(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-24
(45)【発行日】2025-08-01
(54)【発明の名称】偏光板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20250725BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20250725BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20250725BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20250725BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20250725BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20250725BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
G02F1/1335 510
G09F9/30 308Z
G09F9/00 366A
G09F9/00 342
G09F9/00 313
G09F9/30 308A
(21)【出願番号】P 2021020039
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2020029560
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】村野 耕太
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-103729(JP,A)
【文献】国際公開第2019/225555(WO,A1)
【文献】特開2019-203933(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114346(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H10K 50/10
H10K 59/10
H05B 33/02
G02F 1/1335
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材からなる曲面基板、光配向膜および偏光子をこの順に含む、曲面形状を有する偏光板
と、1/4波長板機能を有する位相差層とを含む楕円偏光板であって、
式(1):
20mm ≦ R ≦ 300mm (1)
[式(1)中、Rは偏光板において最も曲率が小さい部分の曲率半径を表す]
を満たし、
前記偏光子が少なくとも1つの重合性基を有する重合性液晶化合物と二色性色素とを含む重合性液晶組成物の硬化物から構成され、
前記偏光子が積層される曲面基板の曲面の面方向に対して該偏光子の吸収軸が一方向に向くよう前記重合性液晶化合物が配向し、
前記偏光子と位相差層との間に粘接着剤層を含まない、楕円偏光板。
【請求項2】
曲面形状が三次元曲面形状である、請求項1に記載の
楕円偏光板。
【請求項3】
曲面形状がレンズ状である、請求項1または2に記載の
楕円偏光板。
【請求項4】
偏光子が更にレベリング剤を含む、請求項1~
3のいずれかに記載の
楕円偏光板。
【請求項5】
二色性色素がアゾ色素である、請求項1~
4のいずれかに記載の
楕円偏光板。
【請求項6】
偏光子がX線解析測定においてブラッグピークを示す、請求項1~
5のいずれかに記載の
楕円偏光板。
【請求項7】
(a)
ガラス基材からなる曲面基板上に光配向膜を形成する工程、
(b)光配向膜上に、少なくとも1つの重合性液晶化合物と二色性色素とを含む重合性液晶組成物の塗膜を形成する工程、および、
(c)前記重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物をスメクチック液晶相に相転移させた後、スメクチック液晶状態を保持したまま重合性液晶化合物を重合させることにより偏光子を形成する工程
、並びに、
1/4波長板機能を有する位相差層を形成する工程
を含み、
前記偏光子が積層される曲面基板の曲面の面方向に対して該偏光子の吸収軸が一方向に向くよう前記重合性液晶化合物が配向し、
前記偏光子と位相差層との間に粘接着剤層を含まず、
式(1):
20mm ≦ R ≦ 300mm (1)
[式(1)中、Rは偏光板において最も曲率が小さい部分の曲率半径を表す]
を満たす、曲面形状を有する楕円偏光板の製造方法。
【請求項8】
請求項
1~6のいずれかに記載の楕円偏光板を有するフレキシブル画像表示装置。
【請求項9】
ウインドウとタッチパネルタッチセンサとを更に有する、請求項
8に記載のフレキシブル画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面形状を有する偏光板および前記偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光子を含んで構成される偏光板は、液晶表示装置、有機発光ダイオード(OLED)を用いた有機EL表示装置の他、サングラスやレンズフィルター等多岐にわたる分野において種々の物品を構成する部材として利用されている。従来、このような偏光板として、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性を示す化合物を吸着配向させた偏光子の少なくとも一方の面に、接着層を介して、トリアセチルセルロースフィルム等の保護層を積層した構成を有する偏光板が広く用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、偏光板の用途が多岐にわたるに従い、その用途によっては平面形状ではなく曲面形状の物品に偏光板を設けることが求められるようになってきた。しかしながら、曲面形状に偏光板を設ける場合に特許文献1に記載されるようなフィルム状の偏光板を用いると、曲面に貼合する際にしわや歪みが生じやすく、外観上および光学特性上の欠陥となるのみならず、偏光板を積層する面との密着性低下の原因ともなり得る。このようなフィルム状の偏光板を用いる際のしわや歪みの発生およびこれに起因する問題は、可展面ではなく三次元曲面に偏光板を設ける場合において特に顕著になりやすい。
【0005】
本発明は、被積層面に対する積層性に優れる曲面形状を有する偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]曲面基板、光配向膜および偏光子をこの順に含む、曲面形状を有する偏光板であって、
前記偏光子が少なくとも1つの重合性基を有する重合性液晶化合物と二色性色素とを含む重合性液晶組成物の硬化物から構成され、
前記偏光子が積層される曲面基板の曲面の面方向に対して該偏光子の吸収軸が一方向に向くよう前記重合性液晶化合物が配向している偏光板。
[2]曲面形状が三次元曲面形状である、前記[1]に記載の偏光板。
[3]曲面形状がレンズ状である、前記[1]または[2]に記載の偏光板。
[4]式(1):
20mm ≦ R ≦300mm (1)
[式(1)中、Rは偏光板において最も曲率が小さい部分の曲率半径を表す]
を満たす、前記[1]~[3]のいずれかに記載の偏光板。
[5]偏光子が更にレベリング剤を含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の偏光板。
[6]二色性色素がアゾ色素である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の偏光板。
[7]偏光子がX線解析測定においてブラッグピークを示す、前記[1]~[6]のいずれかに記載の偏光板。
[8]前記[1]~[7]のいずれかに記載の偏光板と1/4波長板機能を有する位相差層とを含む楕円偏光板。
[9](a)曲面基板上に光配向膜を形成する工程、
(b)光配向膜上に、少なくとも1つの重合性液晶化合物と二色性色素とを含む重合性液晶組成物の塗膜を形成する工程、および、
(c)前記重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物をスメクチック液晶相に相転移させた後、スメクチック液晶状態を保持したまま重合性液晶化合物を重合させることにより偏光子を形成する工程
を含み、
前記偏光子が積層される曲面基板の曲面の面方向に対して該偏光子の吸収軸が一方向に向くよう前記重合性液晶化合物が配向している、曲面形状を有する偏光板の製造方法。
[10]前記[8]記載の楕円偏光板を有するフレキシブル画像表示装置。
[11]ウインドウとタッチパネルタッチセンサとを更に有する、前記[10]に記載のフレキシブル画像表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被積層面に対する積層性に優れる曲面形状を有する偏光板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0009】
本発明の偏光板は、曲面基板、光配向膜および偏光子をこの順に含む。光配向膜および偏光子は曲面基板上に積層されるため、本発明の偏光板は少なくとも一部に曲面形状を有する偏光板である。
【0010】
本発明において、曲面形状とは0を超える曲率を有する形状を意味し、可展面である曲面形状および三次元曲面形状が含まれる。可展面とは面の各部を伸縮することなしに平面に展開することができる面を意味し、可展面可展面とは、面の各部を伸縮することなしに平面に展開することができる面可展面とは、面の各部を伸縮することなしに平面に展開することができる面である曲面形状としては、例えば、円筒周面、楕円筒周面、円錐周面および楕円錐周面等の一部または全部に相当する面が挙げられ、凸状の曲面であっても凹状の曲面であってもよい。三次元曲面とは、平面の変形では成立しない曲面、すなわち可展面ではない曲面を意味し、三次元曲面形状としては、球面および楕円球面等の一部または全部に相当する面、断面が放物線や双曲線等をなす曲面の一部または全部に相当する面などが挙げられ、凸状の曲面であっても凹状の曲面であってもよい。なお、本発明の偏光板は、少なくともその一部に曲面形状を有していればよく、平面形状と曲面形状とを組み合わせた形状であってもよく、偏光板全体が曲面形状であってもよい。また、偏光板に含まれる曲面形状が可展面である曲面形状または三次元曲面形状のいずれか一方のみからなってもよく、可展面である曲面と三次元曲面との組み合わせ、または、可展面である曲面および/または三次元曲面と平面との組み合わせからなってもよい。
【0011】
本発明の偏光板を構成する偏光子は重合性液晶組成物の硬化物から構成されており、従来偏光子として広く使用されている二色性色素を吸着させたポリビニルアルコール樹脂フィルム等のフィルム状の偏光子を貼合させることが困難な立体的な曲面形状の基板に対しても、その曲面形状に沿って高い配向秩序を保ちながら偏光子を容易に設けることが可能となる。このため、偏光板に含まれる曲面形状が平面状のフィルムを展開することによって得ることのできない三次元曲面形状である場合に、本発明の効果はより顕著に達成され得る。したがって、本発明の一態様において、本発明の偏光板は三次元曲面形状を含む。
【0012】
本発明の一態様において、偏光板が有する曲面形状はレンズ状であることが好ましい。レンズ状の曲面形状とは、該曲面における全方向において曲率が一定である曲面形状を意味する。レンズ状の曲面形状としては、例えば、球面、楕円球面、半球面、半楕円球面等が挙げられ、凸状のレンズ状であっても凹状のレンズ状であってもよい。本発明の偏光板は、被積層面に対する偏光子の積層性に優れ、偏光板を構成する各層においてしわや歪みの発生を抑制し得るため外観的特性および光学特性に優れるレンズ状の偏光板を提供することができる。
【0013】
本発明の一態様において、本発明の偏光板は式(1)を満たすことが好ましい。
20mm ≦ R ≦ 300mm (1)
[式(1)中、Rは偏光板において最も曲率が小さい部分の曲率半径を表す。]
式(1)は、偏光板が有する最も緩やかな曲面における曲率半径が20mm以上300mm以下であることを意味する。本発明の偏光板は、曲率が比較的大きな曲面形状を有する場合であっても、曲面基板上に設けられる偏光子の高い積層性を実現し得る。このため、本発明の偏光板において最も曲率が小さな部分の曲率半径R(以下、単に「曲率半径R」ともいう)は、例えば250mm以下であってもよく、200mm以下であってもよい。また、曲率半径Rは、より好ましくは25mm以上、さらに好ましくは30mm以上である。曲率半径Rが上記下限値以上であると積層性がより向上しやすい。
【0014】
本発明の偏光板において最も曲率が大きな部分の曲率半径R’(以下、単に「曲率半径R’」ともいう)は、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上、特に好ましくは25mm以上、とりわけ好ましくは30mm以上である。曲率半径R’が上記下限値以上であると、重合性液晶組成物の硬化物層(コーティング層)として積層される偏光子の被積層面に対する積層性や密着性をより高めやすく、硬化物層である偏光子の剥がれや浮きを生じ難い偏光板が得られやすい。本発明の偏光板は、曲率が比較的大きな曲面形状を有する場合であっても、曲面基材上に設けられる偏光子の高い積層性を実現し得るため、曲率半径R’は、例えば250mm以下であってよく、200mm以下であってよく、150mm以下であってもよい。
なお、偏光板に含まれる曲面形状がレンズ状の曲面形状など曲面の全方向において同一の曲率を有する形状である場合、その曲率半径R’’は、通常、上記曲率半径R’の下限値以上、かつ、上記曲率半径Rの上限値以下である。
【0015】
本発明の偏光板は、少なくともその一部に曲面形状を有する偏光板であり、光配向膜および偏光子を積層するための基材として曲面基板を含む。本発明において、曲面基板とは、少なくとも一部が曲面形状である面を有する基板を意味し、基板の面全体が曲面形状からなっていてもよい。曲面基板は、通常、本発明の偏光板が有する曲面形状として先に記載したものと同様の曲面形状を有する。
【0016】
曲面基板は、所望の曲面形状を形成し得る材料からなるものであれば特に限定されるものではなく、所望する曲面形状、偏光板の用途等に応じて公知の材料から適宜選択すればよい。例えば、ガラス基材、フィルム基材、金属基材等が挙げられる。種々の曲面形状を形成しやすい観点から、曲面基板は、好ましくはガラス基材またはフィルム基材からなり、より好ましくはガラス基材または樹脂フィルム基材からなる。本発明の偏光板は、通常、曲面基板を取り除くことなく表示装置やサングラス、レンズフィルター等の光を透過することが求められる物品を構成するため、光学特性の点において、曲面基板は透光性を有する基材からなることが好ましい。
なお、本発明において透光性を有する基材とは、光、特に可視光を透過し得る特性を有する基材を意味し、透光性とは、波長380nm~780nmにわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。また、偏光板の構成によっても異なるが、通常、光学的に等方的であることが好ましい。
【0017】
透光性を有する基材としては、ガラス基材、透明樹脂フィルム基材等が挙げられる。
樹脂フィルム基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;セルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルフォン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;およびポリフェニレンオキシド等が挙げられる。偏光子を形成する観点からは、基材としてガラス基材や、それに類似する硬度を有する素材が適している。
【0018】
本発明の偏光板を組み込む表示装置等の物品を構成する、曲面形状を有する部材自体を曲面基板として用いてもよい。
【0019】
表面基板の表面には、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理、シリコーン処理のような離型処理等が施されていてもよい。また、偏光子が積層されない側の基板面に、ハードコート処理、反射防止処理、帯電防止処理等がなされてもよい。
【0020】
曲面基板の厚みは、曲面形状、曲面基板を構成する材料、偏光板の用途等に応じて適宜決定すればよい。曲面基板全体が同じ厚みを有していても、異なる厚みを有していてもよい。曲面基板の厚みは、例えば30μm~5cm、好ましくは100μm~3.5cm、より好ましくは500μm~3cmである。
【0021】
本発明の偏光板を構成する偏光子は、少なくとも1つの重合性基を有する重合性液晶化合物と二色性色素とを含む重合性液晶組成物の硬化物から構成される。重合性液晶組成物の硬化物から構成される偏光子は、後述するように、偏光子を形成する面上に重合性液晶組成物を塗布して、重合性液晶化合物を配向させた状態で重合させることにより得られるコーティング層である。偏光子をコーティング層として形成することにより、種々の曲率を有する曲面形状に対して偏光子の高い積層性を実現し得る。積層性が高いと、偏光子の高い配向秩序が保持されやすく、優れた光学特性を発現しやすい。なお、本発明において「積層性」とは、被積層面上に偏光子等の層を形成する場合において、積層した層においてしわや歪み、塗布ムラ等がなく、被積層面からの浮きや剥がれが生じ難い特性をいう。
【0022】
偏光子において重合性液晶化合物は、該偏光子が積層される曲面基板の曲面の面方向において該偏光子の吸収軸が一方向に向くよう配向している。偏光子を構成する重合性液晶化合物が偏光子の吸収軸が一方向に向くよう配向していると、重合性液晶化合物の配向秩序度が高い偏光子となり、光学特性に優れる偏光板を得ることができる。
ここで、偏光子の吸収軸が一方向に向くよう重合性液晶化合物が配向しているとは、可展面である曲面においては、該曲面を平面に展開した場合に偏光子の吸収軸が該平面上の一方向に向くよう、重合性液晶化合物が配向していることを意味する。また、球面等の三次元曲面においては、該曲面を一方向から平面視した場合に偏光子の吸収軸が該平面上の一方向に向き、曲面全域において偏光子の吸収軸方向が前記特定の一方向と同一方向に向くよう重合性液晶化合物が配向していることを意味する。本明細書において、偏光子の吸収軸が一方向に向くとは、偏光子の吸収軸方向が実質的に同一方向に向いている状態を意味し、具体的には、面としてつながった1つの曲面における偏光子の吸収軸方向のズレが15°以内であることをいう。
【0023】
本発明において、偏光子を形成する重合性液晶組成物(以下、「重合性液晶組成物(A)」ともいう)に含まれる重合性液晶化合物(以下、「重合性液晶化合物(A)」ともいう)は、少なくとも1つの重合性基を有する化合物である。ここで、重合性基とは、重合開始剤から発生する活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性液晶化合物(A)が有する重合性基としては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、ラジカル重合性基が好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ビニルオキシ基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基がさらに好ましい。
【0024】
本発明において、重合性液晶化合物(A)はスメクチック液晶性を示す化合物であることが好ましい。スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物を用いることにより、配向秩序度の高い偏光子を形成することができる。より高い配向秩序度を実現し得る観点から、重合性液晶化合物(A)の示す液晶状態は、高次スメクチック相(高次スメクチック液晶状態)であることがより好ましい。ここで、高次スメクチック相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相およびスメクチックL相を意味し、これらの中でも、スメクチックB相、スメクチックF相およびスメクチックI相がより好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよいが、緻密な膜厚制御が可能な点でサーモトロピック性液晶が好ましい。また、重合性液晶化合物(A)はモノマーであってもよいが、重合性基が重合したオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0025】
重合性液晶化合物(A)としては、少なくとも1つの重合性基を有する液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができるが、スメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物として、例えば、下記式(A1)で表される化合物(以下、「重合性液晶化合物(A1)」ということがある)が挙げられる。
U1-V1-W1-(X1-Y1)n-X2-W2-V2-U2 (A1)
[式(A1)中、
X1およびX2は、互いに独立して、2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を表し、ここで、該2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基またはニトロ基に置換されていてもよく、該2価の芳香族基または2価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子または硫黄原子または窒素原子に置換されていてもよい。ただし、X1およびX2のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基である。
Y1は、単結合または二価の連結基である。
nは1~3であり、nが2以上の場合、複数のX1は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。X2は、複数のX1のうちのいずれかまたは全てと同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、nが2以上の場合、複数のY1は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。液晶性の観点からnは2以上が好ましい。
U1は、水素原子または重合性基を表わす。
U2は、重合性基を表わす。
W1およびW2は、互いに独立して、単結合または二価の連結基である。
V1およびV2は、互いに独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-、-CO-、-S-または-NH-に置き換わっていてもよい。]
【0026】
重合性液晶化合物(A1)において、X1およびX2は、互いに独立して、好ましくは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、X1およびX2のうちの少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、トランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることが好ましい。置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、または、置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基およびブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、シアノ基および塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子が挙げられる。好ましくは無置換である。
【0027】
また、重合性液晶化合物(A1)は、式(A1)中、式(A1-1):
-(X1-Y1)n-X2- (A1-1)
〔式中、X1、Y1、X2およびnはそれぞれ上記と同じ意味を示す。〕
で示される部分〔以下、部分構造(A1-1)ともいう〕が非対称構造であることが、スメクチック液晶性を発現し易い点で好ましい。
部分構造(A1-1)が非対称構造である重合性液晶化合物(A1)としては、例えば、nが1であり、1つのX1とX2とが互いに異なる構造である重合性液晶化合物(A1)が挙げられる。また、nが2であり、2つのY1が互いに同じ構造である化合物であって、2つのX1が互いに同じ構造であり、1つのX2はこれら2つのX1とは異なる構造である重合性液晶化合物(A1)、2つのX1のうちのW1に結合するX1が、他方のX1およびX2とは異なる構造であり、他方のX1とX2とは互いに同じ構造である重合性液晶化合物(A1)も挙げられる。さらに、nが3であり、3つのY1が互いに同じ構造である化合物であって、3つのX1および1つのX2のうちのいずれか1つが他の3つの全てと異なる構造である重合性液晶化合物(A1)が挙げられる。
【0028】
Y1は、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH2CH2O-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CRa=CRb-、-C≡C-、-CRa=N-または-CO-NRa-が好ましい。RaおよびRbは、互いに独立して、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。Y1は、-CH2CH2-、-COO-または単結合であることがより好ましく、複数のY1が存在する場合、X2と結合するY1は、-CH2CH2-または-CH2O-であることがより好ましい。X1およびX2が全て同一構造である場合、互いに異なる結合方式である2以上のY1が存在することが好ましい。互いに異なる結合方式である複数のY1が存在する場合には、非対称構造となるため、スメクチック液晶性が発現しやすい傾向にある。
【0029】
U2は、重合性基である。U1は、水素原子または重合性基であり、好ましくは重合性基である。U1およびU2がともに重合性基であることが好ましく、ともにラジカル重合性基であることが好ましい。重合性基としては、重合性液晶化合物(A)が有する重合性基として先に例示した基と同様のものが挙げられる。U1で示される重合性基とU2で示される重合性基とは、互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましく、U1およびU2の少なくとも一方が(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、両方が(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。また、重合性基は重合している状態であってもよいし、未重合の状態であってもよいが、好ましくは未重合の状態である。
【0030】
V1およびV2で表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基およびイコサン-1,20-ジイル基等が挙げられる。V1およびV2は、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。
【0031】
該アルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基およびハロゲン原子等が挙げられるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換の直鎖状アルカンジイル基であることがより好ましい。
【0032】
W1およびW2は、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-または-OCOO-が好ましく、単結合または-O-がより好ましい。
【0033】
重合性液晶化合物(A)としては、少なくとも1つの重合性基を有する重合性液晶化合物であれば特に限定されず、公知の重合性液晶化合物を用いることができるが、スメクチック液晶性を示すことが好ましく、スメクチック液晶性を示しやすい構造としては、分子構造中に非対称性の分子構造を有することが好ましく、具体的には下記(A-a)~(A-i)の部分構造を有する重合性液晶化合物であってスメクチック液晶性を示す重合性液晶化合物であることがより好ましい。高次スメクチック液晶性を示しやすいという観点から(A-a)、(A-b)または(A-c)の部分構造を有することがより好ましい。なお、下記(A-a)~(A-i)において、*は結合手(単結合)を表す。
【0034】
【0035】
重合性液晶化合物(A)としては、具体的には例えば、式(A-1)~式(A-25)で表される化合物が挙げられる。重合性液晶化合物(A)がシクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
これらの中でも、式(A-2)、式(A-3)、式(A-4)、式(A-5)、式(A-6)、式(A-7)、式(A-8)、式(A-13)、式(A-14)、式(A-15)、式(A-16)および式(A-17)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。重合性液晶化合物(A)として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0042】
重合性液晶化合物(A)は、例えば、Lub等、Recl.Trav.Chim.Pays-Bas、115、321-328(1996)、または特許第4719156号などに記載の公知の方法で製造できる。
【0043】
本発明において重合性液晶組成物(A)は、重合性液晶化合物(A)以外の他の重合性液晶化合物を含んでいてもよいが、配向秩序度の高い偏光層を得る観点から、重合性液晶組成物(A)に含まれる全重合性液晶化合物の総質量に対する重合性液晶化合物(A)の割合は、好ましくは51質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0044】
重合性液晶組成物(A)が2種以上の重合性液晶化合物(A)を含む場合、そのうちの少なくとも1種が重合性液晶化合物(A1)であってもよく、その全てが重合性液晶化合物(A1)であってもよい。複数の重合性液晶化合物を組合せることにより、液晶-結晶相転移温度以下の温度でも一時的に液晶性を保持することができる場合がある。
【0045】
重合性液晶組成物(A)における重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物(A)の固形分に対して、好ましくは40~99.9質量%であり、より好ましくは60~99質量%であり、さらに好ましくは70~99質量%である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。なお、本明細書において、固形分とは、重合性液晶組成物(A)から溶剤等の揮発性成分を除いた成分の合計量をいう。以下、位相差層形成用の重合性液晶組成物等においても同様に、対象とする組成物から溶剤等の揮発性成分を除いた成分の合計量をいう。
【0046】
本発明において、偏光子を形成する重合性液晶組成物(A)は二色性色素を含む。ここで、二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素を意味する。本発明において用い得る二色性色素は、上記性質を有するものであれば特に制限されず、染料であっても、顔料であってもよい。また、2種以上の染料または顔料をそれぞれ組合せて用いてもよいし、染料と顔料とを組合せて用いてもよく、それぞれ1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、二色性色素は、重合性を有していてもよいし、液晶性を有していてもよい。
【0047】
二色性色素としては、300~700nmの範囲に極大吸収波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素およびアントラキノン色素等が挙げられる。
【0048】
アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素およびスチルベンアゾ色素等が挙げられ、ビスアゾ色素およびトリスアゾ色素が好ましく、例えば、式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」ともいう。)が挙げられる。
K1(-N=N-K2)p-N=N-K3 (I)
[式(I)中、K1およびK3は、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基または置換基を有していてもよい1価の複素環基を表わす。K2は、置換基を有していてもよいp-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基または置換基を有していてもよい2価の複素環基を表わす。pは1~4の整数を表わす。pが2以上の整数である場合、複数のK2は互いに同一でも異なっていてもよい。可視域に吸収を示す範囲で-N=N-結合が-C=C-、-COO-、-NHCO-、-N=CH-結合に置き換わっていてもよい。]
【0049】
1価の複素環基としては、例えば、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾールなどの複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。2価の複素環基としては、前記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0050】
K1およびK3におけるフェニル基、ナフチル基および1価の複素環基、並びにK2におけるp-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基および2価の複素環基が任意に有する置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、重合性基を有する炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~4のアルケニル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などの炭素数1~20のアルコキシ基;重合性基を有する炭素数1~20のアルコキシ基;トリフルオロメチル基などの炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;ハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジノ基などの置換または無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つまたは2つ有するアミノ基、重合性基を有する炭素数1~6のアルキル基を1つまたは2つ有するアミノ基、あるいは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は-NH2である。)等が挙げられる。なお、前記重合性基としては、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基等が挙げられる。
【0051】
化合物(I)の中でも、以下の式(I-1)~式(I-8)のいずれかで表される化合物が好ましい。
【化7】
[式(I-1)~(I-8)中、
B
1~B
30は、互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換または無置換のアミノ基(置換アミノ基および無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子またはトリフルオロメチル基を表わす。
n1~n4は、互いに独立に0~3の整数を表わす。
n1が2以上である場合、複数のB
2は互いに同一でも異なっていてもよく、
n2が2以上である場合、複数のB
6は互いに同一でも異なっていてもよく、
n3が2以上である場合、複数のB
9は互いに同一でも異なっていてもよく、
n4が2以上である場合、複数のB
14は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0052】
前記アントラキノン色素としては、式(I-9)で表される化合物が好ましい。
【化8】
[式(I-9)中、
R
1~R
8は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0053】
前記オキサゾン色素としては、式(I-10)で表される化合物が好ましい。
【化9】
[式(I-10)中、
R
9~R
15は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
【0054】
前記アクリジン色素としては、式(I-11)で表される化合物が好ましい。
【化10】
[式(I-11)中、
R
16~R
23は、互いに独立して、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表わす。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表わす。]
式(I-9)、式(I-10)および式(I-11)において、R
xの炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基等が挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基およびナフチル基等が挙げられる。
【0055】
前記シアニン色素としては、式(I-12)で表される化合物および式(I-13)で表される化合物が好ましい。
【化11】
[式(I-12)中、
D
1およびD
2は、互いに独立に、式(I-12a)~式(I-12d)のいずれかで表される基を表わす。
【化12】
n5は1~3の整数を表わす。]
【化13】
[式(I-13)中、
D
3およびD
4は、互いに独立に、式(I-13a)~式(1-13h)のいずれかで表される基を表わす。
【化14】
n6は1~3の整数を表わす。]
【0056】
これらの二色性色素の中でも、アゾ色素は直線性が高いため偏光性能に優れる偏光子の作製に好適である。したがって、本発明の一実施態様において、偏光子を形成する偏光層形成用組成物に含まれる二色性色素は、好ましくはアゾ色素である。
【0057】
本発明において、二色性色素の重量平均分子量は、通常、300~2000であり、好ましくは400~1000である。
【0058】
本発明の一実施態様において、偏光子を形成する重合性液晶組成物(A)に含まれる二色性色素は疎水性であることが好ましい。二色性色素が疎水性であると、二色性色素と重合性液晶化合物との相溶性が向上し、二色性色素と重合性液晶化合物が均一な相状態を形成し、高い配向秩序度を有する偏光子を得ることができる。なお、本発明において、疎水性の二色性色素とは、25℃、100gの水に対する溶解度が1g以下である色素を意味する。
【0059】
重合性液晶組成物(A)における二色性色素の含有量は、用いる二色性色素の種類などに応じて適宜決定し得るが、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは0.1~50質量部であり、より好ましくは0.1~20質量部であり、さらに好ましくは0.1~12質量部である。二色性色素の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱し難く、高い配向秩序度を有する偏光子を得ることができる。
【0060】
本発明において、偏光子を形成するための重合性液晶組成物(A)は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で重合反応を開始できる点において光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤は単独または二種以上組合せて使用できる。
【0061】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、活性ラジカルを発生する光重合開始剤としては、自己開裂型の光重合開始剤、水素引き抜き型の光重合開始剤がある。
自己開裂型の光重合開始剤として、自己開裂型のベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アゾ系化合物等を使用できる。また、水素引き抜き型光重合開始剤として、水素引き抜き型のベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、ジベンゾスベロン系化合物、アントラキノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロゲノアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、ハロゲノビスイミダゾール系化合物、ハロゲノトリアジン系化合物、トリアジン系化合物等を使用できる。
【0062】
酸を発生する光重合開始剤としては、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩等を使用できる。
【0063】
この中でも、色素の溶解を防ぐ観点から低温での反応が好ましく、低温での反応効率の観点から自己開裂型の光重合開始剤が好ましく、特にアセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0064】
光重合開始剤としては、具体的には例えば、以下のものが挙げられる。
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系化合物;
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマー等のヒドロキシアセトフェノン系化合物;
2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン等のα-アミノアセトフェノン系化合物;
1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物;
ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンおよび2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;
ジエトキシアセトフェノンなどのジアルコキシアセトフェノン系化合物;
2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチ_ル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンおよび2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系化合物。光重合開始剤は、例えば上記の光重合開始剤から重合性液晶組成物(A)に含まれる重合性液晶化合物との関係において適宜選択すればよい。
【0065】
また、市販の光重合開始剤を用いてもよい。市販の光重合開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907、184、651、819、250、および369、379、127、754、OXE01、OXE02、OXE03(BASF社製);Omnirad BCIM、Esacure 1001M、Esacure KIP160(IDM Resins B.V.社製);セイクオール(登録商標)BZ、Z、およびBEE(精工化学株式会社製);カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100、およびUVI-6992(ダウ・ケミカル株式会社製);アデカオプトマーSP-152、N-1717、N-1919、SP-170、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930(株式会社ADEKA製);TAZ-A、およびTAZ-PP(日本シイベルヘグナー株式会社製);並びに、TAZ-104(株式会社三和ケミカル製);等が挙げられる。
【0066】
重合性液晶組成物(A)における重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは1~10質量部であり、より好ましくは1~8質量部、さらに好ましくは2~8質量部、特に好ましくは4~8質量部である。重合開始剤の含有量が上記の範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を大きく乱すことなく、重合性液晶化合物の重合反応を行うことができる。
【0067】
本発明における重合性液晶化合物の重合率は、製造時のライン汚染や取扱いの観点から、60%以上であることが好ましく、65%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。
【0068】
本発明において、偏光子はレベリング剤を含んでいることが好ましい。すなわち、偏光子を形成するための重合性液晶組成物(A)は、好ましくはレベリング剤を含む。レベリング剤は、重合性液晶組成物(A)の流動性を調整し、該重合性液晶組成物(A)を塗布することにより得られる塗膜をより平坦にする機能を有する。偏光子がレベリング剤を含むことにより、種々の形状の曲面、特に曲率の比較的大きな曲面などにおいても、塗布ムラを生じ難く平滑な偏光子が得られるため、偏光板の外観的特性および光学特性の向上に有利となり得る。
【0069】
レベリング剤としては、具体的には界面活性剤が挙げられ、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤およびフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。レベリング剤は単独または2種以上組合せて使用できる。
【0070】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、“BYK-350”、“BYK-352”、“BYK-353”、“BYK-354”、“BYK-355”、“BYK-358N”、“BYK-361N”、“BYK-380”、“BYK-381”および“BYK-392”(BYK Chemie社)が挙げられる。
【0071】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、“メガファック(登録商標)R-08”、同“R-30”、同“R-90”、同“F-410”、同“F-411”、同“F-443”、同“F-445”、同“F-470”、同“F-471”、同“F-477”、同“F-479”、同“F-482”および同“F-483”(DIC(株));“サーフロン(登録商標)S-381”、同“S-382”、同“S-383”、同“S-393”、同“SC-101”、同“SC-105”、“KH-40”および“SA-100”(AGCセイミケミカル(株));“E1830”、“E5844”((株)ダイキンファインケミカル研究所);“エフトップEF301”、“エフトップEF303”、“エフトップEF351”および“エフトップEF352”(三菱マテリアル電子化成(株))が挙げられる。
【0072】
重合性液晶組成物(A)がレベリング剤を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.05~5質量部が好ましく、0.05~3質量部がより好ましい。レベリング剤の含有量が上記の範囲内であると、重合性液晶化合物を配向させやすく、かつ、ムラが生じ難く、より平滑な偏光子を得られる傾向がある。
【0073】
重合性液晶組成物(A)は、レベリング剤以外の他の添加剤を含有してよい。他の添加剤としては、例えば、重合性非液晶化合物、光増感剤、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤等の着色剤、難燃剤および滑剤などが挙げられる。重合性液晶組成物(A)が他の添加剤を含有する場合、他の添加剤の含有量は、重合性液晶組成物(A)の固形分に対して、0%を超えて20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0%を超えて10質量%以下である。
【0074】
重合性液晶組成物(A)に光増感剤を配合することにより重合性液晶化合物の重合反応をより促進させることができる。光増感剤としては、キサントン、チオキサントンなどのキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン、アルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレン等が挙げられる。光増感剤は単独または2種以上組合せて使用できる。
【0075】
重合性液晶組成物(A)が光増感剤を含む場合、その含有量は、重合開始剤および重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜決定すればよいが、重合性液晶化合物100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0076】
重合性液晶組成物(A)は、従来公知の偏光子形成用組成物の調製方法により製造することができ、通常、重合性液晶化合物および二色性色素、並びに、必要に応じて重合開始剤および上記添加剤等を混合、撹拌することにより調製することができる。また、一般にスメクチック液晶性を示す化合物は粘度が高いため、重合性液晶組成物(A)の塗布性を向上させて偏光子の形成を容易にする観点から、溶剤を加えることにより粘度調整を行ってもよい。
【0077】
重合性液晶組成物(A)に用いる溶剤は、用いる重合性液晶化合物および二色性色素の溶解性等に応じて適宜選択することができる。具体的には例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤、および、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、単独または2種以上組合せて使用できる。溶剤の含有量は、重合性液晶組成物(A)の固形分100質量部に対して、好ましくは100~1900質量部であり、より好ましくは150~900質量部であり、さらに好ましくは180~600質量部である。
【0078】
本発明において、偏光子は配向秩序度の高い偏光子であることが好ましい。配向秩序度の高い偏光子は、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。ブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークを意味する。したがって、本発明の偏光板を構成する偏光子はX線回折測定においてブラッグピークを示すことが好ましい。すなわち、本発明の偏光板を構成する偏光子においては、重合性液晶化合物またはその重合体が、X線回折測定において該偏光子がブラッグピークを示すように配向していることが好ましく、光を吸収する方向に重合性液晶化合物の分子が配向する「水平配向」していることがより好ましい。本発明においては分子配向の面周期間隔が3.0~6.0Åである偏光子が好ましい。ブラッグピークを示すような高い配向秩序度は、用いる重合性液晶化合物の種類、二色性色素の種類やその量、および重合開始剤の種類やその量等を制御することにより実現し得る。
【0079】
偏光子は、例えば、曲面基材上に設けられた光配向膜上に重合性液晶組成物(A)の塗膜を形成すること、該塗膜から溶剤を除去すること、重合性液晶化合物を液晶相(スメクチック相)に相転移させること、および、前記液晶相を保持したまま重合性液晶化合物を重合させることを含む方法により得ることができる。
【0080】
重合性液晶組成物(A)を光配向膜上に塗布する方法としては、曲率が比較的大きな曲面や凹状の曲面に対しても、塗布ムラを生じ難く、重合性液晶組成物(A)の均一な塗膜を得やすい観点から、スピンコーティング法、スプレー法、ディップコーティング法などの塗布法を採用することが好ましい。
【0081】
次いで、重合性液晶組成物(A)から得られた塗膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で、溶剤を乾燥等によって除去することにより、乾燥塗膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法等が挙げられる。
【0082】
さらに、重合性液晶化合物を液体相に相転移させるため、重合性液晶化合物が液体相に相転移する温度以上まで昇温した後降温し、該重合性液晶化合物を液晶相(スメクチック相)に相転移させる。かかる相転移は、前記塗膜中の溶剤除去後に行ってもよいし、溶剤の除去と同時に行ってもよい。
【0083】
重合性液晶化合物の液晶状態を保持したまま、重合性液晶化合物を重合させることにより、重合性液晶組成物(A)の硬化物として偏光子が形成される。重合方法としては光重合法が好ましい。光重合において、乾燥塗膜に照射する光としては、当該乾燥塗膜に含まれる重合性液晶化合物の種類(特に、該重合性液晶化合物が有する重合性基の種類)、重合開始剤の種類およびそれらの量等に応じて適宜選択される。その具体例としては、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線およびγ線からなる群より選択される1種以上の活性エネルギー線や活性電子線が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点や、光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって、光重合可能なように、重合性液晶組成物(A)に含有される重合性液晶化合物や重合開始剤の種類を選択しておくことが好ましい。また、重合時に、適切な冷却手段により乾燥塗膜を冷却しながら、光照射することで、重合温度を制御することもできる。光重合の際、マスキングや現像を行うなどによって、パターニングされた偏光層を得ることもできる。
【0084】
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0085】
紫外線照射強度は、通常、10~3,000mW/cm2である。紫外線照射強度は、好ましくは重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは1秒~5分、より好ましくは5秒~3分、さらに好ましくは10秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回または複数回照射すると、その積算光量は、10~3,000mJ/cm2、好ましくは50~2,000mJ/cm2、より好ましくは100~1,000mJ/cm2である。
【0086】
光重合を行うことにより、重合性液晶化合物は、液晶相、特にスメクチック相、好ましくは高次スメクチック相の液晶状態を保持したまま重合し、偏光子が形成される。重合性液晶化合物がスメクチック相の液晶状態を保持したまま重合して得られる偏光子は、前記二色性色素の作用にも伴い、従来のホストゲスト型偏光フィルム、すなわち、ネマチック相の液晶状態からなる偏光層と比較して、偏光性能が高いという利点がある。さらに、二色性色素やリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点もある。
【0087】
偏光子の厚みは、適用される表示装置に応じて適宜選択でき、好ましくは0.1~5μmの膜であり、より好ましくは0.3~4μmであり、さらに好ましくは0.5~3μmである。偏光子の膜厚が、上記の下限値以上であると、必要な光吸収が得られなくなることを防止しやすく、上記の上限値以下であると、光配向膜による配向規制力の低下による配向欠陥の発生を抑制しやすい。
【0088】
偏光子を形成する際に、配向膜上に重合性液晶組成物(A)を塗布することにより、重合性液晶化合物および二色性色素を所望の方向に配向させやすくなる。本発明の偏光板は配向膜として光配向膜を用いる。照射する偏光の偏光方向を選択することにより配向規制力の方向を任意に制御し得る光配向膜を用いることにより、配向膜として従来広く用いられているラビング配向膜などの配向膜表面を物理的に変化させることにより配向規制力を備える配向膜を設けることが困難な曲面形状、例えば曲率の大きな曲面や凹状の曲面などにおいても、精度よく配向角を制御して品質の高い配向膜を容易に得やすいため、配向精度のより高い偏光子を形成し得る。光配向膜による配向規制力の低下を抑え、配向精度を十分に高めるために、本発明の偏光板において、通常、偏光子は光配向膜上に隣接して積層される。
【0089】
光配向膜は、例えば、光反応性基を有するポリマー、オリゴマーまたはモノマー(以下、「光反応性基を有するポリマー等」ともいう)と溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ともいう)を曲面基板上に塗布し、偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜形成用組成物に含まれるポリマー等が、重合性液晶組成物(A)に含まれる重合性液晶化合物が有する重合性基と同じ反応性基(例えば、(メタ)アクリロイル基)を有すると、光配向膜と偏光子との間の密着力が向上する傾向にあり、曲面形状の偏光板において偏光子の浮きや剥がれの発生を抑制する上で有利となり得る。
【0090】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応または光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する基が特に好ましい。
【0091】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基等が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、及び、アゾキシベンゼン構造を有する基等が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0092】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマー等としては、ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0093】
光配向膜を形成する光反応性基を有するポリマーの数平均分子量は、好ましくは20000~100000であり、より好ましくは22000以上であり、さらに好ましくは25000以上であり、また、より好ましくは90000以下、さらに好ましくは80000以下である。光反応性基を有するポリマーの数平均分子量が上記範囲内であると、光配向膜に隣接する層との密着性が向上しやすく、曲面基板と偏光子とが光配向膜を介して密着性よく積層された偏光板を得ることができる。光反応性基を有するポリマーの数平均分子量は、光配向膜形成用組成物に用いるモノマーの量、重合開始剤の種類や量等により制御できる。
なお、ここでいう「光反応性基を有するポリマーの数平均分子量」は、実質的に、硬化した光配向膜を構成しているポリマーの数平均分子量に相当し、ゲル浸透クロマトグラフィー等の測定機器を用いて、硬化した光配向膜自体を測定することにより算出することができる。
【0094】
光配向膜形成用組成物を、例えば、曲面基板上に塗布することにより光配向誘起層を形成することができる。該組成物に含まれる溶剤としては、偏光子を形成する際に用い得る溶剤として先に例示した溶剤と同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマー等の溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0095】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマー等の含有量は、ポリマー等の種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、光配向膜形成用組成物の質量に対して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコールやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0096】
光配向膜形成用組成物を曲面基板上に塗布する方法、および、塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去する方法としては、重合性液晶組成物(A)を光配向膜上に塗布する方法および形成された塗膜から溶剤を除去する方法と同様の方法が挙げられる。
【0097】
偏光の照射は、曲面基板上に塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去したものに直接偏光UVを照射する形式でも、曲面基板側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー等の光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レーザーなどが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプがより好ましい。これらの中でも、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプが、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラーなどの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0098】
なお、偏光照射を行う時にマスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0099】
光配向膜の厚みは、好ましくは10~5000nmであり、より好ましくは10~1000nmであり、さらに好ましくは30~300nmである。光配向膜の厚みが上記範囲であると、偏光子との界面または曲面基板との界面の良好な密着性を発現しつつ、配向規制力を発揮することができ、高い配向秩序で偏光子を形成できる。
【0100】
本発明の偏光板は、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲において、曲面基板、光配向膜および偏光子以外の層を含んでいてもよい。そのような他の層としては、例えば、偏光子を保護したり、補強したりすることなど目的とした保護層、ハードコート層、プライマー層や粘接着層等が挙げられる。
【0101】
本発明の偏光板は、例えば、
(a)曲面基板上に光配向膜を形成する工程、
(b)光配向膜上に、少なくとも1つの重合性液晶化合物と二色性色素とを含む重合性液晶組成物の塗膜を形成する工程、および、
(c)前記重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物をスメクチック液晶相に相転移させた後、スメクチック液晶状態を保持したまま重合性液晶化合物を重合させることにより偏光子を形成する工程
を含む方法により製造することができる。
上記工程(a)、(b)および(c)は、それぞれ、曲面基板上への光配向膜の形成方法、重合性液晶組成物(A)の塗膜の形成方法、および、重合性液晶組成物(A)の塗膜から偏光子を形成する方法として先の段落に記載した各方法に従い実施することができる。
【0102】
本発明は、本発明の偏光板と1/4波長板機能を有する位相差層とを含む楕円偏光板も対象とする。
本発明の楕円偏光板において位相差層はコーティング層であることが好ましく、少なくとも1種の重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物の硬化物であることがより好ましい。位相差層がコーティング層であると、曲面形状の位相差層においてしわや歪みが発生し難く、高い光学特性を発現し得る位相差層となりやすい。
【0103】
本発明において、1/4波長板機能を有する位相差層とは、下記式(2):
100nm≦Re(550)≦170nm (2)
〔式(2)中、Re(λ)は波長λnmにおける位相差層の面内位相差値を表す〕
を満たす層を意味する。上記式(2)を満たすことにより、λ/4板として機能する位相差層となり、該位相差層を含む楕円偏光板を有機EL表示装置等に適用した場合の正面反射色相を向上させる効果(着色を抑制させる効果)が高まりやすい。位相差層の面内位相差値のさらに好ましい範囲は、130nm≦Re(550)≦150nmである。
【0104】
また、位相差層が下記式(3)および(4):
Re(450)/Re(550)≦1.00 (3)
1.00≦Re(650)/Re(550) (4)
〔式中、Re(λ)は波長λnmにおける位相差層の面内位相差値を表す〕
を満たすことが好ましい。位相差層が式(3)および(4)を満たす場合、当該位相差層は、短波長での面内位相差値が長波長での面内位相差値よりも小さくなる、いわゆる逆波長分散性を示す。このような位相差層を有する楕円偏光板は、有機EL表示装置等に組み込んだ場合の正面色相に優れる傾向にある。逆波長分散性が向上し、楕円偏光板の正面方向の反射色相の向上効果をより高め得る観点から、Re(450)/Re(550)は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.78以上であり、また、好ましくは0.92以下、より好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.87以下、特に好ましくは0.86以下、より特に好ましくは0.85以下である。また、Re(650)/Re(550)は、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.02以上である。
【0105】
上記面内位相差値は、位相差層の膜厚dによって調整することができる。面内位相差値は、式Re(λ)=(nx(λ)-ny(λ))×d(dは対象とする位相差層の厚みを表し、nxは、該位相差層が形成する屈折率楕円体において、位相差層の平面に平行な方向の波長λnmにおける主屈折率を表し、nyは、位相差層が形成する屈折率楕円体において、位相差層の平面に対して平行であり、且つ、前記nxの方向に対して直交する方向の波長λnmにおける屈折率を表す)によって決定されることから、所望の面内位相差値(Re(λ):波長λ(nm)における位相差層の面内位相差値)を得るには、3次元屈折率と膜厚dとを調整すればよい。
【0106】
本発明において、位相差層を形成するための重合性液晶化合物としては、所望する光学特性に応じて、位相差フィルムの分野において従来公知の重合性液晶化合物から適宜選択することができる。
【0107】
重合性液晶化合物は、重合性基を有する液晶化合物である。重合性液晶化合物としては、一般に、該重合性液晶化合物を単独で特定方向に配向した状態で重合することにより得られる重合体(硬化物)が、正波長分散性を示す重合性液晶化合物と逆波長分散性を示す重合性液晶化合物とが挙げられる。本発明においては、どちらか一方の種類の重合性液晶化合物のみを使用してもよく、両方の種類の重合性液晶化合物を混合して用いてもよい。
【0108】
本発明において位相差層を形成し得る重合性液晶化合物としては、例えば、特開2011-207765に記載されるような重合性液晶化合物等が挙げられる。
【0109】
位相差層は、重合性液晶化合物、溶剤、必要に応じて重合開始剤、レベリング剤等の添加剤等を含む位相差層形成用の重合性液晶組成物(以下、「重合性液晶組成物(B)」ともいう)を、基材または配向膜上に塗布し、該塗膜を乾燥し、かつ、重合性液晶組成物(B)中の重合性液晶化合物を配向させた後、配向状態を保持したまま光照射等により重合性液晶化合物を重合させることにより得ることができる。
重合性液晶組成物(B)を構成する溶剤、重合開始剤および添加剤等としては、偏光子を形成する重合性液晶組成物(A)に用い得る溶剤、重合開始剤および添加剤等として先に例示したものと同様のものが挙げられる。
【0110】
種々の曲面形状に対して、所望の配向規制力を精度よく付与しやすい観点から、位相差層を形成するために用いる配向膜は、光配向膜であることが好ましい。光配向膜や該光配向膜上に位相差層を形成する方法としては、偏光子を形成するための方法において例示した光配向膜、方法および条件等と同様のものが挙げられ、所望する配向規制力や位相差層の構成等に応じて適宜選択すればよい。
【0111】
位相差層の厚みは適用される表示装置等に応じて適宜選択できるが、密着性および薄膜化等の観点から、好ましくは0.1~5μm、より好ましくは0.2~4μm、さらに好ましくは0.4~3μmである。
【0112】
本発明の楕円偏光板は、位相差層が本発明の偏光板上に配向膜を介して直接形成されてなるか、曲面基板上に配向膜を介して形成された位相差層上に光配向膜を介して偏光子が形成されてなることが好ましい。別々に作製した偏光板と位相差層とを、例えば粘接着層を介して貼合するのではなく、曲面形状の偏光板上に重合性液晶組成物(B)を塗布して位相差層を形成する、または、位相差層を形成した曲面基板上に重合性液晶組成物(A)を塗布して偏光子を形成することにより、本発明の偏光板と位相差層とを積層する際に、曲面形状の積層面におけるしわや歪みの発生を抑え、外観的特性および光学特性に優れる楕円偏光板を得ることができる。したがって、本発明の楕円偏光板は、好ましくは偏光子と位相差層との間に粘接着層を含まない。
【0113】
本発明の偏光子と位相差層とを積層する場合、位相差層の遅相軸(光軸)と偏光子の吸収軸とを実質的に45°となるように積層することが好ましい。位相差層の遅相軸(光軸)と偏光子の吸収軸とを実質的に45°となるように積層することによって、楕円偏光板としての機能を得ることができる。なお、実質的に45°とは通常45±5°の範囲である。
【0114】
本発明の偏光板および楕円偏光板は、フレキシブル画像表示装置等の液晶表示装置や有機EL表示装置等の各種表示装置、サングラス、レンズフィルター等に用いることができる。上記各種用途に本発明の偏光板および/または楕円偏光板を用いる場合、別途作製した本発明の偏光板および/または楕円偏光板を各種物品に組み込んでもよいし、各種物品を構成する部材を曲面基板として本発明の偏光板および/または楕円偏光板を作製することにより各種物品の一構成部材として組み込んでもよい。
【0115】
本発明の楕円偏光板を有するフレキシブル画像表示装置は、ウインドウとタッチパネルタッチセンサとを更に有することが好ましい。フレキシブル画像表示装置は、例えば、フレキシブル画像表示装置用積層体と、有機EL表示パネルとからなり、有機EL表示パネルに対して視認側にフレキシブル画像表示装置用積層体が配置され、折り曲げ可能に構成されている。フレキシブル画像表示装置用積層体としては、上述の本発明の楕円偏光板に加え、ウインドウ、タッチパネルタッチセンサ等が含まれ得る。それらの積層順は任意であるが、視認側からウインドウ、楕円偏光板、タッチパネルタッチセンサの順、または、ウインドウ、タッチパネルタッチセンサ、楕円偏光板の順に積層されていることが好ましい。
【0116】
タッチパネルタッチセンサの視認側に楕円偏光板が存在すると、タッチパネルタッチセンサのパターンが視認されにくくなり表示画像の視認性がよくなるので好ましい。それぞれの部材は接着剤、粘着剤等を用いて積層することができる。また、フレキシブル画像表示装置用積層体は、前記ウインドウ、楕円偏光板、タッチパネルタッチセンサのいずれかの層の少なくとも一面に形成された遮光パターンを具備することができる。
【0117】
ウインドウは、フレキシブル画像表示装置の視認側に配置され、その他の構成要素を外部からの衝撃または温湿度等の環境変化から保護する役割を担っている。従来、このような保護層としてはガラスが使用されてきたが、フレキシブル画像表示装置におけるウインドウはガラスのようにリジッドで堅いものではなく、フレキシブルな特性を有する。前記ウインドウは、フレキシブルな透明基材からなり、少なくとも一面にハードコート層を含んでいてもよい。
【0118】
前記透明基材は、70%以上の可視光線透過率を有することが好ましく、より好ましくは80%以上の可視光線透過率を有する。前記透明基材として、透明性のある任意の高分子フィルムを使用可能である。中でも、透明性および耐熱性に優れたポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムまたはポリイミドフィルム、ポリエステル系フィルム、オレフィン系フィルム、アクリルフィルム、セルロース系フィルムが好ましい。高分子フィルム中に、シリカ等の無機粒子、有機微粒子、ゴム粒子等を分散させることも好ましい。
【0119】
前記透明基材の厚さは、好ましくは5~200μm、より好ましくは20~100μmである。
【0120】
前記ウインドウを構成する透明基材の少なくとも一面にはハードコート層が設けられていてもよい。ハードコート層の厚さは特に限定されず、例えば、2~100μmであってもよい。前記ハードコート層の厚さが前記範囲内であると、十分な耐衝撃性、耐擦傷性および耐屈曲性を確保しやすい。
【0121】
前記ハードコート層は、活性エネルギー線或いは熱エネルギーを照射して架橋構造を形成する反応性材料を含むハードコート形成用組成物の硬化により形成することができるが、活性エネルギー線硬化によるものが好ましい。活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることができるエネルギー線と定義される。活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線及び電子線などを挙げることができ、紫外線が特に好ましい。前記ハードコート形成用組成物は、通常、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物の少なくとも1種の化合物、並びに、重合開始剤を含有する。ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物および重合開始剤としては、特に限定されず、従来公知のものが挙げられる。前記ハードコート組成物はさらに溶剤および添加剤からなる群から選択される1つ以上をさらに含むことができる。前記溶剤は、前記重合性化合物や重合開始剤を溶解または分散させることができるものであれば、光学フィルムの分野においてハードコートを形成するための組成物の溶剤として知られているものを制限なく使用することができる。前記添加剤としては、無機粒子、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、防汚剤などが挙げられる。
【0122】
タッチパネルタッチセンサは入力手段として用いられる。タッチパネルタッチセンサとしては、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式等様々な様式が提案されており、いずれの方式でも構わない。中でも静電容量方式が好ましい。静電容量方式タッチパネルタッチセンサは、活性領域および前記活性領域の外郭部に位置する非活性領域に区分される。活性領域は表示パネルで画面が表示される領域(表示部)に対応する領域であって、使用者のタッチが感知される領域であり、非活性領域は表示装置で画面が表示されない領域(非表示部)に対応する領域である。タッチパネルタッチセンサは、フレキシブルな特性を有する基板と;前記基板の活性領域に形成された感知パターンと;前記基板の非活性領域に形成され、前記感知パターンとパッド部を介して外部の駆動回路と接続するための各センシングラインを含むことができる。
【0123】
フレキシブルな特性を有する基板、感知パターンおよび各センシングラインは、特に制限されず、それぞれ当該技術分野で適用可能な材料を選択できる。
【0124】
フレキシブルな特性を有する基板としては、例えば、前記ウインドウの透明基板と同様の材料から構成される基板が使用できる。タッチパネルタッチセンサの基板は、靱性が2,000MPa%以上のものがタッチパネルタッチセンサのクラック抑制の面から好ましく、靱性が2,000MPa%~30,000MPa%のものがより好ましい。ここで、靭性は、高分子材料の引張実験を通じて得られる応力(MPa)-ひずみ(%)曲線(Stress-strain curve)で破壊点までの曲線の下部面積として定義される。
【0125】
前記フレキシブル画像表示装置用積層体を形成する各層(ウインドウ、楕円偏光板、タッチパネルタッチセンサ)は粘接着剤によって形成することができる。粘接着剤としては、水系接着剤、有機溶剤系、無溶剤系接着剤、固体接着剤、溶剤揮散型接着剤、湿気硬化型接着剤、加熱硬化型接着剤、嫌気硬化型、活性エネルギー線硬化型接着剤、硬化剤混合型接着剤、熱溶融型接着剤、感圧型接着剤(粘着剤)、再湿型接着剤等汎用に使用されているものが使用できる。中でも、水系溶剤揮散型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、粘着剤が好ましく用いられる。粘接着剤層の厚さは、求められる接着力等に応じて適宜調節することができるが、通常、0.01μm~500μm、好ましくは0.1μm~300μmである。前記フレキシブル画像表示装置用積層体に粘接着剤層が複数存在する場合、各粘接着剤層を構成する粘接着剤の種類および厚みは同じであっても異なっていてもよい。
【実施例】
【0126】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例および比較例中の「%」および「部」は、特記しない限り、「質量%」および「質量部」である。
【0127】
1.実施例1
(1)配向膜形成用組成物の調製
下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物を得た。
・下記に示す光反応性基を有するポリマー(数平均分子量 約28000) 2部
【化15】
・溶剤:o-キシレン 98部
【0128】
(2)偏光子形成用組成物の調製
下記成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、偏光子形成用組成物を得た。
二色性色素には、特開2013-101328号公報の実施例に記載される、下記の二色性色素(1)、二色性色素(2)および二色性色素(3)を用いた。
【0129】
・式(1-6)で表される重合性液晶化合物 75部
【化16】
・式(1-7)で表される重合性液晶化合物 25部
【化17】
・下記に示す二色性色素(1) 2.8部
【化18】
・下記に示す二色性色素(2) 2.8部
【化19】
・下記に示す二色性色素(3) 2.8部
【化20】
・重合開始剤:2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
・レベリング剤:ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 1.2部
・溶剤:シクロペンタノン 250部
【0130】
(3)偏光板の製造
ガラス製凹型レンズ(オプトシグマ社製SLB-30―50N)の表面にコロナ処理(AGF-B10、春日電機株式会社製)を施した基板を曲面基板として用いた。コロナ処理が施された表面に、スピンコーターを用いて上記光配向膜形成用組成物を塗布した後、120℃に設定した乾燥オーブンで1分間乾燥し、光配向膜用塗膜を得た。該光配向膜用塗膜上に偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、レンズに対して偏光UVを、50mJ/cm2(313nm基準)の積算光量で照射して光配向膜を形成した。
得られた光配向膜上に、スピンコーターを用いて上記偏光子形成用組成物を塗布した後、110℃に設定した乾燥オーブンで1分間乾燥した。その後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB-15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、重合性液晶化合物および二色性色素が配向した偏光子を形成し、曲面基板/光配向膜/偏光子からなる偏光板を得た。
得られた偏光板について、特開2015-163935号の段落[0321]に記載の方法で別途作成した別の偏光板越しにパラニコル、クロスニコルとなるように並べて確認し、偏光性能を有していることを確認した。
【0131】
(4)積層状態の評価
得られた偏光板について、目視にて積層状態を確認した。結果を表1に示す。
○:シワ、塗布ムラが観察されない。
△:若干の塗布ムラが観察される。
×:多数のシワが観察される。
【0132】
2.実施例2
ガラス製凹型レンズ(オプトシグマ社製SLB-30―70N)の表面にコロナ処理(AGF-B10、春日電機株式会社製)を施した基板を曲面基板とした以外は実施例1と同様にして、曲面基板/光配向膜/偏光子からなる偏光板を得た。実施例1と同様に、偏光性能を有していることを確認し、積層状態を評価した。結果を表1に示す。
【0133】
3.実施例3
ガラス製凹型レンズ(オプトシグマ社製SLB-30―100N)の表面にコロナ処理(AGF-B10、春日電機株式会社製)を施した基板を曲面基板とした以外は実施例1と同様にして、曲面基板/光配向膜/偏光子からなる偏光板を得た。実施例1と同様に、偏光性能を有していることを確認し、積層状態を評価した。結果を表1に示す。
【0134】
4.実施例4
ガラス製凹型レンズ(オプトシグマ社製SLB-30―200N)の表面にコロナ処理(AGF-B10、春日電機株式会社製)を施した基板を曲面基板とした以外は実施例1と同様にして、曲面基板/光配向膜/偏光子からなる偏光板を得た。実施例1と同様に、偏光性能を有していることを確認し、積層状態を評価した。結果を表1に示す。
【0135】
5.実施例5
ガラス製凸型レンズ(オプトシグマ社製SLB-30―70P)の表面にコロナ処理(AGF-B10、春日電機株式会社製)を施した基板を曲面基板として用いた以外は実施例1と同様にして、曲面基板/光配向膜/偏光子からなる偏光板を得た。実施例1と同様に、偏光性能を有していることを確認し、積層状態を評価した。結果を表1に示す。
【0136】
6.実施例6
ガラス製凸型レンズ(オプトシグマ社製SLB-30―200P)の表面にコロナ処理(AGF-B10、春日電機株式会社製)を施した基板を曲面基板として用いた以外は実施例1と同様にして、曲面基板/光配向膜/偏光子からなる偏光板を得た。実施例1と同様に、偏光性能を有していることを確認し、積層状態を評価した。結果を表1に示す。
【0137】
7.比較例1
(1)ヨウ素PVA型偏光板の製造
厚さ30μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、40℃の純水に40秒間浸漬した。その後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.044/5.7/100の染色水溶液に28℃で30秒間浸漬して染色処理を行った。次に、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が11.0/6.2/100のホウ酸水溶液に70℃で120秒間浸漬した。引き続き、8℃の純水で15秒間洗浄した後、300Nの張力で保持した状態で、60℃で50秒間、次いで75℃で20秒間乾燥して、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚さ12μmの偏光子を得た。
得られた偏光子と、シクロオレフィンフィルム(日本ゼオン株式会社製 ZF14)の間に水系接着剤を注入し、ニップロールで貼り合わせた。得られた貼合物の張力を430N/mに保ちながら、60℃で2分間乾燥して、片面に保護フィルムとしてシクロオレフィンフィルムを有するヨウ素PVA型偏光子を得た。なお、上記水系接着剤は、水100部に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(クラレポバール KL318;株式会社クラレ製)3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(スミレーズレジン650;住化ケムテックス株式会社製、固形分濃度30%の水溶液)1.5部とを添加して調製した。
【0138】
上記ヨウ素PVA型偏光板と実施例3で用いた曲面基板とをリンテック社製粘着剤(25μm)にて貼合したこと以外は実施例3と同様にして、曲面基板/粘着剤層/ヨウ素PVA型偏光子からなる偏光板を得た。実施例1と同様に、偏光性能を有していることを確認し、積層状態を評価した。結果を表1に示す。
【0139】
8.比較例2
実施例3で用いた曲面基板上に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液(配向膜形成用組成物)をスピンコート法により塗布し、乾燥後、厚さ100nmの塗膜を形成した。続いて、得られた塗膜の表面に、下記ラビング処理を行って配向膜の作成を試みたが、曲面基板の形によりラビング処理が十分にできなかった。なお、ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ-008型、常陽工学株式会社製)を用いて、布(商品名:YA-20-RW、吉川化工株式会社製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で行った。
【0140】
上記ラビング処理により得られたラビング配向膜上に、実施例1と同様にして偏光子形成用組成物を塗布し、乾燥および重合を行い、曲面基板/ラビング配向膜/偏光子からなる偏光板を得た。実施例1と同様に、偏光性能を確認したところ、偏光性能を有していなかった。また、積層状態を評価した。結果を表1に示す。
【0141】