(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-04
(45)【発行日】2025-08-13
(54)【発明の名称】基板表面に形成された凹部に対してルテニウムを埋め込む方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/285 20060101AFI20250805BHJP
C23C 16/16 20060101ALI20250805BHJP
H01L 21/283 20060101ALI20250805BHJP
【FI】
H01L21/285 C
C23C16/16
H01L21/283
H01L21/285 301
(21)【出願番号】P 2021122649
(22)【出願日】2021-07-27
【審査請求日】2024-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石坂 忠大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 敏夫
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-522618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0134511(US,A1)
【文献】特開2001-234347(JP,A)
【文献】特開2018-147949(JP,A)
【文献】特開2008-022021(JP,A)
【文献】特開2003-286570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/285
C23C 16/16
H01L 21/283
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に形成された凹部に対してルテニウムを埋め込む方法であって、
前記凹部の底面に金属が露出した前記基板に対し、ルテニウム原料として、酸素原子及び炭素原子を含有しないルテニウム化合物を含むガスを供給して、前記凹部内の底部を含む領域に、ルテニウム層を形成する工程と、
次いで、前記基板に対し、ルテニウム原料としてRu
3(CO)
12を含むガスを供給して、前記ルテニウム層を覆うように、前記凹部内にルテニウムを埋め込む工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記ルテニウム化合物は、Ru(PF
3)
4H
2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Ru
3(CO)
12を含むガスには、COガスが含まれている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ルテニウム層を形成する工程では、前記凹部の側壁部に沿って形成された前記ルテニウム層よりも、前記凹部の底部に形成された前記ルテニウム層の方が厚くなるように前記ルテニウム層の形成を行う、請求項1ないし3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記ルテニウム層を形成する工程では、前記凹部の側壁部に沿って形成された前記ルテニウム層と、前記凹部の底部に形成された前記ルテニウム層との厚さが揃うように前記ルテニウム層の形成を行う、請求項1ないし3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記凹部は前記基板の表面の酸化ケイ素膜に形成され、前記凹部の底面に露出した前記金属は、チタンとケイ素とを含む、請求項1ないし5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記凹部の側壁部には、前記酸化ケイ素を覆う窒化ケイ素層が形成されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
基板表面に形成された凹部に対してルテニウムを埋め込む装置であって、
前記凹部の底面に金属が露出した前記基板を収容する処理容器と、
前記処理容器に、ルテニウム原料として、酸素原子及び炭素原子を含有しないルテニウム化合物を含むガスを供給する第1のガス供給部と、
前記処理容器に、ルテニウム原料としてRu
3(CO)
12を含むガスを供給する第2のガス供給部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記処理容器内の前記基板に対し、前記第1のガス供給部から前記ルテニウム化合物を含むガスを供給して、前記凹部内の底部を含む領域に、ルテニウム層を形成するステップと、次いで、前記基板に対し、前記第2のガス供給部から前記Ru
3(CO)
12を含むガスを供給して、前記ルテニウム層を覆うように、前記凹部内にルテニウムを埋め込むステップと、を実行するための制御信号を出力するように構成された、装置。
【請求項9】
前記第1のガス供給部が設けられた前記処理容器である第1の処理容器と、前記第2のガス供給部が設けられた前記処理容器である第2の処理容器とが別体として構成され、これら第1、第2の処理容器が、前記基板の搬送機構を備えた共通の基板搬送室に接続されていることと、
前記制御部は、前記第1の処理容器にて前記ルテニウム層を形成するステップを実行した後、前記ルテニウム層が形成された前記基板を前記第2の処理容器に搬送して、前記第2の処理容器にて前記ルテニウムを埋め込むステップを実行するための制御信号を出力するように構成された、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1のガス供給部は、前記ルテニウム化合物として、Ru(PF
3)
4H
2を供給するように構成された、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記第2のガス供給部は、前記Ru
3(CO)
12と、COガスとを含むガスを供給するように構成された、請求項8ないし10のいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
前記ルテニウム層を形成するステップでは、前記凹部の側壁部に沿って形成された前記ルテニウム層よりも、前記凹部の底部に形成された前記ルテニウム層の方が厚くなるように前記ルテニウム層の形成を行う、請求項8ないし11のいずれか一つに記載の装置。
【請求項13】
前記ルテニウム層を形成するステップでは、前記凹部の側壁部に沿って形成された前記ルテニウム層と、前記凹部の底部に形成された前記ルテニウム層との厚さが揃うように前記ルテニウム層の形成を行う、請求項8ないし11のいずれか一つに記載の装置。
【請求項14】
前記凹部は前記基板の表面の酸化ケイ素膜に形成され、前記凹部の底面に露出した前記金属は、チタンとケイ素とを含む、請求項8ないし13のいずれか一つに記載の装置。
【請求項15】
前記凹部の側壁部には、前記酸化ケイ素を覆う窒化ケイ素層が形成されている、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板表面に形成された凹部に対してルテニウムを埋め込む方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体装置の製造用の基板である半導体ウエハに金属膜を成膜する処理が行われており、金属膜としてルテニウム膜が成膜される場合がある。特許文献1及び特許文献2には、ウエハに形成された凹部に対してルテニウムを埋め込む処理について示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-147949号公報
【文献】特開2020-47864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板の表面に形成された凹部に対して抵抗の上昇を抑えつつルテニウムの埋め込みを実現することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、基板表面に形成された凹部に対してルテニウムを埋め込む方法であって、
前記凹部の底面に金属が露出した前記基板に対し、ルテニウム原料として、酸素原子及び炭素原子を含有しないルテニウム化合物を含むガスを供給して、前記凹部内の底部を含む領域に、ルテニウム層を形成する工程と、
次いで、前記基板に対し、ルテニウム原料としてRu3(CO)12を含むガスを供給して、前記ルテニウム層を覆うように、前記凹部内にルテニウムを埋め込む工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板の表面に形成された凹部に対して抵抗の上昇を抑えつつルテニウムの埋め込みを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示のルテニウムを埋め込む装置の一実施形態を示す概略平面図である。
【
図2】前記装置に設けられた第1の成膜処理部の一例を示す縦断側面図である。
【
図3】前記装置に設けられた第2の成膜処理部の一例を示す縦断側面図である。
【
図4A】本開示のルテニウムを埋め込む方法の第1の実施形態の工程に係るウエハ表面の第1の縦断側面図である。
【
図4B】前記ウエハ表面の第2の縦断側面図である。
【
図4C】前記ウエハ表面の第3の縦断側面図である。
【
図5A】前記方法の第2の実施形態の工程に係るウエハ表面の第1の縦断側面図である。
【
図5B】前記ウエハ表面の第2の縦断側面図である。
【
図5C】前記ウエハ表面の第3の縦断側面図である。
【
図6】ルテニウム層の成膜における成膜温度と成膜速度との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造プロセスでは、絶縁膜にエッチングにより凹部を形成した後、当該凹部に、配線用の金属を埋め込む工程がある。半導体デバイスの微細化に伴い、埋め込み用の金属として低抵抗材料であるルテニウムが注目されており、本開示は、基板である半導体ウエハ(以下、「ウエハ」と記載する)の表面に形成された凹部にルテニウムを埋め込む処理に関するものである。
【0009】
<成膜装置>
以下、ウエハ表面に形成された凹部に対してルテニウム(Ru)を埋め込む装置(以下、「成膜装置」と記載する)の一実施形態について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、成膜装置1の構成例を示す概略平面図である。この成膜装置1は、大気搬送室11と、ロードロック室12と、第1の基板搬送室13及び第2の基板搬送室14と、複数の前処理部15と、複数のRu成膜部2と、を備えて構成される。
【0010】
第1の基板搬送室13及び第2の基板搬送室14は夫々平面視四角形状に構成され、例えば2個の受け渡し部17を介して連結されている。これら第1及び第2の基板搬送室13、14及び受け渡し部17の内部は真空圧雰囲気に設定され、その圧力は互いに揃うように構成される。受け渡し部17は、第1の基板搬送室13に設けられた第1の搬送機構131との間、または第2の基板搬送室14に設けられた第2の搬送機構141との間でウエハの受け渡しを行うように構成されている。
【0011】
これら基板搬送室13、14が並ぶ方向を長さ方向とし、第1の基板搬送室13を手前側、第2の真空搬送室14を奥手側とする。このとき第1の基板搬送室13の手前側には、例えば3個のロードロック室12を介して大気圧雰囲気に設定された大気搬送室11が接続されている。第1及び第2の基板搬送室13、14と受け渡し部17との間、ロードロック室12と第1の基板搬送室13との間、ロードロック室12と大気搬送室11との間には、夫々ウエハの搬送口と、当該搬送口を開閉するゲートバルブが存在するが、図示は省略する。
【0012】
大気搬送室11には、例えば4個のロードポート101が接続され、各ロードポート101には、複数枚のウエハ10を収容したキャリアCが載置される。大気搬送室11には大気搬送機構111が設けられており、大気搬送室11に接続されたキャリアCと、ロードロック室12との間でウエハ10を搬送することができる。
【0013】
第1の基板搬送室13の残りの2つの壁部には、例えば2基の前処理部15が夫々接続されている。そして、第1の基板搬送室13内に設けられた第1の搬送機構131が、これら4基の前処理部15と、受け渡し部17と、ロードロック室12との間でウエハ10を搬送するように構成される。
図1中、符号GV1はゲートバルブを指している。
【0014】
この例において、前処理部15は、COR(Chemical Oxide Removal)処理を行うエッチング処理部151と、PHT(Post heat treatment)処理を行う加熱処理部152と、下層側のシリコンウエハとの間に設けられるコンタクト層となるチタン(Ti)膜の成膜処理を行うTi成膜処理部153とを備えている。COR処理、PHT処理及びTi膜の成膜処理は、ウエハ表面の凹部に対してルテニウムを埋め込む前に実施される前処理に相当する。COR処理及びPHT処理は、前記凹部の内面に形成されたシリコンウエハ表面の自然酸化膜(SiOx)を除去するプリクリーン処理である。
【0015】
エッチング処理部151は、例えばフッ化水素(HF)ガス及びアンモニア(NH3)ガスを用い、前記自然酸化膜のエッチング処理(COR処理)を実施するように構成される。また、加熱処理部152は、ウエハ10を加熱することによって、COR処理にて生成された反応生成物を昇華させて除去するPHT処理を実施するように構成され、こうして自然酸化膜の除去が行われる。Ti成膜処理部153は、Ti膜形成用の成膜ガスを処理容器内に導入し、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、Ti膜の成膜を行うように構成されている。
【0016】
第2の基板搬送室14の残りの2つの壁部には、例えば2組のRu成膜部2が夫々接続されている。そして、第2の搬送機構141が、これら4基のRu成膜部2と受け渡し部17の間でウエハ10を搬送するように構成される。
図1中、符号GV2、GV3は、夫々ゲートバルブを指している。この例では、第2の基板搬送室14が本開示の基板搬送室、第2の搬送機構141が本開示の搬送機構に夫々相当する。
【0017】
各組のRu成膜部2は、例えば第1のルテニウム膜(第1のRu膜)の成膜を行う第1の成膜処理部2Aと、第2のルテニウム膜(第2のRu膜)の成膜を行う第2の成膜処理部2Bとを備えている。第1のRu膜は、ルテニウム原料として、酸素原子及び炭素原子を含有しないルテニウム化合物を含むガスを用いて、ウエハ表面の凹部内の底部を含む領域に形成されるルテニウム薄膜である。また、第2のRu膜は、ルテニウム原料として、Ru3(CO)12を含むガスを用いて、ルテニウム層(第1のRu膜)を覆うように凹部内に埋め込まれるルテニウム膜である。
【0018】
<第1の成膜処理部>
続いて、第1の成膜処理部2Aの構成例について、
図2を参照して説明する。第1の成膜処理部2Aは第1の処理容器21を備えており、第1の処理容器21の下部は排気室211として構成されている。第1の処理容器21の側壁には、第2の基板搬送室14に接続され、当該第2の基板搬送室14との間でウエハ10を搬入出するための搬送口20が形成されている。搬送口20は、ゲートバルブGV2により開閉自在に構成されている。排気室211は、圧力調整部24が設けられた排気管23により真空排気機構25に接続されている。
【0019】
第1の処理容器21内には、ウエハ10を水平に支持するサセプタ3が、支持柱32により下面側から支持された状態で設けられている。サセプタ3はヒータ31を備え、ウエハ10を予め設定した温度に加熱できるように構成される。
第1の処理容器21の天井部には、サセプタ3に載置されるウエハ10と対向するように、シャワーヘッド4が配置されている。このシャワーヘッド4は、ガス拡散空間41を備え、その下面にはガス吐出口42が分散して形成されている。
【0020】
第1の成膜処理部2Aは、第1のガス供給部を含むガス供給機構5を備えている。第1のガス供給部は第1の処理容器21に対して、酸素原子及び炭素原子を含有しないルテニウム化合物、例えばRu(PF3)4H2を含むガスを供給するように構成される。この例のガス供給機構5は、成膜原料S1を収容する原料容器51を備え、原料容器51内の成膜原料S1がヒータ52により加熱されるように構成されている。原料容器51内には、第1のRu膜の成膜原料S1として、固体のRu(PF3)4H2が収容されている。
【0021】
原料容器51には、キャリアガス用の供給管53の一端が成膜原料S1内に挿入されるように設けられている。当該供給管53の他端は、下流側から順にバルブV11、マスフローコントローラM1、バルブV12を介してキャリアガスの供給源531に接続されている。キャリアガスとしては、アルゴン(Ar)ガス、窒素(N2)ガス等の不活性ガスを用いることができる。また、原料容器51の上端面と、シャワーヘッド4のガス導入口43との間は、原料容器51側から順にバルブV21、流量計541及びバルブV22を備えたガス供給配管54を介して接続されている。これら、原料容器51、キャリアガスの供給源531、キャリアガス用の供給管53、ガス供給配管54などは、本例の第1のガス供給部を構成している。
【0022】
さらに、シャワーヘッド4のガス導入口43は、下流側から順にバルブV31、マスフローコントローラM2、バルブV32を備えたガス供給管55を介して、反応ガスの供給源551に接続されている。この例では、反応ガスとして還元ガスである水素(H2)ガスを用いている。また、反応ガスとしては、H2ガス以外に、NH3ガス、H2プラズマ、NH3プラズマ、モノメチルヒドラジン(MMH)、ヒドラジン(N2H4)などを用いることもできる。
【0023】
<第2の成膜処理部>
続いて、第2の成膜処理部2Bの構成例について、
図3を参照して説明する。第2の成膜処理部2Bは第2の処理容器22を備え、この第2の処理容器22の側壁には、第2の基板搬送室14に接続され、当該第2の基板搬送室14との間でウエハ10を搬入出するための図示しない搬送口が形成されている。搬送口は、ゲートバルブGV3により開閉自在に構成されている。本例において、第2の処理容器22内のその他の構成は、既述の第1の処理容器21内の構成と同様であるので、説明および図示を省略する。なお、以下の説明にて第2の処理容器22内に設けられている機器に言及する場合に、
図2に図示した第1の処理容器21内の機器に付した符号を用いる場合がある。
【0024】
第2の成膜処理部2Bは、第2のガス供給部を含むガス供給機構6を備えている。第2のガス供給部は、第2の処理容器22に対して、例えばRu3(CO)12と、COガスとを含むガスを供給するように構成される。
この例におけるガス供給機構6は、成膜原料S2を収容し、ヒータ62により加熱されるように構成された原料容器61を備え、原料容器61内には、第2のRu膜の成膜原料S2として、固体のRu3(CO)12が収容されている。
【0025】
原料容器61には、キャリアガス用の供給管63の一端が成膜原料S2内に挿入されるように設けられている。当該供給管63の他端は、下流側から順にバルブV41、マスフローコントローラM3、バルブV42を介してキャリアガスである例えばCOガスの供給源631に接続されている。但し、キャリアガスとして、COガスの代わりに、Arガス、N2ガス等の不活性ガスを用いることもできる。
【0026】
原料容器61の上端面と、シャワーヘッド4のガス導入口43との間は、原料容器61側から順にバルブV51、流量計641及びバルブV52を備えたガス供給配管64にて接続されている。さらに、ガス供給配管64は、バルブV52とガス導入口43との間において、下流側から順にバルブV61、マスフローコントローラM4、バルブV62を備えたガス供給管65を介して、反応調整用ガス例えばCOガスの供給源651に接続されている。反応調整用ガスとしては、COガス以外にN
2ガス、H
2ガス、Arガス等を用いることができる。
図3に示す例では、Ru
3(CO)
12の原料容器61、キャリアガスの供給源631、キャリアガス用の供給管63、ガス供給配管64や、反応調整用のCOガスの供給源651、ガス供給管65などは、本例の第2のガス供給部を構成している。
【0027】
<制御部>
成膜装置1は、前処理部15やRu成膜部2における各種の処理や、ウエハの搬送等、成膜装置1を構成する各部の動作を制御する制御部100を備えている。この制御部100は、例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には、後述するルテニウム層(第1のRu膜)及び埋め込み用のルテニウム(第2のRu膜)の成膜を行うために必要な制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記憶されている。プログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード、不揮発性メモリ等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0028】
<ウエハの表面構造>
ここで、ルテニウムを埋め込む処理の対象となるウエハの表面構造の一例について、
図4Aを参照して説明する。基板であるシリコンウエハ71の表面には、凹部72を備えた絶縁膜、例えば酸化ケイ素膜(SiO膜)73が形成されている。この凹部72の側壁部721には、SiO膜73を覆うように窒化ケイ素層(SiN層)74が形成されている。また、凹部72の底面722には、例えばチタン(Ti)とケイ素(Si)とを含む金属層であるチタンシリサイド層(TiSi層)75の表面が露出している。TiSi層75は、シリコンウエハ71との間の導通をとるためのコンタクト層として機能する。
凹部72の寸法の一例を挙げると、幅Wが5~20nm、深さDが50~200nmに形成され、アスペクト比(深さD/幅W)は2.5~40である。
【0029】
このようなウエハの表面構造は、例えば以下のように形成される。先ず、シリコンウエハ71の表面にSiO膜73を成膜した後、凹部72をエッチングにより形成し、次いで凹部72の内面を覆うようにSiN層74を成膜する。続いて、異方性エッチングにより凹部72の底面722を削ってTiSi層領域を形成する。この後、ウエハを成膜装置1に搬送してTi膜の成膜を行い、TiSi層75を形成する。
【0030】
<第1の実施形態>
続いて、ウエハ表面に形成された凹部72に対してルテニウムを埋め込む方法の第1の実施形態について、成膜装置1の作用と合わせて説明する。
成膜装置1では、先ず大気搬送機構111により、キャリアC内に収容されたウエハ10を取り出して、大気圧雰囲気のロードロック室12に受け渡し、ロードロック室12を真空圧雰囲気に調節する。次いで、第1の搬送機構131により、ロードロック室12内のウエハ10をエッチング処理部151と、加熱処理部152とに順番に搬送し、既述のプリクリーン処理を実施して、凹部72の内面に形成された自然酸化膜を除去する。
【0031】
続いて、第1の搬送機構131により、ウエハ10をTi膜成膜処理部153に搬送して、TiSi層領域に対してTi膜の成膜を行う。Ti膜が成膜されると、このTi膜にシリコンウエハ71のSiが拡散することによりTiSi層75が形成される。この結果、凹部72の底面722にTiSi層75の表面が露出した状態となる。これらCOR処理、PHT処理及びTi膜の成膜処理までが行われたウエハ10は、
図4Aに示す構造を備えたものであり、このウエハ10に対してルテニウムの埋め込みが実施される。
【0032】
<ルテニウム層(第1のRu膜)の形成>
続いて、第1の搬送機構131、受け渡し部17及び第2の搬送機構141を介して、ウエハ10を第1の成膜処理部2Aに搬送する。第1の成膜処理部2Aでは、前記凹部72の底部を含む領域にルテニウム層を形成する工程を実施する。
具体的には、第1の処理容器21内にウエハ10を搬入してサセプタ3に載置し、当該ウエハ10を加熱し、第1の処理容器21内を真空排気する。後述の評価試験からも明らかなように、還元ガスの種類に応じて、同じ成膜温度における第1のRu膜の成膜速度が異なる。
【0033】
このとき原料容器51においてはヒータ52によりRu(PF
3)
4H
2が加熱されている。この原料容器51にキャリアガスを供給することで、加熱により気化したRu(PF
3)
4H
2をピックアップし、ルテニウム原料として第1の処理容器21に供給する。
さらに、還元ガスであるH
2ガスを第1の処理容器21に供給し、Ru(PF
3)
4H
2ガスと、H
2ガスとを用いたCVDにより、
図4Bに示すように、凹部72内の底部を含む領域にルテニウム層である第1のRu膜81を形成する。この成膜処理では、ウエハ10の表面に吸着したRu(PF
3)
4H
2をH
2ガスで還元することにより、ルテニウムが成膜される。
【0034】
第1の実施形態では、SiN層74により覆われた凹部72の側壁部721側よりも、TiSi層75が露出する凹部72の底面722側のルテニウム膜厚が大きくなるように、ルテニウム膜(第1のRu膜81)の成膜を行う。このため、本例では、SiN層74側(側壁部側)よりも、凹部72の底面722側の方が、成膜速度が大きくなる条件にて第1のRu膜81の成膜を行う。この条件は、既述のウエハ10の加熱温度や、処理容器21内の圧力、ルテニウム原料と還元ガスとの供給比などを調節することにより実現することができる。この条件は、予備実験などにより特定することができる。なお、発明者らは、Ru3(CO)12を用いて成膜する場合に、上述の構成のRu膜が得られることを確認している。
【0035】
こうして、第1のRu膜81は、凹部72内において側壁部721側よりも、底部側の方が厚くなるように形成される。この例では、凹部72の底部に形成される第1のRu膜81の膜厚は1nm~5nmの範囲内の例えば2nmである。なお、凹部72の底部とは、底面722を含む領域であり、後述する第2の実施形態にて説明する。また、側壁部721に形成される第1のRu膜81の膜厚は、凹部72が閉塞せず、後段のルテニウムの埋め込み(凹部72内への第2のRu膜82の形成)を行うことができる程度の膜厚である。この膜厚は、凹部72の幅Wやアスペクト比に応じて変化する。
【0036】
なお発明者らは、露出したSiO膜73の表面にはRu膜はほとんど堆積しないことを把握している。このため、凹部72の側壁部721に、SiO膜73を覆うSiN層74が形成されていない場合には、上述の手法により成膜を行っても当該側壁部721には第1のRu膜81はほとんど形成されない。ここで、
図4B、
図4Cでは、SiO膜73の上面にRu膜が堆積する例を示しているが、成膜条件によっては、このようにSiO膜73の上面にRu膜が堆積する場合もある。
【0037】
第1のRu膜81は、ルテニウム原料として、酸素原子及び炭素原子を含まないルテニウム化合物を含むガスを用いて形成されている。このため、第1のRu膜81が酸素原子を含まず、凹部72の底面722に露出した金属層を酸化する懸念が小さい。また、第1のRu膜81中に炭素原子が残存するおそれも少ない。これに対して、ルテニウム原料が酸素原子や炭素原子を含むルテニウム化合物である場合には、成膜されるRu膜が酸素原子及び炭素原子を含むものになるおそれが高い。これにより、前記金属層が酸素原子により酸化されて金属酸化物が形成され、比抵抗の上昇に繋がる。また、Ru膜が炭素原子を含むと、比抵抗の上昇や、膜質劣化の要因となる。
【0038】
このように、酸素原子及び炭素原子を含まないルテニウム原料を用いて第1のRu膜81を形成することより、凹部72の底面722に露出する金属層であるTiSi層(コンタクト層)75との界面における比抵抗の上昇が抑えられると共に、第1のRu膜81の導電性に係る膜質劣化が抑制される。
【0039】
<ルテニウムの埋め込み(第2のRu膜の形成)>
続いて、第2の搬送機構141により、第1のRu膜81が形成された後のウエハ10を第2の成膜処理部2Bに搬送する。第2の成膜処理部2Bでは、前記凹部72内に形成されたルテニウム層(第1のRu膜81)を覆うように、凹部72内にルテニウムを埋め込む工程を実施する。
【0040】
具体的には、第2の処理容器22内にウエハ10を搬入してサセプタ3に載置し、当該ウエハ10を第1のRu膜81の成膜温度よりも低い温度、例えば120℃~300℃に加熱する。さらに、第2の処理容器22内の圧力を例えば1.3Paに調節する。このとき原料容器61においてはヒータ62によりRu3(CO)12が加熱されている。この原料容器61にキャリアガスであるCOガスを供給することで、加熱により気化したRu3(CO)12をピックアップし、ルテニウム原料として第2の処理容器22に供給する。さらに、反応調整用のCOガスを第2の処理容器22に供給する。
【0041】
これにより気化したRu3(CO)12がウエハ10に供給される。そしてウエハ10上でRu3(CO)12が熱分解する熱CVDが進行する。第2のRu膜82は、予め設定された厚さとなるようにSiO膜73の上に形成される。この成膜の際に、第2のRu膜82は、
図4Cに示すように凹部72を埋めるように成膜される。なお反応調整用のCOガスは、熱分解の過
度の進行を抑制するために供給されている。こうして第2のRu膜82は、第1のRu膜81を覆うように成膜されて凹部72内に埋め込まれる。
【0042】
ここで、既述のように、凹部72内には底面722のみならず、側壁部721にも第1のRu膜81が形成されている。この第1のRu膜81は、第2のRu膜82の密着層となるライナー膜として機能する。このため、凹部72の側壁部721及び底面722側に第2のRu膜82が同様に堆積していき、凹部72へのルテニウムの埋め込みが速やかに行われる。
【0043】
第2のRu膜82のルテニウム原料であるRu3(CO)12は、酸素原子と炭素原子を含むが、第1のRu膜81の上層にバルク膜として形成する場合には、凹部72の底面722のTiSi層75を酸化するおそれはない。また、発明者らはRu3(CO)12を用いて形成されたバルク膜の比抵抗の上限は20μΩ・cm程度、Ru(PF3)4H2を用いて形成されたバルク膜の比抵抗の上限は100μΩ・cm程度であることを把握している。従って、TiSi層75の酸化の懸念がない領域では、Ru3(CO)12を用いて第2のRu膜82を形成した方が、凹部72に埋め込まれるルテニウム全体の比抵抗を低く抑えることができる。
【0044】
成膜処理が終了した後、ウエハ10を、第2の搬送機構141、受け渡し部17、第1の搬送機構131を介してロードロック室12に搬送する。次いで、ロードロック室12内の雰囲気を大気圧雰囲気に切り替えた後、大気搬送機構111により処理後のウエハ10をキャリアCに戻す。
その後、ウエハ10を成膜装置1の外部に設けられたCMP(Chemical Mechanical Polishing)装置に搬送してその表面の研磨を行い、凹部72の上面の第2のRu膜82と、凹部72を構成するSiO膜73の上部を除去する。従って、CMP後の凹部72の深さなどは、上述した寸法よりも小さくなる。
【0045】
上述の実施形態によれば、ウエハ表面に形成された凹部72に対して抵抗の上昇を抑えつつルテニウムの埋め込みを実現することができる。
アスペクト比が大きく深い凹部72にルテニウムを埋め込むためには、埋め込み材料であるバルク膜の比抵抗が低く、かつ凹部72の底面722に露出した金属層(この例ではTiSi層75)との界面の比抵抗を低くする必要がある。既述のように、Ru3(CO)12を用いて形成されたRu膜は、バルク膜としての比抵抗は低いが、酸素原子を含む。従って、Ru3(CO)12を用いて凹部72を埋め込むと、前記金属層との界面には酸化膜が形成されてしまい、当該界面の比抵抗は上昇する懸念がある。一方、Ru(PF3)4H2を用いて形成されたRu膜は、酸素原子を含まないため、前記界面における比抵抗の上昇は抑制されるが、バルク膜としての比抵抗は、既述のようにRu3(CO)12を用いて形成されたRu膜よりも上昇してしまう。
【0046】
そこで、2種類のルテニウム原料を組み合わせ、凹部72の底面722との界面に形成する第1のRu膜81と、バルク膜として形成する第2のRu膜82との原料を切り替えている。これにより、凹部72の底面に露出する金属の界面における比抵抗が低くなり、かつバルク膜としての比抵抗の低い材料を選択できるので、凹部に低抵抗なルテニウムを埋め込むことができる。この結果、比抵抗の低い金属配線を実現することができる。
【0047】
また、凹部72の側壁部721がSiN層74により構成されている場合には、既述のように第1のRu膜81がライナー膜としても機能する。このため、凹部72に第2のRu膜82が速やかに成膜され、凹部72の側壁部721に第1のRu膜81が形成されていない場合に比べて、第2のRu膜82の成膜時間が短縮される。
【0048】
このように、凹部72の側壁部721をSiN層74により構成する場合には、別個にライナー膜を形成する必要はなく、凹部72へ埋め込まれるルテニウムは、第1のRu膜81と第2のRu膜82の2層で済む。従って、別個にライナー膜を成膜する工程が不要であるため、ルテニウム原料のガスを切り替えてこれらの膜を形成したとしても、凹部72にルテニウムを埋め込む処理のトータルの手間や時間が増大する懸念はない。
【0049】
また、上述の成膜装置1では、凹部72内の自然酸化膜の除去と、TiSi層の形成と、第1のRu膜81の形成と、第2のRu膜82の形成とを同一の成膜装置1内にて実施している。これらの処理を行う処理部は、真空圧雰囲気の基板搬送室に接続されているため、処理部間の搬送中の大気との接触により凹部に自然酸化膜が形成されるおそれが小さい。これにより、自然酸化膜が除去された凹部72に対して速やかに比抵抗の低いルテニウムを形成できる。
【0050】
<第2の実施形態>
続いて、本開示の第2の実施形態について、
図5A~図5Cを参照して説明する。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、第1のRu膜の成膜条件である。従って、
図5Aに示すように、凹部72の底面に露出するTiSi層75を形成する工程までは第1の実施の形態と同様に実施される。
【0051】
この実施形態においても、ウエハ10を第1の成膜処理部4Aの第1の処理容器21に搬送し、ルテニウム原料であるRu(PF3)4H2を含むガスと、還元ガスであるH2ガスを供給して、CVDによりウエハに第1のRu膜(ルテニウム層)83を形成する。
第2の実施形態では、SiN層74により覆われた凹部72の側壁部721側と、TiSi層75が露出する凹部72の底面722側とで、ルテニウムの膜厚が互いに揃うように、Ru膜(第1のRu膜81)の成膜を行う。
【0052】
即ち本実施形態では、
図5Bに示すように、側壁部721側のRu層831と、底部側のRu層832とでほぼ均一な厚さの第1のRu膜83が形成される。この例にて形成される第1のRu膜83の厚さは、0.5nm~5nmの範囲内の例えば1nmである。
【0053】
図4Bを用いて説明した、側壁部721よりも底部側の膜厚を厚くする成膜法と同様に、本実施形態の第1のRu膜83の成膜についても、ウエハ10の加熱温度や、処理容器21内の圧力、ルテニウム原料と還元ガスとの供給比などを調節することにより実現することができる。
なお、Ru
3(CO)
12を原料とした成膜においては、成膜時の圧力を下げ、COの供給割合を減らしていくと、
図4Bに示す例と同様に、厚さの異なるRu膜を形成することが可能である。一方、成膜時の圧力を上げていくと、
図5Bに示す例と同様に、厚さの揃ったRu膜を形成することが可能であることを把握している。
【0054】
凹部72の底部とは、凹部72の底面722において第1のRu膜83が形成される領域である。第1のRu膜83の厚さが小さ過ぎると、第1のRu膜83の上層に形成される第2のRu膜82に含まれる酸素原子がTiSi層75側へ拡散するおそれがあり、第1のRu膜83の厚さが大き過ぎると、第2のRu膜82の形成領域が小さくなり、比抵抗が上昇する懸念がある。
このため、第1のRu膜83の厚さは、1nmよりも厚いことが好適である。
また、「厚さが揃う」とは、凹部72の側壁部721のRu層831の厚さT1と、凹部72の底部側のRu層832の厚さT2との比が0.8~1.2の以内の範囲をいう。
【0055】
こうして第1のRu膜83を形成した後、ウエハ10を第2の成膜処理部2Bに搬送する。そして、第2の処理容器22内において、第1の実施形態と同様の手法により、第1のRu膜83を覆うように、凹部72内に第2のRu膜82を埋め込む処理を実施する
(図5C)。このようにして凹部72にルテニウムが埋め込まれたウエハ10は、次の工程において、第1の実施形態と同様にCMPが実施される。
【0056】
この実施形態においても、凹部72の底面722のTiSi層75との界面には酸素原子と炭素原子を含まない第1のRu膜83が形成され、この第1のRu膜83を覆うように、Ru3(CO)12を用いてバルク膜として第2のRu膜83を形成している。このため、抵抗の上昇を抑えつつ、凹部72にルテニウムを埋め込むことができる。
また、この実施形態では、第1のRu膜83は、凹部72の側壁部721と底面722にほぼ均一な厚さで形成されており、ライナー膜としての役割を果たしている。このため、第1のRu膜83と第2のRu膜82との間に別途にライナー膜を形成する工程を省略することができる。
【0057】
<評価試験>
続いて、ルテニウム原料であるRu(PF
3)
4H
2を用いたルテニウム層の成膜評価について
図6を参照して説明する。ルテニウム層は、第1の実施形態に記載した成膜条件の範囲内にて、成膜温度と反応ガスの種類(H
2ガスとNH
3ガス)を変えて成膜し、このときの成膜速度を測定した。なお、成膜処理時の処理容器内の圧力は933Paとした。この結果を
図6に示す。
【0058】
図6中、横軸は、絶対温度Tの逆数を1000倍にした値であり、数値が小さいほど成膜温度が高温であることを示している。横軸の数値「1.6」は352℃、「1.7」
は315℃、「1.8」
は283℃、「1.9」は253℃に夫々相当する。また、縦軸は成膜速度DR(nm/mm)の自然対数を取った値である。反応ガスとしてH
2ガスを用いた場合のデータは黒塗りの丸印(●)にてプロットし、NH
3ガスを用いた場合のデータは黒塗りの四角印(■)にてプロットした。
【0059】
成膜実験の結果によると、Ru(PF3)4H2を含むガスは、反応ガスとしてH2ガス、NH3ガスのいずれを用いた場合であっても、CVDによりルテニウム層が形成できることが認められた。また、成膜処理時の温度を変えることにより、成膜速度が変化し、いずれの反応ガスの場合においても、成膜温度が高くなるほど成膜速度が上昇することが確認された。さらに、同じ成膜温度であっても、反応ガスの種類により成膜速度が異なり、成膜温度の変化に対する成膜速度の変化率も異なることが認められた。これにより、ルテニウム原料が同じでも反応ガスの種類によって、好適な成膜温度の範囲が異なることが理解される。
【0060】
以上に説明した各実施形態において、第2のガス供給部は、処理容器に、Ru3(CO)12を含むガスを供給するように構成すればよく、反応調整用のCOガスを供給する構成は必須ではない。
また、ルテニウム層を形成するためのルテニウム原料は、酸素原子及び炭素原子を含有しないルテニウム化合物であればよく、Ru(PF3)4H2には限定されない。さらに、ルテニウム層の成膜手法としては、CVDのみならず、原料ガスと反応ガスとを交互に供給するALD(Atomic Layer Deposition)であってもよい。また、CVDやALDの実施に当たっては、原料ガスや反応ガスの活性化手段としてプラズマを用いてもよい。
【0061】
さらにまた、
図1に例示したように、第1、第2の成膜処理部2A、2Bにて、異なる処理容器21、22内で第1、第2のRu膜81、83、82を形成することは必須の要件ではない。例えば成膜装置は、共通の処理容器において、ルテニウム層(第1のRu膜81、83)と埋め込み用のルテニウム(第2のRu膜82)の成膜を実施するように構成してもよい。この場合には、処理容器は、酸素原子及び炭素原子を含有しないルテニウム化合物を含むガスを供給する第1のガス供給部と、Ru
3(CO)
12を含むガスを供給する第2のガス供給部と、を備えるように構成される。そして、第1のガス供給部から前記ルテニウム化合物を含むガスを供給して、ウエハ10の凹部72内の底部を含む領域に、ルテニウム層を形成する。次いで、ガスの供給を第1のガス供給部から第2のガス供給部に切り替えて、Ru
3(CO)
12を含むガスをウエハ10に供給して、前記ルテニウム層を覆うように、前記凹部72内へのルテニウムの埋め込みを実施する。
【0062】
図1に示す成膜装置1では、受け渡し部17を介して2基の基板搬送室131、141を接続したが、これは1つの基板搬送室に接続されるモジュール数が増えることに伴って、基板搬送室が大型化することを避けるためである。従って、基板搬送室の大型化が抑えられる場合には、共通の基板搬送室に対して前処理部15及びRu成膜部2を接続してもよい。また、これとは反対に3基以上の基板搬送室を備える成膜装置1を構成してもよい。
【0063】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 半導体ウエハ
72 凹部
81、83 第1のルテニウム膜(ルテニウム層)
82 第2のルテニウム膜(埋め込まれたルテニウム膜)