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特許7715186画像処理方法、画像処理装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-22
(45)【発行日】2025-07-30
(54)【発明の名称】画像処理方法、画像処理装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20250723BHJP
   A61B 3/12 20060101ALI20250723BHJP
【FI】
A61B3/10 100
A61B3/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023500975
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2022007393
(87)【国際公開番号】W WO2022177028
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2021026196
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 泰士
(72)【発明者】
【氏名】葛西 洋志
(72)【発明者】
【氏名】向井 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】吉 媛テイ
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108416793(CN,A)
【文献】国際公開第2019/203311(WO,A1)
【文献】特開2020-058647(JP,A)
【文献】特開2020-058627(JP,A)
【文献】特開2015-000131(JP,A)
【文献】特開2012-071043(JP,A)
【文献】国際公開第2019/203309(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサが行う画像処理方法であって、
脈絡膜を含むOCTボリュームデータを取得するステップと、
前記OCTボリュームデータに対して、線状血管抽出処理、および二値化処理を行い得られた第1処理画像から第1脈絡膜血管を抽出し、第1立体画像を生成するステップと、
前記OCTボリュームデータに対して、二値化処理を行い得られた第2処理画像から第2脈絡膜血管を抽出し、第2立体画像を生成するステップと、
前記第1立体画像と前記第2立体画像を合成することにより、脈絡膜血管の立体画像を生成するステップと、
を含む、画像処理方法。
【請求項2】
前記OCTボリュームデータは、眼底の少なくとも渦静脈を含む領域をスキャンして得られることを特徴とする、
請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記OCTボリュームデータから脈絡膜部分の脈絡膜OCTボリュームデータを抽出するステップをさらに有し、
前記立体画像を生成するステップは、前記脈絡膜OCTボリュームデータに基づいて前記立体画像を生成する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
メモリと、前記メモリに接続するプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、
脈絡膜を含むOCTボリュームデータを取得するステップと、
前記OCTボリュームデータに対して、線状血管抽出処理、および二値化処理を行い得られた第1処理画像から第1脈絡膜血管を抽出し、第1立体画像を生成するステップと、
前記OCTボリュームデータに対して、二値化処理を行い得られた第2処理画像から第2脈絡膜血管を抽出し、第2立体画像を生成するステップと、
前記第1立体画像と前記第2立体画像を合成することにより、脈絡膜血管の立体画像を生成するステップと、
を実行する、画像処理装置。
【請求項5】
コンピュータに、
脈絡膜を含むOCTボリュームデータを取得するステップと、
前記OCTボリュームデータに対して、線状血管抽出処理、および二値化処理を行い得られた第1処理画像から第1脈絡膜血管を抽出し、第1立体画像を生成するステップと、
前記OCTボリュームデータに対して、二値化処理を行い得られた第2処理画像から第2脈絡膜血管を抽出し、第2立体画像を生成するステップと、
前記第1立体画像と前記第2立体画像を合成することにより、脈絡膜血管の立体画像を生成するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、画像処理方法、画像処理装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第10238281号には、光干渉断層計を用いて被検眼のボリュームデータを生成する技術が開示されている。従来、被検眼のボリュームデータに基づいて血管を可視化することが望まれている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の技術の第1の態様の画像処理方法は、プロセッサが行う画像処理方法であって、脈絡膜を含むOCTボリュームデータを取得するステップと、前記OCTボリュームデータに基づいて脈絡膜血管を抽出し、前記脈絡膜血管の立体画像を生成するステップと、を含む。
【0004】
本開示の技術の第2の態様の画像処理装置は、メモリと、前記メモリに接続するプロセッサとを備え、前記プロセッサは、脈絡膜を含むOCTボリュームデータを取得するステップと、前記OCTボリュームデータに基づいて脈絡膜血管を抽出し、前記脈絡膜血管の立体画像を生成するステップと、を実行する。
【0005】
本開示の技術の第3の態様のプログラムは、コンピュータに、脈絡膜を含むOCTボリュームデータを取得するステップと、前記OCTボリュームデータに基づいて脈絡膜血管を抽出し、前記脈絡膜血管の立体画像を生成するステップと、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態の眼科システムの概略構成図である。
図2】本実施形態の眼科装置の概略構成図である。
図3】サーバの概略構成図である。
図4】サーバのCPUにおいて、画像処理プログラムによって実現される機能の説明図である。
図5】サーバによる画像処理を示したフローチャートである。
図6図5のステップ6100の渦静脈の立体画像生成処理を示したフローチャートである。
図7】眼球と渦静脈の位置との関係を示す模式図である。
図8】OCTボリュームデータとen-face画像の関係を示す図である。
図9】渦静脈の立体画像の概念図
図10】渦静脈の立体画像を用いた表示画面の第1の例である。
図11】渦静脈の立体画像を用いた表示画面の第2の例である。
図12】渦静脈の立体画像を用いた表示画面の第3の例である。
図13】渦静脈の立体画像を用いた表示画面の第4の例である。
図14】渦静脈の立体画像を用いた表示画面の第5の例である。
図15】渦静脈の立体画像を用いた表示画面の第6の例である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態に係る眼科システム100について図面を参照して説明する。図1には、眼科システム100の概略構成が示されている。図1に示すように、眼科システム100は、眼科装置110と、サーバ装置(以下、「サーバ」という)140と、表示装置(以下、「ビューワ」という)150と、を備えている。眼科装置110は、眼底画像を取得する。サーバ140は、眼科装置110によって複数の患者の眼底が撮影されることにより得られた複数の眼底画像と、図示しない眼軸長測定装置により測定された眼軸長とを、患者IDに対応して記憶する。ビューワ150は、サーバ140により取得した眼底画像や解析結果を表示する。
【0008】
サーバ140は、本開示の技術の「画像処理装置」の一例である。
【0009】
眼科装置110、サーバ140、ビューワ150は、ネットワーク130を介して、相互に接続されている。ネットワーク130は、LAN、WAN、インターネットや広域イーサ網等の任意のネットワークである。例えば、眼科システム100が1つの病院に構築される場合には、ネットワーク130にLANを採用することができる。
【0010】
ビューワ150は、クライアントサーバシステムにおけるクライアントであり、ネットワークを介して複数台が接続される。また、サーバ140も、システムの冗長性を担保するために、ネットワークを介して複数台が接続されていてもよい。又は、眼科装置110が画像処理機能及びビューワ150の画像閲覧機能を備えるのであれば、眼科装置110がスタンドアロン状態で、眼底画像の取得、画像処理及び画像閲覧が可能となる。また、サーバ140がビューワ150の画像閲覧機能を備えるのであれば、眼科装置110とサーバ140との構成で、眼底画像の取得、画像処理及び画像閲覧が可能となる。
【0011】
なお、他の眼科機器(視野測定、眼圧測定などの検査機器)やAI(Artificial Intelligence)を用いた画像解析を行う診断支援装置がネットワーク130を介して、眼科装置110、サーバ140、及びビューワ150に接続されていてもよい。
【0012】
次に、図2を参照して、眼科装置110の構成を説明する。
【0013】
説明の便宜上、走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope)を「SLO」と称する。また、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography)を「OCT」と称する。
【0014】
なお、眼科装置110が水平面に設置された場合の水平方向を「X方向」、水平面に対する垂直方向を「Y方向」とし、被検眼12の前眼部の瞳孔の中心と眼球の中心とを結ぶ方向を「Z方向」とする。従って、X方向、Y方向、およびZ方向は互いに垂直である。
【0015】
眼科装置110は、撮影装置14および制御装置16を含む。撮影装置14は、SLOユニット18およびOCTユニット20を備えており、被検眼12の眼底の眼底画像を取得する。以下、SLOユニット18により取得された二次元眼底画像をSLO画像と称する。また、OCTユニット20により取得されたOCTデータに基づいて作成された網膜の断層画像や正面画像(en-face画像)などをOCT画像と称する。
【0016】
制御装置16は、CPU(Central Processing Unit(中央処理装置))16A、RAM(Random Access Memory)16B、ROM(Read-Only memory)16C、および入出力(I/O)ポート16Dを有するコンピュータを備えている。
【0017】
制御装置16は、I/Oポート16Dを介してCPU16Aに接続された入力/表示装置16Eを備えている。入力/表示装置16Eは、被検眼12の画像を表示したり、ユーザから各種指示を受け付けたりするグラフィックユーザインターフェースを有する。グラフィックユーザインターフェースとしては、タッチパネル・ディスプレイが挙げられる。
【0018】
また、制御装置16は、I/Oポート16Dに接続された画像処理器17を備えている。画像処理器17は、撮影装置14によって得られたデータに基づき被検眼12の画像を生成する。なお、制御装置16は、通信インターフェース16Fを介してネットワーク130に接続される。
【0019】
上記のように、図2では、眼科装置110の制御装置16が入力/表示装置16Eを備えているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、眼科装置110の制御装置16は入力/表示装置16Eを備えず、眼科装置110とは物理的に独立した別個の入力/表示装置を備えるようにしてもよい。この場合、当該表示装置は、制御装置16のCPU16Aの表示制御部204の制御下で動作する画像処理プロセッサユニットを備える。画像処理プロセッサユニットが、表示制御部204が出力指示した画像信号に基づいて、SLO画像等を表示するようにしてもよい。
【0020】
撮影装置14は、制御装置16のCPU16Aの制御下で作動する。撮影装置14は、SLOユニット18、撮影光学系19、およびOCTユニット20を含む。撮影光学系19は、光学スキャナ22、および広角光学系30を含む。
【0021】
光学スキャナ22は、SLOユニット18から射出された光をX方向、およびY方向に2次元走査する。光学スキャナ22は、光束を偏向できる光学素子であればよく、例えば、ポリゴンミラーや、ガルバノミラー等を用いることができる。また、それらの組み合わせであってもよい。
【0022】
広角光学系30は、SLOユニット18からの光とOCTユニット20からの光とを合成する。
【0023】
なお、広角光学系30は、楕円鏡などの凹面ミラーを用いた反射光学系や、広角レンズなどを用いた屈折光学系、あるいは、凹面ミラーやレンズを組み合わせた反射屈折光学系でもよい。楕円鏡や広角レンズなどを用いた広角光学系を用いることにより、眼底中心部だけでなく眼底周辺部の網膜を撮影することが可能となる。
【0024】
楕円鏡を含むシステムを用いる場合には、国際公開WO2016/103484あるいは国際公開WO2016/103489に記載された楕円鏡を用いたシステムを用いる構成でもよい。国際公開WO2016/103484の開示および国際公開WO2016/103489の開示の各々は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0025】
広角光学系30によって、眼底において広い視野(FOV:Field of View)12Aでの観察が実現される。FOV12Aは、撮影装置14によって撮影可能な範囲を示している。FOV12Aは、視野角として表現され得る。視野角は、本実施形態において、内部照射角と外部照射角とで規定され得る。外部照射角とは、眼科装置110から被検眼12へ照射される光束の照射角を、瞳孔27を基準として規定した照射角である。また、内部照射角とは、眼底Fへ照射される光束の照射角を、眼球中心Oを基準として規定した照射角である。外部照射角と内部照射角とは、対応関係にある。例えば、外部照射角が120度の場合、内部照射角は約160度に相当する。本実施形態では、内部照射角は200度としている。
【0026】
ここで、内部照射角で160度以上の撮影画角で撮影されて得られたSLO眼底画像をUWF-SLO眼底画像と称する。なお、UWFとは、UltraWide Field(超広角)の略称を指す。眼底の視野角(FOV)を超広角な角度とした広角光学系30により、被検眼12の眼底の後極部から赤道部を超える領域を撮影することができ、渦静脈などの眼底周辺部に存在する構造物を撮影できる。
【0027】
眼科装置110は、被検眼12の眼球中心Oを基準位置として内部照射角が200°の領域12Aを撮影することができる。なお、200°の内部照射角は、被検眼12の眼球の瞳孔を基準とした外部照射角では110°である。つまり、広角光学系30は外部照射角110°の画角で瞳からレーザ光を照射させ、内部照射角で200°の眼底領域を撮影する。
【0028】
SLOシステムは、図2に示す制御装置16、SLOユニット18、および撮影光学系19によって実現される。SLOシステムは、広角光学系30を備えるため、広いFOV12Aでの眼底撮影を可能とする。
【0029】
SLOユニット18は、B光(青色光)の光源40、G光(緑色光)の光源42、R光(赤色光)の光源44、およびIR光(赤外線(例えば、近赤外光))の光源46と、光源40、42、44、46からの光を、反射又は透過して1つの光路に導く光学系48、50、52、54、56とを備えている。光学系48、56は、ミラーであり、光学系50、52、54は、ビームスプリッタ―である。B光は、光学系48で反射し、光学系50を透過し、光学系54で反射し、G光は、光学系50、54で反射し、R光は、光学系52、54を透過し、IR光は、光学系52、56で反射して、それぞれ1つの光路に導かれる。
【0030】
SLOユニット18は、R光およびG光を発するモードと、赤外線を発するモードなど、波長の異なるレーザ光を発する光源あるいは発光させる光源の組合せを切り替え可能に構成されている。図2に示す例では、B光の光源40、G光の光源42、R光の光源44、およびIR光の光源46の4つの光源を備えるが、本開示の技術は、これに限定されない。例えば、SLOユニット18は、更に、白色光の光源を更に備え、G光、R光、およびB光を発するモードや、白色光のみを発するモード等の種々のモードで光を発するようにしてもよい。
【0031】
SLOユニット18から撮影光学系19に入射された光は、光学スキャナ22によってX方向およびY方向に走査される。走査光は広角光学系30および瞳孔27を経由して、眼底に照射される。眼底により反射された反射光は、広角光学系30および光学スキャナ22を経由してSLOユニット18へ入射される。
【0032】
SLOユニット18は、被検眼12の後眼部(眼底)からの光の内、B光を反射し且つB光以外を透過するビームスプリッタ64、ビームスプリッタ64を透過した光の内、G光を反射し且つG光以外を透過するビームスプリッタ58を備えている。SLOユニット18は、ビームスプリッタ58を透過した光の内、R光を反射し且つR光以外を透過するビームスプリッタ60を備えている。SLOユニット18は、ビームスプリッタ60を透過した光の内、IR光を反射するビームスプリッタ62を備えている。SLOユニット18は、ビームスプリッタ64により反射したB光を検出するB光検出素子70、ビームスプリッタ58により反射したG光を検出するG光検出素子72、ビームスプリッタ60により反射したR光を検出するR光検出素子74、およびビームスプリッタ62により反射したIR光を検出するIR光検出素子76を備えている。
【0033】
広角光学系30および光学スキャナ22を経由してSLOユニット18へ入射された光(眼底により反射された反射光)は、B光の場合、ビームスプリッタ64で反射してB光検出素子70により受光され、G光の場合、ビームスプリッタ58で反射してG光検出素子72により受光される。上記入射された光は、R光の場合、ビームスプリッタ58を透過し、ビームスプリッタ60で反射してR光検出素子74により受光される。上記入射された光は、IR光の場合、ビームスプリッタ58、60を透過し、ビームスプリッタ62で反射してIR光検出素子76により受光される。CPU16Aの制御下で動作する画像処理器17は、B光検出素子70、G光検出素子72、R光検出素子74、およびIR光検出素子76で検出された信号を用いてUWF-SLO画像を生成する。
【0034】
B光検出素子70で検出された信号を用いて生成されたUWF-SLO画像をB-UWF-SLO画像(B色眼底画像)という。G光検出素子72で検出された信号を用いて生成されたUWF-SLO画像をG-UWF-SLO画像(G色眼底画像)という。R光検出素子74で検出された信号を用いて生成されたUWF-SLO画像をR-UWF-SLO画像(R色眼底画像)という。IR光検出素子76で検出された信号を用いて生成されたUWF-SLO画像をIR-UWF-SLO画像(IR眼底画像)という。UWF-SLO画像には、これらのR色眼底画像、G色眼底画像、B色眼底画像からIR眼底画像までが含まれる。また、蛍光を撮影した蛍光のUWF-SLO画像も含まれる。
【0035】
また、制御装置16が、同時に発光するように光源40、42、44を制御する。B光、G光およびR光で同時に被検眼12の眼底が撮影されることにより、各位置が互いに対応するG色眼底画像、R色眼底画像、およびB色眼底画像が得られる。G色眼底画像、R色眼底画像、およびB色眼底画像からRGBカラー眼底画像が得られる。制御装置16が、同時に発光するように光源42、44を制御し、G光およびR光で同時に被検眼12の眼底が撮影されることにより、各位置が互いに対応するG色眼底画像およびR色眼底画像が得られる。G色眼底画像およびR色眼底画像からRGカラー眼底画像が得られる。また、G色眼底画像、R色眼底画像及びB色眼底画像を用いてフルカラー眼底画像を生成するようにしてもよい。
【0036】
広角光学系30により、眼底の視野角(FOV:Field of View)を超広角な角度とし、被検眼12の眼底の後極部から赤道部を超える領域を撮影することができる。
【0037】
OCTシステムは、図2に示す制御装置16、OCTユニット20、および撮影光学系19によって実現される。OCTシステムは、広角光学系30を備えるため、上述したSLO眼底画像の撮影と同様に、眼底周辺部のOCT撮影を可能とする。つまり、眼底の視野角(FOV)を超広角な角度とした広角光学系30により、被検眼12の眼底の後極部から赤道部178を超える領域のOCT撮影を行うことができる。渦静脈などの眼底周辺部に存在する構造物のOCTデータを取得でき、渦静脈の断層像や、OCTデータを画像処理することにより渦静脈の3D構造を得ることができる。
【0038】
OCTユニット20は、光源20A、センサ(検出素子)20B、第一の光カプラ20C、参照光学系20D、コリメートレンズ20E、および第2の光カプラ20Fを含む。
【0039】
光源20Aから射出された光は、第一の光カプラ20Cで分岐される。分岐された一方の光は、測定光として、コリメートレンズ20Eで平行光にされた後、撮影光学系19に入射される。測定光は広角光学系30および瞳孔27を経由して、眼底に照射される。眼底により反射された測定光は、および広角光学系30を経由してOCTユニット20へ入射され、コリメートレンズ20Eおよび第一の光カプラ20Cを介して、第2の光カプラ20Fに入射する。
【0040】
光源20Aから射出され、第一の光カプラ20Cで分岐された他方の光は、参照光として、参照光学系20Dへ入射され、参照光学系20Dを経由して、第2の光カプラ20Fに入射する。
【0041】
第2の光カプラ20Fに入射されたこれらの光、即ち、眼底で反射された測定光と、参照光とは、第2の光カプラ20Fで干渉されて干渉光を生成する。干渉光はセンサ20Bで受光される。画像処理部206の制御下で動作する画像処理器17は、センサ20Bで検出されたOCTデータを生成する。当該OCTデータに基づいて断層画像やen-face画像などのOCT画像を画像処理器17で生成することも可能である。
【0042】
ここで、OCTユニット20は、所定範囲(例えば6mm×6mmの矩形範囲)を一回のOCT撮影で走査することができる。当該所定範囲は6mm×6mmに限らず、12mm×12mmや23mm×23mmの正方形の範囲でもよいし、14mm×9mm、6mm×3.5mmなど長方形の範囲でもよく、任意の矩形範囲とすることができる。また、直径6mm、12mm、23mmなどの円径の範囲であってもよい。
【0043】
広角光学系30を用いることにより、眼科装置110は、内部照射角が200°の領域12Aが走査対象とすることができる。つまり、光学スキャナ22を制御することにより、渦静脈を含む所定範囲のOCT撮影を行う。眼科装置110は、当該OCT撮影によってOCTデータを生成することが可能となる。
【0044】
よって、眼科装置110は、OCT画像である、渦静脈を含む眼底の断層画像(B-スキャン画像)、渦静脈を含むOCTボリュームデータや、当該OCTボリュームデータの断面であるen-face画像(OCTボリュームデータに基づいて生成された正面画像)を生成することができる。なお、OCT画像には、眼底中心部(黄斑や視神経乳頭などが存在する眼球の後極部)のOCT画像を含まれることは言うまでもない。
【0045】
OCTデータ(あるいはOCT画像の画像データ)は、通信インターフェース16Fを介して眼科装置110からサーバ140へ送付され、記憶装置254に記憶される。
【0046】
なお、本実施形態では、光源20Aが波長掃引タイプのSS-OCT(Swept-Source OCT)を例示するが、SD-OCT(Spectral-Domain OCT)、TD-OCT(Time-Domain OCT)など、様々な方式のOCTシステムであってもよい。
【0047】
次に、図3を参照して、サーバ140の電気系の構成を説明する。図3に示すように、サーバ140は、コンピュータ本体252を備えている。コンピュータ本体252は、CPU262、RAM266、ROM264、入出力(I/O)ポート268を有する。入出力(I/O)ポート268には、記憶装置254、ディスプレイ256、マウス255M、キーボード255K、および通信インターフェース(I/F)258が接続されている。記憶装置254は、例えば、不揮発メモリで構成される。入出力(I/O)ポート268は、通信インターフェース(I/F)258を介して、ネットワーク130に接続されている。従って、サーバ140は、眼科装置110、およびビューワ150と通信することができる。
【0048】
ROM264又は記憶装置254には、図6に示す画像処理プログラムが記憶されている。
【0049】
ROM264又は記憶装置254は、本開示の技術の「メモリ」の一例である。CPU262は、本開示の技術の「プロセッサ」の一例である。画像処理プログラムは、本開示の技術の「プログラム」の一例である。
【0050】
サーバ140は、眼科装置110から受信した各データを、記憶装置254に記憶する。
【0051】
サーバ140のCPU262が画像処理プログラムを実行することで実現される各種機能について説明する。図4に示すように、画像処理プログラムは、表示制御機能、画像処理機能、および処理機能を備えている。CPU262がこの各機能を有する画像処理プログラムを実行することで、CPU262は、表示制御部204、画像処理部206、および処理部208として機能する。
【0052】
次に、図5を用いて、サーバ140による画像処理のメインフローチャートを説明する。サーバ140のCPU262が画像処理プログラムを実行することで、図5のフローチャートに示された画像処理(画像処理方法)が実現される。
【0053】
まず、ステップ6000で、画像処理部206は、記憶装置254から脈絡膜を含むOCTボリュームデータを取得する。
【0054】
次のステップ6100で、画像処理部206は、前記OCTボリュームデータに基づいて脈絡膜血管を抽出し、渦静脈血管の立体画像(3D画像)を生成する立体画像生成処理(後述)を実行する。
【0055】
そして、ステップ6200で、処理部208は、生成された渦静脈血管の立体画像(3D画像)を出力、具体的には、RAM266あるいは記憶装置254に保存し、画像処理を終了する。
【0056】
ユーザの指示に基づき、渦静脈の立体画像を含むディスプレイ・スクリーン(後述する図10図15に、ディスプレイ・スクリーンの例を示す)が表示制御部204により生成される。生成されたディスプレイ・スクリーンが画像信号として、処理部208により、ビューワ150に出力される。ビューワ150のディスプレイにディスプレイ・スクリーンが表示される。
【0057】
次に、ステップ6100の渦静脈の立体画像生成処理を、図6を用いて詳細に説明する。
【0058】
図6のステップ620で、画像処理部206は、ステップ6000で取得したOCTボリュームデータ400(図8を参照)から脈絡膜に相当する領域を抽出し、抽出された領域に基づいて、脈絡膜部分のOCTボリュームデータを抽出(取得)する。本実施の形態では、OCTボリュームデータ400Dとして、渦静脈と当該渦静脈の周辺の脈絡膜血管を含んだOCTボリュームデータ400を例に説明をする。この場合、脈絡膜血管は、渦静脈と当該渦静脈の周辺の脈絡膜血管を指す。
【0059】
具体的には、画像処理部206は、渦静脈と当該渦静脈の周辺の脈絡膜血管とを含むようにスキャンされたOCTボリュームデータから、脈絡膜血管が存在する領域のOCTボリュームデータ400において、網膜色素上皮細胞層400R(Retinal Pigment Epithelium、以下、RPE層と称する)から下の領域のOCTボリュームデータ400Dを抽出する。
【0060】
具体的には、まず、画像処理部206は、OCTボリュームデータ400に対し、各層の境界面を特定する画像処理を行うことによりRPE層400Rが特定される。また、OCTボリュームデータの中で最も高輝層をRPE層400Rとして、特定するようにしてもよい。
【0061】
そして、画像処理部206は、RPE層400Rより深い所定範囲の領域(眼球の中心から見てRPE層より遠い所定範囲の領域)の脈絡膜の領域の画素データを、OCTボリュームデータ400Dとして抽出する。深い領域のOCTボリュームデータは均一ではない場合もあるので、画像処理部206は、図8に示すようにRPE層400Rから、境界面を特定する上記画像処理で得られる底面400Eまでの間の領域を、OCTボリュームデータ400Dとして抽出してもよい。
RPE層400Rより深い所定範囲の領域の脈絡膜の領域は、本開示の技術の「脈絡膜部分」の一例である。
【0062】
以上の処理により、脈絡膜血管の立体画像を生成するためのOCTボリュームデータ400Dが抽出される。
【0063】
ステップ630で、画像処理部206は、OCTボリュームデータ400Dに、第1の血管抽出処理(線状血管抽出)を行うための第一の前処理としてノイズ除去処理、とくにスペックルノイズ処理を施す。これは、スペックルノイズの影響を排除し、正しく血管形状を反映した線状血管抽出を行うための処理である。スペックルノイズ処理としては、ガウシアンぼかし処理などがあげられる。
【0064】
次のステップ640で、画像処理部206は、第一の前処理が施されたOCTボリュームデータ400Dに対して、第1の血管抽出処理(線状血管抽出)を施すことにより、OCTボリュームデータ400Dから線状部である第1の脈絡膜血管を抽出する。これにより、第1の立体画像が生成される。第1の血管抽出処理を説明する。
【0065】
画像処理部206は、例えば、固有値フィルター、ガボールフィルターなどを用いた画像処理を行い、OCTボリュームデータ400Dから、線状血管の領域を抽出する。OCTボリュームデータ400Dでは血管領域は低輝度の画素(黒っぽい画素)であり、低輝度の画素が連続している領域が血管部分として残ることになる。
【0066】
また、画像処理部206は、抽出された線状血管の領域に対して、周囲の血管とつながっていない孤立している領域を削除する処理や、メディアンフィルター、オープニング処理、収縮処理などの画像処理を行い、ノイズ領域を削除する。
【0067】
さらに、画像処理部206は、ノイズ処理の後の線状血管の領域の画素データに二値化処理を行う。
【0068】
以上説明した第1の血管抽出処理を行うことにより、OCTボリュームデータ400Dから線状血管の領域のみが残ることになり、図9に示す線状血管の立体画像680Lが生成される。線状血管の立体画像680Lの画像データは処理部208によりRAM266に保存される。
図9に示す線状血管は、本開示の技術の「第1の脈絡膜血管」の一例であり、線状血管の立体画像680Lは、本開示の技術の「第1の立体画像」の一例である。
【0069】
ステップ650で、画像処理部206は、OCTボリュームデータ400Dに、第2の血管抽出処理(膨大部抽出)を行うための第二の前処理として、OCTボリュームデータ400D対して二値化処理を施す。二値化の閾値を、血管膨大部を残すような所定の閾値に設定することにより、OCTボリュームデータ400Dは、血管膨大部が黒画素、それ以外の部分が白画素となる。
【0070】
そして、ステップ660で、画像処理部206は、二値化されたOCTボリュームデータ400Dにおいてノイズ領域を削除することにより、OCTボリュームデータから膨大部である第2の脈絡膜血管を抽出する。これにより、第2の立体画像が生成される。ノイズ領域は、黒画素の領域が孤立した領域であったり、細い血管に相当する領域であったりする。このようなノイズ領域を削除するために、画像処理部206は、メディアンフィルター、opening処理、又は、収縮処理などを二値化されたOCTボリュームデータ400Dに施し、ノイズ領域を削除する。
【0071】
ステップ660では、さらに、画像処理部206は、抽出した膨大部の表面平滑化のため、上記ノイズ領域が削除されたOCTボリュームデータに、セグメンテーション処理(動的輪郭、グラフカット、又はU-netなどの画像処理)を施してもよい。ここで言う『セグメンテーション』とは、解析を行う画像に対して背景と前景を分離する二価化処理を行う画像処理のことを指す。
【0072】
このような第2の血管抽出処理を行うことにより、OCTボリュームデータ400Dから膨大部の領域のみが残ることになり、図9に示す膨大部の血管の立体画像680Bが生成される。膨大部の血管の立体画像680Bの画像データは処理部208によりRAM266に保存される。
図9に示す膨大部の血管は、本開示の技術の「第2の脈絡膜血管」の一例であり、膨大部の血管の立体画像680Bは、本開示の技術の「第2の立体画像」の一例である。
【0073】
ステップ630、640の処理と、ステップ650、660の処理とは、何れか一方の処理を先に実行しても、同時に進めてもよい。
【0074】
ステップ630、640の処理と、ステップ650、660の処理とが完了すると、ステップ670で、画像処理部206は、線状血管の立体画像680Lと膨大部の立体画像680BとをRAM266から読み出す。そして、両方の立体画像の位置合わせを行い、両方の画像の論理和を演算することに、線状血管の立体画像680Lと膨大部の立体画像680Bとが合成される。これにより、渦静脈を含む脈絡膜血管の立体画像680M(図9も参照)が生成される。立体画像680Mの画像データは、処理部208によりRAM266や記憶装置254に保存される。
渦静脈を含む脈絡膜血管の立体画像680Mは、本開示の技術の「脈絡膜血管の立体画像」の一例である。
【0075】
以下、生成された渦静脈を含む脈絡膜血管の立体画像(3D画像)を表示するためのディスプレイ・スクリーンについて説明する。当該ディスプレイ・スクリーンは、ユーザの指示に基づきサーバ140の表示制御部204により生成され、処理部208により、ビューワ150に画像信号として出力される。ビューワ150は、当該画像信号に基づき、ディスプレイ・スクリーンをディスプレイに表示する。
【0076】
図10には、第1のディスプレイ・スクリーン500Aが示されている。図10に示すように、第1のディスプレイ・スクリーン500Aは、インフォメーションエリア502と、イメージディスプレイエリア504Aとを有する。
【0077】
インフォメーションエリア502には、患者IDディスプレイフィールド512、患者名ディスプレイフィールド514、年齢ディスプレイフィールド516、視力ディスプレイフィールド518、右眼/左眼ディスプレイフィールド520、及び眼軸長ディスプレイフィールド522を有する。患者IDディスプレイフィールド512から眼軸長ディスプレイフィールド522の各表示領域には、ビューワ150が、サーバ140から受信した情報に基づいて、各々の情報を表示する。
【0078】
イメージディスプレイエリア504Aは、被検眼像等を表示する領域である。イメージディスプレイエリア504Aには、以下の各表示フィールドが設けられている、具体的には、UWF眼底画像表示フィールド542、OCTボリュームデータ概念図表示フィールド544、断層画像表示フィールド546、及び脈絡膜血管の立体画像表示フィールド548がある。
【0079】
イメージディスプレイエリア504Aに、コメントフィールドを設けてもよい。コメントフィールドは、ユーザである眼科医が観察した結果、又は診断結果を任意に入力できる備考欄である。
【0080】
UWF眼底画像表示フィールド542には、被検眼の眼底を眼科装置110で撮影したUWF-SLO眼底画像542Bが表示されている。UWF-SLO眼底画像542Bには、OCTボリュームデータを取得した位置を示す範囲542Aが重畳表示されている。当該UWF-SLO画像に関連付けられたOCTボリュームデータが複数存在する場合は、複数の範囲が重畳表示するようにし、ユーザは、複数の範囲から、1つの位置を選択するようにしてもよい。図10では、UWF-SLO画像の右上の渦静脈を含む範囲をスキャンしたことを示している。
【0081】
OCTボリュームデータ概念図表示フィールド544には、OCTボリュームデータ概念図(立体形状)544Bが表示される。ユーザは、OCTボリュームデータ概念図(立体形状)において、例えば、深さ方向の断面画像を表示するため、表示したい断面544Aを、マウス等より指定する。断面544Aが指定されると、OCTボリュームデータに対して指定された断面544Aに対応するenface画像を生成し、断層画像546Bとして、断層画像表示フィールド546に表示する。
【0082】
脈絡膜血管の立体画像表示フィールド548には、OCTボリュームデータを画像処理して得られた脈絡膜血管の立体画像(3D画像)548Bが表示される。当該立体画像548Bは、ユーザの操作により立体画像を3軸で回転できる。また、脈絡膜血管の立体画像548Bには、表示されている断層画像546Bの断面544Aに対応する位置に、断面548Aが重畳して表示される。
【0083】
第1のディスプレイ・スクリーン500Aのイメージディスプレイエリア504Aによれば、脈絡膜血管の立体画像を認識することができる。渦静脈を含む範囲をスキャンすれば、渦静脈とその周辺の脈絡膜血管を立体画像で表示することができ、ユーザは診断のためのより多くの情報を得ることが可能となる。
【0084】
また、イメージディスプレイエリア504Aによれば、UWF-SLO画像上のOCTボリュームデータの位置を把握することがきる。
【0085】
更に、イメージディスプレイエリア504Aによれば、立体画像の断面を任意に選択することができ、断層画像を表示させることにより、脈絡膜血管の詳細な情報をユーザは得ることができる。
【0086】
また、本実施形態による脈絡膜血管の立体表示では、OCT-A(OCT-アンジオグラフィー)を用いることなく、脈絡膜血管の立体表示を行うことができる。OCTボリュームデータの差分をとりモーションコントラストを得るような複雑な計算量の多い処理を行うことなく、脈絡膜血管の立体画像を生成することが可能となる。OCT-Aでは差分をとるために異なる時間で複数回のOCTボリュームデータを必要とするが、本実施の形態では、モーションコントラストの抽出処理を行うことなく、1つのOCTボリュームデータに基づいて脈絡膜血管の立体画像を生成することができる。
【0087】
図11には、第2のディスプレイ・スクリーン500Bが示されている。第2のディスプレイ・スクリーン500Bは、第1のディスプレイ・スクリーン500Aのフィールドと同じフィールドを有するので、同一のフィールドには同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0088】
ディスプレイ・スクリーン500Bは、インフォメーションエリア502と、イメージディスプレイエリア504Bとを有する。イメージディスプレイエリア504Bは、イメージディスプレイエリア504Aと同じフィールドを有するので、同一のフィールドには同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。具体的には、イメージディスプレイエリア504Bは、イメージディスプレイエリア504Aの断層画像表示フィールド546に代えて、en-face画像表示フィールド550を有する点で異なる。
【0089】
ユーザは、OCTボリュームデータ概念図544Bにおいて、例えば、深さ方向に垂直な断面画像(enface画像)を表示するため、表示したい断面544nを指定する。断面544nが指定されると、OCTボリュームデータに基づいて断面544nに対応するen-face画像550Bが生成される。
【0090】
en-face画像表示フィールド550には、断面544nに対応するen-face画像550Bが表示される。en-face画像表示フィールド550に表示されるen-face画像550Bには、図6のステップ640、660で抽出された第1の血管及び第2の血管の輪郭550Aをカラー(例えば、赤色)で表示するなどの強調表示を行ってもよい。また、断面544nの位置を数値で(図11では『n層目』という表記)表示するようにしてもよい。
【0091】
脈絡膜血管の立体画像表示フィールド548には、断面544nに対応する断面548nが立体画像548Bに重畳して表示される。
【0092】
第2のディスプレイ・スクリーン500Bのディスプレイ・スクリーン500Bによれば、選択された渦静脈の位置の渦静脈の立体(3D)画像を認識することができる。更に、ディスプレイ・スクリーン500Bによれば、脈絡膜血管の立体画像を認識することができる。渦静脈を含む範囲をスキャンすれば、渦静脈とその周辺の脈絡膜血管を立体画像で表示することができ、ユーザは診断のためのより多くの情報を得ることが可能となる。
【0093】
また、イメージディスプレイエリア504Bによれば、UWF-SLO画像上のOCTボリュームデータ位置を把握することがきる。
【0094】
更に、イメージディスプレイエリア504Bによれば、立体画像のenface面を任意に選択することができ、enface画像を表示させることにより、脈絡膜血管の深さ方向に関する詳細な情報をユーザは得ることができる。
【0095】
図12には、第3のディスプレイ・スクリーン500Cが示されている。第3のディスプレイ・スクリーン500Cは、第1のディスプレイ・スクリーン500Aのフィールドと同じフィールドを有するので、同一のフィールドには同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0096】
第3のディスプレイ・スクリーン500Cは、インフォメーションエリア502と、イメージディスプレイエリア504Cとを有する。イメージディスプレイエリア504Cは、イメージディスプレイエリア504Aと同じフィールドを有するので、同一のフィールドには同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0097】
具体的には、イメージディスプレイエリア504Cは、イメージディスプレイエリア504Aの断層画像表示フィールド546を有しない点でディスプレイ・スクリーン500Aや500Bとは異なる。
【0098】
また、イメージディスプレイエリア504Cは、OCTボリュームデータ概念図表示フィールド544に代えて、2つの異なる角度(第1の角度と第2の角度)からOCTボリュームデータを認識するための、2個のOCTボリュームデータ概念図表示フィールド544P,544Qを有する点で異なる。OCTボリュームデータ概念図表示フィールド544Pには、OCTボリュームデータを45度の角度傾けて描画したことを示す概念図544PBが表示される。OCTボリュームデータ概念図表示フィールド544Qには、OCTボリュームデータを真上から見た状態で描画したことを示す概念図544QBが表示される。OCTボリュームデータ概念図表示フィールド544P,544Qはユーザの操作により任意の角度に指定することができる。
【0099】
更に、イメージディスプレイエリア504Cの脈絡膜血管の立体画像表示フィールド548は、OCTボリュームデータ概念図表示フィールド544P,544Qで指定された2つの異なる角度から見た脈絡膜血管の立体画像548D1B、548D2Bを表示するための脈絡膜血管の立体画像セクション548D1、548D2を有する。
【0100】
2つの異なる角度(第1の角度と第2の角度)は、予め設定された方向でもよいし、AIで決めてもよい。なお、2つに限定されず、3つ以上でもよい。
【0101】
脈絡膜血管の立体画像548D1B、548D2Bは、個別に又は連動して、ユーザが選択した任意な方向に動かしたり、クリックして別のウィンドウで拡大表示したり、してもよい。
【0102】
第3のディスプレイ・スクリーン500Cのイメージディスプレイエリア504Cによれば、複数の異なる角度から、脈絡膜血管の立体画像をユーザが確認することができる。特に、渦静脈を含む脈絡脈血管の立体画像では、渦静脈を強膜側から眺めるような角度で確認することができる。
【0103】
図13には、第4のディスプレイ・スクリーン500Dが示されている。第4のディスプレイ・スクリーン500Dは、第3のディスプレイ・スクリーン500Cのフィールドと同じフィールドを有するので、同一のフィールドには同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0104】
第4のディスプレイ・スクリーン500Dは、インフォメーションエリア502と、イメージディスプレイエリア504Dとを有する。イメージディスプレイエリア504Dは、イメージディスプレイエリア504Cと同じフィールドを有するので、同一のフィールドには同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0105】
より広い範囲の脈絡膜血管を可視化するため、複数のOCTボリュームデータを合成し、合成したOCTボリュームデータを用いて脈絡膜血管を可視化した例を図13に示す。UWF-SLO画像表示フィールド542には、一部が重なる、隣接した二つのOCTボリュームデータの取得した範囲が、範囲542K,542Lとして、UWF-SLO画像542B上に重畳して表示される。
【0106】
イメージディスプレイエリア504Dの脈絡膜血管の立体画像表示フィールド548には、隣接したOCTボリュームデータに基づいて得られた立体画像548KL1B、548KL2Bを表示するための立体画像表示セクション548KL1、548KL2を有する。脈絡膜血管の二つの立体画像548K1B、548L1Bは、図12と同様に、OCTボリュームデータ概念図表示フィールド544P,544Qで指定された2つの異なる角度から見た立体画像である。
【0107】
第4のディスプレイ・スクリーン500Dのイメージディスプレイエリア504Dによれば、隣接した複数のOCTボリュームデータに基づいて脈絡膜血管の立体画像を作成し、表示する。よって、1つのOCTボリュームデータに基づいて作成された脈絡膜血管の立体画像に比べて広範囲の脈絡膜血管の立体画像を確認することができる。また、複数の異なる角度から、広範囲の脈絡膜血管の立体画像をユーザが確認することができる。特に、渦静脈を含む脈絡脈血管の立体画像では、渦静脈を強膜側から眺めるような角度で確認することができる。
【0108】
図14には、第5のディスプレイ・スクリーン500Eが示されている。第5のディスプレイ・スクリーン500Eは、第1のディスプレイ・スクリーン500Aのフィールドと同じフィールドを有するので、同一のフィールドには同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0109】
第5のディスプレイ・スクリーン500Eは、インフォメーションエリア502と、イメージディスプレイエリア504Eとを有する。イメージディスプレイエリア504Eは、イメージディスプレイエリア504Aと同じフィールドを有するので、同一のフィールドには同一の符号を付してその説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0110】
具体的には、イメージディスプレイエリア504Eは、イメージディスプレイエリア504Aの断層画像表示フィールド544及び断層画像表示フィールド546を有しない点で異なる。また、イメージディスプレイエリア504Eは、イメージディスプレイエリア504Aの渦静脈の立体画像表示フィールド548に代えて、以下に説明する経過観察に好適な脈絡膜血管の立体画像表示フィールド548Eを有する点で異なる。
【0111】
脈絡膜血管の立体画像表示フィールド548Eは、同一被検者の眼底を異なるタイミングで撮影して得られたOCTボリュームによる、複数の脈絡膜血管の立体画像を時系列に表示するフィールドである。
【0112】
図14に示す例では、具体的には、脈絡膜血管の立体画像表示フィールド548Eは、左から、眼底の撮影日が古い順に、3個の立体画像表示セクション548E1、548E2、548E3を有する。立体画像表示セクション548E1、548E2、548E3は、眼底の撮影日を表示する撮影日表示ポーション548D1、548D2、548D3を有する。具体的には、立体画像表示セクション548E1には、2021年3月12に眼底が撮影されて得られた立体画像548E1Bが表示されている。立体画像表示セクション548E2には、2021年6月15に眼底が撮影されて得られた立体画像548E2Bが表示されている。立体画像表示セクション548E3には、2021年9月12に眼底が撮影されて得られた立体画像548E3Bが表示されている。立体画像表示フィールド548Eには3個に限らず、2個、あるいは3個以上の立体画像を表示するようにしてもよい。
【0113】
脈絡膜血管の立体画像表示フィールド548Eは、現在表示されている渦静脈の立体画像よりも撮影日がより古い立体画像を表示させる指示を与える戻りボタン548Rと、現在表示されている立体画像よりも撮影日がより新しい立体画像を表示させる指示を与える進みボタン548Fとを有する。戻りボタン548Rが押された場合、現在表示されている立体画像よりも撮影日がより古い立体画像が表示される。進みボタン548Fが押されると、現在表示されている立体画像よりも撮影日がより新しい立体画像が表示される。
【0114】
第5のディスプレイ・スクリーン500Eによれば、被検者の複数の脈絡膜血管の立体画像を時系列順に表示することができる。よって、ユーザは、例えば渦静脈の太さの時間的な変化を確認でき、現時点で必要な適切な治療方法を確認することができる。
【0115】
図15には、第6のディスプレイ・スクリーン500Fが示されている。図15に示すように、第1のディスプレイ・スクリーン500Fは、インフォメーションエリア502Fと、イメージディスプレイエリア504Fとを有する。
【0116】
インフォメーションエリア502Fは、複数、例えば、3人の患者の情報を表示する患者情報表示フィールド502P、502Q、502Rを有する。患者情報表示フィールド502P、502Q、502Rのそれぞれは、それぞれの患者の患者番号ディスプレイフィールド、性別ディスプレイフィールド、年齢ディスプレイフィールド、右眼/左眼ディスプレイフィールド、視力ディスプレイフィールド、及び病名ディスプレイフィールドを有する。表示させたい患者は、図示せぬ患者特定画面でユーザが患者IDを特定することで、指定することができる。例えば、同一の疾患を有する患者を指定したり、性別や年利が同じ患者を指定したり、することができる。そして、指定された患者IDに対応する立体画像やUWF-SLO画像をサーバ140の表示制御部204が読み出し、ディスプレイ・スクリーン500Fを生成する。
【0117】
イメージディスプレイエリア504Fは、インフォメーションエリア502Fの各患者に対応して、画像表示フィールド548P、548Q、548Rを備える。画像表示フィールド548Pには、患者番号542PA、UWF-SLO画像542PB、及び脈絡膜血管の立体画像548PBが表示される。図15では紙面の下から、患者番号542PA、UWF-SLO画像542PB、及び脈絡膜血管の立体画像548PBの順番で表示される例を示したが、これに限らず、ユーザの設定により、各画像の表示位置を変更できるようにしてもうよい。また、画像表示フィールド548Pには、患者番号542PA、UWF-SLO画像542PB、及び脈絡膜血管の立体画像548PBのほかに、ユーザが比較したい患者の属性情報や同一部位の眼底画像(例えば視神経乳頭周辺、黄斑周辺など)を合わせ表示するようにしてもよい。
同様に、画像表示フィールド548Qには、患者番号542QA、UWF-SLO画像542QB、及び脈絡膜血管の立体画像548QBが表示される。画像表示フィールド548Rには、患者番号542RA、UWF-SLO画像542RB、及び脈絡膜血管の立体画像548RBが表示される。
なお、インフォメーションエリア502Fには3人の患者の被検眼の画像に限らず、2人や3人以上の被検眼の画像を表示することができる。
【0118】
第6のディスプレイ・スクリーン500Fによれば、複数の患者の各々の脈絡膜血管の立体画像を含むので、ユーザは画面を切り替えることがなく、複数の患者の脈絡膜血管の立体画像を比較することができる。
【0119】
第1のディスプレイ・スクリーン500Aから第6のディスプレイ・スクリーン500Fを、個別に選択的に表示してもよく、また、順に表示してもよい。
【0120】
以上説明したように本実施の形態では、脈絡膜を含むOCTボリュームデータに基づいて脈絡膜血管を抽出し、脈絡膜血管の立体画像を生成するので、脈絡膜を立体的に可視化することが可能となる。
【0121】
また、本実施の形態では、OCTボリュームデータに基づいて、OCT-A(OCT-アンジオグラフィー)を用いることなく、脈絡膜血管の立体画像を生成する。よって、本実施の形態では、OCTボリュームデータの差分をとりモーションコントラストを抽出する複雑な計算量の多い処理を行うことなく、脈絡膜血管の立体画像を生成することができ、計算量を減少させることができる。
【0122】
上記実施の形態では、画像処理(図5)は、サーバ140が実行しているが、本開示の技術はこれに限定されず、眼科装置110、ビューワ150、又は、ネットワーク130に更に設けた追加画像処理装置が実行してもよい。
【0123】
本開示において、各構成要素(装置等)は、矛盾が生じない限りは、1つのみ存在しても2つ以上存在してもよい。
【0124】
以上説明した各例では、コンピュータを利用したソフトウェア構成により画像処理が実現される場合を例示したが、本開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、コンピュータを利用したソフトウェア構成に代えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア構成のみによって、画像処理が実行されるようにしてもよい。画像処理のうちの一部の処理がソフトウェア構成により実行され、残りの処理がハードウェア構成によって実行されるようにしてもよい。
【0125】
このように本開示の技術は、コンピュータを利用したソフトウェア構成により画像処理が実現される場合とされない場合とを含むので、以下の技術を含む。
【0126】
(第1の技術)
脈絡膜を含むOCTボリュームデータを取得する取得部と、
前記OCTボリュームデータに基づいて脈絡膜血管を抽出し、前記脈絡膜血管の立体画像を生成する生成部と、
を備える画像処理装置。
【0127】
(第2の技術)
取得部が、脈絡膜を含むOCTボリュームデータを取得するステップと、
生成部が、前記OCTボリュームデータに基づいて脈絡膜血管を抽出し、前記脈絡膜血管の立体画像を生成するステップと、
を含む画像処理方法。
画像処理部206は、本開示の技術の「取得部」及び「生成部」の一例である。
以上の開示内容から以下の技術が提案される。
【0128】
(第3の技術)
画像処理するためのコンピュータープログラム製品であって、
前記コンピュータープログラム製品は、それ自体が一時的な信号ではないコンピュータ可読記憶媒体を備え、
前記コンピュータ可読記憶媒体には、プログラムが格納されており、
前記プログラムは、
コンピュータに、
脈絡膜を含むOCTボリュームデータを取得するステップと、
前記OCTボリュームデータに基づいて脈絡膜血管を抽出し、前記脈絡膜血管の立体画像を生成するステップと、
を実行させる、
コンピュータープログラム製品。
サーバ140は、本開示の技術の「コンピュータープログラム製品」の一例である。
【0129】
以上説明した各画像処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0130】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的にかつ個々に記載された場合と同様に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【0131】
また、2021年2月22日に出願された日本国特許出願2021-026196号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15