測した所、10分であった。均一溶解後の無色透明液の粘度は7880mPa・sであった。結果を表4に示す。
【0068】
[参考例10] 高粘性液体と低粘性液体の均一溶解の効率確認(リボン翼B)
参考例2を行った後、使用した混合撹拌装置を用いて、以下の実験を行った。
参考例2で得た粘度80100mPa・sの褐色液に、混合状態を目視確認するための脱色液として、チオ硫酸ナトリウム水溶液218g(粘度:1mPa・s)を静かに加えた。二層に分離した液の合計の高さは225mmとなった。
容器の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機としてIKA社製 電子制御撹拌機 EUROSTAR200を使用し、単位体積当たりの撹拌動力が3.4kW/m3になる様に回転数を調整して撹拌を開始した。
目視で全体が完全に均一の無色に脱色するまでを二液が溶解するまでにかかる時間として計測した所、10分であった。均一溶解後の無色透明液の粘度は5677mPa・sであった。結果を表4に示す。
【0069】
[参考例11] 高粘性液体と低粘性液体の均一溶解の効率確認(リボン翼C)
参考例3を行った後、使用した混合撹拌装置を用いて、以下の実験を行った。
参考例3で得た粘度60300mPa・sの褐色液に、混合状態を目視確認するための脱色液として、チオ硫酸ナトリウム水溶液191g(粘度:1mPa・s)を静かに加えた。二層に分離した液の合計の高さは195mmとなった。
容器の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機としてIKA社製 電子制御撹拌機 EUROSTAR200を使用し、単位体積当たりの撹拌動力が3.4kW/m3になる様に回転数を調整して撹拌を開始した。
目視で全体が完全に均一の無色に脱色するまでを二液が溶解するまでにかかる時間として計測した所、15分であった。均一溶解後の無色透明液の粘度は6540mPa・sであった。結果を表4に示す。
【0070】
【0071】
[参考例12~16] 高粘性液体と低粘性液体の均一溶解の効率確認(リボン翼以外)
参考例4~8をそれぞれ行った後、使用した混合撹拌装置を用いて、以下の実験を行った。
参考例4~8でそれぞれ得た褐色液(粘度約80000mPa・s)を用い、混合状態を目視確認するための脱色液として、チオ硫酸ナトリウム水溶液を静かに加えた。参考例9と同様にして単位体積当たりの撹拌動力を同等として高粘性液体と低粘性液体の均一溶解の効率を確認した。結果、表5に示す様にリボン翼より長時間の撹拌を要し、高粘性液体と低粘性液体の均一溶解の効率が悪い事が確認できた。
【0072】
【0073】
参考例1~16の結果から、高粘性液体と低粘性液体の撹拌溶解にはリボン翼が優れている事が明らかとなった。
以下の高粘性液体と粉末、及び低粘性液体を撹拌溶解させる実施例、比較例はリボン翼A-1又はA-2を選定して行った。
【0074】
[実施例1] 高粘性液体と粉末の撹拌均一溶解、及び同一槽での低粘性液体の撹拌均一溶解(リボン翼A-2)
前述の撹拌混合条件(2)にて撹拌を行った。具体的には以下の通りである。
5L丸底セパラブルガラス製反応容器(内径150mm、高さ360mm)に、SUS304製で翼径140mm、翼全高220mmのリボン翼A-2をセットした。
25℃における粘度が約50000mPa・sのシリコーン樹脂2260gをこの容器に静かに入れた。続いて、予め目開き250μmの篩を用いて分級を行ったTPOの篩下の粉末70gを粉立ちしない様に静かに加えた。
容器の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機としてIKA社製 電子制御撹拌機 EUROSTAR200を使用して10rpmで撹拌を開始した。
5L丸底セパラブルガラス製反応容器をオイルバスで加熱して40~45℃に温度を調整し、65rpmまで撹拌数を高めて合計3時間撹拌した。
続いて加えるDVBおよびSTMSの重合を防止する目的で加熱を停止して冷却を行い、撹拌を停止した。撹拌中に液中に噛みこんだ気泡が抜けた後に目視で確認すると、TPOは完全に溶解しており溶け残りは無かった。
ここに25℃における粘度が1mPa・sの低粘性液体であるDVB70gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数50rpmで2時間撹拌した。続いて25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるDDT12g、及び25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるSTMS23gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数60rpmで2時間撹拌した。
撹拌停止後、槽内の2箇所から混合液のサンプリングを行って粘度を測定した。結果、25℃における粘度が5001mPa・s、4848mPa・sであり、粘度にバラつきがない事から、高粘性液体と低粘性液体が均一溶解している事を確認できた。
続いて撹拌後の液を孔径3μmの平板の濾材(ADVANTEC社製メタルファイバーシート)でろ過した。ろ過後の濾材表面を観察すると、TPOは完全に溶解しており、やはり溶け残りは確認されなかった。
結論として高粘性液体と粉末と低粘性液体が完全に均一溶解している事を確認できた。結果を表6に示す。
【0075】
[実施例2] 高粘性液体と粉末の撹拌均一溶解、及び同一槽での低粘性液体の撹拌均一溶解(リボン翼A-2)
前述の撹拌混合条件(2)にて撹拌を行った。具体的には以下の通りである。
5L丸底セパラブルガラス製反応容器(内径150mm、高さ360mm)に、SUS304製で翼径140mm、翼全高220mmのリボン翼A-2をセットした。
25℃における粘度が約300000mPa・sのシリコーン樹脂2170gをこの容器に静かに入れた。続いて、予め目開き250μmの篩を用いて分級を行ったTPOの篩下の粉末100gと、同様にして得た184の篩下の粉末67gを粉立ちしない様に静かに加えた。
容器の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機としてIKA社製 電子制御撹拌機 EUROSTAR200を使用して6rpmで撹拌を開始した。
5L丸底セパラブルガラス製反応容器をオイルバスで加熱して40~45℃に温度を調整し、60rpmまで撹拌数を高めて合計3時間撹拌した。
続いて加えるDOGおよびSTMSの重合を防止する目的で加熱を停止して冷却を行い、撹拌を停止した。撹拌中に液中に噛みこんだ気泡が抜けた後に目視で確認すると、TPOと184は完全に溶解しており溶け残りは無かった。
ここに25℃における粘度が300mPa・sの低粘性液体であるDOG1170gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数50rpmで2時間撹拌した。続いて25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるDDT17g、及び25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるSTMS33gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数60rpmで2時間撹拌した。
撹拌停止後、槽内の2箇所から混合液のサンプリングを行って粘度を測定した。結果、25℃における粘度が2357mPa・s、2313mPa・sであり、粘度にバラつきがない事から高粘性液体と低粘性液体が均一溶解している事を確認できた。
続いて撹拌後の液を孔径3μmの平板の濾材(ADVANTEC社製メタルファイバーシート)でろ過した。ろ過後の濾材表面を観察すると、TPOと184は完全に溶解しており、やはり溶け残りは確認されなかった。
結論として高粘性液体と粉末と低粘性液体が完全に均一溶解している事を確認できた。結果を表6に示す。
【0076】
[実施例3] 高粘性液体と粉末の撹拌均一溶解、及び同一槽での低粘性液体の撹拌均一溶解(リボン翼A-1)
前述の撹拌混合条件(1)にて撹拌を行った。具体的には以下の通りである。
10L製造用撹拌混合機(リボン翼A-1)に25℃における粘度が約50000mPa・sのシリコーン樹脂6790gを静かに投入した。続いて、予め目開き1mmの篩を用いて分級を行ったTPOの篩下の粉末211gを粉立ちしない様に静かに加えた。
装置の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機として防爆型インバータモータ付サイクロ減速機、減速比1/21、出力0.4kW、極数4P、周波数60Hz、電源200Vを使用して撹拌を開始した。ジャケットから加熱して40~45℃に内温を調整し、110rpmまで撹拌数を高めて合計3時間撹拌した。
続いて加えるDVBおよびSTMSの重合を防止する目的で加熱を停止して冷却を行い、撹拌を停止した。撹拌中に液中に噛みこんだ気泡が抜けた後に目視で確認すると、TPOは完全に溶解しており溶け残りは無かった。
ここに25℃における粘度が1mPa・sの低粘性液体であるDVB205gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数130rpmで2時間撹拌した。続いて25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるDDT33g、及び25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるSTMS67gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数130rpmで3時間撹拌した。
撹拌停止後、槽内の3箇所から混合液のサンプリングを行って粘度を測定した。結果、25℃における粘度が5310mPa・s、5330mPa・s、5313mPa・sであり、粘度にバラつきがない事から、高粘性液体と低粘性液体が均一溶解している事を確認できた。
続いて撹拌後の液を孔径3μmの平板の濾材(3M社製 マイクロスクリーン E)でろ過した。ろ過後の濾材表面を観察すると、TPOは完全に溶解しており、やはり溶け残りは確認されなかった。
結論として高粘性液体と粉末と低粘性液体が完全に均一溶解している事を確認できた。結果を表6に示す。
【0077】
[実施例4] 高粘性液体と粉末の撹拌均一溶解、及び同一槽での低粘性液体の撹拌均一溶解(リボン翼A-1)
前述の撹拌混合条件(1)にて撹拌を行った。具体的には以下の通りである。
10L製造用撹拌混合機(リボン翼A-1)に25℃における粘度が約300000mPa・sのシリコーン樹脂6067gを静かに投入した。続いて、予め目開き1mmの篩を用いて分級を行ったTPOの篩下の粉末280gと、同様にして得た184の篩下の粉末187gを粉立ちしない様に静かに加えた。
装置の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機として防爆型インバータモータ付サイクロ減速機、減速比1/21、出力0.4kW、極数4P、周波数60Hz、電源200Vを使用して撹拌を開始した。ジャケットから加熱して40~45℃に内温を調整し、110rpmまで撹拌数を高めて合計2時間撹拌した。
続いて加えるDOGおよびSTMSの重合を防止する目的で加熱を停止して冷却を行い、撹拌を停止した。撹拌中に液中に噛みこんだ気泡が抜けた後に目視で確認すると、TPOと184は完全に溶解しており溶け残りは無かった。
ここに25℃における粘度が300mPa・sの低粘性液体であるDOG1170gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数130rpmで3時間撹拌した。続いて25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるDDT45g、及び25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるSTMS89gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数130rpmで2時間撹拌した。
撹拌停止後、槽内の3箇所から混合液のサンプリングを行って粘度を測定した。結果、25℃における粘度が2152mPa・s、2150mPa・s、2151mPa・sであり、粘度にバラつきがない事から、高粘性液体と低粘性液体が均一溶解している事を確認できた。
続いて撹拌後の液を孔径3μmの平板の濾材(3M社製 マイクロスクリーン E)でろ過した。ろ過後の濾材表面を観察すると、TPOと184は完全に溶解しており、やはり溶け残りは確認されなかった。
結論として高粘性液体と粉末と低粘性液体が完全に均一溶解している事を確認できた。結果を表6に示す。
【0078】
[実施例5] 高粘性液体と粉末の撹拌均一溶解、及び同一槽での低粘性液体の撹拌均一溶解(リボン翼A-1)
前述の撹拌混合条件(1)にて撹拌を行った。具体的には以下の通りである。
10L製造用撹拌混合機(リボン翼A-1)に25℃における粘度が約50000mPa・sのシリコーン樹脂8120gを静かに投入した。続いて、予め目開き1mmの篩を用いて分級を行ったTPOの篩下の粉末250gを粉立ちしない様に静かに加えた。
装置の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機として防爆型インバータモータ付サイクロ減速機、減速比1/21、出力0.4kW、極数4P、周波数60Hz、電源200Vを使用して撹拌を開始した。ジャケットから加熱して35~40℃に内温を調整し、110rpmまで撹拌数を高めて合計1時間撹拌した。
続いて加えるDVBおよびSTMSの重合を防止する目的で加熱を停止して冷却を行い、撹拌を停止した。撹拌中に液中に噛みこんだ気泡が抜けた後に目視で確認すると、TPOは完全に溶解しており溶け残りは無かった。
ここに25℃における粘度が1mPa・sの低粘性液体であるDVB251gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数130rpmで1時間撹拌した。続いて25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるDDT41g、及び25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるSTMS83gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数130rpmで1時間撹拌した。
撹拌停止後、槽内の3箇所から混合液のサンプリングを行って粘度を測定した。結果、25℃における粘度が5052mPa・s、5055mPa・s、5044mPa・sであり、粘度にバラつきがない事から、高粘性液体と低粘性液体が均一溶解している事を確認できた。
続いて撹拌後の液を孔径3μmの平板の濾材(3M社製 マイクロスクリーン E)でろ過した。ろ過後の濾材表面を観察すると、TPOは完全に溶解しており、やはり溶け残りは確認されなかった。
結論として高粘性液体と粉末と低粘性液体が完全に均一溶解している事を確認できた。結果を表6に示す。
【0079】
[実施例6] 高粘性液体と粉末の撹拌均一溶解、及び同一槽での低粘性液体の撹拌均一溶解(リボン翼A-1)
前述の撹拌混合条件(1)にて撹拌を行った。具体的には以下の通りである。
10L製造用撹拌混合機(リボン翼A-1)に25℃における粘度が約300000mPa・sのシリコーン樹脂6499gを静かに投入した。続いて、予め目開き1mmの篩を用いて分級を行ったTPOの篩下の粉末300gと、同様にして得た184の篩下の粉末200gを粉立ちしない様に静かに加えた。
装置の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機として防爆型インバータモータ付サイクロ減速機、減速比1/21、出力0.4kW、極数4P、周波数60Hz、電源200Vを使用して撹拌を開始した。ジャケットから加熱して40~45℃に内温を調整し、110rpmまで撹拌数を高めて合計1時間撹拌した。
続いて加えるDOGおよびSTMSの重合を防止する目的で加熱を停止して冷却を行い、撹拌を停止した。撹拌中に液中に噛みこんだ気泡が抜けた後に目視で確認すると、TPOと184は完全に溶解しており溶け残りは無かった。
ここに25℃における粘度が300mPa・sの低粘性液体であるDOG3466gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数130rpmで1時間撹拌した。続いて25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるDDT49g、及び25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるSTMS99gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数130rpmで1時間撹拌した。
撹拌停止後、槽内の3箇所から混合液のサンプリングを行って粘度を測定した。結果、25℃における粘度が2231mPa・s、2241mPa・s、2240mPa・sであり、粘度にバラつきがない事から、高粘性液体と低粘性液体が均一溶解している事を確認できた。
続いて撹拌後の液を孔径3μmの平板の濾材(3M社製 マイクロスクリーン E)でろ過した。ろ過後の濾材表面を観察すると、TPOと184は完全に溶解しており、やはり溶け残りは確認されなかった。
結論として高粘性液体と粉末と低粘性液体が完全に均一溶解している事を確認できた。結果を表6に示す。
【0080】
[実施例7] 高粘性液体と粉末の撹拌均一溶解、及び同一槽での低粘性液体の撹拌均一溶解(リボン翼A-1)
前述の撹拌混合条件(1)にて撹拌を行った。具体的には以下の通りである。
10L製造用撹拌混合機(リボン翼A)に25℃における粘度が約50000mPa・sのシリコーン樹脂5948gを静かに投入した。続いて、予め目開き1mmの篩を用いて分級を行ったTPOの篩下の粉末184gを粉立ちしない様に静かに加えた。
装置の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機として防爆型インバータモータ付サイクロ減速機、減速比1/21、出力0.4kW、極数4P、周波数60Hz、電源200Vを使用して撹拌を開始した。ジャケットから加熱して40~45℃に内温を調整し、110rpmまで撹拌数を高めて合計1時間撹拌した。
続いて加えるDVBおよびSTMSの重合を防止する目的で加熱を停止して冷却を行い、撹拌を停止した。撹拌中に液中に噛みこんだ気泡が抜けた後に目視で確認すると、TPOは完全に溶解しており溶け残りは無かった。
ここに25℃における粘度が1mPa・sの低粘性液体であるDVB182gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数130rpmで1時間撹拌した。続いて25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるDDT30g、及び25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるSTMS60gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数130rpmで1時間撹拌した。
撹拌停止後、槽内の3箇所から混合液のサンプリングを行って粘度を測定した。結果、25℃における粘度が5531mPa・s、5519mPa・s、5503mPa・sであり、粘度にバラつきがない事から、高粘性液体と低粘性液体が均一溶解している事を確認できた。
続いて撹拌後の液を孔径3μmの平板の濾材(3M社製 マイクロスクリーン E)でろ過した。ろ過後の濾材表面を観察すると、TPOは完全に溶解しており、やはり溶け残りは確認されなかった。
結論として高粘性液体と粉末と低粘性液体が完全に均一溶解している事を確認できた。結果を表6に示す。
【0081】
[実施例8] 高粘性液体と粉末の撹拌均一溶解、及び同一槽での低粘性液体の撹拌均一溶解(リボン翼A-1)
前述の撹拌混合条件(1)にて撹拌を行った。具体的には以下の通りである。
10L製造用撹拌混合機(リボン翼A-1)に25℃における粘度が約300000mPa・sのシリコーン樹脂6933gを静かに投入した。続いて、予め目開き2mmの篩を用いて分級を行ったTPOの篩下の粉末320gと、同様にして得た184の篩下の粉末213gを粉立ちしない様に静かに加えた。
装置の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機として防爆型インバータモータ付サイクロ
減速機、減速比1/21、出力0.4kW、極数4P、周波数60Hz、電源200Vを使用して撹拌を開始した。ジャケットから加熱して40~45℃に内温を調整し、110rpmまで撹拌数を高めて合計1時間撹拌した。
続いて加えるDOGおよびSTMSの重合を防止する目的で加熱を停止して冷却を行い、撹拌を停止した。撹拌中に液中に噛みこんだ気泡が抜けた後に目視で確認すると、TPOと184は大部分が溶解しており溶け残りは僅かに確認された。
ここに25℃における粘度が300mPa・sの低粘性液体であるDOG3709gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数130rpmで1時間撹拌した。続いて25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるDDT53g、及び25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるSTMS106gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数130rpmで1時間撹拌した。
撹拌停止後、槽内の3箇所から混合液のサンプリングを行って粘度を測定した。結果、25℃における粘度が2303mPa・s、2295mPa・s、2288mPa・sであり、粘度にバラつきがない事から、高粘性液体と低粘性液体は均一溶解している事を確認できた。
続いて撹拌後の液を孔径3μmの平板の濾材(3M社製 マイクロスクリーン E)でろ過した。ろ過後の濾材表面を観察すると、TPOと184はほぼ完全に溶解しており、僅かな溶け残りが確認された。
結論として高粘性液体と粉末と低粘性液体がほぼ完全に均一溶解している事を確認できた。結果を表6に示す。
【0082】
【表6】
*高粘性液体と粉末の撹拌時の上限温度は45℃
【0083】
[比較例1] 高粘性液体への撹拌溶解が困難となる粒度の確認(リボン翼A-2)
前述の撹拌混合条件(2)にて撹拌を行った。具体的には以下の通りである。
5L丸底セパラブルガラス製反応容器(内径150mm、高さ360mm)に、SUS304製で翼径140mm、翼全高220mmのリボン翼A-2をセットした。
25℃における粘度が約50000mPa・sのシリコーン樹脂1114gをこの容器に静かに入れた。続いて、25℃における粘度が1mPa・sの低粘性液体であるDVB35gと未処理のTPOの粉末38gを静かに加えた。未処理のTPOの粉末には全長が最大15~60mm程度の塊が含まれていた。
容器の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機としてIKA社製 電子制御撹拌機 EUROSTAR200を使用して6rpmで撹拌を開始した。
5L丸底セパラブルガラス製反応容器をオイルバスで加熱して50~60℃に温度を調整した。粉末が溶解しにくいので様子をみながら最終的に140rpmまで撹拌数を高めて合計3時間撹拌した。
加熱を停止して20~25℃まで冷却を行い、撹拌を停止した。撹拌中に液中に噛みこんだ気泡が抜けた後に目視で確認すると、TPOは完全には溶解しておらず、明確な溶け残りが確認された。この時点での混合液の粘度は約7400mPa・sまで低下していた。
ここに25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるDDT6g、及び25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるSTMS13gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数50rpmで4時間撹拌した。撹拌後の液を平板の濾材でろ過し、濾材表面を観察すると、やはりTPOは完全には溶解しておらず、溶け残りが確認された。
結論として高温下で撹拌数を高めて長時間撹拌しても未処理のTPOは高粘性液体と低粘性液体への完全溶解は困難である事が確認できた。結果を表7に示す。
【0084】
なお、前記比較例1に代えて、実施例1において、予め目開き250μmの篩を用いて分級を行ったTPOを、分級を行っていないTPO(全長が最大で15~60mm程度の塊が含まれているTPO)に変えた以外は、実施例1と同様に混合を行った場合、TPOの溶け残りが確認され、前記比較例1と同様の結果となる。
【0085】
[比較例2] 高粘性液体への撹拌溶解が困難となる粒度の確認(リボン翼A-2)
前述の撹拌混合条件(2)にて撹拌を行った。具体的には以下の通りである。
5L丸底セパラブルガラス製反応容器(内径150mm、高さ360mm)に、SUS304製で翼径140mm、翼全高220mmのリボン翼A-2をセットした。
25℃における粘度が約300000mPa・sのシリコーン樹脂732gをこの容器に静かに入れた。続いて、25℃における粘度が300mPa・sの低粘性液体であるDOG394gに未処理のTPOの粉末34gと未処理の184の粉末23gを分散させた懸濁液を静かに加えた。未処理のTPOの粉末には全長が最大で15~60mm程度の塊が含まれていた。未処理の184の粉末には全長が最大で5~30mm程度の塊が含まれていた。
容器の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機としてIKA社製 電子制御撹拌機 EUROSTAR200を使用して6rpmで撹拌を開始した。
5L丸底セパラブルガラス製反応容器をオイルバスで加熱して50~55℃に温度を調整した。粉末が溶解しにくいので様子をみながら最終的に130rpmまで撹拌数を高めて合計7時間撹拌した。
加熱を停止して20~25℃まで冷却を行い、撹拌を停止した。撹拌中に液中に噛みこんだ気泡が抜けた後に目視で確認すると、TPOと184は完全には溶解しておらず、明確な溶け残りが確認された。この時点での混合液の粘度は約2800mPa・sまで低下していた。
ここに25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるDDT6g、及び25℃における粘度が2mPa・sの低粘性液体であるSTMS11gを静かに加えて20~25℃にて撹拌数60rpmで3時間撹拌した。撹拌後の液を平板の濾材でろ過し、濾材表面を観察すると、やはりTPOと184は完全には溶解しておらず、溶け残りが確認された。
結論として高温下で撹拌数を高めて長時間撹拌しても未処理のTPOと184は高粘性液体と低粘性液体への完全溶解は困難である事が確認できた。結果を表7に示す。
【0086】
なお、前記比較例2に代えて、実施例2において、予め目開き250μmの篩を用いて分級を行ったTPOを、分級を行っていないTPO(全長が最大で15~60mm程度の塊が含まれているTPO)に変えた以外は、実施例2と同様に混合を行った場合、TPOの溶け残りが確認され、前記比較例2と同様の結果となる。
【0087】
【表7】
*高粘性液体と粉末の撹拌時の上限温度は60℃
【0088】
[実施例9] 低粘性液体と粉末の撹拌均一溶解(リボン翼A-2)
前述の撹拌混合条件(2)にて撹拌を行った。具体的には以下の通りである。
5L丸底セパラブルガラス製反応容器(内径150mm、高さ360mm)に、SUS304製で翼径140mm、翼全高220mmのリボン翼A-2をセットした。
25℃における粘度が300mPa・sの低粘性液体であるDOG1170gをこの容器に静かに入れた。続いて、予め目開き1mmの篩を用いて分級を行ったTPOの篩下の粉末100gと、同様にして得た184の篩下の粉末67gを粉立ちしない様に静かに加えた。
容器の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機としてIKA社製 電子制御撹拌機 EUROSTAR200を使用して6rpmで撹拌を開始した。
5L丸底セパラブルガラス製反応容器をDOGの重合を防止する目的で20~25℃に温度を調整し、60rpmまで撹拌数を高めて合計4時間撹拌した。
撹拌を停止して撹拌中に液中に噛みこんだ気泡が抜けた後に目視で確認すると、TPOと184はほぼ完全に溶解しており溶け残りはほぼ無かった。
【0089】
[比較例3] 低粘性液体と粉末の撹拌均一溶解(リボン翼A-2)
前述の撹拌混合条件(2)にて撹拌を行った。具体的には以下の通りである。
5L丸底セパラブルガラス製反応容器(内径150mm、高さ360mm)に、SUS304製で翼径140mm、翼全高220mmのリボン翼A-2をセットした。
25℃における粘度が300mPa・sの低粘性液体であるDOG1170gをこの容器に静かに入れた。続いて、未処理のTPOの粉末100gと、未処理の184の粉末67gを粉立ちしない様に静かに加えた。未処理のTPOの粉末には全長が最大で15~60mm程度の塊が含まれていた。未処理の184の粉末には全長が最大で5~30mm程度の塊が含まれていた。
容器の上部から撹拌翼を駆動させる撹拌機としてIKA社製 電子制御撹拌機 EUROSTAR200を使用して6rpmで撹拌を開始した。
5L丸底セパラブルガラス製反応容器をDOGの重合を防止する目的で20~25℃に温度を調整し、60rpmまで撹拌数を高めて合計4時間撹拌した。
撹拌を停止して撹拌中に液中に噛みこんだ気泡が抜けた後に目視で確認すると、TPOと184は完全には溶解しておらず、明確な溶け残りが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によれば、液体及び粉末を効率的に均一化することができ、更には、高粘性液体、低粘性液体、及び粉末を単一の撹拌翼及び撹拌槽で均一化することができる。そのため、本発明は、液体と粉末との様々な均一混合、及び液体に粉末を溶解して得られる組成物の製造に有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 撹拌軸
2 支持棒
3 リボン状のブレード
4 ボトムリボン翼