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特許7715503タングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物及びこれを用いたタングステンパターンウェハーの研磨方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-22
(45)【発行日】2025-07-30
(54)【発明の名称】タングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物及びこれを用いたタングステンパターンウェハーの研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250723BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20250723BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20250723BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20250723BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20250723BHJP
   B01J 27/128 20060101ALI20250723BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622B
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
C01B33/18 C
B01J27/128 M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021008714
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2021118362
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0009406
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】金 元中
(72)【発明者】
【氏名】具 侖永
(72)【発明者】
【氏名】朴 泰遠
(72)【発明者】
【氏名】李 義▲ラン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 種元
(72)【発明者】
【氏名】趙 娟振
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-520547(JP,A)
【文献】特表2017-514927(JP,A)
【文献】特開2019-070113(JP,A)
【文献】特開2019-029660(JP,A)
【文献】特表2017-524767(JP,A)
【文献】特表2006-524918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C09G 1/02
C01B 33/18
B01J 27/128
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性溶媒及び非極性溶媒から選択される1種以上の溶媒;
研磨剤
酸化剤
触媒;及び
有機酸
を含み、
前記研磨剤は、窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカを含む、タングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物であって、
前記研磨剤0.001重量%~20重量%、
前記酸化剤0.01重量%~20重量%、
前記触媒0.001重量%~10重量%、
前記有機酸0.001重量%~20重量%、及び
残量の前記溶媒
からなる、タングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物
【請求項2】
前記窒素の個数が3個であるアミノシランは、下記の化学式1の化合物、下記の化学式1の化合物に由来する陽イオン又は下記の化学式1の化合物の塩を含む、請求項1に記載のタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物:
【化1】
(前記化学式1において、
、X及びXは、それぞれ独立して水素、水酸基、置換又は非置換の炭素数1~炭素数20のアルキル基、置換又は非置換の炭素数6~炭素数20のアリール基、置換又は非置換の炭素数3~炭素数20のシクロアルキル基、置換又は非置換の炭素数7~炭素数20のアリールアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~炭素数20のアルコキシ基、又は置換又は非置換の炭素数6~炭素数20のアリールオキシ基であり、
、X及びXのうち少なくともいずれか一つは、水酸基、置換又は非置換の炭素数1~炭素数20のアルコキシ基、又は置換又は非置換の炭素数6~炭素数20のアリールオキシ基であり、
、Y及びYは、それぞれ独立して2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環族炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基であり、
及びRは、それぞれ独立して水素、水酸基、置換又は非置換の炭素数1~炭素数20の1価の脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の炭素数3~炭素数20の1価の脂環族炭化水素基、又は置換又は非置換の炭素数6~炭素数20の1価の芳香族炭化水素基である。)。
【請求項3】
前記化学式1において、
前記Y、Y及びYは、それぞれ独立して炭素数1~炭素数5のアルキレン基であり、
前記R及びRは、それぞれ独立して水素である、請求項2に記載のタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項4】
前記化学式1の化合物は、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリエトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルメチルジエトキシシラン、及びジエチレントリアミノメチルメチルジエトキシシランから選択される1種以上を含む、請求項2又は3に記載のタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項5】
前記窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカは、表面に陽電荷を備えており、10mV~60mVの表面電位を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項6】
pHが3~6である、請求項1~5のいずれか一項に記載のタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項7】
前記窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカは、平均粒径(D50)が10nm~200nmである、請求項1~6のいずれか一項に記載のタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項のタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物を使用してタングステンパターンウェハーを研磨する段階を含む、タングステンパターンウェハーの研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物及びこれを用いたタングステンパターンウェハーの研磨方法に関する。より詳細には、本発明は、タングステンパターンウェハーの研磨速度及び平坦性を改善し、タングステンパターンウェハー研磨表面の欠陥をなくすタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物及びこれを用いたタングステンパターンウェハーの研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の表面を研磨(又は平坦化)するための化学的機械的研磨(CMP)組成物及び方法は、関連技術分野に広く知られている。半導体基板上の金属層(例えば、タングステン)を研磨するための研磨組成物は、水溶液中に懸濁された研磨剤粒子及び化学的促進剤、例えば、酸化剤、触媒などを含んでもよい。
【0003】
CMP組成物で金属層を研磨する工程では、初期金属層のみを研磨する段階と、金属層及びバリアー層を研磨する段階と、金属、バリアー層及び酸化膜を研磨する段階とが行われる。このうち、金属層、バリアー層及び酸化膜を研磨する段階でタングステンパターンウェハー研磨組成物が使用されるが、金属層及び酸化膜が適切な研磨速度で研磨されたときに優れた研磨平坦化を達成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、タングステンパターンウェハーの研磨時における、研磨速度及び平坦性を改善し、タングステンパターンウェハーの表面の欠陥をなくすタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物は、極性溶媒及び非極性溶媒のうちの1種以上の溶媒;研磨剤;及び酸化剤;を含み、前記研磨剤は、窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカを含む。
【0006】
本発明のタングステンパターンウェハーの研磨方法は、本発明のタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物を用いてタングステンパターンウェハーを研磨する段階を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、タングステンパターンウェハーの研磨時における、研磨速度及び平坦性を改善し、タングステンパターンウェハーの表面の欠陥をなくすタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、「置換又は非置換の」において「置換」は、該当の官能基のうちの1個以上の水素原子が水酸基、炭素数1~炭素数10のアルキル基又はハロアルキル基、炭素数2~炭素数10のアルケニル基又はハロアルケニル基、炭素数2~炭素数10のアルキニル基又はハロアルキニル基、炭素数3~炭素数10のシクロアルキル基、炭素数3~炭素数10のシクロアルケニル基、炭素数6~炭素数10のアリール基、炭素数7~炭素数10のアリールアルキル基、炭素数1~炭素数10のアルコキシ基、炭素数6~炭素数10のアリールオキシ基、アミノ基、ハロ、シアノ基及びチオール基のうちいずれか一つで置換されたことを意味する。
【0009】
本明細書において、「1価の脂肪族炭化水素基」は、置換又は非置換の炭素数1~炭素数20の直鎖状又は分枝状のアルキル基、好ましくは炭素数1~炭素数10、さらに好ましくは炭素数1~炭素数5のアルキル基であってもよい。
【0010】
本明細書において、「1価の脂環族炭化水素基」は、置換又は非置換の炭素数3~炭素数20のシクロアルキル基、好ましくは炭素数3~炭素数10、さらに好ましくは炭素数3~炭素数5のシクロアルキル基であってもよい。
【0011】
本明細書において、「1価の芳香族炭化水素基」は、置換又は非置換の炭素数6~炭素数20のアリール基又は置換又は非置換の炭素数7~炭素数20のアリールアルキル基、好ましくは炭素数6~炭素数10のアリール基、炭素数7~炭素数10のアリールアルキル基であってもよい。
【0012】
本明細書において、「2価の脂肪族炭化水素基」、「2価の脂環族炭化水素基」又は「2価の芳香族炭化水素基」は、上述した「1価の脂肪族炭化水素基」、「1価の脂環族炭化水素基」及び「1価の芳香族炭化水素基」がそれぞれ2価の形態に変形したものを意味する。
【0013】
例えば、「2価の脂肪族炭化水素基」は、置換又は非置換の炭素数1~炭素数20の直鎖状又は分枝状のアルキレン基、好ましくは炭素数1~炭素数10、さらに好ましくは炭素数1~炭素数5のアルキレン基、「2価の脂環族炭化水素基」は、置換又は非置換の炭素数3~炭素数20のシクロアルキレン基、好ましくは炭素数3~炭素数10、さらに好ましくは炭素数3~炭素数5のシクロアルキレン基、「2価の芳香族炭化水素基」は、置換又は非置換の炭素数6~炭素数20のアリーレン基又は置換又は非置換の炭素数7~炭素数20のアリールアルキレン基、好ましくは炭素数6~炭素数10のアリーレン基、炭素数7~炭素数10のアリールアルキレン基であってもよい。
【0014】
本明細書において、数値範囲の記載時、「X~Y」は、X以上、Y以下を意味する。
【0015】
本発明者は、研磨剤及び酸化剤を含むタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物において、窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカを研磨剤として使用することによって、タングステンパターンウェハーの研磨時、タングステンパターンウェハーの研磨速度を改善し、エロージョン(erosion)などを低下させることによってタングステンパターンウェハーの研磨表面の平坦性を改善し、スクラッチ欠陥を改善したことを確認し、本発明を完成するに至った。また、本発明者は、窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカを研磨剤として使用することによって、従来の1~3の強酸性のpHに比べて弱酸性のpHでタングステンパターンウェハーの研磨速度及びタングステンパターンウェハーの研磨表面の平坦性を改善することができた。
【0016】
本発明のタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物(以下、「CMPスラリー組成物」と言う)は、極性溶媒及び非極性溶媒のうちの1種以上の溶媒;研磨剤;及び酸化剤を含み、前記研磨剤は、窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカを含む。
【0017】
以下では、本発明に係るCMPスラリー組成物の構成成分に対して詳細に説明する。
【0018】
極性溶媒及び非極性溶媒のうちの1種以上は、タングステンパターンウェハーを研磨剤で研磨するときの摩擦を減少させることができる。極性溶媒及び非極性溶媒のうちの1種以上は、水(例えば、超純水又は脱イオン水)、有機アミン、有機アルコール、有機アルコールアミン、有機エーテル、有機ケトンなどになってもよく、好ましくは超純水又は脱イオン水であってもよい。極性溶媒及び非極性溶媒のうちの1種以上の溶媒は、CMPスラリー組成物中の残量で含まれてもよい。
【0019】
研磨剤は、絶縁層膜(例:シリコン酸化膜)及びタングステンパターンウェハーを高い研磨速度で研磨することができる。
【0020】
研磨剤として、例えば、窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカは、球形又は非球形の粒子であって、1次粒子の平均粒径(D50)は、約10nm~200nm(例えば、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、又は200nm)、具体的に約20nm~180nm、さらに具体的に約40nm~130nmであってもよい。前記範囲では、本発明の研磨対象である絶縁層膜及びタングステンパターンウェハーに対する研磨速度を高めることができ、研磨後に表面欠陥(スクラッチなど)が発生しなくなり得る。
【0021】
前記「平均粒径(D50)」は、当業者に知られている通常の粒径を意味し、研磨剤を重量基準で最小から最大の順に分布させたとき、約50重量%に該当する粒子の粒径を意味する。
【0022】
研磨剤として、例えば、窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカは、CMPスラリー組成物のうちの約0.001重量%~20重量%(例えば、0.001重量%、0.002重量%、0.003重量%、0.004重量%、0.005重量%、0.006重量%、0.007重量%、0.008重量%、0.009重量%、0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%及び20重量%)、好ましくは約0.01重量%~10重量%、さらに好ましくは約0.05重量%~5重量%、最も好ましくは約0.5重量%~3重量%の量で含まれてもよい。前記範囲では、絶縁層膜及びタングステンパターンウェハーを十分な研磨速度で研磨することができ、スクラッチの発生を防止することができ、組成物の分散安定性が良好になり得る。
【0023】
研磨剤は、窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカを含む。
【0024】
窒素の個数が3個未満であるシランで改質されていないシリカ(非改質シリカ)の場合は、タングステンパターンウェハーの研磨速度が低いか、平坦性改善効果が低かった。その一方で、窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカの場合は、タングステンパターンウェハーの研磨速度及び平坦性改善効果が非常に高かった。また、窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカは、従来の強酸性に比べてpHが高い弱酸性のpH範囲で高いタングステンパターンウェハーの研磨速度及び平坦性改善効果を具現することができる。
【0025】
窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカは、表面に陽電荷を備えており、約10mV~60mV(例えば、10mV、20mV、30mV、40mV、50mV又は60mV)の表面電位を有してもよい。前記範囲では、平坦性改善効果及び研磨後の欠陥改善効果を得ることができる。
【0026】
一具体例において、シリカは、下記で説明する窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されてもよい。
【0027】
窒素の個数が3個であるアミノシランは、下記の化学式1の化合物、下記の化学式1の化合物に由来する陽イオン又は下記の化学式1の化合物の塩を含む:
【0028】
【化1】
(前記化学式1において、
、X及びXは、それぞれ独立して水素、水酸基、置換又は非置換の炭素数1~炭素数20のアルキル基、置換又は非置換の炭素数6~炭素数20のアリール基、置換又は非置換の炭素数3~炭素数20のシクロアルキル基、置換又は非置換の炭素数7~炭素数20のアリールアルキル基、置換又は非置換の炭素数1~炭素数20のアルコキシ基、又は置換又は非置換の炭素数6~炭素数20のアリールオキシ基であり、
、X及びXのうち少なくともいずれか一つは、水酸基、置換又は非置換の炭素数1~炭素数20のアルコキシ基、又は置換又は非置換の炭素数6~炭素数20のアリールオキシ基であり、
、Y及びYは、それぞれ独立して2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環族炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基であり、
及びRは、それぞれ独立して水素、水酸基、置換又は非置換の炭素数1~炭素数20の1価の脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の炭素数3~炭素数20の1価の脂環族炭化水素基、又は置換又は非置換の炭素数6~炭素数20の1価の芳香族炭化水素基である。)
【0029】
好ましくは、前記化学式1において、X、X及びXは、それぞれ独立して水酸基、置換又は非置換の炭素数1~炭素数20のアルキル基、又は置換又は非置換の炭素数1~炭素数20のアルコキシ基であり、X、X及びXのうち少なくとも一つは、水酸基又は置換又は非置換の炭素数1~炭素数20のアルコキシ基である。さらに好ましくは、前記化学式1において、X、X及びXは、水酸基又は置換又は非置換の炭素数1~炭素数20のアルコキシ基である。
【0030】
好ましくは、Y、Y及びYは、それぞれ独立して2価の脂肪族炭化水素基、さらに好ましくは炭素数1~炭素数5のアルキレン基であってもよい。
【0031】
好ましくは、前記化学式1において、R及びRは、それぞれ独立して水素であってもよい。
【0032】
例えば、前記化学式1の化合物は、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリエトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルメチルジエトキシシラン、及びジエチレントリアミノメチルメチルジエトキシシランのうちの1種以上を含んでもよい。
【0033】
他の具体例において、研磨剤は、前記化学式1の化合物に由来する陽イオンで改質されたシリカを含む。
【0034】
前記化学式1の化合物に由来する陽イオンは、前記化学式1で3個の窒素のうち一つ以上に水素又は置換基がさらに結合されることによって形成される陽イオンを意味する。前記陽イオンは、1価の陽イオン乃至3価の陽イオンであってもよい。例えば、前記陽イオンは、下記の化学式1-1~下記の化学式1-7のうちいずれか一つで表示され得る:
【0035】
【化2】
【0036】
【化3】
【0037】
【化4】
【0038】
【化5】
【0039】
【化6】
【0040】
【化7】
【0041】
【化8】
(前記化学式1-1乃至1-7において、X、X、X、Y、Y、Y、R及びRは、それぞれ前記化学式1で定義した通りであって、
、R及びRは、それぞれ独立して水素、水酸基、置換又は非置換の炭素数1~炭素数20の1価の脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の炭素数3~炭素数20の1価の脂環族炭化水素基、又は置換又は非置換の炭素数6~炭素数20の1価の芳香族炭化水素基である。)
【0042】
更に他の具体例において、研磨剤は、前記化学式1の化合物の塩で改質されたシリカを含む。
【0043】
前記陽イオンは、上述した化学式1-1乃至化学式1-7のうちいずれか一つで表示され得る。前記陰イオンとしては、ハロゲン陰イオン(例:F、Cl、Br、I);炭酸陰イオン(例:CO 2-、HCO )、酢酸陰イオン(CHCOO)、クエン酸陰イオン(HOC(COO)(CHCOO)などの有機酸陰イオン;窒素含有陰イオン(例:NO 、NO );リン含有陰イオン(例:PO 3-、HPO 2-、HPO );硫黄含有陰イオン(例:SO 2-、HSO );シアニド陰イオン(CN)などの無機酸陰イオンを挙げることができる。
【0044】
化学式1の化合物、化学式1の化合物に由来する陽イオン又は化学式1の化合物の塩で改質されたシリカは、非改質シリカに、改質しようとする化合物、陽イオン又は塩を添加した後、所定期間反応させることによって得ることができる。非改質シリカは、コロイダルシリカ及びフュームドシリカのうちの1種以上を含んでもよく、好ましくはコロイダルシリカを含んでもよい。
【0045】
酸化剤は、タングステンパターンウェハーを酸化させ、タングステンパターンウェハーの研磨を容易にすることができる。
【0046】
酸化剤は、無機過酸化化合物、有機過酸化化合物、臭素酸又はその塩、硝酸又はその塩、塩素酸又はその塩、クロム酸又はその塩、ヨウ素酸又はその塩、鉄又はその塩、銅又はその塩、稀土類金属酸化物、遷移金属酸化物、及び重クロム酸カリウムのうち一つ以上を含んでもよい。前記「過酸化化合物」は、一つ以上の過酸化基(-O-O-)を含んでいるか、又は最高酸化状態の元素を含む化合物である。好ましくは、酸化剤として過酸化化合物を使用してもよい。例えば、過酸化化合物は、過酸化水素、過ヨウ化カリウム、過硫酸カルシウム、及びフェリシアン化カリウムのうち一つ以上、好ましくは、過酸化水素であってもよい。
【0047】
酸化剤は、前記組成物のうちの約0.01重量%~20重量%(例えば、0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、又は20重量%)、好ましくは約0.05重量%~10重量%、さらに好ましくは約0.1重量%~5重量%の量で含まれてもよい。前記範囲では、タングステンパターンウェハーの研磨速度を向上させることができる。
【0048】
CMPスラリー組成物は、触媒及び有機酸のうちの1種以上をさらに含んでもよい。
【0049】
CMPスラリー組成物は、触媒として、鉄イオン化合物、鉄イオンの錯化合物、及びその水和物のうちの1種以上をさらに含んでもよい。
【0050】
鉄イオン化合物、鉄イオン錯化合物又はその水和物は、タングステン金属膜の研磨速度を向上させることができる。
【0051】
鉄イオン化合物は、鉄3価陽イオン含有化合物を含んでもよい。鉄3価陽イオン含有化合物は、鉄3価の陽イオンが水溶液状態で自由陽イオンとして存在する化合物であれば特に制限されない。例えば、鉄3価陽イオン含有化合物は、塩化鉄(FeCl)、硝酸鉄(Fe(NO)、及び硫酸鉄(Fe(SO)のうちの1種以上を含んでもよいが、これに制限されない。
【0052】
鉄イオン錯化合物は、鉄3価陽イオン含有錯化合物を含んでもよい。鉄3価陽イオン含有錯化合物は、鉄3価の陽イオンが水溶液状態でカルボン酸類、リン酸類、硫酸類、アミノ酸類、及びアミン類のうちの1種以上の官能基を有する有機化合物又は無機化合物と反応して形成された化合物を含んでもよい。前記有機化合物又は無機化合物は、クエン酸、クエン酸アンモニウム、パラトルエンスルホン酸(pTSA)、PDTA(1,3-propylenediaminetetraacetic acid)、EDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)、DTPA(diethylenetriaminepentaacetic acid)、NTA(nitrilotriacetic acid)、EDDS(ethylenediamine-N,N'-disuccinic acid)などであってもよいが、これに制限されない。鉄3価陽イオン含有錯化合物の具体的な例としては、クエン酸鉄(ferric citrate)、クエン酸鉄のアンモニウム塩(ferric ammonium citrate)、Fe(III)-pTSA、Fe(III)-PDTA、Fe(III)-EDTAなどであってもよいが、これに制限されない。
【0053】
触媒として、例えば、鉄イオン化合物、鉄イオンの錯化合物、及びその水和物のうちの1種以上は、前記組成物のうち約0.001重量%~10重量%(例えば、0.001重量%、0.002重量%、0.003重量%、0.004重量%、0.005重量%、0.006重量%、0.007重量%、0.008重量%、0.009重量%、0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、又は10重量%)、好ましくは約0.001重量%~5重量%、さらに好ましくは約0.001重量%~1重量%、最も好ましくは約0.001重量%~0.5重量%の量で含まれてもよい。前記範囲では、タングステン金属膜の研磨速度を高めることができる。
【0054】
有機酸は、マロン酸、マレイン酸、リンゴ酸などのカルボン酸や、グリシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、アラニン、アルギニン、システイン、グルタミン、ヒスチジン、プロリン、セリン、チロシン、リシンなどのアミノ酸であってもよい。
【0055】
有機酸は、CMPスラリー組成物のうち約0.001重量%~20重量%(例えば、0.001重量%、0.002重量%、0.003重量%、0.004重量%、0.005重量%、0.006重量%、0.007重量%、0.008重量%、0.009重量%、0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%及び20重量%)、好ましくは約0.01重量%~10重量%、さらに好ましくは約0.01重量%~5重量%、最も好ましくは約0.01重量%~1重量%の量で含まれてもよい。前記範囲では、タングステンパターンウェハーの研磨時、エロージョン及び突出を同時に改善することができる。
【0056】
CMPスラリー組成物は、pHが約3~6(例えば、3、4、5、又は6)、好ましくは約4~6、さらに好ましくは約5~6であってもよい。本発明は、上述した改質されたシリカを研磨剤として使用することによって、従来の強酸性に比べて弱酸性のpHでも高いタングステンパターンウェハーの研磨速度を具現することができる。
【0057】
CMPスラリー組成物は、前記pHを合わせるためにpH調節剤をさらに含んでもよい。
【0058】
pH調節剤は、無機酸、例えば、硝酸、リン酸、塩酸、及び硫酸のうちの一つ以上を含んでもよく、有機酸、例えば、pKa値が約6以下である有機酸として、例えば、酢酸及びフタル酸のうちの1種以上を含んでもよい。pH調節剤は、塩基、例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムのうちの1種以上を含んでもよい。
【0059】
CMPスラリー組成物は、殺生物剤、界面活性剤、分散剤、改質剤、表面活性剤などの通常の添加剤をさらに含んでもよい。添加剤は、前記組成物のうち約0.001重量%~5重量%、好ましくは約0.001重量%~1重量%、さらに好ましくは約0.001重量%~0.5重量%で含まれてもよい。前記範囲では、研磨速度に影響を与えないと共に、添加剤としての効果を具現することができる。
【0060】
本発明のタングステンパターンウェハーの研磨方法は、本発明のタングステンパターンウェハー研磨用CMPスラリー組成物を使用してタングステンパターンウェハーを研磨する段階を含む。
【0061】
以下では、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成及び作用をさらに詳細に説明する。但し、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものであって、如何なる意味でも、これによって本発明が制限されると解釈することはできない。
【実施例
【0062】
下記の実施例及び比較例で使用された成分の具体的な仕様は、次の通りである。
【0063】
(1)改質前の研磨剤:平均粒径(D50)が120nmであるコロイダルシリカ(Fuso、PL-7)
【0064】
(2)pH調節剤:硝酸又はアンモニア水
【0065】
実施例1
【0066】
改質前の研磨剤の固形分含量の1g当たり0.04mmolに該当する下記の化学式2の化合物と、前記改質前の研磨剤とを混合し、pH2.5の条件で25℃で72時間にわたって反応させ、下記の化学式2の化合物で改質されたシリカ(平均粒径(D50):125nm)を製造した。
【0067】
【化9】
【0068】
CMPスラリー組成物の総重量に対して、研磨剤として前記製造された改質されたシリカ1.5重量%、酸化剤として過酸化水素0.3重量%、エチレンジアミン四酢酸ジアンモニウム塩0.001重量%、鉄イオン含有化合物である硝酸鉄九水和物0.001重量%、有機酸としてマロン酸0.03重量%及びグリシン0.15重量%を含有し、残りとして溶媒である脱イオン水を含ませることによってCMPスラリー組成物を製造した。CMPスラリー組成物のpHを、pH調節剤を使用してpH5.5に調節した。
【0069】
実施例2
【0070】
実施例1で過酸化水素の含量を0.15重量%に変更したことを除いては、実施例1と同一の方法を実施することによってCMPスラリー組成物を製造した。
【0071】
実施例3
【0072】
実施例1でpH調節剤を使用してCMPスラリー組成物のpHを5.0に調節したことを除いては、実施例1と同一の方法を実施することによってCMPスラリー組成物を製造した。
【0073】
比較例1
【0074】
実施例1で研磨剤として改質前の研磨剤を使用した点を除いては、実施例1と同一の方法を実施することによってCMPスラリー組成物を製造した。
【0075】
比較例2
【0076】
改質前の研磨剤の固形分含量の1g当たり0.04mmolに該当する3-アミノプロピルトリエトキシシランと、前記改質前の研磨剤とを混合し、pH2.5の条件で25℃で72時間にわたって反応させ、3-アミノプロピルトリエトキシシランで改質されたシリカ(平均粒径(D50):125nm)を製造し、前記製造された改質されたシリカを使用して実施例1と同一の方法を実施することによってCMPスラリー組成物を製造した
【0077】
比較例3
【0078】
改質前の研磨剤の固形分含量の1g当たり0.04mmolに該当する下記の化学式3の化合物と、前記改質前の研磨剤とを混合し、pH2.5の条件で25℃で72時間にわたって反応させ、下記の化学式3の化合物で改質されたシリカ(平均粒径(D50):125nm)を製造し、前記製造された改質されたシリカを使用して実施例1と同一の方法を実施することによってCMPスラリー組成物を製造した。
【0079】
【化10】
【0080】
比較例4
【0081】
実施例1で酸化剤を使用しない点を除いては、実施例1と同一の方法を実施することによってCMPスラリー組成物を製造した。
【0082】
実施例で製造したタングステン研磨用CMPスラリー組成物に対して、下記の研磨評価条件で研磨評価を行った。その結果を下記の表1に示した。
【0083】
[研磨評価条件]
1.研磨機:Reflexion LK 300mm(AMAT社)
2.研磨条件
-研磨パッド:VP3100/Rohm and Haas社
-ヘッド(Head)速度:35rpm
-プラテン(Platen)速度:33rpm
-研磨圧力:1.5psi
-リテーナリング圧力(Retainer Ring Pressure):8psi
-スラリー流量:250ml/分
-研磨時間:60秒
【0084】
3.研磨対象
-商業的に入手可能なタングステンパターンウェハー(MIT 854,300mm)を使用
-タングステン研磨用CMPスラリーSTARPLANAR7000(サムスンSDI社)と脱イオン水とを1:2の重量比で混合した後で作られた混合液に対して前記混合液の重量の2%に該当する過酸化水素を追加した混合液で、前記タングステンパターンウェハーをReflexion LK 300mmの研磨機にIC1010/SubaIV Stacked(Rodel社)研磨パッドを用いてヘッド速度101rpm、プラテン速度33rpm、研磨圧力2psi、リテーナリング圧力8psi、混合液の流量250ml/分の条件で60秒間1次研磨を行った。これを通じて、タングステン金属膜層を除去し、オキシド/金属パターンが現れるようにした。
【0085】
4.分析方法
-研磨速度(単位:Å/分):タングステン金属膜の研磨速度は、前記研磨条件での評価において、研磨前後の膜厚差を電気抵抗値から換算して求めた。絶縁層膜の研磨速度は、前記研磨条件での評価において、研磨前後の膜厚差を光干渉厚さ測定機(Reflectomer)で換算して求めた。
【0086】
-平坦性(エロージョン、単位:Å):前記研磨条件を用いて実施例で製造したCMPスラリー組成物で研磨した後、パターンのプロファイルをInSight CAP Compact Atomic Profiler(bruker社)で測定した。エロージョンは、研磨したウェハーの0.18/0.18μmパターン領域でペリオキシド(peri-oxide)とセルオキシド(cell-oxide)との高さの差で計算した。スキャン速度は100μm/秒、スキャン長さは2mmにした。
【0087】
【表1】
【0088】
前記表1に示すように、本発明の組成物のように窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカ及び酸化剤を含む組成物においては、タングステンパターンウェハーの研磨速度及び平坦性が全て改善された。
【0089】
その一方で、非改質シリカを使用した比較例1と、窒素の個数が1個であるアミノシランで改質されたシリカを使用した比較例2の場合は、絶縁膜の研磨速度が低く、平坦性が悪化するという問題があった。窒素の個数が2個であるアミノシランで改質されたシリカを使用した比較例3の場合は、平坦性が悪化するという問題があった。窒素の個数が3個であるアミノシランで改質されたシリカを含むとしても、酸化剤が欠如している比較例4の場合は、タングステン及び絶縁膜の研磨速度が低く、平坦性が悪化するという問題があった。
【0090】
本発明の単純な変形及び変更は、本分野で通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。